(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】損傷部位を評価するための装置、及び、損傷部位を評価するためのコンピュータソフトウェア製品
(51)【国際特許分類】
A61B 5/339 20210101AFI20230220BHJP
A61B 5/287 20210101ALI20230220BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20230220BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
A61B5/339
A61B5/287
A61B5/33
A61B18/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018183293
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-07-09
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-123870(JP,A)
【文献】特開2017-136356(JP,A)
【文献】特開2003-265426(JP,A)
【文献】特開2016-185296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0157913(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25-5/297
A61B 5/316-5/367
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内組織の
、第1の領域
である心臓、及び、第2の領域
である前記心臓から延びる血管の間に
、アブレーション処置を実施して形成された損傷部位を評価するための装置であって、
第1の電極を含む第1の医療用プローブと、
複数の第2の電極を含む第2の医療用プローブと、
ディスプレイと、
プロセッサであって、
第1の時間に第1の活性化ピークを有する第1の活性化信号を、前記第1の領域の刺激位置で前記組織と接触する前記第1の電極に適用するか、又は前記第1の電極から感知し、
前記第2の領域内の対応する感知位置で前記組織と接触する前記
複数の第2の電極から、前記第1の活性化信号に続く、前記
複数の第2の電極により感知された対応する第2の活性化ピークを有する対応する第2の活性化信号を受信し、
前記複数の第2の電極の中から、前記第2の活性化信号の中で前記第1の活性化ピーク後で最も時間の近い対応する第2の活性化ピークを有する前記複数の
第2の電極のうちの1つを
前記刺激位置の最も近くにある第2の電極であると識別し、
識別された
前記第2の電極がマップ上にマーキングされた前記体腔の前記マップを前記ディスプレイ上に提示する、ように構成されたプロセッサと、を含む、装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記マップ上に、前記第2の医療用プローブの遠位端を表すアイコンを提示し、前記マップ上で
識別された前記第2の電極を強調表示することによって、
識別された前記第2の電極が前記マップ上にマーキングされた前記体腔の前記マップを提示するように構成されている、請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記第1の医療用プローブに取り付けられた
前記第1の電極によってペーシング信号を前記刺激位置に適用することによって、前記第1の活性化信号を適用するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記第1の医療用プローブによって、前記刺激位置における自然信号を感知することによって、前記第1の活性化信号を感知するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の
医療用プローブは、前記感知位置と接触する前記複数の
第2の電極を有するラッソカテーテルを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の活性化信号は最初の第1の活性化信号を含み、前記第1の活性化ピークは最初の第1の活性化ピークを含み、前記感知位置は最初の感知位置を含み、前記第2の活性化信号は最初の第2の活性化信号を含み、前記第2の活性化ピークは最初の第2の活性化ピーク
を含み、前記プロセッサは、
前記第2の
医療用プローブの再位置決めに応答して、前記第2の
医療用プローブの前記複数の
第2の電極の前記最初の感知位置とは異なる前記第2の領域内の対応する後続の感知位置を評価して、
前記第1の時間に続く第2の時間に後続の第1の活性化ピークを有する後続の第1の活性化信号を、前記組織に適用するか、又は前記組織内で感知し、
前記第2の領域内の前記対応する後続の感知位置で前記組織と接触する前記複数の
第2の電極から、前記後続の第1の活性化信号に続いて、前記
複数の第2の電極により感知された対応する後続の第2の活性化ピークを有する対応する後続の第2の活性化信号を受信し、
前記最初の第1の活性化ピークと前記最初の第2の活性化ピークとの間の最初の時間的関係
、及び
、前記刺激位置と前記最初の感知位置との間の最初の空間的関係と、前記後続の第1の活性化ピークと前記後続の第2の活性化ピークとの間の後続の時間的関係と、前記刺激位置と前記後続の感知位置との間の後続の空間的関係と、に基づいて
、前記最初の感知位置および前記損傷部位間の第1の距離、及び、前記後続の感知位置および前記損傷部位間の第2の距離の合計が最小である前記損傷部位の地点の推定位置を決定し、
前記地点の前記推定位置が前記マップ上にマーキングされた前記体腔の前記マップを表示する、ように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
体腔内組織の
、第1の領域
である心臓、及び、第2の領域
である前記心臓から延びる血管の間に
、アブレーション処置を実施して形成された損傷部位を評価するためであり、体腔内に挿入するための第1及び第2の医療用プローブと連動して操作されるコンピュータソフトウェア製品であって、前記製品は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体を含み、前記媒体にはプログラム命令が保存され、前記命令は、コンピュータに読み取られると、前記コンピュータが、
第1の時間に第1の活性化ピークを有する第1の活性化信号を前記組織に適用するか、又は前記組織中で感知するために、前記第1の領域内の刺激位置で前記組織と接触する前記第1の
