(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】複数の属性値を持つメンバをグループ化するプログラム、装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230220BHJP
【FI】
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2020016772
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】平田 紀史
(72)【発明者】
【氏名】吉原 貴仁
【審査官】後藤 昂彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-068512(JP,A)
【文献】特開2003-197274(JP,A)
【文献】特開2020-054040(JP,A)
【文献】特開2019-165552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各メンバが第1の属性値及び第2の属性値を有し、複数のメンバをグループ化する装置に搭載されたコンピュータに実行させるプログラムであって、
n個のメンバを含むm個のグループを構成する制約条件を予め定義したグループ定義手段と、
1つ以上のメンバを1つのグループとして、第1の属性値に基づく第1のグループの群と、第2の属性値に基づく第2のグループの群と、第1の属性値及び第2の属性値に基づく第3のグループの群を設定する初期設定手段と、
第1の属性値同士が最も近い第1のグループ同士を組み合わせて第1のグループの群を再構成し、任意の第2のグループが任意の第1のグループに包含される場合、制約条件を満たす限り、その共通集合を第3のグループとして再構成する第1のグループ再構成手段と、
第2の属性値同士が最も近い第2のグループ同士を組み合わせて第2のグループの群を再構成し、任意の第1のグループが任意の第2のグループに包含される場合、制約条件を満たす限り、その共通集合を第3のグループとして再構成する第2のグループ再構成手段と
して、第1のグループ再構成手段及び第2のグループ再構成手段を交互に繰り返す
ようにコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項2】
初期設定手段は、1つのメンバを1つのグループとして、第1の属性値に基づく第1のグループの群と、第2の属性値に基づく第2のグループの群と、第1の属性値及び第2の属性値に基づく第3のグループの群を予め設定する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
第1のグループ再構成手段及び第2のグループ再構成手段は、デンドログラムに基づいてグループ同士を1段ずつ組み合わせる
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
グループ定義手段は、以下のように定義し、
グループのメンバ数 :n、nmin≦n≦nmax
nmin≧1、nmax>1
同一メンバ数nのグループ数 :m
同一メンバ数nのグループの段階:k(メンバ数が少ないグループからの昇順)
グループの段階間のメンバ増分率:U(1<U≦2)
k=1のグループのメンバ数 :scale(1)=nmin
k番目のグループのメンバ数 :scale(k)=floor{U×scale(k-1)}
floor{}:切り上げ整数
K番目のグループのメンバ数 :scale(K)≦nmax
nを増分させつつK段階繰り返す
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項5】
メンバは、蓄電池を持つ需要家であり、
第1の属性値は、消費電力に基づく属性値であり、
第2の属性値は、発電電力に基づく属性値である
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
アグリゲータ機能として、需給調整電力量に応じて、複数の蓄電池それぞれの充放電電力量を制御するために、
各蓄電池の充放電可能電力量の総和が、需要調整電力量から算出可能な、依頼全体の充放電電力量に近くなるように、第3のグループの組み合わせを選択するグループ選択手段と、
組み合わされたグループの各蓄電池に、充放電電力量を指示する蓄電池制御手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
グループ選択手段は、
同一の需要調整電力量に対して、グループの複数の組み合わせを選択し、
同一の需要調整電力量の要求を受信する毎に、グループの組み合わせを変更する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
蓄電池制御手段は、グループ毎に、当該グループの充放電電力量を、各蓄電池に等分する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項6又は7に記載のプログラム。
【請求項9】
各メンバが第1の属性値及び第2の属性値を有し、複数のメンバをグループ化する装置であって、
n個のメンバを含むm個のグループを構成する制約条件を予め定義したグループ定義手段と、
1つ以上のメンバを1つのグループとして、第1の属性値に基づく第1のグループの群と、第2の属性値に基づく第2のグループの群と、第1の属性値及び第2の属性値に基づく第3のグループの群とを予め構成する初期設定手段と、
第1の属性値同士が最も近い第1のグループ同士を組み合わせて第1のグループの群を再構成し、任意の第2のグループが任意の第1のグループに包含される場合、制約条件を満たす限り、その共通集合を第3のグループとして構成する第1のグループ再構成手段と、
