(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20230220BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
A61B5/02 310L
A61B5/0245 100C
(21)【出願番号】P 2022522569
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2021015252
(87)【国際公開番号】W WO2021229978
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2020083394
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】517280605
【氏名又は名称】イアフレド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 暢謙
(72)【発明者】
【氏名】田坂 修一
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0070159(KR,A)
【文献】特開2018-149278(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0097946(KR,A)
【文献】特開昭54-085584(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0006425(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02
A61B 5/0245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1センサ部と、
前記第1センサ部が生体から受け取った変位に基づいて変位可能なように、前記第1センサ部を支持する第1弾性部材と、
前記生体に当接可能で、前記生体から受け取った変位を前記第1センサ部に伝達可能なように前記第1センサ部に当接して配置された第2弾性部材と、
前記第1センサ部から得られる電気信号を元に前記生体の生体情報を生成する信号処理部と、
前記第1センサ部および前記第1弾性部材を保持する筐体とを備え、
前記筐体は、前記生体の外耳道に挿入されるための挿入部を含み、前記第2弾性部材は、前記挿入部が前記外耳道に挿入されたときに前記生体のうち前記外耳道に隣接する部位に当接するように配置されており、前記第1センサ部は、円弧状に配置されており、
前記第2弾性部材は複数の突起を備え、前記筐体は複数の開口部を有し、前記複数の突起は前記複数の開口部を通って前記第1センサ部に当接する、検出装置。
【請求項2】
前記第1弾性部材は、ウレタン系またはシリコーン系の弾性材料を主材料とする、請求項
1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記外耳道に隣接する部位は、耳珠である、請求項1
または2に記載の検出装置。
【請求項4】
変位可能な状態で保持された第2センサ部を備え、
前記信号処理部が前記生体の生体情報を生成する際には、前記第1センサ部から得られる第1電気信号と前記第2センサ部から得られる第2電気信号との差から前記生体情報を生成する、請求項1から
3のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記第1センサ部と前記第2センサ部とが、同一円周上に沿って互いに離隔して配置されている、請求項
4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記第1センサ部と前記第2センサ部とは、互いに対向する位置に配置されている、請求項
4または
5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記筐体はガイド溝を有し、前記第1センサ部は前記ガイド溝に沿って配置されている、請求項1から
6のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記生体情報は脈拍である、請求項1から
7のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記第1センサ部は、振動検知センサを含む、請求項1から
8のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項10】
前記振動検知センサは、フィルム状である、請求項
9に記載の検出装置。
【請求項11】
