(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B24B 1/00 20060101AFI20230220BHJP
B24B 17/10 20060101ALI20230220BHJP
B24B 49/16 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
B24B1/00 F
B24B17/10 P
B24B49/16
(21)【出願番号】P 2022575297
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2022028217
【審査請求日】2022-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597022425
【氏名又は名称】株式会社ジーベックテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】蔭山 佳輝
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/122968(WO,A1)
【文献】特開2020-157425(JP,A)
【文献】特開2019-139755(JP,A)
【文献】国際公開第2019/138595(WO,A1)
【文献】特開2015-112702(JP,A)
【文献】特開平05-031659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B1/00-3/60
B24B9/00-39/06
B24B49/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1のコンピュータ装置を備えるシステムであって、
研磨具によりワークを研磨する際の条件に関する情報と関連付けて、前記条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を記憶する記憶手段と、
ワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、
受け付けた条件に対応する砥材の摩耗速度に関する情報を特定する特定手段と
を備える、システム。
【請求項2】
少なくとも1のコンピュータ装置を備えるシステムであって、
研磨具によりワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、
ワークを研磨する際の条件に関する情報を入力データとし、前記条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を出力データとして機械学習された予測モデルを用いて、受け付けた条件における砥材の摩耗速度に関する情報を特定する特定手段と
を備える、システム。
【請求項3】
特定した摩耗速度に関する情報をもとに、前記条件において研磨した際に研磨具にかかる負荷及び/又は負荷の変化量が所定の範囲となるように、研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を生成する生成手段と
を備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
生成した制御情報をもとに、研磨具の接触方向の位置又は砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御する制御手段と
を備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
生成した制御情報を、前記1のコンピュータ装置とは異なる他のコンピュータ装置に送信する送信手段と
を備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
特定した摩耗速度に関する情報をもとに、研磨具のワークへの切込量が所定の範囲となるように、研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を生成する生成手段と
を備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項7】
生成した制御情報をもとに、研磨具の接触方向の位置又は砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御する制御手段と
を備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
生成した制御情報を、前記1のコンピュータ装置とは異なる他のコンピュータ装置に送信する送信手段と
を備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記1のコンピュータ装置とは異なる他の装置において研磨具によりワークを研磨した際の条件に関する情報、及び、前記条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を受け付ける受付手段と
を備え、
記憶手段が、受け付けた条件に関する情報と関連付けて、受け付けた砥材の摩耗速度に関する情報を記憶する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記1のコンピュータ装置とは異なる他の装置において研磨具によりワークを研磨した際の条件に関する情報、及び、前記条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を受け付ける情報受付手段と
を備え、
予測モデルが、受け付けた条件に関する情報を入力データとし、受け付けた砥材の摩耗速度に関する情報を出力データとして機械学習したものである、請求項2に記載のシステム。
【請求項11】
条件に関する情報が、砥材の種類、ワークの種類、研磨具の回転速度、研磨具の送り速度、研磨前のワークの状態、及び/又は、研磨後のワークの状態に関する情報である、請求項1、2、9、
及び10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
コンピュータ装置において実行されるプログラムであって、
コンピュータ装置を、
研磨具によりワークを研磨する際の条件に関する情報と関連付けて、前記条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を記憶する記憶手段と、
ワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、
受け付けた条件に対応する砥材の摩耗速度に関する情報を特定する特定手段
として機能させる、プログラム。
【請求項13】
コンピュータ装置において実行されるプログラムであって、
コンピュータ装置を、
研磨具によりワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、
ワークを研磨する際の条件に関する情報を入力データとし、前記条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を出力データとして機械学習された予測モデルを用いて、受け付けた条件における砥材の摩耗速度に関する情報を特定する特定手段
として機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥材が摩耗しても、ワークの加工精度を維持することを可能とするためのシステム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械により被加工物であるワークに対して切削、穴あけ等の加工をした際に、ワークの加工面に生じる「バリ」と呼ばれる金属の毛羽が生じることがある。このバリをとる加工(以下、バリ取りという)、又は、バリの生じた角部を削る加工(以下、面取りという)を行うことが知られている。
【0003】
これらの加工は、手作業で、あるいは、数値制御(NC)加工用の工作機械を用いて行われる。工作機械を用いた加工においては、NCプログラム(NCデータともいう)を利用し、工作機械に対して作業者等が直接データを入力する、あるいは、CAD(Computer Aided Design)ソフトにより設計したワークの形状データを用いて、CAM(Computer Aided Manufacturing)ソフトにより、工作機械に取り付けられた工具の経路を特定するなどの方法がとられている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、工作機械を用いてバリ取りや面取り等の加工を行うと、工作機械に取り付けられた研磨具の砥材は、徐々に摩耗していく。砥材の摩耗が進むと、研磨具のワークへの切込量が低下して、ワークの加工精度を維持することが難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、砥材が摩耗しても、ワークの加工精度を維持することを可能とするためのシステム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、
[1]少なくとも1のコンピュータ装置を備えるシステムであって、研磨具によりワークを研磨する際の条件に関する情報と関連付けて、前記条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を記憶する記憶手段と、ワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、受け付けた条件に対応する砥材の摩耗速度に関する情報を特定する特定手段とを備える、システム;
[2]少なくとも1のコンピュータ装置を備えるシステムであって、研磨具によりワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、ワークを研磨する際の条件に関する情報を入力データとし、前記条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を出力データとして機械学習された予測モデルを用いて、受け付けた条件における砥材の摩耗速度に関する情報を特定する特定手段とを備える、システム;
[3]特定した摩耗速度に関する情報をもとに、前記条件において研磨した際に研磨具にかかる負荷及び/又は負荷の変化量が所定の範囲となるように、研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を生成する生成手段とを備える、前記[1]又は[2]に記載のシステム;
[4]生成した制御情報をもとに、研磨具の接触方向の位置又は砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御する制御手段とを備える、前記[3]に記載のシステム;
[5]生成した制御情報を、前記1のコンピュータ装置とは異なる他のコンピュータ装置に送信する送信手段とを備える、前記[3]又は[4]に記載のシステム;
[6]特定した摩耗速度に関する情報をもとに、研磨具のワークへの切込量が所定の範囲となるように、研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を生成する生成手段とを備える、前記[1]又は[2]に記載のシステム;
