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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】空気駆動式発電機
(51)【国際特許分類】
   F01K 27/00 20060101AFI20230220BHJP
   F03B 17/04 20060101ALI20230220BHJP
   F03G 7/06 20060101ALI20230220BHJP
   F03G 7/10 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
F01K27/00 Z
F03B17/04
F03G7/06 J
F03G7/10
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020512841
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018048413
(87)【国際公開番号】W WO2019046348
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】62/550,836
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520067655
【氏名又は名称】マーク ジェイ. メイナード
【氏名又は名称原語表記】Mark J. Maynard
【住所又は居所原語表記】16 Fairfield Avenue, Easthampton, MA 01027, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーク ジェイ. メイナード
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/017243(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0303282(US,A1)
【文献】米国特許第04800727(US,A)
【文献】米国特許第04430858(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0191511(US,A1)
【文献】特開昭56-075979(JP,A)
【文献】特開2007-231760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 27/00
F02C 1/02
F03B 17/04
F03G 7/06
F03G 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体の運動から電力を発生させるための空気駆動式発電機(10)において、該空気駆動式発電機(10)は、
上端部と下端部とを備えた細長い重力分配導管(12)と、
それぞれが上端部と下端部とを備えた複数の細長い浮力導管(14A~14D)と、
前記重力分配導管(12)の前記下端部と、前記浮力導管(14A~14D)の前記下端部との間に流体挿入された流体タービンシステム(18A~18D)と、
前記重力分配導管(12)の前記下端部と、各前記浮力導管(14A~14D)の前記下端部との間に挿入された熱交換器と、
各前記浮力導管(14A~14D)内に空気を噴射するように働く空気噴射システム(24A~24D)と、
を有し、
前記浮力導管(14A~14D)の前記上端部は、前記重力分配導管(12)の前記上端部に流体接続され、前記重力分配導管(12)の前記下端部は、前記複数の浮力導管(14A~14D)の前記下端部に流体接続され、これにより、前記浮力導管(14A~14D)と前記重力分配導管(12)との間には、流体閉ループが形成され、前記浮力導管(14A~14D)の前記上端部から流れてくる作動流体は、前記重力分配導管(12)の前記上端部に供給され、前記重力分配導管(12)を通って下方に流れる作動流体は、前記分配導管の下端部から前記複数の浮力導管(14A~14D)の前記下端部に供給され、
前記浮力導管(14A~14D)内の作動流体中に空気を噴射することにより、前記浮力導管(14A~14D)内に作動流体の上昇流が生ぜしめられ、これにより、前記重力分配導管(12)の上端部に供給された作動流体は、前記流体タービンシステム(18A~18D)を作動させるための下降流を前記重力分配導管(12)内で有することになる
ことを特徴とする、空気駆動式発電機(10)。
【請求項2】
前記空気噴射システムは、各前記浮力導管(14A~14D)に結合された1つ以上の空気噴射器(24A~24D)を有しており、該空気噴射器(24A~24D)は、各前記浮力導管(14A~14D)に結合された前記1つ以上の空気噴射器(24A~24D)に結合された圧縮空気源(22)と組み合わされている、請求項1記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項3】
当該空気駆動式発電機(10)はさらに、上部チャンバ(16)を有しており、前記浮力導管(14A~14D)の前記上端部は、前記上部チャンバ(16)を介して前記重力分配導管(12)の前記上端部に流体接続されている、請求項1記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項4】
前記上部チャンバ(16)は、実質的に環状の側壁を有している、請求項3記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項5】
各前記浮力導管(14A~14D)の前記上端部は、非半径方向において前記上部チャンバ(16)に当接している、請求項4記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項6】
前記浮力導管(14A~14D)の前記上端部は、少なくとも部分的に接線方向において、前記上部チャンバ(16)に当接している、請求項5記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項7】
前記浮力導管(14A~14D)の前記上端部は、実質的に等しい非半径方向角度で順次、前記上部チャンバ(16)に当接しており、これにより、前記浮力導管(14A~14D)の前記上端部から流出する作動流体は、結果的に前記上部チャンバ(16)内の初期回転パターンに追従することになる、請求項5記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項8】
