(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】輸送容器
(51)【国際特許分類】
F17C 3/10 20060101AFI20230220BHJP
F25D 3/10 20060101ALI20230220BHJP
F17C 3/04 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
F17C3/10
F25D3/10 D
F17C3/04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018023209
(22)【出願日】2018-02-13
【審査請求日】2020-12-17
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519288685
【氏名又は名称】リンデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Linde GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Carl-von-Linde-Str. 6-14, 82049 Pullach i. Isartal, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ポッセルト
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04718239(US,A)
【文献】特開2002-089983(JP,A)
【文献】特開2005-147397(JP,A)
【文献】特開2014-119058(JP,A)
【文献】特開昭64-089405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
F25D 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリウム(He)用の輸送容器(1)であって、
- 前記ヘリウム(He)を収容するための内側容器(6)と、
- 極低温液体(N
2)を収容するための冷媒容器(14)と、
- 前記内側容器(6)と前記冷媒容器(14)が収容されている外側容器(2)と、
- 前記内側容器(6)が収容されており、かつ前記極低温液体の液相(LN
2)によって能動的に冷却可能である熱シールド(21)であって、前記熱シールド(21)を能動的に冷却するために前記極低温液体の液相(LN
2)を収容可能である少なくとも1つの第1の冷却ライン(26)を有する熱シールド(21)と、
- 前記外側容器(2)と前記熱シールド(21)との間に配置されており、かつ極低温液体の気相(GN
2)によって能動的に冷却可能である断熱要素(39)であって、前記断熱要素(39)を能動的に冷却するために前記極低温液体の気相(GN
2)を収容可能である少なくとも1つの第2の冷却ライン(42~46)を有する断熱要素(39)と
を有
し、
前記輸送容器(1)は、前記極低温液体の液相(LN
2
)を前記極低温液体の気相(GN
2
)から分離するための相分離器(35)をさらに含み、
前記少なくとも1つの第1の冷却ライン(26)は、水平線に対してある角度で傾斜しており、そのため、前記少なくとも1つの第1の冷却ライン(26)で発生する気泡が前記相分離器(35)に向かって自ら上昇する、
輸送容器(1)。
【請求項2】
前記相分離器(35)は、前記少なくとも1つの第1の冷却ライン(26)によって前記冷媒容器(14)と流体接続している、請求項
1記載の輸送容器。
【請求項3】
前記相分離器(35)は、前記少なくとも1つの第1の冷却ライン(26)と前記少なくとも1つの第2の冷却ライン(42~46)との間に配置されている、請求項
1または
2記載の輸送容器。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2の冷却ライン(42~46)は、前記冷媒容器(14)から前記極低温液体の気相(GN
2)を受け入れるために、前記冷媒容器(14)と直接流体接続している、請求項1から
3までのいずれか1項記載の輸送容器。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の冷却ライン(42~46)は、前記断熱要素(39)を通して導かれている、請求項1から
4までのいずれか1項記載の輸送容器。
【請求項6】
前記断熱要素(39)は、反射フィルム(40)と、スペーサー(41)の交互に配置された複数の層を有し、ここで、前記少なくとも1つの第2の冷却ライン(42~46)は、前記層の間を通して導かれている、請求項
5記載の輸送容器。
【請求項7】
前記反射フィルム(40)は、アルミニウムフィルムである、請求項
6記載の輸送容器。
【請求項8】
前記スペーサーは、ガラスペーパーである、請求項
6または
7記載の輸送容器。
【請求項9】
前記断熱要素(39)は、前記少なくとも1つの第2の冷却ライン(42~46)が熱伝導的に接続された少なくとも1つの熱伝導フィルム(55~57)を有し、ここで、前記少なくとも1つの熱伝導フィルム(55~57)は、前記反射フィルム(40)と前記スペーサー(41)の前記層の間に位置決めされている、請求項
6から
8までのいずれか1項記載の輸送容器。
【請求項10】
前記熱伝導フィルム(55~57)は、アルミニウムフィルムまたは銅フィルムである、請求項
9記載の輸送容器。
【請求項11】
前記少なくとも1つの熱伝導フィルム(55~57)は、前記熱シールド(21)を取り囲んでいる、請求項
9または
10記載の輸送容器。
【請求項12】
前記断熱要素(39)は、複数の熱伝導フィルム(55~57)を有し、ここで、前記熱伝導フィルム(55~57)の間には、前記反射フィルム(40)と前記スペーサー(41)の層が配置されている、請求項
9から
11までのいずれか1項記載の輸送容器。
【請求項13】
各熱伝導フィルム(55~57)には、それぞれの前記熱伝導フィルム(55~57)と熱伝導的に接続されている第2の冷却ライン(42~46)が取り付けられている、請求項
12記載の輸送容器。
