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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】交換判定装置及び交換判定方法
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/50 20060101AFI20230220BHJP
   H01L 31/12 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
A62C37/50
H01L31/12 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019140110
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021020014
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000114905
【氏名又は名称】ヤマトプロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】濱田 悠司
(72)【発明者】
【氏名】京野 智行
(72)【発明者】
【氏名】高山 剛
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-296321(JP,A)
【文献】特開2004-275273(JP,A)
【文献】特開2008-268002(JP,A)
【文献】特開昭63-301572(JP,A)
【文献】特開2011-199201(JP,A)
【文献】特開2015-211246(JP,A)
【文献】特開平07-075681(JP,A)
【文献】特開2006-271755(JP,A)
【文献】特開2004-094720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
H01L 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火設備における制御盤と現地操作部との間の通信のために使用されフォトカプラを含む通信ユニットの交換の要否を判定する交換判定装置であって、
前記通信ユニットの端子に着脱自在に接続されるプローブと、
前記通信ユニットの規定の信号電圧を所定程度だけ降下させた調整済み信号を、前記プローブを介して前記フォトカプラに出力する電圧負荷調整部と、
前記フォトカプラのリターン信号を前記プローブを介して受信し、受信した前記リターン信号に基づいて前記通信ユニットの交換の要否を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を表示する表示部と、
を具備することを特徴とする交換判定装置。
【請求項2】
前記フォトカプラを予め設定された温度環境下に置くための温度負荷調整部を更に具備し、
前記電圧負荷調整部は、前記温度環境下にある前記フォトカプラに前記調整済み信号を出力すること、
を特徴とする請求項1に記載の交換判定装置。
【請求項3】
前記温度負荷調整部は、前記フォトカプラの周囲が前記フォトカプラの許容温度範囲の上限温度になるまで加熱すること、
を特徴とする請求項2に記載の交換判定装置。
【請求項4】
消火設備における制御盤と現地操作部との間の通信のために使用されフォトカプラを含む通信ユニットの交換の要否を判定する交換判定方法であって、
前記通信ユニットの規定の信号電圧を所定程度だけ降下させた調整済み信号を前記フォトカプラに出力し、
前記フォトカプラのリターン信号を受信し、
受信した前記リターン信号に基づいて前記フォトカプラの交換の要否を判定する
工程を含むことを特徴とする交換判定方法。
【請求項5】
前記フォトカプラを予め設定された温度環境下に置く工程を更に含み、
前記温度環境下にある前記フォトカプラに前記調整済み信号を出力すること、
を特徴とする請求項4に記載の交換判定方法。
【請求項6】
前記フォトカプラを前記温度環境下に置く工程は、前記フォトカプラの周囲が前記フォトカプラの許容温度範囲の上限温度になるまで加熱する工程を含むこと、
を特徴とする請求項5に記載の交換判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換判定装置及び交換判定方法に関し、特に、消火設備における制御盤と現地操作部との間の通信のために使用される通信ユニットに含まれるフォトカプラの交換判定装置及び交換判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラー設備などの消火設備では、設備全体を制御する制御盤のほかに、特定の区画を担当する現地操作部が設けられ、これらの制御盤と現地操作部とは通信可能に接続されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-271755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制御盤と現地操作部との通信のために用いられる通信ユニットの中には、フォトカプラを含むものがある。かかる通信ユニットを含む省配線システムにおいては、フォトカプラの経年劣化を考慮し、一定の年限(例えば7年程度)で通信ユニットを交換することが推奨されている。
