(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】軌道アレイガイドシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20230220BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20230220BHJP
A61B 90/11 20160101ALI20230220BHJP
【FI】
A61B17/34
A61B5/055 383
A61B5/055 390
A61B90/11
(21)【出願番号】P 2020502214
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 US2018042391
(87)【国際公開番号】W WO2019018342
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-16
(32)【優先日】2017-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2017/049191
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517157204
【氏名又は名称】ボイジャー セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VOYAGER THERAPEUTICS,INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】507127440
【氏名又は名称】ザ・リージエンツ・オブ・ザ・ユニバーシテイー・オブ・カリフオルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ケルズ、エイドリアン フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シュレック、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ルティック、エドワード エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ブロック、ケネス エイ.
(72)【発明者】
【氏名】バンキエウィッツ、クリストフ
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0052610(US,A1)
【文献】国際公開第2007/064739(WO,A2)
【文献】特表2012-500031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0167543(US,A1)
【文献】国際公開第2015/057807(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-18/18
A61B 5/055
A61B 90/10-90/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.対象の頭蓋への取り付けのために構成されたベースと、
b.一連の管腔を備えているアレイガイドであるか、または一連の管腔を備えているガイドユニットを保持するように構成されたボアを備えているアレイガイドと、
c.前記アレイガイドとの係合のために構成されたイメージングユニットであって、かつ前記アレイガイドの管腔または前記ガイドユニットの管腔のいずれかに対して同軸である通路に沿ってイメージング流体を保持し導くように構成された前記イメージングユニットであって、一連の軌道を規定するように構成された前記イメージングユニットと、
d.前記アレイガイドまたは前記イメージングユニットのいずれかとの係合のために構成された長尺状ハンドルと
を備える、軌道アレイガイドシステム。
【請求項2】
前記アレイガイドは前記一連の管腔を備えており、
前記アレイガイドは一端においてボールを備え、
前記ベースは、前記アレイガイドのボールを受容し保持することでボールソケット旋回機構を形成するように構成されたソケットを備える、
請求項1に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項3】
前記ソケットは、前記ベースの底部によって形成される平面に対して直交する中心軸線を有する、
請求項2に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項4】
前記ソケットが傾斜するように、前記ソケットは、前記ベースの底部によって形成される平面に対して非直交の中心軸線を有する、
請求項2に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項5】
前記ソケットの非直交の中心軸線は、前記ベースの底部によって形成される平面に対して直交する軸線から
、10度
~30度の角度をなしている、
請求項4に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項6】
前記ソケットは、ねじ山または1つ以上の溝を備える、外側壁を有し、
前記ねじ山または1つ以上の溝は、前記ソケット内のボールが旋回運動するのを防止するべくロッキング要素への取り付けのために構成されている、
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項7】
前記ロッキング要素は、前記ソケットの1つ以上の溝への接続のために構成されたリングクランプである、
請求項6に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項8】
前記ロッキング要素は、前記ソケットのねじ山への接続のために構成されたロッキングナットである、
請求項6に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項9】
前記ベースは、前記ベースを前記対象の頭蓋に取り付けるための複数の取り付け部材を備え、
前記取り付け部材は、前記ロッキング要素が前記ソケットの外側壁に係合されているときに、取り付け器具によってアクセス可能である、
請求項6乃至8のいずれか1項に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項10】
前記アレイガイドは、第1端および第2端を有する円筒状または漏斗形の部材を備えており、前記ボールは前記第1端に形成されており、
前記アレイガイドの前記一連の管腔の各々は、前記アレイガイドの前記第1端から前記第2端へ前記アレイガイドの長さに沿って長手方向に延びている、
請求項2乃至9のいずれか1項に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項11】
前記一連の管腔は、対称六角形パターンに配列された6つの管腔と、前記対称六角形パターンの中心に位置する7番目の管腔とを有する、7つのほぼ平行な管腔を備える、
請求項10に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項12】
前記イメージングユニットは、前記アレイガイドの管腔に対して同軸である一連の下部延長部に、流体が流れるように連通した上部貯蔵器を備える、
請求項2乃至11のいずれか1項に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項13】
前記下部延長部は、前記アレイガイドの管腔の内部に適合するように構成されたチューブである、
請求項12に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項14】
前記アレイガイドは外溝を備え、
前記イメージングユニットは、前記イメージングユニットが前記アレイガイドに係合されるときに、前記外溝内に摺動するように構成されたインデックスチューブを備え、
前記インデックスチューブは、磁気共鳴画像における前記チューブの各々の特定のための基準点を提供するように構成される、
請求項13に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項15】
前記イメージングユニットは、前記イメージング流体を前記イメージングユニットの内部に密閉するキャップを備える、
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項16】
前記アレイガイドは、前記イメージングユニットの前記チューブを前記アレイガイド内の適所にロックするためのロッキング機構を備える、
請求項13乃至
14のいずれか1項に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項17】
前記ロッキング機構は、前記アレイガイドを貫通するとともに前記チューブのうちの少なくとも1本に対して締め付け接触を形成する、少なくとも1本の止めねじを備えている、
請求項16に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項18】
前記ロッキング
機構は、それぞれ前記アレイガイドの本体を貫通して前記アレイガイドの互いに異なる2つの管腔と中央管腔とに進入する、3本の止めねじを備えている、
請求項16に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項19】
前記3本の止めねじは、前記アレイガイドの上端よりも前記アレイガイドのボールのより近くに配置されている、
請求項18に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項20】
前記長尺状ハンドルは、前記イメージングユニットの外側または内側との係合のために構成されたコネクタ端部を備える、
請求項1乃至19のいずれか1項に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項21】
前記コネクタ端部は、前記イメージングユニットの外側との係合のために構成されており、
かつ前記コネクタ端部は、前記ハンドルを前記イメージングユニット上にロックするためのコネクタ止めねじ用の開口を備えている、
請求項20に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項22】
前記ハンドルは、前記ハンドルを前記アレイガイドに直接係合させるために、前記アレイガイドの管腔のうちの1つに挿入するためのエンドスパイクを備える、
請求項2乃至19のいずれか1項に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項23】
前記ハンドルは少なくとも部分的に中空であり、かつ
前記ハンドルは前記エンドスパイクとは反対側の端部において外端開口を有しており、
前記外端開口は、画像誘導手術システムのナビゲーション構成要素への接続のために構成されている、
請求項22に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項24】
前記軌道アレイガイドシステムはさらに、前記管腔の直径の低減をもたらすために前記管腔のうちの1つに挿入するためのレデューサチューブを備える、
請求項1乃至21のいずれか1項に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項25】
前記レデューサチューブは、前記レデューサチューブ内における長尺状器具の移動を拘束するための調整可能な停止具を備える、
請求項24に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項26】
前記軌道アレイガイドシステムは、前記管腔に対して同軸である一連の通路によって画定されたガイドユニットを保持するように構成されたボアを備えており、
前記ガイドユニットは、別のガイドユニットを前記アレイガイドに接続するための上部ロックタブを備える、
請求項2乃至9のいずれか1項に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項27】
前記イメージングユニットは、前記上部ロックタブにおける前記アレイガイドへ接続するために構成されている、
請求項26に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項28】
前記軌道アレイガイドシステムはさらに、長尺状器具を前記管腔のうちの1つの適所に保持するために、前記ガイドユニットの本体への挿入のために構成されたロッキングスライダーを備える、
請求項26または27に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項29】
前記通路は、前記ボール内に位置するプレナムに接続しており、
前記ハンドルは、前記一連の通路のうちの中央通路を通って前記プレナム内にイメージング流体を注入するためのチャネルを備え、
前記イメージング流体は、前記プレナムから残りの通路に流れ込む、
請求項26乃至28のいずれか1項に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項30】
前記通路は、中央通路のまわりに6つの通路が対称六角形パターンに配列されている、7つのほぼ平行な通路である、
請求項26乃至29のいずれか1項に記載の軌道アレイガイド。
【請求項31】
前記通路は、中央通路のまわりに6つの通路が対称六角形パターンに配列されている、7つのほぼ平行な通路であり、
前記6つの通路のうちの1つは、個々の通路を特定するためのインデックス通路を提供するために、前記プレナムを過ぎて下方に延長されている、
請求項
29に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項32】
前記通路および管腔は、前記アレイガイドの主軸線と平行であるか、
または前記通路および管腔は、前記アレイガイドの主軸線に対して角度をなしている、
請求項26乃至31のいずれか1項に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項33】
前記アレイガイドは、前記管腔と通路とによって規定される前記一連の軌道の方向を、前記アレイガイドの主軸線に対して変更するための複数のロックタブを周囲に備える、
請求項32に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項34】
前記複数のロックタブは、8つの等間隔のロックタブを備える、
請求項33に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項35】
前記軌道アレイガイドシステムは、
少なくとも2つのガイドユニットと、
前記ガイドユニットに合致して対を形成する少なくとも2つのイメージングユニットとを備え、
合致した前記ガイドユニットおよび前記イメージングユニットの一方の対は、前記アレイガイドの主軸線と平行な管腔および通路を有し、かつ
合致した前記ガイドユニットおよび前記イメージングユニットの別の対は、前記アレイガイドの場合に主軸線に対して角度をなした管腔および通路を有する、
請求項26乃至31のいずれか1項に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項36】
前記アレイガイドは、前記管腔および通路によって規定される前記一連の軌道の方向を、前記アレイガイドの主軸線に対して変更するための複数のロックタブを周囲に備える、
請求項35に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項37】
前記複数のロックタブは、角度をなした軌道の8つの互いに異なるアレイを提供する、8つの等間隔のロックタブである、
請求項36に記載の軌道アレイガイドシステム。
【請求項38】
軌道アレイガイドシステムを提供するためのキットにおいて、前記キットは、
a.一連の管腔を備えているアレイガイドであるか、または一連の管腔を備えているガイドユニットを保持するように構成されたボアを備えているアレイガイドであって、前記アレイガイドは一端にボールを備える、前記アレイガイドと、
b.対象の頭蓋への取り付けのために構成されたベースであって、前記アレイガイドのボールを受容し保持することでボールソケット旋回機構を形成するように構成されたソケットを備える前記ベースと、
c.前記アレイガイドとの係合のために構成されたイメージングユニットであって、かつ前記アレイガイドの管腔または前記ガイドユニットの管腔のいずれかに対して同軸である通路に沿ってイメージング流体を保持し導くように構成された前記イメージングユニットであって、前記イメージングユニットは一連の軌道を規定するように構成されている、前記イメージングユニットと、
d.前記アレイガイドまたは前記イメージングユニットのいずれかとの係合のために構成された長尺状ハンドルと
を備える、キット。
【請求項39】
前記キットはさらに、前記軌道アレイガイドシステムの組み立ておよび操作のための説明書を含む、
請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記キットはさらに、イメージング試薬の容器を備える、
