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  • 特許-加飾成型品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】加飾成型品
(51)【国際特許分類】
   B44C 3/00 20060101AFI20230220BHJP
   B44C 3/02 20060101ALI20230220BHJP
   G09F 13/08 20060101ALI20230220BHJP
   G09F 13/12 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
B44C3/00 G
B44C3/02 Z
G09F13/08
G09F13/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022071248
(22)【出願日】2022-04-25
【審査請求日】2022-06-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522165980
【氏名又は名称】三環ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195970
【弁理士】
【氏名又は名称】本夛 伸介
(72)【発明者】
【氏名】王向陽
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-179801(JP,A)
【文献】特開平09-271554(JP,A)
【文献】特開2004-117891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/12
G09F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源点灯時に意匠が出現する加飾成型品であって、
当該加飾成型品の表面には光源透過能を有する突板を備え、
当該突板の裏面には、突板に対して意匠を出現せしめるために接合され
た木質基材と、を備え、かつ、
当該木質基材の上面の一部には、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニール及びポリエチレンテレフタレートのいずれかから選択された光源透過能を有する樹脂が埋め込まれ、前記樹脂が埋め込まれる凹部の底面には、前記加飾成型品の裏面側に意匠の表示装置として設けられたLED光源が樹脂を透過して意匠を出現させるための木彫りによる原意匠があしらわれることを特徴とする加飾成型品。
【請求項2】
光源透過能を有する樹脂が透明及び/又は半透明で構成されることを 特徴とする請求項1に記載の加飾成型品。
【請求項3】
光源透過能を有する樹脂の一部において、光吸収能を有する塗料を塗布することによって意匠を構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾成型品。
【請求項4】
加飾成型品の裏面側に、光源として設けたLEDがリレー点灯方式の機能を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の加飾成型品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デザイン性を兼ね備えた加飾成型品である。さらに詳細には、光源(バックライト)点灯時にのみ木質の高級感を醸し出す加飾成型品であって、例えば、店舗及び家庭室内のリビングに設置するインテリア装飾品としての機能を兼ね備えた加飾成型品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加飾成型品は、照明器具類と並び、日常のアメニティ空間を演出のために欠かせないアイテムである。また、建築物の趣味や嗜好の多様化に呼応して、インテリアデザインに合う木質をベースにした装飾的な成型品の創作がアメニティ空間の実現にも不可欠となった。
さらに、加飾成型品の装飾については、その形状もさることながら、室内光源の強さや色、光源のハウジングに用いられる質感や材質も含めた個性的な演出が重要であり、現に、それらを様々な角度で消費者から求められている。
【0003】
加飾成型品は、店舗の内装では統一感ある独自のシステムデザインが創作され、一般家庭にも普及している。また、一般家庭では玄関やリビングでオブジェとして楽しむ要素も多い。
【0004】
特許文献1には、突板の深み感や照り感が強調された、独特の美しい仕上がりを得ることができるとともに、多様な意匠と機能を実現することができる木質化粧成形品が開示されている。
【0005】
しかしながら、当該木質化粧成形品は、従来の画一的な意匠の演出において単調となる問題、特に深み感や照り感(見る角度によって光り方が違って見える感じ)を欠く課題について解決したものであるところ、光源の点灯時のみならず、消灯時にもデザイン出現を追求した結果、その成形品の構成が煩雑となり、制作の簡便性を欠く。また、木質本来の意匠性を活かすためには、光源点灯時と消灯時の意匠出現の有無が重要となり、出現を求めるシーンでの選択が需要者側でできることが条件となる結果、用途に制限がかかる。
【0006】
特許文献2には、裏面に設置した光源を用いないときは、観測者側の面の画像のみを観測し、裏面側の光源を使用したときは表面と裏面の画像を同時に観測し、さらに、表面側の画像と裏面側の画像の距離を変えることにより容易に立体的な画像を得ることができる看板あるいは電飾インテリアオブジェが開示されている。
【0007】
