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特許7229758開閉機構及びクランプ用挿入体並びに摩擦圧接装置
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  • 特許-開閉機構及びクランプ用挿入体並びに摩擦圧接装置 図1
  • 特許-開閉機構及びクランプ用挿入体並びに摩擦圧接装置 図2
  • 特許-開閉機構及びクランプ用挿入体並びに摩擦圧接装置 図3
  • 特許-開閉機構及びクランプ用挿入体並びに摩擦圧接装置 図4
  • 特許-開閉機構及びクランプ用挿入体並びに摩擦圧接装置 図5
  • 特許-開閉機構及びクランプ用挿入体並びに摩擦圧接装置 図6
  • 特許-開閉機構及びクランプ用挿入体並びに摩擦圧接装置 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】開閉機構及びクランプ用挿入体並びに摩擦圧接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20230220BHJP
【FI】
B23K20/12 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018240548
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020099931
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】吉川 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】池田 昌央
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-155238(JP,A)
【文献】特開2005-324318(JP,A)
【文献】特開2003-260626(JP,A)
【文献】特開2005-007504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00-20/26,31/00-33/00,37/00-37/08
B23Q 3/00-3/154,3/16-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面α上で相対的に回動又は斜め移動することにより開閉する第一部材及び第二部材と、
閉状態にある第一部材と第二部材とを互いに係止可能なクランプ機構と
を備え、
クランプ機構が、
第一部材に設けられたクランプ用穴部と、
第二部材に設けられ、閉状態においてその先端部がクランプ用穴部に挿入されるクランプ用挿入部と
で構成され、
クランプ用挿入部は、平面αに略垂直な方向において突出させることで拡大し、引き寄せることによって縮小する一対のクランプ用可動体が設けられ、
一対のクランプ用可動体が突出してクランプ用穴部に係合するクランプ状態と、一対のクランプ用可動体が引き寄せられてクランプ用穴部に対する係合が解除されるアンクランプ状態とを機械的に切り替えることができ
ことを特徴とする開閉機構。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉機構によってワークを保持する摩擦圧接装置。
【請求項3】
平面α上で相対的に回動又は斜め移動することにより開閉する第一部材及び第二部材のうち第二部材に設けられ、第一部材と第二部材とが閉状態となる際に、第一部材に設けられたクランプ用穴部にその先端部が挿入されるクランプ用挿入体であって、
クランプ用挿入体には、平面αに略垂直な方向において突出させることで拡大し、引き寄せることによって縮小する一対のクランプ用可動体が設けられ、
一対のクランプ用可動体が突出してクランプ用穴部に係合するクランプ状態と、一対のクランプ用可動体が引き寄せられてクランプ用穴部に対する係合が解除されるアンクランプ状態とを機械的に切り替えることができる
ことを特徴とするクランプ用挿入体。
【請求項4】
基部と、
基部に対して進退可能に設けられたピストンと、
ピストンを駆動するピストン駆動手段と、
をさらに備え、
一対のクランプ用可動体は、ローラー状とされるとともにピストンの進退に伴って移動するように構成され、
アンクランプ状態からクランプ状態に切り替える際には、ピストン駆動手段がピストンを駆動し、一対のクランプ用可動体が、ピストンの進退方向に移動して、基部に設けられたカム面に当接することによって、ピストンから遠ざかる方向に突出する
