(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】成型用積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20230220BHJP
C08J 7/046 20200101ALI20230220BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230220BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
B32B27/20 Z
C08J7/046 Z CEY
B32B7/023
B32B27/00 E
(21)【出願番号】P 2019067262
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000125978
【氏名又は名称】株式会社きもと
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100118991
【氏名又は名称】岡野 聡二郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 龍哉
(72)【発明者】
【氏名】橘 和寿
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-176536(JP,A)
【文献】特開2018-180248(JP,A)
【文献】特開2014-069523(JP,A)
【文献】特開2015-152691(JP,A)
【文献】特開2019-119206(JP,A)
【文献】特許第6393384(JP,B1)
【文献】特許第6491394(JP,B2)
【文献】特許第6928002(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 7/04- 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム、ハードコート層、及び機能層を少なくともこの順に備え、
前記ハードコート層が、樹脂と、前記ハードコート層に含まれる全樹脂成分100質量部に対し1~
10質量部の無機酸化物粒子と、を少なくとも含有
し、
前記機能層が、前記機能層に含まれる全成分に対して、30~60質量%の無機酸化物を含有する、
成型用積層フィルム。
【請求項2】
前記無機酸化物粒子が、1~1500nmの平均粒子径D
50を有する、
請求項1に記載の成型用積層フィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層が、0.5~5μmの厚みを有する、
請求項1又は2に記載の成型用積層フィルム。
【請求項4】
前記無機酸化物粒子が、アルミナ粒子及びシリカ粒子よりなる群から選択される1種を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の成型用積層フィルム。
【請求項5】
前記ハードコート層は、HB以上の鉛筆硬度(JIS K5600-5-4:1999準拠、750g荷重)を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の成型用積層フィルム。
【請求項6】
前記基材フィルム、前記ハードコート層、及び前記機能層が、他の層を介せずに積層配置されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の成型用積層フィルム。
【請求項7】
前記機能層が、樹脂を含有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の成型用積層フィルム。
【請求項8】
前記機能層が、20~200nmの厚みを有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の成型用積層フィルム。
【請求項9】
前記機能層は、反射防止層、防汚層、防眩層、及び加飾層よりなる群から選択される少なくとも1種である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の成型用積層フィルム。
【請求項10】
フィルムインサート成型用である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の成型用積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型に用いられる積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、モバイル機器、携帯電話、電子手帳、車載用表示パネル等の保護や加飾のために、ハードコート層を積層したフィルムを使用したインサート成型法が用いられるようになってきている。
【0003】
このような積層フィルムとして、特許文献1には、基材フィルム上に、クラック伸度が5%以上であるハードコート層及び屈折率が1.47以下である低屈折率層をこの順に有することを特徴とする成型用積層フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、フィルム成型では、特に曲率半径の小さい曲面を有する形状への成型加工が行われるようになってきており、それに使用する積層フィルムにも、耐擦傷性等のハードコート性だけではなく、より優れた形状追従性が求められるようになっている。積層フィルムの形状追従性(成型性)は、例えば、積層フィルムの両端を引っ張った際にクラックが生じるまでの積層フィルムの伸び率(以下、単に「伸び率」ともいう)によって評価可能である。
【0006】
積層フィルムが優れた形状追従性を示すためには、その積層フィルムに積層されたハードコート層や低屈折率層等が伸びに優れていることが好ましい。しかしながら、ハードコート層は、フィルム表面の傷つきを防止する目的で形成されるものであるから、比較的硬質で脆い材料から構成されているため、他に設置されている層との関係で、積層フィルム全体としての形状追従性の向上を図る上で改良の余地があることが判明した。例えば、基材フィルム上にハードコート層及び反射防止層を設置した積層フィルムにおいては、基材フィルムとハードコート層との層間及びハードコート層と反射防止層との層間等でクラックが生じ得るため、積層フィルム全体として高い伸び率を発現できていないことが判明した。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、従来と同等以上のハードコート性を有しながら、積層フィルム全体としての形状追従性が改善された、成型用積層フィルム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、ハードコート層の処方及び諸物性を鋭意検討した結果、所定のハードコート層上に反射防止層を設けることで優れた鉛筆硬度及び耐擦傷性、並びに積層フィルム全体の優れた伸び率等を両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
