(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3581 20140101AFI20230220BHJP
【FI】
G01N21/3581
(21)【出願番号】P 2019058206
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】小宮 研一
(72)【発明者】
【氏名】新井 竜一
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲仁
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/077949(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/132761(WO,A1)
【文献】特開2012-185116(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207471(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の反射又は透過について周波数特性を有しており検出対象物を保持するように構成されたセンサに、電磁波を照射するように構成された照射部と、
前記照射部から放射され、前記センサで反射した反射波又は前記センサを透過した透過波の強度を検出する検出部と、
前記反射波又は前記透過波の強度に基づいて前記センサに保持された前記検出対象物の有無又は量を算出するように構成された制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記検出対象物の有無又は量を特定するための前記電磁波の照射及び検出に先立って、検出対象物が保持されていない前記センサに前記電磁波を照射したときに得られる反射波又は透過波の強度が
前記センサの製造誤差に由来する透過率又は反射率の周波数特性の変化を打ち消すような所定の第1の値となるように、前記透過波又は前記反射波の強度を監視しながら、前記照射部から放射される前記電磁波の周波数の調整を行い、
前記検出対象物の有無又は量を特定するための前記電磁波の照射及び検出において、周波数が調整された前記電磁波を用い、
前記照射部に含まれる前記電磁波を放射する光源の温度を調整することで前記周波数の調整を行う
ように構成されている、
検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記周波数の調整の前に、前記センサの光量調整用の領域で反射した反射波の強度、又は、前記センサの光量調整用の領域を透過した透過波の強度が、所定の第2の値となるように、前記透過波又は前記反射波の強度を監視しながら、前記照射部に供給するエネルギーを調整することで、放射される前記電磁波の出力を調整するように構成されている、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記第2の値は、前記検出装置に設けられたメモリに記憶されている、又は、前記センサ若しくは前記センサを含む構造体に設けられたメモリに記憶されている、請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第1の値は、前記検出装置に設けられたメモリに記憶されている、又は、前記センサ若しくは前記センサを含む構造体に設けられたメモリに記憶されている、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周期的な空隙が配置された構造体に電磁波が照射されると、空隙の特性に由来して電磁波の反射率又は透過率について特徴的な周波数特性が生じる。このような構造体に物質が付着した場合、反射率又は透過率の周波数特性は、当該物質の存在のために変化する。検出対象物としての微小物質が添加された上記のような構造体を有するセンサに電磁波を照射し、当該電磁波の反射特性又は透過特性に基づいて添加された微小物質の有無又は量を特定する手法が知られている。上記のようなセンサの構造体のパターンは、照射する電磁波の波長に基づいて設計され、製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周期的な構造を有するセンサを用いた物質の検出において、検出誤差を小さくする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の一態様によれば、検出装置は、電磁波の反射又は透過について周波数特性を有しており検出対象物を保持するように構成されたセンサに、電磁波を照射するように構成された照射部と、前記照射部から放射され、前記センサで反射した反射波又は前記センサを透過した透過波の強度を検出する検出部と、前記反射波又は前記透過波の強度に基づいて前記センサに保持された前記検出対象物の有無又は量を算出するように構成された制御部とを備える。