【請求項14】
前記第2の冷却ライン(42~46)は、ベンド管(47~49)によって互いに流体接続している、請求項
13記載の輸送容器。
【請求項15】
前記少なくとも1つの熱伝導フィルム(55~57)の厚みは、前記反射フィルム(40)の厚みよりも大きい、請求項
9から
14までのいずれか1項記載の輸送容器。
【請求項16】
前記冷媒容器(14)は、前記熱シールド(21)の外側に配置されている、請求項1から
15までのいずれか1項記載の輸送容器。
【請求項17】
前記熱シールド(21)は、前記冷媒容器(14)から分離されたカバー部分(23)を有し、前記カバー部分(23)は、前記内側容器(6)と前記冷媒容器(14)との間に配置されている、請求項
16記載の輸送容器。
【請求項18】
複数の前記第2の冷却ライン(42~46)が設けられている、請求項1から
17までのいずれか1項記載の輸送容器。
【請求項19】
前記熱シールド(21)は、円筒状または管状のベース部分(22)を含み、前記外側容器(2)は、管状または円筒状のベース部分(3)を含み、前記少なくとも1つの第2の冷却ライン(42~46)は前記熱シールド(21)の前記ベース部分(22)と前記外側容器(2)の前記ベース部分(3)との間に配置されている、請求項1から
18までのいずれか1項記載の輸送容器。
【請求項20】
前記少なくとも1つの第2の冷却ライン(42~46)は、前記外側容器(2)の中心軸(M1,M2)の方向に走行/延在している、請求項1から
19までのいずれか1項記載の輸送容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリウム用の輸送容器に関する。
【0002】
ヘリウムは、天然ガスと一緒に採掘される。大量のヘリウムの輸送は、経済的な理由から、液体または超臨界的な形態で、すなわち、約4.2~6Kの温度および1~6barの圧力下で行われる場合に限って合理的である。液体ヘリウムまたは超臨界ヘリウムの輸送には、ヘリウムの圧力が急速に上昇し過ぎることを回避するために精巧に断熱される輸送容器が用いられる。このような輸送容器は、例えば液体窒素によって冷却されることができる。この場合、液体窒素で冷却された熱シールドが設けられる。熱シールドは、輸送容器の内側容器を保護する。液体ヘリウムまたは極低温(tiefkalt)ヘリウムは、内側容器に収容されている。このような輸送容器の場合、液体ヘリウムまたは極低温ヘリウムの保持期間は35~40日間であり、すなわち、この期間の後、内側容器内の圧力は6barの最大値まで上昇する。液体窒素の蓄えは、約35日分で足りる。
【0003】
欧州特許第1673745号明細書(EP1673745B1)は、このような液体ヘリウム用の輸送容器を記載している。輸送容器は、液体ヘリウムが収容されている内側容器と、内側容器を部分的に覆う熱シールドと、熱シールドを冷却するための極低温(kryogen)液体が収容されている冷媒容器と、内側容器、熱シールドおよび冷媒容器が配置されている外側容器とを含む。
【0004】
このことを踏まえて、本発明の課題は、改善された輸送容器を提供することである。
【0005】
それにしたがって、ヘリウム用の輸送容器が提案される。輸送容器は、ヘリウムを収容するための内側容器と、極低温液体を収容するための冷媒容器と、内側容器と冷媒容器が収容されている外側容器と、内側容器が収容されており、かつ極低温液体の液相によって能動的に冷却可能である熱シールドであって、熱シールドを能動的に冷却するために極低温液体の液相を収容可能である少なくとも1つの第1の冷却ラインを有する熱シールドと、外側容器と熱シールドとの間に配置されており、かつ極低温液体の気相によって能動的に冷却可能である断熱要素であって、断熱要素を能動的に冷却するために極低温液体の気相を収容可能である少なくとも1つの第2の冷却ラインを有する断熱要素を含む。
【0006】
熱シールドと外側容器との間に設けられた断熱要素が極低温液体の気相によって能動的に冷却されることによって、既知の輸送容器と比較して、輸送容器のヘリウム保持期間を引き上げることができる。有利には、ヘリウムの保持時間は60日を超える。熱シールドが設けられることによって、内側容器が極低温液体の沸点(1.3baraにおける窒素の沸点:79.5K)に相当する温度を有する表面にのみ囲まれることが保証される。その結果、外側容器の周囲と比較して、熱シールド(79.5K)と内側容器(1bara~6baraにおけるヘリウムの温度:4.2~6K)との間の温度差は僅かしかない。これによりまた、液体ヘリウムの保持期間が引き上げられる。
【0007】
内側容器は、ヘリウム容器または内側タンクと呼ぶこともできる。輸送容器は、ヘリウム輸送容器と呼ぶこともできる。ヘリウムは、液体ヘリウムまたは極低温ヘリウムと呼ぶことができる。ヘリウムは同様に、特に極低温液体である。輸送容器は、特に、ヘリウムを極低温または液体もしくは超臨界的な形態で輸送するように設計されている。熱力学において、臨界点は、液相と気相の密度が等しくなっていることを特徴とする物質の熱力学状態である。この時点で、両方の物質状態間の差異は存在しなくなる。相図において、点が表すのは蒸気圧曲線の上端である。ヘリウムは、液体または極低温の形態で内側容器に入れられる。そのとき内側容器には、液体ヘリウムを有する液体ゾーンと、気体ヘリウムを有する気体ゾーンが形成される。つまり、内側容器に入れられた後、ヘリウムは、物質状態が異なる2つの相、つまり液体と気体を有する。すなわち、内側容器には、液体ヘリウムと気体ヘリウムとの間で相境界が存在する。一定時間後、すなわち、内側容器の圧力が上昇すると、内側容器に存在するヘリウムは単相になる。そのとき相境界はもはや存在せず、ヘリウムは超臨界状態である。
【0008】
極低温液体または寒剤(Kryogen)は、有利には液体窒素である。極低温液体は、冷媒と呼ぶこともできる。選択的に、極低温液体は、例えば液体水素または液体酸素であってもよい。熱シールドが能動的に冷却可能であるか、または能動的に冷却されるということは、熱シールドに極低温液体の液相が少なくとも部分的に貫流するかまたはその周りを流れることで、これが冷却されることを意味する。第1の冷却ラインには、極低温液体は、その気相と液相の両方で収容されていてよい。同様に、断熱要素は、その能動的な冷却のために、極低温液体の気相が少なくとも部分的に貫流するかまたはその周りを流れることで、これが冷却される。