第2の属性値同士が最も近い第2のグループ同士を組み合わせて第2のグループの群を再構成し、任意の第1のグループが任意の第2のグループに包含される場合、制約条件を満たす限り、その共通集合を第3のグループとして構成する第2のグループ再構成手段と
を有し、第1のグループ再構成手段及び第2のグループ再構成手段を交互に繰り返すように機能させることを特徴とする装置。
【請求項10】
各メンバが第1の属性値及び第2の属性値を有し、複数のメンバをグループ化する装置のグループ化方法であって、
装置は、
n個のメンバを含むm個のグループを構成する制約条件を予め定義し、
1つ以上のメンバを1つのグループとして、第1の属性値に基づく第1のグループの群と、第2の属性値に基づく第2のグループの群と、第1の属性値及び第2の属性値に基づく第3のグループの群とを予め構成しており、
第1の属性値同士が最も近い第1のグループ同士を組み合わせて第1のグループの群を再構成し、任意の第2のグループが任意の第1のグループに包含される場合、制約条件を満たす限り、その共通集合を第3のグループとして構成する第1のステップと、
第2の属性値同士が最も近い第2のグループ同士を組み合わせて第2のグループの群を再構成し、任意の第1のグループが任意の第2のグループに包含される場合、制約条件を満たす限り、その共通集合を第3のグループとして構成する第2のステップと
を実行し、第1のステップ及び第2のステップを交互に繰り返すように実行する
ことを特徴とする装置のグループ化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、属性値を持つメンバをグループ化する技術に関する。用途としては、需給調整電力量に応じて、充放電電力量を制御するべく、1つ以上の蓄電池を持つ需要家をメンバとしてグループ化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
【0003】
従来、電力量の需給をバランスさせるために、発電側が一方的に電力量の需給調整をするだけでなく、需要家側の蓄電池を遠隔制御によってその電力を充放電させる技術がある。
図1によれば、アグリゲータ装置(電力仲介事業者)1は、需要家の各蓄電池3における電力利用情報を予め取得しているとする。
電力会社システム2は、アグリゲータ装置1へ、需給調整電力量に基づく需給調整要求を送信する。これに対し、アグリゲータ装置1は、需給調整電力量に基づいて、各需要家の蓄電池3における充放電電力量を計算し、その充放電電力量を各蓄電池3へ送信する。蓄電池3は、受信した充放電電力量に応じて、電力を充放電する。
【0004】
また、所定地域で必要となる充放電電力量に対して、管理サーバ(アグリゲータ機能)が、需要家設備(エネルギー貯蔵装置)の各蓄電池の残量等から、当該蓄電池が充放電すべき分担比率を計算する技術もある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、需要家側設備は、管理サーバから分担比率を受信し、その分担比率に基づいて当該蓄電池が充放電すべき分担電力量を計算する。そして、蓄積池は、その分担電力量に応じて充放電を制御する。
【0005】
ここで、アグリゲータ装置1としては、蓄電池毎に充放電電力量や分担比率を計算するために、制御対象となる蓄電池の数が増加するに従って、その計算量が増大する。それによって、計算時間も長くなり、各蓄電池の最新の電力利用情報(例えば残量)を計算結果に反映することができない。例えば需要家の蓄電池に対しては、その残量以上に放電を要求することはできない。蓄電池全ての分担比率の計算に長時間(例えば2時間)を要する場合、最長でその計算時間前の各蓄電池の電力利用情報から計算したものとなる。その場合、蓄電池の残量が既に少なかったりする場合もある。
即ち、最新の電力利用情報を用いて計算しない場合、需給調整電力量と各蓄電池の充放電電力量の総和との間に、誤差を生じることとなる。
【0006】
これに対し、アグリゲータ装置1としては、多数の蓄電池3に対する制御処理の負担を軽減するために、1つ以上の蓄電池3を持つ需要家をメンバとしてグループ化して制御したいと考える。この場合、最も類似する組み合わせから順番にグループ化(クラスタ化)していく階層型クラスタを用いることができる。代表的にはデンドログラムがある(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】「クラスター分析の手法2(階層クラスター分析)」、[online]、[令和2年1月8日検索]、インターネット<URL:https://www.albert2005.co.jp/knowledge/data_mining/cluster/hierarchical_clustering>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
階層型クラスタにおける既存のデンドログラムの場合、最も類似する組合せを検索するための要素値としては、基本的に1つである。即ち、その要素値同士の類似度を比較することによって組合せを順に構築していく。
【0010】
図1のような充放電システムの場合、充電のみならず放電も必要となるために、メンバとなる1つ以上の蓄電池を持つ需要家は、当該需要家の消費電力や発電電力のように複数の要素値に基づいてグループ化する必要がある。
しかしながら、前述したように既存のデンドログラムでは、複数の要素値同士を適用してグループ化することはできない。
【0011】
そこで、本発明は、階層型クラスタを用いて、複数の属性値を持つメンバをグループ化するプログラム、装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、各メンバが第1の属性値及び第2の属性値を有し、複数のメンバをグループ化する装置に搭載されたコンピュータに実行させるプログラムであって、
