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  • 特許-拘束用手袋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】拘束用手袋
(51)【国際特許分類】
   A41D 19/015 20060101AFI20230220BHJP
   A41D 19/00 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
A41D19/015 510Z
A41D19/00 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019095017
(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公開番号】P2020190048
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】石川 富雄
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3114379(JP,U)
【文献】登録実用新案第3042131(JP,U)
【文献】実公昭11-1440(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0256677(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D19/00-19/04
A61F5/37
A41D13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の手に装着して患者の手の動きを拘束する拘束用手袋であって、
一端が開口して他端が閉口している袋形状を成し、上記患者の指先から少なくとも前腕の一部までを収容するための収容部と、
上記収容部の外側に取り付けられ、上記収容部を患者の手に固定するための帯状の固定部材とを備え、
上記固定部材は、互いに対向する長辺のうち一方の長辺のみが上記収容部に取り付けられていることを特徴とする拘束用手袋。
【請求項2】
上記収容部の外側、かつ、上記収容部における上記他端から上記一端に向かう途中までの一部領域に対応する位置に形成され、上記収容部に収容された患者の手に把持させる把持物を収容するための第2の収容部を更に備え、上記収容部の上記一部領域の外面が上記第2の収容部の内面となるように構成されており、
上記固定部材は、上記収容部の外側、かつ、上記第2の収容部よりも上記一端に近い位置に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の拘束用手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拘束用手袋に関し、特に、患者の手の動きを拘束して患者が物を自由に掴むことができないようにするための手袋に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病院や介護施設などの医療・福祉現場において、患者または被介護者(以下、単に「患者」と言う)が、点滴や透析、栄養補給、排泄等などの最中に体に繋がれているチューブやカテーテルを勝手に外そうとしたり、皮膚の痒いところを掻きむしったりするという問題がある。そこで、患者がいたずらにチューブ等を外したり身体を掻きむしったりすることができないように、患者の手に取り付ける拘束用手袋を用いることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の拘束用手袋は、通気性に富んだネット地を用いて、親指と残りの四本の指とに分れるように二股に縫製した手袋に、四本の指の裏側に当接する位置に握りバーを内装し、当該握りバーの両端を手袋に固定している。また、手袋の口元部分の縁には、本手袋が脱げないように手首で縛るための紐が縫い付けてある。本手袋は、親指を除く四本の指を握りバーの上に乗せるようにして手を手袋に差し入れた後、手首に紐を回して縛ることで、患者が自分では外せないように装着される。これにより、患者が何か物を掴もうとしても握りバーが邪魔になって殆ど不可能となり、握りバーに邪魔されて指が自由にならず、直に爪を立てて皮膚を掻きむしることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-73209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の拘束用手袋は、手袋が脱げないように縛るための紐を手袋の口元部分に縫い付けた構成であるため、紐の位置が固定されており、手の大きさが異なる患者に対してそれぞれ適切な位置で紐を縛ることが難しいという問題があった。