請求項3に記載のクランプ用挿入体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ状態とアンクランプ状態とを機械的に切り替えることができるクランプ機構を備えた開閉機構と、この開閉機構に使用可能なクランプ用挿入体とに関する。本発明はまた、この開閉機構を備えた摩擦圧接装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の部材同士を接合する(継ぎ合わせる)方法として、摩擦圧接という方法が知られている。この摩擦圧接は、突き合わせた一対の金属部材の片方を回転させることで、金属部材の接触面に摩擦熱を発生させ、金属部材における接触面付近を溶融させたうえで、金属部材同士を押し付けて接合する技術である。この摩擦圧接を行うために従来用いられている摩擦圧接装置としては、例えば、特許文献1の図2に記載の摩擦圧接装置が挙げられる。この装置は、同図に示されるように、回転しないように保持された被接合材10及び被接合材12の間に短尺の接合材14を配し、この接合材14のみを回転駆動装置18で回転させることによって、被接合材10と接合材14、接合材14と被接合材12とをそれぞれ摩擦圧接して、被接合材10と被接合材12とを間接的に接合するものとなっている。回転駆動装置18は、接合材14を保持する回転体26を備えたものとなっており、この回転体26を回転させることで接合材14を回転させることができるようになっている。
【0003】
しかし、このような従来の摩擦圧接装置においては、摩擦圧接により一体化された接合済ワークを装置から取り外しにくいという問題があった。というのも、特許文献1に示されるような摩擦圧接装置においては、通常、回転体26の側方(回転体26の回転軸に平行な方向。以下、本段落内において同じ。)から接合材14を挿入することによって接合材14を回転体26に取り付けるようになっているため、摩擦圧接後の接合済ワークを装置から取り外す際には、接合済ワークを回転体26から側方へ引き抜く必要があるからである。このため、接合済ワークが、摩擦圧接に伴うバリ等、外周側にはみ出す部分を有していたり、クランク状を為す等、回転体26を通過できない形状を有していたりする場合や、摩擦圧接装置の側方に十分な空間を確保できない場合には、接合済ワークを装置から取り外すことができないおそれがあった。
【0004】
この点、特許文献2には、特許文献1の回転体26に相当する部分を上下に分離可能とすることで、摩擦圧接後の接合済ワークを容易に取り外すことができるようにした摩擦圧接装置が提案されている。すなわち、特許文献2に記載の摩擦圧接装置は、同文献の図4に示されるように、駆動力を受けて回転する従動側ギア18と、従動側ギア18内に着脱可能に係合され、インサート材3を把持する駆動部把持手段19とを備えたものとなっているところ、同文献の図7に示されるように、従動側ギア18は、カバー32の開閉に伴って上半部18aと下半部18bとに分離されるようになっており、駆動部把持手段19は、ボルト21aを緩めることによって上半部19aと下半部19bとに分離することができるようになっている。これにより、摩擦圧接の完了後には、カバー32を開き、ボルト21aを外して駆動部把持手段19を上半部19aと下半部19bとに分離させることで、接合済ワークを装置から容易に取り外すことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平06-328273号公報
【文献】特開2008-155238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2の段落0017等には、従動側ギア18の上半部18aと下半部18bとを固定する固定部材を設けることが記載されているものの、この固定部材の具体的な構造については、同文献には記載されていない。従動側ギア18は、それ自体回転するものであるため、前記固定部材は、従動側ギア18が回転した際に周囲と干渉しない箇所に設ける必要がある。このような固定部材としては、例えば、駆動部把持手段19の上半部19aと下半部19bとを固定しているボルト21aと同様のボルトを用いることも考えられる。しかし、上半部18aと下半部18bとをボルトで固定する場合には、上半部18aと下半部18bの固定や取り外しを手動で行う必要があり、手間がかかるという問題がある。加えて、摩擦圧接完了直後の従動側ギア18や接合済ワークは高温になっているおそれがあるため、摩擦圧接の完了後しばらく待たなければボルトを操作することができないという問題もあった。