当該空気駆動式発電機(10)はさらに、前記上部チャンバ(16)内にバッフル構造(38)を有している、請求項7記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項9】
前記重力分配導管(12)は、長手方向センターラインを有しており、前記浮力導管(14A~14D)は、前記長手方向センターラインを中心としてセンタリングされている、請求項1記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項10】
前記浮力導管(14A~14D)と前記重力分配導管(12)とは、実質的に平行な配置を有している、請求項9記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項11】
4つの浮力導管(14A~14D)が設けられている、請求項10記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項12】
前記4つの浮力導管(14A~14D)は、正方形の形態に配置されている、請求項11記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項13】
前記重力分配導管(12)の前記下端部は、流体戻し接続部(20A~20D)に接続された前記重力分配導管(12)の基底端部に設けられた流体分配器(26)を介して、前記複数の浮力導管(14A~14D)の前記下端部に流体接続されている、請求項1記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項14】
前記流体タービンシステム(18A~18D)は、前記重力分配導管(12)の前記下端部と、各前記浮力導管(14A~14D)の前記下端部との間に流体挿入された流体タービンを有している、請求項1記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項15】
当該空気駆動式発電機(10)はさらに、前記浮力導管(14A~14D)と前記重力分配導管(12)との間に形成された前記流体閉ループ内に、作動流体を有する、請求項1記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項16】
前記作動流体は、水に対して1よりも大きな比重を有している、請求項15記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項17】
前記作動流体は、水に対して少なくとも2の比重を有している、請求項16記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項18】
前記空気噴射システムは、各前記浮力導管(14A~14D)に結合された1つ以上の空気噴射器(24A~24D)を有し、該空気噴射器(24A~24D)は、各前記浮力導管(14A~14D)に結合された前記1つ以上の空気噴射器(24A~24D)に結合された圧縮空気源(22)と組み合わされ、該圧縮空気源(22)は、機械式圧縮機とヒートポンプと交替させるシステムを有する、請求項1記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項19】
当該空気駆動式システム(10)はさらに、枠組(30)を有しており、前記浮力導管(14A~14D)と前記重力分配導管(12)とは、前記枠組(30)により、規則格子構造を形成するように保持されている、請求項1記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項20】
当該空気駆動式システム(10)はさらに、上部チャンバ(16)を有し、該上部チャンバ(16)を介して前記浮力導管(14A~14D)の前記上端部が前記重力分配導管(12)の前記上端部に流体接続され、前記上部チャンバ(16)は、前記空気噴射システム(24A~24D)から噴射されかつ前記浮力導管(14A~14D)の前記上端部から流出する空気の放出を可能にする空気口(34)を有している、請求項1記載の空気駆動式発電機(10)。
【請求項21】
変換構造体(10)はさらに、前記上部チャンバ(16)の前記空気口(34)から放出された空気を受け取るように配置された有機ランキンサイクル発電機を有している、請求項20記載の空気駆動式発電機(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照により本明細書に組み込まれる、2017年8月28日に出願された米国仮特許出願第62550836号明細書の優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は概して、エネルギ変換装置に関する。より詳細には、ここに開示するのは、電気エネルギ発生システムであって、複数の浮力導管内に空気を噴射し、連行空気の移動により複数の浮力導管内に作動流体の上昇流をもたらすと共に中心の重力分配導管内に、流体タービンシステムを駆動するための、作動流体の下降流をもたらすことで、閉ループ系内に作動流体の循環運動を生ぜしめ、これにより、流動する作動流体のエネルギから電気エネルギを発生させるための、電気エネルギ発生システムである。
【0003】
発明の背景
代替エネルギ源の必要性は十分に理解されており、増え続けている。無数の熟練発明者が、代替エネルギ発電の進歩に貢献してきた。太陽、風、河川や他の水域からエネルギを取り込むためのシステムや方法が開示されてきた。代替エネルギが進歩するたびに化石燃料の必要性が低下し、環境に対する人類のネガティブな影響は減少している。
【0004】
さらに、ガスを液柱内に導入し、浮力に基づくガスの上昇運動に連行される液体の運動を生ぜしめることによりエネルギを取り込み、次いで流体タービン等を介して、移動流体の運動エネルギおよび位置エネルギを利用しようとする試みが知られている。例えば、Ziegenfussの米国特許出願公開第20080303282号明細書に教示された水循環系では、空気圧縮機が原動力として使用され、タービンが発電用に使用される。水管サブシステムが、1つの上昇流側と、1つの下降流側とを備えた迂回ループを確立している。空気圧縮機は、上昇流側の低部に空気を噴射して連行水流を生ぜしめ、下降流側に配置されたタービンは、流れてくる水を受け取り、その中の運動エネルギを電力に変換する。同様に、Bervigの米国特許第4392062号明細書には、U字形導管の一方の脚部内の流体中に低密度物質を噴射して流体流を発生させるための噴射器を備えたU字形導管の流れの中に、発電装置を配置することが開示されている。流体流は発電装置を作動させ、これにより移動流体中のエネルギが電力に取り込まれる。さらに、Markie他の国際公開第2014110160号が目指す発電システムでは、保持タンク内の第1の流体が、より低密度の第2の流体を受け取り、細長いハウジング内に第1の流体の上昇流を生ぜしめる。第1の流体の流れはタービンの回転を生ぜしめ、これにより電気エネルギがもたらされる。
