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特許7229981イントロデューサセットおよびダイレータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】イントロデューサセットおよびダイレータ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20230220BHJP
【FI】
A61M25/06 556
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020188409
(22)【出願日】2020-11-12
(62)【分割の表示】P 2017536239の分割
【原出願日】2016-01-07
(65)【公開番号】P2021035568
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】15150306.7
(32)【優先日】2015-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モラン エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】アボウロースン ワリード
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198262(JP,A)
【文献】国際公開第2011/004821(WO,A1)
【文献】特表2006-520626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0131443(US,A1)
【文献】特開平6-86823(JP,A)
【文献】実開平3-5443(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位部分、近位部分、および内側表面を備えて可撓性材料で作製された管状本体を有するイントロデューサシースであって、前記近位部分は、患者の管の中に挿入されるように構成され、それによって医療デバイスが前記イントロデューサシースを通して前記患者の管の中に挿入されることができる、イントロデューサシースと、
近位部分、遠位部分、および外側表面を備えた本体を有するダイレータであって、前記イントロデューサシースの中に挿入可能であり、したがって、その近位部分は、前記ダイレータが前記イントロデューサシースに挿入されるとき、前記イントロデューサシースの近位に延びる、ダイレータと、
を含む、患者の身体における血管への通路を提供するためのイントロデューサセットであって、
前記イントロデューサシースの前記管状本体は、0.3mm以下の壁厚(d)を有し、
前記ダイレータおよび前記イントロデューサシースの少なくとも一方は、前記イントロデューサシースの前記管状本体に補剛を分与する補剛構造を含み、前記補剛構造は、解放されるか、取り除かれるかによって非活動化されるか、または、解放および取り除き以外の方法で非活動化されることができ、
前記補剛構造は、相互に関して並進可能である第1および第2の要素と、前記第1および第2の要素の少なくとも一方を他方に関して前記ダイレータの長手方向に並進させるための作動機構と、を備える、ことを特徴とするイントロデューサセット。
【請求項2】
請求項1に記載のイントロデューサセットであって、前記作動機構の回転は、前記長手方向への並進を生じさせることを特徴とする、イントロデューサセット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のイントロデューサセットであって、前記イントロデューサシースの前記管状本体は、0.2mmより小さい壁厚を有する、ことを特徴とするイントロデューサセット。
【請求項4】
請求項3に記載のイントロデューサセットであって、前記壁厚は、0.15mmより小さいことを特徴とするイントロデューサセット。
【請求項5】
請求項3に記載のイントロデューサセットであって、前記壁厚は、0.1mmより小さいことを特徴とするイントロデューサセット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のイントロデューサセットであって、前記補剛構造は、活動化するとき、前記ダイレータの前記外側表面の少なくとも一部分と、前記イントロデューサシースの前記管状本体の前記内側表面の少なくとも一部分と、の間に表面摩擦を生じさせ、非活動化するとき、摩擦を少ししかまたは全く生じさせないことを特徴とする、イントロデューサセット。
【請求項7】
請求項6に記載のイントロデューサセットであって、前記補剛構造が非活動化するとき、前記ダイレータの前記本体は、前記イントロデューサシースの前記管状本体の内側直径より小さい第1の外側直径を有し、前記補剛構造が活動化するとき、前記ダイレータの少なくとも一部分は、前記第1の外側直径より大きい第2の外側直径を有し、したがって、前記ダイレータの前記外側表面が、前記イントロデューサシースの前記管状本体の前記内側表面に接触する、ことを特徴とするイントロデューサセット。
【請求項8】
請求項7に記載のイントロデューサセットであって、前記ダイレータの前記一部分は、前記ダイレータの少なくとも近位部分であることを特徴とする、イントロデューサセット。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のイントロデューサセットであって、前記第2の要素は、管状本体を有し、前記第1の要素は、前記第2の要素の前記管状本体を通って前記第1の要素の近位端部を越えて延びる、ことを特徴とするイントロデューサセット。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のイントロデューサセットであって、前記補剛構造は、前記第1および第2の要素に係合する少なくとも1つの変形可能な部材を含み、したがって、前記長手方向への並進は、前記ダイレータの前記長手方向の前記変形可能な部材の減圧と、それによる前記変形可能な部材の半径方向の縮小とを生じさせることを特徴とするイントロデューサセット。
【請求項11】
請求項10に記載のイントロデューサセットであって、前記変形可能な部材は、前記ダイレータの一部を形成し、非圧縮状態では、前記ダイレータの前記本体と実質上同じ直径を有することを特徴とするイントロデューサセット。
【請求項12】
請求項10または11に記載のイントロデューサセットであって、前記変形可能な部材は、リング形状または管形状である、ことを特徴とするイントロデューサセット。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか1項に記載のイントロデューサセットであって、前記変形可能な部材は、ソフトポリマから成ることを特徴とする、イントロデューサセット。
【請求項14】
請求項10から12のいずれか1項に記載のイントロデューサセットであって、前記変形可能な部材は、シリコーンから成ることを特徴とする、イントロデューサセット。
【請求項15】
請求項10または11に記載のイントロデューサセットであって、前記変形可能な部材は、前記ダイレータの前記長手方向に延びる複数のスリットを含み、前記長手方向の減圧時に前記変形可能な部材が半径方向に圧潰するのを可能にする、ことを特徴とするイントロデューサセット。
【請求項16】