前記振動検知センサは、圧電フィルムセンサである、請求項
10に記載の検出装置。
【請求項12】
前記圧電フィルムセンサは、ポリ乳酸を含む、請求項
11に記載の検出装置。
【請求項13】
スピーカーを備える、請求項1から
12のいずれか1項に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脈拍などの生体情報を検出する技術が求められる。たとえば「生体解析装置」と称するものが特開2019-55087号公報(特許文献1)に記載されている。この生体解析装置に備わる検出装置では、生体に光を照射する発光素子と、生体から到来する光を受光する受光素子とを備える光センサが用いられている。特許文献1では、この光センサから供給される検出信号について演算処理を実行することで、生体情報を測定するものとされている。
【0003】
特許第5899308号(特許文献2)には、「広帯域センサ」と称するものが記載されている。このセンサでは、音波、脈波などを検出するために圧電素子が用いられており、外乱ノイズを排除するために、対象表面に囲い部材を当接させて密閉キャビティを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-55087号公報
【文献】特許第5899308号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された発明によって、生体情報を検出するために、LEDなどの発光素子によって光を照射する必要があるので、消費電力が大きくなってしまう。また、発光素子および受光素子を適切な位置関係で配置しなければならないので、装置のサイズが大きくなってしまい、生体の近傍に配置するには不利である。
【0006】
特許文献2に記載された発明によって、脈拍を検出しようとすれば、囲い部材を生体に当接させて密閉空間を作る必要があるので、生体の中でも検出できる場所が限られる。また、特許文献2に記載されたセンサでは、装着している生体にとって違和感を覚えさせるものとなりがちであったため、このセンサを装着したまま生体が行動を続けるには不向きであった。
【0007】
そこで、本発明は、生体から生体情報を検出するために、簡便で使いやすく、また、装着していることによって生体に与える違和感をなるべく少なくした検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に基づく検出装置は、第1センサ部と、上記第1センサ部が生体から受け取った変位に基づいて変位可能なように、上記第1センサ部を支持する第1弾性部材と、上記第1センサ部から得られる電気信号を元に上記生体の生体情報を生成する信号処理部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生体から受け取った変位に基づいて第1センサ部自体に変位が生じ、この変位に起因して電気信号が生じ、この電気信号を元に生体1の生体情報を得ることができる。したがって、生体から生体情報を検出するために、簡便で使いやすく、また、装着していることによって生体に与える違和感をなるべく少なくした検出装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に基づく実施の形態1における検出装置の概念図である。
【
図2】本発明に基づく実施の形態2における検出装置の概念図である。
【
図3】本発明に基づく実施の形態3における検出装置の側面図である。
【
図4】本発明に基づく実施の形態3における検出装置に含まれる筐体の側面図である。
【
図5】生体の耳とその近傍にある動脈との位置関係を示す図である。
【
図6】本発明に基づく実施の形態3における検出装置の挿入部が外耳道に挿入された状態の断面図である。
【
図7】本発明に基づく実施の形態3における検出装置が生体から変位を検出している状態での、第1圧電フィルムセンサおよびその近傍の拡大断面図である。
【
図8】本発明に基づく実施の形態3における検出装置の主な部分の分解図である。
【
図9】本発明に基づく実施の形態4における検出装置の挿入部が外耳道に挿入された状態の断面図である。
【
図10】本発明に基づく実施の形態5における検出装置の挿入部が外耳道に挿入された状態の断面図である。
【
図12】抽象化した第1のモデルの第1の変形例の断面図である。
【
図13】抽象化した第1のモデルの第2の変形例の断面図である。
【
図15】抽象化した第2のモデルの第1の変形例の断面図である。
【
図16】抽象化した第2のモデルの第2の変形例の断面図である。
【
図18】抽象化した第3のモデルの第1の変形例の断面図である。
【
