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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】レーザー式ガス分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/39 20060101AFI20230220BHJP
【FI】
G01N21/39
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019071772
(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公開番号】P2020169910
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000161932
【氏名又は名称】京都電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083172
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 豊明
(72)【発明者】
【氏名】石倉 昌明
(72)【発明者】
【氏名】川島 伸治
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-038877(JP,A)
【文献】特開2006-125848(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0236323(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - G01N 37/00
B01J 2/00 - B01J 49/90
B05B 1/00 - B05B 17/08
B08B 1/00 - B08B 17/06
B24C 1/00 - B24C 11/00
B28B 1/00 - B28B 23/22
F16L 1/00 - F16L 59/22
F23J 1/00 - F23J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光窓を介して測定対象空間に照射するレーザーを出射する発光部と、前記測定対象空間を通過したレーザーを受光窓を介して受光する受光部とを備えるレーザー式ガス分析装置において、
ブラストガスが充填された高圧タンクと、
前記発光窓または受光窓と前記測定対象空間の間に挿入された光路管と、
先端が前記光路管の前記測定対象空間側に連通し、後端に前記高圧タンクを着脱可能な接続口を設けたブラスト管と、
前記ブラスト管と接続口との間に設けられた電磁弁と、
前記電磁弁の開閉制御をする開閉制御ユニットと
を備え、
前記開閉制御ユニットが、
前記発光部から前記受光部へのレーザーの透過率を演算する演算部と、
前記演算部が所定の閾値以下の透過率を示したときに前記電磁弁を所定時間開く制御部と、
前記電磁弁を所定間隔毎に所定時間開くタイマーと
を備えたことを特徴とするレーザー式ガス分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー式ガス分析装置に関し、特に、取付フランジ内部の塵埃の堆積を防止したレーザー式ガス分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、煙道(測定対象空間)に対してレーザーガス分析装置を適用した例を示し、図6はその発光側を立体図として示したものであり、例えばUS特許第9244003号公報の内容をより模式化して表したものである。
【0003】
発光部100から出射されたレーザー光は、発光窓110を介して測定対象空間である煙道30に出射され、煙道30を通過したレーザー光は受光窓210を介して受光部200に受光される。ここで、発光部100、受光部200と前記測定対象空間である煙道30は前記発光窓110、受光窓210で仕切られている。
【0004】
前記発光部100の発光窓110の煙道30側に取付フランジ41aが設けられ、当該取付フランジ41aと発光窓110の間に、後述するパージガスの接続口131が設けられる。他方、煙道30からは所定の高さの立上げ管42が連通しており、当該立上げ管42の先端に前記取付フランジ41aに対応する固定フランジ41bが設けられて設置台40を構成している。当該固定フランジ41bに対して前記取付フランジ41aが固定され、これによって、前記発光部100が煙道30の設置台40に固定されることになる。
【0005】
上記のように煙道30に発光部100が取り付けられた状態で、パージガスの接続口131に別途用意されたパージガスのタンクを接続し、前記立上げ管42に常時50~100L/min程度のパージガスを流して、前記発光部100の窓110を清浄に保つようにしている。この構成は、受光部200の窓210の測定対象空間側にも設けられ、受光部200の窓210も清浄に保つようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】US特許第9244003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように、発光窓110の測定対象空間側、受光窓210の測定対象空間側に常時50~100L/min程度のパージガスを流すことで、前記発光窓110、受光窓210に対する粉塵の付着を低減し、受光強度の低下を抑制している。
【0008】
しかしながら、都市ゴミ焼却施設のように種々の種類の焼却物がある場合、煙道には測定対象ガスの他に吸着性の高い共存ガスや水分、塵埃等も含まれる。このため、煙道内の流速によっては、光路となる前記設置台40の前記立上げ管42の内部に粉塵が堆積し、光路管が閉塞していくことにより受光部200で受光されるレーザー光の強度が低下して測定値にS/N比の低下を引起すことになる。
【0009】
上記パージガスを流す方法は短時間のプロセスの運用については有効であるが、長時間の運用では前記立上げ管42付近の内部に塵埃が堆積して閉塞する現象が見られ、十分とはいえないのが現状である。
【0010】
本発明は、上記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、長時間の運用であっても光路が確保できるレーザー式ガス分析装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、発光窓を介して測定空間に照射するレーザーを出射する発光部と、前記測定対象空間を通過したレーザーを受光窓を介して受光する受光部とを備えるレーザー式ガス分析装置において、以下の高圧タンク、光路管、ブラスト管、電磁弁、開閉制御ユニットより構成される。
