(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】測距システム、及び、受光モジュール、並びに、バンドパスフィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20230220BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G02B5/28
(21)【出願番号】P 2020501777
(86)(22)【出願日】2019-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2019006064
(87)【国際公開番号】W WO2019163761
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/001822
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018028508
(32)【優先日】2018-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118290
【氏名又は名称】吉井 正明
(74)【代理人】
【識別番号】100094363
【氏名又は名称】山本 孝久
(72)【発明者】
【氏名】横川 創造
(72)【発明者】
【氏名】菊池 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 泰介
(72)【発明者】
【氏名】千代田 亮
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0133799(US,A1)
【文献】特開2016-218893(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0055325(US,A1)
【文献】特開2009-076557(JP,A)
【文献】特表2009-508163(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0257021(US,A1)
【文献】国際公開第2013/021659(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
G02B 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向けて赤外光を照射する光源部、
対象物からの赤外光を受信する受光部、及び、
受光部からのデータに基づいて対象物の距離情報を得る演算処理部、
を備えており、
受光部の受光面側には、所定の波長範囲の赤外光を選択的に透過するバンドパスフィルタを含む光学部材が配置されており、
バンドパスフィルタの光入射面は凹面形状であ
り、
光学部材は、バンドパスフィルタの光入射面側に配置されたレンズを備えており、
バンドパスフィルタの光入射面に対する最大像高の光の入射角は10度以下である、
測距システム。
【請求項2】
バンドパスフィルタの透過帯域の半値幅は50ナノメートル以下である、
請求項1に記載の測距システム。
【請求項3】
バンドパスフィルタは、
赤外光の所定の波長範囲において透過性を示す第1フィルタ、及び、
可視光について非透過性かつ赤外光に対して透過性を示す第2フィルタ、
から成る、
請求項1に記載の測距システム。
【請求項4】
第1フィルタ及び第2フィルタは基材の片面に積層して形成されている、
請求項3に記載の測距システム。
【請求項5】
第1フィルタは基材の一方の面に形成されており、
第2フィルタは基材の他方の面に形成されている、
請求項3に記載の測距システム。
【請求項6】
第1フィルタは光入射面側に配置されており、
第2フィルタは受光部側に配置されている、
請求項3に記載の測距システム。
【請求項7】
第2フィルタは光入射面に倣った凹面形状である、
請求項6に記載の測距システム。
【請求項8】
第2フィルタは平面形状である、
請求項6に記載の測距システム。
【請求項9】
第2フィルタは光入射面側に配置されており、
第1フィルタは受光部側に配置されている、
請求項3に記載の測距システム。
【請求項10】
第1フィルタは光入射面に倣った凹面形状である、
請求項9に記載の測距システム。
【請求項11】
光源部は、赤外線レーザ素子または赤外線発光ダイオード素子を備えている、
請求項1に記載の測距システム。
【請求項12】
光源部は、略850ナノメートル、略905ナノメートル、または、略940ナノメートルを中心波長とする赤外光を照射する、
請求項1に記載の測距システム。
【請求項13】
演算処理部は、対象物の反射光の飛行時間に基づいて距離情報を得る、
請求項1に記載の測距システム。
【請求項14】
対象物に対して所定のパターンで赤外光が照射され、
演算処理部は、対象物の反射光のパターンに基づいて距離情報を得る、
請求項1に記載の測距システム。
【請求項15】
赤外光を受信する受光部、及び、
受光部の受光面側に配置され、所定の波長範囲の赤外光を選択的に透過するバンドパスフィルタを含む光学部材、
を含んでおり、
バンドパスフィルタの光入射面は凹面形状であ
り、
光学部材は、バンドパスフィルタの光入射面側に配置されたレンズを備えており、
バンドパスフィルタの光入射面に対する最大像高の光の入射角は10度以下である、
受光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距システム、及び、受光モジュール、並びに、バンドパスフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、対象物に対して光を照射しその反射光を受信することによって対象物までの距離情報を得るといった測距システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。赤外光を照射し反射光を受信して距離情報を得るといった構成は、光源が視認されにくく、通常の可視光画像の撮像と並行した動作が可能であるなどといった利点を備えている。
【0003】
測定に影響を及ぼす外乱を減らすといった観点からは、撮像の対象となる電磁波波長である赤外光の波長範囲をできるだけ狭く限定することが好ましい。このため、特定の波長帯域のみ透過させるバンドパスフィルタを撮像素子の前に配置するといったことが行なわれることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯型の電子機器に用いられる受光モジュールなどについては、電子機器の筐体の低背化に対応するため、撮像素子の中央と周辺とで主光線角度が大きく異なるといった、いわゆる瞳補正を持った光学系の構成とならざるを得ない。バンドパスフィルタの帯域特性は、入射する光の角度によって波長方向にシフトする。そのため、撮像素子などから成る受光部の中央と周辺とで対象光を支障なく受光するためには、バンドパスフィルタの帯域幅を本来よりも広げて設定する必要がある。これは、外乱光による影響が増加する要因となる。
【0006】
そこで、本開示は、バンドパスフィルタの帯域幅を狭く設定することができ、外乱光による影響を軽減することができる測距システム、及び、受光モジュール、並びに、バンドパスフィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示に係る測距システムは、
対象物に向けて赤外光を照射する光源部、
対象物からの赤外光を受信する受光部、及び、
受光部からのデータに基づいて対象物の距離情報を得る演算処理部、
を備えており、
受光部の受光面側には、所定の波長範囲の赤外光を選択的に透過するバンドパスフィルタを含む光学部材が配置されており、
バンドパスフィルタの光入射面は凹面形状である、
測距システムである。
【0008】
上記の目的を達成するための本開示に係る受光モジュールは、
赤外光を受信する受光部、及び、
受光部の受光面側に配置され、所定の波長範囲の赤外光を選択的に透過するバンドパスフィルタを含む光学部材、
を含んでおり、
バンドパスフィルタの光入射面は凹面形状である、
受光モジュールである。
【0009】
上記の目的を達成するための本開示に係るバンドパスフィルタの製造方法は、
少なくとも赤外光成分を透過するとともに塑性変形するフィルムシートに対して、バンドパスフィルタ層を形成し、
一方の面に凹部が形成され、凹部から他方の面へ導通する開口が形成された金型に対して、バンドパスフィルタ層が形成されたフィルムシートを設置し、
他方の面から開口を通じて凹部の空気を吸引する、
バンドパスフィルタの製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の第1の実施形態に係る測距システムの基本的な構成を説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、参考例の測距システムにおける光学部材の構成を説明するための模式図である。
【
図3】
図3Aは、参考例の光学部材における、像高とCRA(主光線角度:Chief Ray Angle)に対する角度との関係を説明するための模式的なグラフである。