請求項1から9のいずれか1項に記載のイントロデューサセットであって、前記補剛構造は、前記第1の要素に取り付けられて前記第2の要素に係合する少なくとも1つの変形可能な部材を含み、前記変形可能な部材は、前記第2の要素が前記長手方向に並進するときに半径方向に変形するために、前記第2の要素の傾斜付けされた端部部分上を摺動可能な複数のタブを含む、ことを特徴とするイントロデューサセット。
【請求項17】
請求項10から16のいずれか1項に記載のイントロデューサセットであって、前記変形可能な部材は、前記第1および第2の要素の少なくとも一方と別々にまたは一体に形成されることを特徴とする、イントロデューサセット。
【請求項18】
イントロデューサシースで使用するために構成されるダイレータであって、前記ダイレータは、外側表面を備えた本体を含み、前記ダイレータは、前記外側表面と、前記イントロデューサシースの内側表面と、の間の表面摩擦を減少させる目的で、前記本体の断面を減少させるのを可能にするように圧潰可能である、ことを特徴とし、
前記ダイレータは、相互に関して並進可能である第1および第2の要素と、
前記第1および第2の要素の少なくとも一方を他方に関して前記ダイレータの長手方向に並進させるための作動機構と、をさらに含むことを特徴とする、ダイレータ。
【請求項19】
請求項18に記載のダイレータであって、前記作動機構の回転は、前記長手方向への並進を生じさせることを特徴とする、ダイレータ。
【請求項20】
請求項18または19に記載のダイレータであって、前記第2の要素は、管状本体を有し、前記第1の要素は、前記第2の要素の前記管状本体を通って前記第1の要素の近位端部を越えて延びることを特徴とする、ダイレータ。
【請求項21】
請求項18から20のいずれか1項に記載のダイレータであって、前記第1および第2の要素に係合する少なくとも1つの変形可能な部材を含み、したがって、前記長手方向への並進は、前記ダイレータの前記長手方向の前記変形可能な部材の減圧と、それによる前記変形可能な部材の半径方向の縮小とを生じさせることを特徴とする、ダイレータ。
【請求項22】
請求項21に記載のダイレータであって、前記変形可能な部材は、前記ダイレータの一部を形成し、非圧縮状態では、前記ダイレータの前記本体と実質上同じ直径を有することを特徴とする、ダイレータ。
【請求項23】
請求項21または22に記載のダイレータであって、前記変形可能な部材は、リング形状または管形状であることを特徴とする、ダイレータ。
【請求項24】
請求項21から23のいずれか1項に記載のダイレータであって、前記変形可能な部材は、ソフトポリマから成ることを特徴とする、ダイレータ。
【請求項25】
請求項21から23のいずれか1項に記載のダイレータであって、前記変形可能な部材は、シリコーンから成ることを特徴とする、ダイレータ。
【請求項26】
請求項21または22に記載のダイレータであって、前記変形可能な部材は、前記ダイレータの前記長手方向に延びる複数のスリットを含み、前記長手方向の減圧時に前記変形可能な部材が半径方向に圧潰するのを可能にすることを特徴とする、ダイレータ。
【請求項27】
請求項18から20のいずれか1項に記載のダイレータであって、前記第1の要素に取り付けられて前記第2の要素に係合する少なくとも1つの変形可能な部材を含み、前記変形可能な部材は、前記第2の要素が前記長手方向に並進するときに半径方向に変形するために、前記第2の要素の傾斜付けされた端部部分上を摺動可能な複数のタブを含むことを特徴とする、ダイレータ。
【請求項28】
請求項21から27のいずれか1項に記載のダイレータであって、前記変形可能な部材は、前記第1および第2の要素の少なくとも一方と別々にまたは一体に形成されることを特徴とする、ダイレータ。
【請求項29】
患者の身体における血管への通路を提供するためのイントロデューサセットであって、
遠位部分および近位部分と内側表面とを備えた可撓性材料で作製された管状本体を含むイントロデューサシースであって、前記近位部分は、患者の管の中に挿入されるように構成され、それによって医療デバイスが前記イントロデューサシースを通して前記患者の管の中に挿入されることができ、前記イントロデューサシースの前記管状本体は、0.3mm以下の壁厚(d)を有する、イントロデューサシースと、
請求項10から28のいずれか1項に記載のダイレータとを含む、ことを特徴とするイントロデューサセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の身体における血管通路を提供するためのイントロデューサセットに関する。
【背景技術】
【0002】
長期の血管アクセスは、頻繁な透析治療を必要とする患者のための透析、化学療法治療、または心室補助デバイスの使用を含めて、幾つかの医療の局面で使用される一般的な医療の手順である。様々なデバイスや様々な方法が患者の要求に応じて使用される。心室補助デバイスを必要とする患者における長期の血管アクセスは、開胸手順やダイレクト心血管アクセスを通して一般的である。
【0003】
最近、外傷性の開胸手術を回避する目的で、心血管系にアクセスするための末梢血管の使用に向けた動きがある。中心心血管の代わりの末梢血管の使用に向けた動きは、末梢的な使用のために特定的に設計される多数の特定デバイスやツールの開発を伴ってきた。血管イントロデューサは、末梢血管アクセスを可能にするために開発されてきた最も一般的なデバイスである。管へのアクセスを提供するために、イントロデューサシースは通常、特にダイレータの助けを借りて、管に直接穿刺される。これらのイントロデューサシースは、1~3mmの範囲の小さい直径に限定されてきた。
【0004】
イントロデューサシースの直径は、血管アクセスを提供する上で限定要因である。一方では、外側直径は、患者とアクセスが予定されている管とに応じて限定される。大きすぎる直径を有するイントロデューサシースは、管の中に導入することができなかったり、或いは、患者を傷つけたりすることがあり、深刻な出血をもたらす可能性がある。他方、イントロデューサシースは、カテーテルや軸流型血液ポンプ付きカテーテルなどの医療デバイスがそれを通って患者の管の中に入るのを可能にする最小の内側直径を備えていなければならない。例えば、14フレンチの寸法を備えた医療デバイスは、16または17フレンチの寸法を備えた従来のイントロデューサシースを必要とするであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、患者の管へのアクセス(通路)を提供するためのイントロデューサセットを提供することであり、本アクセスは、安全かつ制御されたやり方で、また、単純な手順によって、大きい直径のデバイスを導入することおよび/または取り除くことを可能にし、導入されるべきデバイスの直径は、患者の身体におけるアクセスの寸法を最小化しながら、最大化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、添付の独立請求項において説明し、好適実施形態は、従属請求項において特定する。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、患者の身体における血管アクセスを提供するためのイントロデューサセットが提供される。イントロデューサセットは、イントロデューサシースおよびダイレータを含む。イントロデューサシースは、PTFEなどの可撓性材料で作製された管状本体を有し、遠位部分、近位部分、および内側表面を備え、近位部分は、患者の管の中に挿入されるように構成され、それによって医療デバイスがイントロデューサシースを通して患者の管の中に挿入されることができる。例えば、医療デバイスは、カテーテルであることがあり、軸流型血液ポンプに連結されることがある。ダイレータは、近位部分、遠位部分、および外側表面を備えた本体を有する。ダイレータは、イントロデューサシースの中に挿入可能であり、したがって、その近位部分は、ダイレータがイントロデューサシースに挿入されるとき、イントロデューサシースの近位に延びる。用語「近位(proximal)」は、心臓に向かう方向を指し、他方、用語「遠位(distal)」は、心臓から離れる方向を指す、ということが理解されるべきである。