図19】抽象化した第3のモデルの第2の変形例の断面図である。
【
図20】本発明に基づく実施の形態6における検出装置に含まれるセンサユニットの説明図である。
【
図21】本発明に基づく実施の形態6における検出装置の側面図である。
【
図22】本発明に基づく実施の形態6における検出装置の平面図である。
【
図23】
図21におけるXXIII-XXIII線に関する矢視断面図である。
【
図24】本発明に基づく実施の形態6における検出装置で、2つの圧電フィルムセンサから得られる電気信号を用いて生体情報を生成する様子の説明図である。
【
図25】本発明で使用されうる圧電フィルムセンサの断面図である。
【
図26】生体情報の一例としての脈拍が検出されたときのユーザ向け出力例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面において示す寸法比は、必ずしも忠実に現実のとおりを表しているとは限らず、説明の便宜のために寸法比を誇張して示している場合がある。以下の説明において、上または下の概念に言及する際には、絶対的な上または下を意味するとは限らず、図示された姿勢の中での相対的な上または下を意味する場合がある。
【0012】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明に基づく実施の形態1における検出装置について説明する。本実施の形態における検出装置の概念を
図1に示す。
【0013】
本実施の形態における検出装置は、第1センサ部としての第1圧電フィルムセンサ41と、第1圧電フィルムセンサ41が生体1から受け取った変位に基づいて変位可能なように、第1圧電フィルムセンサ41を支持する第1弾性部材131と、第1圧電フィルムセンサ41から得られる電気信号を元に生体1の生体情報を生成する信号処理部3とを備える。
【0014】
ここでいう「第1圧電フィルムセンサ41が生体1から受け取った変位」とは、生体1から直接受け取った変位だけでなく他の部材を介して間接的に受け取った変位も含む。
【0015】
生体1は、ヒトの体であってもよく、ヒト以外の生物の体であってもよい。ここでは、生体1がヒトの体であるものとして、説明を続ける。
【0016】
本実施の形態では、第1圧電フィルムセンサ41は、変位可能なように支持されているので、生体1から受け取った変位に基づいて第1圧電フィルムセンサ41自体に変位が生じ、この変位に起因して電気信号が生じる。本実施の形態では、この電気信号を元に生体1の生体情報を生成する信号処理部3を備えるので、生体情報を得ることができる。
【0017】
本実施の形態では、生体1から第1圧電フィルムセンサ41に変位が伝わりさえすればよいので、生体1の近傍に密閉空間を作る必要はない。したがって、装着していることによって生体1に与える違和感をなるべく少なくすることができる。
【0018】
以上のように、本実施の形態によれば、生体から生体情報を検出するために、簡便で使いやすく、また、装着していることによって生体に与える違和感をなるべく少なくした検出装置とすることができる。
【0019】
なお、第1弾性部材131は、ウレタン系またはシリコーン系の弾性材料を主材料とすることが好ましい。この構成を採用することにより、第1圧電フィルムセンサ41が生体1から受け取った変位に基づいて変位可能なように、第1圧電フィルムセンサ41を支持する構造を容易に実現することができる。第1弾性部材131の厚みは、たとえば0.5mm以上1mm以下であることが好ましい。ただし、第1弾性部材131の材料は、上述の種類に限定されるものではない。第1弾性部材131の材料は、たとえばエラストマー、ゴムなどの弾性材料であってもよい。
【0020】
なお、前記生体情報はたとえば脈拍であってもよい。脈動によって生体1の表面が変位し、この変位を第1圧電フィルムセンサ41が直接または間接的に受け取って電気信号に変換し、信号処理部3がこの電気信号を処理することによって生体情報としての脈拍を得ることができる。
【0021】
(実施の形態2)
図2を参照して、本発明に基づく実施の形態2における検出装置について説明する。本実施の形態における検出装置の概念を
図2に示す。
【0022】
本実施の形態における検出装置は、実施の形態1で説明した構成に加えて、第2弾性部材132を備える。第2弾性部材132は、生体1に当接可能である。第2弾性部材132は、生体1から受け取った変位を第1センサ部としての第1圧電フィルムセンサ41に伝達可能なように第1圧電フィルムセンサ41に当接して配置されている。
【0023】
第2弾性部材132は、第1弾性部材131と同様にウレタン系またはシリコーン系の材料で形成されていてもよい。第2弾性部材132は、たとえばエラストマー、ゴムなどの弾性材料で形成されたものであってよい。