【0007】
そこで、固定部材を機械的に操作可能なものとすることが考えられる。例えば、穴部(クランプ用穴部)を下半部18bに設け、そのクランプ用穴部に挿入される挿入部(クランプ用挿入部)を上半部18aに設けて、クランプ用挿入部に設けられた可動部(クランプ用可動部)を機械的に動作させることにより、クランプ用可動部が穴部の内周部に係合した状態(クランプ状態)と、クランプ用可動部のクランプ用穴部の内周部への係合が解除された状態(アンクランプ状態)とを切り替えることができるようにすることが考えられる。しかし、特許文献2に記載された従動側ギア18の上半部18aは、同文献の図7に示されるように、カバー32のヒンジ部分を中心とした回動方向に移動することによって下半部18bから分離するものとなっている。このため、上述したように固定部材をクランプ用穴部とクランプ用挿入部とで構成した場合には、クランプ用穴部に対してクランプ用挿入部が斜めから挿入されるようになるため、クランプ用穴部の内周寸法をクランプ用挿入部の外周寸法よりもある程度大きくしておかないと、上半部18aと下半部18bとが開閉する際にクランプ用挿入部がクランプ用穴部の周縁部に干渉するおそれがある。ところが、クランプ用穴部の内周寸法を大きくすると、クランプ用挿入部の外周面とクランプ用穴部の内周面との間が空いてしまい、クランプ用可動部を大きく動作させなければならなくなってしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、互いに開閉する一の部材(第一部材)と他の部材(第二部材)とのクランプ状態とアンクランプ状態とを機械的に切り替えることができるだけでなく、第一部材と第二部材とが回動方向に開閉する等、クランプ用穴部に対してクランプ用挿入部が斜めから挿入される場合にも、クランプ用穴部の内周寸法を小さくすることができ、小さな動作でクランプ状態とアンクランプ状態とを切り替えることができる開閉機構を提供するものである。また、この開閉機構に好適に用いることができるクランプ用挿入体を提供することも本発明の目的である。さらに、この開閉機構を用いた摩擦圧接装置を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、平面α上で相対的に回動又は斜め移動することにより開閉する第一部材及び第二部材と、閉状態にある第一部材と第二部材とを互いに係止可能なクランプ機構とを備え、クランプ機構が、第一部材に設けられたクランプ用穴部と、第二部材に設けられたクランプ用挿入部とで構成され、クランプ用挿入部は、閉状態において当該先端部がクランプ用穴部に挿入される状態となされ、且つ、平面αに略垂直な方向に対してのみ拡大縮小する拡大縮小部を有し、拡大縮小部が拡大してクランプ用穴部に係合するクランプ状態と、拡大縮小部が縮小してクランプ用穴部に対する係合が解除されるアンクランプ状態とを機械的に切り替えることができるものとされたことを特徴とする開閉機構を提供することによって解決される。
【0010】
これにより、互いに開閉する第一部材と第二部材とのクランプ状態とアンクランプ状態とを機械的に切り替えることができ、第一部材と第二部材との固定や、その固定の解除を手動で行わなくてもよいようにすることができる。加えて、本発明の開閉機構においては、第一部材と第二部材との移動面(平面α)に略垂直な方向におけるクランプ用穴部の内周寸法を小さくすることができる。というのも、平面αに略垂直な方向においては、クランプ用挿入部がクランプ用穴部に対してほとんど移動しないため、クランプ用挿入部の外周面とクランプ用穴部の内周面との間を大きく開けなくとも、クランプ用挿入部がクランプ用穴部の周縁部に干渉することがないからである。さらに、本発明の開閉機構におけるクランプ用挿入部は、この平面αに略垂直な方向に対してのみ拡大縮小する拡大縮小部によってクランプ用穴部に係合するようになっているため、拡大縮小部を大きく動作させなくとも、拡大縮小部をクランプ用穴部にしっかりと係合させることができる。本発明の開閉機構は、その用途を特に限定されるものではないが、摩擦圧接装置におけるワークを保持する部分に好適に採用することができるものとなっている。
【0011】