前記制御部は、前記検出対象物の有無又は量を特定するための前記電磁波の照射及び検出に先立って、検出対象物が保持されていない前記センサに前記電磁波を照射したときに得られる反射波又は透過波の強度が前記センサの製造誤差に由来する透過率又は反射率の周波数特性の変化を打ち消すような所定の第1の値となるように、前記透過波又は前記反射波の強度を監視しながら、前記照射部から放射される前記電磁波の周波数の調整を行い、前記検出対象物の有無又は量を特定するための前記電磁波の照射及び検出において、周波数が調整された前記電磁波を用い、前記照射部に含まれる前記電磁波を放射する光源の温度を調整することで前記周波数の調整を行うように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る検出装置の構成例の概略を示すブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、第1の実施形態に係るセンサの構成例を模式的に示す平面図である。
【
図2B】
図2Bは、第1の実施形態に係るセンサの構成例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、センサに電磁波を照射したときの反射率の周波数特性について説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る検出装置の動作の一例の概略を示すフローチャートである。
【
図5A】
図5Aは、第2の実施形態に係るセンサの構成例を模式的に示す平面図である。
【
図5B】
図5Bは、第2の実施形態に係るセンサの構成例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係る検出装置の動作の一例の概略を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、変形例に係る検出装置の構成例の概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1の実施形態]
第1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、微量な微小物質を検出する検出装置に関する。この検出装置では、試料は、空隙が配置された構造体に固定される。当該構造体に電磁波が照射されることで、試料中に含まれる検出対象物の有無又は量等が検出される。一般に、周期的な空隙が配置された構造体に電磁波が照射されたときの当該電磁波の反射率又は透過率は、空隙の特性に由来する周波数特性を有する。この構造体に検出対象物が付着したとき、この電磁波の反射率又は透過率の周波数特性は変化する。検出装置では、照射した電磁波の反射率又は透過率の周波数特性の変化を利用して検出対象物を検出する。検出装置が用いる電磁波は、例えばテラヘルツ帯域の電磁波である。
【0008】
〈装置構成〉
本実施形態の検出装置10の構成例の概略を
図1に示す。検出装置10は、検出装置10の各部の動作を制御する制御部を構成するCentral Processing Unit(CPU)111と、メモリ113と、アドレスデコーダ115とを備える。CPUに代えて又はCPUに加えて、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、又はField Programmable Gate Array(FPGA)などといった集積回路が用いられてもよい。
【0009】
本実施形態では、試料が固定される空隙を有する構造体をセンサ200と称する。検出装置10は、試料が固定されたセンサ200が載置されるステージ161を備える。ステージ161は、xyzθ方向に移動可能な可動ステージである。ステージ161は、テラヘルツ光ビームの焦点位置にセンサ200を移動させる。
【0010】
検出装置10は、ステージ161を移動させる、xモータ171と、yモータ175と、zモータ181と、θモータ185とを備える。xモータ171は、ステージ161をx軸方向に移動させる。yモータ175は、ステージ161をy軸方向に移動させる。zモータ181は、ステージ161をz軸方向に移動させる。θモータ185は、ステージ161をθ軸周りに回転させる。
【0011】
xモータ171は、ドライバ_x173によって駆動される。ドライバ_x173は、アドレスデコーダ115を介してCPU111に接続されている。yモータ175は、ドライバ_y177によって駆動される。ドライバ_y177は、アドレスデコーダ115を介してCPU111に接続されている。zモータ181は、ドライバ_z183によって駆動される。ドライバ_z183は、アドレスデコーダ115を介してCPU111に接続されている。θモータ185は、ドライバ_θ187によって駆動される。ドライバ_θ187は、アドレスデコーダ115を介してCPU111に接続されている。これらモータは、CPU111の制御下で動作して、ステージ161を所望の位置に移動させる。
