(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】ショルダーベルトおよびバッグ
(51)【国際特許分類】
A45C 13/30 20060101AFI20230220BHJP
A45F 3/12 20060101ALI20230220BHJP
A45F 3/02 20060101ALI20230220BHJP
A45F 3/04 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
A45C13/30 Z
A45F3/12 400
A45F3/02 410
A45F3/02
A45F3/04 300
(21)【出願番号】P 2020093208
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加茂 新
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】金山 哲也
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-065462(JP,A)
【文献】特開2001-17227(JP,A)
【文献】特開平11-046859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 13/30
A45F 3/12
A45F 3/02
A45F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向および前記長手方向と交差する短手方向とを有するショルダーベルトであって、
前記長手方向と交差する断面において前記短手方向に互いに間隔を隔てて配置されている第1部および第2部と、
前記第1部と前記第2部との間を接続する第3部とを備え、
前記第3部の伸縮率は、前記第1部および前記第2部の各々の伸縮率よりも高く、
前記第3部の剛軟度は、前記第1部および前記第2部の各々の剛軟度より低く、
前記第1部、前記第2部、及び前記第3部の各々は、
互いに独立した別部材であって、前記長手方向に沿って延在しており、
前記第1部、前記第2部、および前記第3部の各々は、前記ショルダーベルトを備えるバッグを装着した装着者の肩および胸の上部に接触することが予定されている第1領域から、装着者の脇腹に接触することが予定された第2領域まで延在しており、
前記ショルダーベルトの一端には、前記長手方向において前記第2領域に対して前記第1領域とは反対側に位置する第4領域が形成されており、
前記第1部、前記第2部、及び前記第3部の各々の前記長手方向の一端は、前記第4領域に接続され、
前記第1部、前記第2部、及び前記第3部の各々の前記長手方向の他端は、前記ショルダーベルトの他端まで延びている、ショルダーベルト。
【請求項2】
前記第3部は、前記第1部の内部に配置されておりかつ前記第1部に接続されている第1部分と、前記第2部の内部に配置されておりかつ前記第2部に接続されている第2部分と、前記第1部分および前記第2部分の外部に配置されておりかつ前記第1部分と前記第2部分とを接続している第3部分とを含む、請求項1に記載のショルダーベルト。
【請求項3】
前記第1部および前記第2部の各々は、
平面視において前記第1部分または前記第2部分の少なくとも一部と重なるように配置されている芯材と、
前記断面において、前記第1部分または前記第2部分、および前記芯材を囲むように配置されており、かつ前記第1部分または前記第2部分と固定されている包材とを含む、請求項2に記載のショルダーベルト。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のショルダーベルトと、
前記ショルダーベルトに固定されている本体収納部とを備える、バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショルダーベルトおよびバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
肩への負荷を低減させるために、ショルダーベルトと肩との接地面積を増やし、荷重を分散させ圧力を低下させる試みが行われている。
【0003】
