(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】複数の凝固デバイスを用いて積層造形によって物体を製造する方法、当該方法を実行するように構成されたデータ処理ユニットおよび装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20230220BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20230220BHJP
B22F 10/85 20210101ALI20230220BHJP
B22F 12/45 20210101ALI20230220BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20230220BHJP
B29C 64/277 20170101ALI20230220BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230220BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230220BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20230220BHJP
【FI】
B29C64/393
B22F10/28
B22F10/85
B22F12/45
B29C64/153
B29C64/277
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2020544319
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(86)【国際出願番号】 NL2018050733
(87)【国際公開番号】W WO2019093883
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-09-17
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】517182527
【氏名又は名称】アディティブ インダストリーズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ラマエカース、ミヒル、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】オフェルデース、フランク、エウゲニウス、バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】プールスマ、サンドラ、スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェース、マーク ヘルマン エルス
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-527101(JP,A)
【文献】特開2019-077943(JP,A)
【文献】特開2015-199195(JP,A)
【文献】特開2017-020081(JP,A)
【文献】特開2010-265521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B28B 1/30
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射を使って積層内で材料を凝固するための複数の凝固デバイスを用いて、積層造形によって材料から物体を製造する方法であって、
-データ処理ユニットにより、少なくとも2つの凝固デバイス配分を定義するステップを備え、
前記凝固デバイス配分の各々において、前記複数の凝固デバイスは
層のそれぞれのパートに配分され、これにより前記パートが前記層をカバーし、
前記少なくとも2つの凝固デバイス配分は互いに異なっており、
-前記データ処理ユニットにより、前記少なくとも2つの凝固デバイス配分の各々に関し、それぞれの配分されたパートの製造時間を計算するステップを備え、
前記配分されたパートの製造時間は、前記複数の凝固デバイスの各々に関し、配分された前記層のそれぞれのパートを凝固するための時間を表し、
前記配分されたパートの製造時間を計算するステップは、前記複数の凝固デバイスの1つを用いて前記材料を凝固するときの障害となる予想障害領域を考慮に入れ、
前記障害領域は、少なくとも予想される煙および/または前記層上の煙の飛散に関し、
-前記データ処理ユニットにより、前記少なくとも2つの凝固デバイス配分の各々に関し、それぞれの層の製造スループット時間を決定するステップを備え、
前記層の製造スループット時間のそれぞれは、前記層に関し配分されたパートの製造時間の最長時間に一致し、