上記課題は、また、クランプ用穴部に挿入して係合したクランプ状態と、クランプ用穴部に対する係合が解除されたアンクランプ状態とを機械的に切り替えることができるクランプ用挿入体であって、基部と、基部に対して進退可能に設けられたピストンと、ピストンを駆動するピストン駆動手段と、ピストンの進退に伴って移動するクランプ用可動体を有し、クランプ用可動体がピストンから遠ざかる又はピストンに近付く向きに移動することでクランプ用挿入体の挿入方向に略垂直な一の方向に対してのみ拡大縮小し、拡大時にクランプ用穴部に係合したクランプ状態となり、縮小時にクランプ用穴部に対する係合が解除されたアンクランプ状態となる拡大縮小部とを備え、アンクランプ状態からクランプ状態に切り替える際には、ピストン駆動手段がピストンを進退させ、クランプ用可動体が、ピストンの進退方向に移動して、基部に設けられたカム面に当接することによって、ピストンから遠ざかる方向に突出するようにしたことを特徴とするクランプ用挿入体を提供することによっても解決される。このクランプ用挿入体は、上述した開閉機構のクランプ用挿入部として好適に用いることができるものとなっている。
【0012】
本発明においては、クランプ用可動体をローラー状とすると好ましい。これにより、クランプ用可動体がカム面にスムーズに当接するようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によって、互いに開閉する一の部材(第一部材)と他の部材(第二部材)とのクランプ状態とアンクランプ状態とを機械的に切り替えることができるだけでなく、第一部材と第二部材とが回動方向に開閉する等、クランプ用穴部に対してクランプ用挿入部が斜めから挿入される場合にも、クランプ用穴部の内周寸法を小さくすることができ、小さな動作でクランプ状態とアンクランプ状態とを切り替えることができる開閉機構を提供することが可能になる。また、この開閉機構に好適に用いることができるクランプ用挿入体を提供することも可能になる。さらに、この開閉機構を用いた摩擦圧接装置を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の摩擦圧接装置の斜視図である。
図2】本発明の摩擦圧接装置におけるワークホルダ周辺を取り出して示した斜視図である。
図3】本発明の摩擦圧接装置におけるワークホルダ周辺を取り出して示した斜視図であって、ハウジングが開かれたことに伴ってワークホルダが上側部材と下側部材とに分離された状態を示す図である。
図4】本発明の摩擦圧接装置におけるクランプ用穴部周辺を、図3における平面αに垂直な平面で切断して示した断面図であって、クランプ用穴部にクランプ用挿入部が挿入される直前の状態を示した図である。
図5】本発明の摩擦圧接装置におけるクランプ用穴部周辺を、図3における平面αに垂直な平面で切断して示した断面図であって、クランプ用穴部にクランプ用挿入部が挿入された直後の状態を示した図である。
図6】本発明の摩擦圧接装置におけるクランプ用穴部周辺を、図3における平面αに垂直な平面で切断して示した断面図であって、図5に示す状態からピストンを引き上げて、クランプ用可動体を突出させた状態を示した図である。
図7】本発明の摩擦圧接装置におけるクランプ用挿入部の先端部分を拡大して示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。図1~7には、x軸、y軸及びz軸を表示しており、説明の便宜上、z軸正側を上、z軸負側を下と呼ぶことがあるが、これにより本発明の開閉機構やクランプ用挿入体を使用する向きが限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の摩擦圧接装置100の斜視図である。本発明の摩擦圧接装置100は、図1に示すように、ワーク第一部分W、ワーク第二部分W及びワーク第三部分Wからなるワークを摩擦圧接して一体的に接合するものとなっている。この摩擦圧接装置100は、ワーク第一部分Wを保持する第一ワーク保持部110と、ワーク第二部分Wを保持する第二ワーク保持部120と、第一ワーク保持部110と第二ワーク保持部120との間に配されて、ワーク第三部分Wを保持する第三ワーク保持部130とを備えたものとなっている。
【0017】
第一ワーク保持部110は、摩擦圧接装置100のベース部分に対して動かない状態で設けられている一方、第二ワーク保持部120及び第三ワーク保持部130は、摩擦圧接装置100のベース部分に対して図1におけるy軸方向に移動させることができるようになっている。また、第一ワーク保持部110及び第二ワーク保持部120は、それぞれ、ワーク第一部分W及びワーク第二部分Wを回転しない状態で保持するのに対し、第三ワーク保持部130は、ワーク第三部分Wを軸線Lの周りに回転可能な状態で保持するものとなっている。
【0018】