請求項38または39に記載のキット。
【請求項41】
前記軌道アレイガイドシステムは請求項1乃至37のいずれか1項に記載の軌道アレイガイドシステムである、
請求項38乃至40のいずれか1項に記載のキット。
【請求項42】
前記軌道アレイガイドシステムは請求項26乃至37のいずれか1項に記載の軌道アレイガイドシステムであり、
前記キットはさらに、互いに異なる直径の長尺状器具を誘導するために構成された複数のガイドユニットを含む、
請求項41に記載のキット。
【請求項43】
前記長尺状器具は1つ以上のカテーテルを備える、
請求項42に記載のキット。
【請求項44】
すべての構成要素が1つ以上の滅菌されたパッケージに収容されている、
請求項38乃至43のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は脳外科手術に関連し、より具体的には、脳内の特定位置への治療薬または測定装置の送達に用いられる外科用器具を配置するための軌道アレイガイドの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
脳構造への正確なアクセスは、組織試料採取、カテーテルまたは電極の配置、局所的な薬物送達を含む各種の適応にしばしば必要とされる。これらの処置を実施する最も一般的な手段は、フレームベースド定位脳手術またはフレームレス定位脳手術のいずれかを用いることである。いずれの場合にも、特定の脳の標的を特徴付け、かつ限局するために、術前イメージングセッションが実施される。磁気共鳴イメージング(Magnetic resonance imaging:MRI)は、実現できる組織コントラストの品位および範囲により、脳構造の術前境界設定のための好ましい技術である。手術中に予め取得したイメージング情報を利用するには、手術台上の患者に対して画像データを登録するためのいくつかのシステムが必要となる。これは、イメージングにおいて視認可能な外部フレーム、またはフレームレスの場合には植え込まれたマーカもしくは特有の特徴の特定によって行われ得る。いずれの状況においても、予め取得した画像に基づいて標的点が決定され、外科処置を誘導するために用いられる。これは、レジストレーションプロセスが不完全であり、エラーを生じやすく、また脳偏位(brain shift)のような動的作用を補償するために画像を更新する能力がないので、不都合を有する。さらに、処置中に手術の目的が果たされたことを確認したり、または送達された治療薬の堆積、生理学的変化、または機器操作を監視したりするいずれの機会も存在しない(非特許文献1)
脳構造にアクセスするこの従来の手段の代替案は、画像化中に患者の頭部を固定し、磁気共鳴ボア内において手術を実施することである。このアプローチもまた明らかな不都合を有し、中でも注目すべきは、磁石および対応する磁界の物理的な存在である。しかしながら、これはレジストレーションの必要性を克服し、術中の画像更新を可能にする。また、これは介入および治療の誘導、施行および評価に対する新規な洞察を与えることができる。MRIシステム内において定位処置を実施するいくつかの互いに異なる手段が存在する。低磁場のオープンシステムはある程度の見通し線(line-of-site)を与えるため、頭部をMRIシステムから移動させることなく、機器を従来のフレームレス定位脳手術に類似した方法で追跡することができる。これらの追跡した装置の向き(orientation)は、画像化が実施されるべきスライスを指示するためにさらに用いられ得る。閉鎖ボアシステムにおいて、光学手段によって装置を追跡することは、あまり実用的ではない。しかしながら、磁気共鳴環境自体が、受動的手段または能動的手段によって、装置を追跡し、可視化する機会を可能にする。能動的手段は、マイクロコイルを適当な外科用器具に一体化し、それらの位置をMR法によってボア内において追跡することにより行われる。受動的方法は、単に装置が取得した画像内においてポジティブコントラストまたはネガティブコントラストのいずれかにより視認可能であることを必要とする。
【0003】
有望な定位脳手術は、軌道アレイガイドを磁気共鳴システム内において整合させる技術である。一般的なアプローチは、患者を磁気共鳴スキャナー内において固定し、軌道アレイガイドを頭蓋のような硬質表面上に取り付けることを必要とする。次に画像化を実施して、進入点から遠隔の標的まで所望の軌道を通常2つの直交平面において規定する。軌道アレイガイドはリアルタイムの画像化によって整合され、続いて、意図した経路が確実に辿られるようにするために確認のスキャンが行われる。このアプローチは、脳生体組織検査および脳深部刺激装置電極の挿入を誘導するために用いられてきた(非特許文献1)。
【0004】
最適な軌道は、脳の磁気共鳴画像を解析し、脳の標的部分の位置、頭蓋上の適当な進入点、並びに合併症の危険性を最小限にするために回避する必要がある決定臓器および脈管(例えば血管)を考慮することにより確立される。軌道が確立されたら、患者の頭部の外部に位置する取り付けシステムを用いて、カテーテルを軌道に沿って配置し、カテーテルの脳内への挿入を誘導する。このプロセスは、反復される傾向にあり、また所望の軌道に対する取り付けシステムの実際の軌道の画像解析を伴う。典型的には、実際の軌道が所望の軌道と合致するまで、取り付けシステムの再配置が必要とされる。
【0005】
カテーテルのような長尺状器具の脳内の標的位置への送達のための軌道アレイガイドシステムを開発するために、いくつかの取り組みが行われてきた。そのようなシステムおよび関連する器具の例は、特許文献1~7に開示されており、それらの特許文献の各々は参考により余すところなく本願に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第9,042,958号明細書
【文献】米国特許第8,845,665号明細書
【文献】米国特許第7,981,120号明細書
【文献】米国特許第8,845,656号明細書
【文献】米国特許第8,591,522号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0100064号明細書
【文献】米国特許出願公開第2001/0014771号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】マーティン(Martin)ら、J.Magn.Reson.Imaging、2008年、第27巻、第737~743頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
軌道アレイガイドシステムの開発に関して、多く課題が残存している。いくつかのそのような課題は本開示の様々な実施形態によって対処される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、長尺状器具を対象の脳内の標的位置に送達するための軌道アレイガイドシステムおよびキット、並びに方法を提供する。
本開示は、対象の脳内の標的位置への軌道を規定し、その軌道に沿って長尺状器具を誘導するための軌道アレイガイドシステムを提供する。いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムは、ロック可能なボールソケット旋回機構内におけるベースおよびアレイガイドの組み合わせと、ベースは対象の頭蓋への取り付けのために構成されており、アレイガイドは一連の管腔によって画定されるか、または一連の管腔によって画定された別個のアレイユニットを保持するように構成されたボアによって画定されることと、アレイガイドとの係合のために構成され、かつ一連の軌道を規定することを目的として、イメージング流体をアレイガイドの管腔に対して同軸である通路に沿って保持し導くように構成されたイメージングユニットと、画像誘導定位ナビゲーションシステムへの接続に十分な長さを有する長尺状ハンドルとを備え、ハンドルはアレイガイドまたはイメージングユニットのいずれかへの取り付けのために構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムはアレイガイドを備える。いくつかの実施形態において、アレイガイドはボール要素を備える。いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムはまた、アレイガイドのボールを受容し保持するように構成されたソケットを含むベースも備える。いくつかの実施形態において、ソケットはベースの底部によって形成される平面に対して直交する中心軸線を有する。いくつかの実施形態において、ソケットはベースの底部によって形成される平面に対して非直交の中心軸線を有し、それにより傾斜したソケットを提供する。いくつかの実施形態において、傾斜したソケットは、一連の軌道の角度範囲を増大する。いくつかの実施形態において、ソケットの中心軸線は、ベースの底部によって形成される平面に対して直交する軸線から約10~約30度の角度をなしている。
【0011】
いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムは、外側壁を有するソケットを備える。いくつかの実施形態において、外側壁はロッキング要素への取り付けのために構成された1つ以上のねじ山または溝を含む。いくつかの実施形態において、ロッキング要素は、ロッキング要素がソケットの外側壁に係合されると、ソケット内のボールの旋回運動を防止する。いくつかの実施形態において、ロッキング要素は、1つ以上の溝への接続のために構成されたリングクランプである。いくつかの実施形態において、ロッキング要素はねじ山への接続のために構成されたロッキングナットである。
【0012】
いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムは、複数の取り付け部材を含むベースを備える。いくつかの実施形態において、複数の取り付け部材は、対象の頭蓋にベースを取り付けるための取り付け器具によってアクセス可能である。
【0013】
いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムは、両端に開口を有する略円筒状または略漏斗形部材であるアレイガイドを備え、アレイガイドは一端に形成されたボールと、両端の開口間においてアレイガイドの長さに沿って長手方向に延びる一連の管腔とを有する。いくつかの実施形態において、一連の管腔は、対称六角形パターンに配列された6つの管腔と対称六角形パターンの中心に位置する7番目の管腔とを有する7つのほぼ平行な管腔とを含む。いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムは、アレイガイドの管腔に対して同軸である一連の下部延長部と流体が流れるように連通した上部貯蔵器を含むイメージングユニットをさらに備える。いくつかの実施形態において、下部延長部はアレイガイドの管腔の内部に適合するように構成されたチューブである。いくつかの実施形態において、アレイガイドは外溝を備え、またイメージングユニットは、イメージングユニットがアレイガイドに係合されるときに、外溝内に摺動するように構成されたインデックスチューブを備える。いくつかの実施形態において、インデックスチューブは、磁気共鳴画像におけるチューブの各々の特定のための基準点として提供される。いくつかの実施形態において、イメージングユニットは、イメージング流体をイメージングユニットの内部に密閉するキャップを備える。いくつかの実施形態において、アレイガイドは、チューブをアレイガイド内の適所にロックするためのロッキング機構を備える。いくつかの実施形態において、ロッキング機構は、アレイガイドを貫通し、チューブのうちの少なくとも1本との締め付け接触を形成する少なくとも1本の止めねじ(set-screw)を含んでいる。いくつかの実施形態において、ロッキングシステムは、アレイガイドの本体をそれぞれ貫通して互いに異なる2つの管腔と、7番目の管腔とに進入する、3本の止めねじを含んでいる。いくつかの実施形態において、3本の止めねじは、ボールアレイガイドの上端よりもボールアレイガイドのボールのより近くに配置されている。
【0014】
いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムはハンドルを備える。いくつかの実施形態において、ハンドルは、イメージングユニットの外側または内側への取り付けのために構成されたコネクタ端部を備える。いくつかの実施形態において、コネクタ端部は、イメージングユニットの外側への取り付けのために構成されており、ハンドルをイメージングユニット上にロックするためのコネクタ止めねじ用の開口を備えている。いくつかの実施形態において、ハンドルは、ハンドルをボールアレイガイドへ直接接続するためにボールアレイガイドの管腔のうちの1つに挿入するためのエンドスパイクを備える。いくつかの実施形態では、ハンドルは少なくとも部分的に中空であり、エンドスパイクとは反対側の端部において外端開口を有しており、外端開口は画像誘導手術システムのナビゲーションポインタへの接続のために構成されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、軌道アレイガイドシステムは、アレイガイドの管腔のうちの1つに挿入するためのレデューサチューブを備える。いくつかの実施形態では、レデューサチューブは、長尺状器具を挿入するための管腔の直径の低減をもたらす。いくつかの実施形態では、レデューサチューブは長尺状器具の移動を拘束するための調整可能な停止具を備える。
【0016】
いくつかの実施形態では、軌道アレイガイドシステムは、アレイガイドの管腔に対して同軸である一連の通路によって画定されたガイドユニットを保持するように構成されたボアによって画定されたアレイガイドを備える。いくつかの実施形態では、ガイドユニットは、ガイドユニットをアレイガイドに接続するための上部ロックタブを備える。いくつかの実施形態では、軌道アレイガイドシステムは、上部ロックタブにおけるアレイガイドへの接続のために構成されたイメージングユニットを備える。いくつかの実施形態では、軌道アレイガイドシステムは、長尺状器具を管腔のうちの1つの適所に保持するために、ガイドユニットの本体への挿入のために構成されたロッキングスライダーをさらに備える。
【0017】
いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムは、ボールアレイガイドに係合したイメージングユニットを備える。いくつかの実施形態では、イメージングユニットは、ボールアレイガイド内におけるボールの回転中心のあたりに位置するプレナム(plenum)に接続された一連の通路を備える。いくつかの実施形態では、軌道アレイガイドシステムは、一連の通路の中央通路にイメージング流体を注入するためのチャネルを有したハンドルを備える。いくつかの実施形態において、イメージング流体は、中央通路を通ってプレナムに流れ込み、続いてプレナムを介して一連の通路の残りの通路を上方に向かって充填する。いくつかの実施形態では、通路は、中央通路のまわりに対称六角形パターンに配列された6つの通路を有する7つのほぼ平行な通路である。いくつかの実施形態では、6つの通路のうちの1つは、個々の通路の特定のためのインデックス通路を提供するために、プレナムを過ぎて下方に延長されている。
【0018】
本開示は、対象の脳内の標的位置に長尺状器具を送達する方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、a)ベースプレート、アレイガイド、イメージングユニット、ハンドルおよびハンドルに接続された画像誘導定位ナビゲーションシステムを備えた軌道アレイガイドシステムを用意するステップと、b)進入位置において開頭を実施するステップと、c)軌道アレイガイドシステムのベースを進入位置に接続して、アレイガイドをベースプレートに係合させるステップと、d)イメージングユニットをアレイガイドに係合させ、アレイガイドを標的に整合させるステップと、e)標的位置に向かう一連の軌道を磁気共鳴イメージングによって画像化するステップと、f)軌道アレイガイドシステムをロックし、一連の軌道から軌道を選択するステップと、g)イメージングユニットを除去して、選択した軌道を用いて長尺状器具を標的位置に送達するステップと、h)対象の頭蓋から軌道アレイガイドシステムを除去するステップとを含む。いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムのベースは、ベース内の底部タブを通る骨ねじを用いて、エントリー位置に接続される。いくつかの実施形態では、この方法は、一連の軌道を画像化するためのステップの前に、MRI造影イメージング試薬(MRI contrast imaging reagent)をイメージングユニットへ加えることを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、定位ナビゲーションシステムを用いて、一連の軌道を標的位置に向ける(orient)ことを含む。いくつかの実施形態では、長尺状器具はカテーテルである。いくつかの実施形態では、カテーテルは標的位置に薬物を送達するように構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、対象の脳内の標的位置に長尺状器具を送達する方法は、本開示の軌道アレイガイドシステムを用いる。