しかしながら、当該特許文献2に係る発明は、インテリアオブジェとはいうものの、看板機能重視の発明であり、画像を露出させ広報内容を効果的に演出する技術に特化したものであることから、使用の目的や求める効果の点で全く異なる。必然的に、加飾成型品としての構成が異なっている。
【0008】
特許文献3は、光源の点灯の有無によって、表面側に現れる意匠を大きく変化させることができる加飾成形品関するものであるが、特許文献1の技術改良の発明であり、特許文献1の出願人と同じである。
ここで、当該特許文献3にかかる技術は、光源消灯時と点灯時とでは出現する意匠の構成が異なるものであり、上面の突板の質感の演出に優れており、ユニークでその楽しさを感得しうる技術であるが、前記特許文献1で言及した課題と軌を一にする。
【0009】
従来技術に鑑みれば、リラクゼーション的な観点から提供される加飾成形品としては未だ不十分であることから、出願人らは木質本来が有する意匠デザイン性を損なわずに自然のアメニティ空間の演出ができ、かつ、光源点灯時にはより一層高級感の演出が可能とする室内インテリア用の加飾成型品の提供を着想するに至ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2001-341106号公報
【文献】特開2007-98929号公報
【文献】特開2020-157621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みて提案されたものであって、デザイン性を兼ね備えた加飾成型品を提供するものである。
さらに詳細には、光源(バックライト)点灯時にのみ木質の高級感を醸し出す加飾成型品であって、例えば、店舗及び家庭室内のリビングに設置するインテリア装飾品としての機能を兼ね備えた加飾成型品を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題解決のため、種々検討した結果、最適には突板またはそのプリント版、特定の樹脂及びデザイン加工を施した特定の基材を組み合わせることによってその目的を達成し、所望の効果を発揮できる本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、下記(1)乃至(4)の構成により、所望の目的が達成される。
(1)光源点灯時に意匠が出現する加飾成型品であって、
当該加飾成型品の表面には光源透過能を有する突板を備え、
当該突板の裏面には、突板に対して意匠を出現せしめるために接合され
た木質基材と、を備え、かつ、
当該木質基材の上面の一部には、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニール及びポリエチレンテレフタレートのいずれかから選択された光源透過能を有する樹脂が埋め込まれ、前記樹脂が埋め込まれる凹部の底面には、前記加飾成型品の裏面側に意匠の表示装置として設けられたLED光源が樹脂を透過して意匠を出現させるための木彫りによる原意匠があしらわれることを特徴とする加飾成型品。
(2)光源透過能を有する樹脂が透明及び/又は半透明で構成されることを特徴とする(1)に記載の加飾成型品。
(3)光源透過能を有する樹脂の一部において、光吸収能を有する塗料を塗布することによって意匠を構成したことを特徴とする(1)又は(2)に記載の加飾成型品。
(4)加飾成型品の裏面側に、光源として設けたLEDがリレー点灯方式の機能を有するものであることを特徴とする(1)に記載の加飾成型品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発明品の裏面側に設置した光源を消灯しない場合には、木質にあうアメニティ空間の演出と提供が可能であり、逆に言えば、当該アメニティ空間の演出は、例えば室内の家具や照明の色合い等にマッチする意匠を選択しさえすれば、光源を点灯時に出現させたい意匠を任意に選択または個人の希望に応じてオーダーすることで、趣味や指向に応じたインテリア空間の演出と提供が可能である。
また、意匠の演出は、基材のデザインが任意であり、加えて、樹脂のデザイン構成と組み合わせることによって、基調、色合い等を制限なく、自由に構成することができる。
上記のとおり、多彩な意匠のバリエーションの構成が達成できることによって、用途は、インテリアデザインとして多種多様な物品へと展開し得る。
この点、光源として用いるLEDがリレー方式を備える場合には、シックな意匠演出以外にも表示機能が付与でき、例えば、店舗内でのディスプレーとしての広報・看板機能の提供も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の加飾成型品の一例を示す断面図である。
図2】本発明の加飾成型品における樹脂構成の一例を示す平面面(概略)図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態につき、その奏する効果を含めて詳述する。
【0017】
本発明は、デザイン性を兼ね備えた加飾成型品である。さらに詳細には、光源(バックライト)点灯時にのみ木質の高級感を醸し出す加飾成型品であって、例えば、店舗及び家庭室内のリビングに設置するインテリア装飾品としての機能を兼ね備えた加飾成型品を提供することを主たる目的とするものである。
【0018】
本発明によれば、光源点灯時に意匠が出現する加飾成型品であって、当該加飾成型品の表面には光源透過能を有する突板を備え、当該突板の裏面には、突板に対して意匠を出現せしめるために接合された木質基材と、を備え、かつ、当該木質基材の上面の一部には、光源透過能を有する樹脂が埋め込まれ、同じく底面には、光源が樹脂を透過して意匠を出現させるための木彫りによる原意匠があしらわれるか、若しくは光源の透過孔が設けられたことを特徴とする加飾成型品が提供される。
【0019】