-前記データ処理ユニットにより、前記決定された層の製造スループット時間に基づいて、前記複数の凝固デバイスの確定配分を選択するステップと、前記複数の凝固デバイスで前記層を製造するために、前記確定配分を使用するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記データ処理ユニットにより、前記配分を定義するステップと、前記配分されたパートの製造時間を計算するステップと、前記製造スループット時間を決定するステップとを少なくとも1回繰り返すことにより、前記層の製造スループット時間を最適化するステップを備え、
繰り返された前記配分を定義するステップにおいて、前記製造スループット時間を決定するステップで取得された情報が使われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記層の製造スループット時間を最適化するステップは、
製造スループット時間を短縮するために、少なくとも2つの決定された層の
最短製造スループット時間に関する情報同士を組み合わせるステップを備えることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記情報は、少なくとも1つの層の最短製造スループット時間に関する情報を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記決定された層の製造スループット時間を少なくとも2つのグループに割り当てるステップと、
計算回数を減らすため、前記少なくとも2つのグループのうちの1つの中にある少なくとも1つの層の最短製造スループット時間に関する情報と、前記少なくとも2つのグループのうちの別の1つの中にある少なくとも1つの層の最短製造スループット時間に関する情報とを組み合わせるステップと
を備えることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記情報は、少なくともそれぞれの凝固デバイス配分に関する情報を含むことを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記複数の凝固デバイスは電磁放射のビームを放射するように構成され、
前記配分されたパートの製造時間を計算するステップの実行において、前記配分されたパートの製造時間を計算するステップは、
-前記電磁放射のビームの波長
-前記層の電磁放射のビームの
形状
-前記電磁放射のビームのパワーレベル
-前記電磁放射のビームの前述の層に沿った速度
の少なくとも1つを考慮に入れることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記配分を定義するステップの実行において、前記層の前記パートは少なくとも部分的には重なっていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記配分を定義するステップの実行において、前記層は、製造される物体の外部層に相当する前記層の輪郭を含む輪郭パートと、充填パートとに分割されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記配分を定義するステップ、前記配分されたパートの製造時間を計算するステップ、前記製造スループット時間を決定するステップおよび確定配分を選択するステップは、前記積層の少なくとも2つの層に関して実行されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の方法を実行するように構成されたデータ処理ユニット。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載の方法を用いて、積層造形によって材料から物体を製造する装置であって、
-ビルドプレートのビルド表面上で前記材料の槽を受けるプロセスチェンバと、
-前記ビルドプレートを、前記プロセスチェンバ内で前記材料の槽の表面レベルに関連付けて位置づける支持具と、
-前記材料を凝固するために電磁放射の複数のビームを伝えるように構成された複数の凝固デバイスと、
-請求項11に記載のデータ処理ユニットと
を備えることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形を用いて物体を製造する方法に関し、特に、電磁放射への露出によって凝固可能な材料の槽を受けるプロセスチェンバと、物体を材料の槽の表面レベルに関係付けて配置する支持具と、電磁放射を用いて、材料の層を表面レベルで凝固させる凝固デバイスと、を備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンティングまたは積層造形とは、3次元物体をプリントするための任意の様々な処理のことをいう。射出成形などの従来技術は、例えば大量のポリマー製品を廉価に製造することができる。しかしながら3次元物体を比較的少量生産する場合は、3Dプリンティングまたは積層造形を用いることにより、より高速、柔軟、安価で製造することができる。
【0003】