【0005】
代替エネルギの前記進歩は有益である一方で、多くの制約や重大な不利益を被っている。例えば太陽無しでは、太陽光発電の効果はほとんどない。風力タービンは十分に風がある場合にしか作動せず、機能不全を起こしやすく、保守に費用がかかる。さらに、波力発電機や水力タービンは、水域が存在する場所でしか設置および運転することができず、それ自体は、流れおよび自然に移動する水の動きに依存している。
【0006】
さらに、作動流体中に浮揚性流体を噴射することにより作動させられる従来技術の循環発電システムは、有効性および運転において限界を示しており、そのことがこれまで広範な採用を妨げてきた。多くのこのような流体動力発電機は、高い電力損失を示し、極めて非効率的である。先に開示されたこのような流体動力発電システムはとりわけ、循環運動させられる単一の作動流体柱への依存により、制約される。さらに、従来技術の流体動力発電システムは、連行される浮揚性流体を能動的に除去することにより、作動流体の下降循環運動前に作動流体の密度を高める必要性に対する能力または認識が低いことを実証している。加えて、従来技術の多くの流体動力発電システムは、構造および運転が極めて複雑であり、単一の流路に完全に依存している。よって、システムのコンポーネントの故障または保守整備を必要とすることがよくあり、その結果、システム全体が運転停止させられる。
【0007】
上記のゆえに、多くの熟練発明者の有益な努力にもかかわらず、当該技術分野では、如何なる外部要因にも依存せず、様々な場所に広く設置されると共に連続運転可能であり、かつ十分に効率的に運転して、有効な電力を発生させるための人類の能力の進歩を示す代替エネルギ発電システムが依然として必要である、ということが認識されることになる。
【0008】
発明の開示の概要
よって本発明は、従来技術の制約を克服し、存続可能な電力源を提供する代替エネルギ発電システムを提供する、という基本的な目的に基づくものである。
【0009】
本発明のより詳細な目的は、高効率で運転する発電システムを提供することにある。
【0010】
本発明の別の詳細な目的は、実質的に如何なる場所でも設置および運転可能であるような、外部要因への依存が減少させられた発電システムを提供することにある。
【0011】
本発明の実施形態のさらに別の目的は、保守要件が最小化されかつシステム全体の運転停止が減少させられた、実質的に連続運転可能な発電システムを提供することにある。
【0012】
本発明のこれらのおよび別の目的および利点は、本明細書および図面を検討する者だけでなく、ここに開示した空気駆動式発電機の1つの実施形態を体験する機会を有する者にも明らかになる。本発明の単一の実施形態における前記各目的の達成は可能であると共に実際に好適な場合があるが、全ての実施形態がどれも、可能な利点および機能の達成を追求するまたは必要とするわけではない、ということを認識されたい。それでもなお、このような実施形態は全て本発明の範囲内で考慮されるべきである。
【0013】
本発明の1つ以上の目的の実施において、当該発電システムには、作動流体の運動から電力を発生させるための空気駆動式発電機が含まれる。空気駆動式発電機は、上端部と下端部とを備えた1つの細長い重力分配導管およびそれぞれが上端部と下端部とを備えた複数の細長い浮力導管を有していてよい。浮力導管の上端部は、重力分配導管の上端部に流体接続されている。重力分配導管の下端部は、複数の浮力導管の下端部に流体接続されている。浮力導管と重力分配導管との間には、流体閉ループが形成されている。浮力導管の上端部から流れてくる作動流体は、重力分配導管の上端部に供給され、重力分配導管を通って下方に流れる作動流体は、分配導管の下端部から複数の浮力導管の下端部に供給される。重力分配導管の下端部と浮力導管の下端部との間には、流体タービンシステムが流体挿入されており、空気噴射システムが作動して、各浮力導管内に空気を噴射する。空気駆動式発電機のこのような構造に基づき、浮力導管内の作動流体中に空気を噴射すると、これにより浮力導管内に作動流体の上昇流が生ぜしめられ、作動流体は、重力分配導管の上端部に供給され、これにより重力分配導管内に下降流が生ぜしめられて、流体タービンシステムを作動させるようになっている。
【0014】
本発明の特定の実施形態では、空気噴射システムは、各浮力導管に結合された1つ以上の空気噴射器を有しており、空気噴射器は、各浮力導管に結合された1つ以上の噴射器に結合された圧縮空気源と組み合わされている。圧縮空気源は、例えば空気圧縮機、いくつかの他の圧縮空気源であってもよい。特別な実施形態では、圧縮空気源は、機械式圧縮機とヒートポンプとの交替システム(system of alternating)を有していてよい。
【0015】
空気駆動式発電機の実施形態はさらに、上部チャンバを有していてよい。この場合、浮力導管の上端部は、上部チャンバを介して重力分配導管の上端部に流体接続され得る。上部チャンバを有している場合、上部チャンバは実質的に環状の側壁を有していてよい。各浮力導管の上端部は、非半径方向において上部チャンバに当接していてよい。例えば、浮力導管の上端部は、少なくとも部分的に接線方向において、上部チャンバに当接していてよい。より詳細には、各浮力導管の上端部は、ほぼ等しい非半径方向角度で順次(in series)上部チャンバに当接していてよい。このような実施形態に基づき、浮力導管の上端部から流出する作動流体は、結果的に上部チャンバ内の初期回転パターンに追従することになる。つまり上部チャンバは、チャンバ内に受け入れられた作動流体中の連行空気を取り除くように働くことができ、これにより、重力分配導管の上端部に受け入れられた作動流体が減少させられた空気体積を保つことによって、発電機の効率に寄与する。
【0016】
さらに、上部チャンバ内にはバッフル構造が配置され得る、ということが考慮される。複数のそらせ板を備えた構造等のバッフル構造は、作動流体からの連行空気の除去を支援することができる。
【0017】
開示する空気駆動式発電機の実施形態では、重力分配導管は、長手方向センターラインを有しており、各浮力導管は、長手方向センターラインを中心としてセンタリングされている。さらに本発明の実施形態は、浮力導管と重力分配導管とを実質的に平行な配置形式で配置してよい。例えば4つの浮力導管を用いる場合には、浮力導管を対称的な正方形の形態に配置することができる。