図3Bは、参考例の光学部材におけるバンドパスフィルタの特性を説明するための模式的なグラフである。
【
図4】
図4Aは、第1の実施形態に係る測距システムにおける光学部材の構成を説明するための模式図である。
図4Bは、第1の実施形態の光学部材におけるバンドパスフィルタの特性を説明するための模式的なグラフである。
【
図5】
図5は、バンドパスフィルタにおける、波長シフトとCRAに対する角度との関係を説明するための模式的なグラフである。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、バンドパスフィルタの構成を説明するための模式図である。
図6Cは、バンドパスフィルタの特性を説明するための模式図なグラフである。
【
図7】
図7Aは、第1フィルタの特性を説明するための模式図なグラフである。
図7Bは、第2フィルタの特性を説明するための模式図なグラフである。
【
図8】
図8は、第1フィルタの構成例を説明するための図であって、
図8Aは積層関係を説明するための表である。
図8Bは、フィルタの透過特性である。
【
図9】
図9は、第2フィルタの構成例を説明するための図であって、
図9Aは積層関係を説明するための表である。
図9Bは、フィルタの透過特性である。
【
図15】
図15は、バンドパスフィルタの第5製造方法において用いられるシート材の構成を説明するための模式図である。
【
図17】
図17は、バンドパスフィルタの第5製造方法におけるプレス加工を説明するための模式図である。
【
図20】
図20は、レンズを備えた受光モジュールの構造を説明するための模式図である。
【
図22】
図22は、測距システムの第1変形例を説明するための模式図である。
【
図23】
図23は、測距システムの第2変形例を説明するための模式図である。
【
図24】
図24は、測距システムの第3変形例を説明するための模式図である。
【
図25】
図25は、測距システムの第4変形例を説明するための模式図である。
【
図27】
図27は、車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図28】
図28は、車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【
図29】
図29は、内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図30】
図30は、
図29に示すカメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態に基づいて本開示を説明する。本開示は実施形態に限定されるものではなく、実施形態における種々の数値や材料などは例示である。以下の説明において、同一要素または同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示に係る、測距システム、及び、受光モジュール、全般に関する説明
2.第1の実施形態
3.第1変形例
4.第2変形例
5.第3変形例
6.第4変形例
7.第1応用例
8.第2応用例
9.本開示の構成
【0012】
[本開示に係る、測距システム、及び、受光モジュール、全般に関する説明]
上述したように、本開示に係る測距システムは、
対象物に向けて赤外光を照射する光源部、
対象物からの赤外光を受信する受光部、及び、
受光部からのデータに基づいて対象物の距離情報を得る演算処理部、
を備えており、
受光部の受光面側には、所定の波長範囲の赤外光を選択的に透過するバンドパスフィルタを含む光学部材が配置されており、
バンドパスフィルタの光入射面は凹面形状である、
測距システムである。
【0013】
本開示に係る測距システムにおいて、
光学部材は、バンドパスフィルタの光入射面側に配置されたレンズを備えており、
バンドパスフィルタの光入射面に対する最大像高の光の入射角は10度以下である、
構成とすることができる。
【0014】
上述した好ましい構成を含む本開示の測距システムにおいて、
バンドパスフィルタの透過帯域の半値幅は50ナノメートル以下である、
構成とすることができる。
【0015】
上述した各種の好ましい構成を含む本開示の測距システムにおいて、
バンドパスフィルタは、
赤外光の所定の波長範囲において透過性を示す第1フィルタ、及び、
可視光について非透過性かつ赤外光に対して透過性を示す第2フィルタ、
から成る、
構成とすることができる。
【0016】
この場合において、
第1フィルタ及び第2フィルタは基材の片面に積層して形成されている、
構成とすることができる。あるいは又、
第1フィルタは基材の一方の面に形成されており、
第2フィルタは基材の他方の面に形成されている、
構成とすることもできる。
【0017】
上述した各種の好ましい構成を含む本開示の測距システムにおいて、
第1フィルタは光入射面側に配置されており、
第2フィルタは受光部側に配置されている、
構成とすることができる。
【0018】
この場合において、第2フィルタは光入射面に倣った凹面形状である構成とすることができる。あるいは又、第2フィルタは平面形状である構成とすることもできる。
【0019】
あるいは又、
第2フィルタは光入射面側に配置されており、
第1フィルタは受光部側に配置されている、
構成とすることができる。
【0020】
この場合において、第1フィルタは光入射面に倣った凹面形状である構成とすることができる。
【0021】
上述した各種の好ましい構成を含む本開示の測距システムにおいて、
光源部は、赤外線レーザ素子または赤外線発光ダイオード素子を備えている、
構成とすることができる。
【0022】
上述した各種の好ましい構成を含む本開示の測距システムにおいて、
光源部は、略850ナノメートル、略905ナノメートル、または、略940ナノメートルを中心波長とする赤外光を照射する、
構成とすることができる。
【0023】
上述した各種の好ましい構成を含む本開示の測距システムにおいて、
演算処理部は、対象物の反射光の飛行時間に基づいて距離情報を得る構成とすることができる。
【0024】
あるいは又、
対象物に対して所定のパターンで赤外光が照射され、
演算処理部は、対象物の反射光のパターンに基づいて距離情報を得る、
構成とすることができる。
【0025】
上述したように、本開示に係る受光モジュールは、
赤外光を受信する受光部、及び、
受光部の受光面側に配置され、所定の波長範囲の赤外光を選択的に透過するバンドパスフィルタを含む光学部材、
を含んでおり、
バンドパスフィルタの光入射面は凹面形状である、
受光モジュールである。
【0026】
本開示に係る受光モジュールにおいて、
光学部材は、バンドパスフィルタの光入射面側に配置されたレンズを備えている、
構成とすることができる。この場合において、バンドパスフィルタの光入射面に対する最大像高の光の入射角は10度以下である構成とすることができる。
【0027】
上述したように、本開示に係るバンドパスフィルタの製造方法は、
少なくとも赤外光成分を透過するとともに塑性変形するフィルムシートに対して、バンドパスフィルタ層を形成し、
一方の面に凹部が形成され、凹部から他方の面へ導通する開口が形成された金型に対して、バンドパスフィルタ層が形成されたフィルムシートを設置し、
他方の面から開口を通じて凹部の空気を吸引する、
バンドパスフィルタの製造方法である。
【0028】
本開示に係るバンドパスフィルタの製造方法において、
バンドパスフィルタ層が形成されたフィルムシートを、凹部の空気を吸引したことにより形成された凹面を含む所定形状に個片化する、
構成とすることができる。
【0029】
上述した各種の好ましい構成を含む本開示の測距システム及び受光モジュールにおいて、受光部として、例えば、光電変換素子や種々の画素トランジスタを含む画素が、行方向及び列方向に2次元マトリクス状に配列されて成るCMOSセンサやCCDセンサといった撮像素子を用いることができる。
【0030】
上述した各種の好ましい構成を含む本開示の測距システムにおいて、受光部からのデータに基づいて対象物の距離情報を得る演算処理部は、ハードウェアによる物理的な結線に基づいて動作するといった構成であってもよいし、プログラムに基づいて動作するといった構成であってもよい。測距システム全体を制御する制御部などにおいても同様である。
【0031】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、本開示に係る、測距システム、及び、受光モジュールに関する。
【0032】
図1は、本開示の第1の実施形態に係る測距システムの基本的な構成を説明するための模式図である。
【0033】
測距システム1は、
対象物に向けて赤外光を照射する光源部70、
対象物からの赤外光を受信する受光部20、及び、
受光部20からのデータに基づいて対象物の距離情報を得る演算処理部40、
を備えている。
【0034】
受光部20の受光面側には、所定の波長範囲の赤外光を選択的に透過するバンドパスフィルタ12を含む光学部材10が配置されている。バンドパスフィルタ12の光入射面は凹面形状である。光学部材10は、バンドパスフィルタ12の光入射面側に配置されたレンズ(レンズ群)11を備えている。
【0035】