【0008】
イントロデューサシースの管状本体は、0.3mm以下、好ましくは、0.2mmより小さい、より好ましくは、0.15mmより小さい、なおさら好ましくは、0.1mmより小さい壁厚を有する。したがって、イントロデューサシースは、「薄い壁のイントロデューサシース」と表示される場合がある。ダイレータおよびイントロデューサシースの少なくとも一方は、イントロデューサシースの管状本体に補剛を分与する補剛構造を含み、それによって、前記補剛構造は、解放されるか、取り除かれるかによって非活動化されるかまたは解放および取り除き以外の方法で非活動化されることができる。
【0009】
薄い壁のイントロデューサシースは、アクセスの外側寸法を、その内側寸法を最大化しながら、最小化することを可能にする。例えば、14フレンチのデバイスの導入には、14.5フレンチまたは15フレンチのイントロデューサシースが専ら必要である。しかしながら、そういった薄い壁のイントロデューサシースは、患者の管の中への挿入中やダイレータを引っ込める間において座屈する傾向がある。補剛構造は、イントロデューサシースがダイレータの上に配置されているときに、薄い壁のイントロデューサシースが患者の管の中への挿入中に座屈するのを防止する。しかしながら、ダイレータを引っ込める間は特に、補剛構造は、イントロデューサシースが座屈してダイレータと共に患者の管から引っ込められるのを防止するために、解放されるか、取り除かれるかによって非活動化されるかまたは解放および取り除き以外の方法で非活動化されねばならない。補剛構造を解放することは、イントロデューサシースに影響を及ぼすことなく、ダイレータを引っ込めるのを容易にする。可撓性のある薄い壁のイントロデューサシースが、イントロデューサシースよりも剛性のあるダイレータによって支持されていることは、患者の管の中への挿入中には有利であるが、ダイレータを取り除く間において、イントロデューサシースが患者の管の所定の位置に残されるように、イントロデューサシースがダイレータから解放されることが望ましい。イントロデューサシースの引っ込みが僅かであっても、ダイレータ無しで患者の管の中に押し戻すことが不可能であるという理由で、問題を生じることになろう。
【0010】
好ましくは、補剛構造は、活動化するとき、ダイレータの外側表面の少なくとも一部分と、イントロデューサシースの管状本体の内側表面の少なくとも一部分と、の間に表面摩擦を生じさせ、非活動化するとき、摩擦を少ししかまたは全く生じさせない。ダイレータの外側表面とイントロデューサシースの内側表面との間の表面摩擦を増加および減少させることは、ダイレータおよびイントロデューサシースを結合および結合解除するための単純なやり方である。例えば、補剛構造が非活動化するとき、ダイレータの本体は、イントロデューサシースの管状本体の内側直径より小さい第1の外側直径を有し、補剛構造が活動化するとき、ダイレータの少なくとも一部分、好ましくは、少なくとも近位部分は、第1の外側直径より大きい第2の外側直径を有することがあり、したがって、ダイレータの外側表面が、イントロデューサシースの管状本体の内側表面に接触する。
【0011】
本発明の他の実施形態によれば、イントロデューサシースで使用するために構成されたダイレータが、好ましくは、上で説明したようなイントロデューサセットにおいて提供される。ダイレータは、外側表面を備えた本体を含み、ダイレータは、外側表面と、イントロデューサシースの内側表面と、の間の表面摩擦を減少させる目的で、本体の断面を減少させるのを可能にするように圧潰可能である。ダイレータは、薄い壁のイントロデューサシースと共に有利に使用することができ、患者の管の中への挿入中には、ダイレータとイントロデューサシースの間の表面摩擦の増加が好適であり、これに対して、ダイレータを引っ込める間では、イントロデューサシースの座屈を防止するために、表面摩擦の減少が好適である。
【0012】
本発明の他の実施形態によれば、イントロデューサシースが提供され、遠位部分および近位部分を備えた可撓性材料で作製された管状本体を含み、近位部分は、患者の管の中に挿入されるように構成され、それによって医療デバイスがイントロデューサシースを通して患者の管の中に挿入されることができる。イントロデューサシースの管状本体は、0.3mm以下、好ましくは、0.2mmより小さい、より好ましくは、0.15mmより小さい、なおさら好ましくは、0.1mmより小さい壁厚を有する。
【0013】
患者の身体における血管アクセスを提供するための方法が開示され、イントロデューサセットは、第1のステップで提供される。イントロデューサセットは、イントロデューサシースおよびダイレータを含む。イントロデューサシースは、遠位部分、近位部分、および内側表面を備えた管状本体を含み、近位部分は、患者の管の中に挿入されるように構成され、それによって医療デバイスがイントロデューサシースを通して患者の管の中に挿入されることができる。イントロデューサシースの管状本体は、0.3mm以下の壁厚を有する。ダイレータは、近位部分、遠位部分、および外側表面を備えた本体を含む。ダイレータは、イントロデューサシースの中に挿入され、したがって、近位部分は、イントロデューサシースの外に近位に延び、ダイレータは、ダイレータの外側表面の少なくとも一部分と、イントロデューサシースの管状本体の内側表面の少なくとも一部分と、の間の表面摩擦を減少させるための収縮可能なバルーンを含む。
【0014】
患者の管の中へのイントロデューサシースおよびダイレータの挿入後に、バルーンは、収縮され、ダイレータは、イントロデューサシースから引っ込められ、したがって、イントロデューサシースは、患者の管に残置される。ダイレータを引っ込める前にバルーンを収縮させることは、イントロデューサシースが、患者からダイレータと一緒に引っ込められるのを防止すると共に、座屈するのを防止する。実施形態によれば、イントロデューサシースおよびダイレータを患者の管の中に挿入する前に、ダイレータをイントロデューサシースの中に挿入することおよびダイレータのバルーンを膨張させることが必要になることがある。バルーンを膨張させることは、ダイレータがイントロデューサシースの内側表面に接触するのを引き起こし、十分な剛性を提供すると共に、患者の管の中への挿入中にイントロデューサシースが座屈するのを阻止する。
【0015】
好適な実施形態では、補剛構造は、収縮可能なバルーンを含む。バルーンは、ダイレータ本体の実質上全長に好ましくは沿って、ダイレータ本体の少なくとも近位部分に配置されることがある。ダイレータ本体の少なくとも近位部分にバルーンを提供することが十分であることもある。しかしながら、安定性および剛性を増大させる目的で、バルーンは、ダイレータ本体の全長に実質上沿って、特に、先細であり得る遠位先端と、ハンドルまたは連結ポートを有し得る近位部分と、の一方または双方を除いて、ダイレータ本体の主要部分に実質上沿って、設けることができる。バルーンは、非準拠材料、好ましくは、ナイロンなどのポリアミドを含むことができる。
