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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】スプリンクラーヘッド
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/12 20060101AFI20230220BHJP
【FI】
A62C37/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020509679
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2019000211
(87)【国際公開番号】W WO2019187473
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2018060215
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000199186
【氏名又は名称】千住スプリンクラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大越 久誉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 義輝
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雄太
【審査官】川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-106000(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水配管と接続されるノズルを内部に備えた本体と、
常時において前記ノズルを閉塞する弁と、
前記本体から前記ノズルの放水方向に延出した一対のフレームと、
前記フレームの先端に設置された主デフレクターと、
前記弁と前記主デフレクターとの間に設置された感熱分解部と、
前記ノズルの中心軸と前記フレームを通過する仮想平面と略平行であり、該仮想平面から離間して設置された補助デフレクターを備えており、
前記感熱分解部は、複数枚の薄板を低融点合金で接合したリンクが用いられており、リンクと係合される支柱とレバーを含み、前記仮想平面に対して前記補助デフレクターが設置された空間とは反対の空間に前記レバーが配置され、
前記仮想平面に対して前記補助デフレクターが設置された空間とは反対の空間に、各フレームに向かって延出されたガイド部を有するハンガーが弁に設置されていることを特徴とするスプリンクラーヘッド。
【請求項2】
給水配管と接続されるノズルを内部に備えた本体と、
常時において前記ノズルを閉塞する弁と、
前記本体から前記ノズルの放水方向に延出した一対のフレームと、
前記フレームの先端に設置された主デフレクターと、
前記弁と前記主デフレクターとの間に設置された感熱分解部とを備えており、
それぞれのフレームに向かって延出されたガイド部を有するハンガーが前記弁に設置され、
前記ガイド部は前記ノズルの中心軸と前記フレームを通過する仮想平面を境としたどちらか一方の空間に配置されていることを特徴とするスプリンクラーヘッド。
【請求項3】
前記ハンガーは前記弁の外周部と係合する環状の係合部を有する請求項1または請求項2記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項4】
前記ハンガーは前記弁と一体に形成されている請求項1または請求項2記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項5】
前記係合部は一部が欠如したC字型である請求項3記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項6】
前記ハンガーは弾発性を有しており、略W字状に屈曲され、両端が前記ガイド部として前記フレームと係合され、前記ガイド部の間に設置された湾曲形状の前記係合部の内側に前記弁を収容する請求項記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項7】
前記弁は有底円筒形状をしており、前記弁の底面側は前記ノズル内に収容され、前記弁の開口側に前記感熱分解部の一端が係合されており、前記開口側が前記係合部の内側に収容されている請求項3、請求項5、請求項6の何れか1項記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項8】