(1)基材フィルム、ハードコート層、及び機能層を少なくともこの順に備え、前記ハードコート層が、樹脂と、前記ハードコート層に含まれる全樹脂成分100質量部に対し1~50質量部の無機酸化物粒子と、を少なくとも含有する、成型用積層フィルム。
(2)前記無機酸化物粒子が、1~1500nmの平均粒子径D50を有する、上記(1)に記載の成型用積層フィルム。
(3)前記ハードコート層が、0.5~5μmの厚みを有する、上記(1)又は(2)に記載の成型用積層フィルム。
(4)前記無機酸化物粒子が、アルミナ粒子及びシリカ粒子よりなる群から選択される1種を含む、上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の成型用積層フィルム。
(5)前記ハードコート層は、HB以上の鉛筆硬度(JIS K5600-5-4:1999準拠、750g荷重)を有する、上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の成型用積層フィルム。
(6)前記基材フィルム、前記ハードコート層、及び前記機能層が、他の層を介せずに積層配置されている、上記(1)~(5)のいずれか一項に記載の成型用積層フィルム。
(7)前記機能層が、樹脂を含有する、上記(1)~(6)のいずれか一項に記載の成型用積層フィルム。
(8)前記機能層が、前記機能層に含まれる全成分に対して、1~100質量%の無機酸化物を含有する、上記(1)~(7)のいずれか一項に記載の成型用積層フィルム。
(9)前記機能層が、20~200nmの厚みを有する、上記(1)~(8)のいずれか一項に記載の成型用積層フィルム。
(10)前記機能層は、反射防止層、防汚層、防眩層、及び加飾層よりなる群から選択される少なくとも1種である、上記(1)~(9)のいずれか一項に記載の成型用積層フィルム。
(11)フィルムインサート成型用である、上記(1)~(10)のいずれか一項に記載の成型用積層フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来と同等以上のハードコート性を有しながら、積層フィルム全体としての形状追従性が改善された、成型用積層フィルム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の成型用積層フィルム101を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。但し、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において、例えば「1~100」との数値範囲の表記は、その下限値「1」及び上限値「100」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0013】
図1は、本実施形態の成型用積層フィルム101の要部を示す模式断面図である。本実施形態の成型用積層フィルム101は、基材フィルム11と、この基材フィルム11の一方の面11a側に設けられたハードコート層21と、このハードコート層21の一方の面21a側に設けられた機能層31とを備えている。すなわち、成型用積層フィルム101は、機能層31、ハードコート層21、及び基材フィルム11が、少なくともこの順に配列された積層構造(3層構造)を有している。なお、成型用積層フィルム101の裏面側(基材フィルム11の他方の面11b側)には、必要に応じて、印刷層、粘着層、プライマー層等の任意の層が設けられていてもよい。以下、成型用積層フィルム101の各構成要素について詳述する。
【0014】
<基材フィルム>
基材フィルム11は、ハードコート層21及び機能層31を支持可能なものである限り、その種類は特に限定されない。寸法安定性、機械的強度及び軽量化等の観点から、基材フィルム11としては、合成樹脂フィルムが好ましく用いられる。合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィンポリマー、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、(メタ)アクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、フッ素系樹脂等から形成されたフィルムが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらを任意の組み合わせで用いた積層フィルムも好適に用いることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリルの双方を含む概念である。これらの基材フィルム11の中でも、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、(メタ)アクリル系フィルム、及びこれらを任意に組み合わせた積層フィルムが好ましく、ポリカーボネートフィルムがより好ましい。
【0015】
基材フィルム11の外観は、透明、半透明、無色、着色のいずれであってもよく、特に限定されないが、透光性が高いものが好ましい。具体的には、JIS K7361-1:1997に準拠して測定される全光線透過率が85%以上の透明樹脂フィルムが好ましく、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上である。なお、必要に応じて、基材フィルム11に、プラズマ処理、コロナ放電処理、遠紫外線照射処理、アンカー処理等を施してもよい。また、基材フィルム11に紫外線吸収剤や光安定剤を含有させてもよい。
【0016】
基材フィルム11の屈折率n0は、好ましくは1.45~1.75であり、より好ましくは1.50~1.75である。
【0017】
基材フィルム11の厚みは、要求性能及び用途に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、一般には10~500μmであり、好ましくは100~400μmであり、より好ましくは150~300μmである。
【0018】
<ハードコート層>
ハードコート層21は、基材フィルム11の表面硬度を高め、表面に傷が発生することを防止するために設けられる塗膜である。また、基材フィルム11の表面平滑性を高める目的で設けられることもある。本実施形態のハードコート層21は、上述した積層フィルム全体としての形状追従性を具備させるため、樹脂と、この樹脂中に分散された無機酸化物粒子とを少なくも含有するハードコート塗膜が用いられている。なお、本実施形態においては、基材フィルム11の一方の面11a上のみにハードコート層21を設けたものを例示したが、基材フィルム11の他方の面11b(図中において下方)側にもハードコート層を設けてもよい。
【0019】
(樹脂)