【0009】
特に、熱シールドおよび断熱要素は、輸送容器の運転状態においてのみ、すなわち、内側容器にヘリウムが充填されている場合に能動的に冷却される。極低温液体が使い果たされたら、熱シールドおよび断熱要素は冷却されていなくてもよい。熱シールドの能動冷却時に、極低温液体は、沸騰して蒸発し得る。その結果、熱シールドは、極低温液体の沸点にほぼまたはちょうど相当する温度を有する。極低温液体の沸点は、有利には、液体ヘリウムの沸点よりも高い。極低温液体の蒸発留分は、断熱要素を冷却するために使用される。熱シールドは、特に、外側容器の内側に配置されている。有利には、冷媒容器は、熱シールドの外側に配置されている。有利には、第1の冷却ラインは、第2の冷却ラインとは別個のコンポーネントである。すなわち、第1の冷却ラインは、第2の冷却ラインに相当しない。好ましくは、断熱要素は、熱シールドと外側容器との間に設けられた中間スペースを満たす。断熱要素は、冷媒容器を取り囲んでいてもよい。
【0010】
有利には、内側容器は、内側容器に貯蔵されたヘリウムの温度にほぼまたはちょうど相当する温度を外側で有する。ヘリウムの温度は、ヘリウムが液体または超臨界的な形態で存在するか否かに応じて4.2~6Kである。有利には、熱シールドのカバー部分は、そのベース部分を各端面で完全に密閉する。熱シールドのベース部分は、円形またはほぼ円形の断面を有していてよい。外側容器、内側容器、冷媒容器および熱シールドは、共通の対称軸または中心軸に対して回転対称に構成されていてよい。内側容器および外側容器は、有利にはステンレス鋼から作製されている。内側容器は、有利には、湾曲したカバー部分により両側が閉じられている管状のベース部分を有する。内側容器は流体密である。外側容器も同様に、有利には、カバー部分によって両端面で閉じられている管状のベース部分を有する。内側容器のベース部分および/または外側容器のベース部分は、円形またはほぼ円形の断面を有していてよい。熱シールドは、有利には、高純度アルミニウム材料から作製されている。熱シールドは、有利には流体密ではない。
【0011】
1つの実施形態によれば、輸送容器は、極低温液体の液相を極低温液体の気相から分離するための相分離器をさらに含む。
【0012】
有利には、相分離器は、外側容器の外側に配置されている。選択的に、相分離器は、外側容器の内側にも配置されていてよい。相分離器によって、第1の冷却ラインに形成される極低温液体の気泡を、その液相から分離することができる。相分離器は、有利には、弁本体と連結されているフロート本体を有するフロートを含む。気泡の導入によって相分離器内の液相の液面が低下するとすぐに、弁本体が弁シートから持ち上げられ、極低温液体の気相が分離される。その結果、液相が相分離器に流入し、それによってフロート本体が再び浮き上がり、弁本体が弁シートに押しあてられる。特に、相分離器は、蒸発した極低温窒素のみが第2の冷却ラインに送出されることを保証する。
【0013】
更なる実施形態によれば、相分離器は、少なくとも1つの第1の冷却ラインによって冷媒容器と流体接続している。
【0014】
第1の冷却ラインの数は任意である。有利には、複数の第1の冷却ラインが設けられている。例えば、6つの第1の冷却ラインが設けられていてよい。第1の冷却ラインは、有利には、水平線に対してある角度で傾斜しており、そのため、第1の冷却ラインで発生する気泡が相分離器に向かって自ら上昇する。特に、少なくとも1つの第1の冷却ラインは、冷媒容器を相分離器と流体接続する。
【0015】
更なる実施形態によれば、相分離器は、少なくとも1つの第1の冷却ラインと、少なくとも1つの第2の冷却ラインとの間に配置されている。
【0016】
有利には、複数の第2の冷却ラインが設けられている。第2の冷却ラインの数は任意である。好ましくは、3つまたは5つの第2の冷却ラインが設けられている。特に、第2の冷却ラインは、冷媒容器に関して相分離器の下流に配置されている。少なくとも1つの第1の冷却ラインは、相分離器の上流に位置決めされている。
【0017】
更なる実施形態によれば、少なくとも1つの第2の冷却ラインは、冷媒容器から極低温液体の気相を受け入れるために、冷媒容器と直接流体接続している。
【0018】
有利には、相分離器と直接接続されておらず、冷媒容器と直接流体接続している任意の第2の冷却ラインが設けられている。その結果、いわゆるブローオフガスを、断熱要素を冷却するために冷媒容器から取り出すことができる。
【0019】
更なる実施形態によれば、少なくとも1つの第2の冷却ラインは、断熱要素を通して導かれている。
【0020】
すなわち、少なくとも1つの第2の冷却ラインは、特に、断熱要素の外側または内側には設けられておらず、この内側に配置されている。
【0021】
更なる実施形態によれば、断熱要素は、反射フィルム(Folie)、特にアルミニウムフィルムと、スペーサー、特にガラスペーパーの交互に配置された複数の層を有し、ここで、少なくとも1つの第2の冷却ラインは、層の間を通して導かれている。
【0022】
断熱要素は、いわゆるMLI(多層断熱材)であってよい。反射フィルムは、アルミニウムフィルムまたは他の金属フィルムのほかに、金属化プラスチックフィルムも含んでいてよい。スペーサーには、ガラスペーパー、ガラス布、ガラスウール、ガラスメッシュ布などが含まれ得る。ここで、反射フィルムの層は、リフレクターとして、かつスペーサーの層の機械的固定部として機能し、真空破壊時の熱減衰を保証する。反射フィルムは、穿孔および/またはエンボス加工されていてもよい。断熱要素は、有利には、熱シールドと外側容器との間に設けられた中間スペースを完全に満たし、そのため、断熱要素は、熱シールドと外側容器の両方に接触する。
【0023】
