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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】貴金属の分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/34 20060101AFI20230220BHJP
   G01N 21/67 20060101ALI20230220BHJP
   G01N 33/2028 20190101ALI20230220BHJP
【FI】
G01N1/34
G01N21/67 A
G01N33/2028
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019092214
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2019207226
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2018101846
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】畑元 俊一
(72)【発明者】
【氏名】和仁 博英
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 裕一
(72)【発明者】
【氏名】石原 洋三
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-123016(JP,A)
【文献】特開2013-027549(JP,A)
【文献】特開平11-160233(JP,A)
【文献】米国特許第07025936(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第102253072(CN,A)
【文献】小野 浩 他,乾式試金分析方法の改良と実試料への応用,日本分析化学会第62回年会講演要旨集,日本,2013年08月27日,p.348,P3080
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/2028
G01N 21/67
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属の分析方法であって、
貴金属を含む被検試料を用意する工程と、
乾式試金法の鉛ボタン作製手順に従い、前記被検試料を融解して前記貴金属を捕集させた鉛ボタンを作製する工程と、
王水、塩酸、逆王水、酢酸、クエン酸及び硫酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸性水溶液、水又はアルカリ性水溶液で前記鉛ボタンを洗浄して、前記鉛ボタンの表面に付着しているスラグを除去する工程と、
前記スラグが除去された鉛ボタンを乾燥させる工程と、
前記乾燥させた鉛ボタンに機器分析を行って前記貴金属を定量する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記鉛ボタンの乾燥後で、かつ、前記機器分析前に、前記鉛ボタンにプレス成形を施して板状の形状を付与し、該板状の鉛ボタンの表面を切削して平坦にする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機器分析が、発光分光分析装置を用いて行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記貴金属がAu、Ag、Pt、Rh及びPdからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記貴金属がRhである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記鉛ボタンの重量が20~80gである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記鉛ボタンを作製する工程が、前記被検試料をPbO及び融剤と調合して混合試料とし、該混合試料をるつぼ中で融解させて前記貴金属を前記鉛ボタン中に捕集し、その後、該鉛ボタンを残部であるスラグ塊から物理的衝撃及び/又は機械的加工により分離する工程を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記被検試料が廃材に由来するものであり、それ故、前記方法が前記貴金属のリサイクルのために行われるものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属資源を有効活用するために、電気電子機器廃棄物等の廃材からAu、Ag、Pt、Pd等の貴金属を回収する貴金属リサイクルの需要が高まっている。また、貴金属が含まれる廃材は有価物として商取引の対象となっており、含有する貴金属の種類及び量によって取引額が異なっている。そこで、廃材中に含まれる貴金属の分析が広く行われている。