受光部20はCMOSセンサなどによって構成されており、受光部20の信号はA/D変換部30によってデジタル化され、演算処理部40に送られる。これらの動作は、制御部50によって制御される。
【0036】
光源部70は、例えば、波長700から1100ナノメートル程度の範囲の赤外光を照射する。光源部70は、赤外線レーザ素子または赤外線発光ダイオード素子といった発光素子を備えている。中心波長からのズレの程度は、前者が1ナノメートル、後者が10ナノメートルといった程度である。光源部70は、制御部50によって制御される光源駆動部60によって駆動される。
【0037】
光源部70が照射する赤外光の波長は、測距システムの用途や構成において適宜選択すればよい。例えば、中心波長として、略850ナノメートル、略905ナノメートル、または、略940ナノメートルといった値を選択することができる。
【0038】
受光部20、A/D変換部30、演算処理部40、制御部50、および、光源駆動部60は、例えば、シリコンから成る半導体基板上に形成されている。これらは、単一のチップとして構成されていてもよいし、機能に応じて複数のチップとして構成されていてもよい。これについては、後述する
図21Aを参照して説明する。
【0039】
受信システム1は、例えば機器組込用途に向くようにユニットとして構成されていてもよいし、別体として構成されていてもよい。
【0040】
以上、測距システム1の基本的な構成について説明した。次いで、本開示の理解を助けるため、バンドパスフィルタの光入射面を平面状とした構成の参考例とその問題点について説明する。
【0041】
図2は、参考例の測距システムにおける光学部材の構成を説明するための模式図である。
【0042】
図1に示す光学部材10に対して、参考例の光学部材90は、バンドパスフィルタ92が平面状である点が相違する。
【0043】
図3Aは、参考例の光学部材における、像高とCRA(主光線角度:Chief Ray Angle)に対する角度との関係を説明するための模式的なグラフである。
図3Bは、参考例の光学部材におけるバンドパスフィルタの特性を説明するための模式的なグラフである。
【0044】
例えば、低背化に対応するようにレンズを構成する場合、受光部20の中央部と周辺部とで主光線角度が大きく異なるといった構成とならざるを得ない。
図3Aは、このような場合における像高とCRAに対する角度との関係を示す。グラフは、受光部20における像高が最大となる場合(通常、画面の4隅が該当する)を基準に正規化して示した。グラフに示すように、像高が0の場合に対して、像高が最大となる場合には、CRAに対する角度が30度程度変化する。
【0045】
結果として、受光部20の中央部に光が入射する場合と周辺部に光が入射する場合とで、バンドパスフィルタ92に対する光の入射角も30度程度変化する。バンドパスフィルタ92に斜めに光が入射する場合、フィルタを透過する光の光路長が伸びるので、特性は短波長側にシフトする。
【0046】
従って、例えば受信対象を中心波長905ナノメートルの赤外光とする場合、CRAに対する角度が0であるときのバンドパスフィルタ92の帯域中心を、905ナノメートルよりも長波長側に設定するといった必要が生ずる。また、その帯域幅も、CRAに対する角度が0度ないし30度であっても905ナノメートルが透過するといった設定にする必要がある。結果として、バンドパスフィルタ92の帯域幅を本来よりも広げて設定する必要がある。これは、環境光の混入など外乱による影響が増加する要因となる。
【0047】
以上、バンドパスフィルタの光入射面を平面状とした構成の参考例とその問題点について説明した。
【0048】
引き続き、第1の実施形態について説明する。
【0049】
図4Aは、第1の実施形態に係る測距システムにおける光学部材の構成を説明するための模式図である。
図4Bは、第1の実施形態の光学部材におけるバンドパスフィルタの特性を説明するための模式的なグラフである。
【0050】
図4Aに示すように、第1の実施形態におけるバンドパスフィルタ12の光入射面は凹面形状である。これによって、バンドパスフィルタ12に対する光の入射角の変化が低減する。
【0051】
従って、例えば受信対象を中心波長905ナノメートルの赤外光とする場合、CRAに対する角度が0であるときのバンドパスフィルタ12の帯域中心を、905ナノメートルに近づけて設定することができる。また、受光部20の周辺部に光が入射する場合においても、バンドパスフィルタ12の短波長側の特性シフトは軽減される。結果として、バンドパスフィルタ92の帯域幅をより狭めて設定することができ、外乱による影響を抑制することができる。これによって、測定精度の向上を図ることができる。
【0052】
図5は、バンドパスフィルタにおける、波長シフトとCRAに対する角度との関係を説明するための模式的なグラフである。より具体的には、バンドパスフィルタ12の透過帯域の短波長側の値と長波長側の値のシフト量を示した。
【0053】
図5によれば、CRAに対する角度が30度程度である場合、バンドパスフィルタ12の透過帯域は概ね20ナノメートル程度シフトする。これに対し、CRAに対する角度が10度程度であれば、透過帯域のシフト量はおよそ十分の一程度に抑えることができる。従って、バンドパスフィルタ12の光入射面に対する最大像高の光の入射角は10度以下であるように、バンドパスフィルタ12の形状を設定することが好ましい。また、バンドパスフィルタ12の透過帯域の半値幅は50ナノメートル以下とすることが好ましい。
【0054】
バンドパスフィルタ12は、赤外光の所定の波長範囲において透過性を示す第1フィルタ、及び、可視光について非透過性かつ赤外光に対して透過性を示す第2フィルタから成る構成とすることができる。以下、バンドパスフィルタ12の構成例や製造方法について、図を参照して説明する。
【0055】
図6A及び
図6Bは、バンドパスフィルタの構成を説明するための模式図である。
図6Cは、バンドパスフィルタの特性を説明するための模式図なグラフである。
【0056】
図6Aは、第1フィルタ12Aは光入射面側に配置されており、第2フィルタ12Bは受光部20側に配置されている構成例を示す。
図6Bは、第2フィルタ12Bは光入射面側に配置されており、第1フィルタ12Aは受光部20側に配置されている構成例を示す。いずれも、
図6Cのような透過特性を示す。
【0057】
図7Aは、第1フィルタの特性を説明するための模式図なグラフである。
図7Bは、第2フィルタの特性を説明するための模式図なグラフである。
【0058】
光学的なフィルタは、例えば、高屈折率材料と低屈折率材料とを適宜積層した多層膜から構成することができる。しかしながら、対象光を含む波長帯域に透過特性を持たせるように設計した場合、例えば逓倍の関係となるような周波数の光においてもある程度の透過特性を示す。従って、第1フィルタ12Aの特性は、模式的には
図7Aのように表される。このため、
図7Bに示すように可視光について非透過性かつ赤外光に対して透過性を示す第2フィルタ12Bを組み合わせる。結果として、フィルタ全体の特性は、
図6Cのようになる。
【0059】
図8は、第1フィルタの構成例を説明するための図であって、
図8Aは積層関係を説明するための表である。
図8Bは、フィルタの透過特性である。
【0060】
この例では、第1フィルタ12Aは、11層の多層膜で構成されている。高屈折率材料としてシリコン酸化物、低屈折率材料としてシリコンを用いた。
【0061】
図9は、第2フィルタの構成例を説明するための図であって、
図9Aは積層関係を説明するための表である。
図9Bは、フィルタの透過特性である。
【0062】
この例では、第2フィルタ12Bは、5層の多層膜で構成されている。高屈折率材料としてシリコン酸化物、低屈折率材料としてシリコンを用いた。
【0063】
多層膜の成膜方法として、CVD,PDV,ALDといった周知の方法を用いることができるが、高精度で成膜ができカバレッジも良好といった利点を備えているALDを選択することが好ましい。
【0064】
第1フィルタ12A及び第2フィルタ12Bは基材の片面に積層して形成されている構成とすることができる。以下、製造方法について説明する。
【0065】
【0066】
赤外光に対して透明な材料から成り、表面に凹面が形成された基材13を準備し(
図10A参照)、その上に多層膜から成る第2フィルタ12Bを形成する(
図10B参照)。次いで、その上に多層膜から成る第1フィルタ12Aを形成する(
図10C参照)。その後、凹面を含む所定形状に個片化し(
図10D参照)、バンドパスフィルタ12を得ることができる。
【0067】
尚、上述の例では、第2フィルタ12Bを形成し、次いで、第1フィルタ12Aを形成するとしたが、両者を入れ替えた構成とすることもできる。
【0068】
【0069】
この例では、表面に凹面が形成され対応する裏面の部分が凸面となっている基材13Aを用いる点が相違する他、
図10を参照して説明した工程と同様であるので、説明を省略する。
【0070】
上述の構成にあっては、第1フィルタ12A及び第2フィルタ12Bは積層されているが、他の構成とすることもできる。例えば、第1フィルタ12Aは基材の一方の面に形成されており、第2フィルタ12Bは基材の他方の面に形成されているといった構成である。