すなわち、使用中に手袋が容易に脱げないようにするためには、紐をある程度きつく縛る必要があるため、患者に痛みや不快感をできるだけ与えないように、およそ手首の位置で紐を縛ることが望まれるが、特許文献1に記載の拘束用手袋では必ずしもそれができるとは限らないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、手袋が脱げないように縛るための固定部材の位置を、手の大きさが異なる患者に応じて調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明の拘束用手袋は、一端が開口して他端が閉口している袋形状を成し、患者の指先から少なくとも前腕の一部までを収容するための収容部と、収容部の外側に取り付けられ、収容部を患者の手に固定するための帯状の固定部材とを備え、固定部材の互いに対向する長辺のうち一方の長辺のみを収容部に取り付けるようにしている。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した本発明の拘束用手袋によれば、帯状の固定部材の全面が収容部に固定されておらず、一方の長辺のみが収容部の外側に取り付けられているので、当該一方の長辺における取付部位を支点として他方の長辺を移動させ、固定部材を折り返すことが可能となる。これにより、手の大きさが異なる患者に応じて、固定部材を何れかの方向に折り返すことにより、固定部材の位置を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態による拘束用手袋の構成例を示す図である。
図2】本実施形態による固定バンドの構成例を示す図である。
図3】第2の収容部に把持物を収容した状態を示す図である。
図4】第2の収容部に把持物を収容した状態で、さらに第1の収容部に患者の手を収容した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による拘束用手袋1の構成例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は側面図、(d)は底面図を示している。また、図1(e)は、本実施形態の拘束用手袋1を装着する患者の手に把持させる把持物2の構成例を示している。以下では説明の便宜上、患者の手の挿入方向(拘束用手袋1の長さ方向)をX軸方向とし、それに直交する拘束用手袋1の幅方向をY軸方向、拘束用手袋1の厚み方向をZ軸方向とする。
【0011】
本実施形態の拘束用手袋1は、患者の手に装着して患者の手の動きを拘束するための手袋である。患者の手の動きを拘束するとは、患者が物を自由に掴んだり、患者が指先で皮膚の痒いところを掻きむしったりすることができないようにするために、患者の手を手袋で覆って固定することにより、手首から先の部分を自由には動かせないようにすることをいう。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の拘束用手袋1は、患者の指先から少なくとも前腕の一部までを収容するための第1の収容部10(特許請求の範囲の収容部に相当)と、第1の収容部10に収容された患者の手に把持させる把持物2を収容するための第2の収容部20と、第1の収容部10を患者の手に固定するための帯状の固定バンド30(特許請求の範囲の固定部材に相当)とを備えて構成される。
【0013】
第1の収容部10は、長さ方向(X軸方向)の一端11が開口し、他端12が閉口している袋形状を成している。図1(d)に示すように、第1の収容部10の一端11には開口部11aが形成されており、この開口部11aから第1の収容部10の中に患者の手を入れることができるようになっている。
【0014】
第1の収容部10は、幅方向(Y軸方向)に左右対称の形状となっている。また、第1の収容部10は、正面側および背面側から見て、他端12が円弧状に形成されており、円弧の両端部と一端11とをつなぐ両側面部が略直線状またはなだらかな曲線状に形成されている。本実施形態では、この側面部をなだらかな曲線状に形成し、かつ、一端11に近い部分で末広がりとなるような形状としている。これにより、第1の収容部10の内部空間のうち、手首より先の部分が収まる内部空間は比較的狭く、開口部11aに近い側の内部空間は比較的広くなり、開口部11aから手を挿入しやすくしつつ、手首より先の部分の動きを拘束しやすい構成としている。
【0015】
拘束用手袋1は、例えば、成人男性、成人女性、子供といった患者のタイプごとに大きさが異なるものが用意される。各タイプの拘束用手袋1における第1の収容部10の大きさは、それぞれのタイプごとに標準的な手の大きさを想定し、その想定した標準的な大きさの手を収容可能で、かつ、特に他端12に近い方(後述する一部領域13の辺り)は手首より先の部分が比較的隙間なく収容されるような大きさに構成されている。
【0016】
第1の収容部10は、この中に患者の手を長い時間入れていても、発汗等による蒸れができるだけ生じないようにするために、通気性の良い素材または速乾性のある素材で構成されている。第1の収容部10はまた、患者の手が接触しても痛みを与えないようにするため、また、想定した標準的な大きさよりも大きい手も収容できるようにするために、柔軟性および伸縮性のある素材により構成されている。通気性が良いまたは速乾性があり、柔軟性および伸縮性のある素材として、例えばメッシュ生地を用いることが可能である。