【0018】
空気駆動式発電機の実施形態では、重力分配導管の下端部は、流体戻し接続部に接続された重力分配導管の基底端部に設けられた流体分配器を介して、複数の浮力導管の下端部に流体接続されている。さらに、重力分配導管の下端部と浮力導管の下端部との間には、熱交換器が挿入され得る。
【0019】
さらに開示する流体タービンシステムは、重力分配導管の下端部と各浮力導管の下端部との間に流体挿入された流体タービンを有していてよい。例えば4つの浮力導管を用いる場合には、4つの流体タービンが設けられてよく、1つの流体タービンは各浮力導管を重力分配導管に流体接続している。
【0020】
浮力導管と重力分配導管との間に形成された流体閉ループ内の作動流体は、水よりも高密度であってよい。例えば、作動流体は水に対して1よりも大きな、好適には2よりも大きな比重を有していてよい。
【0021】
空気駆動式システムは、枠組を有していてよい。この場合、浮力導管と重力分配導管とは、枠組により、規則格子構造(superstructure)を形成するように保持され得る。浮力導管と重力分配導管とにより形成された規則格子構造は、建造物に組み込まれる等のことに基づき、80フィート超の、数千フィートもの高さが考慮される。空気駆動式システムは、独立して設置可能であるか、またはあらゆる構造体に結合可能である。
【0022】
空気駆動式発電機が上部チャンバを有しており、上部チャンバを介して浮力導管の上端部が重力分配導管の上端部に流体接続されている場合には、空気噴射システムから噴射されかつ浮力導管の上端部から流出する空気の放出を可能にする空気口が、上部チャンバに配置され得る。さらに開示しておくと、このような実施形態では、上部チャンバの空気口から流出した空気を受け取り、これによりシステムの効率をさらに高めるために、有機ランキンサイクル発電機が配置され得る。
【0023】
前記考察は、以下の詳細な説明のより良い理解を可能にし、当該技術に対する発明者の貢献のより良い評価を浸透させるために、本発明のより重要ないくつかの目標および特徴の概略を述べたものである、ということを認識されたい。本発明のあらゆる個々の実施形態または態様を詳細に説明する前に、以下の、本発明の構想の構成および図面の詳細は、本発明の多くの可能な明示の例であるに過ぎない、ということを明確にしておく必要がある。したがって、本発明の追加的な特徴および利点は、非限定的な手段および実施形態の詳細な説明を読みかつ添付図面を参照することにより明らかになる、ということは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
ここに開示する空気駆動式発電機の追加的な詳細および特徴は、本明細書および図面を検討すれば、当業者には明らかになる。
図1】本発明による空気駆動式発電機の斜視図である。
図2】空気駆動式発電機の正面図である。
図3】空気駆動式発電機を上から見た平面図である。
図4】空気駆動式発電機の底部の斜視図である。
図5】空気駆動式発電機を部分的に断面して上から見た平面図である。
図6】空気駆動式発電機の底部の正面図である。
図7】空気駆動式発電機の上部の斜視図である。
図8】空気駆動式発電機の上部を上から見た平面図である。
図9】空気駆動式発電機の上部の正面図である。
図10】ここに開示する空気駆動式発電機の1つの択一的な実施形態の斜視図である。
図11図10に示した空気駆動式発電機の正面図である。
図12図10に示した空気駆動式発電機を上から見た平面図である。
図13図10に示した空気駆動式発電機の底部の斜視図である。
図14図10に示した空気駆動式発電機の底部の正面図である。
図15図10に示した空気駆動式発電機を部分的に断面して上から見た平面図である。
図16】ランキンサイクル発電機が取り外された、図10に示した空気駆動式発電機の上部の斜視図である。
図17】やはりランキンサイクル発電機が取り外された、図10に示した空気駆動式発電機の上部の正面図である。
図18図10に示した空気駆動式発電機の上部を部分的に断面して上から見た平面図である。
【0025】
好適な実施形態の詳細な説明
ここに開示する空気駆動式発電機は、様々な実施形態に基づく。ただし、当業者が本発明を理解し、かつ適当なケースにおいて実施することができる、ということを保証するために、以下に、本明細書で明らかにされるより広義の発明のいくつかの好適な実施形態を説明すると共に、添付図面に示す。よって、本発明の個々の実施形態を詳細に説明する前に、以下の、本発明の構想の構成および図面の詳細は、本発明の多くの可能な明示の例であるに過ぎない、ということを明確にしておく必要がある。
【0026】
このことを念頭に置いて添付図面をより詳細に見ると、ここに開示する空気駆動式発電機の1つの実施形態は、図1および図2において全体的に符号10で示されている。図1および図2において、空気駆動式発電機10は、複数の細長い浮力導管14A,14B,14Cおよび14Dと流体接続された1つの細長い重力分配導管12を備える閉ループ流体系を有している。図示の実施形態では、浮力導管14A,14B,14Cおよび14Dと、重力分配導管12とは、互いに平行な関係性において枠組30により、規則格子構造を形成するように保持されている。この図示の例には4つの浮力導管14A~14Dが含まれているが、より少ないまたはより多くの浮力導管14A~14Dが使用されてもよいと理解される。
【0027】
空気駆動式発電機10は、各導管12および14A~14Dが上端部と下端部とを有するように鉛直に配置された浮力導管14A,14B,14Cおよび14Dと、重力分配導管12とを備えて構成、設置かつ運転され得る。浮力導管14A~14Dの上端部は、上部チャンバ16を介して重力分配導管12の上端部に流体接続しており、上部チャンバ16に対して各導管12および14A~14Dは流体開放状態にある。重力分配導管12の下端部は、中心の分配導管12の基底端部に設けられた流体分配器26と複数の流体戻し接続部とを介して、複数の浮力導管14A~14Dの下端部に流体接続されている。流体戻し接続部には、図示の実施形態では熱交換器20A~20Dが含まれている。本発明のこの実施例における重力分配導管12および浮力導管14A~14Dは管状であるが、別の横断面形状も可能であるということを理解されたい。
【0028】
この構成に基づき、流体閉ループが形成されている。浮力導管14A~14Dの上流側を通流する流体は、浮力導管14A~14Dの上端部から上部チャンバ16と、重力分配導管12の上端部とへ供給されることになる。重力分配導管12の下流側を通流する流体は、配分導管12の下端部から複数の浮力導管14A~14Dの下端部へ、配分導管12との流体接続部を介して供給されることになる。