[7]生成した制御情報をもとに、研磨具の接触方向の位置又は砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御する制御手段とを備える、前記[6]に記載のシステム;
[8]生成した制御情報を、前記1のコンピュータ装置とは異なる他のコンピュータ装置に送信する送信手段とを備える、前記[6]又は[7]に記載のシステム;
[9]前記1のコンピュータ装置とは異なる他の装置において研磨具によりワークを研磨した際の条件に関する情報、及び、前記条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を受け付ける受付手段とを備え、記憶手段が、受け付けた条件に関する情報と関連付けて、受け付けた砥材の摩耗速度に関する情報を記憶する、前記[1]及び[3]~[8]のいずれかに記載のシステム;
[10]前記1のコンピュータ装置とは異なる他の装置において研磨具によりワークを研磨した際の条件に関する情報、及び、前記条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を受け付ける情報受付手段とを備え、予測モデルが、受け付けた条件に関する情報を入力データとし、受け付けた砥材の摩耗速度に関する情報を出力データとして機械学習したものである、前記[2]~[8]のいずれかに記載のシステム;
[11]少なくとも1のコンピュータ装置を備えるシステムであって、研磨具によりワークを研磨する際の条件に関する情報と関連付けて、前記条件において研磨した際に研磨具にかかる負荷及び/又は負荷の変化量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を記憶する記憶手段と、ワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、受け付けた条件に対応する制御情報を特定する特定手段とを備える、システム;
[12]少なくとも1のコンピュータ装置を備えるシステムであって、研磨具によりワークを研磨する際の条件に関する情報と関連付けて、前記条件において研磨具のワークへの切込量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を記憶する記憶手段と、ワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、受け付けた条件に対応する制御情報を特定する特定手段とを備える、システム;
[13]少なくとも1のコンピュータ装置を備えるシステムであって、研磨具によりワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、ワークを研磨する際の条件に関する情報を入力データとし、前記条件において研磨した際に研磨具にかかる負荷及び/又は負荷の変化量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を出力データとして機械学習された予測モデルを用いて、受け付けた条件における制御情報を特定する特定手段とを備える、システム;
[14]少なくとも1のコンピュータ装置を備えるシステムであって、研磨具によりワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、ワークを研磨する際の条件に関する情報を入力データとし、前記条件において研磨具のワークへの切込量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を出力データとして機械学習された予測モデルを用いて、受け付けた条件における制御情報を特定する特定手段とを備える、システム;
[15]特定した制御情報をもとに、研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御する制御手段とを備える、前記[11]~[14]のいずれかに記載のシステム;
[16]特定した制御情報を、前記1のコンピュータ装置とは異なる他のコンピュータ装置に送信する送信手段とを備える、前記[11]~[15]のいずれかに記載のシステム;
[17]前記1のコンピュータ装置とは異なる他の装置において研磨具によりワークを研磨した際の条件に関する情報、及び、前記条件において研磨した際に研磨具にかかる負荷及び/又は負荷の変化量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量に関する情報を受け付ける情報受付手段とを備え、記憶手段が、受け付けた条件に関する情報と関連付けて、受け付けた研磨具の接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量に関する情報を記憶する、前記[11]、[15]及び[16]のいずれかに記載のシステム;
[18]前記1のコンピュータ装置とは異なる他の装置において研磨具によりワークを研磨した際の条件に関する情報、及び、前記条件において研磨した際に研磨具にかかる負荷及び/又は負荷の変化量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量に関する情報を受け付ける情報受付手段とを備え、予測モデルが、受け付けた条件に関する情報を入力データとし、受け付けた研磨具の接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量に関する情報を出力データとして機械学習したものである、前記[12]、[15]及び[16]のいずれかに記載のシステム;
[19]前記1のコンピュータ装置とは異なる他の装置において研磨具によりワークを研磨した際の条件に関する情報、及び、前記条件において研磨具のワークへの切込量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量に関する情報を受け付ける情報受付手段とを備え、記憶手段が、受け付けた条件に関する情報と関連付けて、受け付けた研磨具の接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量に関する情報を記憶する、前記[13]、[15]及び[16]のいずれかに記載のシステム;
[20]前記1のコンピュータ装置とは異なる他の装置において研磨具によりワークを研磨した際の条件に関する情報、及び、前記条件において研磨具のワークへの切込量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量に関する情報を受け付ける情報受付手段とを備え、予測モデルが、受け付けた条件に関する情報を入力データとし、受け付けた研磨具の接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量に関する情報を出力データとして機械学習したものである、[14]~[16]のいずれかに記載のシステム;
[21]条件に関する情報が、砥材の種類、ワークの種類、研磨具の回転速度、研磨具の送り速度、研磨前のワークの状態、及び/又は、研磨後のワークの状態に関する情報である、前記[1]~[20]のいずれかに記載のシステム;
[22]コンピュータ装置において実行されるプログラムであって、コンピュータ装置を、研磨具によりワークを研磨する際の条件に関する情報と関連付けて、前記条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を記憶する記憶手段と、ワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、受け付けた条件に対応する砥材の摩耗速度に関する情報を特定する特定手段として機能させる、プログラム;
[23]コンピュータ装置において実行されるプログラムであって、コンピュータ装置を、研磨具によりワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、ワークを研磨する際の条件に関する情報を入力データとし、前記条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を出力データとして機械学習された予測モデルを用いて、受け付けた条件における砥材の摩耗速度に関する情報を特定する特定手段として機能させる、プログラム;
[24]コンピュータ装置において実行されるプログラムであって、コンピュータ装置を、研磨具によりワークを研磨する際の条件に関する情報と関連付けて、前記条件において研磨した際に研磨具にかかる負荷及び/又は負荷の変化量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を記憶する記憶手段と、ワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、受け付けた条件に対応する制御情報を特定する特定手段として機能させる、プログラム;
[25]コンピュータ装置において実行されるプログラムであって、コンピュータ装置を、研磨具によりワークを研磨する際の条件に関する情報と関連付けて、前記条件において研磨具のワークへの切込量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を記憶する記憶手段と、ワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、受け付けた条件に対応する制御情報を特定する特定手段として機能させる、プログラム;
[26]コンピュータ装置において実行されるプログラムであって、コンピュータ装置を、研磨具によりワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、ワークを研磨する際の条件に関する情報を入力データとし、前記条件において研磨した際に研磨具にかかる負荷及び/又は負荷の変化量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を出力データとして機械学習された予測モデルを用いて、受け付けた条件における制御情報を特定する特定手段として機能させる、プログラム;
[27]コンピュータ装置において実行されるプログラムであって、コンピュータ装置を、研磨具によりワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、ワークを研磨する際の条件に関する情報を入力データとし、前記条件において研磨具のワークへの切込量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を出力データとして機械学習された予測モデルを用いて、受け付けた条件における制御情報を特定する特定手段として機能させる、プログラム;
により達成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、砥材が摩耗しても、ワークの加工精度を維持することを可能とするためのシステム及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる、研磨具によるワークの加工の一例を説明する図である。
【
図2】本発明の実施の形態にかかる、本発明の実施の形態にかかる研磨具の構造を表す模式図である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかる、制御情報の生成処理のフローチャートである。
