IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社三洋商会の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】鞄用具
(51)【国際特許分類】
   A45C 13/26 20060101AFI20230220BHJP
【FI】
A45C13/26 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022147120
(22)【出願日】2022-09-15
【審査請求日】2022-09-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521442844
【氏名又は名称】有限会社三洋商会
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下 正明
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-160363(JP,A)
【文献】実開平05-009307(JP,U)
【文献】特開2001-010444(JP,A)
【文献】特許第7079036(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 13/26
A44B 11/00
A41F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端において開口し他端において閉止する一対の溝両側に形成されるとともに一端に雌ねじの形成された円筒が設けられた第1部材と、
貫通孔と、前記円筒が前記貫通孔に挿入されるように前記第1部材と組み付けられた状態において一対の前記溝の他端と合わせて一対の揺動孔を形成する一対の封止部と、を有するとともに鞄の胴体の表面に取り付けられた第2部材と、
前記円筒が前記貫通孔に挿入されるように前記第1部材と前記第2部材とが組付けられた状態において、一対の前記揺動孔にそれぞれ係合された一対の軸を有する揺動部材と、
前記胴体の裏面に取り付けられた取付片と、
前記取付片を貫通させて前記雌ねじにねじ込むことにより、前記第1部材が前記第2部材を介して前記胴体に取り付けられた雄ねじと、を備える、
鞄用具。
【請求項2】
前記揺動部材は、ベルトが接続されるとともに一対の前記を接続させる接続部をさらに有し、
前記円筒は、平面視にて一対の前記溝の間に位置するように一対の前記溝と同一直線上に設けられている、
請求項1に記載の鞄用具。
【請求項3】
前記雄ねじが前記雌ねじにねじ込まれた状態において、前記第2部材は、前記第1部材と前記胴体との間に挟持されている、
請求項2に記載の鞄用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞄用具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ベルトの端部が吊り金具と接続されている鞄が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-160363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の鞄では、鞄の胴体への吊り金具の取付を容易に行うことができない。また、吊り金具を保持する構造の強度を十分に確保することができないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑み、高強度を実現しつつ鞄の胴体への取付を容易に行うことができる鞄用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、一端において開口し他端において閉止する一対の溝又は長孔が両側に形成されるとともに一端に雌ねじの形成された円筒が設けられた第1部材と、揺動可能に一対の前記溝又は前記長孔に係合された揺動部材と、前記円筒が挿入されるように前記第1部材と組み付けられた状態において一対の前記溝又は前記長孔の一端をそれぞれ封止する一対の封止部を有するとともに鞄の胴体の表面に取り付けられた第2部材と、前記胴体の裏面に取り付けられた取付片と、前記取付片を貫通させて前記雌ねじにねじ込むことにより、前記第1部材が前記第2部材を介して前記胴体に取り付けられた雄ねじと、を備える鞄用具が提供される。
【発明の効果】
【0007】
この態様によれば、鞄用具の高強度を実現しつつ鞄の胴体への鞄用具の取付を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本実施形態に係る鞄用具を示す側面図である。
図1B】本実施形態に係る鞄用具を示す平面図である。
図2】鞄用具を構成する各部品を示す分解斜視図である。