特開2001-17227号公報には、ショルダーベルトを体の複雑な三次元形状に追従させるために、ショルダーベルトの長手方向の断面において、芯材を含む両端部と、帯状テープを含み両端部間を接続する中央部とを含むショルダーベルトが提案されている。さらに、特開2001-17227号公報には、ショルダーベルトの強度を負担するために、帯状テープにはポリプロピレンなどの強靭な素材が用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ショルダーベルトは、ショルダーベルトに通し、腕が動いていない下げた状態で着用者の肩および腕が静的な状態にあるときには、体の三次元形状に追従でき荷重を分散させることはできる。一方で、腕を上げ下げするときなどの着用者の肩および腕が動的な状態にあるときには、上記三次元形状の変化に十分に追従できず、ショルダーベルトと肩との接地面積が小さくなる場合があった。
【0006】
本発明者らによる研究の結果、帯状テープを含む中央部の剛性が高いために両端部および中央部がフラットとなりやすい、かつ伸び縮みが少ないことがその原因と考えられた。
【0007】
本発明の主たる目的は、従来のショルダーベルトと比べて、腕を上げ下げするときなどの着用者の肩および腕が動的な状態にあるときにもショルダーベルトと肩との接地面積が損なわれないショルダーベルトおよび該ショルダーベルトを備えるバッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るショルダーベルトは、長手方向および長手方向と交差する短手方向とを有するショルダーベルトであって、長手方向と交差する断面において短手方向に互いに間隔を隔てて配置されている第1部および第2部と、第1部と第2部との間を接続する第3部とを備える。第3部の伸縮率は、第1部および第2部の各々の伸縮率よりも高い。第3部の剛軟度は、第1部および第2部の各々の剛軟度よりも低い。
【0009】
上記ショルダーベルトにおいて、第1部および第2部の各々は、長手方向に沿って延在している。第3部は、長手方向において第1部および第2部の各々の一端と他端との間に延在している。
【0010】
上記ショルダーベルトにおいて、第1部、第2部、および第3部の各々は、ショルダーベルトの長手方向の一端と他端との間に延在している。
【0011】
上記ショルダーベルトにおいて、第3部は、第1部の内部に配置されておりかつ第1部に接続されている第1部分と、第2部の内部に配置されておりかつ第2部に接続されている第2部分と、第1部分および第2部分の外部に配置されておりかつ第1部分と第2部分とを接続している第3部分とを含む。第1部および第2部の各々は、平面視において第1部分または第2部分の少なくとも一部と重なるように配置されている芯材と、断面において、第1部分または第2部分、および芯材を囲むように配置されており、かつ第1部分または第2部分と固定されている包材とを含む。
【0012】
本発明に係るバッグは、上記ショルダーベルトと、ショルダーベルトの長手方向の一端および他端に固定されている本体収納部とを備える。上記バッグは、一例として、バッグパックまたはゴルフバッグである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来のショルダーベルトと比べて、腕を上げ下げするときなどの着用者の肩および腕が動的な状態にあるときにもショルダーベルトと肩との接地面積が損なわれないショルダーベルトおよび該ショルダーベルトを備えるバッグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態に係るショルダーベルトの正面図である。
【
図2】本実施の形態に係るショルダーベルトの背面図である。
【
図3】
図1中の矢印III-IIIから視た断面図である。
【
図4】本実施の形態に係るショルダーベルトを備えるバッグの一例であるバッグパックを示す図である。
【
図5】本実施の形態に係るショルダーベルトを備えるバッグの他の一例であるゴルフバッグを示す図である。
【
図6】装着者の頚側点および肩峰点と、水平面に対する頚側点および肩峰点の傾斜角とを説明するための模式図である。
【
図7】水平面に対する頚側点および肩峰点の傾斜角が比較的小さい場合(いわゆるいかり肩)の、本実施の形態に係るショルダーベルトの第1部および第2部と肩との接触状態を示す模式図である。
【
図8】水平面に対する頚側点および肩峰点の傾斜角が比較的大きい場合(いわゆるなで肩)の、本実施の形態に係るショルダーベルトの第1部および第2部と肩との接触状態を示す模式図である。
【
図9】
図8に示される場合に柔軟圧電センサを用いて測定された、肩にかかる荷重分布を示す図である。
【
図10】
図8に示される場合に柔軟圧電センサを用いて測定された、肩にかかる荷重分布を三次元的に表した図である。
【
図11】腕が下げられている第1状態(P1)、腕が水平方向に沿って上げられている第2状態(P2)、および腕が鉛直方向に沿って上げられている第3状態(P3)を説明するための図である。
