(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】熱交換器のタンク構造
(51)【国際特許分類】
F28F 9/22 20060101AFI20230220BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
F28F9/22
F28F9/02 301D
F28F9/02 301Z
(21)【出願番号】P 2020501073
(86)(22)【出願日】2019-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2019006932
(87)【国際公開番号】W WO2019163973
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2018029405
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】中岡 八束
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅士
(72)【発明者】
【氏名】後藤 啓太
(72)【発明者】
【氏名】三浦 一学
(72)【発明者】
【氏名】土屋 慧次
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0251683(US,A1)
【文献】特開2003-56993(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0124665(KR,A)
【文献】特開2001-74380(JP,A)
【文献】特表2014-502335(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第2614980(FR,A1)
【文献】特開2002-310593(JP,A)
【文献】特開2017-203609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/22
F28F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に方形の細長い開口(1)を有し、その開口(1)の長手方向に沿って一対の側壁(1a)が立設されると共に、その開口(1)に対向して底面(2)が形成され、その開口(1)の長手方向の中間部で、前記底面(2)に隣接して流体の入口(3)が形成され、その開口(1)に直交する横断面が、その入口(3)から開口(1)の長手方向の端部に至る程小さく形成されているタンク本体(4)と、
前記開口(1)を被嵌するヘッダプレート(5)と、
前記ヘッダプレート(5)に端部が挿通されて、開口(1)の長手方向に定間隔に並列された多数のチューブ(6)と、を具備する熱交換器のタンク構造において、
タンク本体(4)は、開口(1)の長手方向の端部と前記入口(3)との中間位置で且つ、前記開口(1)と前記底面(2)との深さ方向の中間位置で、前記一対の側壁(1a)間を架橋する橋部(7)が存在し、
前記橋部(7)は、前記底面(2)との間の空間を狭くした狭空間(8)を有し、
前記狭空間(8)を通過する流体の流速が増速されることにより、前記開口(1)の長手方向の端部およびその近傍の流体の流通を改善することを特徴とする熱交換器のタンク構造。
【請求項2】
前記橋部(7)は、その横断面が偏平で、前記流体の流通方向に沿って厚みが次第に厚く形成された請求項1に記載の熱交換器のタンク構造。
【請求項3】
前記橋部(7)は、前記底面(2)側の平面(14)が前記ヘッダプレート(5)の面(13)に対して1度~15度となるように傾斜された請求項1または請求項2のいずれかに記載の熱交換器のタンク構造。
【請求項4】
前記橋部(7)は、前記流体の流通方向の幅Lが5mm以上に形成された請求項1~請求項3のいずれかに記載の熱交換器のタンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン冷却水冷却用ラジエータや、インタークーラにおけるタンク構造であって、内部を流通する流体を各部に均一に供給するものに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の熱交換器ヘッダボックスおよび、それに対応する熱交換器は、熱交換器のタンクの両側壁間にタイロッドが架橋され、それがタンクの開口間に挿入されることにより、熱交換器の作動時に、タンクの流体の内圧に耐えるものである。
同様の構造は、特許文献2にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2014-502335号公報
【文献】仏国特許第2614980号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記、タンク本体の内部にタイロッド等の内リブを架橋する従来技術は、流体の内圧に対する対策を目的としていた。
本発明は、タンク本体の両側壁間を架橋する橋部を積極的に利用し、それにより熱交換器の各部に流体の均一な供給を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、一端部に方形の細長い開口1を有し、その開口1の長手方向に沿って一対の側壁1aが立設されると共に、その開口1に対向して底面2が形成され、その開口1の長手方向の中間部で、前記底面2に隣接して流体の入口3が形成され、その開口1に直交する横断面が、その入口3から開口1の長手方向の端部に至る程小さく形成されているタンク本体4と、
前記開口1を被嵌するヘッダプレート5と、
前記ヘッダプレート5に端部が挿通されて、開口1の長手方向に定間隔に並列された多数のチューブ6と、を具備する熱交換器のタンク構造において、
タンク本体4は、開口1の長手方向の端部と前記入口3との中間位置で且つ、前記開口1と前記底面2との深さ方向の中間位置で、前記一対の側壁1a間を架橋する橋部7が存在し、
前記橋部7は、前記底面2との間の空間を狭くした狭空間8を有し、
前記狭空間8を通過する流体の流速が増速されることにより、前記開口1の長手方向の端部およびその近傍の流体の流通を改善することを特徴とする熱交換器のタンク構造である。
請求項2に記載の本発明は、前記橋部7は、その横断面が偏平で、前記流体の流通方向に沿って厚みが次第に厚く形成された請求項1に記載の熱交換器のタンク構造である。