【0024】
本実施の形態においても、実施の形態1で説明したような効果を得ることができる。本実施の形態では、第2弾性部材132が生体1と第1圧電フィルムセンサ41との間に介在することによって、振動の高周波成分をカットすることができ、その結果、第1圧電フィルムセンサ41において得られる電気信号が安定する。
【0025】
本実施の形態で示したように、第2弾性部材132が生体1と第1圧電フィルムセンサ41との間に介在することによって、第1圧電フィルムセンサ41が直接生体1に接触しない構造を実現することができるので、第1圧電フィルムセンサ41の耐久性を向上することができる。ここでいう耐久性とは、耐摩耗性、防水性などの観点から把握されるものである。
【0026】
実施の形態1,2では、あくまで概念的な構成を示した。このあと、より具体的な構成の例について説明する。
【0027】
(実施の形態3)
図3~
図8を参照して、本発明に基づく実施の形態3における検出装置について説明する。本実施の形態における検出装置の側面図を
図3に示す。この検出装置は、イヤホンである。
【0028】
本実施の形態における検出装置101は、第1センサ部としての第1圧電フィルムセンサ41および第1弾性部材としてのクッション材31(後述)を保持する筐体2を備える。この検出装置は、第2弾性部材としてスタビライザ32を備える。第1弾性部材としてのクッション材31は、第1圧電フィルムセンサ41が生体1から受け取った変位に基づいて変位可能なように、第1圧電フィルムセンサ41を支持する。
【0029】
検出装置101が備える筐体2を単独で取り出したところを
図4に示す。筐体2は、生体1の外耳道に挿入されるための挿入部10を含む。挿入部10においては、筐体2の外周を取り囲むようにガイド溝21が設けられている。ガイド溝21の幅Bは、たとえば2.5mmであってよい。ガイド溝21が設けられている部分の直径は、たとえば15mmであってよい。スタビライザ32はガイド溝21に嵌め込むようにして取り付けられている。
【0030】
生体1が人体である場合、生体1の耳は、たとえば
図5に示すような構造となっている。耳孔8の前側に耳珠7と呼ばれる突起がある。耳珠7の近傍には、動脈5が通っている。検出装置101の挿入部10が外耳道に挿入されたときの状況を、
図6に示す。スタビライザ32は、挿入部10が外耳道9に挿入されたときに生体1のうち外耳道9に隣接する部位に当接するように配置されている。ここでいう「外耳道9に隣接する部位」は、
図5および
図6に示される耳珠7である。
【0031】
筐体2からは、一方に向かって音道管12が突出している。音道管12にはイヤーピース11が接続されている。イヤーピース11は弾性部材で形成されていてもよい。イヤーピース11には貫通孔が設けられており、この貫通孔が音道管12と連通することによって、通路17が形成される。筐体2の中心軸81に対して、通路17の中心軸82は、平行ではなく、一定角度だけ異なっている。筐体2の内部には、スピーカー13、プリント基板14、バッテリ15、プリント基板16が収納されている。バッテリ15は、たとえばコイン型バッテリである。プリント基板14,16は、バッテリ15を挟み込むように配置されている。これらの配置は、あくまで一例として示すものであり、この通りとは限らない。
【0032】
筐体2の内面に沿って第1圧電フィルムセンサ41が配置されている。第1圧電フィルムセンサ41を、筐体2の中心から外に向かって押圧するように第1弾性部材としてのクッション材31が配置されている。
【0033】
第1圧電フィルムセンサ41およびその近傍を拡大したところを
図7に示す。第2弾性部材としてのスタビライザ32は突起18を有する。筐体2は開口部19を有する。突起18は開口部19を通って第1圧電フィルムセンサ41に当接している。第1圧電フィルムセンサ41のスタビライザ32とは反対側の面には第1弾性部材としてのクッション材31が当接している。すなわち、第1圧電フィルムセンサ41は、少なくとも一部の領域において、クッション材31とスタビライザ32とによって挟み込まれている。突起18の外径は、0.5mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
【0034】
生体1の内部に位置する動脈5において発生している拍動は、皮膚4を通じて第2弾性部材としてのスタビライザ32に伝わり、さらに、第1圧電フィルムセンサ41に伝わる。第1圧電フィルムセンサ41は、クッション材31に押さえられているが、変位することはできるので、受け取った拍動に対応して変位する。その結果、第1圧電フィルムセンサ41は変位を電気信号に変換して出力する。この電気信号を元に、信号処理部3が生体1の生体情報を生成する。