本開示は軌道アレイガイドシステムを組み立てるためのキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、ロック可能なボール-ソケット旋回機構を形成するように接続され得るベースおよびアレイガイドであって、ベースは対象の頭蓋への取り付けのために構成されており、アレイガイドは一連の管腔によって画定されるか、または一連の管腔によって画定された別個のガイドユニットを保持するように構成されたボアによって画定される、アレイガイドと、アレイガイドとの係合のために構成され、かつ一連の軌道を規定することを目的として、管腔に対して同軸である軸線に沿ってイメージング流体を保持し導くように構成されたイメージングユニットと、画像誘導定位ナビゲーションシステムへの接続に十分な長さを有する長尺状ハンドルとを含み、ハンドルはアレイガイドまたはイメージングユニットのいずれかへの取り付けのために構成されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、キットは、アレイガイドシステムを組み立てるための説明書をさらに備える。
いくつかの実施形態では、キットは、イメージング試薬の容器をさらに備える。
【0021】
いくつかの実施形態では、キットは、本開示の軌道アレイガイドシステムを組み立てるためのものである。いくつかの実施形態では、軌道アレイガイドシステムは、アレイガイドの管腔のボアに挿入するためのガイドユニットを備える。いくつかの実施形態では、キットは、互いに異なる直径の長尺状器具を誘導するために構成された複数のガイドユニットを含んでいる。いくつかの実施形態では、長尺状器具はカテーテルを含む。
【0022】
キットのいくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムのすべての構成要素は1つ以上の滅菌されたパッケージに収容されている。
本開示は、術前および術中MRイメージングを併用して実施される神経学的処置の計画および操作の間に、外科用機器または装置の定位ガイダンス、定位配置および定位固定を提供するか、または支援するように機能することができる軌道アレイガイドシステムを提供する。いくつかの実施形態において、上記の処置はレーザー凝固、生体組織検査、カテーテル留置または電極配置処置を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】操作モード中におけるこのシステムの1つの向きを示すために、個体の頭蓋上における軌道アレイガイドシステム10の一実施形態の取り付けの実例を示す図。
【
図2】イメージングユニット60の配置を説明する軌道アレイガイドシステム11の実施形態の分解組立図。
【
図3A】軌道アレイガイドシステム11のボールアレイガイド120の一実施形態の側面図。
【
図4A】軌道アレイガイドシステム11のベースプレート150の一実施形態の上面図。
【
図5A】軌道アレイガイドシステム11の1つの操作モードで使用するために設計されたイメージングユニット60の側面図。
【
図5B】
図5Aの線5B-5Bに対して平行に得た
図3Aのイメージングユニット60の断面図。
【
図5C】キャップ64を除去した、イメージングユニット60の任意の長手方向断面図。
【
図6A】ベースプレート150がベースプレート150のソケット153を説明するために任意の断面で示されている、ベースプレート150およびボールアレイガイド120の側面図。
【
図6B】ロッキングナット130を適所に有し、ベースプレート150内におけるボールアレイガイド120の旋回可能な運動を示す、ベースプレート150およびボールアレイガイド120の側面図。
【
図7A】ボールアレイガイド120に設置されたイメージングユニット60内のイメージング試薬IRを用いて、投影された軌道Tのアレイを得るプロセスを示す図。
【
図7B】ボールアレイガイド120に設置されたイメージングユニット60内のイメージング試薬IRを用いて、投影された軌道Tのアレイを得るプロセスを示す図。
【
図7C】ボールアレイガイド120に設置されたイメージングユニット60内のイメージング試薬IRを用いて、投影された軌道Tのアレイを得るプロセスを示す図。
【
図8A】最大深さが挿入停止具171の位置によって制限されているカテーテル170をボールアレイガイド120の管腔のうちの1つに挿入するプロセスを示す図。
【
図8B】最大深さが挿入停止具171の位置によって制限されているカテーテル170をボールアレイガイド120の管腔のうちの1つに挿入するプロセスを示す図。
【
図8C】最大深さが挿入停止具171の位置によって制限されているカテーテル170をボールアレイガイド120の管腔のうちの1つに挿入するプロセスを示す図。
【
図9A】軌道アレイガイドシステム11によって規定された軌道Tを用いて、進入点Eを介して患者の脳内の最大深さDPにある標的TGに到達するプロセスを示す図。
【
図9B】軌道アレイガイドシステム11によって規定された軌道Tを用いて、進入点Eを介して患者の脳内の最大深さDPにある標的TGに到達するプロセスを示す図。
【
図9C】軌道アレイガイドシステム11によって規定された軌道Tを用いて、進入点Eを介して患者の脳内の最大深さDPにある標的TGに到達するプロセスを示す図。
【
図10A】開頭部位Cにおいて軌道アレイガイドシステム11を接続するプロセスを示す図。
【
図10B】開頭部位Cにおいて軌道アレイガイドシステム11を接続するプロセスを示す図。
【
図10C】開頭部位Cにおいて軌道アレイガイドシステム11を接続するプロセスを示す図。
【
図11A】標的TGへの最適な軌道OTを規定するために、軌道アレイガイドシステム11を用いてアレイ軌道Tを生成するプロセスを示す図。
【
図11B】標的TGへの最適な軌道OTを規定するために、軌道アレイガイドシステム11を用いてアレイ軌道Tを生成するプロセスを示す図。
【
図11C】標的TGへの最適な軌道OTを規定するために、軌道アレイガイドシステム11を用いてアレイ軌道Tを生成するプロセスを示す図。
【
図12A】カテーテル170を軌道アレイガイドシステム11内に挿入して標的TGに薬物を送達するプロセスを示す図。
【
図12B】カテーテル170を軌道アレイガイドシステム11内に挿入して標的TGに薬物を送達するプロセスを示す図。
【
図12C】カテーテル170を軌道アレイガイドシステム11内に挿入して標的TGに薬物を送達するプロセスを示す図。
【
図13A】軌道アレイガイドシステム12の一実施形態の側面図。
【
図14A】グリップ面231を有するリング状ロッキングナット230によってベースプレート350内の適所に保持され、ロックされたボールアレイガイド220の斜視図。
【
図14B】切欠き332a~332dを有するロッキングナット330によってベースプレート350内の適所に保持され、ロックされたボールアレイガイド220の斜視図。
【
図14C】対向突出部433a~433dを有するロッキングナット430によってベースプレート350内の適所に保持され、ロックされたボールアレイガイド220の斜視図。
【
図15A】ロッキングナット230がボールアレイガイド620の軌道の角度を制限することを示す軌道アレイガイドシステム17の実施形態の側面図。
【
図15B】傾斜したベースプレート450を備えた軌道アレイガイドシステムの断面図。
【
図16】そのソケット53がより大きな軌道の角度を提供するために傾斜しているベースプレート50の実施形態の斜視図。
【
図17】そのソケット353がタブ351a~351dの平面に対して直交しているベースプレート350の斜視図。
【
図18】ロッキングナット530上の内ねじ山537と合致するテーパー外ねじ山556を有するベースプレート550のソケット553内に保持されたボールアレイガイド220のボール221の部分断面斜視図。
【
図19A】
図19Bに示すようなリングクランプへの接続のために構成された傾斜したベースプレート450の実施形態の斜視図。
【
図19B】リングクランプ80が取り付けられた
図19Aの傾斜したベースプレート450の斜視図。
【
図19C】リングクランプ80が取り付けられた
図19Aの傾斜したベースプレート450の斜視図であって、ベースプレート450の外溝458のまわりにおけるクランプ80の回転自由度を示す、斜視図。
【
図19D】適所に保持されたボールアレイガイドのボール221を示す、傾斜したベースプレート450およびリングクランプ80の側断面図。
【
図20B】それに取り付けられたハンドル140を示す軌道アレイガイドシステム13の実施形態の斜視図。
【
図21A】イメージングユニット360の実施形態の上面斜視図。
【
図21F】
図21Eの線21F-21Fに沿って得たイメージングユニット360の断面図。
【
図22】チューブ465a~465gおよびチューブ466のボールアレイガイド620への挿入の方法を示す、軌道アレイガイドシステム14の実施形態の斜視図。
【
図24】軌道アレイガイドシステム15の実施形態の一部の断面斜視図。
【
図25】軌道アレイガイドシステム16の実施形態の分解斜視図。
【
図26A】
図26Bの線26A-26Aに沿って得たボールアレイガイド90の実施形態の断面図。
【
図26B】
図26Aに示したのと同一のボールアレイガイド90の実施形態の上面図。
【
図26D】イメージングユニット960がボールアレイガイド90に取り付けられている、
図26Aおよび
図26Bのボールアレイガイド90の実施形態の断面図。この断面図は、
図26Eの線26D-26Dに沿って得られる。
【
図26E】イメージングユニット960がボールアレイガイド90に取り付けられている、
図26Dのボールアレイガイド90の上面図。
【
図26F】カテーテルガイドユニット920がボールアレイガイド90に取り付けられている、
図26Aおよび
図26Bのボールアレイガイド90の実施形態の断面図。この断面図は
図26Gの線26F-26Fに沿って得られる。
【
図26G】カテーテルガイドユニット920がボールアレイガイド90に取り付けられている、
図26Fのボールアレイガイド90の上面図。
【
図26H】カテーテルをカテーテルガイドユニット920内の適所に保持するためのロッキングスライダー926の上面図。
【
図27A】カテーテルガイドユニット1020、イメージングユニット1060、およびベースプレート450内に配置されたボールアレイガイド190の実施形態の斜視図。
【
図27B】
図27Aのカテーテルガイドユニット1020、イメージングユニット1060、ボールアレイガイド190およびベースプレート450の同一の実施形態の底部斜視図。
【
図27C】
図27Aおよび
図27Bのカテーテルガイドユニット1020、イメージングユニット1060、ボールアレイガイド190およびベースプレート450の同一の実施形態の底部斜視図。
【
図28】イメージングユニット660およびハンドル340を備えた軌道アレイガイドシステム18の実施形態の任意の断面図。
【
図29】イメージングユニット660および取り付けられたハンドル340を備えた部分アセンブリの斜視図。
【
図30】内部イメージング通路661a,661d,661g、並びにプレナム669および通路延長部661a’を示すイメージングユニット660の透過斜視図。
【
図31】内部注入通路348および注入ポート346を示すハンドル340の透過斜視図。
【
図33A】中央ボア392を有するボールアレイガイド390、およびイメージングユニット660を備えたボールアレイガイド390のアセンブリの実施形態の斜視図。
【
図33B】ボールアレイガイド390、およびイメージングユニット660を備えたボールアレイガイド390のアセンブリの上面斜視図。
【
図34】インデックスローブ766を有するカテーテルガイドユニット720の実施形態の斜視図。
【
図35A】中央ボア492およびインデックスローブ受容部494を有するボールアレイガイド490の実施形態の斜視図、並びにカテーテルガイドユニット720を備えたボールアレイガイド490のアセンブリの斜視図。
【
図35B】ボールアレイガイド490、およびカテーテルガイドユニット720を備えたボールアレイガイド490のアセンブリの上面斜視図。
【
図36A】イメージングユニット1160がボールアレイガイド590に取り付けられている、ボールアレイガイド590の実施形態の断面図。この断面図は
図36Bの線36A-36Aに沿って得られる。
【
図36B】イメージングユニット1160がボールアレイガイド590に取り付けられている、
図36Aのボールアレイガイド590の上面図。
【
図36C】カテーテルガイドユニット1120がボールアレイガイド590に取り付けられている、ボールアレイガイド590の実施形態の断面図。この断面図は
図36Dの線36C-36Cに沿って得られる。
【
図36D】イメージングユニット1160がボールアレイガイド590に取り付けられている、
図36Aのボールアレイガイド590の上面図。
【
図36E】カテーテルをカテーテルガイドユニット1120内の適所に保持するためのロッキングスライダー1126の上面図。
【
図37A】イメージングユニット960(直線状アレイ)またはイメージングユニット1160(傾斜アレイ)が取り付けられたボールアレイガイド590の一般化された上面図。この図は、互いに異なる時計位置の各々において、イメージングユニット960またはイメージングユニット1160のロックタブ969またはロックタブ1169をそれぞれロックすることにより生じるアレイ位置を特定することを目的とした時計位置マークを含んでいる。
【
図37B】イメージングユニット1160が8つの互いに異なる時計位置に配置された場合に提供される増大したアレイフットプリント面積を示す図。イメージングユニット960(直線状アレイ)はボールアレイガイド590に対するその時計位置における接続にかかわらず同一のアレイを提供する。
【
図38B】ハンドル440を含む軌道アレイガイドシステム19の斜視図。
【
図38C】軌道アレイガイドシステム19の実施形態の分解斜視図。
【
図38D】ボールアレイガイド320の管腔325a~325g内への止めねじ323a~323cの食い込みを示すためにハンドル440を有さない軌道アレイガイドシステム19の上面斜視図。
【
図39】画像誘導手術システム1200に係合した軌道アレイガイドシステムの斜視図。
【
図40A】軌道アレイガイドシステムのハンドル440上に締着された画像誘導手術システム1210の斜視図。
【
図40B】軌道アレイガイドシステムのボールアレイガイド320上に締着された画像誘導手術システム1210の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、既知の軌道アレイガイドシステムの幾つかの不都合に対処するように構成された軌道アレイガイドシステムの実施形態について説明する。例えば、臨床状況において現在使用中であるか、または使用するために活発な調査中である多くのそのような軌道アレイガイドシステムは、大きく、扱い難く、また多くの別個の部品を有する傾向にあり、そのような別個の部品は製造に費用が掛かることがあり、また損傷を受けやすい。そのようなシステムは、軌道経路を変更およびロックするための複雑な機構を有する傾向にあり、従って調整を行うために望ましい時間よりも多くの時間を必要とする傾向にある。場合によっては、寄与する要因として、患者が手術室の外部のMRIシステム内に配置されている間に軌道アレイガイドシステムが用いられることがある。この状況は感染の危険性を増大させ、よって外科処置をできるだけ迅速に完了して、患者の搬送を最小限にすることが望ましい。1時間未満以内に軌道アレイガイドシステムの取り付けを完了して最適なロックされた軌道を確立する能力を有することが望ましい。
【0025】
本開示は、現在知られているシステムのこれらおよび他の不都合に対処するための軌道アレイガイドシステム、並びに方法およびキットの実施形態を提示する。
定義
本願において、「アレイガイド」という用語は、対象の脳内への長尺状器具の挿入のため、および長尺状器具の経路を誘導するための軌道の一連の画像を生成するために用いられる構成要素を指す。アレイガイドは軌道の角度を調整するために調整可能であり得る。アレイガイドは、長尺状器具の画像化および誘導のための軌道を生成するために、その本体内に形成された管腔のアレイ(配列)を有してもよいし、または代わりに1つ以上の別個のユニットの挿入のために構成された広いボアを備えていてもよい。
【0026】
本願において、「ボールアレイガイド」という用語は、軌道の角度を調整するための旋回するボールアンドソケットジョイント(玉継ぎ手)を形成することを目的として一端に形成されたボールを有するアレイガイドである。
【0027】
本願において、「カニューレ」および「カテーテル」という用語は同意語であると見なされ、それぞれ、外科的治療のため、または外部物質の送達もしくは内部物質の摘出のために体内挿入用に構成されたチューブを指す。
【0028】
本願において、「イメージング流体」という用語は、例えば磁気共鳴イメージングのような解析方式下でコントラスト画像を提供する特性を有する流体を指す。この用語は「MRI造影剤」という用語と同義である。磁気共鳴イメージングにおいて最も一般に使用されるイメージング流体はガドリニウム系化合物を含有する。