【0005】
しかし、諸事情により、推奨された年限で通信ユニットを交換できない場合がある。この場合、フォトカプラの劣化具合を個別に評価し、通信ユニットの適切な交換時期を判定することが必要である。
【0006】
かかる点検作業を行うためには、通常、通信ユニットを設置現場から外し、試験場で検査することになるが、検査の最中には消火設備の全部又は一部分を停止させる必要があり、通信ユニットの取外し及び取付け作業に伴う手間及び費用が発生する。このように、消火設備において、フォトカプラを含む通信ユニットの点検作業には効率化の観点から更なる改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は、消火設備におけるフォトカプラを含む通信ユニットの交換の要否を現場で簡便に判定することができる交換判定装置及び交換判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決すべく、本発明は、消火設備における制御盤と現地操作部との間の通信のために使用されフォトカプラを含む通信ユニットの交換の要否を判定する交換判定装置であって、前記通信ユニットの端子に着脱自在に接続されるプローブと、前記通信ユニットの規定の信号電圧を所定程度だけ降下させた調整済み信号を、前記プローブを介して前記フォトカプラに出力する電圧負荷調整部と、前記フォトカプラのリターン信号を前記プローブを介して受信し、受信した前記リターン信号に基づいて前記通信ユニットの交換の要否を判定する判定部と、前記判定部の判定結果を表示する表示部と、を具備することを特徴とする交換判定装置を提供する。
【0009】
上記のような構成を有する本発明の交換判定装置は、前記フォトカプラを予め設定された温度環境下に置くための温度負荷調整部を更に具備し、前記電圧負荷調整部が、前記温度環境下にある前記フォトカプラに前記調整済み信号を出力するが好ましい。
【0010】
また、上記のような構成を有する本発明の交換判定装置では、前記温度負荷調整部が、前記フォトカプラの周囲が前記フォトカプラの許容温度範囲の上限温度になるまで加熱することが好ましい。
【0011】
また、本発明は、消火設備における制御盤と現地操作部との間の通信のために使用されフォトカプラを含む通信ユニットの交換の要否を判定する交換判定方法であって、前記通信ユニットの規定の信号電圧を所定程度だけ降下させた調整済み信号を前記フォトカプラに出力し、前記フォトカプラのリターン信号を受信し、受信した前記リターン信号に基づいて前記フォトカプラの交換の要否を判定する工程を含むことを特徴とする交換判定方法をも提供する。
【0012】
上記のような構成を有する本発明の交換判定方法は、前記フォトカプラを予め設定された温度環境下に置く工程を更に含み、前記温度環境下にある前記フォトカプラに前記調整済み信号を出力することが好ましい。
【0013】
また、上記のような構成を有する本発明の交換判定方法では、前記フォトカプラを前記温度環境下に置く工程は、前記フォトカプラの周囲が前記フォトカプラの許容温度範囲の上限温度になるまで加熱する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、消火設備におけるフォトカプラを含む通信ユニットの交換の要否を現場で簡便に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】制御盤2及び現地操作部4,6を含む消火設備1の概略図である。
図2】通信ユニット5に含まれるフォトカプラ51の概略を示す回路図である。
図3】フォトカプラ51の電流変換率(劣化度合)の経験変化を概略的に示すグラフである。
図4】交換判定装置10の機能構成を示すブロック図である。
図5】交換判定装置10の構成例を示すブロック図である。
図6】交換判定手順の一例を示すフローチャートである。
図7】交換判定手順の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の代表的な実施形態に係る交換判定装置10及び交換判定方法を、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、本発明はこれら図面に限定されるものではない。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0017】
