(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】側溝用土砂の受籠
(51)【国際特許分類】
E03F 5/14 20060101AFI20230220BHJP
E03F 5/04 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
E03F5/14
E03F5/04 A
(21)【出願番号】P 2019081397
(22)【出願日】2019-04-23
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100079636
【氏名又は名称】佐藤 晃一
(72)【発明者】
【氏名】柳原 智
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅尚
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆男
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 利将
(72)【発明者】
【氏名】赤城 寿哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 瞬
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-003411(JP,U)
【文献】実開昭61-040492(JP,U)
【文献】実開昭63-116589(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0332453(US,A1)
【文献】実開平07-008482(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/14
E03F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側溝の深さより2倍以上の深さを有し前記上流側溝に接続して段差を構成する下流側溝に着脱可能に装着される土砂の収集用受籠であって、
前記上流側溝の溝底よりも低くなるよう前記段差に設置される1の方形箱ないし略方形箱と、前記上流側溝の溝底よりも低くなるよう前記下流側溝の長手方向に沿って並設される他の方形箱ないし略方形箱を
含み、該箱の少なくとも輪郭を構成する箇所が金属又は硬質合成樹脂製で剛性を有するか、或いは前記輪郭を構成する箇所に金属又は硬質合成樹脂製の剛体が取り付けられ、前記
箱を構成する六面体のうち、上面は開口し、上面以外の各面を構成する壁部のうち、少なくとも底部をネット又は多孔壁で形成したことを特徴とする側溝の土砂収集用受籠。
【請求項2】
前記下流側溝の両側壁は上方に向かって拡開するように傾斜して形成され、該傾斜した
下流側溝に
は受材と、受材下方に該受材より
下流側溝内に突出する水平な支持部が設けられ、前記傾斜した
下流側溝に取付けられた受材は内側面が垂直をなし、受材間に上方より装入された前記土砂収集用受籠は、前記壁部を含む全体が高剛性を有して前記支持部に係止して支持されることを特徴とする請求項1記載の側溝の土砂収集用受籠。
【請求項3】
前記土砂集用受籠は
前記下流側溝の溝底部に着床して設置されることを特徴とする請求項1記載の側溝の土砂収集用受籠。
【請求項4】
前記土砂収集用受籠は、底壁と、底壁両側の側壁とよりなり、
前記下流側溝の両側壁は上方に向かって拡開するように傾斜して形成され、
前記下流側溝に上方より装入された受籠は、底部のエッジが前記傾斜した側壁に係止して支持されることを特徴とする請求項1記載の側溝の土砂収集用受籠。
【請求項5】
前記土砂収集用受籠は、少なくとも底壁と流れ方向前後の側壁がネット又は多孔壁で、
前記下流側溝の底部には台座が設置され、該台座上に設置される土砂収集用受籠の下部には台座の内外に水路が形成されることを特徴とする請求項1記載の側溝の土砂収集用受籠。
【請求項6】
前記箱は、前記六面体のうち、下流側の面に止水板を有することを特徴とする請求項5記載の側溝の土砂収集用受籠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば林道、法面、道路脇等に設置される側溝に取付けられ、該側溝に上流側より、或いは側方より流入する土砂、ごみ、木の葉等(これら土砂、ごみ、木の葉等を本明細書においては、単に「土砂」という。したがって本発明において、土砂とは、土砂以外のごみ、木の葉等雨水に混入する固形物を含むものとする。)を収集する受籠に関する。
