(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】巻上装置の巻上ロープ固定装置
(51)【国際特許分類】
B66D 1/30 20060101AFI20230220BHJP
B66D 3/04 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
B66D1/30 C
B66D3/04 J
(21)【出願番号】P 2020533005
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 FI2018050910
(87)【国際公開番号】W WO2019115879
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-05
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】516083449
【氏名又は名称】コネクレーンズ グローバル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Konecranes Global Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】イェンニ・ターティネン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリ・コッコ
(72)【発明者】
【氏名】ニコ・ラウッカネン
(72)【発明者】
【氏名】アデインカ・アッバス
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-262395(JP,A)
【文献】実開昭54-089772(JP,U)
【文献】特開平09-250598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0037436(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-31/02
B66C 1/00-25/00
B66D 1/00- 5/34
B66F 1/00-19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上装置であって、
本体(1)と、
巻上ロープ(2)と、
前記本体(1)に関連して配置されたロープドラム(3)であって、前記巻上ロープ(2)の第1の端部が固定されており、前記巻上ロープ(2)が巻き付けられる、ロープドラム(3)と、
前記巻上ロープ(2)によって上昇および下降する巻上部分(4)と、を備え、
前記巻上装置は、ループに形成された前記巻上ロープ(2)の第2の端部(2-2)の固定装置(5)を備え、螺旋状の溝(15)が実質的にループ全体を取り囲んでおり、前記巻上ロープ(2)の前記第2の端部(2-2)に隣接する部分が受け取られ、
前記巻上装置は、前記巻上ロープ(2)の前記第2の端部(2-2)を前記固定装置(5)にロックする固定構成(6)を有し、前記第2の端部(2-2)が前記固定装置(5)から引き抜かれないように
し、
前記巻上ロープ(2)の前記固定装置(5)が、前記巻上部分(4)または前記本体(1)に取り外し可能かつ回転可能に固定されることを特徴とする、巻上装置。
【請求項2】
前記巻上部分(4)に関連して、前記ロープドラム(3)から前記巻上ロープ(2)を受け取る少なくとも1つの滑車(7)があり、前記滑車(7)から前記巻上ロープ(2)を受け取る前記巻上ロープ(2)の前記固定装置(5)は、取り外し可能かつ回転可能に前記本体に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の巻上装置。
【請求項3】
前記巻上ロープ(2)の前記固定装置(5)は、滑車軸の端部に取り外し可能かつ回転可能に固定されていることを特徴とする、請求項
2に記載の巻上装置。
【請求項4】
前記ループは、前記ループの中央部分に配置された固定点(13)の周りを回り、それによって、前記固定装置(5)が前記巻上装置に固定されることを特徴とする、請求項1に記載の巻上装置。
【請求項5】
前記ループは、閉ループであることを特徴とする、請求項
4に記載の巻上装置。
【請求項6】
前記ループは、開ループであることを特徴とする、請求項
4に記載の巻上装置。
【請求項7】