【0003】
この点、貴金属の分析方法として、テルル(Te)共沈法と呼ばれる手法が知られている。例えば、特許文献1(特開2005-308705号公報)にはTe共沈法に基づく貴金属分析方法として、通常貴金属の共沈剤はTeのみが用いられるところ、ヒ素(As)を複合添加することで貴金属の捕集効率を上げる分析手法が開示されている。
【0004】
また、貴金属を分析する別の方法として、乾式試金法(乾式融解-灰吹法)と呼ばれる手法も広く知られている(例えば、非特許文献1(JIS M 8111-1998「鉱石中の金及び銀の定量方法」)を参照)。乾式試金法は、乾式融解工程及び灰吹工程をこの順に含む。乾式融解工程では、試料をPbO及び融剤と調合して混合試料とし、混合試料をるつぼ中で融解させることで試料に含まれる貴金属を鉛ボタン中に捕集し、鉱物由来の金属酸化物であるスラグの塊から鉛ボタンを分離する。灰吹工程では、得られた鉛ボタンをキューペルと呼ばれる骨灰皿に入れて酸化状態で融解させ、鉛ボタンに含まれる鉛や試料成分等を揮散及びキューペルに吸収させることで、貴金属元素をビード(粒状)の形態で分離する。その後、分離したビードに対して前処理及び分析を行うことで貴金属を定量することができる。
【0005】
しかしながら、この乾式試金法は前述した灰吹工程及び分析に要する時間が長く、迅速な分析を行うことが困難である。かかる問題に対処するために、乾式試金法を改良した分析手法が提案されている。例えば、特許文献2(特開2012-123016号公報)には、乾式試金法を利用して鉛ボタンを作製し、得られた鉛ボタンにレーザー光を照射し、鉛ボタンの一部を微粒子化してICP分析装置へ導入するレーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属分析方法が開示されており、この方法によれば灰吹工程等を省略できるため、分析の迅速化が図れるとされている。また、特許文献3(特開2013-27549号公報)には、乾式試金法を利用して得られた粗鉛ボタンをバレル研磨することで物理的にスラグを除去する手法が開示されており、この手法により研磨した鉛ボタンはレーザーアブレーションを用いた分析用試料として好適に用いられることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-308705号公報
【文献】特開2012-123016号公報
【文献】特開2013-27549号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】JIS M 8111-1998「鉱石中の金及び銀の定量方法」
【発明の概要】
【0008】
前述した貴金属リサイクル需要の高まり等から、廃材等の被検試料に含まれる貴金属を迅速かつ高精度に分析する方法が望まれる。しかしながら、特許文献1で開示されるようなTe共沈法は前処理工程が煩雑であるため、その操作には熟練技能を必要とし、かつ、迅速な分析を行うことが困難である。一方、特許文献2及び3に開示されるようなレーザーアブレーションICP分析法を用いた貴金属分析方法では、形成した鉛ボタンを固体のまま分析していることから迅速な分析が可能となるものの、残留するスラグの影響で分析結果のバラつきが大きくなる恐れがある。
【0009】
本発明者らは、今般、貴金属を捕集させた鉛ボタンを所定の溶液で洗浄した後に機器定量分析に付することで、迅速かつ高精度に被検試料中の貴金属の定量分析を行うことができるとの知見を得た。
【0010】
したがって、本発明の目的は、迅速かつ高精度に被検試料中の貴金属の定量分析を行うことが可能な、貴金属の分析方法を提供することにある。
【0011】
本発明の一態様によれば、
貴金属の分析方法であって、
貴金属を含む被検試料を用意する工程と、
乾式試金法の鉛ボタン作製手順に従い、前記被検試料を融解して前記貴金属を捕集させた鉛ボタンを作製する工程と、
王水、塩酸、逆王水、酢酸、クエン酸及び硫酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸性水溶液、水又はアルカリ性水溶液で前記鉛ボタンを洗浄して、前記鉛ボタンの表面に付着しているスラグを除去する工程と、