図3A】第1部材を示す平面図である。
図3B】第1部材を示す側面図である。
図4A】第2部材を示す平面図である。
図4B】第2部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態(以下、本実施形態と称する。)について説明する。なお、本明細書においては、全体を通じて、同一の要素には同一の符号を付する。
【0010】
図1Aから図4Bを参照しながら本実施形態に係る鞄用具1について説明する。
【0011】
図1Aは、本実施形態に係る鞄用具1を示す側面図である。図1Bは、本実施形態に係る鞄用具1を示す平面図である。図2は、鞄用具1を構成する各部品を示す分解斜視図である。図3Aは、第1部材2を示す平面図である。図3Bは、第1部材2を示す側面図である。図4Aは、取付座4を示す平面図である。図4Bは、取付座4を示す側面図である。
【0012】
図1Aから図4Bに示すように、本実施形態に係る鞄用具1は、ベルトとしての鞄用ベルト(図示しない)の端部と接続されるとともに鞄(図示しない)の胴体Bに取り付けられて使用されている吊り金具である。鞄用具1は、第1部材2、揺動部材3、第2部材としての取付座4、取付片5及び雄ねじ6を備える。なお、鞄用具1を構成する各部品は、強度を向上させる観点からいずれも金属から構成されている。
【0013】
図3A及び図3Bに示すように、第1部材2は、略ブロック状の第1部材本体21と、第1部材本体21の一端としての一端面に設けられた一対の円筒22と、第1部材本体21の両側としての両側面に形成された一対の溝23と、を有する。
【0014】
一対の円筒22は、平面視にて一対の溝23の間に位置するように一対の溝23と同一直線上に設けられている。これにより、円筒22が平面視にて一対の溝23の間に位置していないもの又は、円筒22が平面視にて一対の溝23と同一直線上に設けられていないものに比べ、第1部材2の小型化を図ることができる。一対の円筒22の内周面には、雄ねじ6と螺合する雌ねじ22aが形成されている。
【0015】
各溝23は、一端としての一端面において開口し他端としての他端面において閉止するように形成されている。一対の溝23の他端面には、それぞれ揺動部材3の後述する第1軸31及び第2軸32と係合する一対の揺動孔の一部を構成する一対の半円状の係合部23aが形成されている。これにより、揺動部材3の第1軸31及び第2軸32をそれぞれ一対の溝23の一端面の開口から一対の溝23に容易に挿入させて一対の溝23の係合部23aと係合させることができる。
【0016】
揺動部材3は、揺動可能に一対の溝23(具体的には、係合部23a)に係合されている。なお、揺動部材3は、強度を向上させる観点から弾性変形不能に設けられている。図1A図1B及び図2に示すように、揺動部材3は、一方の溝23(具体的には、係合部23a)に係合された第1軸31と、第1軸31と同軸で形成されるように他方の溝23(具体的には、係合部23a)に係合された第2軸32と、第1軸31と第2軸32とを接続させる接続部33と、を有する。
【0017】
接続部33は、第1軸31が設けられた第1アーム33aと、第1アーム33aと略平行に設けられるとともに第2軸32が設けられた第2アーム33bと、鞄用ベルトの端部が接続されるとともに第1アーム33aと第2アーム33bとを接続させる接続ポール33cと、を有する。
【0018】
第1軸31及び第2軸32は、いずれも軸長が溝23の深さ(すなわち、溝23の頂面から底面までの距離)よりも僅かに大きくなるように設けられている。また、第1軸31及び第2軸32は、両者間(具体的には、互いに対向する先端間)の距離が一対の溝23の底面間の距離よりも僅かに大きくなるように設けられている。これにより、第1軸31及び第2軸32のいずれか一方の先端は、ストッパとして機能する一方の溝23の底面及び他方の溝23の底面のいずれか一方と当接することで、第1アーム33a及び第2アーム33bのいずれか一方と第1部材本体21(具体的には、第1部材本体21の側面)との接触を回避することができるため、揺動部材3の揺動時に第1アーム33a及び第2アーム33bと第1部材本体21との擦り合いを防止することができる。
【0019】
図4A及び図4Bに示すように、取付座4は、ブロック状の取付座本体41と、取付座本体41の一端としての一端面及び他端としての他端面を連通させる一対の貫通孔42と、取付座本体41の一端面から突出する一対の封止部としての突出片43と、を有する。
【0020】
一対の貫通孔42は、平面視にて一対の突出片43の間に位置するように一対の突出片43と同一直線上に設けられている。これにより、貫通孔42が平面視にて一対の突出片43の間に位置していないもの又は、貫通孔42が平面視にて一対の突出片43と同一直線上に設けられていないものに比べ、取付座4の小型化を図ることができる。一対の貫通孔42は、一対の円筒22がそれぞれ挿入(具体的には、貫通)可能に設けられている。
