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特許7230028脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20230220BHJP
   A61F 2/44 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
A61B17/70
A61F2/44
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2020533376
(86)(22)【出願日】2017-09-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 IB2017001163
(87)【国際公開番号】W WO2019043426
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】520070552
【氏名又は名称】スパイノロジクス・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】518284905
【氏名又は名称】イオス・イメージング
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョー・オベイカ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・インヴェルニッツィ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・クラン
【審査官】永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-540610(JP,A)
【文献】特開2016-093497(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0135706(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0345757(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0262911(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
A61F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標脊椎矯正ロッドインプラント形状(3)の推定ステップ(90)であって、患者固有脊椎形状矯正(2)に基づき、患者固有脊椎の3Dモデリング(91、92)を含む、推定ステップと、
1つまたは複数のシミュレーションループ(60)であって、各シミュレーションループが、第1のシミュレーションステップおよび第2のシミュレーションステップを含む、1つまたは複数のシミュレーションループ(60)と、
を含んでなる、脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分において、
前記第1のシミュレーションステップでは、
患者固有脊椎(1)と、第1のシミュレーションループでの前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状(3)またはその後のシミュレーションループにおける前のシミュレーションループでの過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状(8)との間の機械的相互作用モデリング(4)によって、中間脊椎矯正ロッドインプラント形状(5)を取得し、
前記第2のシミュレーションステップでは、
過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状(8)をもたらすために目標脊椎矯正ロッドインプラント形状(3)に適用される脊椎矯正ロッドインプラント形状過大曲げ(7)であって、前記第1のシミュレーションループでの前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状(3)またはその後のシミュレーションループにおける前のシミュレーションループでの前記過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状(8)と、前記中間脊椎矯正ロッドインプラント形状(5)との間の差を表す脊椎矯正ロッドインプラント形状過大曲げ(7)を取得することを特徴とする、脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項2】
単一のシミュレーションループ(60)のみを含む、請求項1に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項3】
少なくとも2回の反復シミュレーションループ(60)または少なくとも5回の反復シミュレーションループ、さらに/或いは10回未満の反復シミュレーションループを含む、
請求項1に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項4】
2回から10回の反復シミュレーションループ(60)の回数は、目標脊椎矯正ロッドインプラント形状(3)と中間脊椎矯正ロッドインプラント形状(5)との間の差(6)が所定のしきい値よりも小さいことを各シミュレーションループにおいて確認することによってシミュレーションループを実行する間に決定される、請求項3に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項5】
反復シミュレーションループ(60)の回数は、所定の反復シミュレーションループ回数であり、前記所定の反復シミュレーションループ回数は、患者脊椎側彎症の種類および/または患者脊椎側彎症の程度に依存している、請求項3に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項6】
前記機械的相互作用モデリング(4)は、前記過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント(8)を前記患者固有脊椎(1)上に移植する(10)とき、および、移植後過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状(10)を、移植後最終脊椎矯正ロッドインプラント形状(12)になるように前記移植後過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状(10)と前記患者固有脊椎(1)との間の効果的な機械的相互作用(11)によって修正するときに、前記移植後最終脊椎矯正ロッドインプラント形状(12)が、第1のシミュレーションループからの前記中間脊椎矯正ロッドインプラント形状(5)よりも前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状(3)に近くなるような結果を取得するように実施される、請求項1から5のいずれか一項に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項7】
前記移植後最終脊椎矯正ロッドインプラント形状(12)は、前記中間脊椎矯正ロッドインプラント形状(5)よりも、少なくとも2倍または少なくとも5倍、或いは、少なくとも10倍、前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状(3)に近い、請求項6に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項8】
前記第2のシミュレーションステップでは、矢状面における前記脊椎矯正ロッドインプラント形状過大曲げ(7)は、
前記第1のシミュレーションループでの矢状面における前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状(3)の突出またはその後のシミュレーションループでの矢状面における前のシミュレーションループによる過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状(8)の突出のいずれかと、矢状面における前記中間脊椎矯正ロッドインプラント形状(5)の突出との間の差である、請求項1から7のいずれか一項に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項9】
前記第2のシミュレーションステップでは、冠状面における前記脊椎矯正ロッドインプラント形状過大曲げ(7)は、
前記第1のシミュレーションループでの冠状面における前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状(3)の突出またはその後のシミュレーションループでの冠状面における前のシミュレーションループによる過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状(8)の突出のいずれかと、冠状面における前記中間脊椎矯正ロッドインプラント形状(5)の突出との間の差である、請求項1から8のいずれか一項に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項10】
前記第1のシミュレーションステップでは、前記機械的相互作用モデリング(4)は、少なくとも矯正前の前記患者固有脊椎の剛性と、矯正前の前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状(3)と前記患者固有脊椎(1)との間に存在する距離との両方を入力パラメータとして使用する、請求項1から9のいずれか一項に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項11】
前記第1のシミュレーションステップでは、前記機械的相互作用モデリング(4)は、少なくとも脊椎矯正ロッドインプラントの材料と前記脊椎矯正ロッドインプラントの断面の両方を入力パラメータとして使用する、請求項1から10のいずれか一項に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項12】
前記第1のシミュレーションステップでは、前記機械的相互作用モデリング(4)は、
患者の椎骨と患者の椎骨上に取り付けられる脊椎支持インプラントの両方に使用され、脊椎矯正ロッドインプラントを支持する剛性の高い非変形体と、
前記脊椎矯正ロッドインプラント用の1つまたは複数の変形体を一体化するハイブリッドモデルに基づく、請求項1から11のいずれか一項に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項13】
前記ハイブリッドモデルはまた、
それぞれ脊椎支持インプラントの剛性の高い非変形体と前記脊椎矯正ロッドインプラントの変形体との間に位置する接触界面を一体化する、請求項12に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項14】
接触界面は、2つの物体間の接触が生じることになる結節において仮想ばねを含み、前記仮想ばねの剛性としては、前記2つの物体間の残存貫通力のみが得られるように十分に高い剛性であって、反復解決プロセスにおいて高い収束率が得られるように高過ぎない剛性が選択される、請求項12に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項15】