医療用プローブを用い、
前記第2の領域内の対応する感知位置で前記組織と接触する複数の電極を有する前記第2の
医療用プローブから、前記第1の活性化信号に続く、前記
複数の電極により感知された対応する第2の活性化ピークを有する対応する第2の活性化信号を受信し、
前記複数の電極の中から、前記第2の活性化信号の中で前記第1の活性化ピーク後で最も時間の近い対応する第2の活性化ピークを有する前記複数の電極のうちの1つを
前記刺激位置の最も近くにある電極であると識別し、
識別された前記電極がマップ上にマーキングされた前記体腔の前記マップを表示する、コンピュータソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には組織アブレーションに関し、具体的には再アブレーションのために体組織の領域を識別する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不整脈とは、典型的には不規則な心拍を生じさせる心組織の小領域によって引き起こされる異常な心リズムである。心臓アブレーションは、不規則な心拍を引き起こす心組織の領域を破壊することによって不整脈を治療するために実施され得る医療処置である。
【0003】
Sanchezらの米国特許出願第2003/0028183号は、細動する基質中で形成されたアブレーション損傷部位のエンドポイントを電気生理学的に測定するための方法について説明している。この方法は、損傷部位を形成するアブレーション処置中に損傷部位に近接する心組織における電気活動を測定し、続いて測定値を比較することにより、損傷部位が心筋伝播を阻止することが可能かどうかを測定する。
【0004】
Govariらの米国特許出願第2007/0198007号は、ペーシングを用いてアブレーションにより形成された損傷部位を評価する方法を説明している。この方法は、アブレーションエネルギーを心内組織に向けながら、捕捉されたペーシング信号を評価することによって心内アブレーションの進行状況を監視する。信号が所定のペーシング電圧の最大値で生成されている間に信号が捕捉できない場合、アブレーションは成功したものと見なされる。
【0005】
Lupottiの米国特許出願第2015/0038824号は、組織のアブレーション中及び完了後の両方で損傷部位の形成を評価するように構成されたシステムについて説明している。このシステムは、電磁放射線を組織に伝達し、それにより組織に光音響波を応答的に発生させるエミッタを含む。このシステムは、光音響波に応答して組織の特性を示す信号を生成する超音波トランスデューサを更に含む。
【0006】
Govariらの米国特許出願第2007/0198007号は、心臓アブレーション部位間の間隙を識別して可視化するための方法を説明している。この方法は、心臓アブレーション部位の位置を受信することと、部位間の距離を測定することと、部位間の1つ以上の間隙を識別することと、を含む。
【0007】
参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書で明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部と見なすものとする。
【0008】
上記説明は、当該分野における関連技術の一般的概論として記載したものであって、この説明に含まれる何らの情報が本特許出願に対する先行技術を構成することを容認するものと解釈するべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、体腔内組織の第1の領域と第2の領域との間に形成された損傷部位を評価するための方法が提供され、方法は、第1の領域内の刺激位置で組織と接触する第1のプローブを用いて、第1の時間に第1の活性化ピークを有する第1の活性化信号を組織に適用するか、又は組織中で感知することと、第2の領域内の対応する感知位置で組織と接触する複数の電極を有する第2のプローブから、第1の活性化信号に続く、電極により感知された対応する第2の活性化ピークを有する対応する第2の活性化信号を受信することと、第1の活性化ピークと第2の活性化ピークとの間の時間的関係、及び刺激位置と感知位置との間の空間的関係に基づいて、損傷部位内の間隙の近位にある複数の電極のうちの1つを識別することと、マップ上にマーキングされた識別された電極を用いて体腔のマップを表示することと、を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、複数の電極のうちの1つを識別することは、複数の電極の中から、第2の活性化信号の中で第1の活性化ピーク後で最も時間の近い対応する第2の活性化ピークを有する特定の電極を発見することを含み得る。一実施形態では、識別された電極がマップ上にマーキングされた体腔のマップを表示することは、第2の医療用プローブの遠位端を表すアイコンをマップ上に提示して、マップ上で発見された電極を強調表示することを含み得る。
【0011】
追加的な実施形態では、第1の活性化信号を適用することは、第1の医療用プローブに取り付けられた電極によってペーシング信号を刺激位置に適用することを含み得る。更なる実施形態では、体腔の第1の領域は心臓を含んでもよく、第2の領域は心臓から延びる血管を含んでもよい。一実施形態では、第1の活性化信号を感知することは、第1の医療用プローブによって刺激位置における自然信号を感知することを含み得る。別の実施形態では、第2のプローブは、感知位置と接触する複数の電極を有するラッソカテーテルを含む。
【0012】
更なる実施形態では、方法は、第1の活性化信号を組織に適用するか、又は組織内で感知する前に、組織上でアブレーション処置を実施して、それにより損傷部位を形成することを含み得る。補足的な実施形態では、第2のプローブは、電極の対応するサブセットを有する複数のカテーテルを含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1の活性化信号は最初の第1の活性化信号を含んでもよく、第1の活性化ピークは初期の最初の第1の活性化ピークを含んでもよく、感知位置は最初の感知位置を含んでもよく、第2の活性化信号は最初の第2の活性化信号を含んでもよく、第2の活性化ピークは最初の第2の活性化ピークを含んでもよく、時間的関係は最初の時間的関係を含んでもよく、空間的関係は最初の空間的関係を含んでもよく、また、本方法は、第2のプローブを再位置決めすることと、第1の時間に続く第2の時間に、後続の第1の活性化ピークを有する後続の第1の活性化信号を、組織に適用するか、又は組織内で感知することと、再位置決めされた第2のプローブ内にあり、最初の感知位置とは異なる第2の領域における対応する後続の感知位置で組織と接触する複数の電極から、後続の第1の活性化信号に続いて電極によって感知される対応する後続の第2の活性化ピークを有する対応する後続の第2の活性化信号を受信することと、最初の時間的関係及び最初の空間的関係、後続の第1の活性化ピークと後続の第2の活性化ピークとの間の後続の時間的関係、並びに刺激位置と後続の感知位置との間の後続の空間的関係に基づき、間隙の地点の推定位置を決定することと、間隙の決定された推定位置がマップ上にマーキングされた体腔のマップを表示することと、を含んでもよい。