【0012】
検出装置10は、照射部130を備える。照射部130は、単一周波数の電磁波を放射する電磁波発生部121と、電磁波発生部121を駆動するドライバ_発生部123と、電磁波発生部121から放射された電磁波をセンサ200に導く第1の光学系141とを含む。電磁波発生部121は、例えばテラヘルツ波といった電磁波を放射する。第1の光学系141は、例えば、ミラー、レンズなどといった光学素子を含む。CPU111の制御下で、ドライバ_発生部123は、電磁波発生部121に電磁波を放射させる。電磁波発生部121から放射された電磁波は、第1の光学系141を介してセンサ200に照射される。第1の光学系141は、例えば、電磁波のビームがセンサ200で焦点を結ぶように構成されている。この電磁波の少なくとも一部は、センサ200で反射する。
【0013】
本実施形態では、電磁波発生部121から放射される電磁波の周波数を安定させるために、また、周波数を微調整するために、電磁波発生部121の温度を制御する機構が設けられている。検出装置10は、電磁波発生部121の温度を制御するペルチェ素子125と、ペルチェ素子125と共に設けられたファン131とを備える。ペルチェ素子125は、アドレスデコーダ115を介してCPU111に接続されたドライバ_ペルチェ127によって駆動される。ファン131は、アドレスデコーダ115を介してCPU111に接続されたドライバ_ファン133によって駆動される。検出装置10は、電磁波発生部121の温度を取得するためのサーミスタ135と、サーミスタ135が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換する第1のAD変換器137とを備える。第1のAD変換器137が変換した信号は、アドレスデコーダ115を介してCPU111に伝達される。サーミスタ135が取得した電磁波発生部121の温度は、温度制御に用いられる。
【0014】
検出装置10は、検出部150を備える。検出部150は、センサ200で反射した反射光を受信する電磁波受信部151と、反射光を電磁波受信部151に導く第2の光学系143とを含む。検出装置10は、電磁波受信部151から出力される信号を増幅するアンプ153と、アンプ153で増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換する第2のAD変換器155とを備える。反射した電磁波は、第2の光学系143を介して電磁波受信部151へと導かれる。電磁波受信部151は、電磁波を検出し、検出結果を示すアナログ電気信号を生成する。電磁波受信部151は、例えば電磁波の強度を検出し、電磁波の強度に応じた電気信号を出力する。電磁波受信部151から出力されたアナログ電気信号は、アンプ153で増幅され、第2のAD変換器155でデジタル電気信号に変換され、CPU111へと伝達される。CPU111は、電磁波受信部151の検出結果に基づいて、センサ200に固定された検出対象物の有無、量又は特性等を特定する。
【0015】
〈センサ構成〉
検出対象物の検出には、センサ200が用いられる。センサ200の一例の構造について、図面を参照して説明する。
図2Aは、センサ200の模式的な平面図を示す。
図2Bは、
図2Aに示したIIB-IIB線におけるセンサ200の模式的な断面を示す。
【0016】
図2A及び
図2Bに示すように、センサ200において、基板224の上に金属膜222が設けられている。基板224は、例えばシリコンで形成されている。金属膜222は、例えば金で形成されている。
図2Aに示すように、金属膜222には、例えばC型の空隙232が多数並べて形成されている。多数のC型の空隙232を有する
図2Aに示す例は、メタマテリアル共振器の代表例であり、相補型分割リング共振器と呼ばれている。相補型分割リング共振器212は、所定の周波数帯の電磁波が照射されたときに、特徴的な反射特性を示す。すなわち、電磁波が照射されたとき、金属膜222のC型の空隙232が形成されている部分の周辺は、電気的にLC回路のように振る舞う。このため、このLC回路の共振周波数の近傍の周波数において、照射された電磁波は、相補型分割リング共振器212と強く相互作用する。その結果、相補型分割リング共振器212は、LC回路の共振周波数の近傍で反射率が低下する反射特性を示す。例えば、C型の空隙232の大きさが数μm程度であるとき、共振周波数は、テラヘルツ帯域に表れる。
【0017】
〈検出原理等〉
