(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】試料容器
(51)【国際特許分類】
G01N 21/03 20060101AFI20230220BHJP
G01N 21/359 20140101ALI20230220BHJP
G01N 21/3577 20140101ALI20230220BHJP
【FI】
G01N21/03 Z
G01N21/359
G01N21/3577
(21)【出願番号】P 2019082072
(22)【出願日】2019-04-23
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】597088753
【氏名又は名称】株式会社 ジャパンセル
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早田 智
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-196841(JP,A)
【文献】特開平08-219981(JP,A)
【文献】特開2006-194775(JP,A)
【文献】特開2001-041879(JP,A)
【文献】特表2003-535314(JP,A)
【文献】特開2005-121385(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0075281(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/83
G01N 31/00 - G01N 31/22
G01N 33/00 - G01N 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部内面と内側面を有する光透過性容器本体
と、光透過性部材と
スペーサを含む試料容器
において、
前記スペーサはリング形状を有し、前記光透過性容器本体と前記光透過性部材のいずれにも固定されてなく、
前記光透過性容器本体底部内面と前記光透過性部材の底部との間で、液体試料を収容するための隙間を形成可能であり、
前記スペーサの高さが、前記隙間内に収容される前記液体試料の厚さに相当し、
前記リング形状の前記スペーサが、前記光透過性部材の底部の周縁に配置可能であり、
前記光透過性部材は、前記光透過性容器本体内に設置可能で有り、
前記光透過性部材と前記光透過性容器本体の内側面との間に空間が設けられ、
前記光透過性容器本体底部内面と前記光透過性部材の底部との隙間からはみ出した前記液体試料を前記空間内で保持可能な構造を有する試料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体特性測定において、試料容器(セル)中の液体試料の厚さは一定であることが望まれる。しかしながら、試料容器内の液体試料を入れ替える毎に所定の厚さを維持することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、液体試料の交換が容易であり、かつ液体試料を所定の厚さに維持することが可能な試料容器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、光透過性容器本体と、前記光透過性容器本体内に設けられ、前記光透過性容器本体との間に液体試料を収容するための隙間を規定する光透過性部材とを含む試料容器を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明にかかる試料容器によれば、光透過性容器本体内に設けられた光透過性部材を取り外すことにより、光透過性容器本体と光透過性部材の隙間に収容された液体試料を容易に交換することができる。また、本発明にかかる試料容器によれば、光透過性容器本体内に光透過性部材を設けるだけで、液体試料を収容する隙間を容易に規定できるので、測定毎に液体試料を所定の厚さに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の試料容器を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1に、本発明の試料容器を説明するための図を示す。
図示するように、この試料容器20は、光透過性容器本体1と、光透過性容器本体1内に設けられた光透過性部材3とを有する。光透過性部材3は、光透過性容器本体1との間に液体試料7を収容するための隙間13を規定する。
光透過性容器本体1として、例えば、ガラス製の平皿(シャーレ)を用いることができる。光透過性容器本体1の外径は例えば約40mmにすることができる。また、光透過性容器本体1の外径と内径の差は、約0.4mm~30mm、さらには2mm~30mm、さらにまた10mm~30mmにすることができる。光透過性部材3は、ガラス製の円筒形状の部材であり、光透過性容器本体1に着脱可能に設けられている。着脱時には、光透過性容器本体1に対し、光透過性部材3をスライドさせることができる。
頭頂部には、一対の取っ手2が設けられている。その上部には2つの鍔14a,14bが設けられ、鍔14a,14bの間に窪み6が設けられている。また、その底部の周縁には、複数のスペーサ4が設けられている。スペーサ4は複数でなくてもよく、例えばCリング状にすることができる。取っ手2は複数設けることが可能であり、光透過性部材3の光透過性容器本体1への取り付け及び取り外しを容易にする。取っ手2を摘みやすくするために、その長さを1mm~1m、さらには5mm~20cm、さらにまた1mm~10cmにすることが可能である。また、幅は1mm~10mm、さらには3mm~5mmにすることが可能である。
【0009】
スペーサ4は、光透過性容器本体1の底部内面15と、光透過性部材3の底部16との隙間13を規定することができ、スペーサ4の高さは、収容される液体試料7の厚さを規定することができる。液体試料7の厚さは、測定条件に応じて例えば10mm以下の任意の値にすることができる。液体試料の厚さは、一定でもよいし、光透過性部材3の底部16傾斜させて厚さを変化させることもできる。また、スペーサ4を設ける位置は、試料容器20に入射する光の方向に応じて変更可能であり、光が頭頂部から底部に向けて入射する場合には光透過性部材3の底部に設けられ、例えば光が側面から入射する場合には対向する側面に設けることも可能である。スペーサ4は、光透過性容器本体1あるいは光透過性部材3に固定されていても、固定されていなくてもよい。