【
図12】
図11に示される第1状態での、頚側点と肩峰点との間の距離を示す図である。
【
図13】
図11に示される第2状態での、頚側点と肩峰点との間の距離を示す図である。
【
図14】
図11に示される第3状態での、頚側点と肩峰点との間の距離を示す図である。
【
図15】装着者が本実施の形態に係るショルダーベルトに通した腕を水平方向に沿うように上げている状態での、該ショルダーベルトの変形の態様を説明するための図である。
【
図16】装着者が本実施の形態に係るショルダーベルトに通した腕を鉛直方向に沿うように上げている状態での、該ショルダーベルトの変形の態様を説明するための図である。
【
図17】水平面に対する頚側点および肩峰点の傾斜角が比較的小さい場合(いわゆるいかり肩)の、比較例に係るショルダーベルトの外側および内側と肩との接触状態を示す模式図である。
【
図18】水平面に対する頚側点および肩峰点の傾斜角が比較的大きい場合(いわゆるなで肩)の、比較例に係るショルダーベルトの外側および内側と肩との接触状態を示す模式図である。
【
図19】
図18に示される場合に柔軟圧電センサを用いて測定された、肩にかかる荷重分布を示す図である。
【
図20】
図18に示される場合に柔軟圧電センサを用いて測定された、肩にかかる荷重分布を三次元的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0016】
本実施の形態に係るショルダーベルトは、バッグに備え付けられて、装着者の肩および腕が通されるものである。
図1、
図2に示されるショルダーベルト10Lは、
図4に示されるショルダーバッグ100において装着者の左側の腕、肩および胸が通されるものである。なお、
図4に示されるショルダーバッグ100において装着者の右側の腕、肩および胸が通されるショルダーベルト10Rは、ショルダーベルト10Lと左右対称の関係にある。以下、ショルダーベルト10Lにおいて、
図4に示されるバッグ100の外側を表側、その反対側を裏側とし、表側の面を正面、裏側の面を裏面とする。
【0017】
図1および
図2に示されるように、ショルダーベルト10Lは、長手方向と、長手方向と交差する短手方向とを有している。
【0018】
図1~
図3に示されるように、ショルダーベルト10Lは、第1部1、第2部2、および第3部3を備える。第1部1および第2部2の各々は、上記長手方向に沿って延在している。第3部3は、上記長手方向において第1部1および第2部2の各々の一端と他端との間に延在している。言い換えると、第3部3は、第1部1と第2部2との間を塞いでいる。
【0019】
図3に示されるように、上記長手方向と交差する断面において、第1部1および第2部2は、短手方向に互いに間隔を隔てて配置されている。第3部3は、第1部1と第2部2との間を接続している。第1部1は、
図4に示されるバッグ100において第3部3よりも外側に配置される。第2部2は、
図4に示されるバッグ100において第3部3よりも内側に配置される。第3部3は、
図4に示されるバッグ100において第1部1と第2部2との間に配置される。
【0020】
第3部3の伸縮率は、第1部1および第2部2の各々の伸縮率よりも高い。ここで、第1部1、第2部2、および第3部3の各伸縮率は、JIS規格(JIS L 1096:2010)に定められた伸長弾性率であり、例えば当該規格に定められたB-1法(定荷重法)に基づいて測定される。
【0021】
第3部3の柔軟性は、第1部1および第2部2の各々の柔軟性よりも高い。つまり、第3部3は、第1部1および第2部2の各々より柔らかい。第1部1、第2部2、および第3部3の各々の柔軟性は、例えばJIS規格(JIS L 1096:2010)に定められた剛軟度であり、例えば当該規格に定められたA法(45°カンチレバー法)に基づいて測定される。つまり、第3部3の剛軟度は、第1部1および第2部2の各々の剛軟度よりも低い。
【0022】
図1および
図2に示されるように、ショルダーベルト10Lは、例えば上記長手方向において第1領域11,第2領域12,第3領域13、および第4領域14に区分される。第1領域11は、第3領域13を介して、第2領域12と接続されている。第4領域14は、第2領域12対して第3領域13とは反対側に配置されており、かつ第2領域12に接続されている。言い換えると、第1領域11、第3領域13、第2領域12、および第4領域14は、この記載順に接続されている。第1部1、第2部2、および第3部3の各々は、ショルダーベルト10Lの長手方向において第1領域11から第2領域12まで延在している。