最後の第2のシミュレーションステップの完了後に実施される補足確認ステップ(70)であって、
前記患者固有脊椎(1)上への前記過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント(8)のシミュレートされた移植を行って、移植後過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント(10)を得る段階と、
前記移植後過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状(10)と前記患者固有脊椎(1)との間のシミュレートされた機械的相互作用(4)によって前記移植後過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状(10)を修正して移植後最終脊椎矯正ロッドインプラント形状(12)を得る段階と、
前記移植後最終脊椎矯正ロッドインプラント形状(12)と前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状(3)との間の第1の差と前記中間脊椎矯正ロッドインプラント形状(5)と前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状(3)との間の第2の差を比較する(13)段階と、
前記移植後最終脊椎矯正ロッドインプラント形状(12)が、前記中間脊椎矯正ロッドインプラント形状(5)よりも、少なくとも2倍または少なくとも5倍、或いは、少なくとも10倍、前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状(3)に近いことの妥当性を確認する(14)段階とを含む補足確認ステップ(70)も含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項16】
前記推定ステップは、
前記推定ステップ(90)の開始時に実行される患者固有脊椎の3D幾何学的モデリング(91)の段階を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項17】
3D幾何学的モデリング段階(91)は、
正面患者固有脊椎X線画像と側面患者固有脊椎X線画像の両方を撮像する第1の動作(15)と、
前記正面患者固有脊椎X線画像と前記側面患者固有脊椎X線画像の両方から患者固有脊椎3D幾何学的モデルを生成する第2の動作(16)とを含む、請求項16に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項18】
前記推定ステップは、
前記推定ステップ(90)の途中で実施される患者固有脊椎の3D有限要素モデリング(92)の段階を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項19】
3D有限要素モデリング段階(92)は、
垂直撮像位置における患者脊椎を表す第1の患者固有脊椎3D有限要素モデル(17)からシミュレートされた重力(18)を減算し、水平手術実施位置における患者脊椎を表す第2の患者固有脊椎3D有限要素モデル(19)を得る動作を含む、請求項18に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項20】
前記第1の患者固有脊椎3D有限要素モデル(17)は患者固有脊椎の3D幾何学的モデル(16)から得られる、請求項19に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項21】
3D有限要素モデリング段階(92)では、前記患者固有脊椎の3D有限要素モデリングは、1つまたは複数の椎体間ケージおよび/または1つまたは複数の骨切り術を含む、請求項18から20のいずれか一項に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項22】
前記推定ステップ(90)は、
前記推定ステップ(90)の終了時に実施される患者固有脊椎矯正実現可能性評価段(93)を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項23】
前記矯正実現可能性評価段階(93)は、
前記第2の患者固有脊椎3D有限要素モデル(19)と理想的な目標である矯正後患者脊椎(20)とを比較し、患者固有脊椎形状矯正(2)および対応する目標脊椎矯正ロッドインプラント(3)を得る第1の動作と、
前記患者固有脊椎形状矯正(2)の実現可能性を確認する(21)第2の動作であって、
前記目標脊椎矯正ロッドインプラントが前記患者固有脊椎上に移植されるときに患者固有脊椎の椎骨が互いに干渉しないことを少なくとも確認することによって、バイオメカニカル実現可能性を確認すること、および/または
前記目標脊椎矯正ロッドインプラントが前記患者固有脊椎上に移植されるときに加えられる矯正力が、患者固有脊椎の椎骨が損傷するかまたは場合によっては破壊される可能性が無視できなくなる所定のしきい値を超えないことを少なくとも確認することによって矯正実現可能性を確認する第2の動作とを含む、請求項19を引用する請求項22に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項24】
前記患者固有脊椎形状矯正(2)の実現可能性を確認する(21)前記第2の動作は、前記患者固有脊椎(1)によって前記目標脊椎矯正ロッドインプラント(3)に対して加えられる力の線形成分に基づく、請求項23に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項25】
前記患者固有脊椎(1)によって前記目標脊椎矯正ロッドインプラント(3)に対して加えられる力の前記線形成分は、ばねモデルに基づく、請求項24に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項26】
前記ばねモデルでは、各引張ばね(54)が、前記患者固有脊椎(1)の椎骨の中心に取り付けられた第1の端部と、前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状(3)の対応する位置に取り付けられた第2の端部とを有する、請求項25に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項27】
前記患者固有脊椎(1)において矯正すべき椎骨間のそれぞれに異なる既存のずれがもしあれば、解消され、それによって、矯正すべきすべての椎骨に対して前記引張ばね(54)によって加えられる初期力が同じになる、請求項26に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項28】
前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状(3)と前記患者固有脊椎(1)の状との間に追加のねじりばねが実装され、前記患者固有脊椎に対する横断面における前記患者固有脊椎の椎骨の軸方向回転が矯正される、請求項26または27に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項29】
前記患者固有脊椎(1)において矯正すべき椎骨間のそれぞれに異なる既存のずれがもしあれば解消され、それによって、矯正すべきすべての椎骨に対して前記ねじりばねによって加えられる初期モーメントが同じになる、請求項28に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【請求項30】
前記機械的相互作用モデリング(4)は、前記患者固有脊椎(1)における脊椎矯正を必要とする椎間ユニットごとに剛性マトリクスを使用する、請求項1から29のいずれか一項に記載の脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造すべき脊椎矯正ロッドインプラントを決定する脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分方法、および前記決定された脊椎矯正ロッドインプラントを製造する関連する脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセスに関する。
【0002】
この決定された脊椎矯正ロッドインプラントは、製造され患者脊椎上に移植された後、脊椎側彎症を発症した患者の脊椎を少なくとも部分的に矯正する助けになる。
【背景技術】
【0003】
第1の従来技術によれば、医師に供給される汎用脊椎矯正ロッドインプラントを製造することが公知であり、医師は、たいていの場合、患者固有の数値セットが記載された紙シートに基づいて、手術室内で、患者固有脊椎矯正ロッドインプラントに到達するように汎用脊椎矯正ロッドインプラントを捩じる。そのような捩じられた患者固有脊椎矯正ロッドインプラントは次いで、前記患者の椎骨上に移植される。
【0004】
この第1の従来技術では、通常、手術時には、予定された脊椎矯正ロッドインプラントが筋反応の大きい力によって曲げられ、通常、患者内の移植後脊椎矯正ロッドインプラントの最終形状が、予定された形状とは異なることが公知である。この問題を解決するために、一部の医師は、患者内の移植後脊椎矯正ロッドインプラントの最終形状を手術計画により近付けるために、手術計画と比較して脊椎矯正ロッドインプラントに過大な曲げを加えることを試みることがある。医師によって加えられるこの過大曲げは主として、経験と感覚に基づく。
【0005】
この第1の従来技術では、患者脊椎への移植時に、移植後患者固有脊椎矯正ロッドインプラントと患者脊椎との間の機械的相互作用によって、患者固有脊椎矯正ロッドインプラントの形状が予期される形状とはかなり異なるものになる。これは、この機械的相互作用が予想されていなかったからである。したがって、患者固有脊椎矯正ロッドインプラントを取り出し、次いで捩じり直し、その後移植し直さなければならず、このプロセスは、医師によって事前に決定された目標によりうまく一致するように必要に応じて繰り返されることがある。
【0006】
そのような第1の従来技術の第1の欠点は、手術日に手術室内で、多数の微妙なステップを実行して汎用脊椎矯正ロッドインプラントを患者固有脊椎矯正ロッドインプラントに変更する必要があることである。
【0007】
そのような第1の従来技術の第2の欠点は、手術日に手術室内で、患者脊椎に直接、いくつかの過剰なステップを実行して、汎用脊椎矯正ロッドインプラントを、目標に一致する患者固有脊椎矯正ロッドインプラントに変更し、すなわち、移植され、最初に移植された脊椎矯正ロッドインプラントに対して患者脊椎によって加えられる力および圧力に起因して患者脊椎との機械的相互作用を受けた後でバランスが取られるときに、理想的に予定された患者固有脊椎矯正ロッドインプラントにより正確に対応する患者固有脊椎矯正ロッドインプラントに変更する必要があることである。
【0008】
第2の従来技術によれば、患者固有脊椎矯正ロッドインプラントが患者脊椎上に移植された後患者固有脊椎矯正ロッドインプラントに対して患者脊椎によって加えられる力および圧力を予想するために、手術室内で、過大曲げ患者固有脊椎矯正ロッドインプラントに到達するように汎用脊椎矯正ロッドインプラントを捩じる医師に供給される汎用脊椎矯正ロッドインプラントを製造することが公知である。
【0009】
