(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】ソレノイド駆動回路
(51)【国際特許分類】
H01F 7/18 20060101AFI20230220BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
H01F7/18 P
F16K31/06 310D
(21)【出願番号】P 2020104292
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 新治
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-290110(JP,A)
【文献】特開2003-007530(JP,A)
【文献】実開昭57-30467(JP,U)
【文献】実開昭50-144245(JP,U)
【文献】特開2007-024281(JP,A)
【文献】特開2011-187520(JP,A)
【文献】特開2017-077171(JP,A)
【文献】特開昭51-051753(JP,A)
【文献】実開昭52-100557(JP,U)
【文献】特開平5-152126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/18
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源電圧を入力して電磁弁駆動用のソレノイドコイルを通電するソレノイド駆動回路であって、
電圧入力端子に外部電源が接続されるとともに電圧出力端子に前記ソレノイドコイルが接続され、スイッチング素子を有し、変動する入力電圧に対して一定電圧を出力するDC/DCコンバータと、
抵抗とコンデンサにより構成され、前記DC/DCコンバータの電圧出力端子と接続され、前記ソレノイドコイルへの電圧出力時間を計測するタイマ回路と、
を備え、
前記DC/DCコンバータは、
前記DC/DCコンバータのスイッチング素子を制御する制御部と、
前記タイマ回路に接続される切換時期判定用端子と、
を有し、
前記制御部は、前記切換時期判定用端子の状態に基づいて前記DC/DCコンバータの出力電圧を、前記ソレノイドコイルの通電開始から前記タイマ回路により予め定めた時間が経過すると、それまでの電圧よりも低い電圧に切り換える
ことを特徴とするソレノイド駆動回路。
【請求項2】
前記DC/DCコンバータは、SEPIC回路構造をなしていることを特徴とする請求項1に記載のソレノイド駆動回路。
【請求項3】
前記タイマ回路の前記コンデンサには、ダイオードを介した放電経路が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のソレノイド駆動回路。
【請求項4】
前記DC/DCコンバータと前記ソレノイドコイルとの間において前記ソレノイドコイルに対しサージ電圧対策用のダイオードを並列接続してなることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のソレノイド駆動回路。
【請求項5】
前記外部電源と前記DC/DCコンバータとの間における正極ライン及び負極ラインの少なくとも一方に誤配線対策用のダイオードを設けてなることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のソレノイド駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイド駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のソレノイド駆動回路においては、