【0014】
本発明の実施形態によれば、体腔内組織の第1の領域と第2の領域との間に形成された損傷部位を評価するための装置であって、第1の電極を含む第1の医療用プローブと、複数の第2の電極を含む第2の医療用プローブと、ディスプレイと、プロセッサであって、第1の時間に第1の活性化ピークを有する第1の活性化信号を、第1の領域の刺激位置で組織と接触する第1の電極に適用するか、又は第1の電極から感知し、第2の領域内の対応する感知位置で組織と接触する第2の電極から、第1の活性化信号に続く、電極により感知された対応する第2の活性化ピークを有する対応する第2の活性化信号を受信し、第1の活性化ピークと第2の活性化ピークとの間の時間的関係、及び刺激位置と感知位置との間の空間的関係に基づいて、損傷部位内の間隙の近位にある複数の電極のうちの1つを識別し、体腔のマップを、マップ上にマーキングされた識別された電極を用いて表示する、ように構成されたプロセッサと、を含む、装置が更に提供される。
【0015】
本発明の実施形態によれば、体腔内組織の第1の領域と第2の領域との間に形成された損傷部位を評価するためであり、体腔内に挿入するための第1及び第2の医療用プローブと連動して操作されるコンピュータソフトウェア製品であって、製品は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体を含み、媒体にはプログラム命令が保存され、命令は、コンピュータに読み取られると、コンピュータが、第1の時間に第1の活性化ピークを有する第1の活性化信号を組織に適用するか、又は組織中で感知するために、第1の領域内の刺激位置で組織と接触する第1のプローブを用い、第2の領域内の対応する感知位置で組織と接触する複数の電極を有する第2のプローブから、第1の活性化信号に続く、電極により感知された対応する第2の活性化ピークを有する対応する第2の活性化信号を受信し、第1の活性化ピークと第2の活性化ピークとの間の時間的関係、及び刺激位置と感知位置との間の空間的関係に基づいて、損傷部位内の間隙の近位にある複数の電極のうちの1つを識別し、マップ上にマーキングされた識別された電極を用いて体腔のマップを表示する、コンピュータソフトウェア製品が更に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本明細書で、本開示をあくまで一例として添付図面を参照しつつ説明する。
【
図1】本発明の一実施形態による、一体型カテーテル及びマッピングカテーテルを含む医療システムの概略絵図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、一体型カテーテルの遠位端の概略絵図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、マッピングカテーテルの遠位端の概略絵図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、心室と肺静脈との間の心門組織(ostial tissue)上に損傷部位を形成したアブレーション処置を検証するための一体型及びマッピングカテーテルの使用方法を概略的に示したフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態による、心室及び肺静脈内の一体型及びマッピングカテーテルの遠位端の詳細模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態による、心室内の刺激位置及び肺静脈内の複数の感知位置の詳細模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態による、刺激位置内で適用又は感知される第1の活性化信号、及び感知位置から受信される第2の活性化信号を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
アブレーション処置中、電気信号が、心臓(本明細書では組織の第1の領域とも称される)と、肺静脈などの血管(本明細書では組織の第2の領域とも称される)と、の間を移動するのを防ぐために、損傷部位が心門組織上に形成され得る。しかしながら、損傷部位部は、心臓から血管への電気信号の移動を可能にする間隙を有する場合がある。
【0018】
本発明の実施形態は、体腔内組織の第1の領域と第2の領域との間に形成された損傷部位を評価するための方法及びシステムを提供する。本明細書で後述するように、第1の活性化信号は、第1の領域内の刺激位置で組織と接触する第1のプローブによって、組織に適用されるか、又は組織内で感知され、第1の活性化信号は第1の時間に第1の活性化ピークを有する。第1の活性化信号を適用又は感知する間、第2の領域内の対応する感知位置で組織と接触する複数の電極を有する第2のプローブから第2の活性化信号が受信され、対応する第2の活性化信号は、第1の活性化信号に続き、電極によって感知される対応する第2の活性化ピークを有する。第1の活性化ピークと第2の活性化ピークとの間の時間的関係、及び刺激位置と感知位置との間の空間的関係に基づいて、損傷部位内の間隙の近位になる複数の電極のうちの1つを識別することができ、識別された電極がマップ上にマーキングされた体腔のマップを表示することができる。
【0019】
識別された電極は、典型的には、うまくアブレーションされなかった組織の領域に近接する。したがって、本発明の実施形態を実施するシステムは、医療専門家が再アブレーションの標的となり得る体腔組織の領域を識別することを助けることができる。
【0020】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、医療用プローブ22、24、及び制御コンソール26を含む医療用システム20の概略絵図であり、
図2は医療用プローブ24の遠位端28の概略絵図であり、
図3は、医療用プローブ22の遠位端30の概略絵図である。医療用システム20は、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,California,U.S.A.)製のCARTO(登録商標)システムを基にしてもよい。本明細書で後述する実施形態では、医療用プローブ22及び24は、例えば、患者34の心臓32でアブレーション処置を実施するための、診断又は治療処置のために用いることができる。あるいは、医療用プローブ22及び24は、心臓又はその他の体器官において、その他の治療及び/又は診断目的で、必要な変更を加えて使用してもよい。