【
図4】本発明の実施の形態にかかる、表示画面の一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態にかかる、材質マスタテーブルを表す図である。
【
図6】本発明の実施の形態にかかる、加工前におけるワークに生じたバリの状態を表す図である。
【
図7】本発明の実施の形態にかかる、加工後におけるワークを表す図である。
【
図8】本発明の実施の形態にかかる、エッジ品質マスタテーブルを表す図である。
【
図9】本発明の実施の形態にかかる、研磨具マスタテーブルの例を示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態にかかる、摩耗速度マスタテーブルを表す図である。
【
図11】本発明の実施の形態にかかる、負荷及び負荷の変化量の一例を示す図である。
【
図12】本発明の実施の形態にかかる、制御情報の特定処理のフローチャートである。
【
図13】本発明の実施の形態にかかる、制御情報マスタテーブルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、以下、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨に反しない限り、適宜変更をして実施することができる。また、以下で説明するフローチャートを構成する各処理は、処理内容に矛盾や不整合が生じない範囲で順不同である。また、処理内容に矛盾や不整合が生じない範囲で、処理の一部を省略する又は他の処理を追加してもよい。
【0011】
(システム)
本発明のシステムは、少なくとも1のコンピュータ装置を備えるものである。本発明のシステムに備えられるコンピュータ装置は、1のコンピュータ装置のみであってもよく、複数のコンピュータ装置であってもよい。本発明のシステムに備えられるコンピュータ装置は、工作機械に備えられたコンピュータ装置であってもよい。工作機械に備えられたコンピュータ装置は、工作機械を制御して、ワーク(被加工物)の加工を実行することができる。
【0012】
また、本発明のシステムに備えられるコンピュータ装置(以下、本発明のコンピュータ装置ともいう)は、工作機械に備えられたコンピュータ装置ではなく、工作機械に備えられたコンピュータ装置と通信接続が可能なコンピュータ装置であってもよい。
【0013】
本発明のコンピュータ装置は、制御部、RAM、ストレージ部を少なくとも備え、それぞれ内部バスにより接続されている。制御部は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)から構成され、ストレージ部に格納されたプログラムを実行し、コンピュータ装置の制御を行う。制御部は時間を計時する内部タイマを備えている。RAM(Random Access Memory)は、制御部のワークエリアである。ストレージ部は、プログラムやデータを保存するための記憶領域である。制御部は、プログラム及びデータをRAMから読み出し、プログラム実行処理を行う。
【0014】
本発明のコンピュータ装置は、表示部及び/又は入力部を備えていてもよい。表示部には、制御部における演算の結果など種々の情報が表示される。表示部は、タッチセンサを備えるタッチパネルであってもよい。このタッチパネルが入力部として機能する。利用者は、入力部を操作して、情報の入力、操作指示の入力を行うことができる。
【0015】
本発明のコンピュータ装置は、通信インタフェースを備えていてもよい。通信インタフェースは無線又は有線により通信ネットワークに接続が可能であり、通信ネットワークを介して、他のコンピュータ装置とデータを送受信することが可能である。通信インタフェースを介して受信したデータは、RAMにロードされ、制御部により演算処理が行われる。
【0016】
本発明のコンピュータ装置が、工作機械に備えられたコンピュータ装置である場合、表示部には、利用者が、工作機械を操作するためのメニュー等の情報等が表示される。利用者が、これらの表示されたメニューを選択することで、工作機械によるワークの加工を実行することができる。また、工作機械に備えられたコンピュータ装置において、制御情報が特定され、特定された制御情報にしたがって、工作機械の接触方向(研磨具の砥材をワークに接触させ、ワークへ押し込むことの可能な方向)の位置を制御することができる。
【0017】
また、本発明のコンピュータ装置は、後述する研磨具ホルダに備えられていてもよい。この場合、本発明のコンピュータ装置としては、マイコンを用いることができる。研磨具ホルダに備えられたコンピュータ装置において、制御情報が特定され、特定された制御情報にしたがって、砥材の接触方向(研磨具の砥材をワークに接触させ、ワークへ押し込むことの可能な方向)の突出量又は切込量を制御することができる。
【0018】
(研磨具)
図1は、本発明の実施の形態にかかる、研磨具によるワークの加工の一例を説明する図である。
図1に示すように、研磨具1は、研磨具ホルダ2と、研磨具ホルダ2に着脱可能に保持される砥材6とを備える。研磨具ホルダ2は、大径部3、スリーブ4及びシャンク5により構成される。研磨具ホルダ2は、砥材6の端部がスリーブ4から突出した状態となるように、砥材6を保持する。研磨具1を回転させ、この回転軸方向(つまり、シャンク5の軸方向に平行な方向)にワーク7を押し込んで研磨を行う場合、回転軸方向が前記接触方向となる。ただし、以下では、回転軸方向をZ軸方向(回転軸方向)とする。
【0019】
砥材6は、ワーク7の被加工面8を研磨するために用いられるものであり、例えば、
図1に示すような複数本の線状砥材を束にしてブラシ状に形成したブラシ状砥材や、弾性砥石などが用いられる。ワーク7の材質は、金属、樹脂のいずれであってもよい。ワーク7の材質に合わせて、砥材6を適宜選択することができる。
【0020】
工作機械を用いてワーク7に対して切削、研削、穴あけ等の加工をした際に、ワーク7の加工面に「バリ」と呼ばれる金属の毛羽が生じることがある。工作機械に研磨具1を接続し、砥材6をワーク7に接触させながら、シャンク5を軸(回転軸)にして研磨具1を時計回り又は反時計回りに回転させることで、被加工面8が研磨され、被加工面8に発生したバリを除去することができる。この場合に、被加工面8が平面である場合は、回転軸Rが被加工面8に対して垂直となるように、砥材6をワーク7に接触させることが好ましい。また、被加工面8が曲面である場合は、回転軸Rが、砥材6とワークの接触点における被加工面8の法線と平行となるように、砥材6をワーク7に接触させることが好ましい。
【0021】
(研磨加工)
ところで、研磨具1は、研磨具1のシャンク5が工作機械のスピンドルに接続された状態で使用される。研磨具1のシャンク5がスピンドルに接続された状態で、予めプログラムにより設定された経路に沿ってスピンドルを移動させることで、研磨具1を加工経路に沿って移動させることができる。その結果、研磨具1によりワーク7の被加工面8の研磨加工を実現することができる。工作機械による研磨具1の加工経路の制御は、Z軸方向に垂直なXY平面上の制御だけでなく、Z軸方向の位置の制御も可能である。
【0022】
研磨加工においては、1回の加工においてワーク7の被加工面8に対して、研磨具1の先端(砥材6を有する研磨具1の場合は砥材6の先端)を押し込む量(以下、切込量という)を所定の値に設定することができる。例えば、突出量が5mmの砥材6を有する研磨具1を用いる場合、切込量を2mmとすると、ワーク7の被加工面8と研磨具ホルダ2のスリーブ4先端までの距離は3mmになる。切込量が0mmとは、例えば、突出量が5mmの砥材6を有する研磨具1を用いる場合、ワーク7の被加工面8と研磨具ホルダ2のスリーブ4先端までの距離が5mmの場合(すなわち、ワーク7の被加工面8に砥材6の先端が接する状態)である。
【0023】
研磨加工を行うと、砥材6が摩耗し、砥材6の突出量が短くなる。研磨具1のZ軸方向の位置が同一のままである場合、研磨加工により砥材6の突出量が短くなると、切込量が小さくなる。砥材6の摩耗が進み、切込量がゼロになると、研磨加工を行うことができなくなる。そのため、研磨加工による砥材6の摩耗の状況に合わせて、切込量を所定の範囲内(又は所定の値)に維持することが必要となる。
【0024】
この切込量を所定の範囲内に調整する方法、又は、この切込量を所定の値に維持する方法として、研磨具1のZ軸方向の位置を変更する方法、又は、砥材6の突出量を変更する方法が挙げられる。
【0025】
より具体的には、切込量を所定の範囲内に調整する方法として、研磨加工により切込量が所定の値となった場合に、研磨具1のZ軸方向の位置を所定の距離だけワーク7側へ移動させる方法があげられる。また、切込量を所定の範囲内に調整する方法として、研磨加工により切込量が所定の値となった場合に、砥材6の突出量を調整する機能を有する研磨具ホルダ2を利用し、砥材6をスリーブ4から所定量だけ突出させる方法があげられる。
【0026】
切込量を所定の値に維持する方法として、砥材6が摩耗し短くなる速度にあわせて、研磨具1のZ軸方向の位置をワーク7側へ継続的に移動させる方法があげられる。切込量を所定の値に維持する方法として、砥材6の突出量を調整する機能を有する研磨具ホルダ2を利用し、砥材6が摩耗し短くなる速度にあわせて、砥材6をスリーブ4から継続的に突出させる方法があげられる。
【0027】
切込量に応じて、研磨具1にかかる負荷は変化する。一般に、切込量が大きいと、研磨具1にかかる負荷は大きくなる。また、切込量が小さいと、研磨具1にかかる負荷は小さくなる。よって、研磨具1の切込量を所定の範囲内(又は所定の値)に維持することで、研磨具1にかかる負荷及び/又は負荷の変化量を所定の範囲内(又は所定の値)に維持することができる。なお、研磨具1の砥材6が摩耗して、その長さが短くなった状態において、砥材長さが長いときと同じ切込量で研磨加工をすると、砥材6のスリーブ4からの突出量にかかわらず、研磨具1にかかる負荷が大きくなることがある。このように、研磨具1の砥材6が摩耗して、砥材6のスリーブ4からの突出量にかかわらず、研磨具1にかかる負荷が大きくなる場合には、測定された研磨具1の負荷をもとに補正をした値を、研磨具1の負荷とすることができる。負荷を補正するための算出式は、砥材6の径や線材種に応じて異なるものが用いられる。なお、負荷の変化量は、例えば、単位時間当たりの負荷の変化量を意味する。
【0028】
研磨具1にかかる負荷と、負荷の変化量を測定する方法は、公知の方法が用いられ、特に限定されない。研磨具1にかかる負荷と、負荷の変化量を測定する方法は、例えば、以下で説明する方法が用いられる。
【0029】
図2は、本発明の実施の形態にかかる研磨具の構造を表す模式図である。
図2は、研磨具1の回転軸Rを含む平面における断面図を示す。
図2(a)及び
図2(b)において、砥材6は、研磨具ホルダ2の大径部3及びスリーブ4の内側に備えられる。砥材6は、スリーブ4から突き出される側とは反対側の端部が砥材ホルダ6aに保持される。砥材ホルダ6aは貫通孔6bを有し、貫通孔6bに大径部3に連結された送り軸3aが貫通している。送り軸3aは、シャンク5(回転軸R)と同軸である。砥材ホルダ6aは、研磨具ホルダ2の大径部3内側に装着部を介して着脱可能に保持される。
【0030】