n個のメンバを含むm個のグループを構成する制約条件を予め定義したグループ定義手段と、
1つ以上のメンバを1つのグループとして、第1の属性値に基づく第1のグループの群と、第2の属性値に基づく第2のグループの群と、第1の属性値及び第2の属性値に基づく第3のグループの群を設定する初期設定手段と、
第1の属性値同士が最も近い第1のグループ同士を組み合わせて第1のグループの群を再構成し、任意の第2のグループが任意の第1のグループに包含される場合、制約条件を満たす限り、その共通集合を第3のグループとして再構成する第1のグループ再構成手段と、
第2の属性値同士が最も近い第2のグループ同士を組み合わせて第2のグループの群を再構成し、任意の第1のグループが任意の第2のグループに包含される場合、制約条件を満たす限り、その共通集合を第3のグループとして再構成する第2のグループ再構成手段と
して、第1のグループ再構成手段及び第2のグループ再構成手段を交互に繰り返す
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0013】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
初期設定手段は、1つのメンバを1つのグループとして、第1の属性値に基づく第1のグループの群と、第2の属性値に基づく第2のグループの群と、第1の属性値及び第2の属性値に基づく第3のグループの群を予め設定する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0014】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
第1のグループ再構成手段及び第2のグループ再構成手段は、デンドログラムに基づいてグループ同士を1段ずつ組み合わせる
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0015】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
グループ定義手段は、以下のように定義し、
グループのメンバ数 :n、nmin≦n≦nmax
nmin≧1、nmax>1
同一メンバ数nのグループ数 :m
同一メンバ数nのグループの段階:k(メンバ数が少ないグループからの昇順)
グループの段階間のメンバ増分率:U(1<U≦2)
k=1のグループのメンバ数 :scale(1)=nmin
k番目のグループのメンバ数 :scale(k)=floor{U×scale(k-1)}
floor{}:切り上げ整数
K番目のグループのメンバ数 :scale(K)≦nmax
nを増分させつつK段階繰り返す
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0016】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
メンバは、蓄電池を持つ需要家であり、
第1の属性値は、消費電力に基づく属性値であり、
第2の属性値は、発電電力に基づく属性値である
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0017】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
アグリゲータ機能として、需給調整電力量に応じて、複数の蓄電池それぞれの充放電電力量を制御するために、
各蓄電池の充放電可能電力量の総和が、需要調整電力量から算出可能な、依頼全体の充放電電力量に近くなるように、第3のグループの組み合わせを選択するグループ選択手段と、
組み合わされたグループの各蓄電池に、充放電電力量を指示する蓄電池制御手段と
してコンピュータを機能させることも好ましい。
【0018】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
グループ選択手段は、
同一の需要調整電力量に対して、グループの複数の組み合わせを選択し、
同一の需要調整電力量の要求を受信する毎に、グループの組み合わせを変更する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0019】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
蓄電池制御手段は、グループ毎に、当該グループの充放電電力量を、各蓄電池に等分する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0020】
本発明によれば、各メンバが第1の属性値及び第2の属性値を有し、複数のメンバをグループ化する装置であって、
n個のメンバを含むm個のグループを構成する制約条件を予め定義したグループ定義手段と、
1つ以上のメンバを1つのグループとして、第1の属性値に基づく第1のグループの群と、第2の属性値に基づく第2のグループの群と、第1の属性値及び第2の属性値に基づく第3のグループの群とを予め構成する初期設定手段と、
第1の属性値同士が最も近い第1のグループ同士を組み合わせて第1のグループの群を再構成し、任意の第2のグループが任意の第1のグループに包含される場合、制約条件を満たす限り、その共通集合を第3のグループとして構成する第1のグループ再構成手段と、
第2の属性値同士が最も近い第2のグループ同士を組み合わせて第2のグループの群を再構成し、任意の第1のグループが任意の第2のグループに包含される場合、制約条件を満たす限り、その共通集合を第3のグループとして構成する第2のグループ再構成手段と