スペーサーが反射フィルムの間に配置されていることによって、熱シールドと外側容器との間に配置された断熱要素が問題なく排気され得る。それに反射フィルムの層の間の望ましくない機械的-熱的接触も抑えられる。この接触は、放射熱交換によって生じる反射フィルムの層の温度勾配を乱す可能性がある。有利には、反射フィルムとスペーサーの層は、ギャップを伴って熱シールドに適用される。ギャップを伴うということは、反射フィルムとスペーサーの層の間に排気可能な中間スペースがそのつど設けられていることを意味する。有利には、反射フィルムとスペーサーの層は、熱シールドと外側容器との間に設けられた中間スペースにルーズに(flauschig)導入される。ここで、ルーズとは、反射フィルムとスペーサーの層がプレス加工されておらず、そのため、反射フィルムのエンボス加工および穿孔によって断熱要素ひいては中間スペースが問題なく排気され得ることを意味する。
【0024】
更なる実施形態によれば、断熱要素は、少なくとも1つの第2の冷却ラインが熱伝導的に接続された少なくとも1つの熱伝導フィルム、特に高純度のアルミニウムフィルムまたは銅フィルムを有し、ここで、少なくとも1つの熱伝導フィルムが、反射フィルムとスペーサーの層の間に位置決めされている。
【0025】
有利には、熱シールドと少なくとも1つの熱伝導フィルムとの間には、反射フィルムとスペーサーの任意の数の層が位置決めされている。さらに、少なくとも1つの熱伝導フィルムと外側容器との間にも、反射フィルムとスペーサーの任意の数の層が位置決めされている。有利には、少なくとも1つの第2の冷却ラインは、少なくとも1つの熱伝導フィルムと材料結合式に接続されている。熱伝導フィルムがアルミニウム材料から作製されている場合、好ましくは、少なくとも1つの第2の冷却ラインが熱伝導フィルムと接着結合されている。少なくとも1つの熱伝導フィルムが銅材料から作製されている場合、好ましくは、少なくとも1つの第2の冷却ラインが少なくとも1つの熱伝導フィルムとはんだ付けされている。熱伝導フィルムは、熱伝達フィルムと呼ぶこともできる。
【0026】
更なる実施形態によれば、少なくとも1つの熱伝導フィルムは、熱シールドを取り囲んでいる。
【0027】
有利には、少なくとも1つの熱伝導フィルムは、熱シールドの周りを周回している。輸送容器の軸方向には、熱伝導フィルムの個々のシートの間にスペーシングが設けられていてよい。スペーシングは、例えば0.1~1メートルであってよい。すなわち、少なくとも1つの熱伝導フィルムは、熱シールドを完全には封入しない。
【0028】
更なる実施形態によれば、断熱要素は、複数の熱伝導フィルムを有し、ここで、熱伝導フィルムの間には、反射フィルムとスペーサーの層が配置されている。
【0029】
例えば、このような熱伝導フィルムは3つ設けられている。熱伝導フィルムの数は任意である。有利には、外側容器と熱シールドとの間には、第1の熱伝導フィルムが設けられており、第1の熱伝導フィルムと熱シールドとの間には、第2の熱伝導フィルムが設けられており、第2の熱伝導フィルムと熱シールドとの間には、第3の熱伝導フィルムが設けられている。2つの隣接する熱伝導フィルムの間には、反射フィルムとスペーサーの任意の数の層が設けられている。
【0030】
更なる実施形態によれば、各熱伝導フィルムには、それぞれの熱伝導フィルムと熱伝導的に接続された第2の冷却ラインが取り付けられている。
【0031】
有利には、第2の各冷却ラインは、それに取り付けられた熱伝導フィルムと材料結合式に接続されている。第2の冷却ラインは、異なる、すなわち、複数の熱伝導フィルムと熱伝導的に、特に材料結合式に接続されていてもよい。
【0032】
更なる実施形態によれば、第2の冷却ラインは、ベンド管によって互いに流体接続している。
【0033】
その結果、第2の冷却ラインの蛇形または雷文形の配置が得られる。
【0034】
更なる実施形態によれば、少なくとも1つの熱伝導フィルムの厚みは、反射フィルムの厚みよりも大きい。
【0035】
例えば、熱伝導フィルムの厚みは、0.5~1.5ミリメートルである。
【0036】
更なる実施形態によれば、冷媒容器は、熱シールドの外側に配置されている。
【0037】
有利には、冷媒容器は、輸送容器の軸方向において、熱シールドの隣に位置決めされている。冷媒容器と熱シールドとの間には、中間スペースが設けられている。冷媒容器は、有利には、熱シールドの一部ではない。
【0038】
更なる実施形態によれば、熱シールドは、冷媒容器から分離されたカバー部分を有し、該カバー部分は、内側容器と冷媒容器との間に配置されている。
【0039】
有利には、熱シールドは、カバー部分により両側が閉じられている管状のベース部分を有する。内側容器と冷媒容器との間には、熱シールドのカバー部分の1つが配置されている。冷媒容器のカバー部分は、特に、内側容器と冷媒容器との間に設けられた中間スペースに位置決めされている。
【0040】
輸送容器の更なる可能な実施形態は、実施例に関して上記または下記に記載した特徴または実施形態の明示されていない組合せも含む。これについて、当業者であれば、個々の態様を改良または補足したものとして輸送容器のそれぞれの基本形態に付け足すだろう。
【0041】
輸送容器の更なる有利な構成は、従属請求項の主題と、以下に記載した輸送容器の実施例とである。さらに、輸送容器を、好ましい実施形態を基にして添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図4】
図3の断面線IV-IVによる輸送容器の断面図を示す。
【0043】
図面中、特に記載がない限りは、同じ要素または同じ機能を有する要素には、同じ参照符号を付している。
【0044】
図1は、液体ヘリウムHe用の輸送容器1の実施形態の大幅に単純化された概略図を示す。
図2および3は、輸送容器1の更なる概略図を示す。以下で、
図1~
図3を同時に参照する。
【0045】
輸送容器1は、ヘリウム輸送容器と呼ぶこともできる。輸送容器1は、他の極低温液体にも用いることができる。極低温液体、または略して寒剤の例は、前述の液体ヘリウムHe(1bara(絶対圧)=ほぼ大気圧における沸点:4.222K =-268.929℃)、液体水素H2(1baraにおける沸点:20.268K =-252.882℃)、液体窒素N2(1baraにおける沸点:7.35K=-195.80℃)または液体酸素O2(1baraにおける沸点:90.18K =-182.97℃)である。