【0029】
本願において、「イメージングユニット」という用語は、軌道のアレイを表わす画像を生成するためにイメージング流体を導くことを目的として、アレイガイドとともに使用されることを意図した構成要素を指す。
【0030】
本願において、「画像誘導定位ナビゲーション(image-guided stereotaxic navigation)」という用語は、例えば磁気共鳴イメージングのようなイメージング技術によって生成された画像を用いて、定位ナビゲーションを誘導することを示す。
【0031】
本願において、「管腔」という用語はシステム構成要素の本体内の開口または空洞部を指す。より具体的には、この用語は、長尺状器具の挿入を誘導するために提供される、アレイガイド内のアレイのチャネルを特定するために用いられる。
【0032】
本願において、「通路」という用語は、上記の「管腔」という用語と同様に、システム構成要素の場合には本体内の開口または空洞部を指す。より具体的には、この用語は軌道画像を提供するためのイメージング流体を送達するために提供される、アレイガイド内におけるアレイのチャネルを特定するために用いられる。
【0033】
本願において、「プレナム」という用語は、そこ以外は中実である物体内にある開放空間を指す。
本願において、「定位ナビゲーション(stereotaxic navigation)」という用語は、体内の標的の位置を特定するため、およびアブレーション、生体組織検査、損傷、注入、刺激、埋め込み、放射線外科療法または他の外科処置のような行為を実施するために、三次元座標系を用いて手術部位内で三次元ナビゲーションを提供することを指す。
【0034】
本願において、「軌道」という用語は可能な経路を指す。本願において、より具体的には、この用語はカテーテルまたはカニューレの脳内への挿入のための可能な経路を特定するために用いられる。
【0035】
ボール軌道アレイガイドシステムの一実施形態の概要
本説明は、
図1A~
図8Cを参照しながらボール軌道アレイガイドシステムについて述べる。この説明の過程で、幾つかの代替実施形態が提示され、それらは当業者の知識に従って様々な互換性のある組み合わせで置き換えられて本発明の異なる実施形態に到達し得る。
【0036】
図1Aは、手術中におけるシステムの1つの向きを示す目的で、対象の頭蓋に固定された軌道アレイガイドシステム10を示している。システム10のこの配置はほんの一例として示されている。頭蓋上におけるシステム10の配置は、周辺機器のアクセスおよび回避、並びにカテーテルのような外科用器具の所望の軌道のような幾つかの互いに異なる要因に従って変化するであろう。
【0037】
図1Bには、軌道アレイガイドシステム10の拡大斜視図が示されている。場合により、対象の頭部はMRIシステムのボア(図示せず)の内部にあることも可能である。標準的な定位ナビゲーションシステムが初期の整合を提供するために用いられない一部の場合には、対象の頭部は処置全体にわたってMRIシステムのボアの内部にあってもよい。システム10は4つの取り付けタブ51a~51dを有するベースプレート50を備えており、この斜視図では4つの取り付けタブ51a~51dのうちの3つ(51a~51c)のみが見えており、第4番目の取り付けタブ51dはこの視点では隠れていて見えない。4つの取り付けタブ51a~51dの各々は、ベースプレート50の位置を頭蓋に固定するための留め具、典型的には骨ねじ、を挿入するための対応する開口52a~52dを有する。ベースプレートは、頭蓋に形成された開口部がベースプレートの中央ボア内に存在するように配置されなければならない。
【0038】
ベースプレート50は、ボールアレイガイド20のボール21を受容するソケットとして作用する中空カップ状の内部(図示せず)を備えることができる。ソケットは、アレイが外部から加えられた力を受けてのみ動くように、ボールに対して抵抗を与えるように設計されていてもよい。ボールおよびソケット構成を用いる利点の1つは、ソケットがアレイを非ロック状態に保持しており、軌道を調整するためには意図的な力を必要とするということである。
【0039】
ボールアレイガイド20の内部は、ボールアレイガイド20の主軸線に平行な一連の平行なチャネルまたは管腔(図示せず)を備えることができる。これらの平行なチャネルまたは管腔は、カテーテルのような長尺状外科用機器が選択された軌道で脳に進入し、かつ薬物の送達のために脳内の所望の標的位置に到達するために、平行な軌道のアレイを確立することができる。
【0040】
ボールおよびソケット構成は、ボールアレイガイド20のステム22の旋回可能な運動を可能にする。この実施形態では、内ねじ山を備えたロッキングナット330が、ベースプレート50の外ねじ山に対してねじ込まれて(threaded)締結されるように備えられている。ロッキングナット330をベースプレート50の外ねじ山に係合させることにより、ステムの所望の向きが得られた場合に、ソケットを圧縮して、ボールアレイガイド20の旋回動作を妨げることができる。
【0041】
また
図1Bには、ボールアレイガイド20の外方に延びる端部またはイメージングユニットへの確実な取り付けのために構成されたコネクタ41を備えたハンドル40が見られる。コネクタ41は、画像誘導定位ナビゲーションシステムに接続することを目的として、ボールアレイガイド20の延長部を提供するアーム42に連結されている。この構成により、カテーテル留置のために投影された軌道を調整する目的で、脳の磁気共鳴画像を有するコンピュータ監視装置を観察しながらボールアレイガイド20の位置を操作することが可能となる。定位ナビゲーションシステムの例としては、ミュンヘンのブレインラボ、アーゲー(BrainLab,AG)製のヴァリオガイド システム(Varioguide System)、およびミュンヘンのブレインラボ、アーゲー(BrainLab, AG)製の曲線画像誘導手術システム(Curve Image Guided Surgery system)が挙げられる。
【0042】
図2は、軌道アレイガイドシステム11の実施形態の分解組立図を示している。ボールアレイガイド120のボール121は、ベースプレート150のソケット153の内部に配置される。ベースプレート150は、ベースプレート150の頂部部分のボアの内側壁によって形成されたソケット153(
図4Bに見られる)の形状を可視化するために任意の断面として示されている。この実施形態のベースプレート150は、タブ(
図4Bに見られる参照番号151a,151c)の上面を含む平面に本質的に対して直交するソケット軸線を含む。
図2のベースプレート150の直交ソケット軸線とは対照的に、
図1Aおよび
図1Bのベースプレート50のソケット軸線は、直交から傾斜している、すなわち非直交である。
【0043】
ロッキングナット130はボールアレイガイド120上に通されて、ベースプレート150の外側壁の上部に固定されて、ボールアレイガイド120の向きをロックする。このステップの前または後に、イメージングユニット60はボールアレイガイド120に接続されるか、または係合され得る。イメージングユニット60の下部は、
図2において参照番号65として全体を標識された一連のチューブを有する。
図2では4本のチューブのみが見えるが、この実施形態は7本の長いチューブ65a~65gと1本の短いチューブ66とを含む8本のチューブを有する(
図5A~
図5Cに図示)。7本の長いチューブ65a~65gは、ボールアレイガイド120のステム122内の7つの対応する空洞部または管腔(
図3Bに図示)の内部に嵌合し、イメージングユニット60の残りの上部は、ステム122の頂部の上方に残存する。いくつかの実施形態において、これらのチューブ65a~65gおよびチューブ66は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)または同様の特性を有する別のポリマーのような熱可塑性ポリマーから形成されている。イメージングユニット60は3本の等間隔の止めねじによってボールアレイガイド120にロックされることが可能であり、
図2には1本の止めねじ123aのみが示されている(残りの止めねじ123b,123cは
図3Bの上面図に見られる)。
【0044】
特定の操作モードにおいて、軌道アレイガイドシステム11はイメージングユニット60を用いる。特定の操作モードにおいて、軌道アレイガイドシステム11はイメージングユニット60を用いない。特定の操作モードにおいて、双方のモード(イメージングユニット60有り、およびイメージングユニットなし)は処置中の互いに異なる時点において用いられるであろう。
【0045】
ハンドル40のコネクタ41は、挿入されたイメージングユニット60の頂部の上に配置され(またはユニット60を適所に有さずに)、ねじ機構または別の結合機構によりボールアレイガイド120の頂部部分に固定される。
【0046】
図3Aは
図2のボールアレイガイド120の同様の図である。
図3Aでは、第2止めねじ123bが存在している。ボールアレイガイド120はまた、ボールアレイガイド120のステム122に形成された外溝124を備えている。
図3Bは、
図3Aの線3B-3Bに沿って得たボールアレイガイド120のステム122の断面図である。ステムは内部に形成された7つの管腔125a~125gを有することが分かる。外溝124は、
図3Bでも、第3止めねじ123cと同様に見えている。止めねじ123a~123cは、ボールアレイガイド120の本体を貫通して、管腔125b,125d,125fの空間にそれぞれ進入することができる。イメージングユニット60の対応するチューブ65がこれらの管腔125b,125d,125f内に挿入されると、止めねじ123a~123cはチューブ65の外側壁に対して締められて、イメージングユニット60をボールアレイガイド120上の適所に固定することができる。
【0047】
図4Aはベースプレート150の上面図であり、ソケット153、タブ151a~151dおよび穴152a~152d、および中央ボア154を示している。
図2のベースプレート150の図に類似した
図4Bは、
図4Aの線4B-4Bに沿って得た断面図である。
【0048】
図5Aはイメージングユニット60の側面図である。
図5Bは
図5Aの線5B-5Bに沿って得たイメージングユニット60の断面図である。イメージングユニット60は、一連のチューブ65a~65gおよびチューブ66を、例えばガドリニウム系MRI造影試薬のようなイメージング流体で充填するための貯蔵器63を有する。いくつかの実施形態において、イメージングユニットは、MRIおよびコンピュータ断層撮影下において視認可能である放射線不透過性物質から構成されたチューブを含む。イメージング流体が貯蔵器63に加えられると、イメージング流体はチューブ65a~65gおよびチューブ66のすべてに進入する。チューブ65a~65g内のイメージング流体は次に、チューブの軸線によって規定される軌道経路を画像化する手段を提供することができる。チューブ66(短尺チューブ)は、軌道を画像化するために用いられる7本のチューブの容易な特定を目的として他のチューブ65a~65gの六方対称の外側に設けられた指標となるチューブ(indexing tube)である。
図5Aのこの側面図では、チューブ65c,65d,65g,66が見えており、残りのチューブ65a,65b,65e,65fは隠れていて見えない。これらの隠れたチューブ65a,65b,65e,65fは、
図5Aの線5B-5Bに沿って得た
図5Bの断面図で見られる。また
図5Aでは、貯蔵器63の頂部を密閉して被覆するキャップ64も見られる。
図5Cは、キャップ64が除去されているイメージングユニット60の任意の長手方向断面図である。
【0049】
図6Aは、ロッキングナット130の取り付け前のベースプレート150のソケット153内に設置されたボールアレイガイド120の側面図である。
図6Bはロッキングナット130の取り付け後の同一の構成を示しており、加えてボールアレイガイド120の旋回回転、およびボールアレイガイド120の本体内の管腔125a~125g(
図6Aでは見られない)のうちの1つに対応する投影された軌道Tを示している。
【0050】
図7は、脳(図示せず)内の標的位置に到達するようにカテーテルを挿入するのに適当な軌道を特定するために、イメージングユニット60を用いて一連の投影された軌道を規定するためのシステムおよびプロセスを示している。イメージングユニット60のチューブ65a~65gおよびインデックスチューブ(index tube)66はイメージング試薬IRで充填され、イメージング試薬IRは続いて上部貯蔵器63を充填する。イメージングユニットはボールアレイガイド120内に挿入され、チューブ65a~65g(
図5Bを参照)は対応する管腔125a~125g(
図3Bを参照)に進入する。インデックスチューブ66は外溝124に沿って摺動する(
図3Aおよび
図3Bを参照)。イメージングユニット60は、ボールアレイガイド120内に完全に挿入される。チューブ65a~65gおよびチューブ66は、イメージング試薬IR(MRI下で鮮明な白色像を提供するガドリニウム系造影試薬など)で充填されて、対象の頭部がMRIシステム内に配置されている間に脳への一連の投影された軌道Tを規定するために用いられる。軌道Tのうちの1つがカテーテル(図示せず)の挿入のために選択される。貯蔵器63の底部の画像は、カテーテルの挿入深さを規定するためのインデックスポイントまたはデータムとして機能する。貯蔵器63の底部とボールアレイガイド120の頂部との間には、イメージングユニット60の底部の厚さにより、既知の寸法の隔たり(gap)が存在する。インデックスチューブ66は他のチューブ65a~65gよりも短尺である。(イメージング試薬IRによって提供された)インデックスチューブ66の画像は、個々の軌道TをMRI下で正しく特定するための基準(reference)として用いられる(そうでない場合には、チューブ65a~65gの六角形パターンが対称であるため、そのような特定は不可能であろう)。次に、イメージングユニット60はボールアレイガイド120から除去される。
【0051】
図8A~
図8Cは、軌道が選択され、イメージングユニット60が除去された後にカテーテル170をボールアレイガイド120内に挿入するためのシステムおよびプロセスを示している。ボールアレイガイド120の自由端は、カテーテル170の挿入の深さに対するデータムDとして機能する。カテーテル170の構造は
図8Bに示す。カテーテル170の挿入の最大深さは、カテーテル170上の挿入停止具171の位置によって規定される。
図8Cは、軌道画像の解析によって特定されるような最適な標的軌道に部分的に挿入(左)、および完全に挿入(右)されているカテーテル170の2つの図を示している。いくつかの実施形態において、システムを14ゲージカテーテルおよび16ゲージカテーテルに適合させるために、14ゲージカテーテルおよび16ゲージカテーテルのための管腔を有した2つの別個の軌道アレイが提供され得る。これはまた、14ゲージチューブおよび16ゲージチューブを有する2つの別個のイメージングユニットをそれぞれ必要とするであろう。これに代わって、直径の小さい機器に適応するために、縮径用チューブ(reducing tubes)を14ゲージアレイとともに用いることができる。
【0052】
上記で述べたように、患者の脳のMRI画像は、処置全体を誘導するために得られる。手術計画は、外科医によって脳内の標的位置への進入部位およびカテーテル軌道を事前に計画するために好ましい計画ソフトウェアを用いて実施される。加えて、MRIシステムは、典型的には、画像の3D再構成用、および標的位置へのカテーテル挿入のための位置、寸法、平面および軌道を得るための次元解析を含むさらなる画像解析用のソフトウェアを含んでいる。処置全体を誘導するために、神経外科医に利用可能な標準的な画像誘導定位プラットフォームが、製造業者によって提供されるソフトウェアと組み合わせて用いられる。MRIスキャンの解析から、以下の寸法および標認点(landmark)、すなわち、1つ以上の標的位置、頭蓋上における進入点、進入点から標的位置までの好ましい軌道、および進入点から1つ以上の標的位置までの距離として定義される挿入深さが特定される。
【0053】
進入点および軌道は、カテーテルによる血管および脳部分への可能な損傷を回避するように選択される。一部の場合には、軌道は、
図9A~
図9Cに示すように、カテーテルの経路に沿った標的内への複数の注入を可能にするように選択される。
【0054】
いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムの構成要素は滅菌されている。それらの構成要素に適した滅菌法としては、高熱滅菌、蒸気滅菌、エチレンオキシド滅菌、またはガンマー線などの放射線滅菌が挙げられる。いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムの構成要素は、医療グレードプラスチック、医療グレードポリマー、および医療グレード金属を含む医療グレード材料から製造されている。医療グレード材料の特定の例としては、医療グレードポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、医療グレードシリコン、医療グレードスチール(医療グレードステンレス鋼など)、および医療グレードアルミニウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