この第2の従来技術では、患者脊椎への移植時に、移植後患者固有脊椎矯正ロッドインプラントと患者脊椎との間の機械的相互作用は、予想されていた場合でも予定通りに生じないことが多い。したがって、患者固有脊椎矯正ロッドインプラントを取り出し、次いで少しだけ捩じり直し、その後移植し直さなければならず、このプロセスは、医師によって事前に決定された目標によりうまく一致するように必要に応じて繰り返されることがある。
【0010】
そのような第1の従来技術の第1の欠点は、手術日に手術室内で、多数の微妙なステップを実行して汎用脊椎矯正ロッドインプラントを患者固有脊椎矯正ロッドインプラントに変更する必要があることである。
【0011】
そのような第1の従来技術の第2の欠点は、手術日に手術室内で、患者脊椎に直接、いくつかの過剰なステップを実行して、汎用脊椎矯正ロッドインプラントを、目標に一致する患者固有脊椎矯正ロッドインプラントに変更する必要があり、または経験が豊富であり、患者に固有の、過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラントを正確に予想することができる技能を有する非常に熟練した医師が必要であり、そのような特に熟練した医師が、少数の有名教授であることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述の欠点を少なくとも部分的に軽減することである。
【0013】
より詳細には、本発明の目的は、手術室での手術の前に、患者固有脊椎矯正ロッドインプラントに必要な過大曲げを予想し、それによって、この患者固有脊椎矯正ロッドインプラントが、前記患者脊椎上に移植された後でかつ患者脊椎によって力および圧力が加えられた後に、患者固有脊椎矯正ロッドインプラントの最終状態において、医師によって予定された移植後患者固有脊椎矯正ロッドインプラントの形状にずっと近い形状に対応するようにし、それによって、手術室において現場の医師によって行うべきステップの数を大幅に限定して低減し、患者固有の移植後脊椎矯正ロッドインプラントに対して患者脊椎によって加えられる力および圧力を考慮に入れることである。
【0014】
本発明の目的は、事前に過大曲げされた脊椎矯正ロッドインプラントであって、医師によって患者脊椎上に移植された後でかつ移植後脊椎矯正ロッドインプラントによる患者脊椎の変形に対する反応として患者脊椎によって対抗力および逆圧を受けた後、実際に目標脊椎矯正ロッドインプラント形状である予定された最終移植後脊椎矯正ロッドインプラントに近いかまたは場合によっては非常に近い最終形状を得る脊椎矯正ロッドインプラントを提供することである。
【0015】
本発明の目的は、脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセスの構想部分であって、移植され、この移植後脊椎矯正ロッドインプラントによって変形された患者脊椎自体の対抗力および逆圧を加えられた後、目標脊椎矯正ロッドインプラント形状に近いかまたは非常に近い移植後脊椎矯正ロッドインプラントの最終形状をもたらす患者固有過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラントの形状をシミュレートし、それによって、第1に、医師によって現場で行われるステップの数を大幅に低減させ、第2に、医師の経験した感触からのみ適用すべき過大曲げを推測するのに必要な医師の技能レベルを大幅に低下させる、脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセスの構想部分を提供することである。
【0016】
この目的は、脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分であって、目標脊椎矯正ロッドインプラント形状の推定ステップであって、患者固有脊椎形状矯正に基づき、患者固有脊椎3Dモデリングを含む推定ステップと、1つまたは複数のシミュレーションループであって、各シミュレーションループが、前記患者固有脊椎と、第1のシミュレーションループについての前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状、またはもしあればその後のシミュレーションループについての、前のシミュレーションループによる過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状との間の機械的相互作用のモデリングによる中間脊椎矯正ロッドインプラント形状の第1のシミュレーションステップ、および結果的な過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状をもたらすために前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状に適用され、第1のシミュレーションループについての前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状またはもしあればその後のシミュレーションループについての、前のシミュレーションループによる前記過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状と、前記中間脊椎矯正ロッドインプラント形状との間の差を表す脊椎矯正ロッドインプラント形状過大曲げの第2のシミュレーションステップを含む1つまたは複数のシミュレーションループとを含む脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分によって実現される。3Dは3次元を意味する。
【0017】
多数の複雑なシミュレーション方法が存在し、そのうちのいくつかは、本発明者らによって本発明に想到する前に実験されている。その理由は、第一印象において、前記患者脊椎上にそれを変形するために移植されたばかりの患者固有脊椎矯正インプラントに対する患者脊椎の対抗作用を予想するためのこの過大曲げのシミュレーションは、おそらく高度なシミュレーションプロセスを必要とする微妙で複雑な機械的相互作用であるように思われるからである。
【0018】
これに対して、本特許のシミュレーションプロセスは、インプラント製造プロセスの一部であり、最終的に、かなり単純なシミュレーション方法であり、このシミュレーションプロセスは驚くほど有効であり、さらに極めて有効である。
【0019】
しかし、本発明では、そのような単純なシミュレーション方法が極めて有効であるには、患者固有脊椎モデリングが正確なモデリングである必要があり、したがって、3D患者固有脊椎モデリングである必要があり、2D患者固有脊椎モデリングは、2つ以上の方向において実行される場合でも、製造され、患者脊椎上に移植され、変形された患者脊椎の対抗力によってバランスが取られたときに、患者脊椎上に設置された目標最終インプラント形状に近いかまたは非常に近いシミュレートされた過大曲げインプラント形状に到達するには不十分であることが認識された。
【0020】
2D患者固有脊椎モデリングは、有効である場合があるが、本発明によって提案されるシミュレーション方法よりもずっと高度なシミュレーション方法を用いた場合に限られ、もちろん、対応するシミュレーションは、ずっと長い計算時間を必要とし、ずっと長い時間がかかる。
【0021】
本発明は、かなり単純であり、一般にそのような種類の機械的相互作用に取り組むために使用され、また本発明によって提案されるより単純なプロセスを想到する前に実施されていた従来の最適化アルゴリズムよりも確実にずっと単純な最適化アルゴリズムを提案する。すなわち、脊椎矯正ロッドインプラント上のいくつかの重要な点の位置が最適化変数として定められ、最急降下法、遺伝的アルゴリズムなどの最適化アルゴリズムを使用してこれらの重要な点の位置を修正して最適な過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状が求められていた。しかし、これらの方法は過度に多くの反復を伴い、計算時間が非常に長くなる。このことは実際、反復ごとに脊椎手術の有限要素シミュレーションを行う必要があり、これには概して1分から2分の間の時間がかかったことに起因する可能性が高い。
【0022】
提案された発明は、骨(椎骨など)、椎間板、筋肉、および靭帯を含む筋骨格脊椎系の患者固有解剖学的シミュレーションを使用することによって脊椎用の患者固有バイオメカニクスシミュレーションおよびロッドとの機械的相互作用を付加するのを可能にするシミュレーションモジュールを含む。この筋骨格シミュレーションプランニングは、患者脊椎とロッドとの間の機械的相互作用をシミュレートすることができ、脊椎がロッド内に大きい力を誘発したときに、ロッドが曲げられ、移植されたロッドの最終形状は、幾何学的プランニングのみを使用して予定された形状とはわずかに異なる。したがって、このシミュレーションプランニングを使用することによって、純粋な幾何学的プランニングと比較して過大に曲げられたいくつかの特定のロッド形状をシミュレートすることが可能であり、この2つの過大曲げされたロッドは、所望の幾何学的術後脊椎形状に非常に近くなる最終脊椎形状が得られるようにシミュレートされる。
【0023】
好ましい実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を備え、これらの特徴は別々に得ることも、または部分的に組み合わせるかもしくは完全に組み合わせてまとめて得ることもできる。
【0024】
脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分は、単一のシミュレーションループのみを含むことが好ましい。
【0025】
したがって、このプロセスは、より単純でより高速であるが、シミュレートされた過大曲げに関して得られる精度では、目標患者固有脊椎矯正ロッドインプラントに非常に近くなるのではなく単に近くなる場合がある最終移植後患者固有脊椎矯正ロッドインプラントが得られる。このプロセスは、より高速でより単純であるが、その代わり、シミュレートされた過大曲げに関する精度が低くなる。
【0026】
脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分は、少なくとも2回の反復シミュレーションループ、好ましくは少なくとも5回の反復シミュレーションループ、より好ましくは10回未満の反復シミュレーションループを含むことが好ましい。
【0027】
したがって、このプロセスは、わずかにより複雑でわずかにより時間がかかるが、シミュレートされた過大曲げに関して得られる精度では、目標患者固有脊椎矯正ロッドインプラントにより近い最終移植後患者固有脊椎矯正ロッドインプラントが得られる。このプロセスは、より時間がかかりより複雑であるが、有利なことにシミュレートされた過大曲げに関する精度が高くなる。
【0028】
反復シミュレーションループの回数は、目標脊椎矯正ロッドインプラント形状と中間脊椎矯正ロッドインプラント形状との間の差が所定のしきい値よりも小さいことを各シミュレーションループにおいて確認することによってシミュレーションループを実行する間に決定されることが好ましい。
【0029】
代替として、反復シミュレーションループの回数は、所定の反復シミュレーションループ回数であり、前記所定の反復シミュレーションループ回数は、患者脊椎側彎症の種類および/または患者脊椎側彎症の程度に依存することが好ましい。
【0030】