前記感熱分解部は、複数枚の薄板を低融点合金で接合したリンクが用いられており、リンクと係合される支柱とレバーを含み、前記ガイド部は前記仮想平面を境として、前記レバーが設置されている空間に配置されている請求項記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項9】
前記ガイド部は前記仮想平面から離れる方向に延出された平面を有する請求項記載のスプリンクラーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用のスプリンクラーヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラー設備は建物内に設置されており、火災の熱を感知して自動的に作動して水を撒き消火を行う。スプリンクラーヘッドは内部にノズルを有しており、ノズルは給水源に続く配管と接続されており、常時はノズルが閉じた状態にある。火災が発生して熱によりスプリンクラーヘッドが作動するとノズルが開放され、ノズルから配管内に充填された水が放出される。スプリンクラーヘッドはノズルの出口の延長上に水を四方に飛散させるデフレクターを備えており、デフレクターに衝突した水が所定の範囲に散布され火災を鎮圧・消火する。
【0003】
スプリンクラーヘッドの構成の一例として、フレーム型スプリンクラーヘッドがある。フレーム型スプリンクラーヘッドは、内部にノズルを有する本体の放水方向に馬蹄形のフレームが設置されており、フレームの先端にはノズルから放出された水を衝突させて四方へ飛散させるデフレクターが設置されている。
【0004】
ノズルとデフレクターの間には常時においてノズルを閉止する弁が設置され、弁は感熱分解部によって支持されている。感熱分解部はグラスバルブや低融点合金を用いたものが広く知られている。火災の熱によって感熱分解部が動作したとき、ノズルの水流によって感熱分解部の構成品や弁がデフレクターに係留されてしまう現象(ロッジメント)が稀に発生する。
【0005】
ロッジメントを防止するために、弁が水流方向から外れる側へ付勢するバネが設置されたスプリンクラーヘッドがある。(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、側壁型スプリンクラーヘッド(例えば、特許文献2参照)においては、デフレクターとともに、ノズルの中心軸と略平行な平面を有する補助デフレクターが設置されている。スプリンクラーヘッドが作動したときに、デフレクターと補助デフレクターの間の隙間に感熱分解部の構成品や弁が引っ掛かってロッジメントとなる場合が稀にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-346497号公報
【文献】米国特許第5727737号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、側壁型スプリンクラーヘッドの作動時におけるロッジメントを防止可能なスプリンクラーヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は以下のスプリンクラーヘッドを提供する。
すなわち、給水配管と接続されるノズルを内部に備えた本体と、常時においてノズルを閉塞する弁と、本体からノズルの放水方向に延出した一対のフレームと、フレームの先端に設置された主デフレクターと、弁と主デフレクターとの間に設置された感熱分解部と、ノズル中心軸とフレームを通過する仮想平面と略平行であり、該仮想平面から離間して設置された補助デフレクターを備えており、感熱分解部は、複数枚の薄板を低融点合金で接合したリンクが用いられており、リンクと係合される支柱とレバーを含み、仮想平面に対して補助デフレクターが設置された空間とは反対の空間にレバーが配置されたスプリンクラーヘッドである。
【0010】
上記仮想平面に対して補助デフレクターが設置された空間とは反対側の空間に感熱分解部を配置すると、スプリンクラーヘッドの作動時において感熱分解部の構成品が仮想平面から離れる方向へ脱落してロッジメントを防止できる。
【0011】
さら仮想平面に対して補助デフレクターが設置された空間とは反対の空間に、各フレームに向かって延出されたガイド部を有するハンガーが弁に設置されている。これによりスプリンクラーヘッドの作動時にノズルから放出される水流によって弁が移動する際、ハンガーをフレームに衝突させて仮想平面から離れる方向へ脱落させることができる。このとき弁は補助デフレクターから遠ざかる方向に移動するので、主デフレクターと補助デフレクターの隙間に弁が係留されるロッジメントを防止できる。