図7に示すように、ソレノイドコイル200と吸着トランジスタ201と保持トランジスタ202と制限抵抗203とタイマ回路204を備えている。タイマ回路204はコンデンサ205と抵抗206を備える。スイッチ207がオンすると吸着トランジスタ201及び保持トランジスタ202がオンして吸着トランジスタ201を通じてソレノイドコイル200に駆動電流が供給される。スイッチ207がオンした後の特定時間が経過した時にタイマ回路204により吸着トランジスタ201がオフして保持トランジスタ202を通じてソレノイドコイル200に駆動電流より小さな保持電流が供給される。このように、タイマ回路204と制限抵抗203の組み合わせで省電力を実現しており、高い電流でプランジャを駆動させた後、コンデンサ205を用いたタイマ回路204で一定時間後に電流経路をトランジスタ201で切り換え、保持電流を下げるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示のソレノイド駆動回路は、供給電圧の変動に伴いソレノイドコイル200に流れる電流が変化するため、例えば、電圧が高いときは大きく発熱する。また、タイマ回路204を用いてコンデンサ205の充電動作で駆動電流から保持電流に切り換えるが、入力する電圧が変動するとコンデンサ205の充電速度が変わるため、切り換えタイミングが不安定になる。
【0005】
本発明の目的は、ソレノイドコイルの発熱を安定化するとともに切り換えタイミングを安定化することができるソレノイド駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのソレノイド駆動回路は、外部電源電圧を入力して電磁弁駆動用のソレノイドコイルを通電するソレノイド駆動回路であって、電圧入力端子に外部電源が接続されるとともに電圧出力端子に前記ソレノイドコイルが接続され、スイッチング素子を有し、変動する入力電圧に対して一定電圧を出力するDC/DCコンバータと、抵抗とコンデンサにより構成され、前記DC/DCコンバータの電圧出力端子と接続され、前記ソレノイドコイルへの電圧出力時間を計測するタイマ回路と、を備え、前記DC/DCコンバータは、前記DC/DCコンバータのスイッチング素子を制御する制御部と、前記タイマ回路に接続される切換時期判定用端子と、を有し、前記制御部は、前記切換時期判定用端子の状態に基づいて前記DC/DCコンバータの出力電圧を、前記ソレノイドコイルの通電開始から前記タイマ回路により予め定めた時間が経過すると、それまでの電圧よりも低い電圧に切り換えることを要旨とする。
【0007】
これによれば、DC/DCコンバータは、入力電圧が変動しても出力電圧を一定にすることができるので、外部電源からの供給電圧の変動に対してソレノイドコイルへの印加電圧が安定し、ソレノイドコイルの発熱を安定化することができる。また、制御部により、切換時期判定用端子の状態に基づいてDC/DCコンバータの出力電圧が、ソレノイドコイルの通電開始からタイマ回路により予め定めた時間が経過すると、それまでの電圧よりも低い電圧に切り換えられる。このとき、供給電圧が変動してもタイマ回路への印加電圧が一定であるのでコンデンサの充電速度も安定し、切り換えタイミングを安定化することができる。
【0008】
また、ソレノイド駆動回路において、前記DC/DCコンバータは、SEPIC回路構造をなしているとよい。
また、ソレノイド駆動回路において、前記タイマ回路の前記コンデンサには、ダイオードを介した放電経路が形成されているとよい。
【0009】
また、ソレノイド駆動回路において、前記DC/DCコンバータと前記ソレノイドコイルとの間において前記ソレノイドコイルに対しサージ電圧対策用のダイオードを並列接続してなるとよい。
【0010】
また、ソレノイド駆動回路において、前記外部電源と前記DC/DCコンバータとの間における正極ライン及び負極ラインの少なくとも一方に誤配線対策用のダイオードを設けてなるとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ソレノイドコイルの発熱を安定化するとともに切り換えタイミングを安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態におけるソレノイド駆動回路の回路図。
【
図2】作用を説明するためのソレノイド駆動回路の回路図。
【
図3】作用を説明するためのソレノイド駆動回路の回路図。
【
図4】(a),(b),(c),(d)は入力電圧、第1切換時期判定用端子のレベル、出力電圧、第2切換時期判定用端子のレベルについてのタイムチャート。
【
図5】第2切換時期判定用端子のレベル、第1切換時期判定用端子のレベル、モードを説明するための説明図。