軌道アレイガイドシステムの一実施形態の操作の概要
本開示は、本開示の軌道アレイガイドシステムを用いる長尺状器具を対象の脳内の標的位置に送達するためのシステムおよび方法を提供する。
図2~
図12Cを参照しながら、軌道アレイガイドシステム11の操作を説明する例を提示する。
【0056】
患者は処置に備えて全身麻酔を受ける。頭部安定化システムを用いて、処置中の頭部の移動を回避する。軌道アレイガイドシステム11の配置は、外科手術室内またはMRI機能を有したハイブリッド手術室内の滅菌環境において実施される。頭部を剃毛し、所望の進入点をマークする。切開部位を布で覆い、メスによって皮弁を形成して、軌道アレイガイドシステム11を配置するために頭蓋を露出させる。開頭部(craniotomy)Cは、この時またはベースプレート150の配置後に形成され得る(
図10A参照)。ボールアレイガイド120をベースプレート150上に緩く取り付け、ハンドル40を軌道アレイガイドシステム11に接続する。ガドリニウムイメージング試薬IRを充填したイメージングユニット60をボールアレイガイド120内に挿入する。次に、組み立てた軌道アレイガイドシステム11(
図2参照)を、ハンドル40を介して、ヴァリオガイド(VarioGuide) ナビゲーションシステムのような誘導システムに接続して、軌道アレイを所定の軌道に正しく向ける(
図10B)。
【0057】
軌道アレイガイドシステム11の適当な向きが確立されたら、それを頭蓋の表面まで下げて、4本以内の骨ねじをベースプレート150のタブ151a~150dの4つの穴152a~152dに固定することにより、ベースプレート150を頭蓋上に固定する。開頭部を予め形成していなかった場合には、ハンドル40を含む軌道アレイガイドシステム11の上部をベースプレート150のソケットから除去して、ベースプレート150を通るアクセスを可能にし、既知の外科処置に従って頭蓋に穿頭孔を形成する。次に軌道アレイガイドシステム11を、定位ナビゲーションシステムによって確認した適切なアライメントで、ベースプレート150に再び取り付ける。次にロッキングナット130を締めて、向きを保ち、かつシステム構成要素間のそれ以上の運動を防止する。
図10Cに示すように、ハンドル40を定位ナビゲーションシステムから分離して除去する。ハイブリッド手術室の場合には、患者はMRイメージングの準備ができた状態となる。分離したイメージング室(imaging suite)の場合には、切開部位および軌道アレイガイドシステム11を滅菌ドレープで覆って、患者をイメージング室に搬送する。
【0058】
代替の作業の流れとして、軌道アレイガイドシステム11を整合させるために別のイメージングシステムを使用することなく、処置全体をMRIスキャナー内で実施することができることが想定される。いくつかの別のナビゲーションシステム(またはMRIシーケンス)がベースプレートの取り付けのための進入点を特定するために必要とされるが、軌道を精密化するために、軌道アレイガイドシステム11の整合が以下に記載するように完全に実施されるであろう。
【0059】
患者の脳のMRIスキャンは、正しい進入点および軌道が確立されたことを確認するために実施される。
図11A~
図11Cは磁気共鳴イメージングおよび解析手順を示す。患者の脳および頭蓋上に取り付けられた軌道アレイガイドシステム11の磁気共鳴画像の図。イメージングユニット60の貯蔵器63並びにチューブ65a~65gおよびチューブ66に収容されているイメージング試薬IRは、MRIスキャン上において鮮明な白色像を提供する(
図11A参照)。MRIスキャナー制御卓上における3D再構成およびその後の画像解析を用いて、各軌道の矢状平面および軸平面(sagittal and axial plans)を決定し、またイメージングユニット60のチューブ65a~65gおよびチューブ66から標的位置TGに向かって脳内へ生じる軌道Tを投影する(
図11B参照)。最適な軌道OTを可能な軌道Tのアレイから選択する(
図11C参照)。初期の整合には中央管腔125gを用いることが有用であり、一方、周囲管腔125a~125fは、必要に応じて用いることができる別の平行な軌道Tを提供する。インデックスチューブ66の画像は、ボールアレイガイド120内の管腔125a~125gのアレイ内において個々の管腔を特定するための方向基準として機能する。軌道Tのいずれも適当であると思われない場合には、アンカーロックナット130を緩めてボールアレイガイドの旋回運動を可能にすることによって、軌道Tの方向を調整して、改善された一連の軌道Tを提供することができる。ロックナット130が緩められているときに、ボールアレイガイド120は、意図的な力を要することなく移動してはならない。次いでボールアレイガイド120をロックナット130で締め付けて、新たな向きを固定する。次にMRイメージングおよび解析手順を繰り返す。
【0060】
最適な軌道が確認されたら、イメージングユニット60をボールアレイガイド120から除去する。MRI画像から、データムとしてイメージングユニット60の貯蔵器の底部を用いて、カテーテル170の挿入の初期および最大の深さを測定する(イメージングユニットベースの厚さに等しい補正が行なわれなければならない)。深さ挿入停止具171を、
図12Aに示すように、ドラッグデリバリーカテーテル170上に、最大挿入深さに相当するカテーテル170の先端部からの距離に取り付け(
図8A~
図8Cも参照)、初期深さに等しい距離をカテーテル170上に滅菌ペンでマークする。カテーテル170を、ボールアレイガイド120内の管腔125a~125gのアレイ内のうちの1つの管腔を介して初期標的深さに慎重に挿入し、ボールアレイガイド120のすべての管腔125a~125gに食い込むように構成されたロックねじによって固定する。カテーテル170の先端部の正しい位置をMRIによって確認し、薬物を注入する(
図12B参照)。次に、
図12Cに示すように、カテーテル170を引く。挿入停止具171がさらなる挿入を防止する前に最適な軌道OTに沿った1つ以上の標的に到達することができる状況では、薬物の付加的なボーラスをこれらの標的において注入してもよい。同様に、そのような標的は、カテーテル170の後退段階の間は休止する注入を受けてもよい。
【0061】
軌道アレイガイドシステム11は、骨ねじを除去することによって、頭蓋から除去される。傷口は標準的な外科技術を用いて閉鎖される。
これより処置順序の一実施形態を簡潔に概説する。この処置順序は、システム11全体が対象の頭蓋に取り付ける前に組み立てられ得ると仮定する。
【0062】
最初に、イメージングユニット60およびハンドル40を含む軌道アレイガイドシステム11全体が組み立てられる。次に、手術ナビゲーションシステムがハンドル40に接続される。頭蓋上の進入位置が特定され、進入位置を露出させるために開頭Cが実施される。次に、ベースプレート150が頭蓋に接続される。ハンドル40はイメージング試薬IRを軌道アレイガイドシステム11に加えるために除去される。次に、投影された軌道Tを観察するためにMRIスキャンが実施されて、最適な軌道OTが選択される。必要に応じて、ハンドル40は最適な軌道OTの付加的な操作を容易にするために再び取り付けられる。次に、選択した最適な軌道OTが適所にロックされたままであることを確認して、イメージングユニット60が除去される。最適な軌道OTを用いてカテーテル処置が実施され、次いでシステム11は対象から除去される。
【0063】
いくつかの実施形態において、ベースプレートのねじ穴は、組み立ておよび分解のプロセス中にねじ回しによって直接アクセスすることができる。
一般に使用されるMRイメージングは約1mmの空間分解能を有する。従って、いくつかの実施形態において、アレイ内の軌道は、約1mm~約3mm、約1.5mm~約2.5mm、約2mm、約2.15mm、約2.25mm、または約2.35mm離間されている。
【0064】
ベースプレートおよびロッキングナットの組み合わせ
図13A~
図13Cは、システム12が組み立てられたならば、ロッキングナット230がベースプレート250のタブ251a~251dのねじ穴上に直接配置される軌道アレイガイドシステム12の実施形態を示している。
図13A~
図13Cはまた、イメージングユニット260と、ボール221、管腔225a~225gおよび止めねじ223a~223cを含むボールアレイガイド220とを備えたシステム12、並びに貯蔵器263、チューブ265g,266およびキャップ264を含むイメージングユニット60の機能を示している。
【0065】
特定の実施形態において、軌道アレイガイドシステムは頭蓋上に取り付ける前に組み立てられ得る。特定の実施形態において、軌道アレイガイドシステムは、骨ねじを配置するために、ベースプレート内のねじ穴に対して遮るもののないアクセスを提供する。
図14A~
図14Cの画像は、タブのねじ穴に対して遮るもののないアクセスを提供する3つの代替実施形態を示している。3つの実施形態すべてにおいて、ベースプレート350は同一であり、またタブ351a~351dのねじ穴352a~352dは半径方向外側に2mm移動されており、それによりベースプレートのフットプリントを4mm増大させている(ねじ穴352dを有するタブ351dは
図14A~
図14Cの斜視図では見えない)。
図14A~
図14Cにはベースプレート350が示されているが、例えば
図1Aおよび
図1Bの傾斜したベースプレート50のような他のベースプレートの実施形態をベースプレート350の代わりに用いてもよい。
【0066】
図14A~
図14Cにおいて、ロッキングナットは、タブ351a~351dのねじ穴352a~352dへの好都合なアクセスを提供するように、3つの例示した実施形態の各々において異なって変更されている。
【0067】
図14Aにおいて、ロッキングナット230は、
図13A~
図13Cのものと同一であり、締め付け力および緩め力の印加を容易にするグリップ面231を有している。
図14Bにおいて、ロッキングナット330は、ベースプレート350のタブ351a~351d内のねじ穴352a~352dへのねじ回しのアクセスのために付加的な空間を提供する4つの切欠き332a~332dを備えるように、ロッキングナット230に対して変更されている。ロッキングナットのこの実施形態330もまたグリップ面331を有する。
【0068】
図14Cにおいて、ロッキングナット430には、ロッキングナット430に対して締め付ける/緩める力(leverage)の印加を容易にするために、4つの等間隔の突出部433a~433dが設けられている。
【0069】
傾斜したベースプレート
特定の処置では、ベースプレートの中央直交軸から約45度以内の角度で頭蓋に進入することが好都合である。
図15Aは、ボールアレイガイド620およびイメージングユニット460を含む軌道アレイガイドシステム17を示している。軌道アレイガイドシステム17はまた、直交方向に向いたソケットおよびロッキングナット230を有した平坦なベースプレート350も備えている。
図15Aに示す軌道アレイガイドシステム17の角度範囲は、平坦なベースプレート350およびロッキングナット230によって制限されており、中心線からわずか約30度である。
【0070】
図15Bは、ボールアレイガイド220と、ソケット453を備えたベースプレート450とを含む軌道アレイガイドシステムを示している。ベースプレート450に対するソケット453の軸線は、リングクランプ80とともに約20度傾斜している。この傾斜は、軌道角度の範囲を垂直中心線から約45度まで拡張する能力を提供する。
【0071】
図16は、ベースプレート50の実施形態を示している。ベースプレート50は傾斜しており、ねじ穴52a~52dを有した4つのタブ51a~51dを備える(ねじ穴52dはこの視点では隠れていて見えない)。ソケット53の外側壁には、ロッキングナット(
図16では図示せず)の1つ以上の異なる実施形態の内ねじ山に接続するための外ねじ山54が設けられている。また
図16では、ソケットに付加的な撓みを与えてソケット53の外側壁に対するロッキングナットの締め付けを改善するように設けられた4つの圧縮スロット55a~55dが見られる。スロット55a~55dは、ソケット53の周囲をあまり強直ではなくし、従ってボールアレイガイドのボールに対してより容易に押し付けられるようにする。ベースプレート50の中央ボアの底部には、カテーテルがプレートの底面によって形成される平面に対して直交する軸線に対して有意に大きな角度でベースプレートの内縁と干渉するのを避けるために、面取り部(図示せず)が設けられている。
【0072】
比較のために、
図17はベースプレート350の実施形態を示している。この実施形態350は、4つのタブ351a~351dを含む平面に対して直交する軸線、並びに外ねじ山354および3つの圧縮スロット355a~355cを備えたソケット353を有する。
図15A~
図15Bに関して上記で述べたように、ベースプレートのこの実施形態350は、31.2度以下の軌道角度に制限されている。
【0073】
いくつかの実施形態において、本開示のベースプレートは、約20mm~約50mmのボア径、約30mm~約40mmのボア径、または約35mmのボア径を有することができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、本開示のキットは、傾斜したベースプレートのみを備えた軌道アレイガイドシステムを含んでいる。いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムは平坦なベースプレートのみを備える。
【0075】
ロッキングナットの変更および代替案
図14A~
図14Cは、取り付けタブ351a~351dの穴へのねじ回しのような取り付け器具のアクセスを可能にするロッキングナット230,330,430の互いに異なる実施形態によってベースプレート350のソケット353内にロックされたボールアレイガイド220のボール221を示している。これらの3つの実施形態230,330,430の各々において、ロックはボール221上へのロックナットの下向きの力によって行われる。締め付けの最終段階の間に回転するロックナットとボールとの間で生じる摩擦力は、ボールを回転させて、その向きを喪失させる可能性がある。いくつかの実施形態において、ロックナットが締められるにつれて、ボールアレイガイド220は安定する。
【0076】
いくつかの実施形態において、ボールロッキング機構は、ベースプレートソケットの半径方向内側への圧縮を用いて、ボールアレイガイドのボールをソケット内にロックすることができる。いくつかの実施形態において、ソケットの内側への圧縮は、ボールアレイガイドの不整合をもたらし得る部品間における何らかの移動を生じない。
【0077】
図18は、ベースプレートソケットの半径方向内側への圧縮を用いて、ボールアレイガイドのボールをソケット内にロックするボールロッキング機構の一実施形態の任意の断面図を示している。
図18は、相補的にテーパーをなす内ねじ山537を有するロックナット530に接続するための上方に向かってテーパーをなす外ねじ山556が設けられた傾斜したベースプレート550を示している(換言すれば、ベースプレート550の外ねじ山556の周はソケット553の外側壁の頂部から底部に向かって広くなっている)。この締め付けおよびロッキング機構は、ボール221との有意な摩擦を引き起こしたり、ボールアレイガイドの不整合をもたらし得る部品間の移動を生じたりすることなく、必要とされるソケット553の圧縮の機能効果を提供する。この実施形態の1つの変形例(図示せず)において、ソケットの外縁には上方へ突出する隆起部が設けられており、またナットの周囲の下縁は部分的に切り取られている。これらの特徴が相まって、ナットがボールと接触しないことを保証している。
【0078】
図19A~
図19Dは、ソケットの外側壁に対して外部からの圧縮を提供するためのリングクランプ機構を例示する。
図19A~
図19Dは、リングクランプ80と協働するためのベースプレート450を示している。ベースプレート450には、
図19Dに示すように、リングクランプ80の内周隆起部81を受容することができる外溝458が設けられている。締めねじ(tension screw)82(
図19C~
図19D参照)は、リングクランプ80を締めたり、または緩めたりするために用いられる。より多くの張力を加えることにより、リングクランプ80は圧縮され、ソケット453の外側壁に対して半径方向内方の圧縮を生じて、ボール221をソケット453に適所にロックする。
図19Cは、締めねじ82が締まっていない場合には、リングクランプ80がベースプレート450の外溝458のまわりにおいて完全な回転自由度を有する実施形態を示している。リングクランプ80の回転自由度により、締めねじ82が軌道アレイガイドシステムの操作に必要な任意の回転位置に配置されて締められることが可能となる。
【0079】
いくつかの実施形態において、リングクランプは、軌道アレイの中心線からの最大偏向角度を増大させる低プロファイルを有する。いくつかの実施形態において、リングクランプは、ベースプレートのフットプリントの拡張を必要とすることなく、ねじ穴への直接アクセスを可能にする低プロファイルを有する。