【0017】
第2の収容部20は、第1の収容部10の外側(Z軸方向の正面側)、かつ、第1の収容部10における他端12から一端11に向かう途中までの一部領域13に対応する位置に形成されている。第1の収容部10の一部領域13は、他端12から一端11に向かって所定長さの位置に仮に設定されるY軸方向の直線状の境界線よりも他端12側の全領域である。
【0018】
第2の収容部20も、長さ方向(X軸方向)の一端21が開口し、他端22が閉口している袋形状を成している。図1(d)に示すように、第2の収容部20の一端21には開口部21aが形成されており、この開口部21aから第2の収容部20の中に把持物2を入れることができるようになっている。この開口部21aが形成される第2の収容部20の一端21の位置が、第1の収容部10の一部領域13の境界線の位置と一致する。
【0019】
第1の収容部10の一部領域13の境界線の位置、つまり第2の収容部20の開口部21aの位置は、第2の収容部20に収容される把持物2の大きさに応じて設定される。すなわち、第2の収容部20に把持物2の全体が収容されるように、境界線の位置が設定される。これは、把持物2の全体が収容されるような大きさに第2の収容部20が形成されることを意味する。
【0020】
第2の収容部20が第1の収容部10の一部領域13に対応する位置に形成されるというのは、図1(a)に示すように、第1の収容部10における一部領域13の外縁と、第2の収容部20における外縁とが対向するように構成されるということである。具体的には、第2の収容部20は、第1の収容部10の外側(正面側)において、一部領域13の形状に対応するように形成された生地が外縁(開口部21aがあるところ以外の部分)に沿って縫着されて成る。図1(a)および(b)に示す点線23は、糸によって縫着された縫着部位を示している。
【0021】
第2の収容部20の生地が一部領域13の形状に対応するように形成されるとは、一部領域13の形状と生地の形状とが完全に一致する場合に限らず、生地の形状が一部領域13の形状に類似する場合を含む。例えば、一部領域13よりも第2の収容部20の生地の方が若干大きく構成されていて、生地の外縁(開口部21aになるところを除く)を一部領域13の外縁に縫着すると生地に弛みが生じるような場合も含まれる。
【0022】
以上のように、第1の収容部10の外側(正面側)において、一部領域13の形状に対応するように形成された生地を縫着することによって第2の収容部20を形成することにより、図1(d)に示すように、第1の収容部10の一部領域13の正面側の外面14が、第2の収容部20の背面側の内面24となる。つまり、第1の収容部10の一部領域13の外面14と、第2の収容部20の内面24とは同じ面であり、この同じ面で第1の収容部10の一部領域13の外面14と第2の収容部20の内面24とを形成している。以下、これを共有面14,24という。
【0023】
一部領域13の形状に対応するように形成された第2の収容部20の生地は、第1の収容部10と同じメッシュ生地により構成されている。なお、第2の収容部20の中には把持物2が収容され、患者の手は収容されないので、必ずしも通気性の良い素材または速乾性のある素材でなくてもよい。ただし、第2の収容部20の内部空間を広げて把持物2を収容できるようにするために、第2の収容部20の素材として柔軟性および伸縮性は必要である。なお、第2の収容部20の素材として、第1の収容部10よりも柔軟性および伸縮性が強い素材を用いるようにしてもよい。
【0024】
図1(b)に示すように、第1の収容部10は、患者の5本の指が分かれて収まる複数の分割収容部15,16を備えている。複数の分割収容部15,16を設けることにより、それぞれの分割収容部15,16の大きさは、第1の収容部10を複数の領域に分割しない場合に比べて狭くなる。これにより、患者の指をより狭い領域に収容することになるので、指を動かすことのできる自由度を下げることができ、患者の手の動きをより効果的に拘束することができる。
【0025】
本実施形態では、第1の収容部10の他端12における幅方向の略中央位置から一端11側に向かって、X軸方向に平行な1本の直線状に、第1の収容部10における正面側の面と背面側の面とを糸によって縫着する。これにより、第1の収容部10の他端12から一端11側に向かって所定範囲の領域を左右2つの分割収容部15,16に分けている。点線17は、糸によって縫着された縫着部位を示している。
【0026】
第1の収容部10において分割収容部15,16が形成される領域は、患者の各タイプに合わせた大きさに形成される拘束用手袋1ごとに、患者のタイプに応じた標準的な指の長さを想定し、その想定した標準的な長さの指の全体がだいたい収まるような大きさに構成される。このため、分割収容部15,16が形成される領域は、第2の収容部20に対応する一部領域13よりは狭い領域となる。