【0035】
検出装置101の主な部分の分解図を
図8に示す。この図に示されるように、第1圧電フィルムセンサ41は環状であってもよい。ここでは第1圧電フィルムセンサ41が環状かつ帯状であるものとして示したが、これはあくまで一例であり、第1圧電フィルムセンサ41は、短冊状であってもよい。第1圧電フィルムセンサ41が短冊状である場合には、筐体2の内周面に沿って円弧状に配置することが好ましい。クッション材31は、環状であってもよい。クッション材31は、第1圧電フィルムセンサ41の内側に配置されて内から外に向かって第1圧電フィルムセンサ41を押圧するように配置される。筐体2は、複数の部品に分割することができる。
図8で示す例では、筐体2は、トップカバー2aとミドルカバー2bとを含む。第2弾性部材としてのスタビライザ32は、内面に複数の突起18を備える。ミドルカバー2bは円筒状部分に複数の開口部19を有する。
図8に示す例では、複数の突起18はスタビライザ32の全周にわたって配列されているが、全周ではなく一部の区間のみに配置されていてもよい。
図8に示す例では、複数の開口部19はミドルカバー2bの全周にわたって配列されているが、全周ではなく一部の区間のみに配列されていてもよい。スピーカー13およびプリント基板14は、トップカバー2aの内部に収容される。
【0036】
本実施の形態では、生体1の外耳道に挿入されるための挿入部を含み、第2弾性部材が適切な位置に配置されているので、この検出装置は、容易に装着することができ、一旦装着したときには、第2弾性部材を生体1の所望の部位に安定して当接させることができる。したがって、適正に生体1から変位を受け取り、生体情報を得ることができる。すなわち、実施の形態1で述べたような効果を容易に得ることができる。
【0037】
本実施の形態で示したように、第2弾性部材としてのスタビライザ32は突起18を備え、筐体2は開口部19を有し、突起18は開口部19を通って第1センサ部としての第1圧電フィルムセンサ41に当接することが好ましい。この構成を採用することにより、第2弾性部材から第1圧電フィルムセンサ41に変位を的確に伝えることができる。
【0038】
(実施の形態4)
図9を参照して、本発明に基づく実施の形態4における検出装置について説明する。本実施の形態における検出装置102は、イヤホンである。検出装置102の挿入部が外耳道9に挿入されたときの状況を、
図9に示す。検出装置102は、第2弾性部材としてスタビライザ32iを備える。スタビライザ32iはスカート状に広がる部分を含んでおり、生体1の当接することによって矢印で示すように内側に向かって弾性変形することが可能である。他の部分の構成は、実施の形態3で述べたものと同様であるので、説明を繰り返さない。
【0039】
本実施の形態においても、実施の形態1で述べたような効果を得ることができる。本実施の形態では、第2弾性部材としてスタビライザ32iを備えるので、生体1の装着箇所周辺の実際のサイズに合わせて弾性変形してフィットすることができる。
【0040】
(実施の形態5)
図10を参照して、本発明に基づく実施の形態5における検出装置について説明する。本実施の形態における検出装置103は、イヤホンである。検出装置103の挿入部が外耳道9に挿入されたときの状況を、
図10に示す。検出装置103は、第2弾性部材としてスタビライザ32jを備える。スタビライザ32jの内側においては、筐体2は、第1圧電フィルムセンサ41および第1弾性部材としてのクッション材31を保持するための構造としてガイド溝を備える。筐体2はガイド溝を有し、第1センサ部としての第1圧電フィルムセンサ41はガイド溝に沿って配置されている。このガイド溝は、筐体2の内面に設けられている。
【0041】
本実施の形態においても、実施の形態1で述べたような効果を得ることができる。本実施の形態では、筐体2に、第1圧電フィルムセンサ41および第1弾性部材としてのクッション材31を保持するためのガイド溝が設けられているので、第1圧電フィルムセンサ41が安定して適正な位置に保持されている。したがって、衝撃、振動などに強い検出装置とすることができる。
【0042】
なお、実施の形態3~5では、第1圧電フィルムセンサ41は、筐体2の円筒状の部分の内周面において、第1圧電フィルムセンサ41の長手方向が筐体2の周方向に一致するように、円弧状に配置されていた。これらの例で示したように、第1センサ部としての第1圧電フィルムセンサ41は、円弧状に配置されていることが好ましい。この構成を採用することにより、生体1の表面との接触箇所を確保しやすくなり、生体1に生じている変位をより確実に検出できるようになる。第1圧電フィルムセンサ41を円弧状に配置する場合、円周の1/4以上の範囲にまたがるように配置されることが好ましい。