【0012】
ハンガーは弁の外周部と係合する環状の係合部と、係合部からフレーム側に延出されたガイド部を有する。ガイド部はフレームに近接または接触して設置される。ハンガーは弁と一体に形成することも可能である。また係合部は一部が欠如したC字型に構成してもよい。
【0013】
また、ハンガーは弾発性を有しており、略W字状に屈曲されたガイド部の両端が一対のフレームと係合され、両端の間に設置された係合部の内側に弁体を収容するように構成可能である。これによりスプリンクラーヘッドの作動時においてハンガーの弾性により弁が仮想平面から離れる方向へ脱落してロッジメントを防止できる。
【0014】
上記のハンガーは側壁型スプリンクラーヘッドのみでなく、上向き型や下向き型のスプリンクラーヘッドにも適用可能である。当該スプリンクラーヘッドは、給水配管と接続されるノズルを内部に備えた本体と、常時において前記ノズルを閉塞する弁と、前記本体から前記ノズルの放水方向に延出した一対のフレームと、前記フレームの先端に設置された主デフレクターと、前記弁と前記主デフレクターとの間に設置された感熱分解部とを備えており、それぞれのフレームに向かって延出されたガイド部を有するハンガーが前記弁に設置され、前記ガイド部は前記ノズルの中心軸と前記フレームを通過する仮想平面を境としたどちらか一方の空間に配置されている。
【発明の効果】
【0015】
上記に説明したように本発明では、側壁型スプリンクラーヘッドの作動時においてデフレクターに弁や感熱分解部の構成品が係留されるロッジメントの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のスプリンクラーヘッドが壁面に設置された状態の平面図。
図2】本発明のスプリンクラーヘッドの斜視図。
図3図2のスプリンクラーヘッドの正面図。
図4図3のIV-IV断面図。
図5】感熱分解部の拡大断面図。
図6】(a)はハンガーの正面図、(b)は図4に示すVI-VI断面図。
図7】(a)は変形例1のハンガーの正面図、(b)は変形例1のハンガーのVI-VI断面図。
図8】(a)は変形例2のハンガーの正面図、(b)は変形例2のハンガーのVI-VI断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のスプリンクラーヘッドS1は、本体1、デフレクター2、弁3、感熱分解部4、ハンガー5から構成される。
【0018】
スプリンクラーヘッドS1は側壁型スプリンクラーヘッドであり、図1に示すように壁面Wに設置される。スプリンクラーヘッドS1は矩形の防護エリアEを有しており、この防護エリアE内において水が偏りなく散布量されるようにする。
【0019】
本体1は中空状をしており、建物の壁面付近または壁面内部に配置された配管と接続するための牡ネジ11が外部に設けられ、内部はノズル12となっている。ノズル12のサイズは、ノズル12の流量と放水圧力から導かれるKファクターの値が3から5.8の範囲にあり、本実施形態ではKファクターの値が5.6である。配管と接続される牡ネジ11のサイズはNPT1/2またはR1/2とする。
【0020】
ノズル12の出口付近には、略矩形をしたベース13が設置され、ベース13からノズル12の放水方向に伸びる一対のフレーム14が設置されている。フレーム14はノズルの中心軸Aと略平行に沿って伸びた直線部14A(第1アーム)と、直線部14Aの端からノズル12の中心軸Aに設置されたボス15に連結される交差部14B(第2アーム)をと備えている。図5に示すように交差部14Bは直線部14Aよりも細く、断面形状は楕円形をしている。
【0021】
ボス15はテーパーが付された円柱状で、その先端にはデフレクター2が設置されており、デフレクター2と接する側のボス15の直径D1は9~10mmとなっている。ボス15のノズル12側の端の外周径は、デフレクター2側の直径D1よりも小径である。ボス15のノズル12側の外周端15Aは曲面形状であり、曲面の半径は1mm~3mmの範囲とし、本実施形態では2mmとしている。
【0022】
ボス15の内部には牝ネジ15Bが設置されており、インプレスネジ16が螺入される。インプレスネジ16の先端16Aは尖っており、斜面16Bを備えている。先端16Aはノズル12と対向しており、斜面16Bの角度αは80°~100°の範囲であり、本実施形態では90°となっている。先端16Aの頂点は球面状となっており、球面半径は2mm以下が好ましく本実施形態では1mm以下としている。
【0023】