【
図7】背景技術を説明するためのソレノイド駆動回路の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
ソレノイド駆動回路は、空気圧アクチュエータ(エアオペレート弁、シリンダ)を駆動制御する空気圧バルブに用いることができる。
【0014】
図1に示すように、ソレノイド駆動回路10は、外部電源電圧を入力して電磁弁駆動用のソレノイドコイル100を通電して電磁弁のプランジャの吸着動作を行わせることにより流体の流れを制御する。ソレノイド駆動回路10は、制御基板に設けられている。
【0015】
ソレノイド駆動回路10は、DC/DCコンバータ20とタイマ回路30を備える。DC/DCコンバータ20を介してソレノイドコイル100へ電圧を印加する。
制御基板に設けられるDC/DCコンバータ20は、SEPIC(Single Ended Primary Inductor Converter)回路構造をなしている。DC/DCコンバータ20は、電圧入力端子P1と、電圧出力端子P2と、第1切換時期判定用端子P3と、第2切換時期判定用端子P4と、グランド端子P5とを備える。
【0016】
DC/DCコンバータ20は、コイル21と、スイッチング素子22と、コンデンサ23と、コイル24と、スイッチング素子25と、コンデンサ26と、制御部27と、電圧センサ28を備える。スイッチング素子22,25は、例えば、MOSFETにより構成されている。
【0017】
DC/DCコンバータ20の電圧入力端子P1にはスイッチ40を介して外部電源90の正極が接続されており、外部電源90の正極とDC/DCコンバータ20との間における正極ラインL1にスイッチ40を設けた構成となっている。スイッチ40は図示しない制御機器により駆動される。外部電源90の負極はダイオード41を介してグランド端子P5と接続されており、外部電源90の負極とDC/DCコンバータ20との間における負極ラインL2に誤配線対策用のダイオード41を設けた構成となっている。ダイオード41はアノードがグランド端子P5側、カソードが外部電源90の負極側となっている。ダイオード41により、入力電圧の誤配線による逆電圧からDC/DCコンバータ20を保護することができるようになっている。
【0018】
DC/DCコンバータ20の電圧出力端子P2にソレノイドコイル100の一端が接続されるとともに、ソレノイドコイル100の他端がグランド端子P5と接続される。
DC/DCコンバータ20において、電圧入力端子P1にコイル21の一端が接続され、コイル21の他端にコンデンサ23の一方の電極が接続されている。コンデンサ23の他方の電極にはスイッチング素子25を介して電圧出力端子P2が接続されている。コイル21とコンデンサ23とを繋ぐ配線途中の接続点αは、スイッチング素子22を介してグランド端子P5と接続されている。コンデンサ23とスイッチング素子25とを繋ぐ配線途中の接続点βは、コイル24を介してグランド端子P5と接続されている。スイッチング素子25と電圧出力端子P2とを繋ぐ配線途中の接続点γは、コンデンサ26を介してグランド端子P5と接続されている。電圧センサ28により電圧出力端子P2とグランド端子P5との電位差である出力電圧Voutが検出される。
【0019】
電圧センサ28により検出された出力電圧Voutは制御部27に送られる。DC/DCコンバータ20における制御部27には、DC/DCコンバータ20のスイッチング素子22及びスイッチング素子25のゲートが接続され、制御部27は、スイッチング素子22,25をオンオフ制御する。詳しくは、スイッチング素子22,25のオンオフのパルス列における1周期に対するオンオフの継続時間の比であるデューティ比を制御する。
【0020】