【0046】
輸送容器1は、外側容器2を含む。外側容器2は、例えばステンレス鋼から作製されている。外側容器2は、例えば10メートルの長さL2を有することができる。外側容器2は、管状または円筒状のベース部分3を含み、これは、両端面の各々がカバー部分4,5によって、特に第1のカバー部分4と第2のカバー部分5によって閉じられている。ベース部分3の断面形状は、円形またはほぼ円形であってよい。カバー部分4,5は湾曲している。カバー部分4,5は反対向きに湾曲しており、そのため、両方のカバー部分4,5は、ベース部分3に関して外側に湾曲している。外側容器2は流体密、特に気密である。外側容器2は、対称軸または中心軸M1を有し、この軸M1に対して外側容器2は回転対称に構成されている。
【0047】
輸送容器1は、ヘリウムHeを収容するための内側容器6をさらに含む。内側容器6も同様に、例えばステンレス鋼から作製されている。内側容器6には、ヘリウムHeが二相域で存在する限り、蒸発したヘリウムHeを有する気体ゾーン7および液体ヘリウムHeを有する液体ゾーン8が設けられていてよい。内側容器6は流体密、特に気密であり、かつ減圧制御のためのブローオフ弁を含むことができる。内側容器6は、外側容器2と同様に、両端面がカバー部分10,11、特に第1のカバー部分10と第2のカバー部分11とで閉じられている管状または円筒状のベース部分9を含む。ベース部分9の断面形状は、円形またはほぼ円形であってよい。
【0048】
輸送容器1は、冷媒容器14を有する冷却システム13(
図2)をさらに含む。内側容器6は、外側容器2で完全に取り囲まれている。内側容器6は、外側容器2と同様に、中心軸M1に対して回転対称に形成されている。内側容器6、冷媒容器14および外側容器2の間に設けられたギャップまたは中間スペース12は排気されている。中間スペース12には、
図1~
図3には示されていない、中間スペース12を満たす断熱要素が配置されていてよい。中間スペース12は、内側容器6および冷媒容器14を完全に包囲する。
【0049】
冷媒容器14には、例えば窒素N2のような極低温液体が収容されている。冷媒容器14は、中心軸M1に対して回転対称に構成されていてよい管状または円筒状のベース部分15を含む。ベース部分15の断面形状は、円形またはほぼ円形であってよい。ベース部分15は、各端面が、カバー部分16,17によって、特に第1のカバー部分16と第2のカバー部分17とによって閉じられている。カバー部分16,17は湾曲していてよい。特に、カバー部分16,17は、同じ方向に湾曲している。冷媒容器14は、異なる構造を有していてもよい。冷媒容器14は、内側容器6の外側でありつつ、外側容器2の内側に配置されている。
【0050】
冷媒容器14には、蒸発窒素または気体窒素GN2を有する気体ゾーン18および液体窒素LN2を有する液体ゾーン19が設けられていてよい。内側容器6の軸方向Aに見て、冷媒容器14は、内側容器6の隣に配置されている。軸方向Aは、中心軸M1と平行に位置決めされている。軸方向Aは、外側容器2の第1のカバー部分4から外側容器2の第2のカバー部分5の方向に向いていてよい。内側容器6、特に内側容器6の第2のカバー部分11と、冷媒容器14、特に冷媒容器14の第1のカバー部分16との間には、中間スペース12の一部であってよいギャップまたは中間スペース20が設けられている。すなわち、中間スペース20も同様に排気されている。
【0051】
輸送容器1は、冷却システム13に取り付けられた熱シールド21をさらに含む。熱シールド21は、内側容器6と外側容器2との間に設けられた排気された中間スペース12に配置されている。熱シールド21は、液体窒素LN2によって能動的に冷却可能であるか、または能動的に冷却される。この場合、能動的な冷却とは、熱シールド21を冷却するために、液体窒素LN2がこれを通って流れるか、またはこれに沿って流れることを意味する。ここで、熱シールド21は、窒素N2の沸点にほぼ相当する温度に冷却される。
【0052】
熱シールド21は、円筒状または管状のベース部分22を含み、これは、熱シールド21を端面で閉じるカバー23,24、特に第1のカバー部分23と第2のカバー部分244とによって閉じられている。ベース部分22とカバー部分23,24の両方は、窒素N2によって能動的に冷却される。ベース部分22の断面形状は、円形またはほぼ円形であってよい。熱シールド21も同様に、有利には中心軸M1に対して回転対称に構成されている。熱シールド21の第2のカバー部分24は、内側容器6、特に内側容器6の第2のカバー部分11と、冷媒容器14、特に冷媒容器14の第1のカバー部分16との間に配置されている。
【0053】
熱シールド21の第2のカバー部分24は、冷媒容器14とは別個のコンポーネントである。すなわち、第1のカバー部分23は、冷媒容器14の一部ではない。軸方向Aに見て、熱シールド21の第2のカバー部分24は、内側容器6、特に内側容器6の第2のカバー部分11と、冷媒容器14、特に冷媒容器14の第1のカバー部分16との間に配置されている。中間スペース12は、熱シールド21を完全に取り囲んでいる。
【0054】
熱シールド21の第1のカバー部分23は、冷媒容器14とは逆向きである。熱シールド21の第1のカバー部分23は、外側容器2の第1のカバー部分4と内側容器6の第1のカバー部分10との間に配置されている。ここで、熱シールド21は単体構造である。すなわち、熱シールド21は、内側容器6にも外側容器2にも支持されていない。このために、熱シールド21には、支持バー、特に引張バーを介して外側容器2に吊り下げられている搬送リング(Tragring)が設けられていてよい。さらに、内側容器6は、更なる支持バー、特に引張バーを介して搬送リングに吊り下げられていてよい。機械的支持バーを通しての入熱は、搬送リングによって部分的に実現される。搬送リングには、支持バーの最大限の熱的な長さ可能にするポケットが付いている。冷媒容器14は、機械的支持バー用のブッシングを含んでいてよい。
【0055】
熱シールド21は流体透過性である。すなわち、内側容器6と熱シールド21との間のギャップまたは中間スペース25が中間スペース12と流体接続している。その結果、中間スペース12,25は同時に排気され得る。中間スペース25は、内側容器6を完全に包囲する。中間スペース25には、