【0071】
【0072】
図12Aと
図12Bとにあっては、第1フィルタ12Aと第2フィルタ12Bとが、一定の間隔を空けて配置されている。
図12Aにおいて、第1フィルタ12Aは光入射面側に配置されており、第2フィルタ12Bは受光部20側に配置されている。一方、
図12Bにおいて、第2フィルタ12Bは光入射面側に配置されており、第1フィルタ12Aは受光部20側に配置されている。
図12Cは
図12Aの変形であり、第2フィルタ12Bが平面状とされている。
【0073】
【0074】
表面に凹面が形成され対応する裏面の部分が凸面となっている基材13Aを準備し(
図13A参照)、その表面に多層膜から成る第1フィルタ12Aを形成する(
図13B参照)。次いで、基材13Aの裏面に多層膜から成る第2フィルタ12Bを形成する(
図13C参照)。その後、凹面を含む所定形状に個片化し(
図13D参照)、バンドパスフィルタ12を得ることができる。
【0075】
尚、上述の例では、第2フィルタ12Bを形成し、次いで、第1フィルタ12Aを形成するとしたが、両者を入れ替えた構成とすることもできる。
【0076】
【0077】
この例では、表面に凹面が形成され裏面が平坦である基材13を用いる点が相違する他、
図14を参照して説明した工程と同様であるので、説明を省略する。
【0078】
【0079】
図15は、バンドパスフィルタの第5製造方法において用いられるフィルムシート15の構成を説明するための模式図である。少なくとも赤外光成分を透過する材料から成り、外力が加わることにより塑性変形するフィルムシート15Aを準備し、当該フィルムシート15Aの一方の面に反射膜12C(バンドパスフィルタ層、BPF層)を蒸着にて形成する。次いで、当該フィルムシート15Aの他方の面に反射防止膜12D(AR層)を蒸着にて形成する。これによって、バンドパスフィルタ層などが形成されたフィルムシート15を得ることができる。
【0080】
尚、フィルムシート15Aに対して、先に反射防止膜12Dを蒸着した後に反射膜12Cを蒸着しても良い。また、フィルムシート15Aは、吸収材を混錬したバンドパスフィルタ機能を持つものである。具体的には、シクロオレフィンポリマーやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネートなど樹脂を基材としたシートをベースとした素材に、吸収素材を混錬または蒸着することで、バンドパス特性を有したフィルムシートである。この構成により、フィルムシートの一方の面に蒸着された反射膜だけでは取り除ききれなかった波長帯の光を、バンドパス特性を有したフィルムシートで取り除くことができる。尚、フィルムシート15Aは、本開示の構成に限定されず、バンドパス特性を持たないフィルムシート材が適用されても良い。
【0081】
図16A、
図16B、
図16Cは、バンドパスフィルタの第5製造方法における真空成型加工を説明するための模式図である。一方の面に所定の曲率を有する凹部16Aが形成され、当該凹部16Aの中央付近に他方の面側へ導通する開口16Bが形成された吸引型16(金型)を準備する(
図16Aを参照)。次いで、当該吸引型16の凹部16Aが形成された面上に、反射膜が上となるように(反射防止膜と吸引型が対向するように)フィルムシート15を置く(
図16Bを参照)。その後、当該吸引型16の他方の面から、開口16Bを通じて凹部16A内の空気を吸引し、フィルムシート15を塑性変形させる(
図16Cを参照)。次いで、吸引型16からフィルムシート15を取り外すことで、所定の曲率を有する凹部が形成されたフィルムシート15を得ることができる。
【0082】
図17は、バンドパスフィルタの第5製造方法におけるプレス加工を説明するための模式図である。フィルムシート15を
図16A、
図16B、
図16Cで示した方法で真空成型加工し、フィルムシート15に複数の凹部を形成する。その後、凹部を含む所定形状にプレス加工にて個片化し、バンドパスフィルタ12を得ることができる。
【0083】
第5製造方法を用いることにより、平面のフィルムシートに対してバンドパスフィルタ層を蒸着できるので、バンドパスフィルタ層を均一に蒸着させることができるとともに、低コストで製造することが可能となる。
【0084】
受光部20と光学部材10とは、一体化された受光モジュールとして構成することもできる。以下、受光モジュールの製造方法等について説明する。
【0085】
【0086】
撮像素子が複数形成された半導体ウエハ200、受光面に対応した開口が形成されているウエハ状のフレーム140、及び、バンドパスフィルタが複数形成されたウエハ120を積層し(
図18A参照)、次いで、ダイシングを行い、所定のチップ状に個片化する(
図18B参照)。個片化されたチップの断面を
図19Aに示す。符号14Aはフレームを示す。この構成では、基材13と受光部20との間にキャビティが存在する。
【0087】
場合によっては、開口を有するフレーム140を、開口のない接着部材に置き換えた構成としてもよい。
図19Bは、この構成における個片化されたチップの断面を示す。符号14Bは接着部材を示す。この構成では、基材13と受光部20との間にキャビティが存在しない。
【0088】
図20は、更に、レンズを加えた受光モジュールの例を示す。上述のようにして製造したチップとレンズとを筐体に組み込んだといった構成である。
【0089】
以上、受光モジュールの製造方法等について説明した。
【0090】
上述したように、
図1に示す、受光部20、A/D変換部30、演算処理部40、制御部50、および、光源駆動部60は、単一のチップとして構成されていてもよいし、機能に応じて複数のチップとして構成されていてもよい。
図21A、
図21B,
図21Cは、測距システムに用いられる半導体装置の構成を説明するための模式図である。
【0091】
引き続き、距離情報の取得について説明する。
図1に示す測距システム1において、演算処理部40は、対象物の反射光の飛行時間に基づいて距離情報を得るといった構成とすることもできるし、対象物に対して所定のパターンで赤外光が照射され、演算処理部40は、対象物の反射光のパターンに基づいて距離情報を得るといった構成とすることもできる。以下、これらを、各種の変形例として説明する。
【0092】
[第1変形例]
図22は、反射光の飛行時間に基づいて距離情報を得るといった構成である。測距システム1Aにおいて、光源部70の前には光拡散部材71が配置され、拡散光が照射される。光源部70は、例えば、数10kHz~数100MHzといった周波数で変調される。そして、光源部70の変調に同期して反射光成分を検知することによって距離情報を得ることができる。
【0093】
[第2変形例]
図23も、反射光の飛行時間に基づいて距離情報を得るといった構成である。測距システム1Bにおいて、光源部70の光は走査部72によって走査される。そして、走査に同期して反射光成分を見地することによって距離情報を得ることができる。
【0094】
[第3変形例]
図24は、対象物に対して所定のパターンで赤外光を照射し、演算処理部40は、対象物の反射光のパターンに基づいて距離情報を得るといった構成である。測距システム1Cにおいて、光源部70の光はパターン投影部73によって所定のパターンとされ、対象物に対して照射される。照度パターンの空間分布情報や、対象物におけるパターン像の歪みを検知することによって距離情報を得ることができる。
【0095】
[第4変形例]
図25は、複数の受光部を離間して配置することによって、立体情報も得るといった構成である。尚、第1変形例のように拡散光を照射するといった構成、第2変形例のように光源光を走査するといった構成、第3変形例のように所定のパターンで照射するといった構成のいずれであってもよい。
図26A、
図26Bは、携帯型の電子機器において展開した場合における受光部や光源部の配置例を説明するための模式図である。
【0096】
第1の実施形態にあっては、バンドパスフィルタの帯域を狭くすることができ、外乱光による影響を軽減することができる。従って、外光下においても良質な測距イメージングが可能になる。また、レンズモジュールに応じてバンドパスフィルタの形状を設定することによって、波長選択性に優れた受光モジュールを提供することができる。
【0097】
[第1の応用例]
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0098】
図27は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図27に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0099】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサ等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。