ハードコート層21を構成する素材としては、公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。一般的には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の公知の樹脂と無機酸化物粒子とを少なくとも含有する硬化性樹脂組成物を硬化させる等した硬化物から構成することができる。
【0020】
熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、例えば、飽和又は不飽和のポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、(メタ)ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線(紫外線又は電子線)の照射によって硬化する光重合性プレポリマーを用いることができる。また、光重合性プレポリマーは単独でも使用可能であるが、架橋硬化性の向上や、硬化収縮の調整等、種々の性能を付与或いは向上させる観点から、光重合性モノマーを併用することが好ましい、さらに必要に応じて、光重合開始剤、光重合促進剤、増感剤(例えば、紫外線増感剤)等の助剤を用いてもよい。
【0022】
光重合性プレポリマーは、一般的に、カチオン重合型とラジカル重合型に大別される。カチオン重合型光重合性プレポリマーとしては、例えば、エポキシ系樹脂やビニルエーテル系樹脂等が挙げられる。エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。ラジカル重合型光重合性プレポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系プレポリマー(硬質プレポリマー)等が挙げられる。これらの光重合性プレポリマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となる(メタ)アクリル系プレポリマー(硬質プレポリマー)が、ハードコート性の観点から好ましい。
【0023】
(メタ)アクリル系プレポリマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの(メタ)アクリル系プレポリマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
ウレタン(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸との反応でエステル化したもの等が挙げられるが、これに特に限定されない。これらのウレタン(メタ)アクリレート系プレポリマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
ポリエステル(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらのポリエステル(メタ)アクリレート系プレポリマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
エポキシ(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えば、比較的低分子量のビスフェノール系エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環と、(メタ)アクリル酸との反応でエステル化したもの等が挙げられるが、これに特に限定されない。これらのエポキシ(メタ)アクリレート系プレポリマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
光重合性モノマーとしては、例えば、単官能(メタ)アクリルモノマー(例えば2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等)、2官能(メタ)アクリルモノマー(例えば1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等)、3官能以上の(メタ)アクリルモノマー(例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの光重合性モノマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、又はメタクリレートを意味する。
【0028】
これらの中でも、ポリエステル(メタ)アクリレート系プレポリマー、又はウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。ポリエステル(メタ)アクリレート系プレポリマー、又はウレタン(メタ)アクリレートの市販品としては、特に限定されないが、共栄化学工業株式会社製のAT-600、UA-1011、UA-306H、UA-306T、UA-306l、UF-8001、UF-8003、日本合成化学工業株式会社製のUV7550B、UV-7600B、UV-1700B、UV-6300B、UV-7605B、UV-7640B、UV-7650B、新中村化学工業株式会社製のU-4HA、U-6HA、UA-100H、U-6LPA、U-15HA、UA-32P、U-324A、U-2PPA、UA-NDP、ダイセルユーシービー株式会社製のEbecryl-270、同-284、同-264、同-9260、同-1290、同-1290K、同-5129、根上工業株式会社製のUN-3220HA、UN-3220HB、UN-3220HC、UN-3220HS、三菱レイヨン株式会社製のRQシリーズ、荒川化学工業株式会社製のビームセットシリーズが挙げられる。
【0029】
上述したポリエステル(メタ)アクリレート系プレポリマー、又はウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、ハードコート層を形成するための硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して、10~90質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましい。
【0030】
分子中に重合性官能基を4個以上含むモノマー(但し、ポリエステル(メタ)アクリレート系プレポリマー、又はウレタン(メタ)アクリレートは含まない)の含有量は、ハードコート層を形成するための硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が特に好ましい。
【0031】
重合性官能基としては、特に限定されないが、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基が挙げられる。
【0032】
分子中に重合性官能基を4個以上含むモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
上述したポリエステル(メタ)アクリレート系プレポリマー、又はウレタン(メタ)アクリレートに加えて分子中に重合性官能基を1~3個含むモノマー、又はオリゴマーを含有することが好ましい。
【0034】