図1~
図3に示されていない更なる断熱要素が配置されていてよい。熱シールド21には、中間スペース12,25の排気を可能にするために、孔部、開口部などが設けられていてよい。熱シールド21は、有利には、高純度アルミニウム材料から作製されている。
【0056】
熱シールド21の第2のカバー部分24は、冷媒容器14を内側容器6から完全に保護する。すなわち、内側容器6から冷媒容器14に向かう方向に見て、すなわち、軸方向Aに見て、冷媒容器14は、熱シールド21の第2のカバー部分24で完全に覆われている。ここで、特に、熱シールド21は、内側容器6を完全に取り囲んでいる。すなわち、内側容器6は、熱シールド21の内側に完全に配置されており、ここで、熱シールド21は、既に前述したように、流体密ではない。
【0057】
図2がさらに示すように、熱シールド21は、その能動的な冷却ために、少なくとも1つの第1の冷却ライン26を含む。第1の冷却ライン26は、冷却システム13に取り付けられている。有利には、複数のこのような第1の冷却ライン26、例えば6つの第1の冷却ライン26が設けられている。しかしながら、第1の冷却ライン26の数は任意である。第1の冷却ライン26は、重量方向gに延びる2つの垂直部分27,28および2つの傾斜部分29,30を含んでいてよい。垂直部分27,28は、熱シールド21のカバー部分23,24および/またはベース部分22に設けられていてよい。傾斜部分29,30も同様に、カバー部分23,24および/またはベース部分22に設けられていてよい。
【0058】
第1の冷却ライン26は、熱シールド21と材料結合式に接続されている。材料結合式の接続の場合、接続相手は、原子または分子の力によって結合される。材料結合式の接続は、脱着不可能な接続であり、接続手段または接続相手を破壊することによってのみ分離することができる。例えば、接着結合、はんだ付け、溶接または加硫によって材料結合式に接続することができる。有利には、第1の冷却ライン26または複数の第1の冷却ライン26は、熱シールド21と溶接、はんだ付けまたは接着結合されている。
【0059】
第1の冷却ライン26は、接続ライン31を介して冷媒容器14と流体接続しており、そのため、液体窒素LN2は、冷媒容器14から第1の冷却ライン26に供給される。接続ライン31は、ディストリビューター32に通じており、そこから部分27および部分30が分岐する。部分29および部分28はマニホールド33で合流し、そこから接続ライン34が、外側容器2の外側に配置された相分離器35に至る。相分離器35は、外側容器2の内側に位置決めされていてもよい。相分離器35は、気体窒素GN2を液体窒素LN2から分離するように設計されている。さらに、相分離器35によって、気体窒素GN2を第1の冷却ライン26から除去することができる。
【0060】
前述したように、第1の冷却ライン26または複数の第1の冷却ライン26は、熱シールド21のベース部分22とカバー部分23,24の両方に設けられている。選択的に、カバー部分23,24は、材料一体式で、特に材料結合式でベース部分22と接続されている。例えば、カバー部分23,24は、ベース部分22と溶接されている。カバー部分23,24が材料一体式で、すなわち、材料結合式でベース部分22と接続されていることによって、熱伝導によるカバー部分23,24の冷却を行うことができる。
【0061】
第1の冷却ライン26、特に第1の冷却ライン26の傾斜部分29,30は、重力方向gに対して垂直に配置されている水平線Hに対して勾配を有する。特に、部分29,30は、水平線Hに対して3°よりも大きい角度αを形成する。角度αは3~15°またはそれ以上の角度であってよい。特に、角度αは正確に3°であってもよい。特に、部分29,30は、相分離器35の方向に正の勾配を有しており、そのため、気泡は相分離器35に向かって上昇する。
【0062】
内側容器6は、
図4に示される断熱要素36を含む。断熱要素36は、内側容器6を完全に取り囲み、すなわち、断熱要素36は、内側容器6のベース部分9とカバー部分10,11の両方に設けられている。断熱要素36は、内側容器6を封入する。断熱要素36は、中間スペース25において内側容器6と熱シールド21との間に配置されており、中間スペース25を部分的に満たす。断熱要素36は、外側に、すなわち、熱シールド21の方を向いて、高反射性の銅層37を有する。銅層37はメタリックな光沢を有する。すなわち、銅層37は、表面コーティングまたは酸化物層を有していない。銅層37は、例えば、銅フィルムまたは銅で被覆したアルミニウムフィルムであってよい。
【0063】
熱シールド21の液体窒素LN2の温度レベルに対する内側容器6の本来の断熱は、銅層37によって行われる。有利には、銅層37は、高純度で光沢を有する銅の平滑なフィルムであり、これは銅層37と内側容器6との間に配置された多層断熱層38の周りにしっかりと折り目をつけずに張り付けられている。断熱層38は、反射フィルムとスペーサーの交互に配置された複数の膜または層を含む。反射フィルムは、穿孔およびエンボス加工されたアルミニウムフィルムまたは金属化プラスチックフィルムであってよい。スペーサーには、例えば、ガラスペーパーまたはガラス布が含まれ得る。反射フィルムは反射体として機能し、かつスペーサーは反射フィルムの層を互いに離間した状態に保ち、反射フィルム間の真空破壊時の緩衝として機能する。
【0064】
断熱層38は、例えば10層で構成されていてよい。反射フィルムとスペーサーの層は、ギャップなしに内側容器6に適用され、すなわち、押しあてられる。断熱層38は、いわゆるMLI(多層断熱材)であってよい。内側容器6、そして断熱要素36も、外側に、すなわち、熱シールド21の方を向いて、ヘリウムHeのほぼ沸点に相当する温度を有する。断熱層38の取付け時には、断熱層38のすべての層が可能な限り等温であることを達成するために、反射フィルムとスペーサーの層が機械的に可能な限り押しあてられることに留意される。断熱要素36は、第1の断熱要素36と呼ぶことができる。
【0065】