【0029】
空気駆動式発電機10は、センターラインを有していると考えられる。図示の実施形態では、重力分配導管12は、長手方向においてセンターラインに沿ってセンタリングされている。複数の浮力導管14A~14Dは、重力分配導管12に対して平行に、かつセンターラインおよび重力分配導管12を中心としてセンタリングされた円形の周囲に沿って等間隔で配置されている。例えば4つの浮力導管14A~14Dが用いられている図5に示すように、浮力導管14A~14Dは、重力分配導管12がそれらの間にセンタリングされた正方形の横断面形状に配置されてもよい。3つの浮力導管14が三角形の輪郭に配置される、5つの浮力導管14が五角形の輪郭に配置される等でもよい。
【0030】
図1図3および図7図9を組み合わせて参照すると認められるように、この明示における上部チャンバ16は環状であり、導管14A~14Dが配置された正方形の辺の長さよりも小さな直径を備えて、導管14A~14Dの延長部の半径方向内側に配置されている。浮力導管14A~14Dは、上部チャンバ16の周囲に当接するように内側に向かってほぼ直角に曲がっている上端部を有している。この場合、浮力導管14A~14Dは、上部チャンバ16の円周に対する順次的な接線(sequential tangents)にほぼ沿って上部チャンバと交差する外縁部を有している。よって結果的に、導管14A~14Dの上端部から流出した流体は、分配導管12の上端部に供給される前に、上部チャンバ16内の初期回転パターンに追従する。
【0031】
浮力導管14A~14Dの下端部と配分導管12の下端部との間には、流体タービンシステムが挿入されている。流体タービンシステムは、分配導管12の下端部から浮力導管14A~14Dの下端部への流体移動において生ぜしめられた運動エネルギを変換するように働く。この実施形態における流体タービンシステムは、移動流体の力を、電気的な接続手段42を介して出力されるまたはバッテリバンク44等に蓄えられる電力といった有効電力に変換するように働く回転タービンシステムである。図示の実施形態では、分配導管12の下端部と、浮力導管14A~14Dの各下端部との間に、専用の流体タービン18A,18B,18Cおよび18Dが挿入されている。よって、分配導管12の下端部から第1の浮力導管14Aの下端部に流れる流体は、流体タービン18Aの作動に基づき電気エネルギを発生させることになり、分配導管12の下端部から第2、第3および第4の浮力導管14B~14Dの下端部に流れる作動流体は、各流体タービン18B~18Dの作動に基づき電気エネルギを発生させることになる。
【0032】
さらに、専用の熱交換器20A~20Dが追加的に、分配導管12の下端部と浮力導管14A~14Dの下端部との間に流体挿入され得る、ということが開示されている。図示の空気駆動式発電機10の実施形態では、各浮力導管14A~14Dはその下端部に、直角エルボを有している。エルボは、連続した導管14A~14Dに向かって同様に角度付けられており、これらのエルボに各熱交換器20A~20Dが結合されている。第2の90°エルボは、隣接する導管14A~14Dの熱交換器20A~20D内側で内部管区分に接続するように、内側に向かって角度付けられており、各流体タービン18A~18Dは、センターラインおよび分配導管12に対して半径方向に配置されるように、内部管区分に対して直角に結合されている。浮力導管14A~14Dの基底部と、分配導管12の基底部との間の流路に沿って、1つ以上の弁32が挿入されてもよい。
【0033】
浮力導管14A~14D内に保持された作動流体100の柱に空気を噴射するためには、空気噴射システムが設けられている。この例では、導管14A~14D内に配置された流体柱に空気を供給するために、各浮力導管14A~14Dの下部に、空気噴射器24A~24Dが配置されている。各空気噴射器24A~24Dは、圧縮機22等の空気源22から空気を受け取るために接続された複数の空気線路28A~28Dを有している。圧縮機22、空気噴射器24A~24Dおよび複数の空気線路28A~28Dは、圧縮機22の自動運転等により、断続的な空気噴射器として働いてよい。液柱内に噴射された空気が液体中で体積を占めることにより、大体積の液体が押し退けられる。導管14A~14Dを通って上昇した空気は、上部チャンバ16に設けられた1つ以上の空気口34等を介して空気駆動式発電機10から放出されてよい、または空気自体は回収されて再循環させられるか、または別の方法で案内されてよい。
【0034】
図2に示すように、液体100内の空気の浮力および液体100の重さに比べてより軽い空気の重さでもって、導管14A~14D内の物質の総重量が減少されており、その結果、空気は液体100内を迅速に上昇するようになる。さらに、導管14A~14D内で混合された空気と液体の密度、すなわち単位体積当たりの重量は、重力分配導管12内の液体の密度よりも低くされている。液体100内の空気の上昇移動および重量分配導管12内の流体の密度と比べた、流体接続された浮力導管14A~14D内の流体の密度の差は、重力の力に基づき落下する傾向にある、重力分配導管12内の流体に比べ、浮力導管14A~14D内の流体のかなりの上昇原動流を生ぜしめる。よって空気駆動式発電機10内で液体100の閉ループ循環運動が生ぜしめられ、この液体運動の運動エネルギが流体タービン18A~18Dにより能動的に取り込まれ、出力または蓄積用の電力を生ぜしめることになる。
【0035】
上部チャンバ16は、各浮力導管14A~14Dから上昇してきた液体100から連行空気を除去し、重力分配導管12に供給される流体が少なくとも実質的に気泡を含まないようにする目的で設計されている。上部チャンバ16の空気分離態様に基づき、重力分配導管12内の流体は可能な限り高密度になっており、これにより、空気駆動式発電機10の効率的な連続運転が促進される。よって上部チャンバ16により促進された空気分離により、重力分配導管12内の液体は最高密度および最適な下降力を達成し、これにより、流体タービン18A~18Dを駆動して電力を生ぜしめるための頭部圧力および流体流が促進されることになる。
【0036】
空気駆動式発電機10の効率は、空気連行を除去する上部チャンバ16により支援される。上部チャンバ16は、流体100から極小さな気泡までも除去しかつこのような気泡が重力分配導管12に引きずり下ろされて不都合にも重力分配導管12内の流体100の密度を低下させることを防止するにもかかわらず、空気駆動式発電機が高レベルの効率で連続運転することを可能にする。上部チャンバ16内への浮力導管14A~14nの接線方向の受容に基づき、流体100および浮力導管14A~14nから受け取った空気の鉛直方向の運動は、遠心力および求心力に従って、実質的に回転運動に変換される。