分子中に重合性官能基を1~3個含むモノマーやオリゴマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0035】
分子中に重合性官能基を1~3個含むモノマー、又はオリゴマーの含有量は、ハードコート層を形成するための硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、5~60質量%の範囲が好ましく、10~50質量%の範囲がより好ましい。
【0036】
ハードコート層を形成する際に、光重合性プレポリマー及び光重合性モノマーを用いる場合、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合型光重合性プレポリマーや光重合性モノマーに対しては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-(4-モルフォリニル)-1-プロパン、α-アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられるが、これらに特に限定されない。カチオン重合型光重合性プレポリマーに対する光重合開始剤としては、例えば芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオン等のオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート等の陰イオンとからなる化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
光重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、通常、上述した光重合性プレポリマー及び光重合性モノマーの合計100質量部に対して、0.2~10質量部の範囲内で適宜設定すればよい。なお、本明細書において、光重合開始剤の量は、ハードコート層に含まれる全樹脂成分の一部として加算される。
【0038】
光重合促進剤としては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。紫外線増感剤としては、例えば、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
これら光重合促進剤助剤、及び紫外線増感剤の配合量は、特に限定されないが、通常、上述した光重合性プレポリマー及び光重合性モノマーの合計100質量部に対して、0.2~10質量部の範囲内で適宜設定すればよい。
【0040】
(無機酸化物粒子)
本実施形態におけるハードコート層21は、ハードコート層21に含まれる全樹脂成分100質量部に対し1~50質量部の無機酸化物粒子を少なくとも含有する。無機酸化物粒子を含有することで、積層フィルム全体の優れた伸び率が得られる。
【0041】
無機酸化物粒子としては、例えば、アルミナ粒子、シリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、酸化アンチモン粒子、酸化錫粒子、酸化タンタル粒子、酸化亜鉛粒子、酸化セリウム粒子、酸化鉛粒子、酸化インジウム粒子等が挙げられるが、特に限定されない。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アルミナ粒子及びシリカ粒子よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、アルミナ粒子がより好ましい。
【0042】
無機酸化物粒子の平均粒子径D50は、特に限定されないが、1~1500nmであることが好ましく、より好ましくは10~1000nmであり、さらに好ましくは15~300nmであり、特に好ましくは20~150nmであり、最も好ましくは30~100nmである。当該範囲の平均粒子径D50を有する無機酸化物粒子を用いることで、積層フィルムは、当該積層フィルム全体として、優れた伸び率を示す傾向にある。
【0043】
なお、本明細書における平均粒子径D50とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製、商品名「SALD-7000」等)で測定されるメジアン径(D50)を意味する。また、メジアン径(D50)は、粒子分布において粒子の量が小粒子径側から累積計算して50体積%となるときの粒子径を意味する。
【0044】
無機酸化物粒子の含有量は、ハードコート層に含まれる全樹脂成分100質量部に対し、1~50質量部であることが好ましく、より好ましくは1~25質量部であり、さらに好ましくは1~10質量部であり、特に好ましくは1~5質量部である。当該範囲の含有量の無機酸化物粒子を用いることで、積層フィルムは、優れた伸び率を示し、優れたハードコート性を示す傾向にある。
【0045】
なお、ハードコート層21は、本発明の効果を過度に阻害しない程度であれば、各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、例えば、表面調整剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、蛍光増白剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤、貯蔵安定剤、架橋剤、シランカップリング剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0046】
また、ハードコート層21の表面硬度は、特に限定されないが、HB以上が好ましく、より好ましくはF以上、さらに好ましくはH以上である。表面硬度の値は、JIS K5600-5-4:1999に準拠した方法で、荷重750gで測定した鉛筆引っかき値(鉛筆硬度)で示される。
【0047】
ハードコート層の屈折率n2は、適宜設定することができ、特に限定されないが、好ましくは1.35~1.70であり、より好ましくは1.45~1.70である。
【0048】
ハードコート層の厚みは、適宜設定することができ、特に限定されないが、0.5~5μmが好ましく、より好ましくは1~4μm、さらに好ましくは2~4μmである。
【0049】
<機能層>
機能層31について説明する。機能層31は、成型用積層フィルム101の高機能化を図るために、例えば表面平滑性、表面硬度、耐擦傷性、防汚性、光学特性等を向上させるために設けられた層である。この機能層31は、積層フィルムに用いられる、公知のものを用いることができる。具体的には、反射防止層、防汚層、防眩層、加飾層、指紋付着防止層、アンチブロッキング層、紫外線吸収層、ニュートンリング抑制層等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、機能層31は、これらいずれか1種の機能を有する単一の層であっても、これらの複数の機能が複合化された単一の層であっても、複数の層が積層された複合体であってもよい。これらの機能層の中でも、反射防止層、防汚層、防眩層、及び加飾層よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、反射防止層がより好ましい。