断熱要素36と熱シールド21との間には、内側容器6を完全に周回している中間スペース25が設けられている。中間スペース25は、断熱要素36と熱シールド21のカバー部分23,24との間にも設けられている。中間スペース25のギャップ幅は、好ましくは5~15ミリメートル、さらに好ましくは10ミリメートルである。中間スペース25によって、熱シールド21は、内側容器6の断熱要素36の銅層37から周囲に離間して配置されており、これと接触しない。これによって、放射線による入熱が、物理的に可能な最小値に抑えられる。内側容器6の表面から熱シールド21への熱の伝達は、放射熱および残留ガス伝導によってのみ行われる。
【0066】
熱シールド21と外側容器2との間、すなわち、中間スペース12には、別の、特に第2の断熱要素39が設けられている。断熱要素39は、有利には、一方では内側容器6の領域における中間スペース12を完全に満たし、そのため、そこでは断熱要素39は、熱シールド21の外側と接触し、外側容器2の内側と接触する。断熱要素39は、熱シールド21を、その第2のカバー部分24を除いて取り囲み、すなわち、第1のカバー部分23およびベース部分22を取り囲んでいる。さらに、冷媒容器14の円筒状のベース部分15および第2のカバー部分17は、断熱要素39で取り囲まれる。断熱要素39も同様に、有利には、いわゆるMLIである。
【0067】
断熱要素39は、外側容器2、冷媒容器14および熱シールド21のそれぞれのベース部分3,15,22の間だけでなく、熱シールド21の第1のカバー部分23と外側容器2の第1のカバー部分4との間および冷媒容器14の第2のカバー部分17と外側容器2の第2のカバー部分5との間にも設けられている。したがって、断熱要素39は、冷媒容器14も取り囲むことができる。断熱要素39は、反射フィルム40、特にアルミニウムフィルムまたは金属化プラスチックフィルムと、スペーサー41、特にガラスペーパーの交互に配置された層を含む。層の数は任意である。スペーサー41には、ガラスペーパーのほかに、ガラスウール、ガラスメッシュ布などが含まれ得る。
【0068】
反射フィルム40とスペーサー41の層は、内側容器6の上記の断熱要素36とは異なり、中間スペース12にルーズに導入される。ここでは、ルーズとは、反射フィルム40とスペーサー41の層がプレス加工されておらず、そのため、反射フィルム40のエンボス加工および穿孔によって断熱要素39ひいては中間スペース12が問題なく排気され得ることを意味する。
【0069】
断熱要素39は、少なくとも1つの第2の冷却ライン42~46を含み、これらによって断熱要素39は気体窒素GN
2で能動的に冷却可能である。この場合、能動的な冷却とは、断熱要素39を冷却するために、気体窒素GN
2がこれを通って流れるか、またはこれに沿って流れることを意味する。第2の冷却ライン42~46の数は任意である。例えば、
図3に示されるように、5つのこのような第2の冷却ライン42~46が設けられていてよい。3つの第2の冷却ライン42~46が設けられていてもよい。第2の冷却ライン42~46は、ベンド管47~49によって互いに流体接続されている。第2の冷却ライン42~46は、これらが熱シールド21のベース部分22と第1のカバー部分23の両方を周回するように配置されていてよい。第2の冷却ライン42~46は、冷媒容器14の周りを周回していてもよい。第2の冷却ライン42~46は、冷却システム13に取り付けられている。
【0070】
有利には、第2の冷却ライン42は、供給ライン50によって相分離器35と流体接続されている。供給ライン50を介して、第2の冷却ライン42~44に、相分離器35によって液体窒素LN2から分離された気体窒素GN2が供給される。排出ライン51を介して、加熱された気体窒素GN2を周囲に供給することができる。相分離器35は、第1の冷却ライン26によって冷媒容器14と流体接続されている。ここで、相分離器35は、第1の冷却ライン26と第2の冷却ライン42との間に配置されている。
【0071】
任意に、第2の冷却ライン45,46は、冷媒容器14と直接接続されていてよい。この場合、相分離器35は、第2の冷却ライン45,46の上流に配置されていない。この場合、冷媒容器14のいわゆるボイルオフガス、すなわち、気体窒素GN2が、供給ライン52を介して第2の冷却ライン45,46に供給されることになる。周囲に向かう第2の冷却ライン45,46の排出ライン53には、加熱された気体窒素GN2を周囲に放出する冷媒容器14の保圧弁54が設けられている。
【0072】
図4に示されるように、第2の冷却ライン42~46は、断熱エレメント39に通して導かれている。断熱エレメント39は、反射フィルム40とスペーサー41の層に加えて、多数の熱伝導フィルム55~57を有する。熱伝導フィルム55~57の数は任意である。熱伝導フィルム55~57は、有利には、高純度アルミニウムフィルムまたは銅フィルムとして形成されている。熱伝導フィルムは55~57は、熱シールド21を周回している。特に、熱シールド21は、第3の熱伝導フィルム57の内側に配置されており、第3の熱伝導フィルム57は、第2の熱伝導フィルム56の内側に配置されており、かつ第2の熱伝導フィルム56は、第1の熱伝導フィルム55の内側に配置されている。
【0073】
熱伝導フィルム55~57の間には、反射フィルム40とスペーサー41の層がそのつど配置されている。例えば、熱シールド21と第3の熱伝導フィルム57との間には、4層の反射フィルム40とスペーサー41が設けられている。さらに、第3の熱伝導フィルム57と第2の熱伝導フィルム56との間には、例えば10層の反射フィルム40とスペーサー41が設けられていてよい。第2の熱伝導フィルム56と第1の熱伝導フィルム55との間には、12層の反射フィルム40とスペーサー41が設けられていてよく、第1の熱伝導フィルム55と外側容器2との間には、例えば14層の反射フィルム40とスペーサー41が設けられていてよい。しかしながら、層の数はそのつど任意である。
【0074】