【背景技術】
【0002】
側壁には、雨水に混入する土砂を堆積し、土砂が下流に流出しないようにするための枡が設けられていることが多い。
下記特許文献1には、側溝の集水枡に流入して堆積する土砂に関し、これを除去する装置として、方形状の枠体と、該枠体の隅角部から垂下して取付けられ、集水枡の底面に着床して支持される脚部と、枠体に対し、該枠体の上面開口から下方に向かって取付けられる土砂の収集ネットと、枠体の上面開口の周りに取付けられるネットを枠体に縛り付ける紐部材よりなり、集水枡に取付けて集水枡に流入する土砂混じりの雨水を集水し、ネット内に溜まる土砂は紐部材を解くことのよりネットごと取外して除去できるようにした装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される土砂除去装置によれば、集水枡に流入した雨水に混入する土砂収集し、ネット内に堆積する土砂をネットごと取外して土砂の処分を簡単かつ安全に行えるようにしているが、集水枡への枠体の設置、ネットの取付け取外しには手間が掛かり、またネットは変形し易く、堆積した土砂により膨らんで重量が嵩むと、余計に枠体からの取出しが容易でない、といった不具合が生じがちである。
【0005】
本発明は、側溝に取付けられる土砂の収集用受籠において、側溝への着脱が容易に行える土砂の収集用受籠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、上流側溝の深さより2倍以上の深さを有し前記上流側溝に接続して段差を構成する下流側溝に着脱可能に装着される土砂の収集用受籠であって、前記上流側溝の溝底よりも低くなるよう前記段差に設置される1の方形箱ないし略方形箱と、前記上流側溝の溝底よりも低くなるよう前記下流側溝の長手方向に沿って並設される他の方形箱ないし略方形箱を含み、該箱の少なくとも輪郭を構成する箇所が金属又は硬質合成樹脂製で剛性を有するか、或いは前記輪郭を構成する箇所に金属又は硬質合成樹脂製の剛体が取り付けられ、前記箱を構成する六面体のうち、上面は開口し、上面以外の各面を構成する壁部のうち、少なくとも底部をネット又は多孔壁で形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記下流側溝の両側壁は上方に向かって拡開するように傾斜して形成され、該傾斜した下流側溝には受材と、受材下方に該受材より下流側溝内に突出する水平な支持部が設けられ、前記傾斜した下流側溝に取付けられた受材は内側面が垂直をなし、受材間に上方より装入された前記土砂収集用受籠は、前記壁部を含む全体が高剛性を有して前記支持部に係止して支持されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記土砂収集用受籠は前記下流側溝の溝底部に着床して設置されることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記土砂収集用受籠は、底壁と、底壁両側の側壁とよりなり、前記下流側溝の両側壁は上方に向かって拡開するように傾斜して形成され、前記下流側溝に上方より装入された前記受籠は、底部のエッジが前記傾斜した側壁に係止して支持されることを特徴とする。
【0009】
請求項5に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記土砂収集用受籠は、少なくとも底壁と流れ方向前後の側壁がネット又は多孔壁で、前記下流側溝の底部には台座が設置され、該台座上に設置される土砂収集用受籠の下部には台座の内外に水路が形成されることを特徴とする。請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明において、前記箱は、前記六面体のうち、下流側の面に止水板を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、土砂収集用受籠は必要時には側溝より取外して受籠内に溜まる土砂を除去、清掃し、土砂除去後は側溝に戻すことが簡易にできるほか、少なくとも受籠の輪郭を含む箇所が金属又は硬質合成樹脂製で高剛性を有するため、土砂が堆積しても全体の変形が生じ難く、側溝に沿って並設される受籠のうちから必要のあるものを取出したり、受籠の空き箇所に受籠を装着することが容易にできる。
【0011】