前記スラグが除去された鉛ボタンを乾燥させる工程と、
前記乾燥させた鉛ボタンに機器分析を行って前記貴金属を定量する工程と、
を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】例A1において作成したAu検量線である。
図2】例A1において作成したAg検量線である。
図3】例A2において作成したRh検量線である。
図4】例A2において作成したPd検量線である。
図5】例A2において作成したPt検量線である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
貴金属の分析方法
本発明による貴金属の分析方法は、(1)貴金属を含む被検試料の用意、(2)貴金属を捕集させた鉛ボタンの作製、(3)所定の溶液を用いた鉛ボタンの洗浄、(4)鉛ボタンの乾燥、(5)所望により行われる鉛ボタンのプレス成形及び表面切削、及び(6)機器分析による貴金属の定量の各工程をこの順に含む。このように、貴金属を捕集させた鉛ボタンに対して所定の溶液で洗浄した後に機器定量分析に付することで、迅速かつ高精度に被検試料中の貴金属の定量分析を行うことができる。
【0014】
前述したとおり、従来から貴金属の分析方法として知られている乾式試金法(乾式融解-灰吹法)は灰吹工程及び分析に要する時間が長く、迅速な分析を行うことが困難であった。一方、灰吹工程を経ずに鉛ボタンをそのまま分析した場合には、迅速に貴金属の定量を行うことが可能となるものの、分析精度という観点で十分なものとはいえない。これは、乾式試金法の乾式融解工程によって得られた鉛ボタンの表面にスラグが付着しており、この鉛ボタン表面に存在するスラグに起因して貴金属の分析結果にバラつきが生じるためであると考えられる。すなわち、スラグに含まれる又はスラグに付着する非金属成分が不純物として貴金属の定量分析を阻害するものと考えられる。この点、バレル研磨等で物理的に鉛ボタン表面を削ることによりスラグを除去する場合には、鉛ボタン表面に付着した微細なスラグを落としきれず、定量結果のバラつきを十分に抑えることはできない。これに対して、本発明では得られた鉛ボタンに対して所定の溶液を用いて化学的に鉛ボタン表面を洗浄しているため、鉛ボタン表面に付着したスラグを効果的に落とすことが可能となる。このメカニズムは必ずしも定かではないが、以下のようなものと推察される。すなわち、本発明に用いられる所定の酸性水溶液(すなわち王水、塩酸、逆王水、酢酸、クエン酸及び硫酸)は鉛ボタンの主成分であるPbを僅かに溶解させるという性質を有する。したがって、この酸性水溶液を用いて鉛ボタンを洗浄することで、貴金属を捕集させた鉛ボタン自体の溶解を極力抑えつつ、鉛ボタンの表面近傍を薄く剥離して、その表面に付着しているスラグ及びその他の非金属成分を浮かせて除去することができる。一方、水及びアルカリ性水溶液は鉱物由来の金属酸化物からなるスラグ自体を溶出させる性質を有する。したがって、水又はアルカリ性水溶液を用いて鉛ボタンを洗浄することで、鉛ボタン表面に付着しているスラグ及びその他の非金属成分を溶解除去することができる。いずれにしても、本発明に用いられる所定の溶液を用いて鉛ボタンを洗浄することで、スラグ等を鉛ボタン表面から効果的に剥離除去することができ、結果としてその後の機器定量分析におけるスラグ等に起因する貴金属の分析結果のバラつきを最小限に抑えることができるものと考えられる。
【0015】
以下、工程(1)~(6)の各々について説明する。
【0016】
(1)貴金属を含む被検試料の用意
分析対象である貴金属を含む被検試料を用意する。被検試料に含まれる貴金属の例としてはAu、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os及びそれらの組合せが挙げられ、
好ましくはAu、Ag、Pt、Rh、Pd及びそれらの組合せ、より好ましくはRhが挙げられる。
【0017】
したがって、本発明の分析方法はRhの定量に用いられるのが特に好ましい。この点、乾式試金法(乾式融解-灰吹法)においては、被検試料がAgを含有している場合にはRhを分析することができないという問題点があった。これは、鉛ボタン中にAg及びRhが含まれている場合、灰吹工程において貴金属元素をビードの形態で分離することが困難なためである。一方、本発明では乾式試金法を利用して鉛ボタンを作製しているものの、灰吹工程を行わずに、機器分析により直接鉛ボタンを分析することができるため、被検試料がAgを含有している場合であっても、問題無くRhを分析することが可能となる。
【0018】