【0016】
バルーンの収縮および/または膨張を可能にする目的で、ダイレータは、ダイレータ本体の遠位部分に、バルーンと流体連通する膨張ポートを含むことができる。膨張ポートは、流体で充填可能で、圧力デバイス、好ましくは、シリンジ型圧力デバイスを含む貯蔵器に連結することができ、したがって、貯蔵器に受容される流体は、バルーンを膨張させるために加圧することができる。圧力デバイスは、貯蔵器の内側壁に対してシールされて第1のねじ山を有するプランジャを含むことがある。圧力デバイスは、第1のねじ山と噛合する第2のねじ山を有する作動ねじをさらに含むことがあり、したがって、プランジャが、貯蔵器の内部を動くことができ、作動ねじの回転によって貯蔵器に受容された流体が加圧される。圧力デバイスは、単純な機械式デバイスを提供して、バルーンの圧力、したがって、ダイレータの外側直径、を制御する。
【0017】
他の実施形態では、補剛構造は、相互に関して並進可能である第1および第2の要素と、第1および第2の要素の少なくとも一方を他方に関してダイレータの長手方向に並進させるための作動機構と、を含むことがある。作動機構の回転が前記長手方向への並進を生じさせることが好ましい。第2の要素は、管状本体を有することがあり、第1の要素は、第2の要素の管状本体を通って第2の要素の近位端部を越えて延びることがある。
【0018】
この補剛構造は、第1および第2の要素に係合する少なくとも1つの変形可能な部材を含むことがあり、したがって、前記長手方向への並進は、ダイレータの前記長手方向の変形可能な部材の減圧を、それによって、変形可能な部材の半径方向の縮小を、生じさせる。変形可能な部材は、ダイレータの一部を形成し、非圧縮状態では、ダイレータの本体と実質上同じ直径を有することが好ましい。
【0019】
変形可能な部材は、リング形状または管形状であることがあり、ソフトポリマ、好ましくは、シリコーンを含むことがある。他の実施形態では、変形可能な部材は、ダイレータの長手方向に延びる複数のスリットを含むことがあり、前記長手方向の減圧時に変形可能な部材が半径方向に圧潰するのを可能にする。他の実施形態では、変形可能な部材は、第1の要素に取り付けられて第2の要素に係合することがあり、変形可能な部材は、第2の要素が前記長手方向に並進するときに、半径方向に変形するために、第2の要素の傾斜付けされた端部部分上を摺動可能な複数のタブを含むことがある。変形可能な部材は、補剛構造の第1および第2の要素の少なくとも一方と別々にまたは一体に形成されることがある。
【0020】
他の好適な実施形態によれば、イントロデューサシースは、イントロデューサシースの内側表面とダイレータの外側表面とによって画定される空間と流体連通する液圧ポートを含むことがある。薄い壁のイントロデューサシースを補剛および支持する目的で、液圧流体は、近位端部において、特に、イントロデューサシースの近位端部がダイレータに接触する場所において、好ましくは実質上流体密である空間の中に押圧される。緊密な連結は、ダイレータとイントロデューサシースの間の空間の或る種の圧力が超えるまで維持することができる。イントロデューサシースをダイレータから解放する目的で、液圧流体の圧力は、さらに増加され、したがって、流体は、イントロデューサシースの近位端部で漏出し、ダイレータとイントロデューサシースの間に流体フィルムを備えたギャップを生じさせる。ダイレータは、そのときイントロデューサシースを座屈させることなく容易に引っ込めることができる。液圧流体は、それが患者の管の中に流入したときに患者に害を生じさせない生理的食塩水にすることができる。
【0021】
他の実施形態によれば、イントロデューサシースの管状本体は、管状本体の長手方向に延びて、切り離し可能な支持ストラットを収容する少なくとも1つのキャビティを含むことがある。少なくとも1つ、好ましくは、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ、などの複数のそういった支持ストラットは、前記長手方向に沿ってイントロデューサシースの壁に配設される細長いキャビティに挿入されることがある。支持ストラットは、ワイヤなどでもよい。支持ストラットがもはや必要でないとき、キャビティから単に引っ込めればよい。ストラットを取り除くことは、イントロデューサシースの内側直径を増加させる場合がある。支持ストラットは、キャビティと支持ストラットの間に低摩擦を提供するために、キャビティの断面とは形状が異なる断面、例えば、多角形または星様の断面形状を有することが好ましい。
【0022】
実施形態では、イントロデューサシースは、その遠位部分に止血バルブを含む。止血バルブは、止血を提供する。換言すると、それは、イントロデューサシースの遠位端部をシールして、カテーテルなどの医療デバイスの挿入中に血液がバルブを通って流れるのを阻止する。バルブは、可撓性ディスクとして、または、逆止弁の機能を提供する他の構成で、構築され得る膜を含むことができる。イントロデューサシースを通して患者の管の中に挿入されている医療デバイスからイントロデューサシースを剥ぎ取るのを可能にする目的で、イントロデューサシースは、その長さに沿って切り離し可能にすることができる。
【0023】
先の要約、並びに、次の好適な実施形態の詳細な説明は、添付した図面に関連して解釈するとき、より良く理解される。本開示を図解する目的のため、図面に言及する。しかしながら、本開示の範囲は、図面に開示した特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るダイレータおよびイントロデューサシースを含むイントロデューサセットを示す図である。
図2図1のダイレータおよびイントロデューサシースを別々に示す図である。
図3図1のダイレータの断面図である。
図4図1のイントロデューサシースの断面図である。
図5a】圧力デバイスと共に組み立てられたイントロデューサセットのそれぞれ側面図と断面図である。
図5b】圧力デバイスと共に組み立てられたイントロデューサセットのそれぞれ側面図と断面図である。
図6a】患者の管の中への挿入中の状態にあるイントロデューサセットの他の実施形態を示す図である。
図6b】患者の管の中への挿入中の状態にあるイントロデューサセットの他の実施形態を示す図である。
図7a】ダイレータが引っ込み中の状態にある図6aおよび6bのイントロデューサセットを示す図である。
図7b】ダイレータが引っ込み中の状態にある図6aおよび6bのイントロデューサセットを示す図である。
図7c】ダイレータが引っ込み中の状態にある図6aおよび6bのイントロデューサセットを示す図である。
図8a】患者の管の中への挿入中の状態にあるイントロデューサセットの他の実施形態を示す図である。
図8b】患者の管の中への挿入中の状態にあるイントロデューサセットの他の実施形態を示す図である。
図9a】ダイレータが引っ込み中の状態にある図8aおよび8bのイントロデューサセットを示す図である。
図9b】ダイレータが引っ込み中の状態にある図8aおよび8bのイントロデューサセットを示す図である。
図9c】ダイレータが引っ込み中の状態にある図8aおよび8bのイントロデューサセットを示す図である。