SEPIC回路構造をなすDC/DCコンバータ20は、変動する入力電圧に対して一定電圧を出力することができ、入力側のスイッチング素子22のデューティ比及び出力側のスイッチング素子25のデューティ比を調整することにより出力直流電圧が調整される。具体的には、スイッチング素子22がオンかつスイッチング素子25がオフによりコイル24からのエネルギによる電流がスイッチング素子22とコンデンサ23を通って流れるとともに入力電圧Vinからのエネルギによる電流がコイル21とスイッチング素子22を通って流れる。また、スイッチング素子22がオフかつスイッチング素子25がオンによりコイル24から電流がスイッチング素子25を通ってコンデンサ26とソレノイドコイル100に流れるとともにコイル21から電流がコンデンサ23とスイッチング素子25を通ってコンデンサ26とソレノイドコイル100に流れる。スイッチング素子22のデューティ比(スイッチング素子25のデューティ比)を調整することにより出力電圧Voutが調整される。
【0021】
DC/DCコンバータ20の外部において、電圧出力端子P2とグランド端子P5との間にはコンデンサ50が接続される。また、電圧出力端子P2とグランド端子P5との間において、抵抗51と発光ダイオード(LED)52の直列回路が接続される。発光ダイオード(LED)52は、ソレノイドコイル100が通電されている時(電圧印加されている時)に点灯する。
【0022】
電圧出力端子P2とグランド端子P5との間においてダイオード53が接続され、ダイオード53はアノードがグランド端子P5側、カソードが電圧出力端子P2側となっている。ソレノイドコイル100と並列接続されたダイオード53により、ソレノイドコイル100のサージ電圧からDC/DCコンバータ20を保護することができるようになっている。
【0023】
タイマ回路30は、直列接続された抵抗31とコンデンサ32により構成され、直列回路の一端がDC/DCコンバータ20の電圧出力端子P2と接続されるとともに、他端がグランド端子P5に接続されている。タイマ回路30により、ソレノイドコイル100への電圧出力時間を計測することができるようになっている。
【0024】
抵抗31とコンデンサ32による直列回路であるタイマ回路30は、ソレノイドコイル100と並列に接続されている。
DC/DCコンバータ20の第1切換時期判定用端子P3は、コンデンサ32と抵抗31との配線途中の接続点aと接続されている。DC/DCコンバータ20の第2切換時期判定用端子P4は、抵抗60及びスイッチ40を介して外部電源90の正極と接続される。第2切換時期判定用端子P4は、スイッチ40が閉じられると抵抗60を介して外部電源電圧が印加されHレベルにされる。
【0025】
コンデンサ32と抵抗31とを繋ぐ配線途中の接続点aは放電用のダイオード42を介して電圧出力端子P2と接続されており、タイマ回路30のコンデンサ32に、ダイオード42を介した符号L3,L4,L5,L6に示す経路によるグランド端子P5に至る放電経路を形成した構成となっている。ダイオード42はアノードがコンデンサ32側、カソードが電圧出力端子P2側となっている。
【0026】
制御部27には、第1切換時期判定用端子P3及び第2切換時期判定用端子P4が接続されている。制御部27は、第2切換時期判定用端子P4のレベルがHレベルに立ち上がると、そのタイミング(立ち上がりエッジ)でDC/DCコンバータ20の出力電圧Voutを5Vにしてソレノイドコイル100の通電(駆動)を開始するようになっている。また、制御部27は、第1切換時期判定用端子P3の状態に基づいてDC/DCコンバータ20の出力電圧Voutを、第2切換時期判定用端子P4のレベルがHレベルになる立ち上がりエッジでのソレノイドコイル100の通電開始から、タイマ回路30により第1切換時期判定用端子P3のレベルが閾値に達する予め定めた時間が経過すると、それまでの電圧(吸着電流に対応する電圧)よりも低い電圧(保持電流に対応する電圧)に切り換えることができるようになっている。電磁弁のプランジャ吸着動作に対応する吸着電流よりもプランジャの位置を保持する保持電流を小さくすることにより消費電力の低減が図られる。
【0027】
次に、作用について説明する。
図4(a)には入力電圧Vinの推移を示す。
図4(b)には第1切換時期判定用端子P3のレベルの推移を示す。
図4(c)には出力電圧Voutの推移を示す。
図4(d)には第2切換時期判定用端子P4のレベルの推移を示す。
【0028】
図4(a),(b),(c),(d)において、t1のタイミングでスイッチ40が閉じられてDC/DCコンバータ20に入力電圧Vinが供給される。すると、