【0021】
本明細書に記載の実施形態では、医療用プローブ22はマッピングカテーテル又は第1のプローブのいずれかと称することもでき、医療用プローブ24は一体型カテーテル又は第2のプローブと称することもできる。
【0022】
医療処置中、医療専門家36は、医療用プローブの遠位端28及び30が体腔に入るように、医療用プローブ22及び24を、患者の体腔(例えば、心臓32の心腔)内に予め位置決めされた対応する生体適合性シース(図示せず)に挿入する。例えば、プローブ24の遠位端28は、典型的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン、ナイロン、又はPebaxのような生体適合性材料から形成されたバルーン38(
図2)を含む。
【0023】
制御コンソール26は、ケーブル40によって体表の電極に接続され、体表の電極は、典型的には患者34に貼り付けられた接着性皮膚パッチ42を含む。制御コンソール26は、接着性皮膚パッチ42とバルーン38の外壁に取り付けられた1つ以上の電極46(本明細書ではマイクロ電極46とも呼ばれる)との間で測定されたインピーダンスに基づき、電流追跡モジュール45と連動して心臓32の中の遠位端28の位置座標を決定するプロセッサ44を含む。本明細書の実施形態は、位置センサとしてのマイクロ電極46を使用することを説明しているが、マイクロ電極は、医療処置の間に他のタスク(例えば、心臓32の電気的活性の測定)を実施することができる。
【0024】
プロセッサ44は、電流追跡モジュール45と協働して、接着性皮膚パッチ42と、遠位端30に結合され、インピーダンスに基づく位置トランスデューサとして機能するように構成された電極48と、の間で測定されたインピーダンスに基づいて、心臓32内の遠位端30の位置座標を更に決定する。本明細書に記載の実施形態では、電極48は、心臓32内の組織に信号を適用し、かつ/又は心臓32内の位置における特定の生理学的特性(例えば、局所的表面電位)を測定するように構成することができる。電極48は、医療用プローブ22を介して通るワイヤ(図示せず)によって、制御コンソール26に接続されている。
【0025】
プロセッサ44は、典型的には、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)として構成されているリアルタイムノイズ低減回路47と、続いてアナログ-デジタル(A/D)ECG(心電計)信号変換集積回路49と、を含み得る。このプロセッサは、信号をA/D ECG回路47から別のプロセッサに伝えることができ、かつ/又は、本明細書で開示される1つ以上のアルゴリズムを実行するようにプログラム可能であり、1つ以上のアルゴリズムはそれぞれ、本明細書で後述する工程を含む。このプロセッサは、1つ以上のアルゴリズムを実行するために、回路47及び回路49、並びに以下でより詳細に説明されるモジュールの機構を使用する。
【0026】
図1、2及び
図3に示される医療システムは、遠位端28及び30の位置を測定するためにインピーダンスに基づく感知を使用しているが、他の位置追跡技術を使用してもよい(例えば、磁気系のセンサを用いる技術)。インピーダンスに基づく位置追跡技術については、例えばそれらの開示内容が参照によって本明細書に援用される米国特許第5,983,126号、同第6,456,864号、同第5,944,022号に記載されている。磁気位置追跡技術については、例えばそれらの開示内容が参照によって本明細書に援用される米国特許第5,391,199号、同第5,443,489号、同第6,788,967号、同第6,690,963号、同第5,558,091号、同第6,172,499号、及び同第6,177,792号に記載されている。本明細書で上述する位置感知方法は、上述のCARTO(登録商標)システムに実装され、上記で引用した特許に詳細に説明されている。
【0027】
制御コンソール26は、入力/出力(I/O)通信インターフェース50を更に含むが、これは、制御コンソールが、電極46、48及び接着性皮膚パッチ42から信号を伝達し、かつ/又はこれらに信号を伝達することを可能にする。電極46、48及び接着性皮膚パッチ42から受信した信号に基づいて、プロセッサ44は、患者の体内の遠位端28及び30の位置を示すマップ52を生成することができる。処置中、プロセッサ44は、医療専門家36に対し、ディスプレイ54上にマップ52を提示し、このマップを表すデータをメモリ56に保存することができる。メモリ56は、例えばランダムアクセスメモリ又はハードディスクドライブなどの任意の好適な揮発性及び/又は非揮発性メモリを含んでもよい。いくつかの実施形態では、医療専門家36は1つ以上の入力装置58を使ってマップ54を操作することができる。代替的な実施形態では、ディスプレイ54は、マップ52を提示することに加え、医療専門家36からの入力を受理するように構成され得るタッチスクリーンを含むことができる。
【0028】
本発明の実施形態では、バルーン38は、典型的にはアブレーションに使用され、そのため、本明細書ではアブレーション電極60とも称され、バルーン38の外壁に取り付けられた1つ以上の電極60を含む。
図2に示される構成では、アブレーション電極60は、非多角形の形状を有し、マイクロ電極46は、アブレーション電極の中の「島」に位置決めされている。電極46及び60は、バルーンと共に製造することができ、典型的には、バルーン38の外壁を覆う金を含む。
【0029】
制御コンソール26は、アブレーションモジュール62、及び膨張モジュール64も含む。アブレーションモジュール62は、アブレーション電極60に伝達されるアブレーション出力(例えば、高周波エネルギー)のレベル及び期間などのアブレーションパラメータをモニタリングし、制御するように構成されている。膨張モジュール64は、バルーン38の膨張をモニタリングし、制御するように構成されている。
【0030】
いくつかの実施形態では、膨張モジュール64は、潅注流体を使用してバルーン38を膨張させ、潅注流体がバルーンに流れる流速を制御することによって、バルーンの膨張を制御することができる。これらの実施形態では、バルーン38は、潅注流体をバルーンの外に出すことができる複数の小さな開窓(図示せず)を典型的には含む。これらの開窓は、典型的には直径0.025~0.500ミリメートルである。
【0031】