図10a】患者の管の中への挿入中の状態にあるイントロデューサセットの他の実施形態を示す図である。
図10b】患者の管の中への挿入中の状態にあるイントロデューサセットの他の実施形態を示す図である。
図11a】ダイレータが引っ込み中の状態にある図10aおよび10bのイントロデューサセットを示す図である。
図11b】ダイレータが引っ込み中の状態にある図10aおよび10bのイントロデューサセットを示す図である。
図11c】ダイレータが引っ込み中の状態にある図10aおよび10bのイントロデューサセットを示す図である。
図12a】患者の管の中への挿入中の状態にあるイントロデューサセットの他の実施形態を示す図である。
図12b】患者の管の中への挿入中の状態にあるイントロデューサセットの他の実施形態を示す図である。
図13a】ダイレータが引っ込み中の状態にある図12aおよび12bのイントロデューサセットを示す図である。
図13b】ダイレータが引っ込み中の状態にある図12aおよび12bのイントロデューサセットを示す図である。
図13c】ダイレータが引っ込み中の状態にある図12aおよび12bのイントロデューサセットを示す図である。
図14a】患者の管の中への挿入中の状態にあるイントロデューサセットの他の実施形態を示す図である。
図14b】患者の管の中への挿入中の状態にあるイントロデューサセットの他の実施形態を示す図である。
図15a】ダイレータが引っ込み中の状態にある図14aおよび14bのイントロデューサセットを示す図である。
図15b】ダイレータが引っ込み中の状態にある図14aおよび14bのイントロデューサセットを示す図である。
図15c】ダイレータが引っ込み中の状態にある図14aおよび14bのイントロデューサセットを示す図である。
図16】本発明の用途を示す図である。
図17】本発明の他の用途を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1~4を参照すると、本発明の実施形態に係るイントロデューサセット1の種々の図が示されている。イントロデューサセット1は、イントロデューサシース10およびダイレータ20を含み、図1では組み立てられて、図2では別々に示されている。イントロデューサシース10は、遠位部分12および近位部分13を有する管状本体11を含む。可撓性膜18を有する止血バルブ14は、遠位部分13に設けられる。2つのハンドル15および16は、イントロデューサシース10を操作するために、また、イントロデューサシース10を切り離すために、特に、止血バルブ14を裂くために、設けられる。長手方向ノッチ17は、止血バルブ14に設けられて、所定の破断線を形成する。イントロデューサシース10の管状本体11は、0.3mmより薄い壁厚dを備えた壁19を有する。したがって、イントロデューサシース10は、薄い壁のイントロデューサシースである。
【0026】
ダイレータ20は、遠位部分22および近位部分23を備えた本体21を有する。近位部分23は、患者の管の中への挿入を容易にするために先細の先端24を含む。ポート26および28は、遠位部分に設けられる。ポート28は、ガイドワイヤ(図示せず)を中に受容するように構成される内部ルーメン29に連結される。換言すると、ダイレータ20は、例えば、セルディンガ技術によって患者の管の中に挿入されているガイドワイヤを被うように配置することができる。バルーン25は、ダイレータ20の本体21上に配設され、本体21の先細の先端24および最遠位部分を除いて、その大部分にわたって延びている。バルーン25は、本体21の遠位部分22のルーメン27を介してバルーン25に連結されているポート26を介して膨張および収縮させることができる。バルーンは、ナイロンなどの非準拠材料で作製される。
【0027】
ダイレータ20のバルーン25は、薄い壁のイントロデューサシース10を支持するための補剛構造として利用される。ダイレータ20は、バルーン25が収縮したイントロデューサシース10の中に挿入される。換言すると、バルーンは、動作前に事前装填(pre-loaded)される。空気などの流体は、バルーン25を膨張させるためにポート26を介してバルーン25の中に充填され、したがって、バルーン25は、イントロデューサシース10の内側表面に接触する。ダイレータ20とイントロデューサシース10の間の表面摩擦は、それによって増加し、患者の管の中への挿入中にイントロデューサシース10に安定性を提供すると共に、イントロデューサシース10が座屈するのを阻止する。組立体が患者の管の中に挿入された後でダイレータ20が引っ込められるとき、バルーン25は、ダイレータ20とイントロデューサシース10の間の表面摩擦を減少させるために、収縮される。ダイレータ20は、そのとき実質上何ら干渉することなくイントロデューサシース10から引っ込めることができる。ダイレータ20およびイントロデューサシース10は、自由に動くことができる。
【0028】
図5aおよび5bは、イントロデューサシース10と、圧力デバイス30に取り付けられたダイレータ20と、を含むイントロデューサセットの実施形態を示す。圧力デバイス30は、バルーン25を膨張および収縮させるためにバルーン25に連結される。シリンジ型圧力デバイス30は、アパーチャ35を介して空気などの流体で充填され得る貯蔵器を形成する本体31を有する。プランジャ33は、本体31に配設され、ダイアフラムシール34を用いて本体31の内側表面に対してシールされる。プランジャ33は、作動ねじ32を用いて動かされる。ねじ32のねじ山38は、プランジャ33のねじ山39と係合し、ねじ32の回転時にプランジャ33を回転させることなくプランジャ33を並進させる。ルアーコネクタ36は、ガイドワイヤを受容し得るガイドチューブ37と連通するプランジャ33の端部に設けてもよい。圧力デバイス30は、バルーン25内の圧力の調整、それゆえ、ねじ32の作動によるダイレータ20の外側直径の調整を可能にする。
【0029】
さて、図6aおよび6bを参照すると、イントロデューサセットが示され、ダイレータ20がイントロデューサシース10の中に事前装填されている。この実施形態は、上述した実施形態と同様であり、膨張可能なバルーン25を含む。図6bから理解され得るように、バルーン25は、膨張して、イントロデューサシース10の本体11の近位端部とダイレータ20の先細の先端24との間の移行の一部を形成し、患者の管の中への円滑な挿入を確実化している。ダイレータ20の取り除き中、バルーン25は、図7a~7cに示すように膨張する。イントロデューサシース10とダイレータ20の間のクリアランスによって、ダイレータ20は、イントロデューサシース10内を自由に動くことができ、実質上何ら干渉することなく引っ込めることができる。バルーン25は、ダイレータ20の本体21の近位部分23内だけを延びることがあり、或いは、本体21の全長に実質上沿って延びることがある。
【0030】