本実施形態に係る交換判定装置10及び交換判定方法は、図1に示すような消火設備1を構成する制御盤2及び現地操作部4,6・・・に組み込まれる通信ユニット3,5,7・・・の交換の要否を判定するものである。ここで、消火設備1としてはスプリンクラー設備を想定しているが、これに限られない。また、通信ユニット3,5,7・・・のうち、通信ユニット3は親機(センドユニット)であり、通信ユニット5,7・・・は子機(入力側ユニットも出力側ユニット)である。
以下、現地操作部4,6・・・を一括して表す場合には現地操作部4と言い、子機としての通信ユニット5,7・・・を一括して表す場合には、通信ユニット5と言うこととする。
【0018】
1.制御盤、現地操作部及び通信ユニットについて
現地操作部4は、消火設備1の起動を手動で行うもので、例えば、手動起動ボタン及び放水区域の選択ボタンなどの操作部(図示せず)を備え、手動起動信号や放水区域信号(放水操作信号)などの各種信号を制御盤2に出力する。
【0019】
制御盤2は、消火設備1の全体を制御するものであり、消火用プログラムを記憶するメモリ及び演算装置を含んで構成されている。制御盤2は、例えば、火災感知器(図示せず)からの火災信号や現地操作部4からの信号に基づいて、移報信号や発報信号を出力し、移報や警報及び表示を行う。同時に、制御盤2は、電動弁の開放信号及びポンプの起動信号を出力し、火災感知器による自動方式又は現地操作部4による手動方式により、該当する放水区域内の各放水型ヘッドから一斉放水させる。
【0020】
親機である通信ユニット3は制御盤2に組み込まれ、子機である通信ユニット5は現地操作部4に組み込まれて、通信ユニット3,5は通信線8で接続されている。そして、通信ユニット3,5が協働することで、制御盤2と現地操作部4との間の通信が可能になる。本実施形態では、図1に示すように、交換判定装置10が現地操作部4の通信ユニット5の交換の要否を判定することを想定しているが、交換判定装置10により制御盤2の通信ユニット3の交換を判定することも可能である。
【0021】
子機である通信ユニット5は、一次側(信号の入力側)と二次側(信号の出力側)とを電気的に絶縁するためにフォトカプラを含んでいる。例えば入力側ユニットとしての通信ユニット5のフォトカプラ51は、図2に示すように、発光ダイオードなどの発光素子53と、フォトトランジスタなどの受光素子55と、を含んで構成される。フォトカプラ51は、通信線側から入力された電気信号を発光素子53によって光に変換し、その光を受光素子55で受光することによって、信号をゲートアレー側に伝達する。信号がゲートアレー側に伝達されると、通信ユニット5は通信線側にリターン信号を出力する。
【0022】
ところで、通信ユニット5において通信劣化が起こる主な原因は、経年変化によりフォトカプラ51の電流変換率(CTR)が低下することにある。そして、フォトカプラ51の経年劣化が通信ユニット5の他の部品の経年劣化よりも早いことから、通信ユニット5の商品寿命はフォトカプラ51の寿命によって決まる。
【0023】
例えば図3に示すように、あるフォトカプラのCTRが時間とともに低下するものとする。そして、CTRが基準値を下回ると、そのフォトカプラは信号の正常な伝達を行うことができなくなる。したがって、例えば図3に示す特性曲線を参照することで、判定時点における当該フォトカプラのCTR(劣化度合)から、そのフォトカプラのおおよその寿命を見積もることができる。なお、フォトカプラのCTRは、フォトカプラを構成する半導体部品(発光素子及び受光素子)の温度特性上、周囲温度の上昇とともに低下する。
【0024】
発明者らは、フォトカプラに送信する信号を規定電圧から低下させると、フォトカプラのCTR(劣化度合)が擬似的に下がる(高まる)ことに着目し、通信ユニット5(フォトカプラ51)の通信線に電圧負荷をかけたときの通信ユニット5(フォトカプラ51)からのリターン信号を観察することで通信ユニット5の交換判定が可能であることを見い出した。つまり、通信ユニット5の通信線に負荷をかけることにより、信号を規定電圧から低下させ、フォトカプラ51(発光素子53)の発光量を低減させるのである。このとき、異常動作を起こす一定期間前(例えば1年ほど前)のフォトカプラ51の劣化度合に相当する電圧負荷(電圧降下)を予め調べておき、この電圧負荷を通信ユニット5の通信線に加える。この電圧負荷の下で、通信ユニット5に信号を送信し、通信ユニット5からのリターン信号を調べることで、通信ユニット5の交換の要否を判定するのである。このとき、通信ユニット5が異常作動すれば、通信ユニット5の交換が必要であると判定し、逆に通信ユニット5が正常に作動すれば、通信ユニット5の交換は、その一定期間には不要であると判定する。
本実施形態に係る交換判定装置10及び交換判定方法は、このような基本概念に基づいて設計されている。
【0025】
2.交換判定装置について
図4に示すように、交換判定装置10は、プローブ11、電圧負荷調整部12、温度負荷調整部13、判定部14及び表示部15の各機能部を含む。電圧負荷調整部12、温度負荷調整部13の一部分及び判定部14が筐体内に収納され、交換判定装置10が持ち運び可能であることが好ましい。また、交換判定装置10は、電源部16を含んでいてもよい。