【0080】
本開示の実施形態は、ベースプレートのソケットに嵌合するように構成されたボールユニットを一般に含む軌道アレイガイドシステムについて説明する。いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムは、ボールユニットを有するベースプレートと、ベースプレートのボールユニットを受容するように構成されたソケットを有するアレイガイドとを備えるように再構成され得る。
【0081】
ハンドル
いくつかの実施形態において、ボールアレイガイドおよび対応する一連の平行な軌道の向きを定めること(orientation)は、商業的に入手可能なMRIまたはCT画像誘導ナビゲーションシステムによって容易となる。いくつかの実施形態では、ハンドルを用いてボールアレイガイドをナビゲーションシステムに接続することができる。ハンドルはボールアレイガイドに直接係合することができる。ハンドルはまたボールアレイガイドに接続されたイメージングユニットに係合することもできる。
図20Aはハンドル140の一実施形態を示す。
図20Bは、組み立てられた軌道アレイガイドシステム13のイメージングユニット360に取り付けられた同一のハンドル140を示しており、軌道アレイガイドシステム13はボールアレイガイド620のより長尺な実施形態を備えている。この実施形態では、ハンドル140のコネクタ141はイメージングユニット360の本体上に配置されるように構成されている。止めねじ144は、ハンドル140をイメージングユニット360にロックするように、コネクタ141の側面開口143に配置されている。ハンドル140のこの実施形態のアーム142は、ボールアレイガイド620の長さのおよそ2倍である。アームの長さは特定の状況の要求に応じて変化してもよい。より長尺および短尺のアームを有するハンドルの組み合わせが、軌道アレイガイドシステムの様々な実施形態を組み立てるためのキット内に提供されてもよい。
【0082】
図20C~
図20Eはハンドル140の実施形態を示している。
図20Cはハンドル140の側面図であり、
図20Dは
図20Cの線20D-20Dに沿って得た断面図である。
図20Eは、止めねじ144を挿入するための開口143(
図20B参照)と、この図ではコネクタ141の下端付近に位置する通気孔145とを示しているハンドルのコネクタ141の拡大図である。通気孔145の目的は、コネクタ141がイメージングユニットの外側壁上に密封するように配置されるときに空気が逃げるのを可能にするための通路を提供することにある。
【0083】
いくつかの実施形態において、ハンドルは約12~約18cmの全長を有する。いくつかの実施形態において、ハンドルのアーム部分は約6~約10mmの直径を有する。
いくつかの実施形態において、コネクタの開口を通る止めねじによって適所にロックすることができるポインタープローブの挿入を可能にするためにアームが中空であるということ以外は、ハンドルは
図20C~
図20Dの実施形態に類似している。
【0084】
イメージングユニット
イメージングユニットは、ボールアレイガイドおよびハンドルへの接続、またはそれらとの係合のために構成され得る。ボールアレイガイドが偏倚したインデックスチューブ(例えば
図5Aのチューブ66など)を用いるいくつかの実施形態では、イメージングユニットは、ボールアレイガイドの外側インデックス溝に対して同軸に配列されたインデックスチューブを有することができる(例えば
図22を参照)。
図21Aおよび
図21Bには、イメージングユニット360の実施形態の2つの斜視図が示されている。
図21A~
図21Fでは、イメージングユニットはチューブが接続されていない状態で示されている。イメージングユニット360は、8本のチューブに接続されて、軌道を画像化するため、および指標とするための軸線を提供することができる。
【0085】
図21Aはイメージングユニット360の上面斜視図であり、
図21Bはイメージングユニット360の底面斜視図である。
図21Cは上面図であり、
図21Dは底面図である。
図21Eは側面図であり、
図21Fは
図21Eの線21F-21Fに沿って得た断面図である。このイメージングユニット360はボールアレイガイドの上端部上に嵌合するように構成されている。
図21Aの上面斜視図では、イメージングユニット360の外側壁内に形成された貯蔵器363および溝368だけでなく、8本の通路361a~361gおよび通路362(指標となる通路)すべての上部開口が見えている。この溝368は、ハンドル140のコネクタ141を通って延びるロッキング止めねじ144を受容するために設けられている。
図21Bは、イメージングユニット360の同一の実施形態の底部斜視図である。この斜視図ではインデックス通路362は見えない。さらに明瞭にするために、
図21Cおよび
図21Dには、イメージングガイド360の同一の実施形態の上面図および底面図がそれぞれ示されている。これらの図の各々は、通路361a~361gおよび通路362の中の空間的関係を示すためにアライメント線を含んでいる。通路361a~361fは、通路361gを中心として等間隔で対称六角形に配列されており、インデックス通路262は、通路361c,361dの間に形成された線および通路361e,361fの間に形成された線に整合されている。
図21Fの断面図では、イメージングユニット360は、一定体積のイメージング試薬を保持するための上部貯蔵部363と、通路361a~361および通路362が形成されている中間中実部分の下方の下部空隙367とを有することがはっきりと分かる。この断面図では、1本の通路361g(中央通路)のみが見えている。通路361gの上部はその下部よりも小径を有することが分かる。この構成はまた、
図21Cの上面図と
図21Dの底面図とを比較することでもはっきりと分かる。より大きな底面径は、別個の軌道イメージングチューブ(図示せず)の挿入を目的としている。完全なイメージングユニット360の組み立て中に、チューブはイメージングユニットの底部を通って通路361a~361gおよび通路362に挿入されて結合される。各通路の上部の縮小した径は、チューブが貯蔵器363内に通過するのを防止するための停止具として作用する。
【0086】
図22は軌道アレイガイドシステム14の実施形態を示す。イメージングユニット460の実施形態は、ボールアレイガイド620(
図15A、
図15B、
図20Bおよび
図23A~23Dにより詳細に図示)のより長尺な実施形態の中に挿入されている。イメージングチューブ465a~465gおよびチューブ466は管腔625a~625g(ボールアレイガイド620のボール621の底部に見られる)に対して同軸に配列されており、ボールアレイガイド620のステム622の外側壁には外溝624が形成されている。イメージングユニット460のチューブ465a~465gおよびチューブ466は、よってボールアレイガイド620の対応する管腔625a~625gおよび外溝624に進入するであろう。軌道アレイガイドシステム14は、ロッキングナット730およびベースプレート350を備えている。
【0087】
いくつかの実施形態において、イメージングユニット360を用いて脳内の特定された標的までの軌道を計算するための画像を生成するプロセスは、チューブ465a~465gおよびチューブ466をイメージングユニット360の通路361a~361gおよび通路362の各々の中に挿入することを含み、続いてイメージングユニット360がボールアレイガイド620の上端部に取り付けられ、チューブ465a~465gおよびチューブ466は対応する管腔625a~625gおよび外溝624内へ延びる。
【0088】
ボールアレイガイドおよび管腔
いくつかの実施形態において、ボールアレイガイドは、カテーテルの配置および精度を提供する。カテーテルはボールアレイガイドの選択された管腔に通されて標的に到達する。円滑な挿入を可能にするために、アレイガイドは、カテーテルの外径と軌道アレイの各管腔の内径との間に十分な隙間を備えることができる。カテーテル留置の精度は、管腔の長さを増大させることによって高められる。いくつかの実施形態において、ボールアレイガイドおよび対応する管腔は、約30mm~約60mmの長さ、約40mm~約50mmの長さ、または45mmの長さを有する。いくつかの実施形態において、ボールアレイガイドは、規定の長さをそれぞれ有する2つの部品を含んでおり、それらの部品は接合されている。そのような部品の組み合わせは、機械加工部品、3Dプリント部品、または成形部品であることが可能である。
【0089】
図23A~
図23Dは、ボールアレイガイド620の実施形態を示す。
図23Aは、ボール621、ステム622および管腔625a~625gの下部開口が見えているボールアレイガイド620の斜視図である。インデックスチューブを配置するための外溝624は見えていないが、ボールアレイガイド620のこの実施形態において存在していることを理解すべきである。
【0090】
管腔625a~625gの開口はボールの平底部628に存在する。ステムの頂部の近くには、ボールアレイガイドに係合したイメージングユニット(図示せず)のチューブを固定する止めねじ(図示せず)を挿入するための3つの止めねじ孔627a~627cが存在する。
図23Bはボールアレイガイド620の側面図である。
図23Cはボールアレイガイド620の上面図であり、
図23Fはボールアレイガイド620の底面図である。
図23Cおよび
図23Dの破線は、管腔625a~625fが六角形に対称的に配列されており、かつ管腔625gはこの六角形の中心に位置することを示している。
【0091】
軌道アレイガイドシステムの実施形態
本開示(president disclosure)は、互換性のある構成要素をどのように異なる組み合わせで組み立てて、軌道アレイガイドシステムの様々な実施形態を製造することができるかを示している。
図24は軌道アレイガイドシステム15の一実施形態の断面斜視図を示している。システムは、短尺のステム222と、傾斜したベースプレート550のソケットに適合するボール221とを有するボールアレイガイド220を備える。傾斜したベースプレート550は、ロッキングナット530にねじ込むように構成されたテーパーねじ山を有する。
【0092】
イメージングユニット360はステム222の頂部に取り付けられている。イメージングユニット360の中央通路361gおよびインデックス通路362は、ボールアレイガイド220の中央管腔225gおよび外溝224に整合されている(チューブは明瞭さを保つために省略されている)。イメージングユニット360のキャップ364は、イメージングユニットの頂部に係合して、貯蔵器363を隔離している。ハンドル140はイメージングユニット360の外周に係合されており、止めねじ(図示せず)を用いて、ハンドル140のコネクタ141をコネクタ141の側壁の開口143を介してロックすることができる。アーム142は、コネクタ141から外側に延びている。
【0093】
図25は、ボールアレイガイド220の管腔225a~225gのうちの1つの直径を低減することができるレデューサ構成要素75を備えた軌道アレイガイドシステム16の実施形態の分解斜視図である。レデューサはカテーテルのその所望の軌道からの有意な逸脱を低減することができるので、これはより小ゲージのカテーテルが用いられる場合に必要になることがある。レデューサ75は、管腔225a~225gの直径よりも小径を有するレデューサチューブ76を含む。レデューサチューブ76は、止めねじ78を備えたレデューサディスク77に係合されている。止めねじ78は、挿入された機器の深さがレデューサチューブ内の適所でロックされることを可能にする。レデューサチューブ76は、ボールアレイガイド止めねじ123a~123cのうちの1つを用いて、適所にロックされ得る。
【0094】
別個のイメージングユニットおよびガイドユニットを有する軌道アレイガイドシステムの実施形態
いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステムは、(一連の管腔の代わりに)広いボアスリーブの形態にあるアレイガイドを備えることができる。このワイドボアアレイガイドは、ベースプレートに接続するためのボールジョイントを備える。アレイガイドのボアは、イメージングユニットおよび適合したアレイカテーテルガイドユニットを受容するように構成されている(すなわち、イメージングユニット通路およびカテーテルガイドユニット管腔の配列は、カテーテルがたどる経路が選択した軌道に合致することを保証するために、イメージングユニットによって生成される軌道画像が上記管腔に対して同軸となるように合致している)。軌道アレイガイドシステムのこの実施形態は、画像化に用いられる(すなわちイメージング試薬を収容している)管腔と、カテーテルを誘導するために用いられる管腔との独立した直径の寸法決定を行う能力を提供する。この実施形態はまた、カテーテルガイド管腔の頂部と、頂部イメージングチャンバの底部との高さの整合を提供する。この実施形態は、イメージング軌道チューブを備えたイメージングユニットを用いた実施形態ほど繊細ではなく、より信頼性の高い構成要素の全体的なアライメントを提供することができる。一般論として、この実施形態のアレイガイドのボール部分は、本願に記載する他の実施形態のボール部分よりも大きいと考えられる。リングクランプのロッキング機構としての使用により、アレイガイドのより大きな傾斜角度が可能となるため、そのようなリングクランプの使用は、別個のイメージングアレイユニットおよびカテーテルアレイユニットを有する軌道アレイガイドシステムとの使用に特に適している。
【0095】
図26A~
図26Hには、軌道アレイガイドシステムの一実施形態が示されている。
図26Aは、底部のボール91と、合致したイメージングユニットおよびカテーテルガイドユニットを受容するように構成されたテーパー状内部ボア92とを備えた漏斗形ボールアレイガイド90の(
図26Bの上面図の線26A-26Aに沿って得た)断面図を示している。アレイガイド90の頂部は、対応するイメージングユニットまたはカテーテルガイドユニットをアレイガイド90にロックするためのボルト孔94を備えたロックタブ93を有している。これらの特徴は、アレイガイド90の上面図を示す
図26Bにも示されている。
【0096】
図26Cは、異なる手術ナビゲーションシステムとの係合に適応可能なハンドルアダプタ249を用いた、ハンドル240をアレイガイド90に接続するための構成を示している。
【0097】
図26Dは、アレイガイド90に挿入されたイメージングユニット960の一実施形態の断面図である。この断面図は、
図26Eの線26D-26Dに沿って得られる。イメージングユニット960は、イメージングユニット960をロックボルト95aによって適所にロックするために、アレイガイド90のロックタブ93に整合されるロックタブ969を有する。イメージングユニット960は、イメージング流体を保持するための貯蔵器963と、一連の軌道を画像化するための一連の通路961a~961gおよびより短尺のインデックス通路962とを有する。
【0098】
図26Fは、アレイガイド90に挿入されたカテーテルガイドユニット920と同様の構成(
図26Gの上面図の線26F-26Fに沿って得た断面図を表わす)を示している。カテーテルガイドユニット920は、一連の管腔925a~925gと、より短尺のインデックス管腔924とを有している。管腔925a~925gのうちの任意の1つが、イメージングユニット960を用いて特定された軌道に基づいて選択され得る。イメージングユニットの通路961a~961gは、カテーテルガイドユニット920の対応する管腔925a~925gと合致しており、それらに整合される。例えば、イメージングユニット960によって提供される軌道画像が、管腔961cが標的への最適な軌道を表わしていることを示す場合、これは記録され、イメージングユニット960は除去され、カテーテルガイドユニットが挿入された後、管腔921c(925c)はカテーテルを標的に誘導するために用いられる管腔となるであろう。カテーテルガイドユニット920はまた、カテーテルガイドユニット920をアレイガイド90内の適所にロックするためにロックタブ929を有する。カテーテルガイドユニット920はまた、カテーテルを選択した管腔925a~925gのうちの1つの中の適所にロックするための開口928a~928gを有したロッキングスライダー926も備える。
図26Hには、このロッキングスライダー926が単独で上面図で示されている。
【0099】
図26A~
図26Hを参照しながら、軌道アレイガイドシステムの操作を説明する例を示す。
上記システムを、例えばベースプレート450のようなベースプレートに接続されたアレイガイド90と、アレイガイド90のボア92内に挿入され、ロックボルト95aを用いてロックされるイメージングユニット960とともに組み立てる。通路961a~961gおよび通路962内に収容されたイメージング試薬を用いて、一連の標的に向かう軌道を可視化し、最適な軌道を選択する。アレイガイド90gをベースプレート450の適所にロックして、イメージングユニット960を除去し、カテーテルガイドユニット920をアレイガイド90のボア92内に挿入し、ロックボルト95aを用いて適所にロックする。ロッキングスライダー926をカテーテルガイドユニット920内に配置し、ロックボルト95bを用いて適所に保持して、カテーテルを選択した最適な軌道を表わす選択した管腔内の適所に維持する。