図2に示すように、バルーンを貫通するために医療専門家36が操作可能な管状シャフト66の周囲にバルーン38が形成されている。例えば、管状シャフト66は、完全に又は部分的なラッソ、すなわち予め形成された円弧状構造体として形成された末端部分68を包含する。本明細書に記載の実施形態では、末端部分68は、ラッソ68とも称され得る。
【0032】
端部68の非拘束時の曲率半径は、典型的には7.5mm~15mmである。弧形構造体は弾性的であり、末端部分68が心臓32内(又は後述するように肺静脈内)に位置決めされている時は、場合によってはわずかに螺旋状であるため、端部が円弧の全長にわたって心臓組織又は血管組織を押圧して、良好な組織の接触を促進する。末端部分68の円弧状及びおそらくは螺旋状の形は、例えば、ニチノールのような形状記憶材料で作製され、所望の形状にされた薄いストラット(図示せず)を末端部分内に組み入れることによって維持することが可能である。ストラットは、末端部分が管状シャフト66を通して挿入及び引き抜きされる間は真っ直ぐであるが、心腔内で非拘束状態にある時は円弧状に戻ることを可能にするように十分に可撓性に作られる。
【0033】
末端部分68は、末端部分に沿って分布する電極70のアレイを含む。電極70は、本明細書ではラッソ電極70とも称される場合があり、それぞれの幅は1mm~4mmであり、また1mm~10mm離間される。ラッソ電極70は、典型的には感知のために用いられる。電極46、60及び70は、医療用プローブ24を通るワイヤ(図示せず)によって、制御コンソール26に接続されている。
【0034】
アブレーションの検証
図4は、本発明の実施形態による、心臓32でアブレーション処置を実施して検証するための所定のアルゴリズムを概略的に示すフローチャートであり、
図5は、肺静脈112の心門組織110でアブレーション処置を実施及び検証する間の心臓32での遠位端28及び30の詳細模式図である。本明細書で後述するように、プロセッサ44は、アブレーション処置中に形成された損傷部位内の間隙を識別するために、対応する第1及び第2の活性化ピークを有する第1及び第2の活性化信号を分析することができる。
【0035】
第1の位置決め工程80では、医療専門家36は、遠位端28を心臓32の真腔内に位置決めし、末端部分68がシャフト66から延びるように、医療用プローブ24を操作する。部分68は、管状シャフト66から延びるとラッソ形状へと形成され、それによりにラッソ電極70が静脈内組織118上の感知位置116を押圧する。膨張工程82では、医療専門家36はバルーン38を膨張させ、続いてアブレーション電極60が心門組織110を押圧するように医療用プローブ24を操作する。バルーン38を膨張させるために、医療専門家36は膨張信号を膨張モジュール64に伝送し(例えば、所与の入力装置58を介して)、膨張モジュールは膨張信号を受信すると膨張流体(例えば、潅注流体)をバルーン38に送達して、それによりバルーンを膨張させる。
【0036】
アブレーション工程84では、医療専門家36がアブレーション信号をアブレーションモジュール62に伝達し、それに応答して、アブレーションモジュールは、アブレーション電極60に高周波(RF)エネルギーを送り、それにより、心門組織110に対して損傷部位114を形成するアブレーション処置を実施する。第2の位置決め工程86では、医療専門家36は、心臓32の心腔内に遠位端30を位置決めし、心内組織122上の刺激位置120を電極48が押圧するように、医療用プローブ22を操作する。電極48を用いて、ペーシング信号を位置120に注入するか、又はその位置から自然信号を取得することができる。本明細書では、ペーシング又は自然信号は活性化信号と呼ばれる。信号選択工程88では、第1の活性化信号がペーシング信号を含む場合、続くペーシング工程90で、医療コンソールは心内組織122の刺激位置120にペーシング信号ピークを有するペーシング信号を伝送する(電極48を介して)。第1の活性化信号が、自然信号、すなわち心臓によって生成された信号を含む場合、フローチャートは以下で説明する工程104に続く。
【0037】
比較工程92では、プロセッサ44が、電流追跡モジュール45と連動して、所定のアルゴリズムを実行しながら、ラッソ電極70(即ち、静脈内組織118に接触するラッソ電極)から第2の活性化信号を受信すると、制御は、プロセッサが第2の信号の各々に関する対応する第2の活性化ピークを識別する工程94に続く。工程94に続くフローチャートの工程について以下で説明する。本明細書に記載の実施形態では、第2の活性化信号は、第1の活性化信号を刺激位置120に送達する電極48に応答して、ラッソ電極70が感知位置116で検出する信号を含む。
【0038】
図6は、本発明の実施形態による、損傷部位114、刺激位置120、及び感知位置116の詳細模式図であり、
図7は、電極48によって感知又は適用される第1の活性化信号142、及びラッソ電極70によって検出される第2の活性化信号144を示すチャート140である。本明細書に記載の実施形態では、第1の活性化信号142は、最初に第1の活性化ピーク146を有し、各第2の活性化信号144は、第1の時間に続く対応する第2の時間に、対応する第2の活性化ピーク148を有する。いくつかの実施形態では、プロセッサ44は、
図6に示す損傷部位114(例えば、刺激位置120及び感知位置116)の詳細模式図をマップ52中に提示することができる。
【0039】
図6及び7では、感知位置116、第2の活性化信号144、及び第2の活性化ピーク148は、感知位置が感知位置116A~116Dを含み、第2の活性化信号が第2の活性化信号144A~144Dを含み、第2の活性化ピークが第2の活性化ピーク148A~148Dを含むように、識別用数値に文字を付け加えて差異化することができる。本明細書に記載の実施形態では、第1の所定のラッソ電極70は、感知位置116Aで、第2の活性化ピーク148Aを有する第2の活性化信号144Aを検出し、第2の所定のラッソ電極70は、感知位置116Bで、第2の活性化ピーク148Bを有する第2の活性化信号144Bを検出し、第3の所定のラッソ電極70は、感知位置116Cで、第2の活性化ピーク148Cを有する第2の活性化信号144Cを検出し、第4の所定のラッソ電極70は、感知位置116Dで、第2の活性化ピーク148Dを有する第2の活性化信号144Dを検出する。
【0040】
所定のアルゴリズムのフローチャートを再び参照すると、工程94の後、プロセッサ44は第1の決定工程96で第1の活性化ピーク146と第2の活性化ピーク148との間の時間的関係を決定し、第2の決定工程98で刺激位置120と感知位置116との間の空間的関係を決定する。第2の識別工程100では、プロセッサ44は、時間的及び空間的関係に基づき、推定された間隙132の地点130(