研磨具1は、大径部3の内側に負荷検出器Dを備える。負荷検出器Dは、例えば、圧力センサや、振動検出器、研磨具に発生している音の振幅を検出する音波検出器とすることができる。負荷検出器Dが圧力センサの場合、負荷検出器Dは、送り軸3aに後方Z1から接触して当該送り軸3aにかかるZ軸方向の圧力を検出する。
【0031】
負荷を検出するために用いられる研磨具ホルダ2は、少なくともCPUを備える制御部と、制御部に接続された記憶部と、タイマとを備える制御系統を備える。制御部の入力側には負荷検出器Dが接続されている。制御部の出力側には、モータが接続されている。また、研磨具ホルダ2は、モータに電力を供給するモータ用電池と、制御部及びタイマに電力を供給する制御用電池とを備える。モータ用電池及び制御用電池は、外部からケーブルを接続して充電可能である。
【0032】
研磨具1を用いて研磨加工する間、制御部は、負荷検出器Dからの出力(負荷)を検出するとともに、予め定めた単位時間当たりの負荷変化量を逐次に算出する。より具体的には、制御部は、負荷検出器Dから出力される負荷を一定周期で取得するとともに、時系列に沿って順番に取得した3つの負荷から、単位時間あたりの負荷変化量を取得する。ここで、負荷は、0.001秒~1秒間の間隔で取得するものとすることができる。負荷の変化量を算出する単位時間は、負荷を取得する感覚の3倍の時間である。負荷の変化量の算出は、負荷を取得する間隔と同一の間隔で行われる。
【0033】
(研磨具のZ軸方向の位置の制御)
研磨具1は、工作機械のスピンドルに取り付けられている。このスピンドルを回転させ、研磨具1を回転させることで、ワーク7を研磨することができる。工作機械の制御部は、研磨具1の加工経路の制御情報にしたがって、スピンドルの移動を制御する。スピンドルを移動させることで、研磨具1を加工経路に沿って移動させることができる。研磨具1の加工経路の制御は、XY平面上の制御だけでなく、Z軸方向の制御も可能である。
【0034】
(砥材の突出量の制御)
図2(a)及び
図2(b)において、砥材6は、研磨具ホルダ2の大径部3及びスリーブ4の内側に備えられる。砥材6は、スリーブ4から突き出される側とは反対側の端部が砥材ホルダ6aに保持される。砥材ホルダ6aは貫通孔6bを有し、貫通孔6bに大径部3に連結された送り軸3aが貫通している。送り軸3aは、シャンク5(回転軸R)と同軸である。
【0035】
図2(a)は、研磨具のスリーブ4の内側に備えられた砥材6の全長がLaの場合、
図2(b)は、研磨具のスリーブ4の内側に備えられた砥材6の全長がLaよりも短いLbの場合を示す。砥材6の全長がLbとなった場合に、砥材6の全長がLaの場合と同じ突出量になるように変更する場合について説明する。
【0036】
砥材6の突出量は、砥材6を備えた砥材ホルダ6aを送り軸3a(回転軸R)に沿ってスリーブ4が接続する大径部3側(
図2において上方向、Z1方向ともいう)、又は、スリーブ4開口側、つまり砥材6の先端側(
図2において下方向、Z2方向ともいう)に移動させることにより変更する(
図2参照)。砥材ホルダ6aを送り軸3aに沿って移動させることができる限り、その構造は特に限定されないが、例えば、送り軸3aと砥材ホルダ6aの貫通孔6bとに、ねじが切られており、ねじがまわることで砥材ホルダ6aを送り軸3aに沿って移動可能となる機構を採用することができる。
【0037】
突出量の変更は、手動で行うこともできる。手動で行う場合、例えば、大径部3にダイヤルを備え、ダイヤルを回すとねじがまわり、砥材ホルダ6aが送り軸3aに沿って移動する機構とすることができる。また、突出量の変更を自動で行なう場合、研磨具ホルダ2に、少なくとも制御部と通信部を含むマイコンを備え、大径部3に電池及びモータを備える態様とすることができる。この場合、突出量の変更は、マイコンの制御部の指示に基づいて、電池によりモータを駆動させることでダイヤルが回り、砥材ホルダ6aを送り軸3aに沿って移動させる機構とすることができる。
【0038】
ところで、
図2(a)は、砥材ホルダ6aが最も高い位置にあり、同じ長さの砥材6であれば、最も突出量が小さくなる。一方、
図2(b)は、砥材ホルダ6aが下側に移動している。砥材6の突出量は、摩耗した砥材6の長さによっても異なる。そのため、
図2(b)のような研磨ホルダ6aが、
図2(a)の最上位位置から下側に移動しているような場合において、後述する砥材6の突出量又は切込量の制御は、研磨ホルダ6aの移動量、つまり、(Lb-La)の値(つまり、研磨ホルダ6aの移動量)を制御することによって行われる。
【0039】
後述する第一の実施の形態及び第二の実施の形態にかかるシステムは、ワークを研磨する際の条件(以下において、加工条件ということがある。)に応じて、研磨具1の砥材6の摩耗速度を特定することができるものである。このような加工条件に応じて、研磨具1の砥材6の摩耗速度を特定するシステムの場合、特定した摩耗速度をもとに、研磨具1のZ軸方向の位置又は砥材6のZ軸方向の突出量を制御することで、研磨具1のワークへの切込量を所定の範囲内(又は所定の値)に維持する、又は、研磨具1にかかる負荷又は負荷の単位時間当たりの変化量を所定の範囲内(又は所定の値)に維持することが可能となる。
【0040】
加工条件に応じて、研磨具1の砥材6の摩耗速度を特定できるシステムにおいて、研磨具1が取り付けられる工作機械が、研磨具1の砥材6の摩耗速度を特定するコンピュータ装置として機能してもよい。この場合、工作機械が、研磨具1の砥材6の摩耗速度を特定し、さらに、工作機械において、特定した摩耗速度をもとに、研磨具1のワーク7への切込量が所定の範囲内(又は所定の値)となるように、又は、研磨具1にかかる負荷又は負荷の単位時間当たりの変化量が所定の範囲内(又は所定の値)となるように、研磨具1のZ軸方向の位置を制御することができる。
【0041】
また、加工条件に応じて、研磨具1の砥材6の摩耗速度を特定できるシステムにおいて、工作機械とは異なるコンピュータ装置が、研磨具1の砥材6の摩耗速度を特定するコンピュータ装置として機能してもよい。この場合、このコンピュータ装置が、研磨具1の砥材6の摩耗速度に関する情報を特定し、特定した摩耗速度に関する情報をもとに、研磨具1のZ軸方向の位置を制御するための制御情報、又は、砥材6のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を生成し、生成した制御情報を工作機械又は研磨具ホルダ2へ送信することができる。工作機械では、受信した制御情報にしたがって、研磨具1のZ軸方向の位置を制御する。また、研磨具ホルダ2では、受信した制御情報にしたがって、砥材6のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御する。
【0042】
この場合に、加工条件は、工作機械又は工作機械とは異なる装置にて入力され、入力された加工条件がコンピュータ装置に送信され、コンピュータ装置にて、受信した加工条件をもとに、摩耗速度に関する情報を特定し、制御情報を生成してもよい。
【0043】
なお、このコンピュータ装置は、複数の工作機械と通信接続が可能であり、複数の工作機械から加工条件を受信し、受信した加工条件をもとに生成した制御情報を、対応する工作機械に送信することができる。
【0044】
また、加工条件に応じて、研磨具1の砥材6の摩耗速度を特定できるシステムにおいて、工作機械とは異なるコンピュータ装置が、研磨具1の砥材6の摩耗速度を特定する装置として機能する場合に、特定した研磨具1の砥材6の摩耗速度に関する情報を、工作機械へ送信してもよい。この場合、工作機械では、受信した摩耗速度に関する情報をもとに、研磨具1のZ軸方向の位置を制御するための制御情報、又は、砥材6のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を生成し、生成した制御情報にしたがって、研磨具1のZ軸方向の位置、又は、砥材6のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御することができる。
【0045】
この場合に、加工条件は、工作機械又は工作機械とは異なる装置にて入力され、入力された加工条件がコンピュータ装置に送信され、コンピュータ装置にて、受信した加工条件をもとに、摩耗速度に関する情報を特定してもよい。
【0046】
なお、このコンピュータ装置は、複数の工作機械と通信接続が可能であり、複数の工作機械から加工条件を受信し、受信した加工条件をもとに特定した摩耗速度に関する情報を、対応する工作機械に送信することができる。
【0047】
後述する第三の実施の形態及び第四の実施の形態にかかるシステムは、加工条件に応じて、研磨の際に研磨具1にかかる負荷及び/又は負荷の変化量を所定の範囲とするための研磨具1のZ軸方向の位置又は研磨具1の有する砥材6のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を特定することができるものである。また、第三の実施の形態及び第四の実施の形態にかかるシステムは、加工条件に応じて、研磨具のワークへの切込量を所定の範囲とするための研磨具1のZ軸方向の位置又は研磨具1の有する砥材6のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を特定することができるものである。
【0048】
このような加工条件に応じて制御情報を特定するシステムにおいては、研磨具1が取り付けられる工作機械が、制御情報を特定するコンピュータ装置として機能してもよい。この場合、工作機械が、特定した制御情報にしたがって、研磨具1のZ軸方向の位置又は研磨具1の有する砥材6のZ軸方向の突出量若しくは切込量の制御を実行する。
【0049】
また、このような加工条件に応じて制御情報を特定するシステムにおいては、工作機械とは異なるコンピュータ装置が、研磨具1の砥材6の制御情報を特定するコンピュータ装置として機能してもよい。この場合、このコンピュータ装置が、特定した制御情報を工作機械又は研磨具ホルダ2へ送信することができる。工作機械では、受信した制御情報にしたがって、研磨具1のZ軸方向の位置を制御する。また、研磨具ホルダ2では、受信した制御情報にしたがって、砥材6のZ軸方向の突出量又は切込量を制御する。
【0050】
この場合に、加工条件は、工作機械又は工作機械とは異なる装置にて入力され、入力された加工条件がコンピュータ装置に送信され、コンピュータ装置にて、受信した加工条件をもとに、制御情報を生成してもよい。
【0051】
なお、このコンピュータ装置は、複数の工作機械と通信接続が可能であり、複数の工作機械から加工条件を受信し、受信した加工条件をもとに生成した制御情報を、対応する工作機械に送信することができる。
【0052】
後述する第一の実施の形態のシステムは、コンピュータ装置において、研磨具1によりワーク7を研磨する際の加工条件に関する情報と関連付けて、前記加工条件における研磨具1の砥材6の摩耗速度に関する情報をマスタテーブル(後述する摩耗速度テーブル)に記憶しておき、入力された加工条件に応じて、マスタテーブルを参照して、研磨具1の砥材6の摩耗速度を特定するものである。このマスタテーブルに記憶される加工条件に関する情報と、摩耗速度に関する情報は、他の装置から受信した情報により追加されることとしてもよい。例えば、他の装置にて、ワークの研磨が実行され、この際の加工条件に関する情報と、測定された摩耗速度に関する情報が関連付けて、コンピュータ装置のマスタテーブルに追加して記憶される。このようにすることで、より特定される摩耗速度の精度が高くなる。