【0023】
なお、第1領域11は、
図4に示されるバッグ100が装着されたときに、装着者の肩および胸の上部に接触することが予定された領域である。第2領域12は、
図4に示されるバッグ100が装着されたときに、装着者の脇腹に接触することが予定された領域である。第3領域13は、
図4に示されるバッグ100が装着されたときに、装着者の胸の下部および脇腹に接触することが予定された領域である。第4領域14には、
図4に示されるバッグ100の本体収納部101の背面下部に固定されたテープ102と連結される連結部材5が固定されている。
【0024】
第1領域11,第2領域12,および第3領域13の各々の基本的な構成は、互いに同じである。第1部1、第2部2、および第3部3の各々は、第1領域11,第2領域12,および第3領域13の各々に配置されている。言い換えれば、第1領域11,第2領域12,および第3領域13の各々において、第1部1、第2部2、および第3部3の各々の基本的な構成は、互いに同じである。
【0025】
第1領域11において、第1部1、第2部2、および第3部3の各々は、第1領域11の長手方向に沿って延在している。第2領域12において、第1部1、第2部2、および第3部3の各々は、第2領域12の長手方向に沿って延在している。第1領域11の長手方向および第2領域12の長手方向は、ショルダーベルト10Lの長手方向に沿っている。第1領域11の短手方向および第2領域12の短手方向は、ショルダーベルト10Lの短手方向に沿っている。
【0026】
第1領域11の長手方向は、第2領域12の長手方向に対してなだらかな屈曲を成すように、設定されている。言い換えると、平面視において、ショルダーベルト10Lは屈曲部を有している。
【0027】
第2領域12の長手方向の長さは、第1領域11の長手方向の長さよりも短く、第3領域13の長手方向の長さよりも長い。第3領域13の短手方向の幅は、第1領域11の短手方向の最大幅W1と同等もしくは狭く、第2領域12の短手方向の最小幅W2よりも広いのが望ましい。
【0028】
第1領域11における第3部3の短手方向の幅W3は、第2領域12における第3部3の短手方向の幅W3と同等以上であるのが望ましい。
【0029】
ショルダーベルト10Lの一例では、第1領域11の短手方向の最大幅W1は50mm以上90mm以下、第2領域12の短手方向の最小幅W2は30mm以上70mm以下、第3部3の短手方向の幅W3は5mm以上15mm以下であるのが望ましい。
【0030】
図1~
図3に示されるように、第1部1および第2部2の各々は、例えば複数の部材の集合体として構成されている。
【0031】
図3に示されるように、第3部3は、第1部1の内部に配置されておりかつ第1部1に接続されている第1部分3aと、第2部2の内部に配置されておりかつ第2部2に接続されている第2部分3bと、第1部分3aおよび第2部分3bの外部に配置されておりかつ第1部分3aと第2部分3bとを接続している第3部分3cとを含む。第3部3において、第3部分3cのみが表出している。
【0032】
図3に示されるように、第1部1は、芯材1aと、包材1bとを有している。芯材1aは、平面視において第3部3の第1部分3aの少なくとも一部と重なるように配置されている。包材1bは、上記長手方向に垂直な断面において、第1部分3aおよび芯材1aを囲むように配置されており、かつ第1部分3aと固定されている。包材1bは、例えば表面部1b1と、裏面部1b2と、外縁部1b3とを有している。なお、包材1bは、外縁部1b3を有していなくてもよい。表面部1b1は、上記断面において、第1部分3aに対して芯材1a側に配置されている。裏面部1b2は、上記断面において、第1部分3aに対して芯材1aとは反対側に配置されている。外縁部1b3は、上記断面において、第3部3の第1部分3a、芯材1a、表面部1b1、および裏面部1b2よりも外側に配置されている。第3部3の第1部分3a、表面部1b1、および外縁部1b3は、芯材1aを囲むように配置されている。
【0033】
図3に示されるように、第3部3の第1部分3a、芯材1a、表面部1b1、裏面部1b2、および外縁部1b3は、例えば縫着部材6aによって互いに縫着されている。縫着部材6aは、例えば、第1部分3a、芯材1a、表面部1b1、および裏面部1b2の各々の外側部分と、外縁部1b3の内側部分とを縫着している。さらに、第3部3の第1部分3a、表面部1b1、および裏面部1b2は、例えば縫着部材7aによって互いに縫着されている。縫着部材7aは、例えば、第1部分3a、表面部1b1、および裏面部1b2の各々の内側部分を縫着している。