図4(d)に示すように第2切換時期判定用端子P4がHレベルになる。これをトリガとして、制御部27は、
図4(c)に示すように、DC/DCコンバータ20の出力電圧Voutとして5Vを出力させる。
【0029】
DC/DCコンバータ20の出力電圧Voutを5Vにすることにより、
図2に経路Ru1で示すように、ソレノイドコイル100にプランジャ吸着電流が流れてプランジャ吸着動作が行われる。また、DC/DCコンバータ20の出力電圧Voutが5Vのときにおいて、
図2に経路Ru2で示すように、タイマ回路30において抵抗31を介してコンデンサ32に電流が流れ、充電が行われる。
【0030】
DC/DCコンバータ20の出力電圧Voutによりタイマ回路30のコンデンサ32が充電されていき、
図4(b)に示すように第1切換時期判定用端子P3のレベルが上昇する。第1切換時期判定用端子P3のレベルが閾値に達するt2のタイミングにおいて制御部27は、それまでのLレベルからHレベルになったとして、
図4(c)に示すように、DC/DCコンバータ20の出力電圧Voutとして3.3Vを出力させる。
【0031】
つまり、制御部27は、第1切換時期判定用端子P3の状態に基づいてDC/DCコンバータ20の出力電圧を、ソレノイドコイル100の通電開始からタイマ回路30により予め定めた時間T1(例えば50msec)が経過すると、それまでの5Vよりも低い3.3Vに切り換える。
【0032】
DC/DCコンバータ20の出力電圧Voutが3.3Vとなることによりソレノイドコイル100にプランジャ位置保持電流が流れてプランジャの位置が保持される。また、DC/DCコンバータ20の出力電圧Voutを5Vから3.3Vに切り換えることによりプランジャの吸着動作を行いつつ電磁弁の駆動に係る消費電力の低減が図られる(省電力化が図られる)。
【0033】
図5には、第2切換時期判定用端子P4のレベル及び第1切換時期判定用端子P3のレベルに対応するモードを示す。
図5に示すように、第2切換時期判定用端子P4がLレベルかつ第1切換時期判定用端子P3がLレベルのとき、DC/DCコンバータ20の出力電圧Voutをゼロにして出力が出ないシャットダウンモード(電磁弁駆動停止モード)にされる。第2切換時期判定用端子P4がHレベルかつ第1切換時期判定用端子P3がLレベルのとき、DC/DCコンバータ20の出力電圧Voutを5Vに固定する5V固定モードにされる。第2切換時期判定用端子P4がHレベルかつ第1切換時期判定用端子P3がHレベルのとき、DC/DCコンバータ20の出力電圧Voutを3.3Vに固定する3.3V固定モードにされる。
【0034】
図4(a),(b),(c),(d)に示すように、t3のタイミングでスイッチ40が開けられると、DC/DCコンバータ20への入力電圧の供給が停止される。すると、出力電圧Voutがゼロとなり、
図3において経路Ru3で示す放電経路で、ダイオード42を介してタイマ回路30のコンデンサ32に溜まった電荷が放電される。また、第2切換時期判定用端子P4がLレベルになる。
【0035】
ソレノイドコイル100への通電停止に伴いサージ電圧が発生し、
図3に経路Ru4で示すようにダイオード53を介してサージ電流が流れ、ソレノイドコイル100のサージ電圧に対して、ソレノイドコイル100と並列接続されたダイオード53によりDC/DCコンバータ20が保護される。
【0036】
このように、DC/DCコンバータ20は、入力電圧が変動しても出力電圧を一定にすることができるので、外部電源90からの供給電圧の変動に対してソレノイドコイル100への印加電圧が安定し、ソレノイドコイル100の発熱を安定化することができる。
【0037】
また、制御部27により、切換時期判定用端子P3,P4の状態に基づいてDC/DCコンバータ20の出力電圧Voutが、ソレノイドコイル100の通電開始からタイマ回路30により予め定めた時間(起動時間)T1が経過すると、それまでの電圧よりも低い電圧に切り換えられる。このとき、供給電圧が変動してもタイマ回路30への印加電圧が一定であるのでコンデンサ32の充電速度(閾値に達する時間)も安定し、切り換えタイミングを安定化することができる。