を有し、第1のグループ再構成手段及び第2のグループ再構成手段を交互に繰り返すように機能させることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、各メンバが第1の属性値及び第2の属性値を有し、複数のメンバをグループ化する装置のグループ化方法であって、
装置は、
n個のメンバを含むm個のグループを構成する制約条件を予め定義し、
1つ以上のメンバを1つのグループとして、第1の属性値に基づく第1のグループの群と、第2の属性値に基づく第2のグループの群と、第1の属性値及び第2の属性値に基づく第3のグループの群とを予め構成しており、
第1の属性値同士が最も近い第1のグループ同士を組み合わせて第1のグループの群を再構成し、任意の第2のグループが任意の第1のグループに包含される場合、制約条件を満たす限り、その共通集合を第3のグループとして構成する第1のステップと、
第2の属性値同士が最も近い第2のグループ同士を組み合わせて第2のグループの群を再構成し、任意の第1のグループが任意の第2のグループに包含される場合、制約条件を満たす限り、その共通集合を第3のグループとして構成する第2のステップと
を実行し、第1のステップ及び第2のステップを交互に繰り返すように実行する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のプログラム、装置及び方法によれば、階層型クラスタを用いて、複数の属性値を持つメンバをグループ化することができる。
これによって、需給調整電力量に応じた各蓄電池に対する充放電電力量の決定について、制御対象となる蓄電池の数が増加しても、蓄電池の選択及び充放電電力量の決定における計算量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】本発明におけるアグリゲータ装置の機能構成図である。
【
図4】蓄電池毎の電力利用情報を表す蓄電池データベースである。
【
図5】本発明におけるグループ定義部の処理を表す説明図である。
【
図6】グループ再構成の経緯を表す第0~4段階の説明図である。
【
図7】グループ再構成の経緯を表す第5~7段階の説明図である。
【
図8】グループ再構成の経緯を表す第9、10段階の説明図である。
【
図9】グループ毎の充放電可能電力量を表す説明図である。
【
図10】本発明におけるグループ選択部の処理を表す説明図である。
【
図11】蓄電池数に対する処理時間を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0025】
【0026】
<電力会社システム2>
電力会社システム2は、アグリゲータ装置1へ「需給調整要求」を送信する。
需給調整要求には、「需給調整電力量」及び「時間」が含まれる。例えば以下のようなものである。
時刻2018/4/1 12:00 需給調整要求「2018/4/1 13:00-13:30、140kWh、放電」
充放電電力量の更新の時間間隔を、30分単位としているが、勿論、いずれの時間間隔(例えば5分、10分、15分など)であってもよい。また、需給調整電力量は、電力量であるkWhでなく、電力であるkWでもよい。
尚、需給調整外の時間帯については、例えば、23:00-翌06:59までは充電、07:00-22:59までは放電といったように、スケジュールが予め既定されたものであってもよい。
【0027】
需給調整電力量は、電力会社が供給量(=発電量)をどの程度用意する必要があるか、という意味である。即ち、通常時の供給量に比べて、どの程度調整できるのか、という意味である。
「需給調整電力量」とは、具体的には、需給調整要求のない通常時を基準とした差分(調整量)をいう。
以下では、需給調整要求のない通常時に、蓄電池が充放電を行っていない場合を想定した説明とする。従って、需給調整要求のない通常時は、蓄電池からの充放電電力がゼロであるため、需給調整量と蓄電池からの充放電電力量は一致する。
但し、蓄電池が通常時から充放電を行っている場合は、その充放電電力量も考慮した上で、どの程度調整できるのか、を見積もり、蓄電池の充放電制御を行う必要がある。
【0028】
尚、本発明の実施形態によれば、アグリゲータ装置1と電力会社システム2とは、別システムとして説明するが、勿論、需給調整量を決定する機能を持つ電力会社システム2がアグリゲータ装置1を含むように一体的に構成されたものであってもよい。
【0029】
<蓄電池3>
蓄電池3は、グループ毎に構成され、受信した充放電電力量に従って充放電する。また、蓄電池の電力利用情報を、適宜、アグリゲータ装置1へ送信する。
蓄電池3は、HEMS-GW(Home Energy Management System - GateWay)やHOME-GW(HOME GateWay)、スマートメータ(通信機能が搭載された電力メータ、又は、分電盤に設置されたHEMS-GWと通信可能な電力計)によって管理されるものでもよい。アグリゲータ装置1は、各蓄電池の充放電電力量を、HEMS-GW等へ送信する。そして、HEMS-GW等は、各蓄電池の充放電を制御する。
尚、HEMS-GW又はHOME-GWは、アグリゲータ装置1からOpenADRのデータ形式で受信し、蓄電池へECHONet-Liteのデータ形式で送信するものであってもよい。
【0030】
<アグリゲータ装置1>
アグリゲータ装置1は、電力会社システム2から需給調整要求を受信し、需給調整電力量を知る。
アグリゲータ装置1は、需給調整電力量に応じて、複数の蓄電池それぞれの充放電電力量を制御する。そのために、複数の蓄電池をグループ化し、需給調整電力量に応じて各蓄電池に等分した充放電電力量を決定する。そして、その充放電電力量を、各蓄電池3へ通知する。
これによって、蓄電池の数が増加しても、計算量の増加を抑制し、需給調整電力量に応じた各蓄電池の充放電電力量を算出することができる。
