IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日鉄住金鋼板株式会社の特許一覧

特許7229835異物除去用のブレード及びテンションレベラー
<>
  • 特許-異物除去用のブレード及びテンションレベラー 図1
  • 特許-異物除去用のブレード及びテンションレベラー 図2
  • 特許-異物除去用のブレード及びテンションレベラー 図3
  • 特許-異物除去用のブレード及びテンションレベラー 図4
  • 特許-異物除去用のブレード及びテンションレベラー 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】異物除去用のブレード及びテンションレベラー
(51)【国際特許分類】
   B65G 45/18 20060101AFI20230220BHJP
   B21B 39/00 20060101ALI20230220BHJP
   B08B 1/00 20060101ALI20230220BHJP
   B21D 1/05 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
B65G45/18 B
B21B39/00 F
B08B1/00
B21D1/05 U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019073333
(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公開番号】P2020172341
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】伴 武
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】関 伸行
(72)【発明者】
【氏名】石山 満
【審査官】山▲崎▼ 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-154517(JP,A)
【文献】特開2005-230732(JP,A)
【文献】特開平06-337611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 45/18
B21B 39/00
B08B 1/00
B21D 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を搬送するロールの表面に付着した異物を除去するためのブレードであって、
前記ロールの表面と接触し、弾性変形が可能な材料で形成された線状部材の両端部が固定された複数のループ部を有し、
前記ブレードは、前記ロールと、前記ロールを回転可能に支持するフレーム架台との間に形成された隙間において、前記フレーム架台に沿って配置されることを特徴とするブレード。
【請求項2】
ブレード本体と、
前記ブレード本体の表面に配置されたシート体と、を有し、
前記シート体は、シート状の基体と、前記基体から突出する前記複数のループ部とを有することを特徴とする請求項1に記載のブレード。
【請求項3】
前記シート体は、前記ブレード本体の一対のエッジ面のうち、前記シート体及び前記ロールの接触位置に対して、前記ロールの回転方向とは逆方向に位置するエッジ面を覆うことを特徴とする請求項2に記載のブレード。
【請求項4】
前記ループ部は、熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のブレード。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のブレードと、
前記ブレードが接触するロールと、
を有することを特徴とするテンションレベラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板を搬送するロールの表面に付着した異物を除去するためのブレードと、このブレードを備えたテンションレベラーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、圧延機のロール表面に磁石を接近させることにより、ロール表面の金属粉を磁力によって磁石に吸引させている。これにより、ロール表面を清浄に保つようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-123805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、磁石を用いているため、ロール表面に付着した金属粉だけを除去することができる。したがって、金属粉以外の異物、すなわち、磁力によって吸引されない異物がロール表面に付着している場合には、この異物を除去することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、鋼板を搬送するロールの表面に付着した異物を除去するためのブレードであって、ロールと接触する複数のループ部を有する。ループ部は、弾性変形が可能な材料で形成された線状部材によって形成されており、この線状部材の両端部が固定されることにより、ループ部が構成される。また、ブレードは、ロールと、ロールを回転可能に支持するフレーム架台との間に形成された隙間において、フレーム架台に沿って配置される。
【0006】
本発明のブレードは、ブレード本体と、ブレード本体の表面に配置されたシート体とで構成することができる。ここで、シート体は、シート状の基体と、基体から突出する複数のループ部とを有する。
【0007】