【0038】
このようにして、電源電圧によらずに使用できる省電力型フリー電源回路として使用できる。
以下、詳しく説明する。
【0039】
SEPIC回路構造をなすDC/DCコンバータ20を用いることにより、ソレノイドコイル100への印加電圧が安定し、ソレノイドコイル100の温度上昇を低減できる。
図4(a)に示すように、ソレノイドコイル100を、予め定めた時間(例えば100msec)を1周期として駆動する場合、供給電圧が高くなったときにソレノイド印加電圧も高くなると、ソレノイドコイル100に発生する熱も大きくなりソレノイドコイル100が高温になり、次回の駆動の時までにソレノイドコイル100を冷却しにくくなる状況が生じる。これに対し本実施形態のようにDC/DCコンバータ20は、入力電圧Vinが高くなっても出力電圧Voutは一定であると、入力電圧Vinが変動してもDC/DCコンバータ20の出力電圧Voutは5V固定もしくは3.3V固定であり、ソレノイドコイル100に発生する熱は小さいまま一定である。これにより、ソレノイドコイル100の発熱量を一定に保つことができ、次回の駆動の時までにソレノイドコイル100を冷却することができる。
【0040】
また、DC/DCコンバータ20の出力電圧をタイマ回路30(抵抗31、コンデンサ32)に印加するため、供給電圧が変動しても(入力電圧Vinが変動しても)充電電圧が閾値に達するまでの時間は一定であり、吸着電流の通電時間、即ち、起動時間を一定にすることができる。例えば、5Vに固定する時間T1を一定(例えば50msec)にすることができる。
【0041】
具体的には、スイッチ40を介して入力電圧VinがDC/DCコンバータ20に入力されるが、DC/DCコンバータ20へは入力電圧として2.7~38Vが供給され、DC/DCコンバータ20から5Vが出力され、ソレノイドコイル100とタイマ回路30(抵抗31、コンデンサ32)に電圧が印加される。タイマ回路30のコンデンサ32が充電され、コンデンサ32の充電電圧が上昇し、DC/DCコンバータ20の第1切換時期判定用端子P3は電圧が上昇していき、第1切換時期判定用端子P3のレベルが閾値に達すると、DC/DCコンバータ20の出力電圧は3.3Vにされる。
【0042】
特許文献1に開示のソレノイド駆動回路においては、供給電圧の変動に対してソレノイドコイル200に流れる電流が変化するため、電圧が低くなると電流も小さくなり、プランジャの動作不良につながる懸念がある。本実施形態ではDC/DCコンバータ20の出力電圧Voutが一定であり、ソレノイドコイル100に流れる電流が下がることなくプランジャの動作が不良になることもない。即ち、供給電圧が変動してもDC/DCコンバータ20の出力電圧Vout、即ち、ソレノイドコイル100に印加する電圧を一定にでき、プランジャの動作不良を防止することができる。
【0043】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)外部電源電圧を入力して電磁弁駆動用のソレノイドコイル100を通電するソレノイド駆動回路10の構成として、電圧入力端子P1に外部電源90が接続されるとともに電圧出力端子P2にソレノイドコイル100が接続され、スイッチング素子22,25を有し、変動する入力電圧Vinに対して一定電圧を出力するDC/DCコンバータ20と、抵抗31とコンデンサ32により構成され、DC/DCコンバータ20の電圧出力端子P2と接続され、ソレノイドコイル100への電圧出力時間を計測するタイマ回路30と、を備える。DC/DCコンバータ20は、DC/DCコンバータ20のスイッチング素子22,25を制御する制御部27と、タイマ回路30に接続される切換時期判定用端子としての第1切換時期判定用端子P3と、を有する。制御部27は、第1切換時期判定用端子P3の状態に基づいてDC/DCコンバータ20の出力電圧Voutを、ソレノイドコイル100の通電開始からタイマ回路30により予め定めた時間T1が経過すると、それまでの電圧よりも低い電圧に切り換える。
【0044】
よって、変動する入力電圧Vinに対して一定電圧を出力するDC/DCコンバータ20を用いるとともにDC/DCコンバータ20の電圧出力端子P2にタイマ回路30を接続することにより、ソレノイドコイル100の発熱を安定化するとともに切り換えタイミングを安定化することができる。