特に、本発明のアグリゲータ装置1は、各需要家をメンバとして、各メンバが持つ第1の属性値及び第2の属性値に基づいて、複数のメンバをグループ化するものである。
【0031】
図3は、本発明におけるアグリゲータ装置の機能構成図である。
【0032】
図3によれば、アグリゲータ装置1は、蓄電池データベース10と、グループ定義部11と、初期設定部12と、第1のグループ再構成部13と、第2のグループ再構成部14と、グループ選択部15と、蓄電池制御部16とを有する。これら機能構成部は、アグリゲータ装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、アグリゲータ装置の需給調整方法としても理解できる。
【0033】
[蓄電池データベース10]
蓄電池データベース10は、蓄電池毎に、電力利用情報を対応付けたものである。電力利用情報は、各蓄電池3から定期的に受信して収集したものである。
【0034】
図4は、蓄電池毎の電力利用情報を表す蓄電池データベースである。
【0035】
蓄電池データベース10は、蓄電池毎に、電力利用情報を対応付けて記憶する。電力利用情報としては、グループ化の要素となる蓄電池(メンバ)毎に、少なくとも2つの属性値を有するとする。
第1の属性値:消費データ(消費電力に基づく属性値)
(例えば平均消費電力、家族人数、オール電化の有無)
第2の属性値:発電データ(発電電力に基づく属性値)
(例えば平均発電電力、住所ID、発電装置種別)
尚、消費電力及び発電電力は、時間帯(例えば1日単位の日付)によって変化するものであるのために、所定時間帯における平均値として表す。
【0036】
[グループ定義部11]
グループ定義部11は、n個のメンバを含むm個のグループを構成する制約条件を予め定義したものである。具体的には、グループ規模を設定するものであり、n個のメンバを含むm個のグループを構成することを、nを増分させつつk段階繰り返し、各グループを定義する。
【0037】
図5は、本発明におけるグループ定義部の処理を表す説明図である。
【0038】
グループ定義部11は、以下のようにパラメータを既定する。
グループのメンバ数 :n、nmin≦n≦nmax
nmin≧1、nmax>1
同一メンバ数nのグループ数 :m
同一メンバ数nのグループの段階:k(メンバ数が少ないグループからの昇順)
グループの段階間のメンバ増分率:U(1<U≦2)
k=1のグループのメンバ数 :scale(1)=nmin
k番目のグループのメンバ数 :scale(k)=floor{U×scale(k-1)}
floor{}:切り上げ整数
K番目のグループのメンバ数 :scale(K)≦nmax
【0039】
そして、グループ定義部11は、全グループの全メンバ数が、蓄電池総数以上となるまで、nを増分させつつk段階繰り返す。具体的には、以下のように段階的に構成される。
scale(k) グループID(メンバ数)
k=1 A1(1),A2(1),A3(1)
1台の蓄電池で構成されるグループが最大3個
k=2 B1(2),B2(2),B3(2)
2台の蓄電池で構成されるグループが最大3個
k=3 C1(4),C2(4),C3(4)
4台の蓄電池で構成されるグループが最大3個
K=k=4 D1(8),D2(8),D3(8)
8台の蓄電池で構成されるグループが最大3個
各グループの蓄電池の上限数kを段階的に設定することによって、制御対象となる蓄電池の数が増加しても、グループ数の増加を抑制することができる。
【0040】
本発明によれば、グループ単位でのみ、充放電電力量を計算することによって、計算量を抑制する。また、あえて、異なるメンバ数nのグループを複数m個構成する。
例えばメンバ数が多いグループのみを作成した場合、それらグループを組み合わせると、需給調整電力量に近い値に調整することが難しい。例えば需給調整電力量140kWhの場合、グループの組み合わせによって1kWhや2kWhのように細かく調整することが難しい。そのために、あえて、少ないメンバ数のグループから多数のメンバ数のグループまで、様々な規模のグループを作成しておく。
【0041】
また、あるメンバ数のグループが1つしかない場合、そのグループを何度も選択する可能性がある。そのために、同じメンバ数のグループを複数m個作成しておく。こにによって、同じグループを何度も選択しないようにする。
例えば、全蓄電池の半数以上に依頼しないと需給調整電力量に満たない場合、メンバ数が最大となるグループが常に選択されることなる。そのためにも、メンバ数が最大となるグループを複数個用意しておくことによって、1つのグループに集中して選択されることがなくなる。
【0042】
[初期設定部12]
初期設定部12は、1つ以上のメンバを1つのグループとして、以下の3つのグループを最初に設定する。
第1の属性値に基づく第1のグループの群
第2の属性値に基づく第2のグループの群
第1の属性値及び第2の属性値に基づく第3のグループの群
ここで、1つのメンバを1つのグループとして予め設定してもよいし、グループ毎に異なるメンバ数として予め設定してもよい。即ち、ある程度、グループが構成された段階から、グループの再構成をすることもできる。
【0043】
図6は、グループ再構成の経緯を表す第0~4段階の説明図である。
【0044】
図6によれば、初期の第0段階(t0)として、以下のようにグループを設定している。
(t0)メンバ数1の6個の第1のグループと、メンバ数1の6個の第2のグループとが予め設定されている。
第1のグループ(消費) :{a}{b}{c}{d}{e}{f}
第2のグループ(発電) :{a}{b}{c}{d}{e}{f}
第3のグループ(消費/発電):{a}{b}{c}{d}{e}{f}
【0045】
[第1のグループ再構成部13・第2のグループ再構成部14]