請求項2に係る発明によると、受籠は全体が高剛性を有するため、側溝の両側壁にそれぞれ設けられる受材間に上方より装入されて支持部に支持され易くなり、受籠下の側溝には水路が形成されて受籠の底部より篩い落とされた雨水が前記水路を通して流出されるようになる。
【0012】
請求項3に係る発明によると、受籠は側溝溝底に単に置くだけで設置することができ、取付けのための作業が簡単で、取付器具や取付工具も不要である。
請求項4に係る発明によると、受籠は傾斜した側溝に上方から押込むだけで受籠下端のエッジが側壁に食い込んで楔効により取付けることができ、取付けた受籠下には水路を形成することができる。
【0013】
請求項5に係る発明によると、受籠は側溝の溝底に設置した台座上に単に置くだけで取付けることができ、受籠で濾された雨水等を台座の内外の水路を通して排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る土砂収集用受籠が装着される側溝の縦断面図
【
図8】一対の受籠を組合わせて一組とした受籠の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す側溝1は、上流側の側溝1aと、該側溝1aと下向きの段差を存して接続される下流側の側溝1bと、その下流側に側溝1bと段差を存して接続される側溝1cよりなって段状をなしている。そして各側溝1a、1b、1cはいずれも、
図2~
図6に示すように左右の側壁が上方に向かって拡開するように傾斜する断面略U形状で、側溝1a、1cは
図2及び
図6に示すように、同じ断面形状をなしている。
【0016】
側溝1bは上端が側溝1aと同一レベルで、底面が側溝1cの底面と面一をなし、底面までの深さは側溝1a、1cの深さより大で、およそ2倍以上となっている。
側溝1bはまた、側溝1bの左右の側壁下部にそれぞれアングル材2がケミカルアンカー3にて固着されている(
図7)。そして、アングル材2の水平部上に楔形状の受材5が傾斜した側壁1d内側面に沿わせて取り付けられている。この取付状態で受材5は、内側面が垂直となり、側溝1bの両側壁の対応位置に取付けられる前記アングル材2の水平部2aはそれぞれ受材5より内方に突出し、このアングル材2の受材5より側溝内に突出する水平部2aが土砂ボックス6の支持部となっている。
【0017】
アングル材2の水平部2a上に取付けられた左右の受材5の垂直な内側面間には、後述する土砂収集用受籠としての土砂ボックス6が上方より挿入され、挿入された土砂ボックス6は、側溝1bの左右の側壁に取付けられる受材5の下よりそれぞれ側溝内方に突出する前記アングル材の水平部2aに係止して支持されるようになっている。
【0018】
図中、7は側溝1a端部に下側より当てがわれて垂下し、側溝1bとの段差を塞ぐ塞ぎ板であり、8は側溝1c端部上に当てがわれて直上し、側溝1bとの段差を塞ぐ塞ぎ板である。
【0019】
土砂収集用受籠としての土砂ボックス6は、直方体で上面が開口する以外、他の面全体が高剛性のエキスパンドメタルで形成され、収納された土砂で容易には変形しないようにしている。このエキスパンドメタルは、例えば高剛性の金網、格子、パンチングメタル等に代えることができる。以下に述べる他の後述するエキスパンドメタルについても同様である。
【0020】
前記土砂ボックス6はまた
図8に示すように、側壁上端に外側方に突出するフランジ7を有し、一対の土砂ボックス6を一組とした土砂ボックスがフランジ同士を突き合わせるようようにして流れ方向に複数組並設されている。そして下流側の一方の土砂ボックス6には、下流側側壁のフランジ下に下流側側壁に沿わせて止水板8が前記アングル材2の水平部2a上に取付けられ、前記止水板8は、土砂ボックス6の前記下流側側壁の全面を覆い、雨水を遮断して土砂ボックス6間の雨水の流出入ができないようにしている。
【0021】
止水板8を備えた土砂ボックス6と、止水板8を有しない土砂ボックス6を一対一組として組合わせた土砂ボックス6は、
図1に示すように、側溝1b内の流れ方向全域にフランジ同士が突き合うようにして並設され、土砂ボックス下には側溝1b上に水路11が形成され、土砂ボックス6のエキスパンドメタルより構成される底壁を通った雨水は水路11を通り側溝1cに流出するようにしている。土砂ボックス内の雨水に混入する土砂等はエキスパンドメタルよりなる底壁で濾され、篩上げの土砂等が土砂ボックス内に残され、溜められる。
【0022】
土砂ボックス6にはまた、適所の土砂ボックス6の止水板8上にエキスパンドメタルよりなる堰止板13が直立して設けられ、土砂ボックス6上を越流する雨水に混じる土砂、ごみ等を濾して下流側に流出させないようにしている。詳細には、