【0037】
その結果、上部チャンバ16内の流体100の回転運動は、比較的密度の低い流体100をチャンバ16の頂部中心に集め、かつ比較的密度の高い流体100をチャンバ16の外側および基底部に集めることになる。一方で、重力分配導管12の下降流は、チャンバ16の外側基底部から到来することになる。
【0038】
さらに、図18に示すように、チャンバ16は流体100の回転速度を、チャンバ16の下側中心部に設けられたバッフル38に向けることができ、バッフル38において流体100の回転速度は、下向きに流れる層流100に変化させられる。この過程は、方向転換および摩擦および乱流に基づく損失を最小にする。凹部のウェルを流体100の下降流から守るために、バッフル38上にはプレート40が配置されている。プレート40は、空気の吸込みまたは空気が閉じ込められた流体100の、重力分配導管12への流入を防ぐ。
【0039】
流体温度を上げるためにヒートポンプを使用することの追加的な利点には、排気が周囲空気よりも大幅に高温である、ということが含まれる。これにより空気駆動式発電機10は、通常は周囲空気へ排出されることになる熱エネルギを回収するために、有機ランキンサイクル発電機(ORC)36を使用することができる。このような実施形態は、例えば図10および図11に示されており、そこでは有機ランキンサイクル発電機36が、上部チャンバ16の空気口34から放出された空気を受け取るように配置されている。有機ランキンサイクル発電機36は、通常は環境へ失われることになるエネルギの10%~15%を回収すると予測され、これにより発電機10の性能全体がさらに高まることになる。つまりチャンバ16は、加熱された排気を集め、口34を介して有機ランキンサイクル発電機36内へ案内し、低級な排熱から追加的なエネルギを引き出す。
【0040】
空気駆動式発電機10およびそのコンポーネントの全体的なサイズおよび相対的な大きさは、本発明の範囲内で可変である。重力分配導管12、浮力導管14A~14Dおよび上部チャンバ16により形成された規則格子構造の高さは、浮力導管14A~14D内で空気が液体100を押し退けることを可能にし、正味の密度差および重力分配導管12内に、重力分配導管12内の液体の密度と比較した、浮力導管14A~14D内の液体密度の差に比例するように計算された頭部圧力を発生させるための液体運動を生ぜしめるために十分であることが望ましい。本発明の非限定的な実施形態では例えば、空気駆動式発電機10は80フィート超の全高を有しているが、数百またはそれどころか数千フィートの高さの実施形態も考えられる。空気駆動式発電機10は、複数部分で製造されて現場で結合され得る。
【0041】
閉ループ発電機10は、有利には持続的な水源または大面積の専用の土地を必要とすることなしに運転する。閉ループ発電機10は、実質的に如何なるサイズにも調整され得、メガワット商用発電所を含む。この閉ループ系において、空気を噴射された浮力導管14A~14Dから押し退けられた流体は、受け取った流体を保持しかつ下方に流れる分配導管12に供給し、各流体タービン18A~18Dを駆動するために十分に大きな上部チャンバ16まで上昇する。比較的高い流体柱は、より高い運転効率を生ぜしめることになる、ということが考えられる。それというのも、浮力導管14A~14D内を上昇する空気の滞留時間が増えることにより押退け量も増大し、単位時間当たりに運ばれる同量の空気に対してより高い頭部圧力および流量を生ぜしめることになるからである。さらに空気駆動式発電機10は、地球上のほぼどこにでも配置され得、これにより化石燃料消費量を削減し、電力グリッドへのアクセスが制限されたエリアでも電気エネルギ源を提供することができる。
【0042】
複数の浮力導管14A~14Dならびにこれらの互いに対する構成および中心に配置された重力分配導管12に対する構成は、効率および運転において、噴射された空気を受け取るために1つの液柱を使用して達成されるものに比べて利点をもたらす。なぜならば、流体の押退けおよび頭部圧力の発生は、全ての液柱のほぼ55%に制限されることがわかっており、単一の浮力流体柱に発生し得るエネルギの量には限りがあるからである。さらに、頭部圧力と流体流とは、管直径によっても制限され得る。これらの制約に基づき、単一の浮力導管構成において達成される力およびエネルギの発生量には限りがある。これに対して本発明が開示する空気駆動式発電機10は、複数の浮力導管14A~14nを組み合わせ、そこから流体流を単一の下降流分配導管12内へ供給することを可能にする。各浮力導管14A~14nは、最大頭部圧力を達成することができるようになっており、このような導管14A~14nを組み合わせることにより、頭部圧力を同一に保つことができる一方で、多数のユニットが使用されるのに応じて、流れは2倍、3倍等になる。複数の浮力導管14は、流体タービンシステムを駆動するために同じまたはより大きな断面積量を有する単一の分配導管12と協働する。
【0043】
より大きな力が生ぜしめられると共に、空気駆動式発電機10の経済性が、比較的大型のタービン18A~18Dと、発電のキロワット当たりのコストが削減された関連する発電装置とにより改善される一方で、より高い効率が示される。独立して作動する浮力導管14A~14nの冗長性に基づき、個別の機能不全の影響が最小化され得ると共に、発電機10全体を運転停止させることなしに、空気駆動式発電機10の部分を絶縁、修理および保守することができる。さらに冗長タービン18A~18nおよびユニット全体は、装置故障または定期保守作業の場合にはオンライン状態にもたらされるというように、独立して追加、除去、修理および保守され得る一方で、連続的なプラント運転を可能にする。
【0044】