第1のグループ再構成部13は、定義されたグループの制約の下、第1の属性値(例えば消費電力)が類似するメンバ(蓄電池)をクラスタ化したグループ同士を、階層型クラスタ(デンドログラム)に基づいて1段ずつ組み合わせていく。
同様に、第2のグループ再構成部14は、定義されたグループの制約の下、第2の属性値(例えば発電電力)が類似するメンバ(蓄電池)をクラスタ化したグループ同士を、階層型クラスタ(デンドログラム)に基づいて1段ずつ組み合わせていく。
【0046】
尚、グループ同士の「類似」とは、各グループに含まれるメンバの消費データ又は発電データそれぞれについて、項目毎にベクトルで表したユークリッド距離に基づくものである。ユークリッド距離が最も短いグループ同士を組み合わせていく。
【0047】
これによって、第1のグループ再構成部13は、第1の属性値同士が最も近い第1のグループ同士を組み合わせて第1のグループの群を再構成する。このとき、任意の第2のグループが任意の第1のグループに包含される場合、制約条件を満たす限り、その共通集合(∩)を第3のグループとして再構成する。
また、第2のグループ再構成部14は、第2の属性値同士が最も近い第2のグループ同士を組み合わせて第2のグループの群を再構成する。このとき、任意の第1のグループが任意の第2のグループに包含される場合、制約条件を満たす限り、その共通集合を第3のグループとして再構成する。
そして、第1のグループ再構成部13及び第2のグループ再構成部14を交互に繰り返す。
最終的に同一グループに属する複数の蓄電池(メンバ)は、電力利用情報(消費データ及び発電データ)が類似しているため、同一の充放電電力量を依頼することができる。即ち、アグリゲータ装置1は、グループの選択及び充放電電力量のみを計算すればよく、計算量を抑制することができる。
【0048】
図6の例によれば、グループ定義部11は、最終的に、以下のグループ群の制約下にあるとする。
メンバ数1以下のグループを3個:{1}{1}{1}
メンバ数2以下のグループを3個:{2}{2}{2}
メンバ数4以下のグループを3個:{4}{4}{4}
尚、初期設定段階では、メンバ数1のグループが3個以上あっても許容するものとする。最終的に、グループ定義部11のグループ群の制約に収まるようにする。
メンバ数の制約の集合C(ただし、Cはメンバ数で降順にソート済み)(例:C={4,4,4,2,2,2,1,1,1})と、
再構成中における第3のグループの群のメンバ数の集合S(ただし、Sはメンバ数で降順にソート済み)(例:S={2,1,1,1,1})を比較し、
Sの各要素siのすべてについて、Cの各要素ci≧siを満たす場合に、再構成の結合処理を継続し、
それ以外の場合は結合作業を停止し、結合前の状態に戻って、再構成を再開する。
【0049】
図6によれば、以下のように、グループ再構成の経緯を辿る。
(t1)第1の属性値同士が最も近い第1のグループ同士を組み合わせて第1のグループの群を再構成する。このとき、第2のグループ{a}{b}はそれぞれ、第1のグループ{a,b}に包含されるが、メンバ数1{a}{b}であるために、第3のグループとしてはt0と全く同様となる。
第1のグループ(消費) :{a,b} {c}{d}{e}{f}
第2のグループ(発電) :{a}{b}{c}{d}{e}{f}
第3のグループ(消費/発電):{a}{b}{c}{d}{e}{f}
第3のグループ群のメンバ数の集合S={1,1,1,1,1,1}
制約のメンバ数の集合C={4,4,4,2,2,2,1,1,1}
ci≧siであるため、再構成処理を継続する。
【0050】
(t2)次に、第2の属性値同士が最も近い第2のグループ同士を組み合わせて第2のグループの群を再構成する。このとき、第1のグループ{a,b}は、第2のグループ{a,b}に包含されるため、その共通集合を第3のグループとして再構成する。
第1のグループ(消費) :{a,b} {c}{d}{e}{f}
第2のグループ(発電) :{a,b} {c}{d}{e}{f}
第3のグループ(消費/発電):{a,b} {c}{d}{e}{f}
第3のグループ群のメンバ数の集合S={2,1,1,1,1}
制約のメンバ数の集合C={4,4,4,2,2,2,1,1,1}
ci≧siであるため、再構成処理を継続する。
【0051】
(t3)次に、第1の属性値同士が最も近い第1のグループ同士を組み合わせて第1のグループの群を再構成する。このとき、第2のグループ{c}{d}それぞれは、第1のグループ{c,d}に包含されるが、メンバ数1{c}{d}であるために、第3のグループとしてはt2と全く同様となる。
第1のグループ(消費) :{a,b} {c,d} {e}{f}
第2のグループ(発電) :{a,b} {c}{d}{e}{f}
第3のグループ(消費/発電):{a,b} {c}{d}{e}{f}
第3のグループ群のメンバ数の集合S={2,1,1,1,1}
制約のメンバ数の集合C={4,4,4,2,2,2,1,1,1}
ci≧siを満たすため、再構成処理を継続する。
【0052】
(t4)次に、第2の属性値同士が最も近い第2のグループ同士を組み合わせて第2のグループの群を再構成する。このとき、第1のグループ{e}は、第2のグループ{d,e}に包含されるが、メンバ数1{e}であるために、第3のグループとしてはt3と全く同様となる。
第1のグループ(消費) :{a,b} {c,d} {e}{f}
第2のグループ(発電) :{a,b} {c} {d,e}{f}
第3のグループ(消費/発電):{a,b} {c}{d}{e}{f}
第3のグループ群のメンバ数の集合S={2,1,1,1,1}
制約のメンバ数の集合C={4,4,4,2,2,2,1,1,1}
ci≧siを満たすため、再構成処理を継続する。
【0053】