有利には、第2の各冷却ライン42~46には、このような熱伝導フィルム55~57が取り付けられている。例えば、第2の冷却ライン42には第3の熱伝導フィルム57が、第2の冷却ライン43には第2の熱伝導フィルム56が、第2の冷却ライン44には第1の熱伝導フィルム55が取り付けられている。さらに、任意の第2の冷却ライン45,46にも、このような熱伝導フィルム55~57が取り付けられていてよい。熱伝導フィルム55~57は、有利には、反射フィルム40よりも大きな厚みをそれぞれ有する。例えば、熱伝導フィルム55~57は、0.5~1.5ミリメートルの厚みをそれぞれ有する。熱伝導フィルム55~57の厚みは、第2の冷却ライン42~46に沿って変化してよい。
【0075】
有利には、第2の冷却ライン42~46は、それらに取り付けられた熱伝導フィルム55~57と材料結合式に接続されている。例えば、第2の冷却ライン42~46は、それぞれの熱伝導フィルム55~57と接着結合されている。熱伝導フィルム55~57が銅から作製されている場合、第2の冷却ライン42~46は、これらとはんだ付けされる。熱伝導フィルム55~57がアルミニウムから作製されている場合、第2の冷却ライン42~46は、これらと接着結合される。その結果、それぞれの第2の冷却ライン42~46と、これに取り付けられた熱伝導フィルム55~57との間で良好な熱伝達が保証される。
【0076】
図5に詳細図として示されるように、熱伝導フィルム55~57は、シート状であり、例えば1mの幅bを有する。2つの隣接する第3の熱伝導フィルム57または第1もしくは第2の熱伝導フィルム55,56の間には、軸方向Aに見て、それぞれ間隔aが設けられている。すなわち、熱伝導フィルム55~57は、軸方向Aにおいて互いに離間して配置されており、熱シールド21の周りを周回している。熱伝導フィルム55~57のシートは、それぞれ互いに重なり合っていてもよい。間隔aは、例えば0.1~1メートルであってよい。熱伝導フィルム55~57は、断熱要素39に組み込まれた状態で熱シールド21の周りに巻き付けられる。
【0077】
輸送容器1の機能モードを以下で説明する。内側容器6にヘリウムHeが充填される前に、まず熱シールド21が、極低温の、初めは気体でその後に液体の窒素N2によって、液体窒素LN2の少なくともほぼまたはちょうど沸点まで(1,3bara、7.95K)冷却される。ここで、内側容器6は、まだ能動的に冷却されていない。熱シールド21の冷却時に、中間スペース12,20,25に依然として存在する残留真空ガスが熱シールド21上で凍結される。その結果、内側容器6にヘリウムHeが充填される時に、残留真空ガスが内側容器6の外側で凍結され、ひいては内側容器6の断熱要素36の銅層37のメタリックな光沢表面が汚染されることが防止される。熱シールド21および冷媒容器14が完全に冷却され、かつ冷媒容器14に再び窒素N2が完全に充填されたらすぐに、内側容器6にヘリウムHeが充填される。
【0078】
それから輸送容器は、ヘリウムHeの輸送のために、例えばトラックまたは船舶のような輸送手段に移されることができる。この場合、熱シールド21は、液体窒素LN2によって連続的に冷却される。その際、液体窒素LN2は消費され、第1の冷却ライン26または複数の第1の冷却ライン26で沸騰する。ここで発生する気泡は、重力方向gに対して冷却システム13の最も高い位置に配置された相分離器35に供給される。気体窒素GN2が相分離器35によって冷却システム13から除去されたらすぐに、液体窒素LN2が相分離器35に流入する。気体窒素GN2は、供給ライン50を介して第2の冷却ライン42~44に供給される。さらに、気体窒素GN2は、冷媒容器14から直接第2の冷却ライン45,46に供給されることができる。
【0079】
熱シールド21が冷媒容器14と内側容器6との間にも配置されていることによって、冷媒容器14の窒素N2の液位または液面が下がった場合でも、内側容器6が十分に冷却されることを確実に保証することができる。内側容器6が熱シールド21で完全に囲まれることによって、内側容器6が、窒素N2の沸点(1.3bara、79.5K)に相当する温度を有する表面にのみ囲まれることが保証される。その結果、熱シールド21(79.5K)と内側容器6(4.2~6K)との間の温度差は僅かしかない。これにより、ヘリウムHeの保持期間が延長される。
【0080】
さらに、熱シールド21と外側容器2との間に配置された断熱要素39が気体窒素GN2によって能動的に冷却されることにより、ヘリウムHeの保持期間をさらに延ばすことができる。したがって、既知の輸送容器と比較して、ヘリウムHeの保持時間を有意に延ばすことができる。ここで、内側容器6から熱シールド21への熱の伝達は、放射熱および残留ガス伝導によってのみ行われる。輸送容器1は、特に60日を超えるヘリウムHeの保持期間を有し、さらには自然環境温度に関する制限もない。
【0081】
実施例を基にして本発明を説明してきたが、本発明は多様に変更可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 輸送容器
2 外側容器
3 ベース部分
4 カバー部分
5 カバー部分
6 内側容器
7 気体ゾーン
8 液体ゾーン
9 ベース部分
10 カバー部分
11 カバー部分
12 中間スペース
13 冷却システム
14 冷媒容器
15 ベース部分
16 カバー部分
17 カバー部分
18 気体ゾーン
19 液体ゾーン
20 中間スペース
21 熱シールド
22 ベース部分
23 カバー部分
24 カバー部分
25 中間スペース
26 冷却ライン
27 部分
28 部分
29 部分
30 部分
31 接続ライン
32 ディストリビューター
33 マニホールド
34 接続ライン
35 相分離器
36 断熱要素
37 銅層
38 断熱層
39 断熱要素
40 反射フィルム
41 スペーサー
42 冷却ライン
43 冷却ライン
44 冷却ライン
45 冷却ライン
46 冷却ライン
47 ベンド管
48 ベンド管
49 ベンド管
50 供給ライン
51 排出ライン
52 供給ライン
53 排出ライン
54 保圧弁
55 熱伝導フィルム
56 熱伝導フィルム
57 熱伝導フィルム
a 間隔
A 軸方向
b 幅
g 重力方向
GN2 窒素
H 水平線
He ヘリウム
LN2 窒素
L2 長さ
N2 窒素
M1 中心軸
α 角度