他の実施形態が図8a、8bおよび9a~9cに示されている。この実施形態では、ダイレータ120の直径の膨張は、膨張可能なバルーンによって達成されないが、長手方向の圧縮時に半径方向に膨張する変形可能なインサート125による。インサート125は、シリコーンなどのソフトポリマ(soft polymer)で作製することができる。ダイレータ120は、相互に関して長手方向に並進可能である2つの要素121および122を含む。ダイレータ120の先端を形成する要素121は、管状である他方の要素122を通して挿入される。ねじ機構123は、要素121および122の並進をもたらすために使用される。特に、管状要素122は、近位に進められる。2つの肩部の間には、リング124および変形可能なインサート125が配設される。図8bから理解され得るように、インサート125は、要素121および122を相互に関して並進させることによって長手方向に圧縮され、したがって、半径方向に膨張してイントロデューサシース10の内側表面に接触する。イントロデューサシース10は、それゆえ、患者の管の中への挿入のためにクランプされて安定化される。ダイレータ120を取り除く目的で、ねじ機構123は、インサート125を解放するために動かされ、したがって、長手方向に弛緩し、半径方向に圧潰する。ダイレータ120は、そのとき何ら干渉することなくイントロデューサシース10から取り除くことができる。
【0031】
図10a、10bおよび11a~11cに示した実施形態は、図8a、8bおよび9a~9cに関連して説明した実施形態と同様である。ダイレータ220は、2つの要素221および222を含み、要素222は、ねじ機構223を動かすことによって長手方向に並進することができる。長手方向スリット225および脚部226を含む構造は、上記シリコーンインサートと同様に半径方向に膨張できるように提供される。図10bから理解され得るように、スリット225は、長手方向の圧縮時に脚部226が半径方向に膨張するのを可能にする。それによって、イントロデューサシース10は、患者の管の中への挿入中にダイレータ220に固定される。ダイレータ220をイントロデューサシース10から引っ込めることができるようにする目的で、ねじ機構223は、動かされて、要素222を遠位に並進させ、それによって、脚部226を半径方向に圧潰させる。ダイレータ220は、そのときイントロデューサシース10の内部を自由に動くことができ、したがって、イントロデューサシース10は、患者の管の中に残置され、座屈しない。
【0032】
ダイレータ320が2つの要素321および322を有する他の実施形態は、図12a、12bおよび13a~13cに示されている。半径方向に膨張可能な構造は、ダイレータ320の要素321と連結または一体形成されるタブ325によって形成される。図12bから理解され得るように、要素322は、傾斜付けされた近位端部部分326を有し、したがって、タブ325は、要素322がねじ機構323の動きによって近位に進められるとき、半径方向に膨張する。タブ325は、そのとき、イントロデューサシース10が患者の管の中への挿入中に座屈するのを阻止するように、薄い壁のイントロデューサシース10の内側表面に接触する。図13a~13cでは、傾斜付けされた端部部分326は、遠位に引っ込められ、したがって、タブ325は、半径方向に圧潰して、ダイレータ320の引っ込み中に、ダイレータ320がイントロデューサシース10の中で自由に動くことができる。
【0033】
薄い壁のイントロデューサシース10とダイレータ420を含むイントロデューサセットの別の実施形態は、図14a、14bおよび15a~15cに示されている。空間または凹所424は、ダイレータ420とイントロデューサシース10の間に形成され、ポート423を介して塩水などの流体で充填することができる。ダイレータ420の拡大直径部分425は、イントロデューサシース10の遠位端部の領域内に設けられ、ダイレータ420とイントロデューサシース10の間の緊密な連結を作り出す。患者の管の中への挿入中に、空間424は、流体で充填されて、イントロデューサシース10を安定化させる。特に図15bを参照すると、ダイレータ420の取り除き中に、流体の圧力は、増加して、イントロデューサシース10の近位端部における流体の漏出を強制し、それによってフィルム層を作り出し、ダイレータ420とイントロデューサシース10の間の摩擦低下を作り出し、イントロデューサシース10を座屈させることなく、ダイレータ420を取り除くのを可能にする。
【0034】
さて、図16および17を参照すると、イントロデューサセットの用途が示されている。イントロデューサセットは、上で開示した実施形態のいずれか1つに従うことができる。それは、心室補助デバイスを設けるべく、軸流型血液ポンプ101を、カテーテル100を用いて患者の管を通して患者の心臓の中に挿入するために使用される。血管アクセスは、患者の胸郭(図16)または患者の股間(図17)の末梢血管に配置することができる。
【0035】
本発明の好適な実施形態
以下の各段落では、本発明の好適な実施形態について開示する。
【0036】
[実施形態1]
遠位部分12、近位部分13、および内側表面を備えて可撓性材料で作製された管状本体11を有するイントロデューサシース10であって、近位部分13は、患者の管の中に挿入されるように構成され、それによって医療デバイス100がイントロデューサシース10を通して患者の管の中に挿入されることができる、イントロデューサシース10と、
近位部分23、遠位部分22、および外側表面を備えた本体21を有するダイレータ20であって、イントロデューサシース10の中に挿入可能であり、したがって、その近位部分23は、ダイレータ20がイントロデューサシース10に挿入されるとき、イントロデューサシース10の近位に延びる、ダイレータ20と、
を含む、患者の身体における血管アクセスを提供するためのイントロデューサセット1であって、
イントロデューサシースの管状本体11は、0.3mm以下の壁厚dを有し、
ダイレータ20およびイントロデューサシース10の少なくとも一方は、イントロデューサシース10の管状本体11に補剛を分与する補剛構造25を含み、前記補剛構造25は、解放されるか、取り除かれるかまたは解放および取り除き以外の方法で非活動化されることができる、イントロデューサセット1。
【0037】
[実施形態2]
イントロデューサシース10の管状本体11は、0.2mmより小さい、好ましくは、0.15mmより小さい、より好ましくは、0.1mmより小さい壁厚を有する、実施形態1に記載のイントロデューサセット。
【0038】
[実施形態3]
補剛構造25は、活動化するとき、ダイレータ20の外側表面の少なくとも一部分と、イントロデューサシース10の管状本体11の内側表面の少なくとも一部分と、の間に表面摩擦を生じさせ、非活動化するとき、摩擦を少ししかまたは全く生じさせない、実施形態1または2に記載のイントロデューサセット。
【0039】
[実施形態4]
補剛構造25が非活動化するとき、ダイレータ20の本体21は、イントロデューサシース10の管状本体11の内側直径より小さい第1の外側直径を有し、補剛構造25が活動化するとき、ダイレータ20の少なくとも一部分、好ましくは、少なくとも近位部分23は、第1の外側直径より大きい第2の外側直径を有し、したがって、ダイレータ20の外側表面が、イントロデューサシース10の管状本体11の内側表面に接触する、実施形態3に記載のイントロデューサセット。
【0040】
[実施形態5]
補剛構造は、収縮可能なバルーン25を含む、実施形態1から4のいずれか1つに記載のイントロデューサセット。
【0041】
[実施形態6]
バルーン25は、ダイレータ本体21の実質上全長に好ましくは沿って、ダイレータ本体21の少なくとも近位部分23に配置される、実施形態5に記載のイントロデューサセット。
【0042】
[実施形態7]