前述のとおり、本発明の分析方法は、被検試料中に含まれる貴金属を迅速かつ高精度に分析することができるため、貴金属リサイクル用途に極めて適したものである。したがって、被検試料が廃材に由来するものであり、それ故、本発明の分析方法が貴金属のリサイクルのために行われるのが好ましい。廃材の好ましい例としては電気電子機器廃棄物が挙げられ、より好ましくは廃基板が挙げられる。
【0019】
(2)貴金属を捕集させた鉛ボタンの作製
乾式試金法の鉛ボタン作製手順に従い、被検試料を融解して貴金属を捕集させた鉛ボタンを作製する。作製する鉛ボタンの重量は20~80gが好ましく、より好ましくは25~60gである。この範囲内であると、被検試料中に含まれる貴金属元素を十分鉛ボタンに吸収させることができるとともに、後述する各前処理工程におけるハンドリング性にも優れる。また、鉛ボタンの作製はJIS M 8111-1998に記載されるような従来慣用の手法に従って行えばよく、特に限定されない。典型的には、鉛ボタンの作製は、被検試料をPbO及び融剤と調合して混合試料とし、この混合試料をるつぼ中で溶解させることで貴金属を鉛ボタン中に捕集し、その後、鉛ボタンを残部であるスラグ塊から物理的衝撃及び/又は機械的加工により分離することにより行えばよい。物理的衝撃の例としては、ハンマーを用いて人為的又は機械的に融成物を叩く等の手法が挙げられ、機械的加工の例としては工作機械を用いて融成物を切削する等の手法が挙げられる。
【0020】
融解に用いられる融剤の種類は特に限定されるものではないが、例えば、ほう砂ガラス、ソーダ灰、小麦粉、鉄くぎ等が挙げられる。必要に応じて、被検試料の還元力又は酸化力を算出することで、所定量の鉛ボタンを形成するのに適した融剤の種類及び添加量を決定してもよい。また、おおよその被検試料の組成及び貴金属量を推定した上で、被検試料の融解方法を決定してもよい。
【0021】
(3)所定の溶液を用いた鉛ボタンの洗浄
所定の酸性水溶液、水又はアルカリ水溶液を用いて、スラグ塊が付着したままの鉛ボタン、或いはスラグ塊を除去した鉛ボタンを洗浄して、鉛ボタンの表面に付着しているスラグを除去する。好ましい洗浄用溶液は取り扱いが容易な点から水である。洗浄用溶液として水を用いた場合においても、物理的研磨を行うことなく洗浄のみで簡便にスラグを除去することが可能となるため、迅速かつ高精度な貴金属の定量分析に適する。一方、水を用いたスラグ除去が困難な場合には、よりスラグを除去する効果の高い酸性水溶液又はアルカリ性水溶液を用いるのが好ましい。このとき、酸性水溶液として、王水、塩酸、逆王水、酢酸、クエン酸及び硫酸からなる群から選択される少なくとも1種を用いることで、鉛ボタン表面に付着しているスラグを効果的に除去することができる。中でも、好ましい酸性水溶液は王水、塩酸、逆王水、硫酸又はそれらの混合液であり、より好ましくは王水、塩酸又はそれらの混合液、さらに好ましくは塩酸である。特に、塩酸はPbをほとんど溶解させないため、鉛ボタン自体の溶解を最小限に抑えつつ、鉛ボタン表面に付着しているスラグ及びその他の非金属成分をより一層効果的に除去することができる。なお、王水とは濃塩酸(例えば約37重量%の塩酸)及び濃硝酸(例えば約60重量%の硝酸)を3:1の体積比で混合して調製した酸性水溶液を意味し、逆王水とは濃塩酸及び濃硝酸を1:3の体積比で混合して調製した酸性水溶液を意味する。一方、アルカリ水溶液は、鉛ボタン表面に付着したスラグを効果的に溶出させる観点から強アルカリ性を示す溶液が好ましい。したがって、アルカリ水溶液の好ましい例としては水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液又はそれらの混合液が挙げられ、より好ましくは水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液又はそれらの混合液、さらに好ましくは水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液又はそれらの混合液、特に好ましくは水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液又はそれらの混合液、最も好ましくは水酸化ナトリウム水溶液が挙げられる。
【0022】
酸性水溶液及びアルカリ性水溶液は水で希釈したものであってもよい。また、鉛ボタン表面に付着しているスラグを除去できる限り、酸性水溶液、水又はアルカリ性水溶液に有機溶媒や界面活性剤等を添加剤として適量加えることは許容される。酸性水溶液及びアルカリ水溶液の濃度は、例えば以下の表1に例示されるように、酸性水溶液及びアルカリ水溶液の種類に応じて適切に選択されるのが好ましい。表1に各溶液における好ましい濃度を例示する。