【0026】
プローブ11は、判定対象である通信ユニット5の端子に着脱自在に接続される。なお、プローブ11は、図1に示すように、親機3との間の通信線8が接続されていた通信ユニット5の端子に取り付けられる。
【0027】
電圧負荷調整部12は、通信ユニット5の規定の信号電圧を所定程度だけ降下させた調整済み信号を、プローブ11を介して通信ユニット5のフォトカプラ51に出力する。電圧負荷調整部12は、追って述べるように、温度負荷調整部13により加熱された温度環境下にあるフォトカプラ51に調整済み信号を出力してもよい。
【0028】
電圧負荷調整部12は、通信ユニット5の規定の信号電圧を発生させる信号発生部12A、及び、規定電圧を所定程度だけ降下させる電圧調整部12Bの各機能を含んでいてもよい。なお、規定の信号電圧は通信ユニット5(フォトカプラ51)の機種によって異なることがある。また、電圧調整部12Bが通信ユニット5の規定電圧をどの程度だけ降下させるかは、通信ユニット5(フォトカプラ51)の種類に応じて設定されることが好ましい。なお、電圧降下の度合は、規定電圧に対する割合(例えば20%)でもよいし、一定の値(例えば5V)でもよい。電圧調整部12Bは、信号電圧を段階的に降下させる切替スイッチでもよいし、信号電圧を連続的に変化させる可変スイッチでもよい。
【0029】
温度負荷調整部13は、フォトカプラ51を予め設定された温度環境下に置く。具体的には、温度負荷調整部13は、フォトカプラ51の周囲がフォトカプラ51の許容温度範囲の上限温度になるまで加熱する。温度負荷調整部13は、例えば、10℃-50℃の動作温度を有するフォトカプラを50℃の温度環境下に置く。温度負荷調整部13の具体的な構成例は追って図5との関係で述べるが、温度負荷調整部13としては、少なくとも、通信ユニットを加熱するヒータ22、及び、ヒータを制御する制御部23を有していればよい。
【0030】
判定部14は、フォトカプラ51(通信ユニット5)のリターン信号をプローブ11を介して受信し、受信したリターン信号に基づいて通信ユニット5の交換の要否を判定する。例えば、判定部14は、交換の要否を、リターン信号の信号強度が基準値を超えるかどうかで判定してもよいし、リターン信号に基づいて算出したCTRが基準値を超えるかどうかで判定してもよい。
【0031】
表示部15は、判定部14の判定結果を表示する。判定結果の表示は、例えば「交換不要」「交換推奨」のような文字の表示でもよいし、交換不要であれば「緑色」に点灯し交換推奨であれば「赤色」に点灯するようなランプの点灯でもよいし、交換推奨であれば警報音を発するスピーカーの鳴動でもよい。
【0032】
電源部16は、電圧負荷調整部12及び温度負荷調整部13に電力を供給する。電源部16は、例えばプローブ11を介して、判定対象である通信ユニット5に電力を供給してもよい。
【0033】
電源部16は、外部電源でも、筐体に内蔵される内蔵電源でもよい。外部電源としては、タップを介して供給される交流電源、持ち運び可能な蓄電池(直流でも交流でも良い)が挙げられる。また、内部電源としては、直流又は交流の蓄電池が挙げられる。交流電源を採用する場合には、電源部16はAC/DCコンバータを含むことが好ましい。
【0034】
交換判定装置10の具体的な構成例を図5に示す。交換判定装置10は、制御盤2の通信ユニット3(親機)と同じ機種の通信ユニット21を含んでいる。通信ユニット21は、上述した信号発生部12A、判定部14及び表示部15の各機能を兼ね備えており、通信ユニット5の規定の信号電圧を発生させ、フォトカプラ51(通信ユニット5)のリターン信号を受信して通信ユニット5の交換の要否を判定し、判定結果を表示する。
【0035】
ただし、通信ユニット21からの電圧信号は、電圧調整部12Bにおいて予め設定された程度だけ電圧降下され、このように電圧調整された信号が通信ユニット5に出力される。電圧調整部12Bは、連続的に又は段階的に電圧負荷を調節可能な機構を備えており、例えば可変抵抗器や、直列に接続された抵抗又は定電圧ダイオード(ショットキーダイオード)及び切替スイッチなどから構成することができる。
【0036】
交換判定装置10の温度負荷調整部13は、ヒータ22及び温度制御23で構成することができる。ヒータ22は、フォトカプラ51の周囲をフォトカプラ51の上限温度まで上昇させるべく加熱し、温度制御23はヒータ22を制御する。ヒータ22は、フォトカプラ51の周囲を効率よく加熱するため、フォトカプラ51(又は通信ユニット5)を覆う囲いないしカバーを備えていてもよい。
【0037】
3.交換判定方法について
次いで、現場での通信ユニット5の交換判定方法を説明する。ここでは、交換判定装置10を用いた通信ユニット5の交換判定手法を述べるが、本発明の交換判定方法は、必ずしも交換判定装置10を用いる必要はない。
【0038】
3-1.交換判定手順1