【0053】
後述する第二の実施の形態のシステムは、コンピュータ装置において、ワーク7を研磨する際の加工条件に関する情報を入力データとし、この加工条件における研磨具1の砥材6の摩耗速度に関する情報を出力データとして機械学習された予測モデル(学習モデル)を用いて、入力された加工条件における砥材6の摩耗速度を特定するものである。ここで、他の装置から受信した情報を、この予測モデルの教師データとしてもよい。例えば、他の装置にてワーク7の研磨が実行された場合における、加工条件に関する情報を入力データとし、測定された摩耗速度に関する情報を出力データとする。このようにすることで、より特定される摩耗速度の精度が高くなる。
【0054】
後述する第三の実施の形態のシステムは、コンピュータ装置において、研磨具1によりワーク7を研磨する際の加工条件に関する情報と関連付けて、前記加工条件における制御情報をマスタテーブル(後述する制御情報テーブル)に記憶しておき、入力された加工条件に応じて、マスタテーブルを参照して、制御情報を特定するものである。このマスタテーブルに記憶される加工条件に関する情報と、制御情報は、他の装置から受信した情報により追加されることとしてもよい。例えば、他の装置にて、ワークの研磨が実行され、この際の加工条件に関する情報と、研磨具1にかかる負荷及び/又は負荷の変化量が所定の範囲となるように、研磨具1のワーク7のZ軸方向の位置又は砥材6のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御した際の制御情報が関連付けて、コンピュータ装置のマスタテーブルに追加して記憶される。また、例えば、他の装置にて、ワーク7の研磨が実行され、この際の加工条件に関する情報と、切込量が所定の範囲となるように、研磨具1のワークのZ軸方向の位置又は砥材6のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御した際の制御情報が関連付けて、コンピュータ装置のマスタテーブルに追加して記憶される。このようにすることで、より特定される制御情報の精度が高くなる。
【0055】
後述する第四の実施の形態のシステムは、コンピュータ装置において、ワーク7を研磨する際の加工条件に関する情報を入力データとし、この加工条件において、研磨具1にかかる負荷及び/若しくは負荷の変化量を所定の範囲内とすることができる制御情報、又は、切込量を所定の範囲内とすることができる制御情報を出力データとして機械学習された予測モデルを用いて、入力された加工条件における砥材6の制御情報を特定するものである。ここで、他の装置から受信した情報を、この予測モデルの教師データとしてもよい。例えば、他の装置にてワーク7の研磨が実行された場合における、加工条件に関する情報を入力データとし、研磨具1にかかる負荷及び/若しくは負荷の変化量を所定の範囲内とした制御情報、又は、研磨具1の切込量を所定の範囲内とした制御情報を出力データとする。このようにすることで、入力した加工条件に応じた、研磨具1にかかる負荷及び/若しくは負荷の変化量が所定の範囲内となる制御情報、又は、研磨具1の切込量が所定の範囲内となる制御情報を得ることが可能となる。
【0056】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態は、研磨具によりワークを研磨する際の加工条件に関する情報と関連付けて、前記加工条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を記憶しておき、ワークを研磨する際の加工条件に対応する砥材の摩耗速度を特定するシステムに関する。システムは、特定した摩耗速度をもとに、前記加工条件において研磨した際に研磨具にかかる負荷及び/若しくは負荷の変化量が所定の範囲となるように、又は、研磨具のワークへの切込量が所定の範囲となるように、研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を生成する。
【0057】
図3は、本発明の実施の形態にかかる、制御情報の生成処理のフローチャートである。以下では、工作機械に備えられたコンピュータ装置において、摩耗速度を特定し、制御情報を生成する場合について、説明をする。まず、利用者は、工作機械に備えられた表示部を介して、各種の加工条件を入力する。入力される加工条件としては、任意の条件を入力することができる。入力する加工条件は、これから実際にワークを研磨する際の条件でもよく、また、実際にはワークを加工しないが、摩耗速度等を見積もることを目的とした、仮定の条件であってもよい。
【0058】
加工条件とは、ワークを研磨する際の条件であって、ワークの加工及び砥材の摩耗に影響を与え得る条件をいう。加工条件としては、例えば、ワークの材質や物性、加工に用いる研磨具の種類や物性、バリの状態などの加工前のワークの状態、加工後のワークの品質などが挙げられる。これらの条件の他、ワークを加工する環境に関する条件(温度、湿度等)を加工条件に含めてもよい。入力された条件は、工作機械の記憶部に記憶される。以下では、ワークに関する情報と、加工前のバリの状態、加工後の品質を加工条件として入力する場合について説明する。
【0059】
図4は、本発明の実施の形態にかかる、表示部の表示画面の一例を示す図である。表示画面50は、利用者が入力する条件ごとに、例えば、ワークに関する情報51と、バリの状態52、加工後の品質53を加工条件について数値又は数値の選択により条件を入力可能に構成される。以下、各条件の入力について説明をする。
【0060】
利用者による表示部への操作により、ワークに関する情報51の入力を受け付ける(ステップS1)。ワークに関する情報には、ワークの硬度及び/又は引張強さ、並びに、比切削抵抗に関する情報が含まれる。硬度の値が引張強さの値と比例する場合には、硬度から引張強さを、あるいは、引張強さから硬度を算出するようにしてもよく、いずれか一方の情報の入力を受け付けるようにしてもよい。さらに、加工対象の表面の面性状(素材面であるか否か、面粗度等)に関する情報の入力を受け付けるようにしてもよい。すなわち、ワークに関する情報には、ワークを構成する材料の材質に基づいた特性を表す材料特性が含まれる。
【0061】
図5は、本発明の実施の形態にかかる、材質マスタテーブルを表す図である。材質マスタテーブル60は、工作機械の記憶部に記憶される。材質マスタテーブル60は、ワークの材質61ごとに、分類コード62に関連付けて、硬度63、引張強さ64、及び比切削抵抗65が記憶されている。ワークの材質61は、ISO及びJIS-B50431の超硬合金の選択基準にならった7系列に分類される。硬度63、引張強さ64、及び比切削抵抗65は、それぞれ所定の測定方法で測定された値が設定され得る。ワークに関する情報51として、
図5に示す材質61、分類コード62を入力するようにしてもよい(
図4)。利用者は、材質マスタテーブル60に沿って材質61、分類コード62を入力するだけで、材質61の諸物性を入力することなく、条件を設定することができる。
【0062】
次に、利用者による表示部への操作により、加工前のワークのバリの状態52に関する情報の入力を受け付ける(ステップS2)。次に、利用者による表示部への操作により、加工後の品質53に関する情報の入力を受け付ける(ステップS3)。
図6は、本発明の実施の形態にかかる、加工前におけるワークに生じたバリの状態を表す図である。
図6(a)は、ワークの上面鉛直方向に突出するバリである縦バリを表す。縦バリの場合は、ワークの上面水平方向のバリの長さを「バリ厚み」といい、ワークの鉛直方向のバリの長さを「バリ高さ」という。
図6(b)は、ワークの上面水平方向に突出するバリである横バリを表す。横バリの場合は、ワークの上面水平方向のバリの長さを「バリ高さ」といい、ワークの上面鉛直方向のバリの長さを「バリ厚み」という。切削、穴あけ等の加工により生じるバリは、縦バリ又は横バリのいずれかに分類可能である。
【0063】
図7は、本発明の実施の形態にかかる、加工後におけるワークを表す図である。
図7(a)及び
図7(b)は、加工後のワークのエッジを水平方向視した図である。ここで、エッジとは、ワークの鉛直方向に平行な面と垂直な面との二つの面の交わり部である。また、交わり部とは、稜線をいう。
【0064】
図7(a)は、ワークの側面よりも上面に対してなだらかな傾斜を有するように加工した場合の加工後の状態である。
図7(a)のワークは、ワークの上面水平方向に対する加工後の長さである上面品質が、ワークの上面鉛直方向に対する加工後の長さである深さ品質より長く加工される。
図7(b)は、ワークの上面よりも側面に対してなだらかな傾斜を有するように加工した場合の加工後の状態である。
図7(b)のワークは、上面品質より深さ品質の方が長く加工される。
【0065】
図8は、本発明の実施の形態にかかる、エッジ品質マスタテーブルを表す図である。エッジ品質マスタテーブル70には、エッジ品質呼称71に関連付けて、寸法72が記憶されている。エッジ品質呼称71は、例えば、ワークの上面と側面とが交わるエッジにおいて、上面と側面とがなす角度が90°、つまりエッジがいわゆるピン角である状態の角を基準点としてエッジ品質呼称71を「0」とした場合に、加工前のバリの高さ及び厚みの寸法をプラス方向に定め、加工後の上面品質及び深さ品質の寸法をマイナス方向に定めて、エッジの品質基準を表すようにしたものである。エッジ品質に関しては、日本工業規格(JIS B0721-2004を参照)に定められているが、これに限定されるものではなく、独自に定めたエッジ品質基準を用いてもよい。
【0066】
エッジ品質マスタテーブル70を用いてより詳細に説明すると、例えば、エッジ品質呼称71が「マイナス2」である場合には、寸法72は基準点から計算して-0.2mm以下の寸法であることを示す。同様に、エッジ品質呼称71が「プラス1」である場合には、寸法72は基準点から計算して0より大きく+0.2mm未満の寸法であることを示す。
図6(a)に示す縦バリの高さが+0.3mmであり、厚みが+0.1mmである場合には、バリ高さは「プラス2」、バリ厚みは「プラス1」となる。同様に、
図7(a)に示す上面品質が-0.4mmであり、深さ品質が-0.1mmである場合には、上面品質は「マイナス2」、深さ品質は「マイナス1」となる。
【0067】
ステップS2にて入力されるバリの状態に関する情報とは、例えば、
図6(a)に示す縦バリ又は
図6(b)に示す横バリのバリ厚み及びバリ高さが、
図8に示したエッジ品質マスタテーブルのいずれの寸法72に該当するかを表す情報である。すなわち、該当する寸法72に対応するエッジ品質呼称71が、エッジ部のバリの状態として設定され得る。例えば、
図6(a)に示す縦バリの高さが+0.3mmであり、厚みが+0.1mmである場合であれば、ステップS2にて、バリ高さは「プラス2」、バリ厚みは「プラス1」と入力される。バリに関する大きさの計測は、倣い制御や視覚センサにより自動で計測してもよいし、利用者が手動で計測してもよい。
【0068】
ステップS3にて入力される加工後の品質に関する情報とは、例えば、
図7(a)又は
図7(b)に示す上面品質又は深さ品質が、