【表1】
【0023】
洗浄は鉛ボタンを所定の溶液に接触させることにより行われるのが好ましい。好ましい溶液の温度は10~100℃であり、より好ましくは30~100℃、さらに好ましくは50~100℃、特に好ましくは70~100℃である。特に、洗浄用溶液として水を用いる場合、水は50~100℃の温水であるのが好ましく、70~100℃の温水であるのがより好ましい。こうすることで、鉛ボタンに付着しているスラグをより一層効果的に除去することができる。鉛ボタンを溶液に接触させる手法の例としては、鉛ボタンを溶液に浸漬させる手法や、鉛ボタンに溶液をシャワーやスプレーで掛ける手法等が挙げられる。鉛ボタンを溶液に接触させる時間は1~60分間であるのが好ましく、より好ましくは5~30分間、さらに好ましくは10~30分間、特に好ましくは10~15分間である。また、洗浄中に超音波洗浄を行うことで、スラグの除去をより一層効率的に行い、洗浄時間の短縮を図ることもできる。
【0024】
(4)鉛ボタンの乾燥
洗浄を行った鉛ボタンを乾燥させる。乾燥方法は特に限定されるものではなく、自然乾燥、風乾、熱風乾燥等の一般的に採用される公知の乾燥手法を用いて鉛ボタンを乾燥させればよい。
【0025】
(5)鉛ボタンのプレス成形及び表面切削(任意工程)
必要に応じて、乾燥した鉛ボタンにプレス成形を施して板状の形状を付与し、この板状の鉛ボタンの表面を切削して平坦にしてもよい。こうすることで、試料表面を分析する装置(例えば発光分光分析装置)を用いて鉛ボタンを分析する際に、試料表面の凹凸に起因する分析結果のバラつきを低減することができる。プレス成形は市販のプレス機を用いて、鉛ボタンが板状の形状となるように所定の圧力で実施すればよい。この際、鉛ボタンを容易に板状にできる点で、鉛ボタンを所定の型のホルダーにセットした上でプレス成形を施すのが好ましい。板状の鉛ボタン表面の切削は、市販の切削盤等を用いて行えばよい。
【0026】
(6)機器分析による貴金属の定量
乾燥した鉛ボタンに機器分析を行って貴金属を定量する。本発明で用いる機器分析は、鉛ボタンを溶液化することなく、固体のまま直接分析できる分析機器によって行われる。また、機器分析は多元素同時分析が可能な方法で行われるのが好ましい。このような観点から、機器分析は、スパーク放電発光分光分析装置、DCアーク発光分光分析装置、グロー放電発光分光分析装置等の発光分光分析装置、又は波長分散型蛍光X線分析装置、エネルギー分散型蛍光X線分析装置等の蛍光X線分析装置を用いて行われるのが好ましく、含有成分が微量な場合の分析精度や試料の表面状態の影響が少ないという観点から発光分光分析装置を用いて行われるのがより好ましい。更には、試料の調製の容易さや分析時間の観点から、機器分析はスパーク放電発光分光分析装置を用いて行われるのが最も好ましい。
【0027】
貴金属の定量は検量線法に基づいて行われるのが好ましい。すなわち、貴金属濃度が既知の標準試料を本発明の分析方法に従って分析することで各貴金属の検量線を作成し、この検量線に基づいて鉛ボタン、ひいては被検試料に含まれる各貴金属の量を決定するのが好ましい。貴金属濃度が既知の標準試料を用意できない場合は、例えば、貴金属濃度に差のある実試料(すなわち被検試料と同種の試料)を複数ロット(例えば5~10ロット)用意し、これらを乾式試金法(乾式融解-灰吹法)等で分析することで、貴金属濃度を値付けして標準試料としてもよい。あるいは、できるだけ分析対象の貴金属が含まれていない実試料を複数用意し、異なる量の貴金属を段階的に添加することで、貴金属濃度に差のある複数の標準試料を作製してもよい。また、必要に応じて共存成分ごとの標準試料を作製してもよい。実試料に貴金属を添加して標準試料を作製する場合には、添加した貴金属が鉛ボタンに吸収されているか確認を行うことが好ましい。
【0028】
被検試料の種類に応じて、マット処理(マット融解法)による標準試料の調製を行ってもよい。マット処理による標準試料の調製では、実試料に分析対象の貴金属及びFeSを加えて加熱融解し、得られた融解物を冷却した後、微粉砕したものを標準試料とすることができる。
【実施例
【0029】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0030】
[例A1及びA2]
以下に示される例は、本発明の方法に従って貴金属の検量線を作成することにより、精確な定量分析が行えることを確認したものである。
【0031】
例A1
実試料を従来の分析方法である乾式融解-灰吹法で値付けして標準試料とし、この標準試料を用いてAu検量線及びAg検量線を作成した。