【0021】
一対の突出片43は、それぞれ先端が第1軸31及び第2軸32と係合する一対の揺動孔の他部を構成する一対の半円状の切欠43aとなるように設けられている。
【0022】
そして、揺動部材3の第1軸31及び第2軸32がそれぞれ一方の溝23の係合部23a及び他方の溝23の係合部23aに係合された状態において、第1部材本体21の一端面と取付座本体41の一端面とが対向するように取付座4を第1部材2に組み付けさせる。この際に、一対の円筒22は、それぞれ一対の貫通孔42に挿入されている。
【0023】
また、この際に、一対の突出片43は、それぞれ一対の溝23の一端面の開口から一対の溝23に挿入されている。これにより、一対の突出片43は、一対の溝23の一端面の開口を封止することができるため、揺動部材3の第1軸31及び第2軸32を一対の溝23の一端面の開口から離脱しないように一対の溝23に保持することができる。したがって、揺動部材3の軸を無理やり単一の部材に形成された両端閉止の溝に押し込むようなことをする必要がなく、揺動部材3の強度を向上させることができ、鞄用具1全体の強度を向上させることができる。
【0024】
そして、第1部材2、揺動部材3及び取付座4が組み付けられた状態において、第1部材本体21の一端面と取付座本体41の一端面とは、当接するとともに一対の円筒22は、それぞれ一対の貫通孔42を貫通して取付座本体41の他端面から突出している。
【0025】
また、この組付状態において、一対の突出片43は、それぞれ一対の溝23に収容されることにより、一対の溝23の係合部23aと一対の突出片43の切欠43aとによって、略円形の一対の揺動孔が形成されている。これにより、一対の溝23の長手方向における第1軸31及び第2軸32の変位を効果的に抑制することができるため、揺動部材3のスムーズな揺動動作を容易に実現することができる。
【0026】
上述のように、一対の突出片43は、それぞれ一対の溝23に収容されているため、鞄用具全体の美観性を向上させるとともに一対の突出片43と第1アーム33a及び第2アーム33bとの接触を回避することができ、揺動部材3の揺動時に一対の突出片43と第1アーム33a及び第2アーム33bとの擦り合いを防止することができる。
【0027】
取付片5は、組み付けられた第1部材2、揺動部材3及び取付座4を鞄の胴体Bに取り付けるための取付材である。図2に示すように、取付片5は、矩形状の板材に形成されている。取付片5には、雄ねじ6のねじ領域が貫通可能であるとともに円筒22が貫通不能である一対の貫通孔51が形成されている。
【0028】
図1Aに示すように、組み付けられた第1部材2、揺動部材3及び取付座4を取付座本体41の他端面が鞄の胴体Bの表面と当接するように鞄の胴体Bの表面に取り付けると、一対の円筒22の先端側は、鞄の胴体Bに形成された一対の貫通孔B1に貫通されている。これにより、鞄の胴体Bに対する一対の円筒22の仮位置決めをすることができるため、雄ねじ6を円筒22の雌ねじ22aへねじ込む際に雌ねじ22aに対する雄ねじ6の位置合わせをしやすくなる。この結果、鞄の胴体Bへの鞄用具1の取付を容易に行うことができる。
【0029】
そして、図1Aに示すように、取付片5を鞄の胴体Bの裏面に取り付けてから、一対の雄ねじ6をそれぞれ一対の取付片5の貫通孔51に貫通させて一対の貫通孔B1に挿入された円筒22の雌ねじ22aにねじ込むことにより、第1部材2が取付座4を介して鞄の胴体Bに取り付けられている。これにより、揺動部材3を一対の溝23に係合させつつ第1部材2、取付座4及び取付片5(すなわち、鞄用具1)を容易に鞄の胴体Bに取り付けることができる。
【0030】
そして、第1部材2、取付座4及び取付片5が一対の雄ねじ6によって鞄の胴体Bに取り付けられた状態において、揺動部材3は、第1軸31及び第2軸32が揺動可能にそれぞれ一対の揺動孔に支持されている。また、この取付状態において、取付座4は、第1部材2(具体的には、第1部材本体21)と鞄の胴体Bとの間に挟持されている。これにより、取付座4を位置決めするための手段を別途設けることなく、一対の円筒22によって貫通された取付座4を容易に位置決めすることができる。
【0031】
(作用効果)
次に、本実施形態の主な作用効果について説明する。
【0032】
本実施形態に係る鞄用具1は、一端面において開口し他端面において閉止する一対の溝23が両側に形成されるとともに一端に雌ねじ22aの形成された円筒22が設けられた第1部材2と、揺動可能に一対の溝23に係合された揺動部材3と、円筒22が挿入されるように第1部材2と組み付けられた状態において一対の溝23の一端面の開口をそれぞれ封止する一対の切欠43aを有するとともに鞄の胴体Bの表面に取り付けられた取付座4と、胴体Bの裏面に取り付けられた取付片5と、取付片5を貫通させて雌ねじ22aにねじ込むことにより、第1部材2が取付座4を介して胴体Bに取り付けられた雄ねじ6と、を備える。