【0043】
なお、
図11~
図19を参照して、より抽象化したモデルについて説明する。
図11に示す例では、筐体2に設けられた凹部に第1弾性部材としてのクッション材31が収容されており、第1圧電フィルムセンサ41は、このクッション材31によって支持されている。第1圧電フィルムセンサ41は生体1に直接接している。このような構成であってもよい。
【0044】
第1弾性部材としてのクッション材31は、必ずしも第1圧電フィルムセンサ41の全面に接していなくてもよい。クッション材31は、第1圧電フィルムセンサ41の面の一部にのみ接する形であってもよい。第1弾性部材としてのクッション材31は、第1圧電フィルムセンサ41の変位を妨げない範囲で存在していればよい。たとえば
図11に示した例の変形例として、
図12または
図13に示すような構成も考えられる。
図12に示した例では、第1弾性部材としてのクッション材31の中央に凹部が設けられており、この部分では、第1圧電フィルムセンサ41はクッション材31とは接していない。
図13に示した例では、第1弾性部材としてのクッション材31は、第1圧電フィルムセンサ41の中央部のみに接することによって第1圧電フィルムセンサ41を支持している。これらの構成であってもよい。ここでは、クッション材31に凹部を設ける例を示したが、凹部に限らずクッション材31を貫通する孔であってもよい。
【0045】
たとえば第1圧電フィルムセンサ41のたわみ量が微小である場合に、クッション材31に凹部または貫通孔として設けたこのような空間を利用して第1圧電フィルムセンサ41のたわみを容易にすることで、第1圧電フィルムセンサ41のたわみ量をなるべく大きく検出することができる。
【0046】
図14に示す例では、第1弾性部材としてのクッション材31が筐体2によって保持されている。第1圧電フィルムセンサ41は、クッション材31によって背後から支持されており、前に向かって脱落しないように筐体2によって拘束されている。筐体2よりさらに前側には、第2弾性部材としてスタビライザ32が配置されている。筐体2には開口部があり、開口部を通じてスタビライザ32の突起が第1圧電フィルムセンサ41に向かって進入しており、この突起の先端は、第1圧電フィルムセンサ41に当接している。このような構成であってもよい。スタビライザ32は、必ずしも環状になっている必要はなく、突起ごとに分離された形状であってもよい。
【0047】
第1弾性部材としてのクッション材31は、必ずしも第1圧電フィルムセンサ41の全面に接していなくてもよいので、
図14に示した構成の変形例として、
図15または
図16に示すような構成も考えられる。
図15に示した例では、第1弾性部材としてのクッション材31の中央に開口部が設けられており、この部分では、第1圧電フィルムセンサ41はクッション材31とは接していない。
図16に示した例では、第1弾性部材としてのクッション材31は、第1圧電フィルムセンサ41の中央部のみに接することによって第1圧電フィルムセンサ41を支持している。これらの構成であってもよい。
【0048】
図17に示す例では、第1弾性部材としてのクッション材31が筐体2によって保持されている。第1センサ部としての第1圧電フィルムセンサ41は、第1弾性部材としてのクッション材31によって包み込まれている。第1圧電フィルムセンサ41は、生体1には直接は接していない。このような構成であってもよい。
【0049】
第1弾性部材としてのクッション材31は、必ずしも第1圧電フィルムセンサ41の全面に接していなくてもよいので、
図17に示した構成の変形例として、
図18または
図19に示すような構成も考えられる。
図18に示した例では、第1弾性部材としてのクッション材31のうち第1圧電フィルムセンサ41より下側の部分の中央に開口部が設けられており、この部分では、第1圧電フィルムセンサ41はクッション材31とは接していない。クッション材31は外縁部で第1圧電フィルムセンサ41を支持している。
図19に示した例では、第1弾性部材としてのクッション材31のうち第1圧電フィルムセンサ41より下側の部分では、第1圧電フィルムセンサ41の中央部のみに接することによって第1圧電フィルムセンサ41を支持している。これらの構成であってもよい。
【0050】
(実施の形態6)
図20~
図24を参照して、本発明に基づく実施の形態6における検出装置について説明する。本実施の形態における検出装置は、