図6)(すなわち損傷部位114内の間隙132の位置)と最も近い(すなわち全てのラッソ電極の中で)所定のラッソ電極70を識別する。
【0041】
動作中、プロセッサ44は、第1の識別刺激位置120及び感知位置116によって、刺激位置120と感知位置116との間の空間的関係を決定する。本明細書に記載の実施形態では、刺激位置120はマッピング電極48の位置を含み、感知位置116はラッソ電極70の対応する位置を含む。
図1~3に示す構成では、プロセッサ44は、インピーダンスに基づく位置追跡技術を用いて、マッピング電極48及びラッソ電極70の対応する位置を決定する。インピーダンスに基づく位置追跡技術の例は、上記で引用した米国特許第5,983,126号、同第6,456,864号、及び同第5,944,022号で説明されている。
【0042】
代替的な一構成では、医療用システム20は、磁気位置追跡技術を用いて、マッピング電極48及びラッソ電極70の対応する位置を決定することができる。磁気位置追跡技術の例は、上記で引用した米国特許第5,391,199号、同第5,443,489号、同第6,788,967号、同第6,690,963号、同第5,558,091号、同第6,172,499号及び、同第6,177,792号で説明されている。
【0043】
本明細書に記載の実施形態では、アブレーション処置は、第1の領域136と第2の領域138との間に損傷部位114を形成し、損傷部位は、地点130に間隙132を含む。上記で記載されるように、電極48は第1の活性化信号を刺激位置120で適用又は感知し、プロセッサ44は対応する感知位置116でラッソ電極70から第2の活性化信号を受信する。
【0044】
図6に示すように、感知位置116で検出された第2の活性化信号は、経路セグメント134及び135を含む経路を移動する(すなわち刺激位置116から)。
図6に示す実施例では、第1の所定のラッソ電極70によって検出された第1の所定の第2の活性化信号は、刺激位置120から経路セグメント135及び134Aを介して感知位置116Aまで移動し、第2の所定のラッソ電極70によって検出された第2の所定の第2の活性化信号は、刺激位置120から経路セグメント135及び134Bを介して感知位置116Bまで移動し、第3の所定のラッソ電極70によって検出された第3の所定の第2の活性化信号は、刺激位置120から経路セグメント135及び134Cを介して感知位置116Cまで移動し、第4の所定のラッソ電極70によって検出された第4の所定の第2の活性化信号は、刺激位置120から経路セグメント135及び134Dを介して感知位置116Dまで移動する。
【0045】
視覚的に単純化するため、経路セグメント135及び136は、間隙132の1点から放射される直線として示される。更に、
図6では、視覚的に単純化するために、単一の経路セグメント135を地点130と刺激位置120との間に示しているが、第2の活性化信号は、刺激位置から間隙の地点までに様々な経路を含んでもよい。
【0046】
図140に示すように、第1の活性化ピーク146は時間150で発生し、第2の活性化ピーク144Aは時間152で発生し、第2の活性化ピーク144Bは時間154で発生し、第2の活性化ピーク144Cは時間156で発生し、第2の活性化ピーク144Dは時間158で発生する。時間150~158間の時間的関係を決定して、位置116と120との間の空間的関係を決定することにより、プロセッサ44は、地点130に最も近いラッソ電極を決定することができる。
図140に示す実施例では、所定のラッソ電極を決定することは、時間的関係として、第2の活性化ピーク148Cが第1の活性化ピーク146と時間的に最も近いことを識別し、続いて、空間的関係として、地点130が感知位置116Cにある所定のラッソ電極の近位にあることを決定することを含み得る。
【0047】
フローチャートを再び参照すると、提示工程102で、プロセッサ44はディスプレイ54上のマップ52に所定の電極を提示して、本方法は終了する。一実施形態では、プロセッサ44はラッソ68を示すアイコン(図示せず)をマップ52にオーバレイし、アイコンのセクションを強調表示することで、損傷部以内で推定される間隙と最も近い所定のラッソ電極(すなわち、
図6及び7に示す実施例における第3の所定のラッソ電極)を識別することができる。医療専門家36は、続いて識別されたラッソ電極の位置を用いて、典型的には間隙132を含む識別された位置と近位の領域を再アブレーションすることができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、ラッソ電極は、静脈内組織118上の対応する位置116に位置決めされ、そしてプロセッサ44がラッソ電極から最初の第2の活性化信号144を受信したら(かつ、したがって間隙132が存在することを検出したら)、医療専門家36は、ラッソ電極が、静脈内組織上の感知位置116とは異なる対応する後続の感知位置に位置決めされるように、ラッソ68を肺静脈112内で再位置決めすることができる。本明細書に記載の実施形態を使用して、電極48を用いて、後続の第1の活性化ピークを有する後続のペーシング信号を位置120に注入する(又は検出する)ことができる。
【0049】
一旦、プロセッサ44が、再位置決めされたラッソ電極から対応する後続の第2の活性化ピークを有する後続の第2の活性化信号を受信したら、プロセッサは、(a)第1の活性化ピーク146と第2の活性化ピーク148との間の時間的関係、及び刺激位置120と感知位置116との間の空間的関係、並びに(b)後続の第1の活性化ピークと後続の第2の活性化ピークとの間の後続の時間的関係、及び刺激位置120と後続の感知位置との間の後続の空間的関係に基づいて、地点130の推定位置(すなわち間隙の推定位置)を決定することができる。
【0050】
一実施形態では、地点130の推定位置は、感知位置116と損傷部位114の選択された領域との間の第1の距離と、後続の感知位置と選択された領域との間の第2の距離と、の合計が最小限となる位置である。代替的な一実施形態では、合計は、第1の活性化ピーク146と最も時間の近い第2の活性化ピーク148との間の第1の時間、及び後続の第1の活性化ピークと最も時間の近い後続の第2の活性化ピークとの間の第2の時間に従って測られる。
【0051】
一部の実施形態では、プロセッサ44は、マップ52中に、地点の推定位置をマーキングして、更新された(すなわちマーキングされた)マップをディスプレイ54に提示することができる。
【0052】
工程88を再び参照すると、第1の活性化信号が自然信号を含み、続いて、受信工程104で、電流追跡モジュール45と連動し、所定のアルゴリズムを実行するプロセッサ44が、電極48によって感知された心臓32の自然信号を受信した場合、本方法は工程92に続く。自然信号は自然信号活性化ピークを有し、自然信号を用いた実施形態では、第1の活性化ピークは自然信号活性化ピークを含む。