図5に示すように、側溝1bの両側壁にそれぞれ取着される前記受材5上に別の楔状をなす受材9が受材5と同様にして側溝1b側壁に取着され、受材9間にエキスパンドメタルよりなる堰止板13が上方より装入されるようになっている。
【0023】
図示する実施形態において、堰止板13は1箇所設けられているが、側溝1b内に流れ方向に適当間隔を置いて複数設けてもよい。
【0024】
本実施形態によると、土砂やごみ等を混入した雨水は側溝1aより側溝1bを経て塞ぎ板8下を潜り抜け側溝1cに流出するが(
図1参照)、側溝1bにおいては、先ず1番目の土砂ボックス6、ついで流れ方向下流側の側壁を通って2番目の土砂ボックス6へと流入する。2番目の土砂ボックス6に流入した雨水等は、止水板8で遮られて3番目の土砂ボックス6に流出することはない。止水板8で遮られた雨水等は、1番目及び2番目の両土砂ボックス6内において、エキスパンドメタルよりなる底部で濾されて篩上げの土砂やごみ等が土砂ボックス内に残される。そして篩下の土砂やごみ等を含む残りの雨水(以下、土砂やごみ等を含む雨水を「雨水等」という)が水路11内に流入し、塞ぎ板8下を潜り抜けた雨水等と共に側溝1cに流出する。
【0025】
土砂ボックス内に残された篩上げの土砂やごみ等が土砂ボックス内に溜まるにつれ、雨水等の水路11への流出が次第に減少し、止水板8で遮られた雨水等は、両土砂ボックス6内に留まり、水嵩を次第に増していく。
【0026】
両土砂ボックス6内の雨水等が一杯になると、側溝1aより流れ込む雨水等は両土砂ボックス上を越流し、3番目、4番目の土砂ボックス6内に流入する。以後は前記した1番目、2番目の土砂ボックス6と同様の作用を生ずる。n番目、n+1番目の土砂ボックス6についても同様である。
【0027】
最後の一対の土砂ボックス6では、雨水等は止水板を有しない側壁を通り、塞ぎ板8下を潜り抜け側溝1cに流出する。
土砂ボックス6に溜まった土砂等は、清掃除去のため適時、土砂ボックス6の取出しが行われる。土砂ボックス6は受材間に装入され、アングル材2の水平部上に支持されているだけであるから、取出しは引き上げによって容易に行うことができる。
【0028】
前記実施形態では、土砂ボックス6は全体が例えば鋼製であるか、硬質樹脂製で高剛性を有し、容易には変形しないようにしているが、土砂ボックス6の輪郭を構成する軸組みを剛性を有する鋼製又は硬質樹脂製とするか、或いは剛性を有する鋼製又は硬質樹脂製の剛体の部材を添着すれば、他の壁部を例えば金網や樹脂製のネット等の剛性を有しない材質で形成することもできる。この土砂ボックス6において、軸組みが高剛性を有してしっかりし、容易に変形しないようになっていれば、軸組み以外の他の面の壁部に剛性がなく、収納された土砂で多少膨らむようなことがあっても実用上さして支障はない。
【0029】
前記実施形態ではまた、アングル材2の水平部上に側溝1bの底壁と適宜の間隙を存して支持され、これにより側溝1bには、土砂ボックス下に水路11が設けられるようになっているが、土砂ボックス6は側溝1bの底面に着床させて直置きするようにしてもよい。また上方より押込んで装入した土砂ボックス6下端のエッジが側溝1bの傾斜した壁面に食い込み、楔効果により土砂ボックス6を側溝1bに支持させるようにしてもよい。前記両者のいずれの場合においても、前記実施形態で示すような土砂ボックス6の取付具や該取付具を取付けるための工具や作業を不要にできる。
【0030】
また別の実施形態では、側溝1bの底部両側或いは溝底部に台座が取付けられ、その上に土砂ボックス6が取付けられるようにされる。土砂ボックス下には両側の台座間、或いは台座と側溝側壁間に水路が形成される。台座はまた、中空に形成して雨水等が通るようにしてもよい。
【0031】
土砂ボックス6を支持する台座はまた、溝底部に単に置くだけでよく、それ以外に取付具や取付工具を必要としない。
前記実施形態ではまた、土砂ボックス6に止水板8、更には堰止板13を設けているが、止水板8や堰止板13は必ずしも必須ではなく、削除してもよい。とくに前述するように、土砂ボックス6を側溝1の底面に着床して直置きする場合、止水板8を設けないで雨水等が土砂ボックス6を順次通って側溝1cに流出できるようにするのが望ましい。
【符号の説明】
【0032】
1a、1b,1c・・側溝
2・・アングル材
3・・ケミカルアンカー
5、9・・受材
6・・土砂ボックス
8・・止水板
11・・水路
13・・堰止板