図7は、グループ再構成の経緯を表す第5~7段階の説明図である。
【0054】
(t5)次に、第1の属性値同士が最も近い第1のグループ同士を組み合わせて第1のグループの群を再構成する。このとき、第2のグループ{f}は、第1のグループ{e,f}に包含されるが、メンバ数1{f}であるために、第3のグループとしてはt4と全く同様となる。
第1のグループ(消費) :{a,b} {c,d} {e,f}
第2のグループ(発電) :{a,b} {c}{d,e}{f}
第3のグループ(消費/発電):{a,b} {c}{d}{e}{f}
第3のグループ群のメンバ数の集合S={2,1,1,1,1}
制約のメンバ数の集合C={4,4,4,2,2,2,1,1,1}
ci≧siを満たすため、再構成処理を継続する。
【0055】
(t6)次に、第2の属性値同士が最も近い第2のグループ同士を組み合わせて第2のグループの群を再構成する。このとき、第1のグループ{a,b}は、第2のグループ{a,b,c}に包含されるため、その共通集合を第3のグループとして再構成する。但し、第3のグループは、既に{a,b}を構成しているので、t5と全く同様となる。
第1のグループ(消費) :{a,b} {c,d} {e,f}
第2のグループ(発電) :{a,b,c} {d,e} {f}
第3のグループ(消費/発電):{a,b} {c}{d}{e}{f}
第3のグループ群のメンバ数の集合S={2,1,1,1,1}
制約のメンバ数の集合C={4,4,4,2,2,2,1,1,1}
ci≧siを満たすため、再構成処理を継続する。
【0056】
(t7)次に、第1の属性値同士が最も近い第1のグループ同士を組み合わせて第1のグループの群を再構成する。このとき、第2のグループ{a,b,c}は、第1のグループ{a,b,c,d}に包含されるため、その共通集合を第3のグループとして再構成する。
第1のグループ(消費) :{a,b,c,d} {e,f}
第2のグループ(発電) :{a,b,c} {d,e} {f}
第3のグループ(消費/発電):{a,b,c}{d}{e}{f}
第3のグループ群のメンバ数の集合S={3,1,1,1}
制約のメンバ数の集合C={4,4,4,2,2,2,1,1,1}
ci≧siを満たすため、再構成処理を継続する。
【0057】
(t8)次に、第2の属性値同士が最も近い第2のグループ同士を組み合わせて第2のグループの群を再構成する。このとき、第1のグループ{a,b,c,d}は、第2のグループ{a,b,c,d,e}に包含されるため、その共通集合{a,b,c,d}を第3のグループとして再構成する。
第1のグループ(消費) :{a,b,c,d} {e,f}
第2のグループ(発電) :{a,b,c,d,e} {f}
第3のグループ(消費/発電):{a,b,c,d} {e}{f}
第3のグループ群のメンバ数の集合S={4,1,1}
制約のメンバ数の集合C={4,4,4,2,2,2,1,1,1}
ci≧siを満たすため、再構成処理を継続する。
【0058】
図8は、グループ再構成の経緯を表す第9、10段階の説明図である。
【0059】
(t9)次に、第1の属性値同士が最も近い第1のグループ同士を組み合わせて第1のグループの群を再構成する。このとき、第2のグループ{a,b,c,d,e}は、第1のグループ{a,b,c,d,e,f}に包含されるため、その共通集合{a,b,c,d}を第3のグループとして再構成する。
第1のグループ(消費) :{a,b,c,d,e,f}
第2のグループ(発電) :{a,b,c,d,e} {f}
第3のグループ(消費/発電):{a,b,c,d,e}{f}
第3のグループ群のメンバ数の集合S={5,1}
制約のメンバ数の集合C={4,4,4,2,2,2,1,1,1}
ci≧siを満たさないため、(t8)の状態に戻り、再構成処理を継続する。
【0060】
(t10)最後に、第2の属性値同士が最も近い第2のグループ同士を組み合わせて第2のグループの群を再構成する。このとき、第1のグループ{e,f}は、第2のグループ{a,b,c,d,e,f}に包含されるため、その共通集合{e,f}を第3のグループとして構成する。
第1のグループ(消費) :{a,b,c,d} {e,f}
第2のグループ(発電) :{a,b,c,d,e,f}
第3のグループ(消費/発電):{a,b,c,d} {e,f}
ci≧siを満たすが、デンドログラムによる結合処理が終了したため、再構成処理も終了し、(t10)における、第1のグループ、第2のグループ、第3のグループを最終的な状態とする。
【0061】
前述した第1のグループ再構成部13及び第2のグループ再構成部14は、所定時間間隔で、又は、所定条件を満たした際に、グループを再構成するものであってもよい。例えば、1週間や1ヶ月といった一定期間、又は、制御対象とする蓄電池が追加されるタイミングで、グループを再構成することが好ましい。
【0062】
図9は、グループ毎の充放電可能電力量を表す説明図である。
【0063】
図9(a)によれば、グループ定義部11によって定義されたグループを表す。グループを表す矩形の大きさと、カッコ内の数字は、各グループのメンバ数の最大値を表す。
図9(b)によれば、例えば6個のグループが構成された例である。
図9(c)によれば、グループ毎に、全ての蓄電池における充放電可能電力量を表したものである。グループを表す矩形の大きさは、各グループの充放電可能電力量の大きさを表す。
図9(d)によれば、各グループを、充放電可能電力量に応じてソートしたものである。
【0064】
図9の例を、
図8におけるt10の第3のグループの群に置き換えると、以下のように2つのグループとなる。
B1={e,f}
C1={a,b,c,d}
【0065】
[グループ選択部15]