図27では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0100】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0101】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0102】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0103】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0104】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0105】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、及び降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0106】
ここで、
図28は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0107】
なお、
図28には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0108】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサ又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0109】
図27に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0110】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0111】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサ又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0112】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0113】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0114】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX、LTE(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0115】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0116】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。なお、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0117】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。なお、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0118】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0119】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0120】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0121】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0122】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図27の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0123】
なお、
図27に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサ又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0124】
本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、車外情報検出ユニットの撮像部に適用され得る。
【0125】
[第2の応用例]
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0126】
図29は、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システム5000の概略的な構成の一例を示す図である。
図29では、術者(医師)5067が、内視鏡手術システム5000を用いて、患者ベッド5069上の患者5071に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム5000は、内視鏡5001と、その他の術具5017と、内視鏡5001を支持する支持アーム装置5027と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート5037と、から構成される。
【0127】
内視鏡手術では、腹壁を切って開腹する代わりに、トロッカ5025a~5025dと呼ばれる筒状の開孔器具が腹壁に複数穿刺される。そして、トロッカ5025a~5025dから、内視鏡5001の鏡筒5003や、その他の術具5017が患者5071の体腔内に挿入される。図示する例では、その他の術具5017として、気腹チューブ5019、エネルギー処置具5021及び鉗子5023が、患者5071の体腔内に挿入されている。また、エネルギー処置具5021は、高周波電流や超音波振動により、組織の切開及び剥離、又は血管の封止等を行う処置具である。ただし、図示する術具5017はあくまで一例であり、術具5017としては、例えば攝子、レトラクタ等、一般的に内視鏡下手術において用いられる各種の術具が用いられてよい。
【0128】
内視鏡5001によって撮影された患者5071の体腔内の術部の画像が、表示装置5041に表示される。術者5067は、表示装置5041に表示された術部の画像をリアルタイムで見ながら、エネルギー処置具5021や鉗子5023を用いて、例えば患部を切除する等の処置を行う。なお、図示は省略しているが、気腹チューブ5019、エネルギー処置具5021及び鉗子5023は、手術中に、術者5067又は助手等によって支持される。
【0129】
(支持アーム装置)
支持アーム装置5027は、ベース部5029から延伸するアーム部5031を備える。図示する例では、アーム部5031は、関節部5033a、5033b、5033c、及びリンク5035a、5035bから構成されており、アーム制御装置5045からの制御により駆動される。アーム部5031によって内視鏡5001が支持され、その位置及び姿勢が制御される。これにより、内視鏡5001の安定的な位置の固定が実現され得る。
【0130】
(内視鏡)
内視鏡5001は、先端から所定の長さの領域が患者5071の体腔内に挿入される鏡筒5003と、鏡筒5003の基端に接続されるカメラヘッド5005と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒5003を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡5001を図示しているが、内視鏡5001は、軟性の鏡筒5003を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0131】
鏡筒5003の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡5001には光源装置5043が接続されており、当該光源装置5043によって生成された光が、鏡筒5003の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者5071の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡5001は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0132】
カメラヘッド5005の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU:Camera Control Unit)5039に送信される。なお、カメラヘッド5005には、その光学系を適宜駆動させることにより、倍率及び焦点距離を調整する機能が搭載される。
【0133】
なお、例えば立体視(3D表示)等に対応するために、カメラヘッド5005には撮像素子が複数設けられてもよい。この場合、鏡筒5003の内部には、当該複数の撮像素子のそれぞれに観察光を導光するために、リレー光学系が複数系統設けられる。
【0134】
(カートに搭載される各種の装置)