【0034】
図3に示されるように、第2部2は、例えば上記断面において第3部3の第3部分3cに対して第1部1と実質的に線対称の関係を有している。なお、第2部2は、上記断面において第3部3の第3部分3cに対して第1部1と実質的に線対称の関係を有していなくてもよい。例えば、上記短手方向における第1部および第2部の各々の幅は、互いに異なっていてもよい。
【0035】
図3に示されるように、第2部2は、芯材2aと、包材2bとを有している。芯材2aは、平面視において第3部3の第2部分3bの少なくとも一部と重なるように配置されている。包材2bは、上記長手方向に垂直な断面において、第2部分3bおよび芯材2aを囲むように配置されており、かつ第2部分3bと固定されている。包材2bは、例えば表面部2b1と、裏面部2b2と、外縁部2b3とを有している。なお、包材2bは、外縁部2b3を有していなくてもよい。表面部2b1は、上記断面において、第2部分3bに対して芯材2a側に配置されている。裏面部2b2は、上記断面において、第2部分3bに対して芯材2aとは反対側に配置されている。外縁部2b3は、上記断面において、第3部3の第2部分3b、芯材2a、表面部2b1、および裏面部2b2よりも外側に配置されている。第3部3の第2部分3b、表面部2b1、および外縁部2b3は、芯材2aを囲むように配置されている。
【0036】
図3に示されるように、第3部3の第2部分3b、芯材2a、表面部2b1、裏面部2b2、および外縁部2b3は、例えば縫着部材6bによって互いに縫着されている。縫着部材6bは、例えば、第2部分3b、芯材2a、表面部2b1、および裏面部2b2の各々の外側部分と、外縁部2b3の内側部分とを縫着している。さらに、第3部3の第2部分3b、表面部2b1、および裏面部2b2は、例えば縫着部材7bによって互いに縫着されている。縫着部材7bは、例えば、第2部分3b、表面部2b1、および裏面部2b2の各々の内側部分を縫着している。
【0037】
ショルダーベルト10Lの一例では、第3部3を構成する材料は、メッシュ、エアメッシュ、ニット、およびストレッチ素材からなる群から選択される少なくとも1つを含む。芯材1aを構成する材料は、EPE、EVA、およびスポンジからなる群から選択される少なくとも1つを含む。包材1bを構成する材料は、PU、ポリエステル、ナイロン、綿、アクリルおよびTPUからなる群から選択される少なくとも1つを含む。なお、第1部1および第2部2の各々に含まれる複数の部材は、縫着に限られず、接着などの任意の方法によって互いに固定されていればよい。
【0038】
図4に示されるように、ショルダーベルト10Lを備えるバッグ100は、例えばバックパックとして構成されている。
図4に示されるように、バッグ100は、
図1~
図3に示されるショルダーベルト10Lと、ショルダーベルト10Rと、本体収納部101とを備える。ショルダーベルト10Lの第1領域11は、本体収納部101の上部に接続されている。ショルダーベルト10Lの連結部材5は、本体収納部101の下部に固定されたテープ102と連結している。例えば、ショルダーベルト10Lの連結部材5には、本体収納部101の下部に固定されたテープ102が通されている。好ましくは、連結部材5およびテープ102は、テープ102において本体収納部101に固定されている一端と連結部材5に通されている部分との間の長さを調整するように設けられている。
【0039】
なお、
図1~
図4に示されるショルダーベルト10L,10Lは平面視において屈曲部を有しているが、本実施の形態に係るショルダーベルトは平面視において屈曲部を有していなくてもよい。
【0040】
図5は、平面視において屈曲部を有していないショルダーベルト10を備えるバッグ110を示している。ショルダーベルト10は、ショルダーベルト10Lと基本的に同様の構成を備えるが、平面視において屈曲部を有していない点で、ショルダーベルト10Lとは異なる。バッグ110は、例えばゴルフバッグとして構成されている。
【0041】
次に、本実施の形態に係るショルダーベルト10L,10R,10の作用効果を説明する。まず、
図6~
図10を参照して、装着者の肩および腕が静的な状態にあるときのショルダーベルト10L,10R,10の作用効果を、
図17~
図19に示される比較例との対比に基づいて説明する。
【0042】
ショルダーベルト10L,10R,10は、
図6に示される装着者の頚側点と肩峰点との間に位置する領域の少なくとも一部と接触することが予定されている。第3部3は、装着者の頚側点と肩峰点との間に位置する領域の一部と重なるように配置されることが予定されている。