ワーク第一部分Wとワーク第二部分Wとワーク第三部分Wとを摩擦圧接によって接合する際には、駆動手段131を駆動することでワークホルダ200をハウジング132に対して回転させ、これによりワーク第三部分Wを回転させながら、第三ワーク保持部130及び第二ワーク保持部120を第一ワーク保持部110側へ移動させて、ワーク第一部分Wとワーク第三部分W、ワーク第三部分Wとワーク第二部分Wをそれぞれ押し付けるようにする。これにより、ワーク第一部分Wとワーク第三部分Wとワーク第二部分Wとが一体に接合された接合済ワークを得ることができる。
【0019】
図2は、本発明の摩擦圧接装置100におけるワークホルダ200周辺を取り出して示した斜視図である。ワークホルダ200は、図2に示すように、外周部にギア201を有する円盤状に形成されており、駆動手段131(図1)によってこのギア201が回転駆動されるようになっている。本実施態様においては、ギア201に外接するように設けられたタイミングベルト(図示省略)を駆動手段131で駆動することによって、ワークホルダ200を回転させるようにしている。ワークホルダ200は、後述するように、上側部材210と下側部材220とに分離可能となっている。ワーク第三部分Wは、ワーク治具Jに収容された状態で上側部材210と下側部材220との間に保持されている。以下、図2に示すワークホルダ200の状態を「閉状態」と呼ぶことがある。
【0020】
図3は、本発明の摩擦圧接装置100におけるワークホルダ200周辺を取り出して示した斜視図であって、ハウジング132(図1)が開かれたことに伴ってワークホルダ200が上側部材210と下側部材220とに分離された状態を示す図である。以下、ワークホルダ200が上側部材210と下側部材220とに分離された状態を「開状態」と呼ぶことがある。ワークホルダ200を収容しているハウジング132は、図1に示すように、ヒンジ部132aを支点として回動することで開閉する上蓋部132bを有している。摩擦圧接の完了後、ワークホルダ200の回転が停止すると、ハウジング開閉シリンダ132cが駆動されることによって上蓋部132bが機械的に開かれる。すると、上蓋部132bが開く動作に伴って、図3に示すように、上側部材210も持ち上げられ、ワークホルダ200が開状態となる。これにより、接合済ワークをワーク治具Jとともに容易に取り外すことができるようになっている。接合済ワークは、その後、ワーク治具Jから取り外される。
【0021】
一方、摩擦圧接を行う際(ワークホルダ200を回転させる際)には、ワークホルダ200を閉状態としたうえで、上側部材210と下側部材220とを分離しないようにしっかりと固定しておく必要がある。このため、本発明の摩擦圧接装置100においては、図3に示すように、上側部材210にクランプ用挿入部10が、下側部材220にクランプ用穴部20が、それぞれ設けられており、これらによって上側部材210と下側部材220とを固定することができるようになっている。具体的には、クランプ用穴部20にクランプ用挿入部10を挿入して、クランプ用挿入部10に設けられた一対のクランプ用可動体11を、クランプ用穴部20に設けられた一対のクランプ用被係合部21に係合させることによって、上側部材210と下側部材220とをしっかりと固定することができるようになっている。
【0022】
図4~6は、本発明の摩擦圧接装置100におけるクランプ用穴部20周辺を、図3における平面αに垂直な平面で切断して示した断面図である。図4は、クランプ用穴部20にクランプ用挿入部10が挿入される直前の状態を示している。図5は、クランプ用穴部20にクランプ用挿入部10が挿入された直後の状態を示している。図6は、図5に示す状態からピストン13を引き上げて、クランプ用可動体11を突出させた状態を示している。図7は、本発明の摩擦圧接装置100におけるクランプ用挿入部10の先端部分を拡大して示した斜視図である。図7(a)は、アンクランプ状態(後述)のクランプ用挿入部10を、図7(b)は、クランプ状態(後述)のクランプ用挿入部10を示している。
【0023】
クランプ用挿入部10は、図4に示すように、基部12と、ピストン13と、ピストン付勢手段14と、上述した一対のクランプ用可動体11とを備えたものとなっている。基部12は、ワークホルダ200の上側部材210に固定されており、一対のカム面12aを有している。ピストン13は、基部12に対して進退可能に設けられており、ピストン付勢手段14によって突出する方向に付勢されている。ピストン13の根元部分には、上側部材210内に設けられたシリンダ室211の内周寸法と略同一の外周寸法を有するランド部13aが設けられている。ピストン13の先端部分には、ピストン13の進退方向に略垂直な方向に膨出した膨出部13bが設けられている。上側部材210には、シリンダ室211における基部12とランド部13aとの間に作動油を供給する油圧供給口212が設けられている。