空気駆動式発電機内の作動流体100は、性能を向上させるように選択され得る。これに関して、所定のレベルの頭部圧力が達成される場合、空気駆動式発電機タワー10はメガワットサイズのシステム用に、数百~数千フィートの高さを必要とする場合がある、ということが認識される。このような構造体は、製造のコストおよび複雑さを大幅に高めると共に、場所を制約しかつ規則に基づく認可を得難くする。この場合、空気駆動式発電機10の所要高さを減じるためには、極めて密な液体、例えば水の密度よりも3~4倍高い密度を有する、水を基礎とした高密度物質が、比例して高さが減じられた一方で同様の力を発生させるように構成された空気駆動式発電機10を可能にする。空気駆動式発電機10において使用されると考えられる極めて密な液体は、比較的高い粘度をも示す場合があり、これにより、液体100を通過する空気が減速して、滞留時間、流体流および発生する力が増大することになる。極めて密な液体は、より大きな管において、より高い頭部圧力を可能にする。極めて密な液体100は追加的に、液体100の運動に対する摩擦抵抗を低下させるための潤滑剤として働き、全体の効率を高める。液体100は、極めて低い研磨剤含有量を有していて非腐食性であることから、管および装置の摩耗を低下させる。さらに、高密度流体100の沸点および蒸気圧は、蒸気損失制御を支援するために、比較的高くなっていてよい。
【0045】
空気駆動式発電機10が請求項により明示的に限定される場合を除き、本発明の範囲内で、様々な作業流体100が使用され得る。1つの例示的な例として、作動流体100の1つの実施形態は、次の重量部を有していてよい。すなわち:2.5~4の水;1~3のコロイド懸濁液中のベントナイトクレイ;1~5の増量材としての硫酸バリウム;0.5~4.5で50~200メッシュサイズの増量材としての鉄元素;0.25~1.5の、とりわけゲル制御手段としての塩;および0.20~1のpH制御手段としての水酸化カルシウム。
【0046】
このように構成された作業流体100は超高密度であり、用いられた配合に応じて1立方フィート当たり190~240ポンドの重力を有している。作動流体100は、硫酸バリウム単独よりも大幅に高密度でありかつ大幅に低い最終粘度を有するように考慮される。さらに作動流体100は、炭素鋼、黄銅、銅、青銅およびこのような物質の組合せに対し、硫酸バリウムを単独で使用した場合よりも摩耗性が低く、非腐食性である。
【0047】
同様の腐食防止剤として作用しかつ使用され得るゲルの生成を妨げるためには、本発明の範囲内で他の塩が働くことになる、ということに明確に留意されたい。さらに、鉄元素のメッシュサイズは、異なる潤滑特性および摩擦抵抗が達成されるように選択されてよい。さらに、空気駆動式発電機10に用いられる物質に応じて塩を調整するかまたは変化させ、作動流体100を物質または組み合わされた物質に適合させることができる。現在考えられる塩には、塩化カルシウムおよび硫酸マグネシウムが含まれるが、これらに限定はされない。作動流体100は、好適には凍結を阻止する一方で、とりわけ蒸発を制御するために沸点の上昇を示す。作動流体100の成分は、好適には長期間にわたって浮遊し続ける。
【0048】
空気により駆動される発電機10の性質および系を作動させる圧縮空気を発生させるための所要エネルギを考慮するとさらに、空気源22には空気圧縮システムが内蔵または接続されていてよい、ということが考えられる。空気圧縮システムに基づき、機械式圧縮機とヒートポンプとが交互に断熱熱を除去しかつ背圧を低くする。その結果、空気を圧縮するために必要とされるエネルギが減少させられる。このようなシステムは、2018年1月18日に出願された本発明者の出願第62618720号明細書に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。空気圧縮システムは、機械式圧縮機の所要エネルギをおよそ60%だけ低下させるように考慮される。節約したエネルギのうちのいくらかはヒートポンプ圧縮機により消費されるが、ヒートポンプは平均8以上の高い成績係数(COP)で熱を除去するために使用されるため、所要エネルギの総量は依然として、従来の圧縮機よりも低くなるように計算される。追加的にヒートポンプは、熱を1つの場所から別の場所へ極めて効率的に移動させる、という利点を有している。これにより、各流体タービン18A~18Dの通過後に流体100を受け取るように配置された熱交換器20A~20Dが作動することによって熱を空気駆動式発電機10内の流体100に戻すことができるようになっており、このことは、定常状態で運転する空気駆動式発電機10の性能を保つための、損失断熱熱の交換を容易にし得る。ヒートポンプは、摩擦および圧縮された空気に含まれる水蒸気の凝縮に基づく熱を集めることもできる。発電機10に断熱熱を戻すことができるだけでなく、このような組合せも、およそ25%多くのエネルギを戻すことができる、ということが計算される。この追加的なエネルギは、液体100の温度を、1分当たりの運転において平均約0.6°F上昇させるように計算されている。このことは、エネルギが出て行くエネルギに等しい平衡状態に達するまで、系全体の温度を徐々に上昇させる。周囲条件に応じて、前記平衡状態は約170~200°Fである。結果として生じた流体100の温度上昇は、流体100内の空気を約35%過剰に膨張させかつ発電機10内の流体100の押退け量を増大させる。流体100の押退け量のこの増大は、出力される力を直接に増大させる。つまり圧縮システムのヒートポンプ部において使用されるエネルギは、発電機10の総出力を高めるために使用される。
【0049】
これに関して、標準的な単段圧縮機では、空気は1ステップで所望のpsiに圧縮される、ということを理解されたい。熱の形態で放出されたエネルギは全て圧縮空気に残留するが、圧力および体積は変化している。つまり、温度が上昇すると圧縮機に背圧がかかり、これにより、圧縮機においてより多くのエネルギが使われることになる。2段圧縮機では、空気は若干の断熱熱を除去するために第1段と第2段との間で冷却された空気である。断熱熱の除去により、圧縮機にかかる背圧が第2段において低下させられるため、空気を圧縮するためのエネルギが減じられる。除去を必要とする断熱熱の量は減らない。放出された熱の若干の背圧は、エネルギを全く使わない空冷式中間冷却器により除去されるため、圧縮機の電気エネルギだけが低下する。これにより、圧縮機に使わねばならないエネルギが、より少なくなる。3段圧縮機により、別の利点が得られることもある。このような過程において除去された熱は、典型的には周囲空気中に放散される。
【0050】
本発明に基づき、中間冷却器内の圧縮された空気から熱を除去するためにヒートポンプを使用する、空気源22等による空気圧縮サイクルが使用され得る。中間冷却器を冷却するためにヒートポンプを使用することにより、周囲空気温度よりも低くするためには、前サイクルから到来する圧縮空気を使用することができる。このことは、機械式空気圧縮機による空気圧縮に必要とされるエネルギを、50%~60%だけ減じるように考慮されている。圧縮サイクルの数を増やすことにより、ヒートポンプの成績係数(COP)を8超に高く保つことができる。これにより、凝縮器に送られる8単位の熱毎に、ヒートポンプ圧縮機は1単位の電気(これも熱の形態である)しか使わないことになる。これにより、断熱熱だけでなく、空気圧縮機の摩擦に基づく機械的な熱損失の取込みも可能になる。取り込まれた熱は、次いで転送されてよい。本発明の範囲内で、各サイクルが温度を上昇させるカスケード式ヒートポンプシステムにより、温度を、より高いグレードで使用可能な温度範囲に上昇させることができる。各サイクルにおいてより多くのエネルギが使われるが、エネルギはヒートポンプにより取り込まれ、後過程でも使用されるので、エネルギ損失は少なくなるまたは無くなる。