CCU5039は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡5001及び表示装置5041の動作を統括的に制御する。具体的には、CCU5039は、カメラヘッド5005から受け取った画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。CCU5039は、当該画像処理を施した画像信号を表示装置5041に提供する。また、CCU5039は、カメラヘッド5005に対して制御信号を送信し、その駆動を制御する。当該制御信号には、倍率や焦点距離等、撮像条件に関する情報が含まれ得る。
【0135】
表示装置5041は、CCU5039からの制御により、当該CCU5039によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。内視鏡5001が例えば4K(水平画素数3840×垂直画素数2160)又は8K(水平画素数7680×垂直画素数4320)等の高解像度の撮影に対応したものである場合、及び/又は3D表示に対応したものである場合には、表示装置5041としては、それぞれに対応して、高解像度の表示が可能なもの、及び/又は3D表示可能なものが用いられ得る。4K又は8K等の高解像度の撮影に対応したものである場合、表示装置5041として55インチ以上のサイズのものを用いることで一層の没入感が得られる。また、用途に応じて、解像度、サイズが異なる複数の表示装置5041が設けられてもよい。
【0136】
光源装置5043は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部を撮影する際の照射光を内視鏡5001に供給する。
【0137】
アーム制御装置5045は、例えばCPU等のプロセッサによって構成され、所定のプログラムに従って動作することにより、所定の制御方式に従って支持アーム装置5027のアーム部5031の駆動を制御する。
【0138】
入力装置5047は、内視鏡手術システム5000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置5047を介して、内視鏡手術システム5000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、入力装置5047を介して、患者の身体情報や、手術の術式についての情報等、手術に関する各種の情報を入力する。また、例えば、ユーザは、入力装置5047を介して、アーム部5031を駆動させる旨の指示や、内視鏡5001による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示、エネルギー処置具5021を駆動させる旨の指示等を入力する。
【0139】
入力装置5047の種類は限定されず、入力装置5047は各種の公知の入力装置であってよい。入力装置5047としては、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、スイッチ、フットスイッチ5057及び/又はレバー等が適用され得る。入力装置5047としてタッチパネルが用いられる場合には、当該タッチパネルは表示装置5041の表示面上に設けられてもよい。
【0140】
あるいは、入力装置5047は、例えばメガネ型のウェアラブルデバイスやHMD(Head Mounted Display)等の、ユーザによって装着されるデバイスであり、これらのデバイスによって検出されるユーザのジェスチャや視線に応じて各種の入力が行われる。また、入力装置5047は、ユーザの動きを検出可能なカメラを含み、当該カメラによって撮像された映像から検出されるユーザのジェスチャや視線に応じて各種の入力が行われる。更に、入力装置5047は、ユーザの声を収音可能なマイクロフォンを含み、当該マイクロフォンを介して音声によって各種の入力が行われる。このように、入力装置5047が非接触で各種の情報を入力可能に構成されることにより、特に清潔域に属するユーザ(例えば術者5067)が、不潔域に属する機器を非接触で操作することが可能となる。また、ユーザは、所持している術具から手を離すことなく機器を操作することが可能となるため、ユーザの利便性が向上する。
【0141】
処置具制御装置5049は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具5021の駆動を制御する。気腹装置5051は、内視鏡5001による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者5071の体腔を膨らめるために、気腹チューブ5019を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ5053は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ5055は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0142】
以下、内視鏡手術システム5000において特に特徴的な構成について、更に詳細に説明する。
【0143】
(支持アーム装置)
支持アーム装置5027は、基台であるベース部5029と、ベース部5029から延伸するアーム部5031と、を備える。図示する例では、アーム部5031は、複数の関節部5033a、5033b、5033cと、関節部5033bによって連結される複数のリンク5035a、5035bと、から構成されているが、
図29では、簡単のため、アーム部5031の構成を簡略化して図示している。実際には、アーム部5031が所望の自由度を有するように、関節部5033a~5033c及びリンク5035a、5035bの形状、数及び配置、並びに関節部5033a~5033cの回転軸の方向等が適宜設定され得る。例えば、アーム部5031は、好適に、6自由度以上の自由度を有するように構成され得る。これにより、アーム部5031の可動範囲内において内視鏡5001を自由に移動させることが可能になるため、所望の方向から内視鏡5001の鏡筒5003を患者5071の体腔内に挿入することが可能になる。
【0144】
関節部5033a~5033cにはアクチュエータが設けられており、関節部5033a~5033cは当該アクチュエータの駆動により所定の回転軸まわりに回転可能に構成されている。当該アクチュエータの駆動がアーム制御装置5045によって制御されることにより、各関節部5033a~5033cの回転角度が制御され、アーム部5031の駆動が制御される。これにより、内視鏡5001の位置及び姿勢の制御が実現され得る。この際、アーム制御装置5045は、力制御又は位置制御等、各種の公知の制御方式によってアーム部5031の駆動を制御することができる。
【0145】
例えば、術者5067が、入力装置5047(フットスイッチ5057を含む)を介して適宜操作入力を行うことにより、当該操作入力に応じてアーム制御装置5045によってアーム部5031の駆動が適宜制御され、内視鏡5001の位置及び姿勢が制御されてよい。当該制御により、アーム部5031の先端の内視鏡5001を任意の位置から任意の位置まで移動させた後、その移動後の位置で固定的に支持することができる。なお、アーム部5031は、いわゆるマスタースレイブ方式で操作されてもよい。この場合、アーム部5031は、手術室から離れた場所に設置される入力装置5047を介してユーザによって遠隔操作され得る。
【0146】
また、力制御が適用される場合には、アーム制御装置5045は、ユーザからの外力を受け、その外力にならってスムーズにアーム部5031が移動するように、各関節部5033a~5033cのアクチュエータを駆動させる、いわゆるパワーアシスト制御を行ってもよい。これにより、ユーザが直接アーム部5031に触れながらアーム部5031を移動させる際に、比較的軽い力で当該アーム部5031を移動させることができる。従って、より直感的に、より簡易な操作で内視鏡5001を移動させることが可能となり、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0147】
ここで、一般的に、内視鏡下手術では、スコピストと呼ばれる医師によって内視鏡5001が支持されていた。これに対して、支持アーム装置5027を用いることにより、人手によらずに内視鏡5001の位置をより確実に固定することが可能になるため、術部の画像を安定的に得ることができ、手術を円滑に行うことが可能になる。
【0148】
なお、アーム制御装置5045は必ずしもカート5037に設けられなくてもよい。また、アーム制御装置5045は必ずしも1つの装置でなくてもよい。例えば、アーム制御装置5045は、支持アーム装置5027のアーム部5031の各関節部5033a~5033cにそれぞれ設けられてもよく、複数のアーム制御装置5045が互いに協働することにより、アーム部5031の駆動制御が実現されてもよい。
【0149】
(光源装置)
光源装置5043は、内視鏡5001に術部を撮影する際の照射光を供給する。光源装置5043は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成される。このとき、RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置5043において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド5005の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0150】