積層造形は、将来さらに重要となると考えられる。なぜなら製造会社は、一定の高品質を保ちながら製品製造の経済化を実現することのみならず、製品開発の分野における時間とコストの節約に関しても、一層強い圧力を競争相手から受けるからである。また製品の寿命は常に短縮化されている。製品の成功には、品質とコストに加えて、市場導入のタイミングがますます重要になってきている。
【0004】
3D物体を製造する目的で粉末又は液体の材料を選択的に凝固するために向き付けられたエネルギービームを用いて、3次元物体を製造することができる。特に、所望のデザインを層ごとに形成するためにコンピュータ制御された積層造形装置を用いて、複数の層を連続的に凝固することができる。主にコンピュータ制御の下で積層処理が使われ、材料の連続層が積層される。これらの物体は、3Dモデルその他の電子データのソースから製造され、ほぼ任意の形または形状にすることができる。
【0005】
3次元物体をプリントするためには、コンピュータデザインパッケージや3Dスキャナーなどにより、プリント可能なモデルを作成する必要がある。通常入力は、STLファイル、STEPファイルまたはIGSファイルなどの3D-CADファイルである。CADファイルから物体をプリントする前に、ファイルはソフトウェアで処理される必要がある。このソフトウェアは、モデルを一連の薄い層に変換する。さらにこれらの層の各々の作成を制御するための装置の設定とベクトルが生成される。
【0006】
連続断面から3D物体を形成することを目的に、液体状、粉末状またはシート状の材料の連続層を積層するために、コンピュータ制御の積層造形装置に備えられるレーザが、これらの装置の設定とベクトルに続く。最終的な3D物体を製造するために、このプロセス中、CADモデルからの仮想的な断面に相当するこれらの層が同時に結合または融合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
3次元物体、特に積層造形を用いて金属物体を製造するときの課題の1つは、いかに効率的にCADファイルを薄い連続層に処理するかと、積層造形処理において複数の凝固デバイスが使われる場合、この連続層の形成を制御するための機器とベクターの設定をいかに効率的に行うかにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために本発明は、電磁放射を使って積層内で材料を凝固するための複数の凝固デバイスを用いて、積層造形によって材料から物体を製造するための改良された方法を与える。
【0009】
本発明によれば、この方法は、
-データ処理ユニットにより、少なくとも2つの凝固デバイス配分を定義するステップを備え、
凝固デバイス配分の各々において、複数の凝固デバイスは層のそれぞれのパートに配分され、これによりパートが層をカバーし、
少なくとも2つの凝固デバイス配分は互いに異なっており、
-データ処理ユニットにより、少なくとも2つの凝固デバイス配分の各々に関し、それぞれの配分されたパートの製造時間を計算するステップを備え、
配分されたパートの製造時間は、複数の凝固デバイスの各々に関し、配分された層のそれぞれのパートを凝固するための時間を表し、
配分されたパートの製造時間を計算するステップは、複数の凝固デバイスの1つを用いて材料を凝固するときの障害となる予想障害領域を考慮に入れ、
障害領域は、少なくとも予想される煙および/または層上の煙の飛散に関し、
-データ処理ユニットにより、少なくとも2つの凝固デバイス配分の各々に関し、それぞれの層の製造スループット時間を決定するステップを備え、
層の製造スループット時間のそれぞれは、層に関し配分されたパートの製造時間の最長時間に一致し、
-データ処理ユニットにより、決定された層の製造スループット時間に基づいて、複数の凝固デバイスの確定配分を選択するステップと、複数の凝固デバイスで層を製造するために、確定配分を使用するステップと
を備える。
【0010】
従って本発明によれば、本方法は、少なくとも2つの互いに異なる凝固配分を定義する。第1の凝固配分では、複数の凝固デバイスはそれぞれ、層を製造するために層のパートに割り当てられる。第2の凝固配分では、複数の凝固デバイスはまたそれぞれ、層を製造するために層のパートに割り当てられる。しかしながら、第1の凝固配分のパートの割り当ては、第2の凝固配分のパートの割り当てと異なる。
【0011】
次のステップでデータ処理ユニットは、前述の少なくとも2つの凝固デバイス配分の各々に関し、それぞれの配分されたパートの製造時間を計算する。配分されたパートの製造時間は、複数の凝固デバイスの各々に関し、配分された層のそれぞれのパートを凝固するための時間を表す。従って層を製造するのに必要な時間が、凝固デバイス配分の各々に関して計算される。配分されたパートの製造時間を計算するステップは、複数の凝固デバイスの1つを用いて材料を凝固するときの障害となる予想障害領域を考慮に入れる。この障害領域は、少なくとも予想される煙および/または層上の煙の飛散に関する。煙は例えば、積層造形において使われる材料の気化に関する。飛散は例えば、材料のスパッタおよび電磁放射と粉末化された材料との相互作用領域で飛び散った粉末に関する。