【0100】
図27A~
図27Cは、漏斗形のイメージングユニット1060および合致したカテーテルガイドユニット1020の双方を受容するために広いボア192が設けられた概して漏斗形のボールアレイガイド190を示している。ボールアレイガイド190は、ベースプレート450のソケットに接続されて示されている。ボールアレイガイドは、イメージングユニット1060の対応するロックタブ1069にロックするため、およびカテーテルガイドユニット1020の対応するロックタブ1029にロックするためのロックタブ193を有する。
図27Cでは、管腔1025a~1025gおよびインデックス管腔1024、並びに通路1065a~1065gおよびインデックス通路1066が見えている。
【0101】
漏斗形アレイガイドおよび対応する漏斗形ユニットを備えた軌道アレイガイドシステムは、軌道アレイガイドシステムの他の実施形態に対する利点を有し得る。例えば、イメージングユニットのチューブのアレイはボールアレイガイドの対応する管腔に挿入するのが困難である可能性がある。またチューブをイメージングユニットに対して密閉する際には製造上の課題がある。またボールアレイガイドとチューブとの間にある程度の移動がある可能性があり、これはハンドルが接続されるときにシステムのある程度の撓みを生じる。加えて、縮小した径を有するカテーテルを扱うためにはレデューサ(
図25中に例えばレデューサ70を参照)が必要とされるのに対して、本開示の漏斗形カテーテルガイドユニットの構造は、異なるサイズの管腔を有するユニットを提供するように変更され得る。特に、14ゲージおよび16ゲージカテーテルは、挿入深さについて異なる補正因子を必要とし得る。より低ゲージ(縮小した径)のイメージングユニット管腔ほど最高の画像を提供し得るので、これは特に重要である。この節に記載した実施形態は、とりわけこれらの不都合に対処している。
【0102】
別のイメージング流体注入路およびハンドル接続を有する軌道アレイガイドシステム
図28は、
図26A~
図27Cに記載したシステムに類似した方法で別個のイメージングユニットおよびカテーテルガイドユニットを用いる軌道アレイガイドシステム18の一実施形態の任意の断面斜視図である。
【0103】
この軌道アレイガイドシステム18は、その傾斜したソケットを有するベースプレート450とリングクランプ80とを備える。このベースをロックする組み合わせは、
図26のボールアレイガイド90と同様に、ベースプレート450のソケット内に保持されるように構成されたボール291と、イメージングユニットおよびカテーテルガイドユニットを保持するためのボア292とを有するボールアレイガイド290の実施形態を維持するために用いられる。
図28では、イメージングユニット660は、ボールアレイガイド290のボア292内に挿入されて示されている。このイメージングユニット660は一連の7つの通路661a~661gを有しており、この斜視図では通路661a,661d,661gのみが見えている。管腔661b~661gは、ボール191の回転中心に位置する、直交通路接続プレナム669において終了している。通路661aはプレナム669から下向きにわずかな距離だけ延びて通路延長部661a’を形成している。
【0104】
この実施形態において、ハンドル340には、アーム342の軸線に沿って、イメージングユニット660の上部チャンバ663内の空洞部内に嵌合するコネクタ341まで、注入通路348が設けられている。ハンドル340のアーム342内にある注入通路348は、アーム342内のポート(図示せず)を介したイメージング流体の注入のためのものである。ポートは、イメージング流体が注入通路348に効果的に注入されるならば、ハンドル340のアーム342に沿ったいかなる位置に位置してもよい。イメージング流体は、連続的に注入されると、注入通路348を下って移動し、中央通路661gに進入する。注入されたイメージング流体がプレナム669に到達すると、次にイメージング流体はプレナム669内に分散し、残りの通路661a~661fを底部から上方に向かって充填する。イメージング流体はまた通路661aの下部延長部661a’を充填する。このように、すべての通路661a~661gは、平行な軌道のアレイの特定のためにイメージング流体で適切に充填される。下部通路延長部661a’はMRイメージング下において残りの通路から容易に特定され、識別されて、軌道画像の特定のためのインデックス画像として機能する(これは他の場合には通路661a~661gの対称六角形の構成により不可能であろう)。この構成は、以前の実施形態でのようにインデックス通路として用いられる8番目の通路の必要性を排除する。
【0105】
この特徴の構成の結果として、すべての通路661a~661gおよび通路661a’は、好都合にアクセス可能である(例えば
図31参照)ハンドル340内のポート(ルアーテーパー注入ポートなど)を介してイメージング流体で充填され得る。イメージング流体によって置換された空気を流路から排出できるようにするために、通気孔(図示せず)が、注入される流体の流路と連通するように設けられている。この構成はまた、流路が洗浄用の流体または空気によって浄化されることを可能にする。
【0106】
いくつかの実施形態において、ハンドル340のコネクタ341は、イメージングユニットの上部チャンバ663内に摺動する。これは改善された密閉構成を提供し、イメージングユニット660用のキャップの必要性をなくす。この実施形態の代替案は、ハンドル340が製造中にイメージングユニット660の上部チャンバと結合されているか、または一体的に形成されている構成である。これにより、内部に収容されたイメージング流体とともに廃棄される、一体形成されたハンドル340を備えたイメージングユニット660のアセンブリ全体が可能となる。
【0107】
ハンドルには、ボール291の回転中心からの距離を示す距離マーカが設けられている(この部分図ではマーカ349a~349cが示されており、ハンドル340の完全な図ではより多くのマーカが見えるであろう)。この特徴は、ボール291の回転中心からの所与の距離におけるハンドル340の側方移動(sideways movement)を特定する手段を提供し、そのような移動はその距離と同一の長さの軌道の既知の反対の移動を生じる。
【0108】
図29はイメージングユニット660およびハンドル340のサブアセンブリの斜視図である。
図30はイメージング通路661a,661d,661g(残りの通路661b,661c,661e,661fはこの図では見えない)、通路延長部661a’、プレナム669および貯蔵器663を含む内部特徴を示すイメージングユニット660の透過斜視図である。同様に、
図31は内部注入通路348および注入ポート346を示すハンドル340の透過斜視図である。加えて、距離マーカ349a~349iは、コネクタ341およびコネクタより上方にある目盛として示されている。内部注入通路348は、ハンドル340およびイメージングユニット660のサブアセンブリが組み立てられる間に、イメージングユニット660をイメージング流体で充填するための好都合な手段を提供する。
【0109】
図32および
図33A~
図33Bは、イメージングユニット660の一実施形態およびボールアレイガイド390の一実施形態を示す。イメージングユニット660は
図32の斜視図に見られる。イメージングユニット660は中実な底部660’を有しており、これは貯蔵器663の底部において開始するイメージング通路661a~661gのすべてがイメージングユニット660の本体内で終了することを示している(
図33Bを参照)。
図33Aおよび
図33Bには、ボールアレイガイド390と、ボールアレイガイド390およびイメージングユニット660の双方のサブアセンブリとが斜視図で示されている。ボールアレイガイド390は、ボール391の頂部から底部まで通り抜けて延びる広いボア392を有する。イメージングユニット660がボールアレイガイド390内に完全に挿入されている場合、イメージングユニット660’の中実な底部はボール391の底部で見られる。
【0110】
図34および
図35A~
図35Bは、カテーテルガイドユニット720の一実施形態およびボールアレイガイド490の一実施形態を示している。
図34の斜視図に単独で示されるカテーテルガイドユニット720には、管腔725a~725gの主要パターンの六角形対称の外側にあるより短尺なインデックス管腔724の存在に適応するために、外側インデックスローブ726が設けられている(
図35B参照)。インデックス管腔724はイメージング中に個々の管腔725a~725gの特定に用いられる。
図34および
図35Aにおいて、管腔725a~725gは、カテーテルガイドユニット720の頂部から底部までずっと延在している。これらの管腔725a~725gは、
図35A内のボールアレイガイドのボール491の底部のボア492内に見えている。ボールアレイガイド490には、カテーテルガイドユニット720のインデックスローブ726の進入に適応するために、インデックスローブ受容器部分494が設けられている。ローブ(突出部)726の存在により、カテーテルガイドユニット720は、管腔725a~725gのより緊密なアレイを形成するために、より小径の下部を有して構成されることが可能となる。ボールアレイガイド490のローブ受容器494は、画像化中に用いられるインデックス通路を保護することにより、ボールアレイガイドの他の実施形態の外溝構成に対する改善を提供する。
【0111】
別個のイメージングユニットと、傾斜アレイを備えたガイドユニットとを有する軌道アレイガイドシステム
軌道アレイガイドシステムは、ボールアレイガイドの長手方向軸線に関して角度をなした管腔と、イメージング通路との合致したアレイを含む漏斗形ボールアレイガイドを備えることができる。そのような角度をなした、または傾斜したアレイは、可能な軌道の範囲を、すべての管腔および通路が、アレイガイドの長手方向軸線に整合されている典型的な直線状アレイの外側に拡張するように設計され得る。これは単一の直線状アレイの寸法の3倍の「フットプリント」を生じることができる。このアプローチの利点は、ボールジョイントがロック位置にとどまることができる(すなわちボールジョイントの調整が必要ない)ということである。単一の傾斜したイメージングアレイは、様々な位置にロックされた場合に、中央アレイのまわりに周方向に配列された広範囲の付加的な軌道を提供することができる。
【0112】
図36Aは、漏斗形イメージングユニット1160の挿入に適応するための広いボアを備えた漏斗形ボールアレイガイド590の一実施形態のサブアセンブリの断面図を示している。
図36Bは、
図36Aに示した同一の構成の上面図である。ボールアレイガイド590は、ボールアレイガイド590をイメージングユニット1160にロックし、かつボールアレイガイド590を合致したカテーテルガイドユニット1120にロックするようにそれぞれ構成された8つの等間隔のロックタブ593a~593hを備える(
図36C参照)。インデックスロックタブ593a(
図36B中の12:00の位置)には、特定するために異なる色(
図36Bに黒色で塗りつぶすことによって表示)のような識別標識が提供されている。イメージングユニット1160は、
図36Bに見られるように、通常の六角形パターンのイメージング通路1161a~1161gおよびインデックス通路1162を有している。しかしながら、通路1161a~1161gの各々は、
図36Aの代表的な通路1161a,1161d,1161gによって示されているように、イメージングユニット1160の長手方向軸線から離れて角度をなしている(残りの通路1161b,1161c,1161e,1161fは、この断面では隠れていて見えない)。角度をなした通路1161a~1161gおよびインデックス通路1162はほぼ平行であり、貯蔵器1163の底部から、イメージングユニット1160の底部に近接した位置まで延びている。
【0113】
図36Bに示すインデックス位置以外の位置におけるイメージングユニットの単一ロックタブ1169の(ロックボルト595aを用いてロックした)配置は、通路1161a~1161gの六角形アレイの軌道方向を回転させる効果を有するであろう。六角形アレイの通路1161a~1161gの各々が角度をなしているので、この回転は、
図37Aおよび
図37Bに示すように、可能な軌道のアレイの方向をずらして可能な軌道の終点のより広い円を形成する効果を有する。
【0114】
図36Cは、ボールアレイガイド590の広いボア内に挿入されたカテーテルガイドユニット1120を有したボールアレイガイド590の実施形態の断面図である。このカテーテルガイドユニット1120は、イメージングユニット1160に合致しており、よってイメージングユニット1160の通路1125a~1125g(1161a~1161g)およびインデックス通路1162に合致する傾斜した管腔1125a~1125gおよび傾斜したインデックス管腔1124を有する。よって、イメージングユニット1160が最適な軌道通路を特定するために用いられる場合、その最適な軌道通路に対応する管腔がカテーテルの導入に用いられるであろう。例えば、イメージング通路1161dが標的に最適な軌道を表わすと特定された場合には、合致したカテーテルガイドユニット1120の管腔1125dが、カテーテルを導入するための経路として用いられるであろう。カテーテルガイドユニット1120は、カテーテルガイドユニット1120をボールアレイガイド590のロックタブ593a~593iのうちのいずれか1つにロックするためのロックタブ1129を有している(
図36Dを参照)。
【0115】
カテーテルガイドユニット1120はまた、カテーテルを選択した管腔1125a~1125gのうちの1つの中の適所にロックするための開口1128a~1129gを有するロッキングスライダー1126を備える。このロッキングスライダー1126は単独で
図36Eに上面図で示されている。ロッキングスライダー1126はロックボルト595bを用いて、カテーテルガイドユニット1120に固定される。
【0116】
上記で述べたように、
図37Aおよび
図37Bは、そのロックタブ1169がロックタブ593a~593iのうちのいずれか1つにロックされたイメージングユニット1160の配置が、異なる外方位置に対する軌道のアレイの方向をどのようにもたらすかを示すために提供されており、外方位置は時計位置を用いて特定されている。
【0117】
インデックスロックタブ593a(12:00の位置)から通路1161a~1161gおよび管腔1121a~1121gの角度方向に従って、軌道は反対方向(6:00の位置の方に)に指向されることが理解される。従って、この構成によれば、
図37Aおよび
図37Bにおいて、イメージングユニット1160のロックタブ1169がタブ593a(12:00の位置)にロックされる場合には、アレイは6:00の位置に指向されるであろうことが分かる。この反対の指向性は残りの位置についてもあてはまる。
【0118】
ボールアレイガイド590の使用を、
図26A~
図26Hに示すもののような直線状アレイを有したイメージングユニットおよびカテーテルガイドユニットと組み合わせてもよい。従って、
図26Aおよび
図26Bのイメージングユニット960がボールアレイガイド560に挿入される場合には、イメージングユニット960はロックタブ位置593a~593iのうちのいずれか1つにロックされることが可能であり、イメージングユニット960のアレイは直線状であるので、アレイの軌道方向は、外方への指向性を有することなく、中心に集まったままとなるであろう。従って、直線状アレイを有したイメージングユニットおよびガイドユニットと、傾斜したアレイを有したイメージングユニットおよびガイドユニットとの組み合わせは、
図37Bに示すような広いフットプリントに及ぶことができる。重要なことには、ボールアレイガイド590をベースプレート内のそのソケット内において調整することなく、広い軌道範囲(trajectory coverage)のフットプリントが得られ得る。
【0119】
画像誘導手術用ナビゲーションポインタへの接続のための別のハンドルを備えた軌道アレイガイドシステム
図38A~
図38Dには、軌道アレイガイドシステム19の実施形態が示されている。この実施形態は、現在使用中の画像誘導手術システムのナビゲーションポインタへの接続を容易にするように構成されたハンドル440を備えている。したがって、ハンドル440(
図38Aに単独で図示)は、
図38B~
図38Dにおいて完全なシステム19の一部として見られるボールアレイガイド320上への直接配置およびそれとの係合のために設計されている。そのような配置は、選択した管腔325a~325gのうちの1つにスパイク448を挿入することにより行われる(
図38D参照)。ハンドル440は、一端におけるスパイク448の挿入を可能にするために中空である。中空ハンドル440はまた、中空ハンドルの後端開口部446へのナビゲーションポインタの取り付けも可能にする。ハンドル440のボア内に貫通する止めねじ447は、ナビゲーションポインタを適所に保持するために提供されている。
【0120】