【0053】
工程92を再び参照すると、プロセッサ44がラッソ電極70から第2の活性化信号を全く受信しなくなれば、その時にはアブレーション処置は成功であり、本方法は終了する。
【0054】
本明細書で説明する実施形態は、心臓32の心腔と肺静脈112の静脈内組織118との間の心門組織110における地点130を識別するのを助けるためにマッピングカテーテル22及び一体型カテーテル24を用いているが、任意の所定の心室と所定の心室から延びる任意の血管(例えば肺動脈)との間の心門組織中におけるアブレーション損傷部位中の間隙の地点を識別するのを助けるために任意の数のカテーテルを使用することも、本発明の精神及び範囲に含まれるものと見なされる。例えば、分離したカテーテルを用いて、アブレーションを実施して、第2の活性化信号を感知することができる。
【0055】
更に、本明細書で説明する実施形態は、バルーン38上でアブレーション電極60を用いて損傷部位114を形成し、またラッソ電極70を使用する(すなわちラッソ68上で)が、任意のタイプのアブレーション電極を用いて損傷部位を形成すること、及び感知位置116を同時に押圧することのできる複数の電極を有する任意のタイプのカテーテルを使用することも、本発明の精神及び範囲に含まれるものと見なされる。更に、医療用プローブ24は、第2の活性化信号を検出する電極70を有する単一のラッソ68を含んでいるが、医療用プローブ24は、各信号検出カテーテルが電極70の対応するサブセットを有する2つ以上の信号検出カテーテルを指してもよい。
【0056】
更に、本明細書で説明する実施形態は、心臓32内の損傷部位114内の間隙132を検出するためにペーシング信号を使用するが、電気信号を伝達し得る細胞を含むその他の身体器官内の損傷部位の間隙を検出するためにペーシング信号を使用することも、本発明の精神及び範囲に含まれるものと見なされる。例えば、本明細書で説明する実施形態は、細胞間に電気信号を通すことのできる組織を含む患者の脳の損傷部位における間隙を検出するために使用することができる。
【0057】
上記の実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示され、かつ説明されたものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書で上述された様々な特徴の組み合わせ及び部分組み合わせの両方、並びに上述の説明を一読すれば当業者が想起すると思われる、先行技術で開示されていないこれらの変形及び改変を含む。
【0058】
〔実施の態様〕
(1) 体腔内組織の第1の領域と第2の領域との間に形成された損傷部位を評価するための方法であって、
前記第1の領域内の刺激位置で前記組織と接触する第1のプローブを用いて、第1の時間に第1の活性化ピークを有する第1の活性化信号を前記組織に適用するか、又は前記組織中で感知することと、
前記第2の領域内の対応する感知位置で前記組織と接触する複数の電極を有する第2のプローブから、前記第1の活性化信号に続く、前記電極により感知された対応する第2の活性化ピークを有する対応する第2の活性化信号を受信することと、
前記第1の活性化ピークと前記第2の活性化ピークとの間の時間的関係、及び前記刺激位置と前記感知位置との間の空間的関係に基づいて、前記損傷部位内の間隙の近位にある前記複数の電極のうちの1つを識別することと、
前記識別された電極がマップ上にマーキングされた前記体腔の前記マップを表示することと、を含む、方法。
(2) 前記複数の電極のうちの前記1つを識別することは、前記第2の活性化信号の中で前記第1の活性化ピーク後で最も時間の近い対応する第2の活性化ピークを有する特定の電極を、前記複数の電極の中から発見することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記識別された電極が前記マップ上にマーキングされた前記体腔の前記マップを表示することは、前記マップ上に、前記第2の医療用プローブの遠位端を表すアイコンを提示して、前記マップ上で前記発見された電極を強調表示することを含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記第1の活性化信号を適用することは、前記第1の医療用プローブに取り付けられた電極によってペーシング信号を前記刺激位置に適用することを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記体腔の前記第1の領域は心臓を含み、前記第2の領域は前記心臓から延びる血管を含む、実施態様1に記載の方法。
【0059】
(6) 前記第1の活性化信号を感知することは、前記第1の医療用プローブによって、前記刺激位置における自然信号を感知することを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記第2のプローブは、前記感知位置と接触する前記複数の電極を有するラッソカテーテルを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記第1の活性化信号を前記組織に適用するか、又は前記組織内で感知する前に、前記組織上でアブレーション処置を実施して、それにより前記損傷部位を形成することを含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記第2のプローブは、前記電極の対応するサブセットを有する複数のカテーテルを含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記第1の活性化信号は最初の第1の活性化信号を含み、前記第1の活性化ピークは最初の第1の活性化ピークを含み、前記感知位置は最初の感知位置を含み、前記第2の活性化信号は最初の第2の活性化信号を含み、前記第2の活性化ピークは最初の第2の活性化ピークを含み、前記時間的関係は最初の時間的関係を含み、前記空間的関係は最初の空間的関係を含み、
前記第2のプローブを再位置決めすることと、
前記第1の時間に続く第2の時間に後続の第1の活性化ピークを有する後続の第1の活性化信号を、前記組織に適用するか、又は前記組織内で感知することと、
前記再位置決めされた第2のプローブ内にあり、前記最初の感知位置とは異なる前記第2の領域における対応する後続の感知位置で前記組織と接触する前記複数の電極から、前記後続の第1の活性化信号に続いて前記電極によって感知される対応する後続の第2の活性化ピークを有する対応する後続の第2の活性化信号を受信することと、