また、光源装置5043は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド5005の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0151】
また、光源装置5043は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察するもの(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得るもの等が行われ得る。光源装置5043は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0152】
(カメラヘッド及びCCU)
図30を参照して、内視鏡5001のカメラヘッド5005及びCCU5039の機能についてより詳細に説明する。
図30は、
図29に示すカメラヘッド5005及びCCU5039の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0153】
図30を参照すると、カメラヘッド5005は、その機能として、レンズユニット5007と、撮像部5009と、駆動部5011と、通信部5013と、カメラヘッド制御部5015と、を有する。また、CCU5039は、その機能として、通信部5059と、画像処理部5061と、制御部5063と、を有する。カメラヘッド5005とCCU5039とは、伝送ケーブル5065によって双方向に通信可能に接続されている。
【0154】
まず、カメラヘッド5005の機能構成について説明する。レンズユニット5007は、鏡筒5003との接続部に設けられる光学系である。鏡筒5003の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド5005まで導光され、当該レンズユニット5007に入射する。レンズユニット5007は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。レンズユニット5007は、撮像部5009の撮像素子の受光面上に観察光を集光するように、その光学特性が調整されている。また、ズームレンズ及びフォーカスレンズは、撮像画像の倍率及び焦点の調整のため、その光軸上の位置が移動可能に構成される。
【0155】
撮像部5009は撮像素子によって構成され、レンズユニット5007の後段に配置される。レンズユニット5007を通過した観察光は、当該撮像素子の受光面に集光され、光電変換によって、観察像に対応した画像信号が生成される。撮像部5009によって生成された画像信号は、通信部5013に提供される。
【0156】
撮像部5009を構成する撮像素子としては、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)タイプのイメージセンサであり、Bayer配列を有するカラー撮影可能なものが用いられる。なお、当該撮像素子としては、例えば4K以上の高解像度の画像の撮影に対応可能なものが用いられてもよい。術部の画像が高解像度で得られることにより、術者5067は、当該術部の様子をより詳細に把握することができ、手術をより円滑に進行することが可能となる。
【0157】
また、撮像部5009を構成する撮像素子は、3D表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成される。3D表示が行われることにより、術者5067は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部5009が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット5007も複数系統設けられる。
【0158】
また、撮像部5009は、必ずしもカメラヘッド5005に設けられなくてもよい。例えば、撮像部5009は、鏡筒5003の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0159】
駆動部5011は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部5015からの制御により、レンズユニット5007のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部5009による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0160】
通信部5013は、CCU5039との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部5013は、撮像部5009から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル5065を介してCCU5039に送信する。この際、術部の撮像画像を低レイテンシで表示するために、当該画像信号は光通信によって送信されることが好ましい。手術の際には、術者5067が撮像画像によって患部の状態を観察しながら手術を行うため、より安全で確実な手術のためには、術部の動画像が可能な限りリアルタイムに表示されることが求められるからである。光通信が行われる場合には、通信部5013には、電気信号を光信号に変換する光電変換モジュールが設けられる。画像信号は当該光電変換モジュールによって光信号に変換された後、伝送ケーブル5065を介してCCU5039に送信される。
【0161】
また、通信部5013は、CCU5039から、カメラヘッド5005の駆動を制御するための制御信号を受信する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。通信部5013は、受信した制御信号をカメラヘッド制御部5015に提供する。なお、CCU5039からの制御信号も、光通信によって伝送されてもよい。この場合、通信部5013には、光信号を電気信号に変換する光電変換モジュールが設けられ、制御信号は当該光電変換モジュールによって電気信号に変換された後、カメラヘッド制御部5015に提供される。
【0162】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、取得された画像信号に基づいてCCU5039の制御部5063によって自動的に設定される。つまり、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡5001に搭載される。
【0163】
カメラヘッド制御部5015は、通信部5013を介して受信したCCU5039からの制御信号に基づいて、カメラヘッド5005の駆動を制御する。例えば、カメラヘッド制御部5015は、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報及び/又は撮像時の露光を指定する旨の情報に基づいて、撮像部5009の撮像素子の駆動を制御する。また、例えば、カメラヘッド制御部5015は、撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報に基づいて、駆動部5011を介してレンズユニット5007のズームレンズ及びフォーカスレンズを適宜移動させる。カメラヘッド制御部5015は、更に、鏡筒5003やカメラヘッド5005を識別するための情報を記憶する機能を備えてもよい。
【0164】
なお、レンズユニット5007や撮像部5009等の構成を、気密性及び防水性が高い密閉構造内に配置することで、カメラヘッド5005について、オートクレーブ滅菌処理に対する耐性を持たせることができる。
【0165】
次に、CCU5039の機能構成について説明する。通信部5059は、カメラヘッド5005との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部5059は、カメラヘッド5005から、伝送ケーブル5065を介して送信される画像信号を受信する。この際、上記のように、当該画像信号は好適に光通信によって送信され得る。この場合、光通信に対応して、通信部5059には、光信号を電気信号に変換する光電変換モジュールが設けられる。通信部5059は、電気信号に変換した画像信号を画像処理部5061に提供する。
【0166】
また、通信部5059は、カメラヘッド5005に対して、カメラヘッド5005の駆動を制御するための制御信号を送信する。当該制御信号も光通信によって送信されてよい。
【0167】
画像処理部5061は、カメラヘッド5005から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。当該画像処理としては、例えば現像処理、高画質化処理(帯域強調処理、超解像処理、NR(Noise reduction)処理及び/又は手ブレ補正処理等)、並びに/又は拡大処理(電子ズーム処理)等、各種の公知の信号処理が含まれる。また、画像処理部5061は、AE、AF及びAWBを行うための、画像信号に対する検波処理を行う。