図8に示したエッジ品質マスタテーブルのいずれの寸法72に該当するかを、エッジ品質呼称71を用いて表すものである。すなわち、該当する寸法72に対応するエッジ品質呼称71が、エッジ部のバリの状態として設定され得る。ここでは、加工を行う利用者が、要求するエッジ品質の数値を直接入力する、あるいは、エッジ品質マスタテーブル70に記憶された寸法72を参照していずれかのエッジ品質呼称71を選択することにより、加工後の品質を指定できるようにしてもよい。このように設計することで、利用者は加工後の品質だけを意識すれば加工処理を行うことができ、直感的かつ効率的に加工条件を設定することができる。
【0069】
複数の大きさのバリが存在する場合には、バリに関する大きさは、最大の大きさを入力する情報として採用してもよい。また、計測したデータを入力することで、エッジ品質マスタテーブル70を参照して自動でエッジ品質が選択されるように設計してもよい。
【0070】
なお、加工後の品質に関する情報には、ステップS2において受け付けたバリの状態に関する情報よりも基準が低くなるような情報を設定することはできないものとする。基準は、例えば、「マイナス2」が最も低く、「プラス2」が最も高いと設定することができる。このとき、バリの状態がマイナス1である場合に、加工後の品質をプラス1に設定することはできない。すなわち、バリの状態に対して、加工後の品質を増加させることはできない。
【0071】
第1の実施の形態において、上記加工条件には、加工に使用する研磨具に関する情報を含めてもよい。ステップS1において受け付けられたワークに関する情報、あるいは、ステップS2において受け付けられたバリの状態に関する情報に基づいて選択できるようにしてもよい。
【0072】
加工条件として、加工に使用する研磨具に関する情報を入力する場合、
図9に示すような、研磨具マスタテーブルを用意することができる。研磨具マスタテーブル80には、例えば、研磨具No81に関連付けて、研磨具径82、線材種83、線材長84、及びセグメント数85が記憶されている。
【0073】
研磨具径82は、研磨具のうち、加工の実行に使用される刃部やブラシ部の直径を表す。線材種83は、加工の実行に使用される刃部やブラシ部の材質を表す。線材長84は、加工の実行に使用される刃部やブラシ部の長さを表す。セグメント数85は、研磨具がブラシ部を有する場合に、ブラシの束の数を表す。これらの情報に加えて、研磨具No81毎に、材質マスタテーブル60に記憶された材質61に対する使用が適切か否かを記憶するようにしてもよい。表示部には、複数の研磨具1について、研磨具マスターブルに登録された情報、例えば、研磨具No81、研磨具径82、線材種83、線材長84及び/又はセグメント数85が表示され、これらの研磨具1のいずれを利用するのかを入力することができる。
【0074】
次に、工作機械は、表示部を介して、研磨条件54の入力を受け付ける(ステップS4)。研磨条件54とは、具体的には、ワークと加工に用いる研磨具との相対的な位置関係や速度を定めるものであって、ワーク又は研磨具の回転速度、ワーク又は研磨具の送り速度、及び切込量などの条件が挙げられる。これらの研磨条件54は、すべてを変数として扱うこともできるが、例えば、研磨具の回転速度など研磨条件54のうちの1つを変数として、その他の条件は定数として扱うことも可能である。
【0075】
回転速度とは、単位時間あたりにワーク又は研磨具が回転する速さをいい、回転数ともいう。送り速度とは、加工に使用される研磨具とワークとのXY平面における相対速度をいう。切込量とは、上記に説明したように、1回の加工においてワークの表面に対して、研磨具の先端を押し込む量をいう。
【0076】
工作機械において、ステップS1~S4までの情報の入力を受け付けると、工作機械の制御部にて、摩耗速度マスタテーブルを参照して、受け付けた加工条件に対応する砥材の摩耗速度に関する情報が特定される(ステップS5)。例えば、ワークの材質が「ステンレス系」であり、バリの高さが「プラス2」、バリの厚みが「プラス2」であり、上面品質が「マイナス2」、深さ品質が「マイナス2」であり、研磨条件が「4000/min」であると、ステップS1~S4にて入力をされると、単位距離あたりの摩耗速度は0.6mm/mmと特定される。「単位距離あたりの摩耗速度」は、砥材の摩耗量を、ワークの加工距離で除することにより求められる。ここで、ワークの加工距離とは、ワークが研磨具により加工された距離である。例えば、ワークを固定した状態で研磨具を移動させて加工する場合は、研磨具のXY平面上の移動距離が、ワークの加工距離となる。また、例えば、研磨具を固定した状態でワークを移動させて加工する場合は、研磨具のXY平面上の移動距離が、ワークの加工距離となる。ワークを固定した状態で加工する場合に、XY平面上の研磨具の移動距離が10mmであり、この加工により研磨具の砥材が5mm摩耗したとすると、単位距離あたりの摩耗速度は0.5mm/mmと求められる。
【0077】
図10は、本発明の実施の形態にかかる、摩耗速度マスタテーブルを表す図である。摩耗速度テーブル90には、例えば、ワークの材質91、バリの状態92、加工後品質93及び研磨条件94に関連付けて、摩耗速度95が記憶されている。バリの状態92には、バリの高さ92a、バリの厚み92bが含まれている。バリの高さ92a、バリの厚み92bは、エッジ品質呼称71を用いて登録されている。加工後品質93には、上面品質93a、深さ品質93bが含まれている。上面品質93a、深さ品質93bも同様に、エッジ品質呼称71にて登録されている。研磨条件94は、研磨条件54のうち、摩耗速度に影響を与える要素が登録されている。摩耗速度95は、例えば、単位距離あたりに、研磨具の有する砥材が摩耗する長さ(又は摩耗する量)であり、所定のワークの材質91、バリの状態92、加工後品質93、研磨条件94において、実際に、研磨具を回転させてワークを研磨加工した際の砥材の摩耗速度を測定し、予め記憶したものである。ステップS5では、ステップS1~S4にて入力された加工条件に対応する摩耗速度95が特定される。摩耗速度95として、単位時間あたりに、研磨具の有する砥材が摩耗する長さ(又は摩耗する量)を、所定のワークの材質91、バリの状態92、加工後品質93、研磨条件94において、実際に、研磨具を回転させてワークを研磨加工した際の砥材の摩耗速度を測定し、予め記憶したものとしてもよい。
【0078】
特定した摩耗速度に関する情報をもとに、研磨具にかかる負荷及び/若しくは負荷の変化量が所定の範囲内(又は所定の値)に維持できるように、又は、研磨具の切込量が所定の範囲内(所定の値)に維持できるように、研磨具のZ軸方向の位置又は砥材のZ軸方向の突出量若しく切込量(つまり、(Lb-La)の値)を制御するための制御情報を生成する(ステップS6)。
【0079】
図11は、本発明の実施の形態にかかる、負荷及び負荷の変化量の一例を示す図である。
図11において、横軸は時間、縦軸は研磨具にかかる砥材6の負荷量である。利用者により加工条件として入力された切込量で研磨が開始される。この研磨開始時の切込量が、切込量の所定の範囲の上限値となる。切込量の所定の範囲は、切込量の上限値をもとに自動的に設定されてもよく、利用者が、加工条件として切込量の上限値だけでなく下限値を入力してもよい。切込量の上限値をもとに、切込量の下限値を自動的に設定する場合は、上限値から所定の値を差し引いた値を下限値としてもよく、上限値に0より大きく1より小さい係数を乗じることで算出してもよい。
【0080】
図11に示すように、研磨の開始時は、研磨具1にかかる負荷は上限値となっている。研磨具1のZ軸方向の位置が一定で、且つ、砥材6のZ軸方向の突出量が一定である場合、研磨具1によるワーク7の加工が進むについて、砥材6が摩耗し、切込量が小さくなる。切込量が小さくなり、切込量の下限値に到達すると、研磨具1にかかる負荷も下限値に到達する。ここで、加工精度を維持するために、研磨を継続しながら、継続的に研磨具1のZ軸方向の位置がワーク7へ近づくように制御することで、或いは、継続的に砥材6のZ軸方向の突出量を大きくするよう制御することで、切込量が大きくなり、それにあわせて研磨具1にかかる負荷量も大きくなる。
【0081】
切込量が大きくなり、切込量の上限値に到達すると、研磨具1にかかる負荷も上限値に到達する。切込量の上限値に到達すると、研磨具1のZ軸方向の位置の移動を停止することで、又は、砥材6のZ軸方向の突出量の増加を停止することで、切込量が増加から減少へ転じる。これらの制御を繰り返すことで、切込量と研磨具1にかかる負荷及び/又は負荷の変化量を所定の範囲内に維持することができる。
【0082】
ステップS6では、特定された摩耗速度をもとに、例えば、上で述べたような制御を繰り返すことで、切込量を所定の範囲内に維持できる、又は、負荷及び負荷の変化量を所定の範囲内に維持できる、研磨具1のZ軸方向の位置又は砥材6のZ軸方向の突出量若しくは切込量についての制御情報を生成する。工作機械は、制御情報にしたがって、ワークの加工を実行する。
【0083】
第1の実施の形態において、摩耗速度に関する情報は、工作機械の制御部がワークの材質、バリの状態、加工後品質、及び研磨条件の入力を受け付けると、摩耗速度テーブルを参照して、摩耗速度テーブルに記憶された摩耗速度に関する情報を特定する態様について説明をしたが、例えば、工作機械の記憶部が、ワークの材質、バリの状態、加工後品質、及び研磨条件と、摩耗速度に関する情報との所定の関係式を記憶しておき、工作機械の制御部が、入力を受け付けたワークの材質、バリの状態、加工後品質、及び研磨条件と、記憶された関係式とに基づいて、摩耗速度に関する情報を特定する態様であってもよい。
【0084】
第1の実施の形態において、ステップS1~S4の入力受付は、工作機械の表示部を介して受け付けるものとして説明したが、上記のように工作機械と有線又は無線により通信可能な他の装置において入力するものとすることができる。工作機械のある作業所において入力操作を行うほか、作業所以外の場所(例えば、工作機械を有する作業所に対して加工を依頼する発注者の所在地)において入力操作を行うことができる。また、ステップS1~S4の入力受付は、データを読み込むことにより入力を受け付ける態様としてもよい。
【0085】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態は、ワークを研磨する際の加工条件に関する情報を入力データとし、前記条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報とを出力データとして機械学習された予測モデルを用いて、実際の加工条件における砥材の摩耗速度に関する情報を特定する、システムに関する。システムは、特定した摩耗速度をもとに、前記加工条件において研磨した際に研磨具にかかる負荷及び/若しくは負荷の変化量が所定の範囲となるように、又は、研磨具のワークへの切込量が所定の範囲となるように、研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報を生成する。
【0086】
以下では、工作機械に備えられたコンピュータ装置において、摩耗速度を特定し、制御情報を生成する場合について、説明をする。
【0087】
(予測モデル)