前記ループは、角張ったループであることを特徴とする、請求項
4に記載の巻上装置。
【請求項8】
前記ループは、少なくとも部分的に円形ループであることを特徴とする、請求項
4に記載の巻上装置。
【請求項9】
前記巻上装置(5)の溝(15)に前記巻上ロープ(2)が受け入れられる、前記巻上ロープ(2)の第1の端部と第2の端部(2-2)との間の点は、前記固定装置(5)の固定点(13)と同じ垂直線(16)に位置されることを特徴とする、請求項1ないし
8のうちいずれか1項に記載の巻上装置。
【請求項10】
前記巻上ロープ(2)の前記第2の端部(2-2)を前記固定装置(5)にロックする前記固定構成(6)は、ボルト(17)を備え、これにより、前記巻上ロープ(2)の前記第2の端部(2-2)は、前記固定装置(5)に固定されていることを特徴とする、請求項1ないし
9のうちいずれか1項に記載の巻上装置。
【請求項11】
前記巻上ロープ(2)の前記第2の端部(2-2)を前記固定装置(5)にロックする前記固定構成(6)は、結び目(18)を備え、これにより、前記巻上ロープ(2)の前記第2の端部(2-2)は、前記固定装置(5)に固定されていることを特徴とする、請求項1ないし
10のうちいずれか1項に記載の巻上装置。
【請求項12】
前記固定装置(5)の溝(15)は、前記巻上ロープ(2)の外径と一致するように丸みと寸法が設定されていることを特徴とする、請求項1ないし
11のうちいずれか1項に記載の巻上装置。
【請求項13】
前記巻上ロープ(2)は、合成材料を含むことを特徴とする、請求項1ないし
12のうちいずれか1項に記載の巻上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻上ロープの端部を巻上装置に固定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
巻上装置の巻上ロープとしてスチールロープを使用することは以前から知られている。スチールロープを巻上装置に固定するために、例えば、くさびポケットとロープ引き締め具がしばしば使用される。問題の解決策は、スチールロープでの使用に適しているが、他の材料を含むロープでは、この解決策は、不利であることが判明している。
【0003】
ここで説明する解決策の目的は、用途に応じて以前より自由に巻上ロープの材料を選択できるようにする、巻上ロープの固定方法を開発することである。
【発明の概要】
【0004】
上述の目的は、本発明に係る巻上装置によって達成され、それは、本体、巻上ロープ、および本体に関連して配置された巻上ロープの第1の端部が固定され、巻上ロープが巻き付けられるロープドラム、並びに巻上ロープによって上昇および下降する巻上部分を備えることを特徴とし、および前記巻上装置はさらに、巻上ロープの第2の端部の固定装置を備え、部分を取り囲む螺旋状の溝が形成され、巻上ロープの第2の端部に隣接する部分が前記部分を取り囲むように受け取られる少なくとも1つの部分を有し、巻上装置は、巻上ロープの第2の端部を固定装置にロックする固定構成を有し、第2の端部が固定装置から引き抜かれるのを防ぐ。このような解決策により、摩擦を利用して巻上ロープを固定することが可能になり、その結果、巻上ロープの材料を用途に合わせてより自由に選択できるようになる。
【0005】
次に、本発明を、好ましい実施形態に関連して、また添付の図面を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3a】
図1および
図2の巻上装置に適した固定装置の第1の実施形態を示す。
【
図3b】
図1および
図2の巻上装置に適した固定装置の第1の実施形態を示す。
【
図3c】
図1および
図2の巻上装置に適した固定装置の第1の実施形態を示す。
【
図4a】
図1および
図2の巻上装置に適した固定装置の第2の実施形態を示す。
【
図4b】
図1および
図2の巻上装置に適した固定装置の第2の実施形態を示す。
【
図5】
図3~
図4の固定装置から適切な巻上ロープの第2の端部の固定の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1を参照すると、巻上装置に合成ロープを固定するための固定装置は、その主要構成要素として、巻上装置の本体1、巻上ロープ2、本体に関連して配置されたロープドラム3、巻上部分4、巻上ロープ2の第2の端部の固定装置5を備え、部分を取り囲む螺旋状の溝が形成され、巻上ロープ2の第2の端部に隣接する部分が前記部分を取り囲むように受け取られる少なくとも1つの部分を有する少なくとも1つの部分と、巻上ロープの第2の端部を固定装置5にロックする固定構成6を有する。固定装置5の材料としては、例えば、アルミニウムを使用することができ、これにより、例えば、腐食に対してコーティングまたは塗装する必要がない。あるいは、塗装された鋼を使用することもできる。