【0168】
画像処理部5061は、CPUやGPU等のプロセッサによって構成され、当該プロセッサが所定のプログラムに従って動作することにより、上述した画像処理や検波処理が行われ得る。なお、画像処理部5061が複数のGPUによって構成される場合には、画像処理部5061は、画像信号に係る情報を適宜分割し、これら複数のGPUによって並列的に画像処理を行う。
【0169】
制御部5063は、内視鏡5001による術部の撮像、及びその撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部5063は、カメラヘッド5005の駆動を制御するための制御信号を生成する。この際、撮像条件がユーザによって入力されている場合には、制御部5063は、当該ユーザによる入力に基づいて制御信号を生成する。あるいは、内視鏡5001にAE機能、AF機能及びAWB機能が搭載されている場合には、制御部5063は、画像処理部5061による検波処理の結果に応じて、最適な露出値、焦点距離及びホワイトバランスを適宜算出し、制御信号を生成する。
【0170】
また、制御部5063は、画像処理部5061によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部の画像を表示装置5041に表示させる。この際、制御部5063は、各種の画像認識技術を用いて術部画像内における各種の物体を認識する。例えば、制御部5063は、術部画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具5021使用時のミスト等を認識することができる。制御部5063は、表示装置5041に術部の画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させる。手術支援情報が重畳表示され、術者5067に提示されることにより、より安全かつ確実に手術を進めることが可能になる。
【0171】
カメラヘッド5005及びCCU5039を接続する伝送ケーブル5065は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0172】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル5065を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド5005とCCU5039との間の通信は無線で行われてもよい。両者の間の通信が無線で行われる場合には、伝送ケーブル5065を手術室内に敷設する必要がなくなるため、手術室内における医療スタッフの移動が当該伝送ケーブル5065によって妨げられる事態が解消され得る。
【0173】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システム5000の一例について説明した。なお、ここでは、一例として内視鏡手術システム5000について説明したが、本開示に係る技術が適用され得るシステムはかかる例に限定されない。例えば、本開示に係る技術は、検査用軟性内視鏡システムや顕微鏡手術システムに適用されてもよい。
【0174】
本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、カメラヘッドに適用され得る。
【0175】
[本開示の構成]
尚、本開示は、以下のような構成をとることもできる。
【0176】
[A1]
対象物に向けて赤外光を照射する光源部、
対象物からの赤外光を受信する受光部、及び、
受光部からのデータに基づいて対象物の距離情報を得る演算処理部、
を備えており、
受光部の受光面側には、所定の波長範囲の赤外光を選択的に透過するバンドパスフィルタを含む光学部材が配置されており、
バンドパスフィルタの光入射面は凹面形状である、
測距システム。
[A2]
光学部材は、バンドパスフィルタの光入射面側に配置されたレンズを備えており、
バンドパスフィルタの光入射面に対する最大像高の光の入射角は10度以下である、
上記[A1]に記載の測距システム。
[A3]
バンドパスフィルタの透過帯域の半値幅は50ナノメートル以下である、
上記[A1]又は[A2]に記載の測距システム。
[A4]
バンドパスフィルタは、
赤外光の所定の波長範囲において透過性を示す第1フィルタ、及び、
可視光について非透過性かつ赤外光に対して透過性を示す第2フィルタ、
から成る、
上記[A1]ないし[A3]のいずれかに記載の測距システム。
[A5]
第1フィルタ及び第2フィルタは基材の片面に積層して形成されている、
上記[A4]に記載の測距システム。
[A6]
第1フィルタは基材の一方の面に形成されており、
第2フィルタは基材の他方の面に形成されている、
上記[A4]に記載の測距システム。
[A7]
第1フィルタは光入射面側に配置されており、
第2フィルタは受光部側に配置されている、
上記[A4]ないし[A6]のいずれかに記載の測距システム。
[A8]
第2フィルタは光入射面に倣った凹面形状である、
上記[A7]に記載の測距システム。
[A9]
第2フィルタは平面形状である、
上記[A7]に記載の測距システム。
[A10]
第2フィルタは光入射面側に配置されており、
第1フィルタは受光部側に配置されている、
上記[A4]ないし[A6]のいずれかに記載の測距システム。
[A11]
第1フィルタは光入射面に倣った凹面形状である、
上記[A10]に記載の測距システム。
[A12]
光源部は、赤外線レーザ素子または赤外線発光ダイオード素子を備えている、
上記[A1]ないし[A11]のいずれかに記載の測距システム。
[A13]
光源部は、略850ナノメートル、略905ナノメートル、または、略940ナノメートルを中心波長とする赤外光を照射する、
上記[A1]ないし[A12]のいずれかに記載の測距システム。
[A14]
演算処理部は、対象物の反射光の飛行時間に基づいて距離情報を得る、
上記[A1]ないし[A13]のいずれかに記載の測距システム。
[A15]
対象物に対して所定のパターンで赤外光が照射され、
演算処理部は、対象物の反射光のパターンに基づいて距離情報を得る、
上記[A1]ないし[A13]のいずれかに記載の測距システム。
【0177】
[B1]
赤外光を受信する受光部、及び、
受光部の受光面側に配置され、所定の波長範囲の赤外光を選択的に透過するバンドパスフィルタを含む光学部材、
を含んでおり、
バンドパスフィルタの光入射面は凹面形状である、
受光モジュール。
[B2]
光学部材は、バンドパスフィルタの光入射面側に配置されたレンズを備えている、
上記[B1]に記載の受光モジュール。
[B3]
バンドパスフィルタの光入射面に対する最大像高の光の入射角は10度以下である、
上記[B2]に記載の受光モジュール。
[B4]
バンドパスフィルタの透過帯域の半値幅は50ナノメートル以下である、
上記[B1]ないし[B3]のいずれかに記載の受光モジュール。
[B5]
バンドパスフィルタは、
赤外光の所定の波長範囲において透過性を示す第1フィルタ、及び、
可視光について非透過性かつ赤外光に対して透過性を示す第2フィルタ、
から成る、
上記[B1]ないし[B4]のいずれかに記載の受光モジュール。
[B6]
第1フィルタ及び第2フィルタは基材の片面に積層して形成されている、
上記[B5]に記載の受光モジュール。
[B7]
第1フィルタは基材の一方の面に形成されており、
第2フィルタは基材の他方の面に形成されている、
上記[B5]に記載の受光モジュール。
[B8]
第1フィルタは光入射面側に配置されており、
第2フィルタは受光部側に配置されている、
上記[B5]ないし[B7]のいずれかに記載の受光モジュール。
[B9]
第2フィルタは光入射面に倣った凹面形状である、
上記[B8]に記載の受光モジュール。
[B10]
第2フィルタは平面形状である、
上記[B8]に記載の受光モジュール。
[B11]
第2フィルタは光入射面側に配置されており、
第1フィルタは受光部側に配置されている、
上記[B5]ないし[B7]のいずれかに記載の受光モジュール。
[B12]
第1フィルタは光入射面に倣った凹面形状である、
上記[B11]に記載の受光モジュール。
【符号の説明】
【0178】
1,1A,1B,1C,1D・・・測距システム、10,10A,10B,90・・・光学部材、11・・・レンズ、12,92・・・バンドパスフィルタ、12A・・・第1フィルタ、12B・・・第2フィルタ、12C・・・バンドパスフィルタ層、12D・・・反射防止膜、13,13A・・・赤外光に対して透明な基材、14A・・・フレーム、14B・・・接着部材、15,15A・・・フィルムシート、16・・・吸引型、16A・・・凹部、16B・・・開口、20,20A,20B・・・受光部、30,30A,30B・・・A/D変換部、40,40A,40B・・・演算処理部、50・・・制御部、60・・・光源駆動部、70・・・光源部、71・・・光拡散部材、72・・・走査部、73・・・パターン投影部、80・・・合成処理部、120・・・ウエハ状のバンドパスフィルタ群、140・・・ウエハ状のフレーム、200・・・ウエハ状の撮像素子群