光源の点灯時に意匠が出現する仕組みとして、バックライト光源のLEDが基材にあしらわれたデザイン構成の開放部分を通じて樹脂に到達・貫通し、一定の光源透過率によって通過した光がさらに上面で形成する突板若しくは木質のデザインプリントに到達、一定の光源透過率によって通過した光を視認することで所望の意匠を感得するものである。
この場合、基材にあしらうデザインは、木質を切削して所望のデザインを形成させるところ、模様、図形、記号、文字またはこれらの組合せで任意に構成するものである。
【0020】
また、別の実施態様としては、基材に特段の意匠構成はとらずとも、単に光源通過のための開放部を設け、前記同様に樹脂に到達した後、樹脂で構成された意匠でデザインが、上面で形成する突板または木質のデザインプリントに反映・出現される。
この場合、樹脂に構成するデザインは、出現させたい部分につき光透過能を有する部分として形成し、逆に、出現をさせない部分については、光吸収能を有する塗料で塗布または描画等することによって形成させる。光吸収能を有する塗料としては黒色であるが、例えば、黒色塗料であっても吸収波長を調整したものの採用によって、濃淡をつけた構成とることも任意である。
【0021】
本発明で構成する樹脂は、光源透過能を有するものであるが、その透過能は透明度の高い素材の他、半透明のものをも含む。
当該光源透過能を有する樹脂として好適な素材として、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニール及びポリエチレンテレフタレートのいずれかが挙げられる。本発明で構成する樹脂の厚みは、通常1乃至3mm程度であるが、基材であしらう意匠の構成及び突板及び光源性能によって用時調整を要する。
【0022】
また、これら本発明で採用する樹脂は、光透過能を有するものであり、本発明の目的を損なわない範囲で色調調整がされたものが適宜に使用可能である。これらの調整によって、意匠のバリエーションが様々構成でき、インテリア空間における所望のアメニティ演出が叶う。
【0023】
上面部で構成する突板は、スライスされたものを樹脂と接合させるが、光源透過能さえ保持することができるなら、その厚みは適宜に調整され任意である。
この点、逆説的に言えば、光源の照度や樹脂の厚みや種類によって様々の組合せによっても突板表面で視認・感得しうる意匠の質感が異なることから、厚みを画一的に規定する意義が見いだすことができないということができる。
また、突板に代替する木質様のプリントも採択しうるものである。
【0024】
光源は、別途に構成しても良いが、本発明の目的に沿えば、一体的な構成で加飾成型品を提供するのが合理的である。
加飾成型品の裏面側に、光源としてLEDにより所定の意匠を表示するための表示装置が設けられていることが好ましいが、当該LEDについては、リレー点灯方式の機能を有するものであることを含むものである。リレー方式を採用することで、ディスプレー機能を提供することができ、店舗内での使用には適する。
【0025】
本発明においては、用途に応じて光源の光量や色彩を適宜採択して所望の加飾成型品用に供し得るものである。
【0026】
このようにして仕上げた本発明に係る加飾成型品は、多様な用途に適応し得るものであり、インテリアデザイン用に特化した発明品である。
用途としては、壁材への埋め込み、ベッドのヘッドボード、室内看板およびディスプレー等への実用品への応用と当該実用性を兼ねつつも質感豊かな鑑賞商材、オブジェ等が挙げられる。
【実施例
【0027】
以下、添付図面に従い、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は当該実施例に限定されるものではない。
【0028】
図1に、本発明の加飾成型品の一例を断面図で示した。1は本発明の加飾成型品を構成する突板であり、2は突板の裏面に接合した樹脂である。樹脂は木質基材3の切り込み部分にはめ込まれて形成する。樹脂の下に位置する4は、樹脂部分に開放隣接する木質基材にあしらわれた意匠デザインを示したものであり、光源5の点灯時には、当該意匠デザインは、光源透過脳を有する樹脂を一定の透過率で貫通し、その上部に接合した突板に到達して、突板外部に意匠が出現する。
【0029】
図2には、本発明の加飾成型品における樹脂構成の一例を平面面(概略)で示したものである。6は、樹脂において構成するデザインのうち、突板に出現しない部分であり、光源吸収能を有する塗料を塗布した状態を示したものである。一方の白抜きの7は、突板表面に出現させたいデザイン領域を示したものである。8はこのように構成した樹脂におけるデザイン全体を意味する。
【符号の説明】
【0030】
1 加飾成型品を構成する突板
2 加飾成型品を構成する樹脂
3 加飾成型品を構成する木質基材
4 木質基材にあしらわれた意匠デザイン
5 光源
6 突板に出現しないデザイン構成領域
7 突板に出現するデザイン構成領域
8 樹脂でデザイン構成した場合の全体
【要約】
【課題】本発明は、デザイン性を兼ね備えた加飾成型品を提供するものであり、詳細には、光源(バックライト)点灯時にのみ木質の高級感を醸し出す加飾成型品であって、例えば、店舗及び家庭室内のリビングに設置するインテリア装飾品としての機能を兼ね備えた加飾成型品を提供することを主たる目的とするものである。
【解決手段】本発明によれば、光源点灯時に意匠が出現する加飾成型品であって、当該加飾成型品の表面には光源透過能を有する突板を備え、当該突板の裏面には、突板に対して意匠を出現せしめるために接合された木質基材と、を備え、かつ、当該木質基材の上面の一部には、光源透過能を有する樹脂が埋め込まれ、同じく底面には、光源が樹脂を透過して意匠を出現させるための木彫りによる原意匠があしらわれるか、若しくは光源の透過孔が設けられることによって所望の加飾成型品が提供される。
【選択図】 図1
図1
図2