インプレスネジ16は感熱分解部4を介して弁3をノズル12側に押圧する機能を有する。図5において、インプレスネジ16の先端16Aの斜面16Bに沿った延長線16Cはボス15の外周端15Aの曲面に対して近接または接しており、先端16Aの表面に沿って流れた水が外周端15Aを通過する際に流れの妨げとならず、乱流の発生を防いでいる。このとき、インプレスネジ16の斜面16Bとボス15のノズル12側の端面との間隔aは2mm以下とし、より好ましくは1mm以下とする。これ以上間隔が広がると乱流が発生する可能性が大きくなる。
【0024】
図2図4に示すデフレクター2は、ノズルの中心軸Aと交差する主デフレクター21と、主デフレクター21の近傍に設置された補助デフレクター22から構成される。主デフレクター21はボス15の先端に設置されており、略円盤形状をしている。主デフレクター21の周縁には複数のスリット21Aや突起21Bが形成されている。
【0025】
補助デフレクター22は主デフレクター21の近傍に設置されておりノズルの中心軸Aと略平行な矩形をした平面22Aを備えている。補助デフレクター22は、ノズルの中心軸Aと一対のフレーム14を通過する仮想平面Bと略平行かまたは仮想平面Bよりも数度上向きに傾いて設置されており、さらに仮想平面Bから離間して設置されている。
【0026】
主デフレクター21は仮想平面B上に、突起21Bよりも長い拡張部21Cが設置されている。拡張部21Cは補助デフレクター22と接続する湾曲部23と連続しており、主デフレクター21と補助デフレクター22とを連結している。湾曲部23は図4に示すように主デフレクター21からノズル12側へ向かって折り曲げられている。主デフレクター21の平面の延長上に補助デフレクター22の平面22Aが交差して配置されており、主デフレクター21と補助デフレクター22との間には、ノズル12から放出された水を補助デフレクター22に供給するための隙間24が形成されている。
【0027】
図中において仮想平面Bよりも上側の流水は主デフレクター21に衝突する。突起21Bに沿って流れた水はノズルの中心軸Aから離れるように拡散されて補助デフレクター22の方向へ導かれる。水は隙間24を通り補助デフレクター22に到達して平面22Aに沿って流れ、防護エリアEのスプリンクラーヘッドS1から離れたE1の部分に散布される。
【0028】
一方、仮想平面Bよりも下側の水流は主デフレクター21に到達してスリット21Aや、スリット21Aの間のフィン21Cによりノズルの中心軸Aから離れる方向へ拡散されて防護エリアEのスプリンクラーヘッドS1に近いE2の部分に散布される。
【0029】
弁3は平時においてノズル12の出口を塞いでいる。弁3はバルブキャップ31、ディスク32、皿バネ33から構成されている。バルブキャップ31は、有底円筒形状をしており一端側は球状の底部31Aとなっている。他端側は拡径されており、段31Bが設置されている。
【0030】
段31Bの内周側には円盤状のディスク32が載置される。ディスク32は中心に凹み32Aを有しており、凹み32Aには感熱分解部3の支柱42の一端と係合される。
【0031】
段31Bの外周側には皿バネ33が係止される。皿バネ33はバルブキャップ31の底部31Aから挿通される。皿バネ33の表面はフッ素樹脂により覆われている。皿バネ33の外周縁はノズル12の出口端に配置され、皿バネ33はインプレスネジ16をボス15の牝ネジ15Bに螺入すると感熱分解部4を介して押圧され弾性変形により潰れた形状になる。その際、フッ素樹脂がシール材の役目をしてノズル12を封止する。
【0032】
感熱分解部4はリンク41、支柱42、レバー43から構成される。リンク41は火災の熱により作動する感熱体であり、2枚の薄い金属板44を低融点合金で接合して構成されている。低融点合金は60~200℃の範囲内に融点を持つものを使用しており、融点が72℃や96℃の低融点合金が一般的に使用されている。
【0033】
略四角形をした2枚の金属板44は、一方の端に穴45を有しており、他方の端にはコ字型の欠如部46が設置されている。2枚の金属板44は低融点合金により接合されている。その際、一方の金属板44の穴45の位置には、他方の金属板44の欠如部46が重ね合わされる。接合後のリンク41の2つの穴45には、それぞれ支柱42とレバー43が挿通される(図5参照)。
【0034】
支柱42は短冊型であり、一端はノズル12の出口に設置された弁3のディスク32と係合され、他端はレバー43の先端に係合される。前述のように支柱42はリンク41の穴45に挿通されている。支柱42の中間には突起47が設置されており、突起47の付近に設置された溝47Aにリンク41を係止している。