図38Bは、ボールアレイガイド320の実施形態に係合したハンドル440を有する組み立てられた軌道アレイガイドシステムの一実施形態を示しており、ボールアレイガイド320はボールアレイガイド320の上端よりもボール321の近くに配置された3本の止めねじ323a~323cを有する。この構成は、特定の種類の手術ナビゲーションシステムをボールアレイガイド320の上部へ直接接続することを可能にするために提供される。このシステム19は、
図38B~
図38Dに見られるように、ベースプレート450をリングクランプ80と組み合わせて用いている。
【0121】
図38Cは、イメージングユニット360、レデューサ75およびキャリブレーションロッド201を含む軌道アレイガイドシステム19の構成要素を示す分解組立図である。いくつかの実施形態において、キャリブレーションロッド201は、ボールアレイガイド320の上部本体に直接接続することができる特定の画像誘導手術システムに対してボールアレイガイド320の配置のキャリブレーションを行うために用いることができる。キャリブレーションロッド201は底部部分よりも広い直径を備えた上部を有して、互いに異なるサイズの穴に適合するために2つのキャリブレーション径を提供する。キャリブレーションロッドの一実施形態において、キャリブレーションロッド201の幅広部分は、ボールアレイガイド320の中央管腔に適合するために2.1mmの外径を有し、キャリブレーションロッド201の狭小部分は、ブレインラボ スターリンク(Brainlab StarLINK)(商標)画像誘導手術システムのキャリブレーション器具上のキャリブレーション穴に嵌合するように2.0mmの外径を有する。このキャリブレーションロッド201はまた、メドトロニック シュアトラック(Medtronic SureTrak)(商標)画像誘導手術システム、および当業者に既知の他の画像誘導手術システムとも適合性を有し得る。いくつかの実施形態において、軌道アレイガイドシステム19は、キャップ364とイメージングユニット360との間に密閉をもたらすOリング369を備える。
【0122】
図38Dはハンドル440を有していないシステムの上面図である。ボールアレイガイド32は3つの止めねじ穴326a~326cを有しており、これらのねじ穴は各止めねじ323a~323cがボールアレイガイド320の本体を貫通して、7つの管腔325a~325gのうちの3つに進入することを可能にする。よって、止めねじ323aは管腔325a,325b(325f),325g内に食い込み、止めねじ323bは管腔325c,325d(325b),325g内に食い込み、また止めねじ323cは管腔325e,325f(325d),325g内に食い込む。したがって、スパイク448は、7つの管腔325a~325gのうちのいずれか1つの適所に固定され得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、軌道アレイガイドシステムの位置および向きは、ハンドルまたはアレイガイドに締着された機器追跡装置(instrument trackers)を通じて画像誘導ニューロナビゲーションシステム(image guided neuronavigational system)によって追跡することができる。特定の実施形態では、軌道アレイガイドシステムは、ヴァリオガイド(Varioguide)(商標)およびスターリンク(StarLINK)(商標)(ドイツ国ミュンヘン所在のブレインラボ アーゲー(Brainlab,Ag))、並びにヴァーテク(Vertek)(商標)およびシュアトラック(SureTrak)(商標)(メドトロニック)を含むが、これらに限定されない画像誘導手術システムとの一般的な適合性を有するであろう。
図39は、プローブ1202を含む画像誘導手術システム1200に係合した軌道アレイガイドシステムの斜視図を示す。プローブ1202は、ハンドル440の端部開口446内に挿入されるか、または端部開口446に係合され得る。画像誘導手術システム1200は、止めねじ447を含む固定機構およびロッキング機構を用いてハンドルに固定され得る。
図40Aは軌道アレイガイドシステムのハンドル440上に締着された、画像誘導手術システム1210の斜視図である。
図40Bは、キャリブレーションロッド201の支援により、軌道アレイガイドシステムのボールアレイガイド320上に直接締着された画像誘導手術システム1210の斜視図を示している。
【0124】
キット
本開示は、本開示の軌道アレイガイドシステムの様々な実施形態の組み立て用のキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットの構成要素は、パッケージを滅菌に適したものにする任意の形態で、別々に包装されてもよいし、または一緒に包装されてもよい。スチーム滅菌、エチレンオキシド滅菌、またはガンマー線滅菌はキットの好ましい滅菌法である。
【0125】
いくつかの実施形態において、キットは、軌道アレイガイドシステムを組み立てるための説明書を含む。
いくつかの実施形態において、キットは、以下のもの、すなわち、軌道アレイガイドシステムの組み立て用の説明書、イメージング試薬の容器、および軌道アレイガイドシステムに適合する1つ以上のカテーテルを含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、キットは、アレイガイドに挿入するための複数のイメージングユニットまたはガイドユニットを含む。いくつかの実施形態では、キットは、異なる直径の長尺状器具を誘導するために構成された複数の別個のアレイユニットまたはレデューサを含む。
【0127】
実施例
実施例1-ロッキング機構の試験
図18のベースプレート550および
図19Aのベースプレート450に類似したベースプレートをプラスチックの3Dプリント試作品として製造した。
図18のロッキングナット530に類似したロッキングナットおよび
図19B~19Cのリングクランプ80に類似したリングクランプを、プラスチックの3Dプリント試作品として製造した。ベースプレートを、ロッキング機構の有効性を判定するために試験した。
【0128】
ベースプレートを、取り付けタブのうちの1つにおいて万力に保持した。
図18および
図19Dのボールアレイガイド220に類似したボールアレイガイドを、各ベースプレートのソケットに係合させた。下向きの力をベースプレートの底面から30mmに加えた。下向きの力の速度は50mm/分に設定した。試験は、最初はロッキング機構がない状態で、次にテーパーねじ込みロッキング機構(
図18に類似)を用いて、さらにリングクランプ機構(
図19A~
図19Dに類似)を用いて、それらの各ベースプレートに対して行った。ボールアレイガイドを変位させるのに必要とされるピーク力を記録した。試験の結果を表1に要約する。
【0129】
【0130】
リングクランプ実施形態(
図19A~
図19Cのリングクランプ80と組み合わせたベースプレート450に類似)が、最良の結果をもたらすことが判明した。リングクランプ実施形態は、カテーテルを破壊するのに必要とされるトルクの2倍である480~530Nのトルクで故障しなかった。
【0131】
実施例2-イメージングカートリッジの調製
ガドリニウム系造影剤を0.3mLシリンジに吸引することによって、ガドリニウム系造影溶液を準備する。0.04mLのガドリニウム系造影剤を、10mLの予め充填された滅菌生理食塩水シリンジに注入する。2.0~5.0インチの25~30ゲージ針を滅菌生理食塩水シリンジに取り付け、複数回反転させて造影剤と滅菌生理食塩水とを確実に混合する。
【0132】
対称な六角形パターンにある7本のイメージングチューブと、付加的な基準イメージング(imagining)チューブとを含むイメージング(imagining)カートリッジを用意する。ガドリニウムイメージング溶液を収容した10mLシリンジを用いて、チューブにイメージング溶液を注入することにより、各チューブの管腔を連続して充填する。シリンジの先端部をチューブの底部に配置し、チューブの底部から注入を開始する。イメージングカートリッジチューブの最適なMR視認性を保証するために、シリンジをチューブからゆっくりと引き抜きながら、ガドリニウムイメージング溶液の注入を続けることにより、空気がチューブに再び侵入するのを防止する。各チューブを気泡の有無について目視検査する。気泡が観察された場合には、針をチューブの基部に再挿入して、追加のガドリニウムイメージング溶液を注入して気泡を押し出す。
【0133】
すべてのチューブにガドリニウムイメージング溶液を充填したら、イメージングカートリッジの頂部にある貯蔵器を充填する。次にOリングおよび密閉キャップをイメージングカートリッジの頂部開口に係合させて、イメージング溶液をカートリッジ内に密閉する。
【0134】
実施例3-軌道アレイガイドシステムの組み立ておよび画像誘導手術システムとのキャリブレーション
図38Cに示すシステムに類似した軌道アレイガイドシステムを用意する。
図19B~
図19Dに示した形態と同様に、リングクランプの隆起部がベースプレートの外溝に係合するように、リングクランプを傾斜したベースプレートに係合させる。リングクランプの締めねじを緩んだ位置に維持して、ボールアレイガイドのボールをベースプレートのソケット内に係合させる。締めねじを軽く締める。
【0135】
機器追跡装置のような画像誘導手術システムの構成要素を、
図40Aに示した構成に類似した方法で、軌道アレイガイドシステムのハンドルに取り付ける。次に、ハンドルのスパイクをアレイガイドの中央チャネルに挿入することにより、ハンドルをボールアレイガイドに係合させる。ボールアレイガイドの止めねじを締めて係合を固定する。
【0136】
次に、必要により、軌道アレイガイドシステムを調整することができ、システムを適切に整合させたならば、リングクランプの締めねじを完全に締める。
実施例4-ハンドルを有さない軌道アレイガイドシステムの組み立ておよび画像誘導手術システムとのキャリブレーション
図38Cに示すシステムに類似した軌道アレイガイドシステムを用意する。
図19B~
図19Dに示した形態と同様に、リングクランプの隆起部がベースプレートの外溝に係合するように、リングクランプを傾斜したベースプレートに係合させる。リングクランプの締めねじを緩んだ位置に維持する。
【0137】
機器追跡装置のような画像誘導手術システムの構成要素を、
図40Bに示す構成に類似した軌道アレイガイドシステムのガイドアレイに直接取り付ける。次にボールアレイガイドのボールをベースプレートのソケット内に係合させる。締めねじを軽く締める。キャリブレーションロッドをアレイガイドの中央チャネルに挿入する。
【0138】
次に、必要により、軌道アレイガイドシステムを調整することができ、システムが適切に整合されたならば、リングクランプの締めねじを完全に締める。
実施例5-頭蓋の手術準備および軌道アレイガイドシステムの取り付け
頭蓋の進入点を、画像誘導ニューロナビゲーションシステムおよびMRIスキャンを用いて特定する。頭蓋の進入点のまわりの頭皮の清拭および剃毛を含む標準的な医療業務に従って、標的となる頭部領域を頭蓋への進入のために準備する。標準的な外科処置を用いて開頭を行い、予定した頭蓋進入部位に少なくとも直径14mmの頭蓋進入部を形成する。
【0139】
実施例3に記載したシステムのような軌道アレイガイドシステムを用意する。ベースプレートのボアが頭蓋進入孔上に直接位置した状態で、ベースプレートを頭蓋進入点において頭蓋に対して配置する。頭蓋への取り付けに適した向きにベースを回転させて、ベースの傾斜が手術の標的と確実に整合するようにする。次に、自己ドリリングチタン骨ねじをベース脚部上の穴に通して用いて、ベースを頭蓋に取り付ける。ねじ穴へのアクセスを提供するために、必要に応じてリングクランプおよびアレイガイドを回転させ、調整する。
【0140】
実施例6-軌道アレイガイドシステムの整合、標的軌道の選択、および外科処置の完了
実施例5に記載した構成のような頭蓋に取り付けた軌道アレイガイドシステムを用意する。
【0141】
リングクランプは、アレイガイドを必要に応じて自由に回転させて調整することを可能にするために、緩んだ位置で維持する。標準的な外科処置を用いて、画像誘導手術システムを使用してアレイガイドを手術の標的の方に整合させる。次に、リングクランプの締めねじを優しく手で締めることによって、アレイガイドの軌道および位置を固定する。
【0142】
外科プローブを用いてアレイガイドの頂部から手術の標的までの距離を測定し、それにより外科用機器の必要な挿入深さを提供する。
実施例2において準備したイメージングカートリッジのようなイメージング(imagining)カートリッジをアレイガイド内に注意深く挿入する。システムを検査してガイドの頂部とイメージングカートリッジの本体との間に隙間が確実にないようにする。アレイガイド内の止めねじを締めて、イメージングカートリッジとアレイガイドとの係合を固定する。
【0143】
金属ハンドルまたは金属キャリブレーションロッドのようなMRIに危険な(MRI unsafe)器具をすべて除去し、頭部をMRI室内に配置する。MRI設備を作動させ、生じた画像を調べて軌道アレイガイドシステム全体および標的となる手術領域がMR画像に含まれていることを確認する。7つの軌道の各々を基準チューブに対して評価して、手術の標的に対する最良の軌道を選択する。選択した軌道に対応するチャネルを記録して、イメージング(imagining)カートリッジを除去する。
【0144】
次に、選択した軌道のアレイチャネルを用いて外科処置を実施する。チューブが14ゲージチューブであり、外科用機器が16ゲージの機器である場合には、アレイチャネルの直径を調整するためにレデューサ(reduce)を用いることができる。
【0145】
外科処置が完了したら、骨ねじを抜いて、軌道アレイガイドシステムを頭蓋から除去して分解する。次に、軌道アレイガイドシステムを一回のみ使用のシステムとして廃棄するか、または再使用のために滅菌することができる。
【0146】
均等物および範囲
当業者は、本願に記載した開示に従って特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または通常の実験のみを用いて確認することができる。
【0147】
請求項において、「a」、「an」、「the」のような冠詞は、反対の指示がない限り、または他の場合には文脈から明らかでない限り、1つまたは2つ以上を意味し得る。ある群の1つ以上の要素の間に「または(or)」を含む請求項または記載は、反対の支持がない限り、または他の場合には文脈から明らかでない限り、群の要素の1つ、2つ以上、またはすべてが、所与の製品またはプロセスに存在しているか、使用されているか、または他の場合には関連している場合に満たされるとみなされる。
【0148】
「~を備える(comprising)」という用語は開放的(open)であることを意図しており、追加の要素またはステップを含むことを許容するが、必要とはしないことにも留意されたい。よって、「~を備える(comprising)」という用語が本願で用いられる場合には、「~からなる(consisting of)」という語も包含され、開示される。
【0149】
本開示の方法は、本願で開示した一般的方法の範囲に限定することを意図していない特定の実施形態の議論を通じて例示されている。方法の特定の実施形態は、異なるステップの組み合わせおよび異なるステップの順序で検討されている。ステップが示されている組み合わせおよび順序は、現在開示されている一般的方法の範囲に限定することを意図していない。本願に開示された個々のステップは、当業者の知識および技量に従って、その方法の実施可能な実施形態内において、任意の組み合わせ、および任意の順序で組み合わせることができる。
【0150】
範囲が与えられる場合には、終点が含まれている。更に、別段の指示がない限り、または他の場合には文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表されている値は、本発明の異なる実施形態で述べた範囲内の任意の特定の値またはサブレンジを、文脈が他に明確に規定していない限り、その範囲の下限の単位の十分の一までとることができることを理解すべきである。
【0151】
従来技術に含まれる本開示の任意の特定の実施形態は、請求項のうちの任意の1つ以上から明示的に除外されてもよい。そのような実施形態は当業者には公知であると思われるため、除外することが本願で明示的に述べられていなくても、それらは除外されてもよい。本発明の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、それによりコードされた任意の核酸またはタンパク質、任意の製造方法、任意の使用方法、など)は、従来技術の存在に関連するか否かにかかわらず、何らかの理由で、任意の1つ以上の請求項から除外されてもよい。
【0152】
すべての引用元、例えば参考文献、刊行物、データベース、データベースエントリ、および本願において引用した技術は、引用に明確に述べられていなくても、参照によりこの出願に援用される。引用元の記載と本出願の記載とが矛盾する場合には、本出願の記載が支配するものとする。
【0153】
節および表の表題は限定することを意図していない。本開示に含まれる図は、本開示の一般的な概念の非限定的な描写であることを意図している。