【0050】
機能層は、好ましくは樹脂を含有する。樹脂としては、上述したハードコート層21の説明で列挙した樹脂を使用することもできるが、フッ素系樹脂又はケイ素系樹脂を使用してもよい。
【0051】
機能層は、当該機能層に含まれる全成分に対して、1~100質量%の無機酸化物を含有することが好ましい。無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉛、酸化インジウム等が挙げられるが、特に限定されない。これらの中でも、酸化ケイ素又は酸化アルミニウムが好ましく、酸化ケイ素がより好ましい。
【0052】
無機酸化物の含有量は、1~100質量%が好ましく、より好ましくは20~80質量%であり、さらに好ましくは30~60質量%である。無機酸化物の含有量が当該範囲であることで、成型用積層フィルムは、より顕著に優れた積層フィルム全体の伸び率を示す傾向にある。
【0053】
(反射防止層)
反射防止層は、ハードコート層の表面部分での映り込みを減少させ、成型用積層フィルム101全体の全光線透過率を向上させるために設けられる。表面部分での映り込みを防止するために、ハードコート層21の屈折率を小さく設計することも考えられる。しかしながら、屈折率が小さくなるようにハードコート層21を設計すると、ハードコート層21のハードコート性が低下することがある。そこで本実施形態では、ハードコート層21のハードコート性を低下させることなく、表面部分での映り込みを防止するために、ハードコート層21の屈折率より低い屈折率を持つ反射防止層を、ハードコート層21の表面に形成する。本実施形態における反射防止層は、好ましくは、ハードコート層21の屈折率よりも低い屈折率を有する。
【0054】
反射防止層は、例えば、樹脂、又は無機酸化物を含む。樹脂は、上述したハードコート層21の説明で列挙した樹脂を使用することもできるが、防汚性や屈折率調整が必要な場合はフッ素系樹脂又はケイ素系樹脂を含むことが好ましい。反射防止層が、樹脂を含む場合、無機酸化物粒子をさらに含むことが好ましい。また、反射防止層が、無機酸化物を含む場合、異なる種類の無機酸化物粒子をさらに含んでいてもよい。当該無機酸化物粒子は、上述の無機酸化物粒子であってもよい。
【0055】
フッ素系樹脂としては、例えば、含フッ素モノマー、含フッ素オリゴマー、含フッ素高分子化合物等が挙げられる。ここで、含フッ素モノマー、含フッ素オリゴマーは、分子中にエチレン性不飽和基とフッ素原子とを有するモノマーやオリゴマーである。
【0056】
含フッ素モノマー、含フッ素オリゴマーとしては、例えば、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、β-(パーフロロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等)、ジ-(α-フルオロアクリル酸)フルオロアルキルエステル類(例えばジ-(α-フルオロアクリル酸)-2,2,2-トリフルオロエチルエチレングリコール、ジ-(α-フルオロアクリル酸)-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエチレングリコール、ジ-(α-フルオロアクリル酸)-2,2,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルエチレングリコール、ジ-(α-フルオロアクリル酸)-2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチルエチレングリコール、ジ-(α-フルオロアクリル酸)-2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロヘキシルエチレングリコール、ジ-(α-フルオロアクリル酸)-2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7-トリデカフルオロヘプチルエチレングリコール、ジ-(α-フルオロアクリル酸)-2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ペンタデカフルオロオクチルエチレングリコール、ジ-(α-フルオロアクリル酸)-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルエチレングリコール、ジ-(α-フルオロアクリル酸)-2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9-ヘプタデカフルオロノニルエチレングリコール等)等が挙げられる。
【0057】
含フッ素高分子化合物としては、例えば、含フッ素モノマーと架橋性基付与のためのモノマーを構成単位とする含フッ素共重合体が挙げられる。含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば「ビスコート6FM」(大阪有機化学工業株式会社製)や「M-2020」(ダイキン工業株式会社製)等)、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等である。架橋性基付与のためのモノマーとしてはグリシジルメタクリレートのように分子内にあらかじめ架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有する(メタ)アクリレートモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート等)等が挙げられる。
【0058】
反射防止層において、フッ素系樹脂の含有量は組成物の樹脂固形分総量100質量%に対して、1%以上あれば効果を発揮することができる。
【0059】
ケイ素系樹脂としては、例えば、エチレン性不飽和基を有するポリシロキサン化合物の重合体等が挙げられる。具体的には、分子中のポリシロキサン主鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有する2官能以上のポリシロキサン化合物が好ましく、特にポリシロキサン主鎖の両末端と側鎖に1個以上のエチレン性不飽和基を有する3官能以上のポリシロキサン化合物がより好ましい。ここで、エチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アクリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等が挙げられる。
【0060】
エチレン性不飽和基を有するポリシロキサン化合物の市販品としては、例えば、チッソ株式会社製のサイラプレーンFM-0711、同FM-0721、同FM-0725、信越化学工業株式会社製のX-24-8201、X-22-174DX、X-22-1602、X22-1603、X-22-2426、X-22-2404、X-22-164A、X-22-164C、X-22-2458、X-22-2459、X-22-2445、X-22-2457、東レ・ダウコーニング株式会社製のBY16-152D、BY16-152、BY16-152C、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK-UV3570等が挙げられる。