【0027】
第1の収容部10は、幅方向の略中央位置を境界として左右対称の形状をしており、この略中央位置を境界として左右に分割収容部15,16を設けることにより、2つの分割収容部15,16は同じ大きさとなる。ここで、一方の分割収容部25に親指と人差し指とを収容し、他方の分割収容部26に中指と薬指と小指とを収容する。2つの分割収容部15,16が同じ大きさなので、拘束用手袋1を患者の右手および左手のどちらにも使うことができる。このため、右手用の拘束用手袋1と左手用の拘束用手袋1とを別に構成する必要がないというメリットを有する。
【0028】
なお、ここでは2つの分割収容部15,16を設ける構成を示したが、3つの分割収容部を設ける構成としてもよい。この場合は、例えば、幅方向における一端側の第1の分割収容部に親指と人差し指とを収容し、他端側の第2の分割収容部に薬指と小指とを収容し、真ん中の第3の分割収容部に中指を収容する。なお、一端側の第1の分割収容部に親指を収容し、他端側の第2の分割収容部に小指を収容し、真ん中の第3の分割収容部に人差し指と中指と薬指とを収容する構成としてもよい。
【0029】
固定バンド30は、第1の収容部10の外側(正面側)、かつ、第2の収容部20よりも一端11に近い位置に取り付けられている。例えば、固定バンド30は第1の収容部10に縫着される。なお、固定バンド30の取付方法は縫着に限らない。例えば、固定バンド30を第1の収容部10に接着剤により接着させるようにしてもよいし、面ファスナーにより接着させるようにしてもよい。
【0030】
固定バンド30は、第1の収容部10に患者の手を入れた状態で、患者の手が第1の収容部10から抜けないようにするために、第1の収容部10を患者の手に固定するために使用するものである。固定バンド30は帯状に構成されており、これを使って第1の収容部10を患者の手に縛り付ける。このため、固定バンド30は、通気性の良い素材や速乾性がある素材である必要はなく、少なくとも柔軟性を有する素材であればよい。
【0031】
ここで、固定バンド30は、図1(a)および(c)に示すように、互いに対向する長辺のうち一方の長辺31の一部33のみが第1の収容部10に取り付けられている。すなわち、固定バンド30の全面が第1の収容部10に固定されておらず、一方の長辺31の一部33のみが第1の収容部10に取り付けられている。このため、図2のように、一方の長辺31における取付部位(一部33)を支点として、他方の長辺32を拘束用手袋1の一端11側(図2(a)参照)または他端12側(図2(b)参照)の何れかへ移動させることにより、固定バンド30を折り返すことが可能である。
【0032】
なお、本実施形態では、固定バンド30を第1の収容部10の正面側に取り付けているが、背面側に取り付けるようにしてもよい。また、本実施形態では、固定バンド30の互いに対向する長辺31,32のうち一方の長辺31の一部33のみを第1の収容部10に取り付ける構成としたが、他方の長辺32の一部のみを第1の収容部10に取り付ける構成としてもよい。また、固定バンド30の取付部位は、第1の収容部10の幅方向の長さの中の一部33のみとしているが、幅方向の長さの全体にわたって取り付けるようにしてもよい。
【0033】
図1(e)に示すように、把持物2は、円柱体により構成されている。この把持物2は、患者の手のひらと指の略全体で側面の一部(半分程度)を覆うことができる程の半径Rに構成されている。また、円柱体の高さH(図1(e)のように把持物2を横に寝かせた場合のY軸方向の長さ)は、標準的な手の大きさの5本指が全て乗るような寸法に構成されている。この円柱体の高さHは、第2の収容部20の開口部21aの幅より若干短い程度である。
【0034】
把持物2の形状は、角柱体でもよいが、円柱体とすることにより、患者が手を脱力したときに自然にできる手の形態と近い形状となり、把持物2を把持した状態で長時間使用しても患者が疲れにくくなるようにすることができる。把持物2を球にしてもよいが、把持物2の上に手を乗せたときに、両端の親指や小指を動かすことのできる余裕が円柱体よりは大きくなるため、患者の手の動きをより効果的に拘束するという観点から円柱体とするのが好ましい。なお、把持物2の材質は特に限定しないが、例えばクッション性のあるスポンジを用いることが可能である。
【0035】
図3は、第2の収容部20に把持物2を収容した状態を示す図である。図3に示すように、把持物2の高さ方向が第2の収容部20の幅方向を向くような姿勢にして把持物2を第2の収容部20に収容する。第2の収容部20に把持物2を入れるときは、開口部21aをZ軸方向に広げて挿入する。把持物2を挿入し終えると、伸ばされていた第2の収容部20の生地が元の形状に縮もうとする復元力を把持物2が受けることにより、第2の収容部20の中において把持物2が安定的に保持される。
【0036】