【0008】
この実施形態では、巻上ロープ2の第2の端部の前記固定装置5は、
図1に示されるように、例えば、巻上装置の本体1に固定される。固定は、ジョイントが取り外し可能で回転するように実施されることが有利である。取り外し可能な固定により、必要に応じて固定装置5の位置を変更することができる。回転固定により、例えば、巻き上げられる荷物が揺れる場合に、固定装置を固定点の周りで回転させることができる。
【0009】
固定装置5が巻上装置の本体1に固定されるとき、少なくとも1つの第1の滑車7を、ロープドラム3から巻上ロープ2を受ける巻上部分4に固定する必要がある。
図1の実施形態では、巻上ロープ2は、巻上部分4と本体部分1との間に複数回延在し、これにより、本体部分に関連して配置された1つの第2の滑車8がある。この例では、固定装置は、第2の滑車8と同じ軸9に固定される。
【0010】
固定装置5の前記部分は、
図1の例では、閉ループに形成され、それにより、固定装置5の中央部分に配置された固定点を一周し、それによって、固定装置5は、巻上装置に固定される。あるいは、前記ループは、いくつかの場所で開いていてもよい。ループは、
図1に示されるように、角張った形、または少なくとも部分的に丸みを帯びた形をしている。
【0011】
固定装置5は鋳鉄または鋼で作ることができ、巻上ロープ2は、Dyneema(登録商標)ロープなどの合成巻上ロープであってもよく、Dyneema(登録商標)は、その所有者がDSM IP Assets B.V.である商標である。
【0012】
図2は、巻上装置の第2の実施形態を示している。
図2の実施形態は、
図1の実施形態にほぼ対応し、以下では、
図2の実施形態は、主にこれらの実施形態間の差異を開示することによって説明される。この例では、固定装置5は、分離された軸10上の巻上部分4と接続されて固定される。例とは異なり、固定装置5は、滑車11と同時に、または滑車11の代わりに、滑車11と同じ軸12に固定されてもよい。
【0013】
図3a~
図3cは、
図1および
図2の実施形態で利用することができる固定装置の第1の好ましい実施形態を示している。
図3a~
図3cで参照される部分は、丸い角を有する閉じた正方形のループに形成されている。この例では、固定装置5は、そのループの内側に形成された固定点13を有し、これは、軸の端部にねじ込まれ得る、または、例えば、固定ボルトがそこを通してねじ込まれ得る開口部14によって形成される。あるいは、固定装置5の固定点13は、ループの外側に配置されてもよい。
【0014】
図3aおよび
図3bを参照すると、固定装置5の固定点13は、有利には、巻上装置2の溝15内に巻上ロープ2が受け入れられる巻上ロープ2の第1の端部2と第2の端部2-2との間の点が固定装置5の固定点13として同じ垂直線16上に位置するように配置される。このようにして、固定装置5にねじりモーメントが発生することが回避される。固定装置5の溝15において、この点は、
図3cに示されるように、溝15の第1の端部15-1の近くにある。
【0015】
図3a~
図3cが示すように、好ましい実施形態では、ループは、巻上ロープの第2の端部2-2を受け入れる溝15を取り囲むように少なくとも部分的に配置される。前記溝15はまた、ループ全体を実質的に取り囲んでもよい。これは、前記部分に複数の溝ラウンドを配置するのに有利である。なぜなら、複数の溝ラウンドは、巻上ロープと固定装置との間の摩擦を増加させ、したがって、固定の適切な保持を確実にするからである。さらに、溝15の表面は、摩擦を増加させるように処理されてもよい。溝15に摩擦を加えることは、例えば、溝15をコーティングすることによって、またはその製造段階で溝15に突起を形成することによって実施され、摩擦を高めることができる。
【0016】