第2の実施の形態において、工作機械の記憶部には、ワークを研磨する際の加工条件に関する情報を入力データとし、該加工条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を出力データとして機械学習された予測モデルが記憶される。機械学習のアルゴリズムは、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができ、例えば、線形回帰、重回帰分析、サポートベクタマシン、決定木、ランダムフォレスト、多層ニューラルネットワークを用いた深層学習が挙げられる。
【0088】
多層ニューラルネットワークは、入力層、出力層、複数の中間層を有している。各層のノードとノードとを結ぶエッジには、重みが設定されている。エッジには、ノードへの各入力に対応する重みが設定されており、ノードへの各入力に対応する重みを乗じて、これらの重みを乗じて得られた値とバイアスを加算する。加算されて得られた値を、活性化関数を用いて非線形変換を行い、活性値を算出する。算出された活性値は、次の層のノードに渡される入力の値となる。中間層の数は、適宜設計することができる。上記教師データにより重みが最適化される。
【0089】
前記入力データとしてのワークを研磨する際の加工条件に関する情報には、例えば、ワークの材質、バリの状態(バリの高さ、バリの厚み)、加工後品質(上面品質、深さ品質)、研磨具に関する情報、及び/又は、研磨条件が含まれる。一方で、前記出力データとして、これらの加工条件において実際にワークを研磨した際の砥材の摩耗速度に関する情報が記憶されている。
【0090】
(制御情報の特定処理)
砥材の摩耗速度に関する情報の特定は、第1の実施の形態と同様に、
図3に示す制御情報の特定処理のフローチャートに沿って実行することができる。まず、工作機械は、表示部を介して、ワークに関する情報51の入力を受け付ける(ステップS1)。次に、工作機械は、表示部を介して、加工前のワークのバリの状態52に関する情報の入力を受け付け(ステップS2)、さらに、加工後の品質53に関する情報の入力を受け付ける(ステップS3)。工作機械は、表示部を介して、研磨条件54の入力を受け付ける(ステップS4)。
【0091】
工作機械において、ステップS1~S4までの情報の入力を受け付けると、工作機械の制御部にて、ワークを研磨する際の加工条件に関する情報を入力データとし、該加工条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を出力データとして機械学習された予測モデルを用いて、受け付けた加工条件に対応する砥材の摩耗速度に関する情報が特定される(ステップS5)。第2の実施の形態において、上記特定した摩耗速度に関する情報をもとに、研磨具にかかる負荷及び/又は負荷の変化量が所定の範囲となるように(或いは、研磨具の切込量が所定の範囲となるように)、研磨具のZ軸方向の位置又は砥材のZ軸方向の突出量若しくは切込量(つまり(Lb-La)の値)を制御するための制御情報を生成する(ステップS6)。
【0092】
第2の実施の形態において、ステップS1~S4の入力受付は、工作機械の表示部を介して受け付けるものとして説明したが、第1の実施の形態と同様に、工作機械と有線又は無線により通信可能な他の装置において入力するものとすることができる。また、ステップS1~S4の入力受付は、データを読み込むことにより入力を受け付ける態様としてもよい。
【0093】
<第1の実施の形態及び第2の実施の形態>
第1の実施の形態及び第2の実施の形態において、本発明の摩耗速度に関する情報を特定するコンピュータ装置として、工作機械を例に説明したが、工作機械と有線又は無線により通信可能な他のコンピュータ装置において、摩耗速度に関する情報の特定を実行するものとしてもよい。また、摩耗速度の特定は、工作機械のみで実行するものであってもよく、工作機械と他の装置とが協働するシステムにおいて実行するものとしてもよい。
【0094】
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態において、制御情報に基づいて研磨具のZ軸方向の位置又は砥材のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御する工程は、工作機械の制御部において実行されることを例に説明したが、工作機械に接続される研磨具ホルダに備えられるマイコンの制御部において制御されるものとしてもよい。
【0095】
工作機械が他の装置と協働してプログラムを実行する場合について、以下に説明する。工作機械とサーバ装置とにおいてプログラムを実行する場合、
図3の制御情報の特定処理におけるステップS1~S4の各条件の入力を受け付ける工程を工作機械において実行し、ステップS5の摩耗速度に関する情報を特定する工程をサーバ装置において実行することが考えられる。サーバ装置において摩耗速度に関する情報を特定した後、特定した摩耗速度に関する情報をもとに制御情報を生成する工程は、サーバ装置において実行されて、工作機械の制御部に送信される態様や、特定した摩耗速度に関する情報を、工作機械の制御部に送信して、工作機械の制御部において、制御情報を生成する工程が実行される態様としてもよい。
【0096】
サーバ装置又は工作機械の制御部において生成された制御情報に基づいて研磨具のZ軸方向の位置又は砥材のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御する工程は、工作機械の制御部において実行されてもよく、工作機械に接続される研磨具ホルダに備えられるマイコンの制御部において実行されてもよい。この場合において、生成された制御情報は、必要に応じて通信手段により、制御を実行する工作機械又はマイコンの制御部に送信されるものとする。
【0097】
また、工作機械とサーバ装置に加えて、工作機械とサーバ装置と通信可能な他のコンピュータ装置とにおいてプログラムを実行する場合、
図3の制御情報の特定処理におけるステップS1~S4の各条件の入力を受け付ける工程を他のコンピュータ装置において実行し、ステップS5の摩耗速度に関する情報を特定する工程をサーバ装置において実行することが考えられる。サーバ装置において摩耗速度に関する情報を特定した後、特定した摩耗速度に関する情報をもとに制御情報を生成する工程は、サーバ装置において実行されて、通信部を介して工作機械の制御部に送信される態様や、サーバ装置において実行されて、通信部を介して他のコンピュータ装置に送信される態様や、特定した摩耗速度に関する情報を、通信部を介して工作機械の制御部又は他のコンピュータ装置に送信して、工作機械の制御部又は他のコンピュータ装置において、制御情報を生成する工程が実行される態様としてもよい。
【0098】
サーバ装置、工作機械又は他のコンピュータ装置の制御部において生成された制御情報に基づいて研磨具のZ軸方向の位置又は砥材のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御する工程は、工作機械の制御部において実行されてもよく、工作機械に接続される研磨具ホルダに備えられるマイコンの制御部において実行されてもよい。この場合において、生成された制御情報は、必要に応じて通信手段により、制御を実行する工作機械又はマイコンの制御部に送信されるものとする。
【0099】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態は、研磨具によりワークを研磨する際の加工条件に関する情報と関連付けて、前記加工条件において研磨した際に研磨具にかかる負荷及び/又は負荷の変化量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報をし、ワークを研磨する際の加工条件に対応する制御情報を特定する、システムに関する。また、第3の実施の形態は、研磨具によりワークを研磨する際の加工条件に関する情報と関連付けて、前記加工条件において研磨具のワークへの切込量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量を制御するための制御情報を記憶し、ワークを研磨する際の加工条件に対応する制御情報を特定する、システムに関する。
【0100】
以下では、工作機械に備えられたコンピュータ装置において、制御情報を特定する場合について、説明をする。
【0101】
第1の実施の形態における、
図5の材質マスタテーブル、
図8のエッジ品質マスタテーブル、及び、
図9の研磨具マスタテーブルについての記載は、第3の実施の形態でも同様に適用される。また、第1の実施の形態における、
図6の加工前におけるワークに生じたバリの状態、
図7の加工後におけるワークについての記載も、第3の実施の形態でも同様に適用される。さらに、第1の実施の形態における、
図4の表示画面についての記載も、第3の実施の形態でも同様に適用される。
【0102】
制御情報の特定は、
図12に示す制御情報の特定処理のフローチャートに沿って実行することができる。まず、工作機械は、ワークに関する情報101の入力を受け付ける(ステップS11)。次に、工作機械は、表示部を介して、加工前のワークのバリの状態102に関する情報の入力を受け付け(ステップS12)、加工後の品質103に関する情報の入力を受け付ける(ステップS13)。工作機械は、表示部を介して、研磨条件104の入力を受け付ける(ステップS14)。ステップS11~S14にて入力される加工条件は、任意の条件が入力される。入力する加工条件は、これから実際にワークを研磨する際の条件でもよく、また、実際にはワークを加工しないが、制御情報を予測することを目的とした、仮定の条件であってもよい。
【0103】
工作機械において、ステップS11~ステップS14までの情報の入力を受け付けると、工作機械の制御部にて、制御情報マスタテーブルを参照して、受け付けた加工条件に対応する制御情報が特定される(ステップS15)。
【0104】
図13は、本発明の実施の形態にかかる、制御情報マスタテーブルを表す図である。制御情報マスタテーブル100には、例えば、ワークの材質101、バリの状態102、加工後品質103及び研磨条件104に関連付けて、摩耗速度105が記憶されている。バリの状態102には、バリの高さ102a、バリの厚み102bが含まれている。バリの高さ102a、バリの厚み102bは、エッジ品質呼称71を用いて登録されている。加工後品質103には、上面品質103a、深さ品質103bが含まれている。上面品質103a、深さ品質103bも同様に、エッジ品質呼称71にて登録されている。研磨条件104は、研磨条件54のうち、摩耗速度に影響を与える要素が登録されている。
【0105】
制御情報105は、研磨具にかかる負荷及び/又は負荷の変化量を所定の範囲(又は所定の値)、又は、研磨具の切込量を所定の範囲(又は所定の値)とするための研磨具のZ軸方向の位置又は研磨具の有する砥材のZ軸方向の突出量若しくは切込量(つまり(Lb-La)の値)を制御するための情報である。制御情報105は、所定のワークの材質101、バリの状態102、加工後品質103、研磨条件104において、実際に、研磨具を回転させてワークを研磨加工した際において、研磨具にかかる負荷及び/若しくは負荷の変化量を所定の範囲に制御することが可能な制御情報、又は、研磨具の切込量を所定の範囲に制御することが可能な制御情報を、予め記憶したものである。ステップS15では、ステップS11~S14にて入力された加工条件に対応する制御情報105が特定される。