【0061】
反射防止層におけるケイ素系樹脂の含有量は、低屈折率層の固形分総量100質量%に対して1.5質量%以上10質量%未満であることが好ましい。
【0062】
反射防止層に含まれる無機酸化物としては、無機酸化物ゾルを用いてもよい。無機酸化物ゾルとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等が挙げられる。これら無機酸化物ゾルの中でも、屈折率、流動性、コストの観点から、シリカゾルが好適に使用される。なお、無機酸化物ゾルとは、無機酸化物の存在によってチンダル現象を観測できない材料をいい、いわゆる均一溶液のことをいう。例えば、一般にコロイダルシリカゾルと言われる材料であっても、チンダル現象が観測されるものであれば、この実施形態では無機酸化物ゾルに含まれないものとする。
【0063】
このような無機酸化物ゾルは、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジルコニアプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタンイソプロポキシド等の無機アルコキシドを加水分解して調整することができる。無機酸化物ゾルの溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0064】
無機酸化物粒子は、上述した無機酸化物を微粉末化したものが好ましく、シリカ粒子、アルミナ粒子等が挙げられる。これらの中でも屈折率、流動性、コストの観点から、シリカ粒子が好適に使用される。また、無機酸化物粒子の形状は特に制限されることはないが、屈折率の低い多孔状又は中空状の無機酸化物粒子が好適に使用される。
【0065】
反射防止層の厚みは、光の反射防止理論より次式を満たすことが好ましい。
d=(a+1)λ/4n3
【0066】
ここで、dは反射防止層の厚み(単位は「nm」)、aは0又は正の偶数、λは反射を防止しようとする光の中心波長、n3は反射防止層の屈折率である。dは、具体的に、例えば2000nm程度以下が好ましく、より好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは800nm以下、特に好ましくは500nm以下、最も好ましくは300nm以下である。なお、反射を防止しようとする光の中心波長は可視光域となるので、λを一般的に可視光域といわれる波長の中心波長である550nmとし、無機薄膜として酸化珪素を用いた場合には屈折率nは1.40程度となるため、反射防止層の厚みdは約100nmとなる。
【0067】
反射防止層の厚みが厚くなると、厚みムラに起因する干渉ムラが発生し難くなる反面、下面に設けられるハードコート層21のハードコート性が発揮され難くなる。この実施形態では、ハードコート層21のハードコート性の低下と光干渉による反射防止効果の低下を防止するために、当該ハードコート層21の表面に反射防止層を薄く形成する。
【0068】
反射防止層の屈折率n3は、1.20~1.47が好ましく、より好ましくは1.20~1.45である。本実施形態の成型用積層フィルムは、反射防止層の屈折率n3が、ハードコート層の屈折率n2よりも小さいことが好ましく、ハードコート層の屈折率n2よりも0.1以上小さいことがより好ましい。
【0069】
以上詳述した成型用積層フィルム101は、例えば、基材フィルム11の一方の面11a側にハードコート層21を形成した後、ハードコート層21の表面21a側に機能層31を積層形成することにより得ることができる。これら各層の形成方法は、常法にしたがって行えばよく、特に限定されない。ハードコート層21及び機能層31の好適な作製方法としては、例えば、ドクターコート、ディップコート、ロールコート、バーコート、ダイコート、ブレードコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、スピンコート等の従来公知の塗布方法が挙げられる。ここで使用する塗布液の溶媒としては、例えば、水;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエーテル系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、並びにこれらの混合溶媒等、当業界で公知のものを用いることができる。このように塗布された塗膜に、必要に応じて電離放射線処理、熱処理、及び/又は加圧処理等を行うことにより、ハードコート層21及び機能層31を製膜することができる。なお、各層の積層前の前処理として、必要に応じてアンカー処理やコロナ処理等を行うこともできる。
【0070】
電離放射線照射において使用する光源は、特に限定されない。例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、電子線加速器等を用いることができる。また、このときの照射量も、使用する光源の種類や出力性能等に応じて適宜設定でき、特に限定されない、紫外線の照射量は、一般的には積算光量100~6,000mJ/cm2程度が目安とされる。
【0071】
また、熱処理において使用する熱源も、特に限定されない。接触式及び非接触式のいずれであっても好適に使用することができる。例えば、遠赤外線ヒーター、短波長赤外線ヒーター、中波長赤外線ヒーター、カーボンヒーター、オーブン、ヒートローラ等を用いることができる。熱処理における処理温度は、特に限定されないが、一般的には80~200℃であり、好ましくは100~150℃である。
【0072】
<成型用積層フィルムの物性>
本実施形態の成型用積層フィルム101における、全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、より好ましくは85~99%であり、さらに好ましくは90~98%である。なお、全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠した方法により測定可能である。
【0073】
本実施形態の成型用積層フィルム101における、ヘイズは、例えば、防眩性が求められる用途であれば、6%以上であることが好ましい。一方、当該ヘイズは、透明性が求められる用途であれば、5%以下であることが好ましく、より好ましくは0.01~3%、さらに好ましくは0.1~1%である。なお、ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠した方法により測定可能である。
【0074】