グループ選択部15は、通常時の蓄電池からの充放電電力がゼロでなかった場合、各蓄電池の充放電可能電力量の総和が、需要調整電力量から算出可能な、依頼全体の充放電電力量に近くなるように、第3のグループの組み合わせを選択する。依頼全体の充放電電力量は、以下の式で計算される。
依頼全体の充放電電力量=
電力会社システムからの需給調整電力量+通常時の全体の充放電予測量
充放電電力量(プラスが放電、マイナスが充電)
需給調整電力量(プラスが削減依頼、マイナスが増加依頼)
通常時の全体の充放電予測量(プラスが放電、マイナスが充電)
通常時の全体の充放電予測量とは、需給調整がなかった場合に充放電すると予測した電力量である。
そして、例えば、充放電電力量の多い順を優先度として、
図9(d)のように複数の蓄電池がソートされる。尚、複数の蓄電池におけるソートの優先順は、残量の加重平均であってもよい。
【0066】
図10は、本発明におけるグループ選択部の処理を表す説明図である。
【0067】
図10によれば、以下の需給調整要求に対応しようとしている。
時刻2019/4/1 12:00 需給調整要求「2019/4/1 13:00-13:30、140kWh、放電」
尚、ここでは、
図9(d)の6個のグループについて説明する。
【0068】
(S1)最初に、グループC2を選択する。このとき、グループC2の充放電可能電力量は、需要調整電力量よりも低いために、そのまま継続する。
(S2)次に、グループC2+C1を選択する。このとき、グループC2+C1の充放電可能電力量は、需要調整電力量以上となるために、その超える前に選択されたグループC2を確定する。また、グループC2+C1を組み合わせ候補をとして記憶する。
組み合わせ候補:C2+C1
(S3)次に、グループC2+A1を選択する。このとき、グループC2+A1の充放電可能電力量は、需要調整電力量と一致するために、グループC2+A1を組み合わせ候補をとして記憶する。
組み合わせ候補:C2+C1
C2+A1
(S4)次に、グループC2+B2を選択する。このとき、グループC2+B2の充放電可能電力量は、需要調整電力量よりも低いために、そのまま継続する。
(S5)次に、グループC2+B2+B3を選択する。このとき、グループC2+B2+B3の充放電可能電力量は、需要調整電力量以上となるために、その超える前に選択されたグループC2+B2を確定する。また、グループC2+B2+B3を組み合わせ候補をとして記憶する。
組み合わせ候補:C2+C1
C2+A1
C2+B2+B3
(S6)次に、グループC2+B2+A2を選択する。このとき、グループC2+B2+A2の充放電可能電力量は、需要調整電力量と一致するために、グループC2+B2+A2を組み合わせ候補をとして記憶する。
組み合わせ候補:C2+C1
C2+A1
C2+B2+B3
C2+B2+A2
最終的に、全ての組み合わせ候補の中で、充放電可能電力量が最も低い(需給調整電力量に最も近い)グループの組み合わせを選択する。
図8によれば、以下の2つの組み合わせが選択される。
最終的に選択された組み合わせ:C2+A1
C2+B2+A2
このように、グループ選択部15は、同一の需要調整電力量に対して、グループの複数の組み合わせを選択することができる。
【0069】
また、グループ選択部15は、同一の需要調整電力量に対して、グループの複数の組み合わせを選択するものであってもよい。これによって、同一の需要調整電力量の要求を受信する毎に、グループの組み合わせを変更する。特定のグループに依頼が集中するといった状況を回避することができる。
【0070】
[蓄電池制御部16]
蓄電池制御部16は、組み合わされたグループの各蓄電池に、充放電電力量を指示する。このとき、蓄電池制御部16は、グループ毎に、当該グループの充放電電力量を、各蓄電池に等分する。電力利用情報の類似度が高い蓄電池同士がグループ化されているために、充放電電力量も等分することができる。
【0071】
図11は、蓄電池数に対する処理時間を表すグラフである。
【0072】
図11によれば、本発明について、以下のパラメータに設定したとする。
グループのメンバ数 :nmin=1
nmax=32,768
同一メンバ数nのグループ数 :m=1
グループの段階間のメンバ増分率:U=2
ここで、
図11によれば、蓄電池数65,535を制御しようとした場合、蓄電池毎の充放電電力量の計算時間は、6,553.5秒(約109分)必要になるのに対し、グループ毎の充放電電力量の計算時間では、1.6秒となる。例えば30分毎に蓄電池の電力利用情報を取得することができる場合、その充放電電力量の計算時間も30分以内とすることが好ましい。前述の例によれば、蓄電池毎に計算すると109分かかってしまい、30分以内に計算することもできず、需給調整電力量と各蓄電池の充放電電力量の総和との間の誤差も大きくなる。
【0073】
以上、詳細に説明したように、本発明のプログラム、装置及び方法によれば、階層型クラスタを用いて、複数の属性値を持つメンバをグループ化することができる。
これによって、需給調整電力量に応じた各蓄電池に対する充放電電力量の決定について、制御対象となる蓄電池の数が増加しても、蓄電池の選択及び充放電電力量の決定における計算量を抑制することができる。
特に、蓄電池の数が増大しても、計算量が抑制され、計算時間が長くならない。そのために、各蓄電池における新しい電力利用情報を用いて計算することができ、需給調整電力量と各蓄電池の充放電電力量の総和との間の誤差も小さくすることができる。
【0074】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0075】
1 アグリゲータ装置
10 蓄電池データベース
11 グループ定義部
12 初期設定部
13 第1のグループ再構成部
14 第2のグループ再構成部
15 グループ選択部
15 蓄電池制御部
2 電力会社システム
3 蓄電池