前記機械的相互作用モデリングは、前記結果的な過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラントを前記患者固有脊椎上に移植するとき、および前記移植後過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状を、移植後最終脊椎矯正ロッドインプラント形状になるように前記移植後過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状と前記患者固有脊椎との間の効果的な機械的相互作用によって修正するときに、前記移植後最終脊椎矯正ロッドインプラント形状が、第1のシミュレーションループからの前記中間脊椎矯正ロッドインプラント形状よりも前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状に近くなるように選択または構造化されることが好ましい。
【0031】
したがって、このことは、所与の機械的相互作用モデリングをより正確にし、必要に応じて、機械的相互作用モデリングの最終形状において、目標脊椎矯正ロッドインプラント形状の直接移植による移植後最終脊椎矯正ロッドインプラント形状よりも目標脊椎矯正ロッドインプラント形状に近い移植後最終脊椎矯正ロッドインプラント形状が得られるようにさらに最適化する助けになることがある。
【0032】
いくつかの公知の距離最小化方法を使用して、どの方法がより近くなるかが判定されてもよい。したがって、最小自乗距離が使用されると有利である。
【0033】
前記移植後最終脊椎矯正ロッドインプラント形状は、前記中間脊椎矯正ロッドインプラント形状よりも、少なくとも係数2、好ましくは少なくとも係数5、より好ましくは少なくとも係数10だけ前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状に近いことが好ましい。
【0034】
したがって、このことは、所与の機械的相互作用モデリングをより正確にし、必要に応じて、機械的相互作用モデリングの最終形状において、移植後最終脊椎矯正ロッドインプラント形状が目標脊椎矯正ロッドインプラント形状にずっと近くなるようにさらに最適化する助けになることがある。
【0035】
前記第2のシミュレーションステップでは、矢状面における前記脊椎矯正ロッドインプラント形状過大曲げは、第1のループについての、矢状面における前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状投影、またはその後のループについての、矢状面における前のループ投影による過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状と、矢状面における前記中間脊椎矯正ロッドインプラント形状投影との間の差であることが好ましい。
【0036】
したがって、精度は、少なくとも矢状面における製造後患者固有過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状について最適化される。
【0037】
前記第2のシミュレーションステップでは、冠状面における前記脊椎矯正ロッドインプラント形状過大曲げは、第1のループについての、冠状面における前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状投影またはその後のループについての、冠状面における前のループ投影による過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状と、冠状面における前記中間脊椎矯正ロッドインプラント形状投影との間の差であることが好ましい。
【0038】
したがって、精度は、少なくとも冠状面における製造後患者固有過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状について最適化される。
【0039】
前記第1のシミュレーションステップでは、前記機械的相互作用モデリングは、少なくとも矯正の前の患者固有脊椎の剛性と矯正の前の前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状と前記患者固有脊椎との間に存在する距離との両方を入力パラメータとして使用することが好ましい。
【0040】
したがって、機械的相互作用モデリングは、患者固有過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラントに対する患者脊椎のより正確にシミュレートされた反作用をもたらす。
【0041】
前記第1のシミュレーションステップでは、前記機械的相互作用モデリングは、少なくとも脊椎矯正ロッドインプラントの材料と脊椎矯正ロッドインプラントの断面の両方を入力パラメータとして使用することが好ましい。
【0042】
したがって、機械的相互作用モデリングは、患者固有過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラントの反作用の、患者固有過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラントに対するより正確にシミュレートされた効果をもたらす。
【0043】
前記第1のシミュレーションステップでは、前記機械的相互作用モデリングは、患者の椎骨と患者の椎骨上に取り付けられる脊椎支持インプラントの両方に使用され、前記脊椎矯正ロッドインプラントを支持する剛性の高い非変形体と、前記脊椎矯正ロッドインプラント用の1つまたは複数の変形体を一体化するハイブリッドモデルに基づくことが好ましい。
【0044】
したがって、機械的相互作用モデリングは、患者脊椎と患者固有過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラントとの間のシミュレートされた機械的相互作用に関してより現実的であり、したがって、この場合もより正確であり、より優れた最終結果が得られる。
【0045】
前記ハイブリッドモデルはまた、それぞれ脊椎支持インプラントの剛性の高い非変形体と前記脊椎矯正ロッドインプラントの変形体との間に位置する接触界面を一体化することが好ましい。
【0046】
したがって、機械的相互作用モデリングは、患者脊椎と患者固有過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラントとの間のシミュレートされた機械的相互作用に関してさらに現実的であり、したがって、さらに正確であり、さらに優れた最終結果が得られる。
【0047】
前記接触界面は、前記2つの物体間の接触が生じることになる結節において仮想ばねを含み、前記仮想ばねの剛性としては、前記2つの物体間の残存貫通力のみが得られるように十分に高い剛性であって、反復解決プロセスにおいて高い収束率が得られるように高過ぎない剛性が選択されることが好ましい。
【0048】
したがって、機械的相互作用モデリングは、患者脊椎と患者固有過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラントとの間のシミュレートされた機械的相互作用に関してさらに現実的であり、したがって、さらに正確であり、さらに優れた最終結果が得られる。
【0049】
脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分は、最後の第2のシミュレーションステップの完了後に、補足確認ステップであって、前記患者固有脊椎上への前記結果的な過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラントのシミュレートされた移植を行って、移植後過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラントを得る段階と、前記移植後過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状と前記患者固有脊椎との間のシミュレートされた機械的相互作用によって前記移植後過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状を修正して移植後最終脊椎矯正ロッドインプラント形状を得る段階と、前記移植後最終脊椎矯正ロッドインプラント形状と前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状との間の第1の差と前記中間脊椎矯正ロッドインプラント形状と前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状との間の第2の差を比較する段階と、前記移植後最終脊椎矯正ロッドインプラント形状が、前記中間脊椎矯正ロッドインプラント形状よりも、好ましくは少なくとも係数2、より好ましくは少なくとも係数5、さらに好ましくは少なくとも係数10だけ前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状に近いことの妥当性を確認する段階とを含む補足確認ステップを含むことが好ましい。
【0050】
通常、本発明による脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分は十分に正確であるので、この補助検査ステップを必要なステップとすべきではない。しかし、非常に特異的な患者脊椎の場合、または2つの患者脊椎3Dモデリング方法もしくは2つの機械的相互作用モデリング方法を所与の患者脊椎側彎症特定群について比較する場合、この補助検査ステップは選択を行うのを助けることができる。いずれにしても、結果を100%確実なものにすることができる。その理由は、そのような結果が直接測定されるものであるからである。
【0051】
前記推定ステップは、好ましくは前記推定ステップの開始時に実行される患者固有3D幾何学的モデリングの段階を含むことが好ましい。
【0052】
3D患者固有脊椎モデリングは、患者固有脊椎3D幾何学的モデリングによる第1のサブステップとして実行される。この患者固有脊椎3D幾何学的モデリングは、患者固有脊椎3D有限要素モデルの精度を高める。過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状は、患者固有、すなわち患者に対して個人化されたバイオメカニカル有限要素シミュレーションに基づく。これらのバイオメカニカルシミュレーションは、手術時に、脊椎矯正ロッドインプラント形状が受ける力に起因する脊椎矯正ロッドインプラント形状の変形を予想し、これらの力は主として、脊椎矯正ロッドインプラントが患者脊椎上に移植されたときに脊椎矯正ロッドインプラントによって加えられる矯正に対する患者脊椎の抵抗によって生じる。
【0053】
前記3D幾何学的モデリング段階は、正面患者固有脊椎X線画像と側面患者固有脊椎X線画像の両方を撮像する第1の動作と、前記正面患者固有脊椎X線画像と前記側面患者固有脊椎X線画像の両方から患者固有脊椎3D幾何学的モデルを生成する第2の動作とを備えることが好ましい。
【0054】
この患者固有脊椎3D幾何学的モデリングは、2つの正面および側面患者固有脊椎X線画像として、それぞれに異なる方向を提示する2つの患者固有脊椎X線画像のみに基づく場合、実施するのがより単純でより高速でより容易である。この患者固有脊椎3D幾何学的モデリングの精度は、この場合も良好であり、いずれかにしても十分である。
【0055】
前記推定ステップは、好ましくは前記推定ステップの途中で実施される患者固有脊椎3D有限要素モデリングの段階を含むことが好ましい。
【0056】
3D患者固有脊椎モデリングは、患者固有脊椎3D有限要素モデルによる第2のサブステップとして実施される。患者固有脊椎3D有限要素モデルを使用すると、後で機械的相互作用モデリングによって実施されるシミュレーションの精度が向上する。
【0057】