溝15は、実質的に円形、または少なくとも円形であり、溝の形状は、実質的に半円形であり、溝の寸法は、使用される巻上ロープ2の外径と密接に一致する。したがって、張力が加えられたとき、溝15は、特に、引張強度が加えられたときに、巻上ロープがつぶれないように、巻上ロープ2を側面から支持する。有利には、配置されたとき、溝15は、巻上ロープ2の受け点よりもさらに続き、溝15に沿った巻上ロープ2の移動は、以下のスイング動作に関連して説明されるように、鋭い角に接触することなく可能である。
【0017】
図4a~
図4bは、
図1および
図2の実施形態で利用され得る、固定装置の第2の好ましい実施形態を示す。
図4aおよび
図4bの実施形態は、
図3aおよび3cの実施形態にほぼ対応し、したがって、以下では、
図4aおよび
図4bの実施形態は、これらの実施形態間の差異を主に開示することによって説明される。
図4aおよび
図4bの実施形態は、固定装置5’を備え、その溝15によって取り囲まれた前記部分は、円形の閉ループに形成される。問題の実施形態では、前記溝15は、実質的にループ全体を取り囲む。
【0018】
さらに
図3a~
図3cおよび
図4aおよび4bを参照すると、巻上ロープ2は、溝の第1の端部15-1の近くから固定装置に受け取られ、その後、巻上ロープ2は、少なくとも部分的に溝15内に配置される。最後に、巻上ロープ2の第2の端部2-2は、固定構成によって固定装置に固定される。
【0019】
図5は、例として固定構成を示している。問題の固定構成は、巻上ロープ2の第2の端部2-2に結び付けられたボルト17および8の字結びなどの結び目18などの固定手段を備える。この問題の固定構成では、巻上ロープ2は、溝側の部分でわずかに開いており、形成された隙間を介してボルト17が適合され、それを回転させることにより固定装置に固定され、これにより、巻上ロープ2の第2の端部2-2を所定の位置にロックする。このような場合の結び目は、少し開いていたロープの端部がほどけるのを防ぐ。
【0020】
図5とは異なり、固定装置は、巻上ロープ2の第2の端部2-2が通される穴を有してもよく、その後、結び目が巻上ロープ2の第2の端部2-2に結び付けられて、巻上ロープ2の引き抜きを防止する。このような場合、
図5に示されるねじは固定構成に必要ないが、結び目と穴により、ロープの第2の端部が固定装置の所定の位置に保持される。
【0021】
上記において、例としておよび図面を参照して、巻上ロープが通されている固定装置の部分がループに形成されていることが開示されている。しかしながら、これは好ましい実施形態の一例にすぎず、これにより、例えば、滑車軸の延長部で滑車と同軸に固定されるように適合する、このようなコンパクトな固定装置を実現することができる。あるいは、前記部分が直線ロッドに形成されることも可能である。
【0022】
図の例とは異なり、固定構成は、それ自体の下にある巻上ロープ2の第2の端部2-2の糸通し、および下糸通しに続いて張力をかけることを含み、それにより、下糸付き巻上ロープ部分が巻上ロープ2と固定装置5との間に張られる。下糸付き巻上ロープ2の端部に結び目を結ぶことにより、巻上ロープ2が引っ張られた状態にあるときに巻上ロープが引き抜かれるのを防ぐことにより、固定をさらに改善することができる。
【0023】
さらに図とは異なり、固定構成は、プレートと固定手段とを備えることができ、これにより、巻上ロープ2の第2の端部2-2は、前記プレートと固定装置5との間で引っ張られる。この固定構成はまた、巻上ロープ2が引っ張られた状態にあるときに巻上ロープ2の第2の端部2-2に結び目を結び、巻上ロープ2が引き抜かれるのを防ぐことによってさらに改善することができる。
【0024】
異なる実施形態では、負荷の揺れに関する限り、垂直角から任意の方向への負荷の揺れが構造的に考慮され得るという事実に留意することができる。例えば、
図1による方向では、問題は、横揺れ運動であり、これは、固定装置がその周りを回転することができる固定点13を固定装置に提供することによって考慮される。前述の横方向の動きに対して揺れ運動が横方向である場合、すなわち、固定点13のピンの軸の方向に揺れることは、固定装置の最下端の下のロープの溝を長くすることによって考慮に入れることができる。実際には、全ての揺れ運動および斜めに引っ張る状況は、上記で言及した2つの方向の動きに分けることができる。
【0025】
当業者は、技術が進歩するにつれて、本発明の基本的なアイデアが多くの異なる方法で実施され得ることを明らかにするであろう。したがって、本発明およびその実施形態は、上記の例に限定されず、請求の範囲内で変化し得る。