【0043】
頚側点および肩峰点を結ぶ仮想線分が水平面に対して成す傾斜角、および頚側点と肩峰点との間の距離は、装着者毎に異なる。
【0044】
図17および
図18に示される比較例に係るショルダーベルトは、第3部3を備えていない。比較例に係るショルダーベルトにおいて外側及び内側の伸縮率は、短手方向の両端部の伸縮率と同等である。比較例に係るショルダーベルトにおいて短手方向の中央部の柔軟性は、短手方向の両端部の柔軟性と同等である。
図17に示されるように、比較例に係るショルダーベルトが上記傾斜角が比較的小さい、いわゆるいかり肩の、装着者に装着されたときには、ショルダーベルトの短手方向の端部が頚側点の近傍部分にのみ接触しやすい。そのため、バッグの荷重は頚側点の近傍部分に集中しやすい。また、
図18に示されるように、比較例に係るショルダーベルトが上記傾斜角が比較的大きい、いわゆるなで肩の、装着者に装着されたときには、肩峰点の近傍部分にのみ接触しやすい。そのため、バッグの荷重は肩峰点の近傍部分に集中しやすい。このように、比較例に係るショルダーベルトでは、上記傾斜角によっては、荷重を頚側点と肩峰点との間に広く分散させることは困難である。
【0045】
これに対し、本実施の形態に係るショルダーベルト10L、10R,10は、第3部3を備え、第3部3の伸縮率が第1部1および第2部2の各々の伸縮率よりも高く、かつ第3部3の剛軟度は、第1部1および第2部2の各々の剛軟度よりも低い。そのため、第3部3が、上記短手方向、ならびに、上記長手方向および上記短手方向の各々に直交する方向に変形しやすく、上記短手方向および上記直交する方向における第1部1および第2部2の相対的な位置関係が容易に変更され得る。
【0046】
図7に示されるように、本実施の形態に係るショルダーベルト10L、10R,10が上記傾斜角が比較的小さい、いわゆるいかり肩の、装着者に装着されたときには、第1部1が肩峰点の近傍部分に接触するとともに、第2部2が頚側点の近傍部分に接触できる。また、
図8に示されるように、本実施の形態に係るショルダーベルト10L、10R,10が上記傾斜角が比較的大きい、いわゆるなで肩の、装着者に装着されたときにも、第1部1が肩峰点の近傍部分に接触するとともに、第2部2が頚側点の近傍部分に接触できる。このように、本実施の形態に係るショルダーベルト10L、10R,10によれば、上記傾斜角によらず、荷重を頚側点と肩峰点との間に広く分散させることができる。なお、
図7および
図8では、第1部1および第2部2のみが模式的に図示されている。
【0047】
図9および
図10ならびに
図19および
図20は、ショルダーベルト10Lおよび比較例に係るショルダーベルトの各々について、同一条件下で測定された、同一の装着者の肩にかかる荷重分布を示す図である。装着者は、
図8および
図18に示されるように上記傾斜角が比較的大きいなで肩であった。荷重分布は、装着者の肩に固定された柔軟圧電センサを用いて測定した。
図9および
図19に示される測定領域の角Aおよび角Bは、
図10および
図20における測定領域の角Aおよび角Bに対応する。
図9および
図19において、右側が頚側点側であり、左側が肩峰点側である。また
図9および
図19において、上側が装着者の背中側であり、下側が装着者の胸側である。
図9および
図19において、荷重が加えられていない領域は、背景色(2本の傾斜線よりも外側の領域の色)と同じ色で示されており、それ以外の領域の色の濃淡が当該領域に加えられた荷重の大小を示している。
図10および
図20において、体表面から外側に向けて突出している複数の棒状データの高さおよび色の濃淡が当該領域に加えられた荷重の大小を示している。なお、
図9および
図19において、右側に位置する傾斜線は頚側点を通ることを示し、左側に位置する傾斜線は肩峰点を通ることを示している。
【0048】
図19および
図20に示されるように、比較例に係るショルダーベルトでは、荷重が肩峰点の近傍部分に集中しており、かつ荷重が加えられている領域には比較的大きな荷重が加えられていた。
【0049】
これに対し、
図9および
図10に示されるように、ショルダーベルト10Lでは、荷重が頚側点の近傍部分および肩峰点の近傍部分に分散しており、荷重が加えられている複数の領域に加えられていた最大荷重は、比較例に係るショルダーベルトにて測定された最大荷重よりも小さかった。
【0050】
このように、本実施の形態に係るショルダーベルト10L、10R,10は、比較例に係るショルダーベルトと比べて、上記静的な状態において、体の複雑な三次元形状に追従できることが確認された。