図3(a)に示すように、把持物2は、第2の収容部20の一端21である開口部21aに近い領域に収容され、円弧状となっている第2の収容部20の他端22に近い領域には届かない。なお、第1の収容部10および第2の収容部20の他端12,22を円弧状とはせず、矩形状とすれば、第2の収容部20の他端22に近い領域まで把持物2を押し込んで収容することが可能である。
【0037】
図4は、第2の収容部20に把持物2を収容した状態で、さらに第1の収容部10に患者の手を収容した状態を示す図であり、特に図4(b)および図4(c)は、固定バンド30で拘束用手袋1を縛り付けた状態を示す図である。図4(a)は拘束用手袋1を側方から見た状態を示し、第1の収容部10に収容された患者の手と、第2の収容部20に収容された把持物2とを含めて図示している。なお、固定バンド30については便宜上図示を省略している。図4(b)は拘束用手袋1を正面側から見た状態を示し、図4(c)は拘束用手袋1を背面側から見た状態を示しており、何れも拘束用手袋1の中の患者の手については図示を省略している。
【0038】
図4(a)に示すように、第1の収容部10に収容された患者の手は、第1の収容部10と第2の収容部20との共有面14,24を介して、第2の収容部20に収容された把持物2を把持することになる。共有面14,24を介しているので、患者の手が把持物2を直接的に把持しているわけではなく、間接的に把持している状態である。また、把持していると言っても、患者の手が把持物2を完全に掴んでいる状態とは限らず、手のひらと指の略全体で把持物2の側面の一部を覆っている状態に近い。
【0039】
患者の手首より先の大部分は、第1の収容部10の一部領域13における内部空間に収まる。そして、この一部領域13に対応する位置に第2の収容部20が形成されており、その第2の収容部20の中に把持物2が収容されている。このため、把持物2に圧迫されるようにして、第1の収容部10の一部領域13における内部空間は狭くなり、手の甲が一部領域13の背面側の内面に密着するとともに、手のひらが一部領域13の正面側(共有面14,24側)の内面に密着するようになる。このとき、5本指は全て把持物2の上に乗った状態であり、かつ、5本指が2つの狭い分割収容部15,16に分けて収容されているので、指を動かせる余裕のあるスペースは殆どない状態となる。これにより、患者の手の動きを効果的に拘束することができる。
【0040】
図4(b)および(c)に示すように、拘束用手袋1の中に患者の手を入れた後は、拘束用手袋1が脱げないように、固定バンド30で第1の収容部10を縛り付ける。このとき、患者に痛みや不快感をできるだけ与えないように、およそ手首の位置で固定バンド30を縛ることが望ましい。拘束用手袋1は、標準的な手の大きさを想定した大きさに形成されているが、全ての患者の手が標準的な手の大きさと完全に一致するわけではない。そこで、患者の手の大きさに応じて、図2のように固定バンド30を何れかの方向に折り返して使用することにより、患者の手首に近い位置で固定バンド30を縛ることが可能である。
【0041】
なお、固定バンド30の全長を長くすることにより、第1の収容部10を縛った後も余りが出るようにし、その余った部分の固定バンド30を患者のベッドの柵などに縛り付けるようにしてもよい。このようにすることにより、患者の手首より先の部分の動きを拘束用手袋1で拘束するだけでなく、手の全体的な動きを固定バンド30によって拘束することが可能となる。
【0042】
以上詳しく説明したように、本実施形態の拘束用手袋1では、第1の収容部10を患者の手に固定するための帯状の固定バンド30を、互いに対向する長辺31,32のうち一方の長辺31のみを取付部位として第1の収容部10に取り付けている。
【0043】
このように構成した本実施形態の拘束用手袋1によれば、一方の長辺31における取付部位を支点として他方の長辺32を拘束用手袋1の一端11側または他端12側に移動させ、固定バンド30を任意の方向に折り返して使用することが可能となる。これにより、手の大きさが異なる患者に応じて固定バンド30の位置を調整し、手首に近い適切な位置で固定バンド30を縛ることができるようになる。
【0044】
なお、上記実施形態に示した形状は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0045】
例えば、上記実施形態では、患者の手を収容する第1の収容部10と把持物2を収容する第2の収容部20とを別に設ける構成を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、収容部は1つとし、その1つの収容部の中に患者の手および把持物2を収容するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 拘束用手袋
2 把持物
10 第1の収容部(収容部)
13 一部領域
14 第1の収容部の一部領域の外面(共有面)
20 第2の収容部
24 第2の収容部の内面(共有面)
30 固定バンド(固定部材)
図1
図2
図3
図4