図2A及び
図2Bに示すような二次元の共振器配列を用いたメタマテリアルに電磁波を照射したときの反射率の周波数特性、すなわち、分光特性の一例の概略を
図3に示す。横軸は照射する電磁波の周波数を示し、縦軸は反射率を示す。太い破線g1は、相補型分割リング共振器212であるメタマテリアルに検出対象物がないときの周波数特性を示す。メタマテリアルは、特定の周波数に対して、異常透過性を示す。
【0018】
太い実線g11は、相補型分割リング共振器212であるメタマテリアルに検出対象物が付着しているときの周波数特性を示す。相補型分割リング共振器212に物質が付着したとき、当該物質がLC回路の主に容量成分を変化させる。その結果、当該LC回路の共振周波数が変化する。すなわち、
図3に示すように、相補型分割リング共振器212に検出対象物があるか否かに応じて、反射率の周波数特性が変化する。検出装置10は、この周波数特性の変化に基づいて、検出対象物である試料中の微小物質の有無又は量を検出する。
【0019】
例えば、電磁波発生部121が単一の周波数f1の電磁波を放射するとき、電磁波受信部151を用いて取得される反射率は、検出対象物が付着することでs1からs11へと変化する。このような反射率の変化に基づいて、センサ200上の物質の量等が求まる。CPU111は、例えば、検出対象物が固定されていないセンサ200について、電磁波の反射強度又は反射率を予め取得しておく。また、CPU111は、試料中の検出対象物がセンサ200に付着するような処理を行ったセンサ200について、電磁波の反射強度又は反射率を取得する。CPU111は、これら2種類の電磁波の反射強度又は反射率を比較して、試料中の検出対象物の有無又は量等を特定する。
【0020】
センサ200のメタマテリアルの周期構造パターンは、照射する電磁波の波長に基づいて、設計及び製造されている。設計通りに製造されることが理想的であるが、センサ200の製造過程において、周期構造を形成するパターン形状や周期に誤差が生じることがある。このような製造誤差は、反射率の周波数特性を変化させる。
【0021】
例えば、センサ200に検出対象物がないときの反射率の周波数特性が、設計上は
図3に示す太い破線g1であったものが、製造誤差のため細い破線g2のように変化したとする。このとき、センサ200に検出対象物があるときの反射率の周波数特性も、設計通りであれば太い実線g11であるところ、製造誤差のため細い実線g21のように変化する。
【0022】
その結果、設計通り製造されたセンサ200を用いて取得される場合、周波数f1の電磁波で取得される反射率の変化は、s1とs11との差ΔS1となる。これに対して、製造誤差を含むセンサ200を用いて取得される場合、周波数f1の電磁波で取得される反射率の変化は、s2とs21との差ΔS2となる。ここで差ΔS1と差ΔS2とは、一致しない。すなわち、センサ200の製造誤差に由来する検出誤差が生じることになる。
【0023】
そこで本実施形態では、センサ200の製造誤差の影響を打ち消すように、電磁波発生部121から放射される電磁波の周波数を変化させる。すなわち、
図3に示すように、センサ200に検出対象物がないときの反射率が、設計値であるs1となるように、電磁波発生部121から放射される電磁波の周波数をf2にする。その結果、センサ200に検出対象物があるときの反射率もs11となる。すなわち、周波数f2の電磁波で取得される反射率の変化は、s1とs11との差ΔS1となり、検出対象物の量などを正確に求めることが可能となる。電磁波発生部121から放射される電磁波の周波数は、例えば電磁波発生部121の温度を変更することで、変更され得る。
【0024】
〈装置の動作〉
検出装置10の動作について、
図4に示すフローチャートを参考して説明する。
【0025】
試料の測定に先立って、検出装置10は、試料を添加していないセンサ200を用いて、反射率が設定値s1となるように、電磁波発生部121から放射する電磁波の周波数を調整する。
【0026】
ACT101において、CPU111は、メモリ113から、記憶されている基準光量I1(第1の値)を読み出す。この基準光量I1は、反射率が設定値s1となる光量である。なお、メモリ113に記憶されている第1の値は、基準光量I1に限らず、これに相当する値であればよい。例えば、メモリ113には、反射率の設定値s1が記憶されていてもよい。この場合、CPU111は、メモリ113から読み出した反射率の設定値s1に基づいて、基準光量I1を算出してもよい。また、CPU111は、後述する測定した光量と基準光量I1との比較に代えて、測定した光量に基づいて算出した反射率と読み出した反射率の設定値s1との比較を行ってもよい。
【0027】
ACT102において、CPU111は、ドライバ_発生部123に、電磁波発生部121へと既定の電流値の電流を印加させる。