前記最初の時間的関係及び前記最初の空間的関係、前記後続の第1の活性化ピークと前記後続の第2の活性化ピークとの間の後続の時間的関係、並びに前記刺激位置と前記後続の感知位置との間の後続の空間的関係に基づき、前記間隙の地点の推定位置を決定することと、
前記間隙の前記決定された推定位置が前記マップ上にマーキングされた前記体腔の前記マップを表示することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
【0060】
(11) 体腔内組織の第1の領域と第2の領域との間に形成された損傷部位を評価するための装置であって、
第1の電極を含む第1の医療用プローブと、
複数の第2の電極を含む第2の医療用プローブと、
ディスプレイと、
プロセッサであって、
第1の時間に第1の活性化ピークを有する第1の活性化信号を、前記第1の領域の刺激位置で前記組織と接触する前記第1の電極に適用するか、又は前記第1の電極から感知し、
前記第2の領域内の対応する感知位置で前記組織と接触する前記第2の電極から、前記第1の活性化信号に続く、前記電極により感知された対応する第2の活性化ピークを有する対応する第2の活性化信号を受信し、
前記第1の活性化ピークと前記第2の活性化ピークとの間の時間的関係、及び前記刺激位置と前記感知位置との間の空間的関係に基づいて、前記損傷部位内の間隙の近位にある前記複数の電極のうちの1つを識別し、
前記識別された電極がマップ上にマーキングされた前記体腔の前記マップを前記ディスプレイ上に提示する、ように構成されたプロセッサと、を含む、装置。
(12) 前記プロセッサは、前記第2の活性化信号の中で前記第1の活性化ピーク後で最も時間の近い対応する第2の活性化ピークを有する特定の電極を、前記複数の電極の中から発見することによって、前記複数の電極のうちの前記1つを識別するように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(13) 前記プロセッサは、前記マップ上に、前記第2の医療用プローブの遠位端を表すアイコンを提示し、前記マップ上で前記発見された電極を強調表示することによって、前記識別された電極が前記マップ上にマーキングされた前記体腔の前記マップを提示するように構成されている、実施態様12に記載の装置。
(14) 前記プロセッサは、前記第1の医療用プローブに取り付けられた電極によってペーシング信号を前記刺激位置に適用することによって、前記第1の活性化信号を適用するように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(15) 前記体腔の前記第1の領域は心臓を含み、前記第2の領域は前記心臓から延びる血管を含む、実施態様11に記載の装置。
【0061】
(16) 前記プロセッサは、前記第1の医療用プローブによって、前記刺激位置における自然信号を感知することによって、前記第1の活性化信号を感知するように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(17) 前記第2のプローブは、前記感知位置と接触する前記複数の電極を有するラッソカテーテルを含む、実施態様11に記載の装置。
(18) 前記プロセッサは、前記第1の活性化信号を前記組織に適用するか、又は前記組織内で感知する前に、前記組織上でアブレーション処置を実施して、前記損傷部位を形成するように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(19) 前記第2のプローブは、前記電極の対応するサブセットを有する複数のカテーテルを含む、実施態様11に記載の装置。
(20) 前記第1の活性化信号は最初の第1の活性化信号を含み、前記第1の活性化ピークは最初の第1の活性化ピークを含み、前記感知位置は最初の感知位置を含み、前記第2の活性化信号は最初の第2の活性化信号を含み、前記第2の活性化ピークは最初の第2の活性化ピークを含み、前記時間的関係は最初の時間的関係を含み、前記空間的関係は最初の空間的関係を含み、前記プロセッサは、
前記第2のプローブの再位置決めに応答して、前記第2のプローブの前記複数の電極の前記最初の感知位置とは異なる前記第2の領域内の対応する後続の感知位置を評価して、
前記第1の時間に続く第2の時間に後続の第1の活性化ピークを有する後続の第1の活性化信号を、前記組織に適用するか、又は前記組織内で感知し、
前記第2の領域内の前記対応する後続の感知位置で前記組織と接触する前記複数の電極から、前記後続の第1の活性化信号に続いて、前記電極により感知された対応する後続の第2の活性化ピークを有する対応する後続の第2の活性化信号を受信し、
前記最初の時間的関係及び前記最初の空間的関係と、前記後続の第1の活性化ピークと前記後続の第2の活性化ピークとの間の後続の時間的関係と、前記刺激位置と前記後続の感知位置との間の後続の空間的関係と、に基づいて前記間隙の地点の推定位置を決定し、
前記地点の前記推定位置が前記マップ上にマーキングされた前記体腔の前記マップを表示する、ように構成されている、実施態様11に記載の装置。
【0062】
(21) 体腔内組織の第1の領域と第2の領域との間に形成された損傷部位を評価するためであり、体腔内に挿入するための第1及び第2の医療用プローブと連動して操作されるコンピュータソフトウェア製品であって、前記製品は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体を含み、前記媒体にはプログラム命令が保存され、前記命令は、コンピュータに読み取られると、前記コンピュータが、
第1の時間に第1の活性化ピークを有する第1の活性化信号を前記組織に適用するか、又は前記組織中で感知するために、前記第1の領域内の刺激位置で前記組織と接触する前記第1のプローブを用い、
前記第2の領域内の対応する感知位置で前記組織と接触する複数の電極を有する前記第2のプローブから、前記第1の活性化信号に続く、前記電極により感知された対応する第2の活性化ピークを有する対応する第2の活性化信号を受信し、
前記第1の活性化ピークと前記第2の活性化ピークとの間の時間的関係、及び前記刺激位置と前記感知位置との間の空間的関係に基づいて、前記損傷部位内の間隙の近位にある前記複数の電極のうちの1つを識別し、
前記識別された電極がマップ上にマーキングされた前記体腔の前記マップを表示する、コンピュータソフトウェア製品。
(22) 前記プログラム命令は、前記第2の活性化信号の中で前記第1の活性化ピーク後で最も時間の近い対応する第2の活性化ピークを有する特定の電極を、前記複数の電極の中から発見することによって、前記複数の電極のうちの前記1つを識別する、実施態様1に記載のコンピュータソフトウェア製品。