【0024】
一対のクランプ用可動体11は、図7(a)に示すように、共にローラー状に形成されており、ピストン13における膨出部13bよりも上の部分を挟んで配されている。一方のクランプ用可動体11の一端部及び他端部は、それぞれ、他方のクランプ用可動体11の一端部及び他端部と、弾性体15によって繋がれている。本実施態様においては、弾性体15としてコイルばねを採用している。
【0025】
一方、クランプ用穴部20は、図3に示すように、略矩形の開口部を有する穴部として、ワークホルダ200の下側部材220に設けられている。クランプ用穴部20の開口部の周縁部には、一対のクランプ用被係合部21が、互いに向かい合うように設けられている。
【0026】
クランプ用穴部20にクランプ用挿入部10を挿入して、クランプ用可動体11をクランプ用被係合部21に係合させるまでの動作は、以下の通りである。まず、図4に示す状態(ワークホルダ200が開状態となっている状態)から、クランプ用挿入部10を下降させることで(ワークホルダ200を閉状態にすることで)、図5に示すように、クランプ用穴部20にクランプ用挿入部10を挿入する。このとき、クランプ用可動体11は、弾性体15(図7(a))によってピストン13側に引き寄せられており、クランプ用被係合部21に干渉しない状態(以下、「アンクランプ状態」と呼ぶことがある。)となっている。
【0027】
次に、シリンダ室211における基部12とランド部13aとの間に、油圧供給口212から作動油が供給される。すると、図6に示すように、ランド部13aが油圧を受けて上方に移動し、これに伴ってピストン13全体も上方に移動する。ピストン13が上方に移動すると、ピストン13の膨出部13bに押し上げられたクランプ用可動体11が、基部12のカム面12aに当接する。カム面12aは、上に行くほどピストン13から遠ざかる方向に傾斜しているため、このカム面12aによってクランプ用可動体11はピストン13から遠ざかる方向に突出し、図6に示すように、クランプ用被係合部21に係合した状態(以下、「クランプ状態」と呼ぶことがある。)となる。
【0028】
クランプ状態においては、図6に示すように、ピストン13の膨出部13bに設けられたクランプ面13cと、クランプ用被係合部21に設けられたクランプ面21aとの間にクランプ用可動体11が挟まれた状態となる。このとき、ピストン13には、油圧によって上向きの力がかかり続けているため、クランプ面13cからクランプ用可動体11に対しても、クランプ用可動体11をクランプ面21aに押し付ける力がかかり続けるようになっている。これにより、ワークホルダ200が回転して、上側部材210と下側部材220とに遠心力がかかったとしても、上側部材210と下側部材220とが分離しないようにしっかりと噛み合った状態を維持することができる。
【0029】
一方、クランプ状態にあるクランプ用挿入部10をアンクランプ状態に切り替えて、クランプ用穴部20からクランプ用挿入部10を引き抜くまでの動作は、以下の通りである。まず、図6に示すように、ランド部13aと基部12との間に供給されていた作動油を、油圧供給口212から排出する。すると、図5に示すように、ピストン付勢手段14によってピストン13が下方に押し出される。ピストン13が下方に下がると、クランプ用可動体11を押し上げていた膨出部13bも下方に下がるため、クランプ用可動体11が、カム面12aを滑り下りながら弾性体15(図7)によってピストン13側に引き寄せられ、図5に示すアンクランプ状態となる。その後、ワークホルダ200を閉状態から開状態とすることで、図4に示すように、クランプ用穴部20からクランプ用挿入部10が引き抜かれる。
【0030】
このように、本実施態様におけるクランプ用挿入部10は、シリンダ室211の油圧を制御するだけでクランプ状態とアンクランプ状態とを機械的に切り替えることができるものとなっている。これにより、摩擦圧接の完了後には、クランプ用挿入部10をアンクランプ状態に切り替え、ハウジング開閉シリンダ132c(図1)によってハウジング132の上蓋部132bを開き、これによって上側部材210と下側部材220とに分離されたワークホルダ200から接合済ワークを取り出すという一連の動作を、機械的手法のみによって(手作業を介することなく)行うことができる。