【0028】
ACT103において、CPU111は、電磁波発生部121の温度が所定温度となるように温度制御を開始する。より具体的には、サーミスタ135を用いて取得した温度を監視しながら、ファン131を動作させたペルチェ素子125を用いて電磁波発生部121の温度を調整する。
【0029】
ACT104において、CPU111は、電磁波発生部121の温度が目標としている所定温度になったか否かを判定する。所定温度になっていないとき、所定温度になるまで温度調整が継続されつつ、処理は待機する。所定温度になったとき、以降その温度は維持され、処理はACT105に進む。
【0030】
ACT105において、CPU111は、試料を添加していないセンサ200が電磁波の照射位置に配置されるように、ステージ161を移動させる。
【0031】
ACT106において、CPU111は、電磁波受信部151で取得される光量が、基準光量I1であるか否かを判定する。基準光量I1でないとき、処理はACT107に進む。
【0032】
ACT107において、CPU111は、電磁波発生部121の温度を変更する。その後、処理はACT106に戻る。すなわち、ACT106及びACT107を繰り返して、電磁波受信部151で取得される光量が基準光量I1となるように、電磁波発生部121の温度を試行錯誤により調整する。
【0033】
ACT106において、電磁波受信部151で取得される光量が基準光量I1であると判定されたとき、処理はACT108に進む。ACT108において、CPU111は、試料を添加したセンサ200が電磁波の照射位置に配置されるように、ステージ161を移動させる。
【0034】
ACT109において、CPU111は、試料を添加したセンサ200について測定を行う。すなわち、電磁波発生部121は、出力周波数を調整した電磁波を放射する。電磁波受信部151は、センサ200で反射した電磁波を受信する。CPU111は、電磁波受信部151で受信した電磁波の強度を取得する。
【0035】
ACT110において、CPU111は、取得した電磁波の強度をメモリ113に記憶する。
【0036】
ACT111において、CPU111は、計測結果についての解析を行い、解析結果をメモリ113に記録する。この解析には、例えば、電磁波発生部121から放射した電磁波の強度と電磁波受信部151で取得した電磁波の強度とに基づいて、センサ200の反射率を算出することが含まれ得る。また、解析には、算出された反射率に基づいて、センサ200上の検出対象物の有無又は検出対象物の量を求めることが含まれ得る。
【0037】
なお、
図4に示した処理の順序は一例であって、適宜に変更され得る。例えば、ACT101の基準光量I1の読出しは、ACT106の判定前であればいつ行われてもよい。また、ACT105のステージの移動もACT106の判定前であればいつ行われてもよい。
【0038】
本実施形態では、センサ200の製造誤差に由来するセンサ200の反射率の周波数特性の変化を打ち消すように、センサ200に照射される電磁波の周波数が調整される。このため、本実施形態の検出装置10によれば、センサ200の製造誤差に由来する検出誤差は小さくなる。また、本実施形態では、一般に出力周波数を所定値とするために所定温度に調整される電磁波発生部121の温度を微調整することで、出力周波数が微調整される。このため、装置構成を大きく変更することなく簡便に上記機能が実現される。
【0039】
このような検出装置10は、例えば、試料中に含まれる細菌の検出などにも用いられ得る。
【0040】
[第2の実施形態]
第2の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。第1の実施形態では、電磁波発生部121に既定電流を印加することで、電磁波発生部121から放射される電磁波の強度が所定の強度に設定されている。これに対して本実施形態では、さらに検出精度を高めるために、検出装置10は、電磁波の出力強度を積極的に調整する。
【0041】
本実施形態で用いられるセンサ201の構成例の概略の模式図を
図5A及び
図5Bに示す。
図5Aは、センサ201の平面図を示す。
図5Bは、
図5Aに示したVB-VB線におけるセンサ201の断面を示す。
図5Aに示すように、本実施形態に係るセンサ201は、第1の実施形態にセンサ200と同様に、基板224上に、C型の空隙232を有する金属膜222が形成されており、相補型分割リング共振器212が形成されている。本実施形態に係るセンサ201は、これに加えて、光量調整用の反射板242が設けられている。この反射板242は、例えば、基板224の上に金の膜が一面に形成されているものである。