前記3D有限要素モデリング段階は、垂直撮像位置における患者脊椎を表す第1の患者固有脊椎3D有限要素モデルからシミュレートされた重力を減算し、水平手術実施位置における患者脊椎を表す第2の患者固有脊椎3D有限要素モデルを得る動作を含むことが好ましい。推定ステップのこの特定の減算シミュレーション段階は、それ自体で本発明の一般的な範囲外で請求することもできる。
【0058】
したがって、第2の患者固有脊椎3D有限要素モデルは、より現実的な状況に対応するので、第1の患者固有脊椎3D有限要素モデルよりも正確な最終結果をもたらす。第2の患者固有脊椎3D有限要素モデルがより現実的な状況に対応する理由は、手術の実施時には、患者は立位ではなく臥位であり、患者脊椎彎曲症に起因する変形は、立位と比較して臥位の方が低減されるからである。
【0059】
前記第1の患者固有脊椎3D有限要素モデルは患者固有脊椎3D幾何学的モデルから得られることが好ましい。
【0060】
3D患者固有脊椎モデリングは、患者固有脊椎3D有限要素モデルによる第2のサブステップとして実施される。この患者固有脊椎3D有限要素モデルは、患者固有脊椎3D幾何学的モデリングに基づく場合よりも正確になる。
【0061】
前記3D有限要素モデリング段階では、前記患者固有脊椎の前記3D有限要素モデリングは、1つまたは複数の椎体間ケージおよび/または1つまたは複数の骨切り術を含むことが好ましい。
【0062】
したがって、この患者固有脊椎3D有限要素モデルは、完全により現実的でより柔軟であり、これらの「二次」患者脊椎特異性も考慮に入れることを可能にし、それによって、この場合も最終結果の精度を高める。
【0063】
前記推定ステップは、好ましくは前記推定ステップの終了時に実施される患者固有脊椎矯正実現可能性評価の段階を含むことが好ましい。
【0064】
したがって、患者脊椎彎曲症が非常に重度である場合、および提案された矯正が非常に重度である場合、提案された矯正が低減されることがあり、それによって最終結果がそれほど良好なものではなくなるが、それによって、場合によっては患者固有脊椎矯正ロッドインプラントによって患者脊椎に対して加えられる力が大きすぎることに起因して患者脊椎の任意の椎骨が損傷または破壊される可能性が回避され、それによってある程度精度が失われることを犠牲にして安全性が向上する。推定ステップのこの特定の実現可能性段階は、それ自体で本発明の一般的な範囲外で請求することもできる。
【0065】
前記矯正実現可能性評価段階は、前記第2の患者固有脊椎3D有限要素モデルと理想的な目標である矯正後患者脊椎とを比較し、患者固有脊椎形状矯正および対応する目標脊椎矯正ロッドインプラントを得る第1の動作と、前記患者固有脊椎形状矯正の実現可能性を確認する第2の動作であって、前記目標脊椎矯正ロッドインプラントが前記患者固有脊椎上に移植されるときに患者固有脊椎の椎骨が互いに干渉しないことを少なくとも確認することによって、バイオメカニカル実現可能性を確認すること、および/または前記目標脊椎矯正ロッドインプラントが前記患者固有脊椎上に移植されるときに加えられる矯正力が、患者固有脊椎の椎骨が損傷するかまたは場合によっては破壊される可能性が無視できなくなる所定のしきい値を超えないことを少なくとも確認することによって矯正実現可能性を確認する第2の動作とを含むことが好ましい。
【0066】
バイオメカニカル実現可能性と矯正実現可能性の両方が確認され、それによって、予定された彎曲症矯正が完全に、第1に可能であり、第2に危険ではないことが保証される。
【0067】
前記患者固有脊椎形状矯正の実現可能性を確認する前記第2の動作は、前記患者固有脊椎によって前記目標脊椎矯正ロッドインプラントに対して加えられる力の基本的に線形の表現に基づくことが好ましい。
【0068】
前記患者固有脊椎によって前記目標脊椎矯正ロッドインプラントに対して加えられる力のこの基本的に線形の表現によって、矯正がより単純に実施され、一方、リスク評価に対して良好なレベルの精度が維持される。
【0069】
前記患者固有脊椎によって前記目標脊椎矯正ロッドインプラントに対して加えられる力の前記基本的に線形の表現は、ばねモデルに基づくことが好ましい。
【0070】
本発明によって提案されるプロセスでは、このばねモデルは、完全に効率的で単純に実現され実施される。
【0071】
ここで、このばねモデル実装形態に関するいくつかの利点および特定の特徴が与えられ、それによって矯正がより効率的に実施され、リスク評価における精度が高くなる。
【0072】
前記ばねモデルでは、各引張ばねが、患者固有脊椎の椎骨の中心に取り付けられた第1の端部と、目標脊椎矯正ロッドインプラント形状の対応する位置に取り付けられた第2の端部とを有することが好ましい。
【0073】
患者固有脊椎において矯正すべき椎骨間のそれぞれに異なる既存のずれがもしあれば、解消され、それによって、矯正すべきすべての椎骨に対して引張ばねによって加えられる初期力が同じになることが好ましい。
【0074】
前記目標脊椎矯正ロッドインプラント形状と前記患者固有脊椎形状との間に追加のねじりばねが実装され、患者固有脊椎に対する横断面における患者固有脊椎の椎骨の軸方向回転が矯正されることが好ましい。
【0075】
患者固有脊椎において矯正すべき椎骨間のそれぞれに異なる既存のずれがもしあれば解消され、それによって、矯正すべきすべての椎骨に対してねじりばねによって加えられる初期モーメントが同じになることが好ましい。
【0076】
前記機械的相互作用モデリングは、患者固有脊椎における脊椎矯正を必要とする椎間ユニットごとに剛性マトリクスを使用することが好ましい。
【0077】
したがって、表現の精度と実施の容易さとの間の実現される兼ね合わせが良好になる。
【0078】
患者脊椎に言及するとき、そのような患者脊椎は、「狭義の」脊椎だけでなく患者の脊椎および骨盤を包含してもよく、好ましくは「狭義の」脊椎だけでなく患者の脊椎および骨盤を包含する。
【0079】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下に列挙する添付の図面を参照しながら非制限的な例として与えられる本発明の実施形態についての以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】本発明の一実施形態による脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分の主要ステップのフローの一例を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態による脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分の推定ステップのフローの一例を概略的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態による2つの正面および側面患者固有脊椎X線画像の一例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態による患者固有3D幾何学的モデリングの段階の一例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態による患者固有3D有限要素モデリングの段階の一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態による、第1の患者固有脊椎3D有限要素モデルから第2の患者固有脊椎3D有限要素モデルにシミュレートされた重力を減算する動作の一例を概略的に示す図である。
図7A】本発明の一実施形態による、図6に示すシミュレートされた重力を減算する動作の前の、第2の患者固有脊椎3D有限要素モデルの患者固有脊椎正面図の比較例を示す図である。
図7B】本発明の一実施形態による、図6に示すシミュレートされた重力を減算する動作の後の、第2の患者固有脊椎3D有限要素モデルの患者固有脊椎正面図の比較例を示す図である。
図7C】本発明の一実施形態による図7Aおよび図7Bに示す第2の患者固有脊椎3D有限要素モデルの患者固有脊椎正面図の比較例間の比較結果を示す図である。
図8A】それぞれ、手術前の彎曲症を有する患者脊椎プロファイル、目標患者脊椎プロファイル、およびシミュレートされた矯正後患者脊椎プロファイルである患者固有脊椎側面プロファイルの例間の比較を示す図である。
図8B】ばねモデルによって表現された目標患者脊椎プロファイルの一例の概略側面図である。
図8C】ばねモデルによって表現されたシミュレートされた矯正後患者脊椎プロファイルの一例の概略側面図である。
図9A】手術前の彎曲症を有する患者脊椎の3D表現の一例の側面図である。
図9B図9Aの手術前の彎曲症を有する患者脊椎に対応する、関連する目標脊椎矯正ロッドインプラント形状を有する目標患者脊椎の3D表現の一例の側面図である。
図10A】関連する移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状を有する移植後患者脊椎の3D表現の一例の正面図である。
図10B】関連する移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状を有する移植後患者脊椎の3D表現の一例の側面図である。
図11】患者脊椎上への移植後に脊椎矯正ロッドインプラント形状の3D表現の一例の側面図である。
図12】この場合は過大曲げを伴わない、それぞれ患者脊椎上への移植前および患者脊椎上への移植後の、2つの脊椎矯正ロッドインプラント形状の2つの側面図間の比較を示す図である。
図13A】それぞれ目標脊椎矯正ロッドインプラント形状および患者脊椎上に移植する前の事前の過大曲げを伴わない移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状である2つの脊椎矯正ロッドインプラント形状間の矢状面における比較を示す図である。
図13B】それぞれ目標脊椎矯正ロッドインプラント形状および患者脊椎上に移植する前の事前の過大曲げを伴わない移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状である2つの脊椎矯正ロッドインプラント形状間の冠状面における比較を示す図である。
図14A】それぞれ目標脊椎矯正ロッドインプラント形状および事前の過大曲げを伴う移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状、ならびに患者脊椎上に移植する前の過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状である3つの脊椎矯正ロッドインプラント形状間の矢状面における比較を示す図である。
図14B】それぞれ目標脊椎矯正ロッドインプラント形状および事前の過大曲げを伴う移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状、ならびに患者脊椎上に移植する前の過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状である3つの脊椎矯正ロッドインプラント形状間の冠状面における比較を示す図である。
図15】本発明の一実施形態による脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分の反復シミュレーションループのフローの一例を概略的に示す図である。
図16図15の反復シミュレーションループのフローにおいて実行される計算の概要を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
特に詳細な説明については、矛盾がない限り以下の定義が使用される。