ダイレータ20は、ダイレータ本体21の遠位部分22に、バルーン25と流体連通する膨張ポート26を含む、実施形態5または6に記載のイントロデューサセット。
【0043】
[実施形態8]
膨張ポート26は、流体で充填可能で、圧力デバイス30、好ましくは、シリンジ型圧力デバイスを含む貯蔵器31に連結され、したがって、貯蔵器31に受容される流体が、バルーン25を膨張させるために加圧することができる、実施形態7に記載のイントロデューサセット。
【0044】
[実施形態9]
圧力デバイス30は、貯蔵器31の内側壁に対してシールされて第1のねじ山39を有するプランジャ33を含み、圧力デバイス30は、第1のねじ山39と噛合する第2のねじ山38を有する作動ねじ32をさらに含み、したがって、プランジャ33が、貯蔵器31の内部を動くことができ、作動ねじ32の回転によって貯蔵器31に受容された流体が加圧される、実施形態8に記載のイントロデューサセット。
【0045】
[実施形態10]
バルーン25は、非準拠材料、好ましくは、ポリアミド、好ましくは、ナイロン、を含む、実施形態5から9のいずれか1つに記載のイントロデューサセット。
【0046】
[実施形態11]
補剛構造は、相互に関して並進可能である第1および第2の要素121、122;221、222;321、322と、第1および第2の要素の少なくとも一方を他方に関してダイレータ120;220;320の長手方向に並進させるための作動機構123;223;323と、を含み、作動機構123;223;323の回転は、前記長手方向への並進を好ましくは生じさせる、実施形態1から4のいずれか1つに記載のイントロデューサセット。
【0047】
[実施形態12]
第2の要素122;222;322は、管状本体を有し、第1の要素121;221;321は、第2の要素122;222;322の管状本体を通って第1の要素121;221;321の近位端部を越えて延びる、実施形態11に記載のイントロデューサセット。
【0048】
[実施形態13]
補剛構造は、第1および第2の要素121、122;221、222に係合する少なくとも1つの変形可能な部材125;225を含み、したがって、前記長手方向への並進は、ダイレータ120;220の前記長手方向の変形可能な部材125;225;325の減圧を、それによって、変形可能な部材125;225の半径方向の縮小を、生じさせ、変形可能な部材は、ダイレータの一部を好ましくは形成し、非圧縮状態では、ダイレータの本体と実質上同じ直径を有する、実施形態11または12に記載のイントロデューサセット。
【0049】
[実施形態14]
変形可能な部材125は、リング形状または管形状である、実施形態13に記載のイントロデューサセット。
【0050】
[実施形態15]
変形可能な部材125は、ソフトポリマ、好ましくは、シリコーンを含む、実施形態13または14に記載のイントロデューサセット。
【0051】
[実施形態16]
変形可能な部材は、ダイレータ220の前記長手方向に延びる複数のスリット226を含み、前記長手方向の減圧時に変形可能な部材が半径方向に圧潰するのを可能にする、実施形態13に記載のイントロデューサセット。
【0052】
[実施形態17]
補剛構造は、第1の要素321に取り付けられて第2の要素322に係合する少なくとも1つの変形可能な部材325を含み、変形可能な部材325は、第2の要素322が前記長手方向に並進するときに半径方向に変形するために、第2の要素322の傾斜付けされた端部部分326上を摺動可能な複数のタブ325を含む、実施形態11または12に記載のイントロデューサセット。
【0053】
[実施形態18]
変形可能な部材125;225;325は、第1および第2の要素121、122;221、222;321、322の少なくとも一方と別々にまたは一体に形成される、実施形態13から17のいずれか1つに記載のイントロデューサセット。
【0054】
[実施形態19]
イントロデューサシースは、イントロデューサシースの内側表面とダイレータ420の外側表面とによって画定される空間424と流体連通する液圧ポート426を含む、実施形態1または2に記載のイントロデューサセット。
【0055】
[実施形態20]
イントロデューサシースの管状本体は、管状本体の長手方向に延びて、切り離し可能な支持ストラットを収容する少なくとも1つのキャビティを含む、実施形態1から19のいずれか1つに記載のイントロデューサセット。
【0056】
[実施形態21]
支持ストラットは、キャビティと支持ストラットの間に低摩擦を提供するために、キャビティの断面とは形状が異なる断面、好ましくは、多角形または星様の断面形状を有する、実施形態20に記載のイントロデューサセット。
【0057】
[実施形態22]
イントロデューサシース10の可撓性材料は、PTFEを含む、実施形態1から21のいずれか1つに記載のイントロデューサセット。
【0058】
[実施形態23]
イントロデューサシース10は、その遠位部分12に止血バルブ14を含む、実施形態1から22のいずれか1つに記載のイントロデューサセット。
【0059】
[実施形態24]
イントロデューサシース10は、その長さに沿って切り離し可能である、実施形態1から23のいずれか1つに記載のイントロデューサセット。
【0060】
[実施形態25]
医療デバイスは、カテーテル100を含む、実施形態1から24のいずれか1つに記載のイントロデューサセット。
【0061】
[実施形態26]
カテーテル100の先端に配置された軸流型血液ポンプ101を含む、実施形態25に記載のイントロデューサセット。
【0062】
[実施形態27]
イントロデューサシースで使用するために構成され、外側表面を備えた本体を含むダイレータ20;120;220;320であって、ダイレータは、外側表面と、イントロデューサシースの内側表面と、の間の表面摩擦を減少させる目的で、本体の断面を減少させるのを可能にするように圧潰可能である、ダイレータ20;120;220;320。
【0063】
[実施形態28]
収縮可能なバルーン25を含む、実施形態27に記載のダイレータ。
【0064】
[実施形態29]
バルーン25は、本体21の実質上全長に好ましくは沿って、本体21の少なくとも近位部分23に配置される、実施形態28に記載のダイレータ。
【0065】
[実施形態30]
ダイレータ本体21の遠位部分22に、バルーン25と流体連通する膨張ポート26を含む、実施形態28または29に記載のダイレータ。
【0066】
[実施形態31]
膨張ポート26は、流体で充填可能で、圧力デバイス30、好ましくは、シリンジ型圧力デバイスを含む貯蔵器31に連結され、したがって、貯蔵器31に受容される流体が、バルーン25を膨張させるために加圧することができる、実施形態30に記載のダイレータ。
【0067】
[実施形態32]
圧力デバイス30は、貯蔵器31の内側壁に対してシールされて第1のねじ山39を有するプランジャ33を含み、圧力デバイス30は、第1のねじ山39と噛合する第2のねじ山38を有する作動ねじ32をさらに含み、したがって、プランジャ33が、貯蔵器31の内部を動くことができ、作動ねじ32の回転によって貯蔵器31に受容された流体が加圧される、実施形態31に記載のダイレータ。
【0068】
[実施形態33]
バルーン25は、非準拠材料、好ましくは、ポリアミド、好ましくは、ナイロン、を含む、実施形態28から32のいずれか1つに記載のダイレータ。
【0069】
[実施形態34]