【0035】
レバー43は細長い板を略L字型に屈曲させて構成している。前述のようにレバー43の一端側はリンク41の穴45に挿通されている。レバー43の他端側は支柱42と係合しており、レバー43には支柱42の先端が係合される溝48が設置されている。
【0036】
溝48が設置された面の裏側の面には、凹部49が設置されている。凹部49は溝48よりもレバー43の他端よりに設置される。凹部49にはインプレスネジ16が接触している。インプレスネジ16の先端がレバー43の凹部49を押圧すると、レバー43には支柱42が係止されている溝48を支点として回転する力が作用する。しかしながらレバー43の一端側にはリンク41の穴45が挿通されており、レバー43の回転を阻止している。これにより感熱分解部4を構成するリンク41、支柱42、レバー43は係合状態を維持している。またインプレスネジ16は感熱分解部4を介して弁3をノズル12側に押圧保持している。
【0037】
図4に示すように感熱分解部4は、仮想平面Bに対して補助デフレクター22が設置された空間とは反対の空間に配置される。特に、レバー43はスプリンクラーヘッドS1の作動時にリンク41を引き離す方向に大きく変位するので補助デフレクター22が設置された空間と反対の空間に配置する。こうすることで、スプリンクラーヘッドS1の作動時においてリンク41や支柱42、レバー43が補助デフレクター22から離れる方向へ放出され、これらの部品が主デフレクター21と補助デフレクター22の間の隙間24に係止されるロッジメントを防止できる。
【0038】
また、上記構成のスプリンクラーヘッドS1において補助デフレクター22は天井側に配置され、感熱分解部4は床面側に配置される。スプリンクラーヘッドS1の作動時に感熱分解部4が分解作動した際に、感熱分解部4の構成品はノズル12からの放水と自重により床面側へ脱落するので補助デフレクター22から離れる方向に移動する。
【0039】
図6に示すハンガー5は、環状をした係合部51と、係合部51から各フレーム14側に延出されたガイド部52を有する。係合部51の内側にはバルブキャップ31が収容される。係合部51の内周径はバルブキャップ31のディスク32が設置される側の外周径と略同じであり、またバルブキャップ31の開口端に設置されたフランジ34の外周径よりも小さい。ハンガー5はバルブキャップ31に皿バネ33を挿通する前の段階でバルブキャップ31に組み込まれる。
【0040】
ガイド部52の先端はフレーム14の近傍に配置され、仮想平面Bに対して補助デフレクター22が設置された空間とは反対の空間に配置されている。また、ガイド部52は仮想平面Bに対してレバー43が設置された側の空間に配置されている。ガイド部52の両先端の間の距離Lは、一対のフレーム14の間の距離Lfよりも長くなっている。スプリンクラーヘッドS1が作動した時に、ガイド部52がフレーム14に沿って移動することで、図中においてハンガー5および弁3がフレーム14よりも上方に移動しないように作用する。これにより弁3がデフレクター2の隙間24に係止されるロッジメントを防止している。
【0041】
続いて火災時におけるスプリンクラーヘッドS1の動作を説明する。
【0042】
図1に示すスプリンクラーヘッドS1は、常時において図示しない配管と牡ネジ11が接続されている。ノズル12の内部には加圧水が充填されているが、ノズル12は弁3および感熱分解部4により閉塞されている。
【0043】
火災時が発生してリンク41の低融点合金が溶融すると、レバー43が回転してレバー43と係合している金属板44が支柱42と係合している金属板44から引き剥がされる。これにより感熱分解部4の係合状態は解除され、リンク41、支柱42、レバー43の係合が外れるとともに支柱42によって支えられていた弁3はノズル12から離れて脱落し、ノズル12が開放される。
【0044】
このとき、弁3とハンガー5はノズル12から放出される水流によって移動するが、ガイド部52がフレーム14と接触または近接しながら移動してスプリンクラーヘッドS1の外部に放出される。あるいはガイド部52が水流の勢いでフレーム14に衝突して跳ね返りスプリンクラーヘッドS1の外部に放出される。
【0045】
ノズル12から放出された水は主デフレクター21に衝突してスプリンクラーヘッドS1の近傍のE2の部分に散布される。また隙間24を通過して補助デフレクター22に到達した水は、補助デフレクター22の平面22Aに沿って流れて加速され、スプリンクラーヘッドS1から離れたE1の部分に散布される。
【0046】