最終製造物に飛散が含まれることは望ましくない。なぜなら物体の欠陥につながるからである。これらの飛散は電磁放射から遠く離れたところに落ちることはなく、これらの飛散が飛ぶ方向はコンピュータモデルによって予測可能であり、データ処理ユニットで考慮できることが分かった。
【0012】
次のステップでデータ処理ユニットは、少なくとも2つの凝固デバイス配分の各々に関し、それぞれの層の製造スループット時間を決定する。これは、複数の凝固デバイスの1つがジョブを完了するのに必要な最長時間に相当する。また凝固デバイスの各々がジョブを完了するのに必要な最長時間は、アクティブな時間(凝固を実行している時間)とアクティブでない時間(待ち時間)を含むことを意味する。この最長時間は、それぞれの層を完了するのに要する時間を決定する。
【0013】
最後に本発明に係る方法は、データ処理ユニットが、決定された層の製造スループット時間に基づいて、複数の凝固デバイスの確定配分を選択し、複数の凝固デバイスで層を製造するために、確定配分を使用することを必要とする。これは通常は、連続する層の製造スループット時間が互いに比較され、確定配分として最短時間が選択されることを意味する。しかしながら前述の選択は、他のおよび/またはさらなる基準に基づく選択を含んでもよい。例えば選択は、製造時間、煙の相互作用および/または飛散の相互作用を含む最適化に基づいてもよい。究極的に積層造形プロセスにおいてすべての境界条件を満足することは難しい。これは最適化が原因で、ある望まれない効果(例えば煙および/または飛散)を防止したとき、別のマイナス効果(たとえば製造時間の増加)が発生することを意味する。これは確定配分として、必ずしも最短製造スループット時間が選択されるとは限らないことを意味する。
【0014】
本発明に係る方法で、処理および製造の装置設定および複数の凝固デバイスを用いて連続する層の生成を制御するためのベクターは、改善され最適化される。これは、複数の配分の生成に起因し、また積層造形中の煙の生成が考慮されるという事実に起因する。これにより、製造プロセスの効率とスピードとが改善される。これにより本発明の目的が達成される。
【0015】
本方法の利点を以下で説明する。
【0016】
ある実施の形態では本方法は、データ処理ユニットにより、配分を定義するステップと、配分されたパートの製造時間を計算するステップと、製造スループット時間を決定するステップとを少なくとも1回繰り返すことにより、層の製造スループット時間を最適化するステップを備える。繰り返された配分を定義するステップにおいて、製造スループット時間を決定するステップで取得された情報が使われる。従ってさらなる凝固デバイス配分を定義するために、第1の定義に関する情報およびその結果計算されたスループット時間が使われてよい。このように製造スループット時間をさらに短縮する目的で、新たな凝固デバイス配分を定義するために、相対的に短い製造スループット時間を持つ凝固デバイス配分に関する情報が使われてよい。
【0017】
層の製造スループット時間を最適化するステップは、少なくとも2つの決定された層の製造スループット時間に関する情報を組み合わせるステップを備えてよい。これは例えば、第1の凝固デバイス配分が第2の凝固デバイス配分からの情報と組み合わされてよいことを意味する。ある実施の形態では、新たな凝固デバイス配分を定義するために、前述の2つの製造スループット時間に関する凝固デバイスの配分が組み合わされてよい。その後、それぞれの製造スループット時間が計算され決定されてよい。これにより製造スループット時間が改善される場合は、さらなる最適化ステップが実行されてよい。そうでない場合は、異なる情報を組み合わせることにより新たな最適化ステップが実行されてよい。
【0018】
前述の情報は、少なくとも1つの層の最短製造スループット時間に関する情報を備えてよい。層の最短製造スループット時間に関する情報を組み合わせることにより、さらなる製造スループット時間の改善(すなわち短縮化)が実現できることが分かる。しかしながら積層造形の複雑さや積層造形に含まれるパラメータなどのため、これは必ずしもあてはまらない。
【0019】
最適化は、所望の閾値が得られるまで実行されてよい。しかしながら、最適化ステップが収束解となるとは限らない。実際最適化ステップは、製造スループット時間より悪い(すなわち製造スループット時間が長くなる)解となることもある。もちろん定義と計算を無限に繰り返すことにより最適解が得られるが、これは有益ではない。
【0020】