【0106】
制御情報105は、より具体的には、研磨開始から所定の時間が経過するまでは、研磨具のZ軸方向の位置又は研磨具の有する砥材のZ軸方向の(Lb-La)の値を変化させず、所定の第1時間が経過した後に、所定の速度で、研磨具のZ軸方向の位置又は研磨具の有する砥材のZ軸方向の(Lb-La)の値を変化させ、さらに、所定の第2時間が経過した後に、研磨具のZ軸方向の位置又は研磨具の有する砥材のZ軸方向の(Lb-La)の値の変化を停止する、といった制御を繰り返し実行することを可能とするものである。
【0107】
工作機械の制御部は、生成した制御情報をもとに、研磨具のZ軸方向の位置又は砥材のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御する。工作機械は、制御された位置又は突出量若しくは切込量にて、ワークの加工を実行する。
【0108】
第3の実施の形態において、ステップS11~S14の入力受付は、工作機械の表示部を介して受け付けるものとして説明したが、工作機械と有線又は無線により通信可能な他の装置において入力するものとすることができる。また、ステップS11~S14の入力受付は、データを読み込むことにより入力を受け付ける態様としてもよい。
【0109】
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態は、ワークを研磨する際の加工条件に関する情報と、前記加工条件において研磨した際に研磨具にかかる負荷及び/又は負荷の変化量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報とを教師データとして機械学習された予測モデルを用いて、実際の加工条件における制御情報を特定する、システムに関する。また、第4の実施の形態は、ワークを研磨する際の加工条件に関する情報と、前記加工条件において研磨具のワークへの切込量を所定の範囲とするための研磨具のワークと接触する接触方向の位置又は研磨具の有する砥材の接触方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報とを教師データとして機械学習された予測モデルを用いて、実際の加工条件における制御情報を特定する、システムに関する。
【0110】
以下では、工作機械に備えられたコンピュータ装置において、制御情報を特定する場合について、説明をする。
【0111】
(予測モデル)
第4の実施の形態において、工作機械の記憶部には、ワークを研磨する際の加工条件に関する情報を入力データとし、該加工条件にてワークを研磨した際に、研磨具にかかる負荷及び/又は負荷の変化量を所定の範囲とするための研磨具のZ軸方向の位置又は研磨具の有する砥材のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報とを教師データとして機械学習された予測モデルが記憶される。第4の実施の形態において、工作機械の記憶部には、ワークを研磨する際の加工条件に関する情報を入力データとし、該加工条件にてワークを研磨した際に、研磨具の切込量を所定の範囲とするための研磨具のZ軸方向の位置又は研磨具の有する砥材のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御するための制御情報とを教師データとして機械学習された予測モデルが記憶される。機械学習のアルゴリズムは、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができ、例えば、線形回帰、重回帰分析、サポートベクタマシン、決定木、ランダムフォレスト、多層ニューラルネットワークを用いた深層学習が挙げられる。
【0112】
多層ニューラルネットワークは、入力層、出力層、複数の中間層を有している。各層のノードとノードとを結ぶエッジには、重みが設定されている。エッジには、ノードへの各入力に対応する重みが設定されており、ノードへの各入力に対応する重みを乗じて、これらの重みを乗じて得られた値とバイアスを加算する。加算されて得られた値を、活性化関数を用いて非線形変換を行い、活性値を算出する。算出された活性値は、次の層のノードに渡される入力の値となる。中間層の数は、適宜設計することができる。上記教師データにより重みが最適化される。
【0113】
前記入力データとしてのワークを研磨する際の加工条件に関する情報には、例えば、ワークの材質、バリの状態(バリの高さ、バリの厚み)、加工後品質(上面品質、深さ品質)、研磨具に関する情報、及び/又は、研磨条件が含まれる。一方で、前記出力データとして、これらの加工条件において実際にワークを研磨した際における、研磨具にかかる負荷の上限若しくは下限(負荷の変化量の上限若しくは下限)と、研磨具のZ軸方向の位置又は研磨具の有する砥材のZ軸方向の突出量若しくは切込量の制御情報が記憶されている。または、前記出力データとして、これらの加工条件において実際にワークを研磨した際における、研磨具の切込量の上限又は下限と、研磨具のZ軸方向の位置又は研磨具の有する砥材のZ軸方向の突出量若しくは切込量の制御情報が記憶されている。
【0114】
(制御情報の特定処理)
砥材の摩耗速度に関する情報の特定は、第3の実施の形態と同様に、
図12に示す、制御情報の特定処理のフローチャートに沿って実行することができる。まず、工作機械は、表示部を介して、ワークに関する情報101の入力を受け付ける(ステップS11)。次に、工作機械は、表示部を介して、加工前のワークのバリの状態102に関する情報の入力を受け付け(ステップS12)、加工後の品質103に関する情報の入力を受け付ける(ステップS13)。工作機械は、表示部を介して、研磨条件104の入力を受け付ける(ステップS14)。
【0115】
工作機械において、ステップS11~S14までの情報の入力を受け付けると、工作機械の制御部にて、ワークを研磨する際の加工条件に関する情報を入力データとし、該加工条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を出力データとして機械学習された予測モデルを用いて、受け付けた加工条件に対応する制御情報が特定される(ステップS15)。ステップS15により、研磨具にかかる負荷及び/又は負荷の変化量が所定の範囲となるように(或いは、研磨具の切込量が所定の範囲となるように)、研磨具のZ軸方向の位置又は砥材のZ軸方向の突出量若しくは切込量(つまり(Lb-La)の値)を制御するための制御情報が生成される。
【0116】
工作機械の制御部は、生成した制御情報をもとに、研磨具のZ軸方向の位置又は砥材のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御する。工作機械は、制御された位置又は突出量若しくは切込量にて、ワークの加工を実行する。
【0117】
第4の実施の形態において、工作機械の記憶部に記憶する予測モデルの教師データには、加工開始からの加工時間の情報、該加工時間と関連付けた加工経路の情報を含めてもよい。この場合、加工開始から所定時間経過した場合の摩耗速度に関する情報を、より正確に特定することが可能となる。
【0118】
第4の実施の形態において、ステップS11~S14の入力受付は、工作機械の表示部を介して受け付けるものとして説明したが、第1の実施の形態と同様に、工作機械と有線又は無線により通信可能な他の装置において入力するものとすることができる。また、特定のUIを備えず、入力を受け付けるものとしてもよい。
【0119】
また、ステップS11~S14の入力受付は、数値を入力する、メニューから選択して入力する、データを読み込むことで入力を受け付ける態様としてもよい。
【0120】
<第3の実施の形態及び第4の実施の形態>
第3の実施の形態及び第4の実施の形態において、本発明の摩耗速度に関する情報を特定するプログラムを実行する装置として、工作機械を例に説明したが、工作機械と有線又は無線により通信可能な他の装置においてプログラムを実行するものであってもよい。また、摩耗速度に関する情報を特定するプログラムは、工作機械単独で実行するものであってもよく、工作機械と有線又は無線により通信可能な他の装置と協働するシステムにおいて実行するものとしてもよい。
【0121】
また、第3の実施の形態及び第4の実施の形態において、制御情報に基づいて研磨具のZ軸方向の位置又は砥材のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御する工程は、工作機械の制御部において実行されることを例に説明したが、工作機械に接続される研磨具ホルダに備えられる少なくとも制御部と通信部を含むマイコンの制御部において制御されるものとしてもよい。
【0122】
工作機械が他の装置と協働してプログラムを実行する場合について、以下に説明する。工作機械とサーバ装置とにおいてプログラムを実行する場合、
図12の制御情報の特定処理におけるステップS11~S14の各条件の入力を受け付ける工程を工作機械において実行し、ステップS15の制御情報を特定する工程をサーバ装置において実行することが考えられる。サーバ装置において、加工条件に対応する制御情報を特定した後、該制御情報が工作機械の制御部に送信される態様や、工作機械に接続される研磨具ホルダに備えられるマイコンの制御部に送信される態様としてもよい。
【0123】
また、工作機械とサーバ装置に加えて、工作機械とサーバ装置と通信可能な他のコンピュータ装置とにおいてプログラムを実行する場合、
図12の制御情報の特定処理におけるステップS11~S14の各条件の入力を受け付ける工程を他のコンピュータ装置において実行し、ステップS15の制御情報を特定する工程をサーバ装置において実行することが考えられる。サーバ装置において、加工条件に対応する制御情報を特定した後、該制御情報が工作機械の制御部に送信される態様や、工作機械に接続される研磨具ホルダに備えられるマイコンの制御部に送信される態様としてもよい。
【0124】
研磨具のZ軸方向の位置又は砥材のZ軸方向の突出量若しくは切込量を制御する工程は、工作機械の制御部において実行されてもよく、工作機械に接続される研磨具ホルダに備えられるマイコンの制御部において実行されてもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 研磨具、 2 研磨具ホルダ、 3 大径部、 3a 送り軸、 4 スリーブ、
5 シャンク、 6 砥材、 6a 砥材ホルダ、 6b 貫通孔、 7 ワーク、
8 被加工面、 50 表示画面、 51 ワークに関する情報、 52 バリの状態、
53 加工後の品質、54 研磨条件、 60 材質マスタテーブル、
70 エッジ品質マスタテーブル、 80 研磨具マスタテーブル、
90 摩耗速度テーブル、 100 制御情報テーブル
【要約】
砥材が摩耗しても、ワークの加工精度を維持することを可能とするためのシステム及びプログラムを提供することを目的とする。
少なくとも1のコンピュータ装置を備えるシステムであって、研磨具によりワークを研磨する際の条件に関する情報と関連付けて、前記条件における研磨具の有する砥材の摩耗速度に関する情報を記憶する記憶手段と、ワークを研磨する際の条件の入力を受け付ける入力手段と、受け付けた条件に対応する砥材の摩耗速度に関する情報を特定する特定手段とを備える、システム。