本実施形態の成型用積層フィルム101の最表面における、算術平均粗さ(Ra)は、120nm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1~50nm、さらに好ましくは0.1~10nmであり、よりさらに好ましくは0.1~5nmである。なお、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601:2001に準拠した方法により測定可能である。
【0075】
本実施形態の成型用積層フィルム101は、例えば、加飾成型、インモールド成型、フィルムインサート成型に用いることができる。本実施形態の成型用積層フィルム101は、積層フィルム全体の優れた伸び率を示すため、小さい曲率半径(例えば、1mm程度)での90°折り曲げ試験であってもクラックが生じにくく、積層フィルム全体としての形状追従性に優れる点で、従来技術に対して殊に優位性が示される。
【0076】
本実施形態の成型用積層フィルムの伸び率は、5%以上であることが好ましく、より好ましくは10~200%、さらに好ましくは30~150%、特に好ましくは40~100%である。この範囲を満たした成型用積層フィルムは、優れた伸び率を示し、優れたハードコート性を示す傾向にある。成型用の用途として、上記の伸び率が求められる用途が好ましい。
【0077】
伸び率は、JIS K7127:1999に準じた方法により測定可能であり、より具体的には、実施例に記載の方法により、測定可能である。基材フィルムにハードコート層等が積層された成型用積層フィルムの伸び率を測定する場合、基材フィルムのガラス転移温度を大きく下回る温度条件下で測定すると、基材フィルムが破断する場合がある。このような場合は、基材フィルムのガラス転移温度付近、好適にはガラス転移温度±5℃まで成型用積層フィルムを加温することで正確な伸び率を測定することができる。
【0078】
本実施形態の成型用積層フィルム101は、携帯電話、ノートパソコン等の電式機器筐体の外装用フィルム、携帯電話のアイコンシート、車載用表示パネルの保護フィルムとして好適に用いられる。とりわけ、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OELD又はIELD)等の表示装置の保護フィルムとして、特に有用である。
【実施例】
【0079】
以下、実験に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を表す。
【0080】
[測定方法]
<全光線透過率及びヘイズ>
全光線透過率(Tt)をJIS K7361-1:1997に準拠した測定方法で、ヘイズ(Haze)をJIS K7136:2000に準拠した測定方法で、それぞれヘイズメーター「NDH2000」(商品名、日本電色工業株式会社製)により、各成型用積層フィルムの基材と反対の面を入光面として、全光線透過率(Tt)及びヘイズ(Haze)を測定した。
【0081】
<算術平均粗さ(Ra)>
JIS B0601:2001に準拠した測定方法で、各成型用積層フィルムの算術平均粗さ(Ra)を原子間力顕微鏡「Nanocuteシステム」(商品名、株式会社日立ハイテクサイエンス製、プローブ:Si単結晶プローブ、測定モード:DFMモード、画像処理:フラット処理(XY)1回)を用いて求めた。
【0082】
[評価方法]
<伸び率>
形状追従性の評価としてJIS K7127:1999に準じて引張試験を行い、各フィルムの伸び率を測定した。長さ100mm×幅25mmの短形に切り出してサンプルを作製した。次に、両端部を除いた、サンプルの中央部付近に長さ50mm間隔でマーキングを行い、引張試験機「AGS-1kNX」(商品名、株式会社島津製作所製)に温度調節機構を設置した装置に、チャックにてマーキング部を挟まないようにサンプルを設置し、基材のガラス転移温度±5℃の範囲に設定し、チャック間距離50mm、引張速度200mm/minで、引張試験を行い、サンプルにクラックが入った時点のマーキング間の長さを測定し、当初マーキングした長さである50mmで割って、伸び率(%)を算出した。クラックの有無は目視にて確認した。
【0083】
<鉛筆硬度>
ハードコート性の評価として、JIS K5600-5-4:1999に準じて、鉛筆引っかき硬度試験機「No.553-m」(商品名、株式会社安田精機製作所製)を用いて鉛筆硬度を測定した。測定条件は、荷重750g及び引っかき速度0.5mm/秒とし、成型用積層フィルムの最表面(基材フィルムと反対側の表面)に所定の硬度の鉛筆で3線引き、クラックを確認し、クラックが入るのが1線以内である最大の硬さ(B、HB、F、H)で評価した。なお、表2及び表3の鉛筆硬度の試験は、ハードコート層形成後かつ機能層形成前と、機能層形成後に行った。ハードコート層形成後かつ機能層形成前の評価は、表中「HC層のみ」とし、機能層形成後の評価は、積層フィルム全体として示す。
【0084】
<耐薬品性>
成型用積層フィルムの最表面(基材フィルムと反対側の表面)上に日焼け止めクリーム「SPF100+」(商品名、Neutrogena社製)を0.3g塗布し、80℃6時間エージングした後、クリームを水で落とし、目視で外観の変化を確認した。
5:外観の変化が全くみえない。
4:外観の変化が、光を当てる角度によっては、わずかに観察される。
3:外観の変化が、わずかに観察される。
2:外観の変化が、観察される。
1:外観の変化が、明らかに観察される。
【0085】
<耐擦傷性>
ハードコート性の評価として、メラミンスポンジ「激おち君」(商品名、レック株式会社製メラミンフォーム)を用いて耐擦傷性を評価した。ここでは、成型用積層フィルムの最表面(基材フィルムと反対側の表面)を、設置面積7cm2×200g荷重で30回擦り、その後、目視で傷の有無を確認した。
5:変化なし
4:薄い傷が1~2本入る
3:薄い傷が3~10本入る
2:薄い傷が10本以上確認される
1:鋭利な傷が擦り面の全面に入る
【0086】
[成型用積層フィルムの製造]
(実施例1:成型用積層フィルムE1)
厚み250μm、ガラス転移温度150℃のポリカーボネートフィルムの一方の面に、表1に示す無機酸化物粒子含有量の下記処方のハードコート層塗工液を塗布、乾燥後、紫外線を照射し硬化させ、厚み3μm、屈折率1.52のハードコート層(以下、「HC層」ともいう)を形成した。その後、下記処方の機能層塗工液をハードコート層上に塗布、乾燥後、紫外線を照射し硬化させ、機能層として、厚み100nm、屈折率1.37の反射防止層を形成し、成型用積層フィルムE1を得た。得られた成型用積層フィルムE1について伸び率、鉛筆硬度、耐薬品性、及び耐擦傷性の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0087】
(比較例1:成型用積層フィルムCE1)
ハードコート層の形成時に無機酸化物粒子の配合を省略する以外は、実施例1と同様にハードコート層及び反射防止層を形成して、成型用積層フィルムCE1を得た。得られた成型用積層フィルムCE1について伸び率、鉛筆硬度、耐薬品性、及び耐擦傷性の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0088】