相互に関して並進可能である第1および第2の要素121、122;221、222;321、322と、第1および第2の要素の少なくとも一方を他方に関してダイレータ120;220;320の長手方向に並進させるための作動機構123;223;323と、を含み、作動機構123;223;323の回転は、前記長手方向への並進を好ましくは生じさせる、実施形態27に記載のダイレータ。
【0070】
[実施形態35]
第2の要素122;222;322は、管状本体を有し、第1の要素121;221;321は、第2の要素122;222;322の管状本体を通って第1の要素121;221;321の近位端部を越えて延びる、実施形態34に記載のダイレータ。
【0071】
[実施形態36]
第1および第2の要素121、122;221、222に係合する少なくとも1つの変形可能な部材125;225を含み、したがって、前記長手方向への並進は、ダイレータ120;220の前記長手方向の変形可能な部材125;225;325の減圧を、それによって、変形可能な部材125;225の半径方向の縮小を、生じさせ、変形可能な部材は、ダイレータの一部を好ましくは形成し、非圧縮状態では、ダイレータの本体と実質上同じ直径を有する、実施形態34または35に記載のダイレータ。
【0072】
[実施形態37]
変形可能な部材125は、リング形状または管形状である、実施形態36に記載のダイレータ。
【0073】
[実施形態38]
変形可能な部材は、ソフトポリマ、好ましくは、シリコーンを含む、実施形態36または37に記載のダイレータ。
【0074】
[実施形態39]
変形可能な部材は、ダイレータ220の前記長手方向に延びる複数のスリット226を含み、前記長手方向の減圧時に変形可能な部材が半径方向に圧潰するのを可能にする、実施形態36に記載のダイレータ。
【0075】
[実施形態40]
第1の要素321に取り付けられて第2の要素322に係合する少なくとも1つの変形可能な部材325を含み、変形可能な部材325は、第2の要素322が前記長手方向に並進するときに半径方向に変形するために、第2の要素322の傾斜付けされた端部部分326上を摺動可能な複数のタブ325を含む、実施形態34または35に記載のダイレータ。
【0076】
[実施形態41]
変形可能な部材125;225;325は、第1および第2の要素121、122;221、222;321、322の少なくとも一方と別々にまたは一体に形成される、実施形態36から40のいずれか1つに記載のダイレータ。
【0077】
[実施形態42]
遠位部分および近位部分を備えた可撓性材料で作製された管状本体を含むイントロデューサシースであって、近位部分は、患者の管の中に挿入されるように構成され、それによって医療デバイスがイントロデューサシースを通して患者の管の中に挿入されることができ、管状本体は、0.3mm以下、好ましくは、0.2mmより小さい、より好ましくは、0.15mmより小さい、なおさら好ましくは、0.1mmより小さい壁厚を有する、イントロデューサシース。
【0078】
[実施形態43]
イントロデューサシースの内側表面とダイレータ420の外側表面とによって画定される空間424と流体連通する液圧ポート426を含む、実施形態42に記載のイントロデューサシース。
【0079】
[実施形態44]
管状本体は、管状本体の長手方向に延びて、切り離し可能な支持ストラットを収容する少なくとも1つのキャビティを含む、実施形態42または43に記載のイントロデューサシース。
【0080】
[実施形態45]
支持ストラットは、キャビティと支持ストラットの間に低摩擦を提供するために、キャビティの断面とは形状が異なる断面、好ましくは、星様の断面形状を有する、実施形態44に記載のイントロデューサシース。
【0081】
[実施形態46]
可撓性材料は、PTFEを含む、実施形態42から45のいずれか1つに記載のイントロデューサシース。
【0082】
[実施形態47]
遠位部分12に止血バルブ14を含む、実施形態42から46のいずれか1つに記載のイントロデューサシース。
【0083】
[実施形態48]
イントロデューサシース10は、その長さに沿って切り離し可能である、実施形態42から47のいずれか1つに記載のイントロデューサシース。
【0084】
[実施形態49]
・ イントロデューサシース10およびダイレータ20を含むイントロデューサセット1を提供するステップであって、イントロデューサシース10は、遠位部分12、近位部分13、および内側表面を備えた管状本体11を含み、近位部分13は、患者の管の中に挿入されるように構成され、それによって医療デバイス100がイントロデューサシース10を通して患者の管の中に挿入されることができ、イントロデューサシース10の管状本体11は、0.3mm以下の壁厚を有し、ダイレータ20は、近位部分23、遠位部分22、および外側表面を備えた本体21を含み、ダイレータ20は、イントロデューサシース10の中に挿入され、したがって、近位部分23は、イントロデューサシース10の外に近位に延び、ダイレータ20は、ダイレータ20の外側表面の少なくとも一部分と、イントロデューサシース10の管状本体11の内側表面の少なくとも一部分と、の間の表面摩擦を減少させるための収縮可能なバルーン25を含む、ステップと、
・ イントロデューサシース10およびダイレータ20を患者の管の中に挿入するステップと、
・ バルーン25を収縮させるステップと、
・ イントロデューサシース10が患者の管に残置されるように、ダイレータ20をイントロデューサシース10から引っ込めるステップと、
を含む、患者の身体における血管アクセスを提供するための方法。
【0085】
[実施形態50]
・ イントロデューサシース10およびダイレータ20を含むイントロデューサセット1を提供するステップであって、イントロデューサシース10は、遠位部分12、近位部分13、および内側表面を備えた管状本体11を含み、近位部分13は、患者の管の中に挿入されるように構成され、それによって医療デバイス100がイントロデューサシース10を通して患者の管の中に挿入でき、イントロデューサシース10の管状本体11は、0.3mm以下の壁厚を有し、ダイレータ20は、近位部分23、遠位部分22、および外側表面を備えた本体21を含み、ダイレータ20は、イントロデューサシース10の中に挿入可能であり、したがって、近位部分23は、ダイレータ20がイントロデューサシース10に挿入されるとき、イントロデューサシース10の外に近位に延び、ダイレータ20は、ダイレータ20の外側表面の少なくとも一部分と、イントロデューサシース10の管状本体11の内側表面の少なくとも一部分と、の間の表面摩擦を減少させるための収縮可能なバルーン25を含む、ステップと、
・ ダイレータ20をイントロデューサシース10に挿入するステップと、
・ ダイレータ20のバルーン25を膨張させるステップと、
・ イントロデューサシース10およびダイレータ20を患者の管の中に挿入するステップと、
・ バルーン25を収縮させるステップと、
・ イントロデューサシース10が患者の管に残置されるように、ダイレータ20をイントロデューサシース10から引っ込めるステップと、
を含む、患者の身体における血管アクセスを提供するための方法。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図11a
図11b
図11c
図12a
図12b
図13a
図13b
図13c
図14a
図14b
図15a
図15b
図15c
図16
図17