図20に示すようなセンサユニットを備える。このセンサユニットは、アンプ回路部53と、第1圧電フィルムセンサ41と、第2圧電フィルムセンサ42とを備える。第1圧電フィルムセンサ41とアンプ回路部53とは、同軸ケーブル51によって接続されている。第2圧電フィルムセンサ42とアンプ回路部53とは、同軸ケーブル52によって接続されている。アンプ回路部53は、基板54を備える。基板54にはいくつかのIC55が実装されている。基板54の1つの辺に沿って、基板54の一方の表面には、Vdd端子56、GND端子57、Vout1端子58、Vout2端子59が設けられている。Vdd端子56は、このセンサユニットを動作させるための電源を与えるための入力端子である。Vout1端子58は、第1圧電フィルムセンサ41の出力端子であり、アナログの電気信号が出力される。Vout2端子59は、第2圧電フィルムセンサ42の出力端子であり、アナログの電気信号が出力される。アンプ回路部53は、図示しない配線により、
図1および
図2に示した信号処理部3に接続されている。
【0051】
本実施の形態における検出装置104の側面図を
図21に示す。検出装置102の平面図を
図22に示す。
図21においてもイヤーピース11および音道管12が示されているが、実際には、イヤーピース11および音道管12は、
図21において紙面奥側に傾くように延在している。
図22では、そのことが示されている。
図22における右側は、
図21における紙面奥側である。
図22における左側は、
図21における紙面手前側である。第2弾性部材としてのスタビライザ32は、円環状に設けられている。
図21におけるXXIII-XXIII線に関する矢視断面図を
図23に示す。
図23に示すように、スタビライザ32の内側に、第1圧電フィルムセンサ41および第2圧電フィルムセンサ42が配置されている。第1圧電フィルムセンサ41および第2圧電フィルムセンサ42のさらに内側に第1弾性部材としての環状のクッション材31が配置されている。第1圧電フィルムセンサ41および第2圧電フィルムセンサ42の各々は、クッション材31とスタビライザ32とによって挟み込まれている。クッション材31のさらに内側には、スピーカー13が配置されている。
図23に示される断面部分には筐体2が図示省略されているが、実際には、第1圧電フィルムセンサ41とスタビライザ32との間に筐体2が存在する。筐体2には複数の開口部が設けられており、スタビライザ32はこれらの開口部を通じて第1圧電フィルムセンサ41に接している。
【0052】
検出装置104は、基本的には実施の形態3で述べた検出装置101と同様の構成を備えている。さらに、検出装置104は、変位可能な状態で保持された第2センサ部としての第2圧電フィルムセンサ42を備える。信号処理部3が生体1の生体情報を生成する際には、第1圧電フィルムセンサ41から得られる第1電気信号と第2圧電フィルムセンサ42から得られる第2電気信号との差から前記生体情報を生成する。このように2つの圧電フィルムセンサから得られる電気信号を用いて生体情報を生成する様子の一例を
図24に示す。
図24におけるAは、第1圧電フィルムセンサ41から得られる第1電気信号である。
図24におけるBは、第2圧電フィルムセンサ42から得られる第2電気信号を反転させたものである。AとBとを足し合わせることによって、Cの電気信号が得られる。Bは第2電気信号を反転したものであるので、Cは、第1電気信号と第2電気信号との差に相当する。ここで示す例では、電気信号Cは脈拍を表す。
【0053】
本実施の形態では、生体1から受け取った変位に基づいて変位可能なように、第1弾性部材によって支持されている第1圧電フィルムセンサ41と、単に変位可能な状態で保持された第2圧電フィルムセンサ42との両方を備えており、これらの2つの圧電フィルムセンサからそれぞれ得られる第1電気信号と第2電気信号との差から生体情報を生成するので、生体1が体を動かしたり発声したりすることによって生じる変位、あるいは、外部から伝わってくる音によって生じる変位は除去され、真に測定すべき変位のみを検出することが容易となる。
図24に示した例でいえば、電気信号A,Bから電気信号Cを生成することにより、真に測定すべき変位のみを検出することができる。「変位」を「振動」に読み替えても同様である。
【0054】
本実施の形態で示したように、第1センサ部としての第1圧電フィルムセンサ41と第2センサ部としての第2圧電フィルムセンサ42とは、同一円周上に沿って互いに離隔して配置されていることが好ましい。この構成を採用することにより、第1圧電フィルムセンサ41では生体1からの測定対象変位を含む変位を検出し、第2圧電フィルムセンサ42では生体1からの測定対象変位を含まない変位を検出するという、区別を明確にすることができ、より正確な測定を行なうことができる。