【0042】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の電磁波発生部121の温度調整による出力周波数の調整に先立って、電磁波発生部121への印加電流が調整される。すなわち、電磁波発生部121に供給されるエネルギーが調整される。この印加電流の調整にあたって、反射率が周波数に応じて変化することがない反射板242が用いられる。すなわち、電磁波発生部121から放射された電磁波は反射板242に照射され、その反射波が電磁波受信部151で受信される。電磁波受信部151で受信された強度が設定値となるように、電磁波発生部121への印加電圧が調整される。
【0043】
本実施形態に係る検出装置10の動作について、
図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0044】
ACT201において、CPU111は、メモリ113から、記憶されている基準光量I0及びI1を読み出す。基準光量I1は、第1の実施形態の場合と同じく、反射率が設定値s1となる光量である。第1の実施形態と同様に、基準光量I1は、同等の値に置き換えられ得る。
【0045】
基準光量I0(第2の値)は、光量調整において、光量調整用の反射板242に電磁波を照射したときに電磁波受信部151で検出されるべき光量である。なお、メモリ113に記憶されている第2の値は、基準光量I0に限らず、これに相当する値であればよい。例えば、メモリ113には、反射率の設定値s0が記憶されていてもよい。この場合、CPU111は、メモリ113から読み出した反射率の設定値s0に基づいて、基準光量I0を算出してもよい。また、CPU111は、後述する測定した光量と基準光量I0との比較に代えて、測定した光量に基づいて算出した反射率と読み出した反射率の設定値s0との比較を行ってもよい。
【0046】
ACT202乃至ACT204の処理は、第1の実施形態のACT102乃至ACT104の処理と同様である。すなわち、ACT202において、CPU111は、ドライバ_発生部123に、電磁波発生部121へと既定の電流値の電流を印加させる。ACT203において、CPU111は、電磁波発生部121の温度が所定温度となるように温度制御を開始する。ACT204において、CPU111は、電磁波発生部121の温度が目標としている所定温度になったか否かを判定する。所定温度になっていないとき、所定温度になるまで温度調整が継続されつつ、処理は待機する。所定温度になったとき、処理はACT205に進む。
【0047】
ACT205において、CPU111は、光量調整用の反射板242が電磁波の照射位置に配置されるように、ステージ161を移動させる。
【0048】
ACT206において、CPU111は、電磁波受信部151で取得される光量が、基準光量I0であるか否かを判定する。基準光量I0でないとき、処理はACT207に進む。
【0049】
ACT207において、CPU111は、ドライバ_発生部123の出力を調整して、電磁波発生部121に印加する電流を変更する。その後、処理はACT206に戻る。ACT206及びACT207を繰り返して、電磁波受信部151で取得される光量が基準光量I0となるように、電磁波発生部121への印加電流が調整される。すなわち、電磁波発生部121からの出力光量が、所定値となるように電磁波発生部121に供給されるエネルギーが調整される。
【0050】
ACT206において、電磁波受信部151で取得される光量が基準光量I0であると判定されたとき、処理は、ACT208に進む。ACT208乃至ACT214の処理は、第1の実施形態のACT105乃至ACT111の処理と同様である。すなわち、ACT208において、CPU111は、試料を添加していないセンサ201が電磁波の照射位置に配置されるように、ステージ161を移動させる。ACT209において、CPU111は、電磁波受信部151で取得される光量が、基準光量I1であるか否かを判定する。基準光量I1でないとき、処理はACT210に進む。ACT210において、CPU111は、電磁波発生部121の温度を変更する。その後、処理はACT209に戻る。すなわち、ACT209及びACT210を繰り返して、電磁波受信部151で取得される光量が基準光量I1となるように、電磁波発生部121の温度が試行錯誤により調整される。
【0051】