【0031】
ところで、図4図5とを見比べると、クランプ用挿入部10がクランプ用穴部20に対して真っ直ぐに(図4及び図5におけるz軸に平行な方向に)挿入されているように見えるが、本実施態様におけるクランプ用挿入部10は、実際には、図3におけるx-z面に平行な平面α上で、円弧状の軌跡を描きながらクランプ用穴部20に挿入される。というのも、既に述べたように、ハウジング132の上蓋部132b(図1)は、ヒンジ部132aを支点として回動することで開閉するようになっており、上蓋部132bに伴って移動する上側部材210も、図3に示すように、下側部材220に対して平面α上で回動するようになっているからである。
【0032】
このため、クランプ用穴部20における、平面αに略垂直な方向以外の方向(本実施態様においては、x軸に平行な方向)の内周寸法は、クランプ用挿入部10の外周寸法よりもある程度大きくなっている。というのも、本実施態様のように、クランプ用挿入部10がクランプ用穴部20に対して円弧状の軌跡を描きながら挿入される場合において、クランプ用穴部20の内周寸法をクランプ用挿入部10の外周寸法と略同じにしてしまうと、クランプ用穴部20にクランプ用挿入部10を挿入する際に、クランプ用挿入部10がクランプ用挿入部10の開口部周縁に干渉するからである。一方、平面αに略垂直な方向(本実施態様においては、y軸に平行な方向)においては、クランプ用挿入部の外周寸法とクランプ用穴部の内周寸法との差を小さくすることができる。というのも、平面αに略垂直な方向においては、クランプ用挿入部10がクランプ用穴部20に対してほとんど移動しないため、クランプ用穴部20の内周寸法とクランプ用挿入部10の外周寸法との差を小さくしても、クランプ用挿入部10がクランプ用挿入部10の開口部周縁に干渉しにくいからである。
【0033】
ここで、仮に、クランプ用可動体11を、ピストン13からx軸方向に突出するようにしたとすると、クランプ用可動体11をクランプ用被係合部21に係合させるためには、クランプ用可動体11を大きく突出させなければならず、クランプ用挿入部10が大型化するおそれがある。この点、本実施態様においては、クランプ用可動体11がy軸方向(図3における平面αに略垂直な方向)に対してのみ突出するようになっている。これにより、クランプ用可動体11を大きく突出させなくともクランプ用被係合部21に係合させることができ、クランプ用挿入部10をコンパクトにすることができる。
【0034】
以上においては、クランプ用挿入部10を、ワークホルダ200の上側部材210と下側部材220とを固定するために用いる場合について説明した。しかし、本発明のクランプ用挿入部10は、その使用用途を特に限定されるものではなく、平面上で相対的に回動又は斜め移動することにより開閉する2つの部材を固定するためのあらゆる用途に広く用いることができる。
【0035】
本実施態様におけるクランプ用挿入部10においては、クランプ用穴部20に係合する部分として、一対のクランプ用可動体11を採用している。しかし、クランプ用穴部20に係合する部分である拡大縮小部は、平面αに略垂直な方向に対してのみ拡大縮小することができるようになっていれば、その具体的な構造を限定されない。拡大縮小部は、一対で設ける必要はなく、片方だけ設けるようにしてもよい。拡大縮小部として移動可能なクランプ用可動体11を採用する場合において、クランプ用可動体11を動作させるための機構は、ピストン13に限定されず、ラックアンドピニオン機構等、他の機構であってもよい。本実施態様においては、ピストン13を油圧によって駆動しているが、ピストン13は、油圧以外の流体や、電力等によって駆動することもできる。
【符号の説明】
【0036】
100 摩擦圧接装置
110 第一ワーク保持部
120 第二ワーク保持部
130 第三ワーク保持部
131 駆動手段
132 ハウジング
132a ヒンジ部
132b 上蓋部
132c ハウジング開閉シリンダ
200 ワークホルダ
201 ギア
210 上側部材
211 シリンダ室
212 油圧供給口
220 下側部材
10 クランプ用挿入部
11 クランプ用可動体
12 基部
12a カム面
13 ピストン
13a ランド部
13b 膨出部
13c クランプ面
14 ピストン付勢手段
15 弾性体
20 クランプ用穴部
21 クランプ用被係合部
21a クランプ面
ワーク第一部分
ワーク第二部分
ワーク第三部分
J ワーク治具
L 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7