【0055】
第1センサ部としての第1圧電フィルムセンサ41と第2センサ部としての第2圧電フィルムセンサ42とは、互いに対向する位置に配置されている。この構成を採用することにより、生体からの測定対象変位を含むか否かをより明確に区別することができる。第1圧電フィルムセンサ41と第2圧電フィルムセンサ42とがなす角度は180°であれば好ましいが、たとえ180°でなくても、90°以上180°以下であることが好ましい。一方、この角度が90°未満であるような構成を排除するものではない。
【0056】
ここでは、検出装置が2つの圧電フィルムセンサを備えてこれらの間で電気信号の差を得ることで所望の生体情報を検出する例を示したが、3つ以上の圧電フィルムセンサを備えていてもよい。圧電フィルムセンサが3つ以上備わっている場合には、生体情報を適切に検出できるいずれか2つの圧電フィルムセンサの組合せをその都度選択できることが好ましい。
【0057】
第1センサ部は、振動探知センサを含むことが好ましい。振動検知センサは、フィルム状であることが好ましい。振動検知センサは、圧電フィルムセンサであることが好ましい。
【0058】
なお、これまでの複数の実施の形態に共通していえることであるが、検出装置において、第1圧電フィルムセンサ41は、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリ乳酸などの有機圧電フィルムを含むか、あるいは、圧電性を有するセラミック箔などの圧電フィルムを含むことが好ましい。特に、圧電フィルムセンサは、ポリ乳酸を含むものであることが好ましい。ポリ乳酸は他の圧電材料と異なり、焦電性を有さない材料である。焦電性を有する圧電材料が人体の周辺などで使用される場合、体温に反応して電荷が発生するので、この電荷がノイズとなってセンサ出力に現れる。脈拍のような、体表面に現れる微細な皮膚振動を検出しようとした際、焦電性によって生じるノイズの影響は大きく、脈拍によって生じた電荷との分離が困難なケースがある。
【0059】
ここでいうポリ乳酸は、L型ポリ乳酸であることが好ましい。第1圧電フィルムセンサ41は、L型ポリ乳酸からなるフィルムを一軸延伸して分子を配向させることによって、圧電性をもたせたフィルムを含む。第1圧電フィルムセンサ41は、たとえば、
図25に示すように、ポリ乳酸層60を電極61,62で挟み込んだ構造を含んでいてよい。ここでは、第1圧電フィルムセンサ41について説明したが、第2圧電フィルムセンサ42についても同様である。
【0060】
検出装置は、スピーカー13を備えることが好ましい。この構成を採用することにより、検出装置に、イヤホンとしての機能をもたせることができる。検出装置を装着している生体は、スピーカー13から出る音声を聴くことができ、同時に、検出装置は生体情報の検出を行なうことができる。
【0061】
なお、上記実施の形態のうち複数を適宜組み合わせて採用してもよい。
ここでは、検出装置がイヤホンである例を主に説明したが、検出装置はイヤホン以外のものであってもよい。たとえば、検出装置は、マスク、眼鏡、ゴーグル、ヘルメット、帽子、首輪、腕時計、リストバンド、乗り物のハンドル、ゲーム機のコントローラ、パッド貼付型筋力トレーニンググッズなど、生体が身に付ける何らかの装着物であってもよい。これらの装着物の生体に当接する部分において、
図11~
図19に例示したような構造を適宜採用することにより、所望の生体情報を検出することができる。生体情報の一例として脈拍を検出した場合の、検出結果のユーザ向け出力の一例を
図26に示す。
【0062】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0063】
1 生体、2 筐体、2a トップカバー、2b ミドルカバー、3 信号処理部、4 皮膚、5 動脈、7 耳珠、8 外耳孔、9 外耳道、10 挿入部、11 イヤーピース、12 音道管、13 スピーカー、14 プリント基板、15 バッテリ、16 プリント基板、17 通路、18 突起、19 開口部、21 ガイド溝、30,31 クッション材、32,32i,32j スタビライザ、41 第1圧電フィルムセンサ、42 第2圧電フィルムセンサ、51,52 同軸ケーブル、53 アンプ回路部、54 基板、55 IC、56 Vdd端子、57 GND端子、58 Vout1端子、59 Vout2端子、60 ポリ乳酸層、61,62 電極、81,82 中心軸、91 矢印、101,102,103,104 検出装置、131 第1弾性部材、132 第2弾性部材。