請求項3に記載の本発明は、前記橋部7は、前記底面2側の平面14が前記ヘッダプレート5の面13に対して1度~15度となるように傾斜された請求項1または請求項2のいずれかに記載の熱交換器のタンク構造である。
請求項4に記載の本発明は、前記橋部7は、前記流体の流通方向の幅Lが5mm以上に形成された請求項1~請求項3のいずれかに記載の熱交換器のタンク構造である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明は、タンク本体4の入口3と、開口1の長手方向の端部との中間位置で且つ、タンクの横断面の中間位置に橋部7を形成して、その橋部7と底面2との間に狭空間8を設ける。そして、その狭空間8を通過する流体の流速を増速させる。それにより開口1の長手方向の端部およびその近傍の流体の流通を改善し、熱交換器全体の熱交換を促進する。また、その橋部7は、橋部7とタンク本体4の底面2との間の流体の流れを整流して可及的に均一な流れを確保し、各チューブ6に流体の均一な供給を実現できる。さらには、橋部7がタンク本体4の剛性および耐圧性を確保する。
請求項2に記載の発明は、橋部7の横断面を偏平にし、且つ流体の流通方向に沿って厚みを次第に厚くしたものである。それにより、狭空間8の流体の流通をより促進し、熱交換を改善することができる。
請求項3に記載の発明は、橋部7の底面2側の平面14が、ヘッダプレート5の面13に対して1度~15度となるように傾斜されたので、熱交換の効率を確実に改善することができる。
請求項4に記載の発明は、橋部7の幅Lを流体の流通方向に5mm以上確保したので、熱交換の効率を確実に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は本発明の熱交換器のタンク構造の要部縦断面図。
図2は
図1のII部拡大図。
図3は
図1のIII-III矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1~
図3は、本発明の熱交換器のタンク構造である。
この熱交換器は、上下一対(下部側は省略する)のタンク本体4と、その開口1を被嵌するヘッダプレート5と、ヘッダプレート5に両端が挿通された多数のチューブ6と、各チューブ6間に配置されたコルゲート型のフィン15とを有する。そして、そのヘッダプレート5とチューブ6とフィン15とで、熱交換器コア16を形成する。また、熱交換器コア16のヘッダプレート5の外周には環状溝が形成されており、タンク本体4の開口1がシールパッキン12を介してその環状溝に嵌入され、タンク本体4の外周が、かしめられて熱交換器を構成するものである。
タンク本体4は、その縦断面(タンクの長手方向に平行な断面)が、
図1に示す如く、山形に形成されている。その山形の頂部はこの例では全体の右側に寄った位置に配置されている。そして、その頂部に入口3が開口する。タンク本体4の開口1は、方形に形成され、その開口1に直行する横断面は、その頂部から長手方向の両端に向かって、次第に小さくなるように形成されている。
このタンク本体4は、
図3に示す如く、方形の開口1から平行な一対の側壁1aが立ち上げられ、その頂部において中心線が、側壁1aに対してL字状に曲折されている。そして、入口3の中心部において、補強リブ9が開口1に直行する方向に位置して、一対の側壁1a間に配置されている。
図1において補強リブ9の下端部は、ヘッダプレート5から所定距離離間する。この補強リブ9は、入口3に流入する流体10の内圧に対して、タンク本体4が幅方向に拡開することを防止する。
それにより、開口1外周を被嵌するヘッダプレート5とタンク本体4との液密性を保持する。
(本発明の特徴)
ここにおいて、本発明の特徴は、タンク本体4の開口1の長手方向の端部と、流体の入口3との中間位置に橋部7を設けた点である。この橋部7は開口1に直交する横断面において、開口1と底面2との中間位置に配置され、且つ、この例では橋部7は開口1よりも底面2寄りに配置されている。
橋部7は、一対の対抗する側壁1a間に架橋され、その横断面は、開口1の幅方向に偏平に形成されている。また、その厚みは、流体10の流通方向の下流ほど厚く形成されている。さらに、
図2において、その橋部7の上面側は平面に形成され、その平面14とヘッダプレート5の面13とのなす角θが1度~15度に形成されている。好ましくは、その中間値の7度程度である。また、橋部7の流体10の流通方向の幅Lを、5mm以上に形成することができる。この幅Lは、流体10の流速に応じてより長くすることができる。
(作用)
この実施例において、入口3から流入した流体10は、橋部7の存在により、その流れを底面2方向に導く。即ち、橋部7と底面2との間の狭空間8を流通する流体10は、橋部7によって向きを変更されるとともに、その流速が増速される。
すると、入口3から流入した流体10は、開口1の長手方向の端部では、より流速が増加する。その結果、入口3から流入した流体10は、その長手方向の端部と、中間部とでより均等に分配される。それにより、各部におけるチューブ6内の流体10の供給を可及的に均一に行い、全体として、各部の熱交換の効率を向上する。橋部7の下方に周りこんだ流体は、下向きの矢印が示すように、その近傍のチューブに供給される。
次に、橋部7は、入口3と開口1の長手方向の端部との中間において、タンク本体4の剛性を高めるとともに、流体10に対する耐圧性を向上する。
なお、この例では、入口3が開口1の長手方向の一端寄りに配置されているため、橋部7の位置が入口3と開口1の他端との中間に一つのみ配置されている。これに加えて、補強リブ9と開口1の図において右端との中間にさらに、新たな橋部7を設けても良い。
さらに、橋部7は、その橋部7と底面2との間の流体を整流して各部におけるチューブ6への供給を可及的に均一にする。
この発明のタンク構造は、上流側のタンク本体4に橋部7が設けられていれば、その効果を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明は、熱交換器として、自動車用ラジエータ、自動車用インタークーラ、その他の熱交換器に適用することができる。
【符号の説明】
【0010】
1 開口
1a 側壁
2 底面
3 入口
4 タンク本体
5 ヘッダプレート
6 チューブ
7 橋部
8 狭空間
9 補強リブ
10 流体
12 シールパッキン
13 面
14 平面
15 フィン
16 熱交換器コア
θ 角
L 幅