- ロッドは、患者の脊椎の変形を矯正するために、椎骨ねじと同様に脊椎インプラントに挿入される脊椎ロッドである。このロッドは、それぞれに異なる部分を有することができ、それぞれに異なる材料で作ることができる。
- 「術前に」は、手術の前、すなわち、ロッドが患者に設置される前の患者、ロッドなどの状態である。
- 「術後に」は、手術の後、すなわち、ロッドが患者に設置された後の患者、ロッドなどの状態である。
- 目標ロッドは、脊椎外科医が手術の後に、すなわち術後に取得したいロッドのジオメトリである。しかし、ロッドは、医師によって患者に設置されたときに変形するので、この場合の目標は、設置後に目標ロッドのジオメトリをもたらす、術前、すなわち、設置前のロッドのジオメトリを求めることである。目標ロッドは、簡略化されたシミュレーションプロセスを使用して脊椎の最適術後ジオメトリを定めることによって事前に定められる。この最適術後ジオメトリから目標ロッドのジオメトリが算出される。
- 術前過大曲げロッドは、設置後(術後)に目標ロッドのジオメトリをもたらすべきロッドのジオメトリ(術前)である。過大曲げという用語は、一般に、術後にある曲線を取得するために、術前ロッドは、後で手術時に受ける変形を補償するようにより顕著な湾曲を有するべきであるために、使用される。
- 術後シミュレートロッドは、術前過大曲げロッドの設置がシミュレートされた後に取得されるロッドのジオメトリである。このシミュレーションは、患者の脊椎および骨盤、脊椎インプラント、たとえばねじ、およびロッドの個人化されたバイオメカニカル有限要素モデルを使用して行われる。シミュレーションは、脊椎手術を模倣し、力学的法則に基づく数式を使用して、手術時に脊椎およびロッドに加えられる変形および力を算出する。
【0082】
図1は、本発明の一実施形態による脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分の主要ステップのフローの一例を概略的に示す。
【0083】
患者固有脊椎1から、患者固有脊椎矯正2が推定される。推定された患者固有脊椎矯正2から、目標ロッドインプラント形状3が推定される。機械的相互作用モデリング4は、患者固有脊椎1と推定された目標ロッドインプラント形状3の両方から、中間ロッドインプラント形状5をシミュレートする。推定された目標ロッドインプラント形状3およびシミュレートされた中間ロッドインプラント形状5から、差6が決定される。決定された差6から、ロッドインプラント過大曲げ7が決定される。決定されたロッドインプラント過大曲げ7から、結果的な過大曲げロッドインプラント形状8が決定される。本発明による脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分はここで終了することができる。
【0084】
代替として、結果的な過大曲げロッドインプラント形状8が決定された後、この決定された結果的な過大曲げロッドインプラント形状8は、目標ロッドインプラント形状3の代わりに機械的相互作用モデリング4に注入され、再び中間ロッドインプラント形状5が得られ、それによって再び差6が得られ、さらに再びロッドインプラント過大曲げ7が得られ、さらに再び結果的な過大曲げロッドインプラント8が得られ、それによってシミュレーションループ60がもう一度反復される。本発明による脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分は、ここで終了するか、またはこのシミュレーションループ60が所与の回数だけ反復された後に限り終了することができる。
【0085】
決定された結果的な過大曲げロッドインプラント形状8から、患者脊椎1上に移植すべき過大曲げロッドインプラント9を製造することができる。代替として、決定された結果的な過大曲げロッドインプラント形状8の代表的なファイルまたはテンプレートが、第1の位置において編集または製造され、次いで、患者脊椎1上に移植すべき実際の過大曲げロッドインプラント8を製造するための第2の位置へ送られてもよい。本発明による脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセスはここで終了することができる。
【0086】
その後、手術が行われてもよい。そのような手術は本特許出願の目的ではない。医師は、製造された過大曲げロッドインプラント9を患者脊椎1上に移植して移植後ロッドインプラント10を得てもよい。移植後ロッドインプラント10は、患者脊椎1との機械的相互作用11を受け、次いで最終移植後ロッドインプラント12になることがある。手術はここで終了することができる。代替として、この最終移植後ロッドインプラント12に対する測定を行って、第1のシミュレーションループから得られる中間ロッドインプラント形状5と比較し13、どちらが目標ロッドインプラント形状3により近いかを確認してもよい。もちろん、最終結果14としては、最終移植後ロッドインプラント12が、第1のシミュレーションループ60から得られる中間ロッドインプラント形状5よりも目標ロッドインプラント形状3に近く、好ましくはずっと近くなるものとする。このことが患者脊椎1の大部分に当てはまらない場合、プロセス全体が無意味である。代替として、すべての前の段階10~14を任意の追加の確認ステップ70においてまとめてシミュレートしグループ化してもよく、確認ステップ70は、過大曲げロッドインプラント9の製造後に行われ、このシミュレーションは、本発明を出願することによって追及する保護の範囲内に包含される。機械的相互作用モデリング4は、機械的相互作用11のシミュレーションを可能にする。
【0087】
図2は、本発明の一実施形態による脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分の推定ステップのフローの一例を概略的に示す。
【0088】
患者固有脊椎1の2枚のX線画像15、すなわち、それぞれに異なる方向のX線画像、好ましくは正面画像および側面画像15が撮像される。好ましくは既存の患者汎用3D幾何学的モデリングまたは既存の3Dアバターのいずれかを使用して、この2枚のX線画像15から3D幾何学的モデリング16が作成される。段階15と段階16はどちらも、図2に表された推定ステップ90に含まれる3D幾何学的モデリングサブステップ91においてグループ化される。
【0089】
第1の3D有限要素モデリング17は、この3D幾何学的モデリング16から作成される。重力減算シミュレーション18の段階がこの第1の3D有限要素モデリング17に対して実行され、第2の3D有限要素モデリング19が得られる。段階17~19は、推定ステップ90に含まれる3D有限要素モデリングサブステップ92においてグループ化される。
【0090】
第2の3D有限要素モデリング19と、かなり理想的または平均的な脊椎形状に対応する目標である目標患者脊椎20の両方から、患者脊椎矯正2が推定される。推定された患者脊椎矯正2から目標ロッドインプラント形状3が推定される。推定された目標ロッドインプラント形状3から、線形ばねモデルによる矯正の実現可能性の評価21が実行される。実現可能性が認められると見なされる場合、目標ロッドインプラント妥当性確認段階22が実施される。実現可能性が認められないと見なされる場合、段階22では目標ロッドインプラント形状3の妥当性を確認せず、最初の患者脊椎1との差を低減させることによってより野心的でない目標ロッドインプラント形状3が検討されるものとする。段階2、3、21、および22は、推定ステップ90に含まれる患者脊椎矯正実現可能性サブステップ92においてグループ化される。
【0091】
図3は、本発明の一実施形態による2つの正面および側面患者固有脊椎X線画像の一例を示す。
【0092】
患者の正面X線画像31は、冠状面における患者脊椎32を示す。患者の側面X線画像33は、矢状面における患者脊椎34を示す。
【0093】
図4は、本発明の一実施形態による患者固有3D幾何学的モデリングの段階の一例を示す。
【0094】
患者固有3D幾何学的モデリングは、患者固有正面X線画像31と患者固有側面X線画像33の両方から作成される。この患者固有3D幾何学的モデリングの冠状面における投影36が、正面X線画像35に重畳するように示されている。この患者固有3D幾何学的モデリングの矢状面における投影38が、側面X線画像37に重畳するように示されている。この患者固有3D幾何学的モデリングは、たとえば、患者固有3D幾何学的モデリングまたは場合によっては患者アバターを使用することによって、患者固有正面X線画像31と患者固有側面X線画像33の両方から作成される。
【0095】
図5は、本発明の一実施形態による患者固有3D有限要素モデリングの段階の一例を示す。
【0096】
第1の患者固有3D有限要素モデルは、患者固有3D幾何学的モデリングから作成される。この患者固有3D有限要素モデリングの正面図39が、この患者固有3D有限要素モデリングの側面図40の隣に示されている。この第1の患者固有3D有限要素モデルは、2つの異なる種類の計算、すなわち、患者脊椎自体が変形するときに患者脊椎において生じる力の計算、またはこの患者脊椎に外的な力が加えられたときの患者脊椎の変形の計算のいずれかを可能にする。
【0097】
図6は、本発明の一実施形態による、第1の患者固有脊椎3D有限要素モデルから第2の患者固有脊椎3D有限要素モデルへの、シミュレートされた重力の減算の動作の一例を概略的に示す。
【0098】
第2の患者固有3D有限要素モデルは、シミュレーションによって重力を減算することにより、第1の患者固有3D有限要素モデルから作成される。この重力減算シミュレーションは、患者脊椎を引き上げるかのように延ばす傾向がある。この第1の患者固有3D有限要素モデリングの正面図41に適用されるこの重力減算シミュレーションは、矢印42によって示されている。この第1の患者固有3D有限要素モデリングの側面図43に適用されるこの重力減算シミュレーションは、矢印44によって示されている。第1の患者固有3D有限要素モデリングは、X線画像が撮像されたときの患者の位置である立位の患者に対応する。第2の患者固有3D有限要素モデルは、患者脊椎彎曲症を治療するための手術が実施されるときの患者の位置である臥位の患者に対応する。
【0099】
図7Aおよび図7Bは、本発明の一実施形態による、それぞれ図6に示すシミュレートされた重力を減算する動作の前および後の、第2の患者固有脊3D有限要素モデルの患者固有脊椎正面図の比較例を示す。
【0100】
シミュレートされた重力を減算する動作の後の第2の患者固有脊椎3D有限要素モデルの正面図46は、シミュレートされた重力を減算する動作の後に、第2の患者固有脊椎3D有限要素モデルの正面図45よりも彎曲が小さくなりかつより高く延びる患者脊椎を示す。
【0101】
図7Cは、本発明の一実施形態による、図7Aおよび図7Bに示す第2の患者固有脊椎3D有限要素モデルの患者固有脊椎正面図の比較例間の比較結果を示す。
【0102】
重力減算シミュレーションの後の患者脊椎プロファイル48はすでに、重力減算シミュレーションの前の患者脊椎プロファイル47よりも冠状面における理想的な垂直患者脊椎にずっと近い。このことは、脊椎矯正ロッドインプラントが移植されたときに、臥位の患者脊椎が受ける変形は、立位の患者が受ける変形よりも限定されることを意味する。
【0103】
図8Aは、それぞれ手術の前の彎曲症を有する患者脊椎プロファイル、目標患者脊椎プロファイル、およびシミュレートされた矯正後患者脊椎プロファイルである患者固有脊椎側面プロファイルの例間の比較を示す。
【0104】