【0033】
この構成によれば、揺動部材3の軸を一対の溝23の一端面の開口から一対の溝23に容易に挿入させることができる。また、取付座4は、円筒22が挿入されるように第1部材2と組み付けられた状態において、一対の溝23の一端面の開口をそれぞれ封止する一対の切欠43aを有するため、揺動部材3の軸を一対の溝23の一端面の開口から離脱しないように一対の溝23に保持することができる。したがって、揺動部材3の軸を無理やり単一の部材に形成された両端閉止の溝に押し込むようなことをする必要がなく、揺動部材3の強度を向上させることができ、鞄用具1全体の強度を向上させることができる。
【0034】
さらに、雄ねじ6は、取付片5を貫通させて円筒22に形成された雌ねじ22aにねじ込むことにより、第1部材2が取付座4を介して鞄の胴体Bに取り付けられているため、揺動部材3を一対の溝23に係合させつつ第1部材2、取付座4及び取付片5(すなわち、鞄用具1)を容易に鞄の胴体Bに取り付けることができる。
【0035】
また、本実施形態では、揺動部材3は、一方の溝23に係合された第1軸31と、第1軸31と同軸で形成されるように他方の溝23に係合された第2軸32と、鞄用ベルトが接続されるとともに第1軸31と第2軸32とを接続させる接続部33と、を有し、円筒22は、平面視にて一対の溝23の間に位置するように一対の溝23と同一直線上に設けられている。
【0036】
この構成によれば、円筒22が平面視にて一対の溝23の間に位置していないもの又は、円筒22が平面視にて一対の溝23と同一直線上に設けられていないものに比べ、第1部材2の小型化を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態では、雄ねじ6が雌ねじ22aにねじ込まれた状態において、取付座4は、第1部材2と胴体Bとの間に挟持されている。
【0038】
この構成によれば、取付座4を位置決めするための手段を別途設けることなく、一対の円筒22によって貫通された取付座4を容易に位置決めすることができる。
【0039】
また、本実施形態では、一対の溝23の他端と一対の切欠43aとによって、揺動部材3の第1軸31及び第2軸32とそれぞれ係合された一対の揺動孔が形成されている。
【0040】
この構成によれば、一対の溝23の長手方向における第1軸31及び第2軸32の変位を効果的に抑制することができるため、揺動部材3のスムーズな揺動動作を容易に実現することができる。
【0041】
(変形例)
上述した実施形態では、第1部材本体21の両側には、一対の溝23が形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、第1部材本体21を貫通する長孔が形成されてもよい。この場合に、長孔は、溝23と同様に、一端面において開口し、かつ、他端面において閉止する。
【0042】
また、この場合に、揺動部材3の第1軸31及び第2軸32を、長孔に挿入可能である単一の軸に統合することができる。そして、この場合に、円筒22を長孔に挿入される単一の軸と干渉しない位置に設ける必要がある。
【0043】
以上、本実施形態及び各変形例について説明したが、上述した実施形態及び各変形例は、本発明の適用例を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上述した実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0044】
1 鞄用具
2 第1部材
3 揺動部材
4 取付座(第2部材)
5 取付片
6 雄ねじ
22 円筒
22a 雌ねじ
23 溝
31 第1軸
32 第2軸
33 接続部
43 突出片
B 胴体
【要約】
【課題】高強度を実現しつつ鞄の胴体への取付を容易に行うことができる鞄用具を提供する。
【解決手段】鞄用具1は、一端において開口し他端において閉止する一対の溝23が両側に形成されるとともに一端に雌ねじ22aの形成された円筒22が設けられた第1部材2と、揺動可能に一対の溝23に係合された揺動部材3と、円筒22が貫通されるように第1部材2と組み付けられた状態において一対の溝23の一端をそれぞれ封止する一対の突出片43を有するとともに鞄の胴体Bの表面に取り付けられた取付座4と、胴体Bの裏面に取り付けられた取付片5と、取付片5を貫通させて雌ねじ22aにねじ込むことにより、第1部材2が取付座4を介して胴体Bに取り付けられた雄ねじ6と、を備える。
【選択図】図1A
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B