(参考例1~3:成型用積層フィルムR1~R3)
機能層を形成せず、ハードコート層の形成時の無機酸化物粒子含有量を表1に示すとおりに変更する以外は、実施例1と同様にハードコート層を形成して、成型用積層フィルムを得た。各成型用積層フィルムについて伸び率、鉛筆硬度、耐薬品性、及び耐擦傷性の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0089】
<ハードコート層塗工液>
アクリル系紫外線硬化型樹脂: 167質量部(固形分量100質量部)
(商品名:ビームセット1200、荒川化学工業株式会社製、固形分量60質量%)
無機酸化物粒子A-1: 量は表に記載の量(質量部)
(アルミナ粒子、平均粒子径D50:80nm、固形分量100質量%)
無機酸化物粒子A-2: 量は表に記載の量(質量部)
(アルミナ粒子、平均粒子径D50:900nm、固形分量100質量%)
無機酸化物粒子B: 量は表に記載の量(質量部)
(シリカ粒子、平均粒子径D50:250nm、固形分量100質量%)
レベリング剤: 2質量部
(商品名:M-ADDITIVE、東レ・ダウコーニング株式会社製、固形分量10質量%)
溶剤:固形分量20質量%になるように調整
(メチルエチルケトン(MEK))
【0090】
<機能層塗工液>
電離放射線硬化性樹脂: 50質量部
(商品名:ビームセット575、荒川化学工業株式会社製、固形分量100質量%)
多官能アクリレート: 50質量部
(トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、固形分量100質量%)
光開始剤: 3質量部
(商品名:オムニラッド127、IGM Resins社製、固形分量100質量%)
多孔質シリカ微粒子: 100質量部
(平均粒子径D50:55nm、固形分量100質量%)
添加剤: 3質量部
(商品名:メガファックRS-75、DIC株式会社製、固形分量40質量%)
溶剤:機能層塗工液の固形分量6質量%になるように調整
(メチルエチルケトン(MEK))
【0091】
【0092】
まず、参考例1~3の対比から、反射防止層を積層しない成型用積層フィルムにおいては、ハードコート層に無機酸化物粒子を含有させると、その含有量の増大にともなって、成型用積層フィルム全体の伸び率が小さくなっていくことがわかる。一方、比較例1及び実施例1の対比から、反射防止層及びハードコート層を有する成型用積層フィルムにおいては、ハードコート層に無機酸化物粒子を含有させると、先述した参考例1~3の結果とは相反することに、成型用積層フィルム全体の伸び率が向上していることがわかる。それと同時に、比較例1及び実施例1の対比から、ハードコート層に無機酸化物粒子を含有させることで、成型用積層フィルムの耐擦傷性を向上できることが示された。
【0093】
(実施例2~6:成型用積層フィルムE2~E6)
厚み250μm、ガラス転移温度150℃のポリカーボネートフィルムの一方の面に、表2に示す無機酸化物粒子含有量の上記処方のハードコート層塗工液を塗布、乾燥後、紫外線を照射し硬化させ、厚み3μm、屈折率1.52のハードコート層を形成した。その後、上記処方の反射防止層塗工液をハードコート層上に塗布、乾燥後、紫外線を照射し硬化させ、厚み100nm、屈折率1.37の反射防止層を形成し、成型用積層フィルムE2~E6を得た。
得られた各成型用積層フィルムE2~6について伸び率、鉛筆硬度、耐薬品性及び耐擦傷性の評価を行い、その結果を表2に示す。実施例1及び比較例1で示した成型用積層フィルムE1,CE1についても、参考のため、その結果を表2に示す。
【0094】
【0095】
以上のとおり、実施例1~6及び比較例1の対比結果から、ハードコート層が無機酸化物粒子を含有することで、伸び率、鉛筆硬度、耐薬品性及び耐擦傷性のいずれにおいても優れた性能を有する積層フィルムを実現できることが示された。
【0096】
(実施例11~15及び比較例2:成型用積層フィルムE11~E15,CE2)
厚み250μm、ガラス転移温度150℃のポリカーボネートフィルムの一方の面に、表3に示す無機酸化物粒子含有量の上記処方のハードコート層塗工液を塗布、乾燥後、紫外線を照射し硬化させ、厚み3μm、屈折率1.52のハードコート層を形成した。その後、上記処方の反射防止層塗工液をハードコート層上に塗布、乾燥後、紫外線を照射し硬化させ、厚み100nm、屈折率1.37の反射防止層を形成し、成型用積層フィルムE11~E15を得た。
一方、比較例2として、ハードコート層の形成時に無機酸化物粒子の配合を省略する以外は、実施例11と同様にハードコート層及び反射防止層を形成して、成型用積層フィルムCE2を得た。
得られた各成型用積層フィルムE11~E15,CE2について伸び率、鉛筆硬度、耐薬品性及び耐擦傷性の評価を行い、その結果を表3に示す。
【0097】
【0098】
比較例2と実施例11~15の対比から、反射防止層及びハードコート層を有する成型用積層フィルムにおいては、表1及び表2の結果と同様に、ハードコート層に平均粒子径D50が900nmの無機酸化物粒子を含有させると、成型用積層フィルム全体の伸び率が向上していることがわかる。
【0099】
一方、実施例1~6と、実施例11~15の対比から、無機酸化物粒子の含有量が多い場合には、無機酸化物粒子の平均粒子径D50の相違による影響が大きくなる傾向にあり、より小さな平均粒子径D50を有する無機酸化物粒子を使用すると、積層フィルム全体の伸び率がより向上する傾向にあることが示された。また、実施例1~6と、実施例11~15の対比から、より小さな平均粒子径D50を有する無機酸化物粒子を使用すると、積層フィルムのヘイズの上昇を抑えることができることが示された。
【0100】
(実施例21~22:成型用積層フィルムE21~E22)
無機酸化物粒子の種類及び配合量を表4に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の処方及び製造方法で、実施例21~22の成型用積層フィルムE21,E22を得た。得られた各成型用積層フィルムE21,E22の評価を行い、その結果を表4に示す。
【0101】
【0102】
無機酸化物粒子として、シリカ粒子を用いた場合であっても、伸び率、鉛筆硬度、耐薬品性及び耐擦傷性のいずれにおいても、アルミナ粒子を用いた成型用積層フィルムと同等の優れた性能を有する、成型用積層フィルムを実現できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、携帯電話、ノートパソコン等の電式機器筐体の外装用フィルム、携帯電話のアイコンシート、車載用表示パネルの保護フィルムとして好適に用いられる。とりわけ、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OELD又はIELD)等の表示装置の保護フィルムとして、特に有用である。
【符号の説明】
【0104】
101…成型用積層フィルム、11…基材フィルム、21…ハードコート層、31…機能層