【0032】
(1)検量線用試料の用意
検量線用試料として、Au濃度及びAg濃度が互いに異なる実試料(リサイクル原料)を10ロット用意した。
【0033】
(2)鉛ボタンの作製
検量線用試料5.0gをPbO55.0g及び融剤(小麦粉4.0g、ほう砂粉末10.0g、けい砂粉末8.0g、ソーダ灰35.0g及び鉄くぎ1.7g)とともにるつぼに加え、混合試料とした。次に、混合試料の入ったるつぼを約900℃に予熱した融解炉中に入れて約10分間加熱した後、炉の温度を約1000℃まで昇温し、約10分間保持させることで混合試料を完全に融解させた。こうして、検量線用試料中のAu、Ag及びその他の貴金属を鉛ボタン中に捕集した。放冷した融成物をるつぼから取り出し、鉛ボタンをスラグ塊から分離した。このようにして、各ロット4個の鉛ボタンを作製し、鉛ボタンの重量をそれぞれ測定した。
【0034】
(3)実試料の値付け
各ロットにつき2個の鉛ボタンを灰吹法により分析することで、実試料の値付けを行った。すなわち、灰吹炉内であらかじめ約790℃で約20分間予熱されたキューペル上に得られた鉛ボタンを置き、空気の流入を調整しながら約820℃で灰吹を行い、その後キューペルを放冷することで、ビードを得た。得られたビードの重量を測定した後、このビードを硫酸中に入れて煮沸することでAgを溶解させた。次に、ビードを洗浄することでAgを完全に除去して金粒とし、この金粒を乾燥、焼鈍及び放冷した後、金粒の重量を測定した。こうして、金粒の重量からAu量を、ビードの重量と金粒の重量の差からAg量をそれぞれ求め、あらかじめ測定した鉛ボタンの重量から鉛ボタンのAu濃度及びAg濃度を算出した。このAu濃度及びAg濃度の平均値をロットごとに求め、該当ロットの鉛ボタンのAu濃度及びAg濃度とした。なお、Au量及びAg量は、JIS M 8111-1998の手順に従い、分金液(すなわち硫酸及び洗浄液)中のPt、Pd、Bi及びPbの量、並びにスラグ及びキューペル中に残存したAu及びAgの損失量を求め、これらの値で補正して算出した。あるいは、ビードを王水で溶解して溶液中の銀以外の貴金属及び不純物をICP発光分光分析装置等の分析機器で測定することによりAu濃度を含む貴金属濃度を求め、貴金属及び不純物量をビードの重量から差し引くことでAg濃度を求めることもできる。
【0035】
(4)鉛ボタンの洗浄及び乾燥
灰吹法による分析を行っていない各ロットの残り2個の鉛ボタンについて、本発明の分析方法に従って前処理及び分析を行った。まず、得られた鉛ボタンを約90℃の王水(1+1)に10分間浸漬させることにより洗浄を行い、鉛ボタン表面に付着しているスラグを除去した。なお、本明細書において「溶液A(1+1)」とは、1体積の溶液Aに対して1体積の水を加えて調製した溶液を意味する。洗浄後、鉛ボタンを定温乾燥器により乾燥させた。
【0036】
(5)鉛ボタンのプレス成形及び表面切削
乾燥させた鉛ボタンをホルダーにセットし、プレス機(株式会社前川試験機製作所製、TypeM)を用いて、プレス成形(20トンプレス約1秒間)を施すことで、鉛ボタンを板状の形状とした。この板状の鉛ボタンを切削盤(ハルツォク・ジャパン株式会社製、SAM-100)によって切削することで、鉛ボタン表面を平坦にした。
【0037】
(6)機器分析による鉛ボタンの分析
プレス成形及び表面切削を行った鉛ボタンに対して以下の装置及び条件で機器分析を行い、Au及びAgの発光強度を求めた。
‐ 装置:スパーク放電発光分光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、ARL4460)
‐ 測定時間:27.5秒
‐ 電極:4mmピン
‐ 検出器:高性能マトリックスフォトダイオード(IL-CCD)
‐ 発光電源:新デジタル発光ソース(デュアルCCS採用)
‐ 最大電流値:200A
‐ 最大継続時間:2500μs
‐ 測光方法:時間分解分光
‐ 温度:16~30℃
‐ 相対湿度:20~80%
‐ 供給ガス:アルゴンガス(99.996%以上、酸素5ppm以下)
【0038】
(7)検量線の作成
実試料の値付けにより決定した各ロットの鉛ボタンのAu及びAgの濃度、並びに本発明の分析方法に従って得られた各ロットの鉛ボタンのAu及びAgの発光強度から、Au及びAgの検量線をそれぞれ作成した。作成したAu検量線及びAg検量線を図1及び2にそれぞれ示す。図1及び2に示されるように、Au検量線及びAg検量線はそれぞれ良好な直線性を示していることがわかる。
【0039】
例A2
実試料にRh、Pd又はPtを段階的に添加して標準試料とし、この標準試料を用いてRh、Pd及びPtの検量線をそれぞれ作成した。