【0012】
前記高圧タンクにはブラストガスが充填され、光路管が前記発光窓または受光窓と測定対象空間の間に挿入される。更に、ブラスト管の先端(測定対象空間側)が前記光路管に連通し、当該ブラスト管の後端に前記高圧タンクを着脱可能な接続口を設ける。前記接続口とブラスト管の間には電磁弁が設けられ、更に前記電磁弁を開閉制御する開閉制御ユニットが設けられる。
【0013】
前記開閉制御ユニットとしては、前記電磁弁を所定間隔毎に所定時間開くタイマーと、発光部から受光部へのレーザーの透過率を演算する演算部を設けて、開閉制御ユニットが前記タイマーによる制御とともに、前記透過率に応じて所定時間開く構成とする。
【発明の効果】
【0014】
上記構成によって、必要に応じてブラストガスを設置台の立上げ管の内部に噴出することができるので、付着した粉塵を効率よく吹き飛ばすことができ、長期の使用にも耐えることになる。特に、光路管の透過率に基づく電磁弁の制御と、タイマーに基づく電磁弁の制御を併用するのが効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明全体の斜視図である。
図2】本発明の分解斜視図である。
図3】本発明の制御ユニットを示すブロック図である。
図4】本発明によるブラスト制御を説明する図である。
図5】従来のレーザー式ガス分析装置の概念図である。
図6図5の発光側を示す立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明全体の斜視図であり、図2はその分解斜視図である。尚、発光側と受光側は対称構造であるので、図1図2では発光側についての構造のみを示している。
【0017】
前記したように、発光部100の発光窓110の煙道30側に前記取付フランジ41aが設けられ、煙道30の立上げ管42の後端には、当該取付フランジ41aに符合した固定フランジ41bが設けられている。
【0018】
一方、ブラスターユニット300は以下の構成となっている。
【0019】
所定長さの光路管50の後端(発光部側、受光部側)には前記取付フランジ41aに符合するフランジ51aが、また、先端(煙道側)には前記固定フランジ41bに符合するフランジ51bが設けられる。前記光路管50に連通してブラスト管52の先端が、前記光路管50の軸方向に対して鋭角に、かつ前記フランジ51b側に連通され、当該ブラスト管52の後端には、電磁弁54を介して圧縮タンク60の接続口55が設けられた構成となっている。
【0020】
上記のように構成されたブラスターユニット300を前記取付フランジ41aと設置台40の固定フランジ41bの間に挿入し、取付フランジ41aとフランジ51a、固定フランジ41bとフランジ51bを固定する。これによって、発光部100(受光部200)と煙道30の設置台40との間にブラスターユニット300が固定されたことになり、更に、前記接続口55に窒素ガスあるいは計装空気の圧縮タンク60を接続する。
【0021】
上記構成により、前記電磁弁54を開けることによって、前記光路管50の前記煙道30への開口部付近に堆積した塵埃を吹き飛ばすことができることになる。
【0022】
図3は、前記電磁弁54の開閉を制御するための制御回路を示すブロック図である。
【0023】
発光部100の発光制御部141より数十~数百Hz程度の鋸波に数十~百kHz程度の正弦波を重畳した駆動電流が発光モジュール142に印加され前記発光窓110より波長可変レーザーが発光される。当該レーザーは測定対象空間(煙道30)を透過後受光部200の受光モジュール242で受光され、光電変換されて演算部241に入力される。演算部241では、主として前記測定対象空間での測定対象ガスの濃度が演算されるが、本発明では前記濃度の演算に加えて、透過率、すなわち、発光モジュール142から発光した光の強度に対して受光モジュール242で受光された光の強度(受光強度/発光強度)がどの位になっているかも演算する。
【0024】
このようにして得られた発光強度に対する受光強度の割合はブラスト制御部243に入力され、ここで前記受光強度/発光強度が所定の閾値(例えば10%)以下である場合には、当該ブラスト制御部243が、発光側および受光側の電磁弁54を所定時間開くようになっている。これによって、前記透過率に応じた電磁弁54の開閉制御が可能となる。
【0025】
また、本発明ではタイマー245の出力をブラスト制御部243に入力して、所定時間間隔ごとに電磁弁54の開閉をすることもできる構成となっている。当該タイマー245による制御は単独で用いてもよいが、後述するように、前期透過率に基づく制御と併用するのが好ましい。
【0026】
図4は、上記の上記制御の様子を示すものである。図4(a)は同図(b)に示すようにタイマー245を用いて60分おきに前記ブラスターユニットの電磁弁54を開いた場合のレーザー光の透過率を示すものである。60分おきのブラストでは煤等が光路に堆積することでかなりの透過率の低い部分が生じている。この状態でガス濃度の測定を継続すると、S/N比の低下を引き起こし、極端に高い、あるいは低い濃度をノイズとして提示する測定結果が現れるおそれがあることになる。
【0027】
図4(a)の急激に透過率が下がる間隔を考慮して前記同様、タイマーで等時間間隔でのブラストをしようとすると、例えば図4(c)に示すように、10分おき程度になるが、これではあまりにブラストガスの無駄が多くなる。
【0028】
図4(d)は、60分に一度は前記電磁弁54を開くが、それに加えて前記演算部241で得られた透過率が10%を下回ったときに前記電磁弁電磁弁54を開けるようにした場合を示すものである。
【0029】
これによって、効率的な堆積物の除去をすることが期待できることになる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明したように、付着した粉塵を効率よく吹き飛ばすことができ、長期の使用にも耐えることになる。
【符号の説明】
【0031】
30 煙道
40 設置台
41a 取付フランジ
41b 固定フランジ
42 立上げ管
50 光路管
51a、51b フランジ
52 ブラスト管
54 電磁弁
55 接続口
60 圧縮タンク
100 発光部
110 発光窓
131 接続口
141 発光制御部
142 発光モジュール
200 受光部
210 受光窓
300 ブラスターユニット
241 演算部
242 受光モジュール
243 ブラスト制御部
245 タイマー
図1
図2
図3
図4
図5
図6