【0051】
ヒートポンプは、圧縮空気、つまり水蒸気に関する別の問題も解決する。ほとんどの空気には、若干の水蒸気が含まれている。圧縮過程は、水を強制的に凝縮させる。これにより凝縮熱が放出され、凝縮熱は、空気圧縮機に背圧をかけて、圧縮機が必要とするエネルギを増大させる。夏期において相対湿度が極めて高くなる場合があり、これにより空気圧縮に必要とされるエネルギの量が大幅に増やされることがある。中間冷却器において適当なサイズのヒートポンプを使用することで、余分に放出されたエネルギが取り込まれ、空気圧縮機用に必要とされる電力が低く保たれる。取り込まれた多量のエネルギは、後で発電機10の出力を増大させる過程において使用され得る。
【0052】
つまり、空気駆動式発電機10は、圧縮空気を高密度で抵抗力の移動流体100に変換して、閉ループ系内で流体タービンシステムを駆動する。浮力導管14A~14D内で高圧空気が流体100中に噴射されて流体100を押し退け、上向きの浮力を生ぜしめる。流体100の柱が上方に向かって移動するため、圧力は下がり、これに比例して、押し退けられる流体100の体積が増大する。浮力導管14A~14D内で空気により押し退けられた流体100の総和が、全体的な浮力を形成する。移動物体の運動エネルギは、質量×速度に基づき計算される。流体タービン18A~18Dにより電力に変換され得る、重力分配導管12内を落下する移動流体100における有効エネルギは、移動流体100の密度×液体の体積流量×高さまたは液体100の落下頭部×重力加速度に基づき計算され得る。実際に取り込まれるエネルギは、前記計算にエネルギ変換効率を乗じた積である。
【0053】
空気源22により供給されかつ空気噴射器24A~24Dを介して噴射される空気による、流体100の総押退け量を増やし、結果的にタービン発電機18A~18Dの出力を増大させるためには、断熱過程から回収した熱が、水蒸気の凝縮物および機械的な損失熱と共に、タービン発電機18A~18Dを通過した後の、空気噴射器24A~24Dの位置の手前の流体100に供給され得る。
【0054】
熱の注入は、断熱過程において失われた熱を代替するため、空気駆動式発電機10は定常状態を保ち続けるが、余分な熱が外部大気条件に応じて流体100の温度を、1分当たりの運転につき華氏0.6度~1.5度に上昇させ始める。系の熱が高まると、流体押退け量が増大し、出力エネルギも増大する。この状態では熱エネルギ損失率も、出て行く空気の温度上昇および水蒸気の増大に基づき高まることになる。最終的に系全体が、出力エネルギに対する入力エネルギの平衡に達することになる。エネルギ発生量の増大は、断熱熱以外に回収された追加エネルギ全てからタービン効率を引いたものに等しくなるように計算される。
【0055】
空気駆動式発電機10の運転中に出て行く空気の温度は、周囲空気温度よりも大幅に高くなる。高温空気が周囲大気中に放散される前に低級熱を電力に変換するためには、有機ランキンサイクル発電機36が利用され得る。出て行く空気の温度が華氏100度以上上昇することにより、有機ランキンサイクル発電機36を用いた発電では、追加エネルギの10%~15%を再び取り込むことができる。
【0056】
実際の性能を表すものとして信頼されることは意図しない、ということを理解した上で、空気駆動式発電機10の予測性能に依存するためには多くの計算が提供され得る。空気駆動式発電機が標準的な圧縮機を使用する場合には、100KWにつきおよそ90KWが閉ループ発電系内に投入されることになると計算される。しかしながら、圧縮機の機械的な抗力のため、100KWの空気を作るためには湿った空気を用いる場合よりもはるかに多くの乾燥空気を用いて、115KWを要した。これにより25KWの損失が生じ、このことは優れた蓄電池にはするが、発電には適さない。それにもかかわらず、本発明者の空気圧縮システムの使用により、100KWの空気を作るためには40KWしか必要とされず、その結果、50KWの電力の正味利得が得られる、と計算される。加えて、機械的な抗力および水蒸気から余分な熱が回収され、閉ループ系内で流体100の温度を上昇させ、計算されたように、35%多くの電力または32KWを発生させるために使用され得る。50KWプラス32KWの合計または82KWの正味利得が予想される。加えて、出て行く高温空気はエネルギを有している。有機ランキンサイクル発電機(ORC)36を使用した場合、追加の15%または12KWの電力を取り込んで、合計94KWの正味利得を生ぜしめることができる。標準的な20%の効率損失が適用されると、75KWの電力の正味利得が予想される。この計算されたエネルギのうち、実際に回収可能な量を知るためには、フルサイズの試験的な系を構築する必要があり、本開示において性能を断定的に表すものとして解釈または信頼されるべきものではないと考えられる。
【0057】
開示した空気駆動式発電機10に関する本発明の特定の詳細および実施形態を用いて、本発明の思想または範囲から逸脱することなしに多くの変更および追加が成されてよい、ということを当業者は認識されたい。このことは特に、現時点で好適な実施形態が単に、ここで明確にされたより広範な発明を例示しているだけに過ぎない、ということに留意した場合に当てはまる。よって、本発明の主要な特徴に留意して、これらの主要な特徴を組み込む一方で、好適な実施形態に含まれる特徴の全てが組み込まれてはいない実施形態を製作することができる、ということは明らかである。
【0058】
したがって、以下の各請求項は発明者に与えられる保護範囲を規定することを意図したものである。これらの請求項は、本発明の思想および範囲から逸脱しない限り、均等構成を含むと判断されるべきである。さらに、以下の複数の請求項は、特定の要素を、特定の機能を実行するための手段として、時には構造または材料の説明なしで表現し得る、ということに留意する必要がある。法律が要求するように、これらの請求項は、本明細書に明記された対応する構成および材料だけでなく、これらの、目下周知のまたは今後発見される可能性がある、全ての均等物をもカバーすると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18