【0040】
(1)検量線用試料の用意
検量線用試料として、可能な限り分析対象成分であるRh、Pd及びPtが含まれていない実試料(リサイクル原料)を用意した。
【0041】
(2)鉛ボタンの作製
るつぼ中に上述した検量線用試料5.0g、所定量の対象成分(すなわちRh、Pd又はPt)、PbO55.0g及び融剤(小麦粉4.0g、ほう砂粉末10.0g、けい砂粉末8.0g、ソーダ灰35.0g及び鉄くぎ1.7g)を加えて混合試料とした。次に、混合試料の入ったるつぼを約900℃に予熱した融解炉中に入れて約10分間加熱した後、炉の温度を約1000℃まで昇温し、約10分間保持させることで混合試料を完全に融解させた。こうして、検量線用試料中の対象成分及びその他の貴金属を鉛ボタン中に捕集した。放冷後、融成物をるつぼから取り出し、鉛ボタンをスラグ塊から分離した。Rh、Pd及びPtの添加量を適宜変えることで、対象成分の濃度が異なる複数の鉛ボタンを作製し、得られた鉛ボタンの重量をそれぞれ測定した。
【0042】
(3)鉛ボタンの前処理及び分析
例A1の(4)~(6)と同様の条件で鉛ボタンの前処理(洗浄、乾燥、プレス成形及び表面切削)及び機器分析を行い、各鉛ボタンにおけるRh、Pd及びPtの発光強度を求めた。
【0043】
(4)検量線の作成
鉛ボタンのRh、Pd及びPt濃度(Rh、Pd及びPtの添加量並びに鉛ボタンの重量から換算したもの)並びに得られたRh、Pd及びPtの発光強度からRh、Pd及びPtの検量線をそれぞれ作成した。作成したRh、Pd及びPtの検量線を図3~5にそれぞれ示す。図3~5に示されるように、Rh、Pd及びPtの検量線はそれぞれ良好な直線性を示していることがわかる。
【0044】
[例B1~B9]
以下に示される例は、洗浄に用いる溶液の種類による分析結果への影響を調べたものである。
【0045】
例B1
被検試料の前処理及び分析を連数2で実施した。
【0046】
(1)被検試料の用意
被検試料として、リサイクル原料を用意した。
【0047】
(2)鉛ボタンの作製
被検試料5.0gをPbO55.0g及び融剤(小麦粉4.0g、ほう砂粉末10.0g、けい砂粉末8.0g、ソーダ灰35.0g及び鉄くぎ1.7g)とともにるつぼに加え、混合試料とした。次に、混合試料の入ったるつぼを約900℃に予熱した融解炉中に入れて約10分間加熱した後、炉の温度を約1000℃まで昇温し、約10分間保持させることで混合試料を完全に融解させた。こうして、被検試料中の貴金属を鉛ボタン中に捕集した。放冷した融成物をるつぼから取り出し、鉛ボタンをスラグ塊から分離し、得られた鉛ボタンの重量を測定した。
【0048】
(3)鉛ボタンの洗浄及び乾燥
得られた鉛ボタンを約90℃の王水(1+1)に10分間浸漬させることにより洗浄を行い、鉛ボタン表面に付着しているスラグを除去した。洗浄後、鉛ボタンを定温乾燥器により乾燥させ、その後、鉛ボタンの重量を再度測定した。
【0049】
(4)鉛ボタンのプレス成形及び表面切削
乾燥させた鉛ボタンをホルダーにセットし、プレス機(株式会社前川試験機製作所製、TypeM)を用いて、プレス成形(20トンプレス約1秒間)を施すことで、鉛ボタンを板状の形状とした。この板状の鉛ボタンを切削盤(ハルツォク・ジャパン株式会社製、SAM-100)によって切削することで、鉛ボタン表面を平坦にした。
【0050】
(5)機器分析による鉛ボタンの分析
プレス成形及び表面切削を行った鉛ボタンに対して例A1と同様の装置及び条件で機器分析を行い、Rh、Ag、Au、Pd及びPtの発光強度をそれぞれ求めた。得られた各貴金属の発光強度並びに例A1及びA2で作成した各貴金属の検量線から、鉛ボタン中に含まれる各貴金属の濃度を算出した。こうして、鉛ボタンの同一平面の異なる箇所を10回分析し、各貴金属の平均濃度、標準偏差及び変動係数を求めた。
【0051】
例B2
鉛ボタンの洗浄工程において、王水(1+1)の代わりに塩酸(1+1)を用いたこと以外は例B1と同様にして、被検試料の前処理及び分析を行った。
【0052】
例B3
鉛ボタンの洗浄工程において、王水(1+1)の代わりに逆王水(1+1)を用いたこと以外は例B1と同様にして、被検試料の前処理及び分析を行った。
【0053】
例B4
鉛ボタンの洗浄工程において、王水(1+1)の代わりに酢酸(1+1)を用いたこと以外は例B1と同様にして、被検試料の前処理及び分析を行った。
【0054】
例B5
鉛ボタンの洗浄工程において、王水(1+1)の代わりにクエン酸(1+1)を用いたこと以外は例B1と同様にして、被検試料の前処理及び分析を行った。
【0055】
例B6