ACT209において、電磁波受信部151で取得される光量が基準光量I1であると判定されたとき、処理はACT211に進む。ACT211において、CPU111は、試料を添加したセンサ201が電磁波の照射位置に配置されるように、ステージ161を移動させる。ACT212において、CPU111は、試料を添加したセンサ201について測定を行う。すなわち、電磁波発生部121は、出力周波数を調整した電磁波を放射する。電磁波受信部151は、センサ201で反射した電磁波を受信する。CPU111は、電磁波受信部151で受信した電磁波の強度を取得する。ACT213において、CPU111は、取得した電磁波の強度をメモリ113に記憶する。ACT214において、CPU111は、計測結果についての解析を行い、解析結果をメモリ113に記録する。この解析には、例えば、電磁波発生部121から放射した電磁波の強度と電磁波受信部151で取得した電磁波の強度とに基づいて、センサ201の反射率を算出することが含まれ得る。また、解析には、算出された反射率に基づいて、センサ201上の検出対象物の有無又は検出対象物の量を求めることが含まれ得る。
【0052】
なお、
図6に示した処理の順序は一例であって、適宜に変更され得る。例えば、ACT201の基準光量I0と基準光量I1との読出しは、別々に行われてもよい。基準光量I0の読出しは、ACT206の判定前であればいつ行われてもよい。基準光量I1の読出しは、ACT209の判定前であればいつ行われてもよい。また、ACT205のステージの移動もACT206の判定前であればいつ行われてもよい。
【0053】
本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、センサ201の製造誤差に由来するセンサ201の反射率の周波数特性の変化を打ち消すように、センサ201に照射される電磁波の周波数が調整される。さらに、本実施形態では、電磁波発生部121の出力周波数の調整の前に、電磁波発生部121に印加する電流値の調整が行われる。このため、検出誤差は、第1の実施形態の場合と比較してさらに小さくなる。
【0054】
なお、本実施形態では、センサ201において、基板224上に金の膜の光量調整用の反射板242が形成されている例を示した。しかしながら、これに限らない。光量調整用の領域は、金の膜の反射板242に限らず、他の材料を用いて形成された膜、又は、膜が形成されず基板224が露出した状態の部分などであってもよい。また、第1の実施形態の場合と同様に
図2Aに示したような反射板242が形成されていないセンサ200が用いられてもよい。この場合、C型の空隙232を有する金属膜222以外の領域214が、本実施形態に係る反射板242と同様の領域として用いられてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、1つのセンサ201に相補型分割リング共振器212と光量調整用の反射板242とが設けられている例を示した。しかしながら、これに限らない。相補型分割リング共振器と光量調整用の反射板とは、2つの分離した基板にそれぞれ形成されていてもよい。この場合、ステージ161に、相補型分割リング共振器が形成された基盤と、光量調整用の反射板が形成された基盤とが配置される。また、光量調整用の反射板を変更する必要がない場合、光量調整用の反射板は、ステージ161に備え付けられていてもよい。
【0056】
[変形例]
第1の実施形態及び第2の実施形態の変形例について説明する。ここでは、第1及び第2の実施形態との相違点について説明する。何れの変形例においても、示した部分以外は第1及び第2の実施形態と同様に構成され、同様に動作し、同様の効果を得ることができる。また、各変形例は、組み合わせて適用され得る。
【0057】
〈第1の変形例〉
第1及び第2の実施形態では、基準光量I0,I1などが、検出装置10に設けられたメモリ113に記憶されているものとして説明した。しかしながら、これに限らない。例えば、基準光量I0,I1は、センサ200などの基板、又は当該基板を保持する構造体などに設けられたメモリに記憶されてもよい。
【0058】
この変形例の場合の検出装置10の構成例の概略を
図7に示す。
図7には、センサ200などの基板、又は当該基板を保持する構造体などに設けられたメモリ260が模式的に描かれている。このメモリ260は、センサ200がステージ161に載置されたとき、検出装置10のインターフェース(I/F)191を介して、検出装置10のCPU111に接続されるように構成されている。CPU111は、センサ200等のメモリ260に記憶された基準光量I0,I1などの情報を、当該メモリ260に接続するI/F191を介して読み出す。
【0059】
本変形例によれば、センサ200に応じた基準光量I0,I1などが、センサ200毎に記憶され得る。したがって、センサ200の型式などと基準光量I0,I1との関係の管理が容易となる。
【0060】
また、センサ200に設けられたメモリ260には、センサ200の型式情報などが記憶されており、検出装置10のメモリ113には、センサ200の型式ごとの基準光量I0,I1などが記憶されていてもよい。検出装置10のCPU111は、これら情報を読み出して、これら情報に基づいてセンサ200の型式などに応じた基準光量I0,I1を取得できる。
【0061】