ユーザは、消火設備1の制御弁(図示せず)を閉じ、制御盤2の電源を切ったうえで、図6のステップS11のように、判定対象である現地操作部4の通信ユニット5(入力ユニット又は出力ユニット)の電源端子及び通信用端子から電源線及び通信線を外す。ここでは、通信ユニット5の電源電圧が直流24Vであり、通信用信号の電圧が22Vであるものとするが、これに限られるものではない。
【0039】
次いで、ユーザは、ステップS12において、交換判定装置10のプローブ11を電源端子及び通信端子に接続する。ここでは、電源用として2本のプローブ11が、通信用として2本のプローブ11が、それぞれ使用される。
【0040】
そして、ユーザは、ステップS13において、電圧負荷調整部12を操作して、交換判定装置10の電圧負荷としての電圧降下を設定する。ここでは、一例として、3.5Vの電圧降下を設定するものとする。
【0041】
ステップS14において、電圧負荷調整部12から通信ユニット5に、電圧を調整済みの信号を出力し、ステップS15において、通信ユニット5からのリターン信号を判定部14で受信する。
【0042】
判定部14は、正常なリターン信号を受信すると、ステップS16において、通信ユニット5の交換は不要であると判定する。一方、判定部14は、正常なリターン信号を受信しない場合には、通信エラーが生じた、つまり、通信ユニット5が異常作動したと判断し、通信ユニット5の交換を推奨する。ここで、正常なリターン信号を受信しない場合とは、リターン信号の信号強度が所定の基準値に満たない場合、及び、一定の期間内に通信ユニット5からリターン信号を受信しない場合を含むが、これに限られない。そして、判定部14の判定結果は、表示部15に表示される。
【0043】
その後、ユーザは、通信ユニット5の配線を復旧し、その通信ユニット5の交換判定手順を終了する。
そして、ユーザは、次の通信ユニットについて、上述したステップS11~S17を繰返し、全ての判定対象について交換判定が終了すると、制御盤2の電源を投入し、通電確認及び動作確認を行い、その後に制御弁を開く。
【0044】
上述した交換判定手順1によれば、現場で簡便にかつ迅速に通信ユニット5の交換判定を行うことができる。したがって、消火設備1の全部又は一部分を長時間停止させておく必要はない。
【0045】
3-2.交換判定手順2
交換判定手順2は、上述した交換判定手順1に加えて、通信ユニット5に温度負荷を加える手順を含む。具体的には、通信ユニット5の端子から通信線等を外し(ステップS21)、通信ユニット5の端子にプローブ11を取り付ける(ステップS22)。次いで、電圧負荷及び温度負荷を設定する(ステップS23)。ここで、設定される温度は、そのフォトカプラ51の上限温度であり、例えば50℃である。
【0046】
温度負荷調整部13は、フォトカプラ51の周囲温度が設定温度に達したかどうかを判定し(ステップS24)、未達であると判定すると、加熱を開始ないしは継続する(ステップS25)。一方、フォトカプラ51の周囲温度が設定温度に達したと判定すると、温度負荷調整部13は加熱を停止し、電圧負荷調整部12は、通信ユニット5に調整済み信号を送信する(ステップS26)。
【0047】
そして、通信ユニット5からリターン信号を受信し(ステップS27)、通信エラーの発生の有無に基づいて交換の要否判定を行う(ステップS28)。その後、通信ユニット5の配線を元に戻して(ステップS29)、一連の判定手順が終了する。
【0048】
上述した交換判定手順2によれば、通信ユニット5の動作上限温度において通信ユニット5が正常に動作することを確認することができる。つまり、通信ユニット5のより正確な交換判定が可能となる。
【0049】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それらも本発明に含まれる。
【0050】
例えば、交換判定装置10は、通信ユニット5の劣化診断のために利用することもできる。一例を挙げると、電圧負荷を段階的に又は連続的に増加させながら調整済み信号に対するリターン信号を受信し、これらのリターン信号を様々な劣化具合のフォトカプラ5の試験結果と比較することで、通信ユニット5を劣化診断することができる。
【0051】
あるいは、交換判定装置10は、親機としての通信ユニット3の点検に利用することも可能である。例えば図5において、交換判定装置10の通信ユニット21として、制御盤2において使用中の通信ユニット3を組み込み、動作確認済みの通信ユニット5を試験することで、使用中の通信ユニット3が正常に動作するかどうかを確認することができる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・消火設備、
2・・・制御盤、
3・・・通信ユニット(親機)、
4,6・・・現地操作部、
5,7・・・通信ユニット(子機)、
10・・・交換判定装置、
11・・・プローブ、
12・・・電圧負荷調整部、
13・・・温度負荷調整部、
14・・・判定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7