鉛ボタンの洗浄工程において、王水(1+1)の代わりに硫酸(1+1)を用いたこと以外は例B1と同様にして、被検試料の前処理及び分析を行った。
【0056】
例B7
鉛ボタンの洗浄工程において、王水(1+1)の代わりに純水を用いたこと以外は例B1と同様にして、被検試料の前処理及び分析を行った。
【0057】
例B8
鉛ボタンの洗浄工程において、王水(1+1)の代わりに水酸化ナトリウム水溶液(50g/L)を用いたこと以外は例B1と同様にして、被検試料の前処理及び分析を行った。
【0058】
例B9(比較)
鉛ボタンの洗浄工程において、王水(1+1)の代わりに硝酸(1+1)を用いたこと以外は例B1と同様にして、被検試料の前処理及び分析を行った。
【0059】
例B10(比較)
鉛ボタンの洗浄を行わなかったこと以外は例B1と同様にして、被検試料の前処理及び分析を行った。
【0060】
例B1~B10における洗浄工程前後の鉛ボタンの重量が表2に示される。また、得られた分析結果は表3に示されるとおりである。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
表2に示されるように、王水(1+1)、塩酸(1+1)、逆王水(1+1)、酢酸(1+1)、クエン酸(1+1)、硫酸(1+1)、純水又は水酸化ナトリウム水溶液(50g/L)を用いて洗浄を行った例(例B1~B8)では、洗浄前後における鉛ボタンの重量変化が比較的穏やか(重量変化率8%未満)であり、貴金属を含む鉛ボタン自体の溶解を抑えながら、鉛ボタン表面に付着したスラグを効果的に除去できていることがわかる。また、表3に示されるように、例B1~B8は各貴金属濃度の変動係数が小さく、高精度な分析結果を得られていることがわかる。一方、硝酸(1+1)を用いて洗浄を行った例B9では、洗浄前後における鉛ボタンの重量変化が大きく(重量変化率20%超)、洗浄時に鉛ボタン自体が激しく反応し、溶解していることがわかる。
【0064】
[例C1及びC2]
以下に示される例は、複数ロットの被検試料を従来法(Te共沈法)及び本発明の分析方法でそれぞれ分析することで、従来法と比較した本発明の分析精度を確認したものである。
【0065】
例C1
本発明の分析方法に従って複数ロットの被検試料の前処理及び分析を行った。
【0066】
(1)被検試料の用意
被検試料として実試料を8ロット(被検試料番号A~H)用意した。
【0067】
(2)鉛ボタンの作製及び前処理
例B1の(2)~(5)と同様の条件で鉛ボタンの作製及び前処理(洗浄、乾燥、プレス成形及び表面切削)を行った。鉛ボタンは各ロット2個作製した。
【0068】
(3)機器分析による鉛ボタンの分析
前処理を行った鉛ボタンに対して例A1と同様の装置及び条件で機器分析を行い、Rhの発光強度を求めた。得られたRhの発光強度及び例A2で作成したRhの検量線から、鉛ボタン中に含まれる各貴金属の濃度を求め、被検試料の秤取量及び鉛ボタンの重量を基に被検試料中のRh濃度を算出した。こうして、鉛ボタンの同一平面の異なる箇所を4回分析し、平均値を被検試料中のRh濃度とした。以上の操作を作製した各鉛ボタンについて実施し、各ロットの平均濃度、標準偏差及び変動係数を求めた。得られた結果は表4に示されるとおりである。
【0069】
【表4】
【0070】
例C2(比較)
例C1と同様の被検試料について、従来法であるTe共沈法に基づき前処理及び分析を行った。すなわち、被検試料を溶解後、この被検試料溶解液における塩酸濃度を1~2mol/Lとした。次いで、被検試料溶解液にテルルを加えて還元することで金属テルルに貴金属を捕集させた。貴金属を捕集させたテルルをろ過分離し、王水で溶解及び定容して測定試料とした。この測定試料に対してICP発光分光分析装置を用いて貴金属分析を行い、被検試料中のRh濃度を算出した。以上の操作を各ロットにつき連数5で実施し、各ロットの平均濃度、標準偏差及び変動係数を求めた。得られた結果は表5に示されるとおりである。
【0071】
【表5】
【0072】
表4及び5に示されるように、本発明の方法に従って前処理及び分析を行った例C1の分析結果は、従来法(Te共沈法)に関する例C2の分析結果と比べて変動係数が極めて小さく、それ故、従来法と比べて極めて高精度に貴金属の分析を行うことが可能であることがわかる。また、表4に示されるように、本発明の方法によればRh含有量の低い被検試料(被検試料番号E~G)においてもバラつきなく(変動係数0.0%)分析することができるため、貴金属の微量分析にも極めて適していることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5