【0051】
次に、
図11~
図16を参照して、装着者の肩および腕が動的な状態にあるときのショルダーベルト10L,10R,10の作用効果を説明する。
【0052】
図11~
図14は、上記動的な状態にあるときの、頚側点と肩峰点との間の距離が変動することを説明するための図である。
図11に示されるように、腕が下ろされている第1状態P1と、腕が水平方向に沿うように上げられている第2状態P2と、腕が鉛直方向に沿うように上げられている第3状態P3とを考える。
【0053】
図12~
図14に示されるように、第2状態P2での頚側点と肩峰点との間の距離L2(
図13参照)は、第1状態P1での頚側点と肩峰点との間の距離L1(
図12参照)よりも短く、第3状態P3での頚側点と肩峰点との間の距離L3(
図14参照)よりも長くなる。
【0054】
表1は、上記距離L1,距離L2、および距離L3の個体差を示す。6人の被験者の各々について、上記距離L1,距離L2、および距離L3を測定し、かつその変化率を算出した。
【0055】
【0056】
表1に示されるように、全被験者で、距離L2は距離L1よりも短く距離L3よりも長かった。また、比率(L2-L1)/L1は全被験者で絶対値で30%以上であり、比率(L3-L1)/L1は全被験者で絶対値で50%以上であった。つまり、全被験者で、頚側点と肩峰点との間の距離は、上記動的な状態にあるときに大きく変化することが確認された。また、距離L1,距離L2,距離L3、比率(L2-L1)/L1、および比率(L3-L1)/L1の各々には、個体差が確認された。
【0057】
本実施の形態に係る、上述のように、第3部3を備え、第3部3の伸縮率が第1部1および第2部2の各々の伸縮率よりも高く、かつ第3部3の剛軟度は、第1部1および第2部2の各々の剛軟度よりも低い。そのため、第3部3が、上記短手方向、ならびに、上記長手方向および上記短手方向の各々に直交する方向に変形しやすく、上記短手方向および上記直交する方向における第1部1および第2部2の相対的な位置関係が容易に変更され得る。そのため、本実施の形態に係るショルダーベルト10L、10R,10は、上記動的な状態において、体の三次元形状の変化に追従できる。
【0058】
図15に示されるように、上記第2状態では、肩に接触している第1領域11の第3部3が短手方向に直線状に伸びることにより、短手方向において当該第3部と連なる第1部1および第2部2は短手方向に開くことができる。一方、
図16に示されるように、上記第3状態では、肩に接触している第1領域11の第3部3が下方に向かって凸状に屈曲することにより、短手方向において当該第3部3と連なる第1部1および第2部2も下方に向かって凸状に屈曲し得る。そのため、上記第3状態では、上記第2状態と比べて、短手方向において第1部1および第2部2は短手方向に閉じることができる。このように、ショルダーベルト10L,10R,10では、第2状態および第3状態の各々において、第1領域11は肩の三次元形状の変化に追従できるため、第1領域11と肩との接触面積は広くなる。
【0059】
また、
図15および
図16に示されるように、脇下にとおされている第2領域12は、上記第2状態および上記第3状態において、上述した肩に接触している第1領域11とは反対の挙動を示す。具体的には、
図15に示されるように、上記第2状態では、脇の下に通されている第2領域12の第3部3が短手方向に縮む。これにより、ショルダーベルト10L,10R,10では、上記第2状態において、第2領域12は脇腹との接触面積を十分に確保しながらも、脇への食い込み、腕および脇腹との干渉が起こりにくい。一方、
図16に示されるように、上記第3状態では、脇の下に通されている第2領域12の第3部3が短手方向に沿って伸びる。これにより、ショルダーベルト10L,10R,10では、上記第3状態において第2領域12と脇腹との接触面積が十分に確保されるため、上記動的な状態においてバッグ100,110の挙動が安定する。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 第1部、1a,2a 芯材、1b,2b 包材、1b1,2b1 表面部、1b2,2b2 裏面部、1b3,2b3 外縁部、2 第2部、3 第3部、3a 第1部分、3b 第2部分、3c 第3部分、5 連結部材、6a,7a 縫着部材、10,10L,10R ショルダーベルト、11 第1領域、12 第2領域、13 第3領域、14 第4領域、100,110 バッグ、101 本体収納部、102 テープ。