患者固有脊椎は、手術前の彎曲症を有するプロファイル49を示す。この彎曲症を矯正するために、目標患者脊椎プロファイル50が予定される。脊椎矯正ロッドインプラントをこの目標患者脊椎プロファイル50に到達するように移植すると、患者脊椎の抵抗および対抗力に起因して、矯正後患者脊椎プロファイル51のみに到達することができる。矯正後患者脊椎プロファイル51は、彎曲症をかなり矯正し、手術前の彎曲症を有するプロファイル49よりも目標患者脊椎プロファイル50に著しく近いが、矯正後患者脊椎プロファイル51と目標患者脊椎プロファイル50との間の残差は無視できるものとはほど遠い。
【0105】
図8Bは、ばねモデルによって表された目標患者脊椎プロファイルの一例の側面図を概略的に示す。
【0106】
目標患者脊椎プロファイル53と手術前の彎曲症を有する患者脊椎52との間に、互いに垂直方向に一定の間隔をおいて配置された仮想水平ばね54が移植され、各仮想ばね54は、手術前の彎曲症を有する患者脊椎52の椎骨の中央と目標患者脊椎プロファイル53の対応する点を連結する。仮想ばね54は、次の図8Cに示されるように患者脊椎を目標患者脊椎プロファイル53により近くなるように変形させやすい力Fspringを患者脊椎に加える。
【0107】
図8Cは、ばねモデルによって表されたシミュレートされた矯正後患者脊椎プロファイルの一例の側面図を概略的に示す。
【0108】
仮想ばねがその力を加えた後、患者脊椎56は変形され、無視できない差が残っているとしても目標患者脊椎プロファイル55により近くなっている。患者脊椎56のこの変形の間、2つの点が確認される。第1の点は、別の椎骨と相互貫通する椎骨がないことであり、第2の点は、各椎骨に加えられる力が、そのような椎骨を損傷するかまたは場合によっては破壊する恐れのある所定のしきい値を超えないことである。バイオメカニカルモデルとして使用されるこのばねモデルは、目標脊椎矯正ロッドインプラント形状が、第1に実現可能でありならびに生理的なものであり、第2にこの形状を取得するのに必要な力が安全なものであることをより容易に確認する助けになる。
【0109】
図9Aは、手術前の彎曲症を有する患者脊椎の3D表現の一例の側面図を示す。
【0110】
手術前の彎曲症を有するこの患者脊椎57は、椎骨T1とT12の間の角度が48度である過剰な後彎症を示し、ならびに椎骨L1と仙骨板S1との間の角度が67度である過剰な前彎症を示す。
【0111】
図9Bは、図9Aの手術前の彎曲症を有する患者脊椎に対応する、関連する目標脊椎矯正ロッドインプラント形状を有する目標患者脊椎の3D表現の一例の側面図を示す。
【0112】
目標脊椎矯正ロッドインプラント形状59が目標患者脊椎58上に移植された後、この目標患者脊椎58は、30度に抑制された後彎症、ならびに55度に抑制された前彎症を示す。
【0113】
図10Aは、関連する移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状を有する移植後患者脊椎の3D表現の一例の正面図を示す。
【0114】
2つのロッドインプラント62および63が、脊椎インプラント64上に取り付けられることによって患者脊椎61の後部上に移植され、脊椎インプラント64は実際には、患者脊椎61内にねじ込まれるねじ64のヘッドである。
【0115】
図10Bは、関連する移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状を有する移植後患者脊椎の3D表現の一例の側面図を示す。
【0116】
2つのロッドインプラント62および63の一方のみ、ここではロッドインプラント62は、図10Bを見るとわかるように、脊椎インプラント64上に取り付けられ、さらに患者脊椎61内に固定されることによって患者脊椎61の後部上に移植される。
【0117】
図11は、患者脊椎上への移植後の、脊椎矯正ロッドインプラント形状の3D表現の一例の側面図を示す。
【0118】
患者脊椎上への移植時の移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状65がシミュレートされている。これは3D移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状65であることが好ましい。
【0119】
図12は、この場合は過大曲げを伴わない、それぞれ患者脊椎上に移植する前および患者脊椎上に移植した後の、2つの脊椎矯正ロッドインプラント形状の2つの側面図間の比較を示す。
【0120】
したがって、術前ロッドインプラント形状66、この場合は目標脊椎矯正ロッドインプラント形状は、患者脊椎上に移植されるとき、患者脊椎プロファイルを矯正しようとするとき、変形された患者脊椎の対抗力を受けたときに、術前ロッドインプラント形状66とは異なる変形術後ロッドインプラント形状67になる。1つまたは複数回のシミュレーションループ、好ましくは反復シミュレーションループによって術前ロッドインプラント形状66が修正され、それによって、患者脊椎上への移植時に、術後ロッドインプラント形状67が目標脊椎矯正ロッドインプラント形状と一致する。
【0121】
図13Aは、それぞれ目標脊椎矯正ロッドインプラント形状および患者脊椎上に移植する前の事前の過大曲げを伴わない移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状である2つの脊椎矯正ロッドインプラント形状間の矢状面における比較を示す。
【0122】
矢状面では、非過大曲げ目標脊椎矯正ロッドインプラント形状68と移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状69の間の差が視認できる。この差は、反復シミュレーションループによって矯正されることになり、それによって、最後のシミュレーションループの後に、目標脊椎矯正ロッドインプラント形状と移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状が可能な限り近く一致し、好ましくは事実上重畳し、それによって、バランスの取れた移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状が得られることがある。
【0123】
図13Bは、それぞれ目標脊椎矯正ロッドインプラント形状および患者脊椎上に移植する前の事前の過大曲げを伴わない移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状である2つの脊椎矯正ロッドインプラント形状間の冠状面における比較を示す。
【0124】
冠状面では、非過大曲げ目標脊椎矯正ロッドインプラント形状71と移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状72の間の差も視認できる。この差は、反復シミュレーションループによって矯正されることになり、それによって、最後のシミュレーションループの後に、目標脊椎矯正ロッドインプラント形状と移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状が可能な限り近く一致し、好ましくは事実上重畳し、それによって、まっすぐな移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状が得られることがある。
【0125】
図14Aは、それぞれ目標脊椎矯正ロッドインプラント形状および事前の過大曲げを伴う移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状、ならびに患者脊椎上に移植する前の過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状である3つの脊椎矯正ロッドインプラント形状間の矢状面における比較を示す。
【0126】
矢状面では、術前過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状75は目標脊椎矯正ロッドインプラント形状73に対して明確に過大曲げされ、それによって、この術前過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状75が患者脊椎上に移植されたときに、平衡状態において、術後最終移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状74が目標脊椎矯正ロッドインプラント形状73にほぼ一致し、この場合は実際に重畳され、それによって、矢状面において術後のバランスの取れた移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状74が得られる。
【0127】
図14Bは、それぞれ目標脊椎矯正ロッドインプラント形状および事前の過大曲げを伴う移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状、ならびに患者脊椎上に移植する前の過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状である3つの脊椎矯正ロッドインプラント形状間の冠状面における比較を示す。
【0128】
冠状面では、術前過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状78は目標脊椎矯正ロッドインプラント形状76に対して明確に過大曲げされ、それによって、この術前過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状78が患者脊椎上に移植されたときに、平衡状態において、術後最終移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状77が目標脊椎矯正ロッドインプラント形状76にほぼ一致し、この場合は実際に重畳され、それによって、冠状面において術後のまっすぐな移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状76が得られる。
【0129】
図15は、本発明の一実施形態による脊椎矯正ロッドインプラント製造プロセス部分の反復シミュレーションループのフローの一例を概略的に示す。
【0130】
前の段階において定められた目標ロッドのジオメトリを術後にもたらす過大曲げ術前ロッドのジオメトリを求めることを目的とする反復最適化プロセス。この反復最適化プロセスは、n回反復することができ、各反復が4つの段階81~84のフローを含む。
【0131】
術前過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状を算出する第1の段階81が実行される。第1のシミュレーションループでは、この術前過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状が目標脊椎矯正ロッドインプラント形状に対応するものとして選択される。その後の反復シミュレーションループでは、前のシミュレーションループから得られる最後の第4の段階84における最後の算出された差を表す最後の過大曲げを、前のシミュレーションループから得られる最後の第1の段階81において算出された以前の術前過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状に適用することによって、この術前過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状が決定される。
【0132】