計算回数をさらに減らし、最適化プロセスをさらに増やすため、以下のステップが実行されてよい。すなわち本方法は、決定された層の製造スループット時間を少なくとも2つのグループに割り当てるステップと、 少なくとも2つのグループのうちの1つの中にある少なくとも1つの層の最短製造スループット時間に関する情報と、少なくとも2つのグループのうちの別の1つの中にある少なくとも1つの層の最短製造スループット時間に関する情報とを組み合わせるステップとを備えてよい。少なくとも2つのグループへの割り当ては、ランダムに実行されてよい。すなわちこの場合、グループは、決定された製造スループット時間をグループの1つにランダムに割り当てることにより形成される。その後、製造スループット時間が各グループに関して分類され、最短の製造スループット時間(またはその1つ)が選択される。その後、選択された第1のグループの製造スループット時間に関する情報が、選択された第2のグループの製造スループット時間に関する情報と組み合わされる。こうした情報は特に、異なるパートへの凝固デバイスの配分を含む。
【0021】
ある実施の形態では情報は、少なくともそれぞれの凝固デバイス配分、すなわち各凝固デバイスに関するそれぞれのパートの配分に関する情報を含んでよい。
【0022】
前述の複数の凝固デバイスは電磁放射のビームを放射するように構成される。配分されたパートの製造時間を計算するステップの実行において、配分されたパートの製造時間を計算するステップは、以下の少なくとも1つを考慮に入れる。
-電磁放射のビームの波長
-層の電磁放射のビームのジオメトリ
-電磁放射のビームのパワーレベル
-電磁放射のビームの前述の層に沿った速度
【0023】
ある実施の形態では、配分を定義するステップの実行において、層のパートは少なくとも部分的には重なっている。製造される物体の重なったパートを凝固するために、異なる凝固デバイスが使われてもよい。
【0024】
配分を定義するステップの実行において、層は、製造される物体の外部層に相当する層の輪郭を含む輪郭パートと、充填パートとに分割される。
【0025】
本方法の配分を定義するステップ、配分されたパートの製造時間を計算するステップ、製造スループット時間を決定するステップおよび確定配分を選択するステップは、積層の少なくとも2つの層に関して実行されてよい。
【0026】
ある態様によれば本発明は、前述の本発明に係る方法の1つ以上の実施の形態を実行するように構成されたデータ処理ユニットを与える。
【0027】
ある態様によれば本発明は、前述の本発明に係る方法を用いて、積層造形によって物体を製造する装置を与える。この装置は以下を備える。
-ビルドプレートのビルド表面上で材料の槽を受けるプロセスチェンバ
-ビルドプレートを、プロセスチェンバ内で材料の槽の表面レベルに関連付けて位置づける支持具
-材料を凝固するために電磁放射の複数のビームを伝えるように構成された複数の凝固デバイス
-上記のデータ処理ユニット。
【0028】
本発明に係る方法を実行するためのデータ処理ユニットを含むこうした装置の利点は、上記で説明した。
【図面の簡単な説明】
【0029】
次に以下の添付図面を用いて、本発明を説明する。
【
図1】本発明に係る、積層造形を用いて物体を製造するように構成された本発明に係る装置の模式図である。
【
図2】2つの凝固デバイスを用いた製造プロセスの上面図である。
【
図3】本方法に従って定義された2つの互いに異なる凝固デバイス配分の例を示す図である。
【
図4】本発明に係る方法のステップを示す模式図である。
【
図5】本方法の拡張されたプロセスを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に、積層造形を用いて物体2を製造する装置1の概観を示す。装置1は、いくつかのフレーム部品11、12、13から形成される。この装置は、凝固可能な材料4の槽を受けるプロセスチェンバ3を備える。フレーム部品11内には、シャフトが形成される。このとき物体2を材料の槽4の表面レベルLに関連付けて配置するために、ビルドプレートを備えた支持具5が与えられる。支持具5は、シャフト50内に動作可能に与えられる。これにより、ある層が凝固された後、支持具5が下げられ、さらなる材料の層が、すでに形成された物体2の頂部で凝固されることができる。装置1の頂部13の内部に、材料の選択された部分をそれぞれ凝固させるために、複数の凝固デバイス7、7’が与えられる。図示された実施形態では、凝固デバイス7、7’はレーザデバイスである。このレーザデバイスは、支持具に与えられた粉末材料を溶解させる目的で、レーザ光の形で電磁放射を生成するように配置される。その後この粉末材料は冷却され、製造される物体の凝固部分を形成する。図示されるように、レーザデバイス7、7’から照射される電磁放射71、71’は、屈折ユニット74を用いて屈折される。この屈折ユニット74は、照射された放射71、71’を、材料4の層の表面Lに向けて導くために、回転可能な光学要素75、75’を使用する。
【0031】
装置1は、材料の槽4の表面にレベル付けるために、槽4の表面Lに沿って置き換えることのできるリコート装置(図示せず)をさらに備える。このようなリコート装置自体は、当業者に既知である。
【0032】
要約すると