シート体は、ブレード本体の一対のエッジ面のうち、シート体及びロールの接触位置に対して、ロールの回転方向とは逆方向に位置するエッジ面を覆うことができる。ループ部は、熱可塑性樹脂で形成することができる。また、本発明であるテンションレベラーは、上述したブレードと、ブレードが接触するロールと、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のループ部をロールに接触させることにより、ロールに付着した異物(金属粉に限らない)を除去することができる。ここで、異物をループ部に絡ませることができるため、ブレードから異物が落下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】鋼板の搬送路の一部を示す概略図である。
図2】レベラーロールに対するブレードの配置状態を示す概略図である。
図3】ブレード本体に対するシート体の配置状態を示す概略図である。
図4】ブレード本体に対するシート体の配置状態(比較例)を示す概略図である。
図5】ブレードのシート体の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、鋼板の搬送路の一部(概略)を示し、図1の矢印で示す方向に鋼板が搬送される。コイル(不図示)から払い出された鋼板Pは、ブライドルロール21,22を通過した後、テンションレベラー23に搬送される。テンションレベラー23は、ロール状態から巻き出された鋼板Pの巻きぐせを除去する。テンションレベラー23を通過した鋼板Pは、ブライドルロール24,25に搬送され、所定の処理を経て巻き取られる。
【0011】
テンションレベラー23では、鋼板Pの上下に設けられた一対のレベラーロール23aが鋼板Pの搬送方向に沿って配置されている。上方に配置された複数のレベラーロール23aは、これらのレベラーロール23aの上方に配置された上フレーム架台23bによって回転可能に支持されており、各レベラーロール23a及び上フレーム架台23bの間には隙間が形成されている。上方に配置されたレベラーロール23aは、矢印R1で示す方向に回転する。下方に配置された複数のレベラーロール23aは、これらのレベラーロール23aの下方に配置された下フレーム架台23cによって回転可能に支持されており、各レベラーロール23a及び上フレーム架台23bの間には隙間が形成されている。下方に配置されたレベラーロール23aは、矢印R2で示す方向に回転する。鋼板Pは、一対のレベラーロール23aの間を通過するとき、これらのレベラーロール23aからの加圧力を受けることにより、巻きぐせが除去される。
【0012】
鋼板Pの表面には異物が付着していることがある。この場合、鋼板Pの表面からレベラーロール23aの表面に異物が転移してしまうことがある。また、鋼板Pの搬送路の外部から侵入した異物がレベラーロール23aの表面に付着してしまうことがある。レベラーロール23aの表面に異物が付着したままでは、レベラーロール23aが鋼板Pに接触したときに、例えば、レベラーロール23aの表面上の異物によって、鋼板Pの表面に凹凸が形成されてしまうことがある。
【0013】
そこで、本実施形態では、レベラーロール23aの表面に付着した異物を、後述するブレードによって除去するようにしている。図2に示すように、ブレード1は、上フレーム架台23b及びレベラーロール23aの間に形成された隙間において、上フレーム架台23bに沿って配置され、レベラーロール23aの表面に接触する。ここで、ブレード1を支持する支持部材(不図示)を用いることにより、レベラーロール23aの表面に対してブレード1を位置決めすることができる。ブレード1を支持する支持部材(不図示)は、上フレーム架台23bに固定することができる。
【0014】
なお、ブレード1は、すべてのレベラーロール23aに設けることもできるし、一部のレベラーロール23aに設けることもできる。また、図2に示す例では、上フレーム架台23b及びレベラーロール23aの間に形成された隙間にブレード1を配置しているが、下フレーム架台23c及びレベラーロール23aの間に形成された隙間にブレード1を配置することもできる。上フレーム架台23b及びレベラーロール23aの間に形成された隙間や、下フレーム架台23c及びレベラーロール23aの間に形成された隙間はデッドスペースになるが、このデッドスペースを有効利用してブレード1を配置することができる。
【0015】
次に、ブレード1の構造について、図2から図5を用いて説明する。
【0016】
ブレード1は、レベラーロール23aの回転軸の方向(図2の紙面と直交する方向)に延びており、この回転軸の方向におけるレベラーロール23aの一端から他端までの領域に接触する。これにより、レベラーロール23aが回転したときに、レベラーロール23aの表面全体にブレード1を接触させることができる。なお、レベラーロール23aの表面全体にブレード1を接触させなくてもよく、例えば、レベラーロール23aのうちの鋼板Pと接触する領域だけに対してブレード1を接触させてもよい。
【0017】
図2に示すように、ブレード1は、ブレード本体10と、ブレード本体10の表面に固定されたシート体11とを有する。シート体11は、ブレード1のうち、レベラーロール23aの表面と接触する部分に設けられていればよい。例えば、ブレード本体10の表面の全体を覆うようにシート体11が設けられていてもよいし、ブレード本体10の表面の一部を覆うようにシート体11が設けられていてもよい。
【0018】