上記のハンガーにおいて、変形例1を図7に示す。図7のハンガー6は弾発性を有するワイヤーから構成される。ハンガー6は略W字状に屈曲されており両方の端61、61がガイド部として機能され一対のフレーム14と係合する。中間部分には係合部として機能する湾曲部62の内側に弁3が収容される。湾曲部62にはバルブキャップ31を湾曲部62の内側へ挿通可能な開口部63を有する。
【0047】
端61、61の間隔は、スプリンクラーヘッドS1に組み込まれる前の状態において一対のフレーム14の間隔よりも広い。ハンガー6がフレーム14に係止された状態のとき端61、61はフレーム14を押圧した状態となる。
【0048】
ハンガー6をスプリンクラーヘッドS1に組み込む手順は、先ず、スプリンクラーヘッドS1の本体1に弁3と感熱分解部4を組み込む。この後、ハンガー6をフレーム14に係止させ、且つ湾曲部62の内側にバルブキャップ31を収容させる。ハンガー6はリンク41と弁3の間を通過させ、開口部63と支柱42が向かい合うように、図7(b)に矢印Dで示した方向(ノズルの中心軸Aに対して垂直方向)へ移動させる。する端61、61がフレーム14に干渉して、端61、61がお互いに近づくように弾性変形するとともに、湾曲部62の開口部63が拡張する。
【0049】
さらにハンガー6を矢印D方向へ移動させると、バルブキャップ31が開口部63を通過して湾曲部62の内部に収容される。この状態でハンガー6を解放すると、ハンガー6の両端61、61はフレーム14に係止され、湾曲部62の内側にバルブキャップ31が保持された状態となり、ハンガー6のスプリンクラーヘッドS1への取付が完了する。
【0050】
ハンガー6は端61により矢印Dで示す方向とは逆の方向に付勢されているので、スプリンクラーヘッドS1が作動した際に、ハンガー6は弁3を湾曲部62の内側に保持した状態でノズル12から放出される水流により、フレーム14から離れる方向に向かって流れてスプリンクラーヘッドS1の外部に放出される。
【0051】
更なるハンガーの変形例として、図8にハンガーの変形例2を示す。図8のハンガー7は図6のハンガー5と同様に環状をした係合部51を有する。係合部51の内周径はバルブキャップ31のディスク32が設置される側の外周径と略同じであり、またバルブキャップ31の開口端に設置されたフランジ34の外周径よりも小さい。ハンガー5はバルブキャップ31に皿バネ33を挿通する前の段階でバルブキャップ31に組み込まれる。
【0052】
ガイド部72は係合部51からそれぞれのフレーム14側に延出して形成されている。ガイド部72の先端はフレーム14の近傍に配置され、仮想平面Bに対して補助デフレクター22が設置された空間とは反対の空間に配置されている。また、ガイド部52は仮想平面Bに対してレバー43が設置された側の空間に配置されている。ガイド部72は平面72aを有しており、平面72aは仮想平面Bから離れる方向に延出した形状となっている。平面72aによってスプリンクラーヘッドS1が作動した際に、平面72aがノズルから放出される水流を受けてフレーム14と平行に移動する。平面72aはフレーム14の交差部14Bに衝突して仮想平面Bから離れる方向(図中下方)に放出される。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これ以外の構造および作用を以下に記載する。
【0054】
先に説明したハンガー5のガイド部52とバルブキャップ31とを一体にして構成することができる。また係合部51は環状をしているが、図6(a)に示す破線53、53の間を除いた欠如部を設けると、スプリンクラーヘッドS1に弁3や感熱分解部4を組み込んだ後の段階でハンガー5を弁3に設置できる。
【0055】
さらに、上記の実施形態では側壁型スプリンクラーヘッドを用いて説明したが、これに限らず下向き型スプリンクラーヘッドや上向き型スプリンクラーヘッドにも本発明のハンガーを適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 本体
2 デフレクター
3 弁
4 感熱分解部
5、6、7 ハンガー
12 ノズル
14 フレーム
15 ボス
21 主デフレクター
21A スリット
21B 突起
21C 拡張部
21D フィン
22 補助デフレクター
23 湾曲部
24 隙間
31 バルブキャップ
32 ディスク
33 皿バネ
41 リンク
42 支柱
43 レバー
51 係合部
52、72 ガイド部
61 端
62 湾曲部
A ノズルの中心軸
B 仮想平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8