【0010】
また、鍔14a,14bの外径は、光透過性容器本体1の内径よりも少し小さくすることができる。これにより、鍔14bは、光透過性容器本体1の内面との間に毛細管現象が起こる狭い空間を規定することができる。例えば、試料容器20を持ち運ぶことにより、液体試料7が隙間13内を移動してこの狭い空間に入り込むと、毛細管現象で鍔14a側に吸い上げられるが、窪み6があるために空間が拡がって毛細管現象が起こらなくなり、その結果、液体試料7は狭い空間内にとどまる。このように、鍔14a,14bを設けることにより、試料容器20からの液体試料7の液漏れ防止が可能となる。光透過性容器本体1の内径と鍔14a,14bの外径との差は0.02~10mm以下、さらには0.02~2mm以下、さらにまた0.02~0.05mmにすることができる。この範囲であると、狭い空間で毛細管現象が生じ、かつ光透過性容器本体1に光透過性部材3を挿入する場合に空気が抜ける。
【0011】
鍔14a,14bの外径と窪み6の外径の差は、0.02~30mmにすることができる。窪み6が0.02mmより少ないと、液をためにくい傾向がある。30mmを超えると、加工しにくく、削るためのバイトが入らない傾向がある。鍔14a,14bの外径と窪み6の外径の差はまた、1mm~30mm、さらには10mm~30mmにすることができる。鍔14a,14bの下の部分の光透過性部材3の外径は、図示するように、窪み6の外径よりも小さく設計されており、光透過性部材3と光透過性容器本体1の内側面との間に十分な空間が設けられている。光透過性容器本体1に液体試料を入れて、光透過性部材3を挿入するとき、光透過性容器本体1底部内面と、光透過性部材3の底部との隙間からはみ出した液体試料7をこの空間で保持することができる。
【0012】
光透過性容器本体1の上部周縁に、光透過性部材3の頭頂部周縁との隙間を塞ぐように、例えばシリコーン製のoリング状の封止材5を設けることができる。
なお、ここでは、外径と外径の差、外径と内径の差などを述べているが、光透過性部材3が円筒形ではない場合には、これらは寸法の差に相当する。
【0013】
試料容器20は、例えば光、電磁波、あるいは超音波等を当てて、例えば分光特性、吸収特性、振動特性、硬度特性、あるいは粘度特性等を測定する装置の試料容器として使用できる。
分光特性を測定する装置の一例として、800~2500nmの波長を有する近赤外線を用いた、近赤外線分光装置があげられる。光透過性容器本体1及び光透過性部材3に使用される材質として透明プラスチックを使った場合、波長が1600nm以上の光の吸収が大きく、分光特性測定が難しい。従って、容器の材質は、有機物ではなく、透明無機物が望ましい。一方で、透明無機物である一般ガラス内には、-OH基による波長1400nm周辺での光吸収が大きい。このため、好ましい材質として、石英ガラス、無水石英ガラス、あるいは合成サファイヤ、合成ルビー等の合成コランダムがあげられる。
【0014】
近赤外線分光装置は、生体活動を検出することができる。具体的には、8~16のアミノ酸を有するオリゴペプチドなどの小タンパク質の分光特性の測定に使用できる。このオリゴペプチドはpHにより、αへリックス構造、あるいはβシート構造に変化し、分光特性を測定することによりいずれかを特定することができる。しかしながら、近赤外線は水に吸収されやすく、例えば液体試料としての水の厚さが1mmであると、近赤外線の約95~97%が吸収される。このため、測定毎に、液体試料の厚さを1mm以下の所定の厚さに維持することが求められる。
【0015】
30は、試料容器20を用いた組み立て試料容器の一例であり、近赤外線分光装置に使用することができる。図中、部品100,200,300,及び400は、組み立て試料容器30の各部品を展開したものである。
図示するように、部品200としての光透過性部材3は例えば1mm、0.5mm、あるいは0.2mm等の高さを有するスペーサ4を有する。光透過性部材3を、図示しない液体試料とともに、部品300としての光透過性容器本体1を挿入し、上部にoリング状の封止材5を配置することにより試料容器20が得られる。鍔14bから光透過性部材3の底部までの距離d1は約20mmにすることができる。さらに、封止材5を介して、試料容器20の上部には、部品100として中心に開孔を有する上部ジャケット10を配置する。試料容器20の下部には、例えばPET等からなるリング状のガスケット12、及び例えばステンレス等からなり中心に開孔を有する遮光板11を介して、部品400として中心に開孔を有する下部ジャケット9を配置する。この状態で上部ジャケット10と下部ジャケット9を例えばステンレス製のネジ8で締めることにより、組み立て試料容器30が得られる。下部ジャケット9底面から取っ手2までの寸法d2は約55mm以下にすることができる。
【0016】
上部ジャケット10及び下部ジャケット9は、例えばステンレス製で、各々、外径d5を45mm、開孔径d3を25mmにすることができる。また、遮光板11は例えばステンレス製であり、開孔径d4は開孔径d3より小さい20mmにすることができる。試料容器30の光透過可能な領域は測定領域となり、この場合、その大きさは遮光板11の開孔径d4に相当する20mmであり、その周囲は遮光された非測定領域となる。また、液体試料の厚さは、スペーサ4の高さに応じて1mm、0.5mm、あるいは0.2mm等に変更可能である。
【0017】
なお、
図1では、試料容器20に光透過性容器本体1及び光透過性部材3を使用しているが、試料容器20を電磁波、あるいは超音波等を当てて測定する装置に適用する場合には、光透過性容器本体1及び光透過性部材3の代わりに、光を透過しない容器本体、光を透過しない部材を使用することができる。
また、
図1では、光透過性部材3の上部に鍔14a、14bを設けているが、光透過性部材3には鍔14a、14bを設けない代わりに、光透過性容器本体1の内側面の上部に、鍔14a、14bに相当する一対の凸部と窪みを設けることも可能である。
【符号の説明】
【0018】
1…光透過性容器本体、3…光透過性部材、13…隙間、20…試料容器