また、基準光量I0と基準光量I1とのうち一方が検出装置10のメモリ113に記憶され、他方が、センサ200のメモリ260に記憶されていてもよい。
【0062】
〈第2の変形例〉
第1及び第2の実施形態では、電磁波発生部121から照射される電磁波の周波数を変更するために、例えばテラヘルツ波光源といった電磁波発生部121の温度を変更している。しかしながら、これに限らない。電磁波の周波数を変更するために、電磁波発生部121のみならず、その周囲の光学系などを含めて温度が変更されてもよい。また、電磁波の周波数を変更するために、検出装置10の全体又は部分の温度が変更されてもよい。これらのように、どのような範囲の温度が変更されてもよい。何れの場合も、光源である電磁波発生部121の温度が調整される。また、温度変更によらず、他の方法で放射される電磁波の周波数が変更されてもよい。
【0063】
〈第3の変形例〉
第1及び第2の実施形態では、電磁波受信部151はセンサ200で反射した電磁波を受信し、CPU111はセンサ200における電磁波の反射率を算出している。しかしながら、これに限らない。電磁波受信部151がセンサ200を透過した電磁波である透過波を受信し、CPU111が電磁波の透過率を算出してもよい。反射率の代わりに透過率が用いられても、第1及び第2の実施形態と同様に、センサ200上の検出対象物の有無又は検出対象物の量が求められ得る。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
なお、以下に本願の出願当初の特許請求の範囲の記載を付記する。
[C1]
電磁波の反射又は透過について周波数特性を有しており検出対象物を保持するように構成されたセンサに、電磁波を照射するように構成された照射部と、
前記照射部から放射され、前記センサで反射した反射波又は前記センサを透過した透過波の強度を検出する検出部と、
前記反射波又は前記透過波の強度に基づいて前記センサに保持された前記検出対象物の有無又は量を算出するように構成された制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記検出対象物の有無又は量を特定するための前記電磁波の照射及び検出に先立って、検出対象物が保持されていない前記センサに前記電磁波を照射したときに得られる反射波又は透過波の強度が所定の第1の値となるように、前記透過波又は前記反射波の強度を監視しながら、前記照射部から放射される前記電磁波の周波数の調整を行い、
前記検出対象物の有無又は量を特定するための前記電磁波の照射及び検出において、周波数が調整された前記電磁波を用いる
ように構成されている、
検出装置。
[C2]
前記制御部は、前記周波数の調整の前に、前記センサの光量調整用の領域で反射した反射波の強度、又は、前記センサの光量調整用の領域を透過した透過波の強度が、所定の第2の値となるように、前記透過波又は前記反射波の強度を監視しながら、前記照射部に供給するエネルギーを調整することで、放射される前記電磁波の出力を調整するように構成されている、請求項1に記載の検出装置。
[C3]
前記第2の値は、前記検出装置に設けられたメモリに記憶されている、又は、前記センサ若しくは前記センサを含む構造体に設けられたメモリに記憶されている、請求項2に記載の検出装置。
[C4]
前記制御部は、前記照射部に含まれる前記電磁波を放射する光源の温度を調整することで前記周波数を調整するように構成されている、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の検出装置。
[C5]
前記第1の値は、前記検出装置に設けられたメモリに記憶されている、又は、前記センサ若しくは前記センサを含む構造体に設けられたメモリに記憶されている、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の検出装置。
【符号の説明】
【0065】
10…検出装置、111…CPU、113…メモリ、115…アドレスデコーダ、121…電磁波発生部、123…ドライバ_発生部、125…ペルチェ素子、127…ドライバ_ペルチェ、130…照射部、131…ファン、133…ドライバ_ファン、135…サーミスタ、137…第1のAD変換器、141…第1の光学系、143…第2の光学系、150…検出部、151…電磁波受信部、153…アンプ、155…第2のAD変換器、161…ステージ、171…xモータ、173…ドライバ_x、175…yモータ、177…ドライバ_y、181…zモータ、183…ドライバ_z、185…θモータ、187…ドライバ_θ、191…インターフェース(I/F)、200…センサ、201…センサ、212…相補型分割リング共振器、214…領域、222…金属膜、224…基板、232…空隙、242…反射板、260…メモリ。