シート体11がブレード本体10の表面の一部を覆う場合には、図3に示すように、シート体11を配置することができる。図3に示す構成では、ブレード本体10の左右のエッジ面10a,10bのうち、左側のエッジ面10aだけを覆うようにシート体11が配置されている。エッジ面10aは、シート体11及びレベラーロール23aの接触位置CPに対して、この接触位置CPでのレベラーロール23aの回転方向(図3の右方向)とは逆方向に位置している。なお、エッジ面10bは、シート体11及びレベラーロール23aの接触位置CPに対して、この接触位置CPでのレベラーロール23aの回転方向(図3の右方向)に位置している。
【0019】
図3に示すようにシート体11を配置することにより、図4に示す構成と比べて、シート体11がブレード本体10から剥がれてしまうことを抑制できる。以下、具体的に説明する。
【0020】
図4に示す構成では、ブレード本体10の左右のエッジ面10a,10bのうち、右側のエッジ面10bだけを覆うようにシート体11を配置している。図4に示す場合、矢印R1の方向に回転するレベラーロール23aとシート体11の摩擦力によって、シート体11が矢印R1の方向に引っ張られ、シート体11がブレード本体10から剥がれやすくなる。一方、図3に示すようにシート体11を配置した場合、シート体11は、レベラーロール23aからの摩擦力を受けて矢印R1の方向に引っ張られるが、ブレード本体10のエッジ面10aにシート体11が引っ掛かるため、シート体11が矢印R1の方向に引っ張られることを抑制し、シート体11がブレード本体10から剥がれてしまうことを抑制できる。
【0021】
シート体11をレベラーロール23aの表面に密接させれば、シート体11によって、レベラーロール23aの表面に付着した異物を除去しやすくなる。ブレード本体10は、シート体11をレベラーロール23aの表面に密接させることができるように、所定の強度を有することが好ましい。この点を考慮して、ブレード本体10の材料や形状を適宜決めることができる。例えば、ブレード本体10の材料として、超高分子量ポリエチレンを用いることができる。
【0022】
シート体11はブレード本体10に固定されていればよく、公知の固定方法を適宜採用することができる。例えば、接着剤を用いることにより、シート体11をブレード本体10に固定したり、ブレード本体10にシート体11を巻き付けてシート体11の複数箇所を互いに固定することにより、シート体11をブレード本体10に固定したりすることができる。
【0023】
図4に示すように、シート体11は、シート状の基体11aと、基体11aの表面から突出する複数のループ部11bとを有する。各ループ部11bは線状の部材(以下、線状部材という)によって形成されており、線状部材の両端部が基体11aに固定されているとともに、ループ状に形成されている。また、各ループ部11bは、弾性変形が可能な材料で形成されており、この材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0024】
なお、ループ部11bを構成する線状部材の径や、基体11aの単位面積当たりに占めるループ部11bの数や、基体11aからのループ部11bの突出量(言い換えれば、ループ部11bの高さ)は、適宜決めることができる。
【0025】
また、本実施形態では、ブレード本体10及びシート体11の2つの部品によって、ブレード1が構成されているが、ブレード本体10及びシート体11が一体的に構成されていてもよい。この場合には、ブレード本体10の表面にループ部11bを設けることができる。
【0026】
本実施形態によれば、ブレード1をレベラーロール23aの表面に接触させることにより、レベラーロール23aの表面に付着した異物をブレード1(すなわち、ループ部11b)によって除去することができる。ここで、レベラーロール23aの表面から除去された異物は、ブレード1のループ部11bに絡まるため、ブレード1から落下することなく、ブレード1(すなわち、シート体11)に保持される。異物をブレード1に保持させておくことにより、異物の落下を防止することができ、落下した異物を捕集するためのトレイを配置する必要が無くなる。シート体11に異物が蓄積したときには、シート体11をブレード本体10から取り外して、シート体11を交換することができる。また、ブレード本体10及びシート体11が一体的に構成されている場合には、ブレード1を交換することができる。
【0027】
本実施形態において、ブレード1をレベラーロール23aの表面に接触させると、シート体11(すなわち、ループ部11b)が弾性変形することにより、レベラーロール23aに対してブレード1を面接触させることができる。これにより、レベラーロール23aの表面に付着した異物を除去しやすくなる。
【0028】
ループ部11bでは、線状部材の両端部が基体11aに固定されているため、ループ部11bをレベラーロール23aの表面に密接させ続けても、ループ部11bの形状を保持しながら、レベラーロール23aに対する接触圧を確保しやすくなり、レベラーロール23aの表面に付着した異物を除去しやすくなる。
【0029】
一方、ループ部11bの代わりに、線状部材をフック状に形成したフック部を用いることが考えられるが、このフック部では、線状部材の一端だけが基体11aに固定され、線状部材の他端は自由端となる。このため、フック部をレベラーロール23aの表面に密接させたときには、フック部が変形しやすくなるため、本実施形態のループ部11bに比べて、レベラーロール23aに対する接触圧が低下しやすくなり、異物を除去する能力が低下しやすくなる。
【符号の説明】
【0030】
1:ブレード、10:ブレード本体、11:シート体、11a:基体、
11b:ループ部、21,22:ブライドルロール、23:テンションレベラー、
23a:レベラーロール、23b:上フレーム架台、23c:下フレーム架台、
24,25:ブライドルロール、P:鋼板
図1
図2
図3
図4
図5