【0045】
(2)DC/DCコンバータ20は、SEPIC回路構造をなしているので、昇圧及び降圧することができ、実用的である。
(3)タイマ回路30のコンデンサ32には、ダイオード42を介した放電経路(L3,L4,L5,L6)が形成されているので、早期にコンデンサ32に溜まった電荷を抜くことができる。
【0046】
(4)DC/DCコンバータ20とソレノイドコイル100との間においてソレノイドコイル100に対しサージ電圧対策用のダイオード53を並列接続したので、サージ電圧対策を講じることができる。
【0047】
(5)外部電源90とDC/DCコンバータ20との間における負極ラインL2に誤配線対策用のダイオード41を設けたので、誤配線の対策を講じることができる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0048】
〇スイッチング素子を有するDC/DCコンバータとして、入力電圧が変動しても昇圧・降圧で出力電圧が一定になるように対応できるSEPIC回路構造をなすDC/DCコンバータを用いたが、これに限ることなく、スイッチング素子を有するDC/DCコンバータとして、入力電圧が変動しても昇圧で出力電圧が一定になるように対応できるDC/DCコンバータを用いても、入力電圧が変動しても降圧で出力電圧が一定になるように対応できるDC/DCコンバータを用いてもよい。
【0049】
〇
図1においてはDC/DCコンバータ20は、抵抗60及びスイッチ40を介して外部電源90の正極と接続される第2切換時期判定用端子P4を有していたが、これに代わり、
図6に示すように、これを無くしてもよい。つまり、
図1の制御部27は第1切換時期判定用端子P3と第2切換時期判定用端子P4により
図4(a),(b),(c),(d)に示すように第2切換時期判定用端子P4のレベルの立ち上がりエッジをトリガとしてソレノイドコイル100の通電開始から予め定めた時間T1の経過をモニタしたが、これに代わり、
図6に示すように、制御部27は第1切換時期判定用端子P3のみを用いて第1切換時期判定用端子P3のレベルが上昇し始めたことをトリガとしてコンデンサ32の充電電位が閾値に達したら予め定めた時間T1が経過したと判定してもよい。
【0050】
〇
図1、
図6での放電用のダイオード42を介したコンデンサ32の放電ラインを無くす構成とすることも可能であり、ダイオード42を介した放電ラインによらずにコンデンサ32に溜まった電荷を例えば抵抗31とソレノイドコイル100を介して放電することも可能である。
【0051】
〇
図1、
図6において外部電源90とDC/DCコンバータ20との間における負極ラインL2に誤配線対策用のダイオード41を設けたが、外部電源90とDC/DCコンバータ20との間における正極ラインL1に誤配線対策用のダイオードを設けてもよい。この場合、ダイオードのアノードが外部電源90の正極側となるとともにカソードがDC/DCコンバータ20の電圧入力端子P1側となる。他にも、外部電源90とDC/DCコンバータ20との間における正極ラインL1及び負極ラインL2の両方に誤配線対策用のダイオードを設けてもよい。要は、外部電源90とDC/DCコンバータ20との間における正極ラインL1及び負極ラインL2の少なくとも一方に誤配線対策用のダイオードを設ければよい。
【0052】
○スイッチング素子22,25は、MOSFETの他にもIGBT等により構成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…ソレノイド駆動回路、20…DC/DCコンバータ、22…スイッチング素子、25…スイッチング素子、27…制御部、30…タイマ回路、31…抵抗、32…コンデンサ、41…誤配線対策用のダイオード、42…ダイオード、53…サージ電圧対策用のダイオード、90…外部電源、100…ソレノイドコイル、L1…正極ライン、L2…負極ライン、P1…電圧入力端子、P2…電圧出力端子、P3…第1切換時期判定用端子、T1…予め定めた時間、Vin…入力電圧、Vout…出力電圧。