第1の段階81の間、過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状のジオメトリの計算が実行される。第1の反復n=0では、過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状のジオメトリは目標脊椎矯正ロッドインプラント形状のジオメトリに等しく、G0=Gtargetが成立し、この場合、nは1以上であり、過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状のジオメトリは以下の数式に従って定められる。
【0133】
Gn=Gn-1n-1n-1、ここで、Gnは、反復nにおける過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状のジオメトリであり、Gn-1は、反復n-1における過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状のジオメトリであり、Δnは、術後シミュレートされた脊椎矯正ロッドインプラント形状のジオメトリと目標脊椎矯正ロッドインプラント形状のジオメトリとの間の反復nにおける増分差であり、λnは、好ましくはすべての反復について同一である、反復nについての所定のスケーリングファクタである。
【0134】
脊椎矯正ロッドインプラント設置のバイオメカニカルシミュレーションの第2の段階82が実行され、それによって術前脊椎矯正ロッドインプラントと患者脊椎との間の機械的相互作用がシミュレートされ、それによって、患者脊椎上への脊椎矯正ロッドインプラントの移植85が行われる。
【0135】
第2の段階82の間に、過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント設置のバイオメカニカルシミュレーションが実行される。このシミュレーションは、患者の脊椎および骨盤、脊椎インプラント、たとえばねじ、およびロッドの個人化されたバイオメカニカル有限要素モデルを使用して行われる。このシミュレーションは、脊椎手術を模倣し、ロッドインプラントと患者脊椎との間の機械的相互作用を表す力学的法則に基づく数式を使用して、手術時に患者脊椎およびロッドインプラントに加えられる変形および力を算出する。
【0136】
第2の段階82の間、脊椎手術を模倣するために使用されるこのバイオメカニカルモデルは、脊椎手術のシミュレーションについての文献においてすでに記載された方法の各部の組合せを使用し、椎骨、骨盤、脊椎インプラントのような要素用の、剛性の高い非変形体と、ロッドインプラント用の変形体とで作られたハイブリッドモデルが得られる。これによって、計算時間がかなり短い時間に抑えられ、収束率が非常に良好になる。脊椎矯正ロッドインプラントの脊椎インプラントへの取付けをシミュレートするために、たとえば椎骨ねじが、純粋な変位または力を適用することによって場合によっては適切にモデル化することができる。しかし、本発明によるプロセスは、そのようなモデリングに接触界面を使用することが好ましい。接触界面は、従来技術でもそのように呼ばれ、この場合、脊椎矯正ロッドインプラントをすべての脊椎インプラントに挿入し、かつそれを実行しつつ非常に良好な収束率および非常に合理的な計算時間を得るには脊椎矯正ロッドインプラントにどんな力を加えるべきかを自動的に算出するのを可能にする。
【0137】
3D有限要素シミュレーションの間、各々が剛性が高いかまたは変形可能である2つの物体の間の接触をモデル化することを目的とする特定の種類の要素である接触界面は、この2つの物体の接触が生じる結節において「仮想ばね」を作成することによってこの2つの物体が互いに相互貫通するのを妨げる。これらの「仮想ばね」は、この2つの物体間の過剰な貫通を防止する「接触界面力」を発生させる。理想的には、これらの仮想ばねは、無限剛性を有し、この2つの物体間の貫通を絶対的に生じさせない(0mm)べきである。しかし、無限剛性は、非線形数式を解くことによって平衡状態を求めようとする反復解決プロセスにおいて分岐を生じさせる。したがって、接触界面の接触剛性は、収束解を取得し、同時にこの2つの物体間の残差貫通を許容されるものにするように十分に高いが同時に高過ぎない有限値に調整される。
【0138】
術後脊椎矯正ロッドインプラントになるように移植されたときの術前脊椎矯正ロッドインプラントの変形ジオメトリを評価する第3の段階83が実行され、それによって移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状86が得られる。
【0139】
第3の段階83の間に、前述のシミュレーションに基づいて、設置されバランスが取られた後の、したがって術後の、過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状の変形ジオメトリGpostの計算が実行される。
【0140】
一方ではシミュレートされた術後脊椎矯正ロッドインプラント形状と他方では目標脊椎矯正ロッドインプラント形状との間の差を計算する第4の段階84が実行され、それによって、シミュレートされた術後脊椎矯正ロッドインプラント形状と目標脊椎矯正ロッドインプラント形状との一致が確認され、終了条件88が満たされるかどうかが決定される。条件が満たされる場合、術後過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状は、最後のシミュレーションループの最後の第1の段階81において得られた最後の術後過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状になる。条件が満たされない場合、追加のシミュレーションループが再び第1の段階81から開始される。
【0141】
第4の段階84の間、シミュレーションループnにおいて、シミュレートされた術後脊椎矯正ロッドインプラント形状のジオメトリと目標術後脊椎矯正ロッドインプラント形状のジオメトリGtargetとの間の差Δnの計算が実行される。したがって、次式が得られる。
Δn=Gpost-Gtarget
【0142】
Δnが、好ましくは事前に定められた反復プロセスの終了基準以下である場合、反復プロセスは停止し、反復nにおける過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状のジオメトリGnは、最適過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状のジオメトリと見なされる。
【0143】
逆に、Δnが反復プロセスの終了基準を超えている場合、反復プロセスは継続し、新しい反復n+1が生じる。この新しい反復n+1では、試験された過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状のジオメトリはGn+1=Gnnnになる。ここで、λnは、好ましくはすべての反復について同一である差Δnのスケーリングファクタである。
【0144】
図16は、図15の反復シミュレーションループのフローにおいて実行される計算の概要を概略的に示す。
【0145】
n=0についてG0=Gtargetを得ることによって初期設定段階94が実行される。
【0146】
次いで、次式が得られるように術後シミュレーション段階95が実行される。
【0147】
GPn=術後(Gn)、すなわち、シミュレートされた移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状の術後ジオメトリが、患者脊椎および過大曲げ術前脊椎矯正ロッドインプラントの機械的相互作用から得られる。
【0148】
次いで、差計算96段階が行われ、過大曲げ術前脊椎矯正ロッドインプラント形状GPnと目標脊椎矯正ロッドインプラント形状G0との間の差Δnが算出され、以下の数式Δn=GPn-G0が得られる。
【0149】
次いで、この差Δnの絶対値と所定のしきい値εを比較する段階97が行われる。この差Δnの絶対値が前記所定のしきい値εよりも小さい場合、ジオメトリGnは過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状について維持される。逆に、この差Δnの絶対値が前記所定のしきい値εを超える場合、シミュレーションループの別の反復が生じ、nがn+1になり、再びシミュレーション段階95から開始される。
【0150】
本発明について好ましい実施形態を参照しながら説明した。しかし、本発明の範囲内の多数の変形が可能である。
【符号の説明】
【0151】
1 患者固有脊椎
2 患者固有脊椎矯正
3 目標ロッドインプラント形状
4 機械的相互作用モデリング
5 中間ロッドインプラント形状
6 差
7 ロッドインプラント過大曲げ
8 過大曲げロッドインプラント形状
9 過大曲げロッドインプラント
10 移植後ロッドインプラント
11 機械的相互作用
12 最終移植後ロッドインプラント
13 比較
14 最終結果
15 X線画像
16 3D幾何学的モデリング
17 第1の3D有限要素モデリング
18 重力減算シミュレーション
19 第2の3D有限要素モデリング
20 目標である目標患者脊椎
21 評価
22 目標ロッドインプラント妥当性確認段階
31 正面X線画像
32 患者脊椎
33 側面X線画像
34 患者脊椎
35 正面X線画像
36 投影
37 側面X線画像
38 投影
39 正面図
40 側面図
41 正面図
42 矢印
43 側面図
44 矢印
45 正面図
46 正面図
47 患者脊椎プロファイル
48 患者脊椎プロファイル
49 プロファイル
50 目標患者脊椎矯プロファイル
51 矯正後患者脊椎プロファイル
52 患者脊椎
53 目標患者脊椎プロファイル
54 仮想ばね
55 目標患者脊椎プロファイル
56 患者脊椎
57 患者脊椎
58 目標患者脊椎
59 目標脊椎矯正ロッドインプラント形状
60 シミュレーションループ
61 患者脊椎
62、63 ロッドインプラント
64 脊椎インプラント
65 移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状
66 術前ロッドインプラント形状
67 術後ロッドインプラント形状
68 非過大曲げ目標脊椎矯正ロッドインプラント形状
69 移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状
70 追加の確認ステップ
71 非過大曲げ目標脊椎矯正ロッドインプラント形状
72 移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状
73 目標脊椎矯正ロッドインプラント形状
74 術後最終移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状
75 術前過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状
76 目標脊椎矯正ロッドインプラント形状
77 術後最終移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状
78 術前過大曲げ脊椎矯正ロッドインプラント形状
81 第1の段階
82 第2の段階
83 第3の段階
84 第4の段階
85 脊椎矯正ロッドインプラント移植
86 移植後脊椎矯正ロッドインプラント形状
88 終了条件
90 推定ステップ
91 3D幾何学的モデリングサブステップ
92 3D有限要素モデリングサブステップ
94 初期設定段階
95 術後シミュレーション段階
96 差計算
97 比較段階
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16