図1に示されるように、積層造形を用いて物体2を製造する装置1は、材料の選択された部分を電磁放射を用いて凝固するために与えられる第1の凝固デバイスを備える。装置1の頂部13はまた、材料の選択された部分を電磁放射を用いて凝固するために、さらなる凝固デバイス7’を備える。このさらなる凝固デバイス7’によって放射される電磁放射71’は、放射71’を材料4の層の表面Lに導くためのさらなる回転可能な屈折ユニット75’を用いて屈折される。
【0033】
さらに
図1よりこの実施の形態では、複数の屈折手段75、75’は、物体作業領域Lで定義される面に垂直なラインCの近くに配置されることが分かる。このラインCは、物体作業領域Lの幾何学的中心を通る。言い換えれば屈折手段75、75’は実質的に、物体作業領域Lの中心部の上に与えられる。これにより複数の凝固デバイスの各々は、実質的に物体作業領域の全領域に容易に到達することができる。従って、例えば1つの物体の異なる部分を同時に凝固することができる。
【0034】
本発明に係る装置1はまた、データ処理ユニット8を備える。このデータ処理ユニット8は、装置1に接続される(または接続可能である)。データ処理ユニット8の機能は、本発明に係る方法に関連して後述する。一般的にこのデータ処理ユニット8は、例えばスタンドアロンコンピュータであってよい。このデータ処理ユニット8から得られた製造データは、例えばUSB記憶デバイスや無線接続を用いて装置1に伝えられてよい。従ってデータ処理ユニット8から得られた情報が装置1に伝えられる限り、データ処理ユニット8は装置1に直接接続される必要はない。
【0035】
最初に
図2を参照して、材料を凝固するための複数の凝固デバイスを用いて積層造形によって材料から物体を製造するプロセス中に発生する課題の1つを説明する。
【0036】
図2は、ビルドプレート5の頂部の材料4の上面を示す。ここでは1つの層の中に別個の物体2a、2bを製造するために、(例えば凝固デバイス7、7’からの)電磁放射の2つのスポット78、79が同時に使われる。層は2つのサブパートI、IIに分離される。ここで凝固デバイスの各々が、サブパートI、IIに割り当てられる。
【0037】
プロセスガスのフロー18が使われる。その目的は、酸化を防止することと、金属凝縮と飛散をレーザ/粉末相互作用領域から除去することの2つである。
【0038】
図2に示される通り、スポット78、79のスキャン領域の調整によっては、上流システム(サブパートII)が、下流システム(サブパートI)の品質に影響する(例えばスポット79に起因する煙19が、スポット78に直接流れ込むといったように)。これは望ましくない。
【0039】
こうした煙その他の障害の存在は、必要な品質を確保するために重視すべき様々な境界条件とともに、異なる部分にレーザデバイスを割り当てる方針を決定する上で主要な課題となる。さらに、特に多数の凝固デバイスが使われる場合、製造プロセスを最適化することは難しい。凝固デバイスは比較的高価である。従って装置のコスト効果を改善するためには、ために、凝固デバイスのアイドル時間を最小化する必要がある。
【0040】
この目的のために、本発明は、材料4を凝固させるための複数の凝固デバイス7、7’を用いた積層造形を用いて、積層内で電磁放射73、73’を使って材料4から物体2を製造する方法を与える。
図3および
図4を参照すると、この方法は以下のステップを備えることが分かる。
-データ処理ユニット8により、少なくとも2つの凝固デバイス配分101、102(
図3)を定義するステップ201。
これら凝固デバイス配分101、102の各々において、前述の複数の凝固デバイスは、層104のそれぞれのパート171、172に配分される。その結果これらのパートは、物体102を製造するための層104をカバーする。
図3(左側)から、第1の配分101が与えられることが分かる。ここで物体102の左下の部分は、第1の凝固デバイスに割り当てられる。そして物体102の右上の部分は、第2の凝固デバイスに割り当てられる。
図3(右側)から、配分171’、172’が違った仕方で選ばれることが分かる。すなわち左上の部分は、第1の凝固デバイスに割り当てられる。そして右下の部分は、第2の凝固デバイスに割り当てられる。
【0041】
少なくとも最初は、各パートはランダムに割り当てられる。最初の割り当てでは、経験に基づく推測が使われてもよい。以下で説明するように、反復的処理が使われてもよい。
図3には示されないが(しかし本発明の一部である)、割り当てではまた、前述の層104のパート171、172が少なくとも部分的には重なってもよい。やはり図示されないが(しかし本発明の一部である)、前述の層104は、製造される物体102の外部層に相当する前述の層104の輪郭を含む輪郭パートと、充填パートとに分割されてもよい。
【0042】
いずれの場合も本方法は、割り当て101、102を定義するステップを備える。ここで前述の少なくとも2つの凝固デバイス101、102は、実質的に互いに異なる。
【0043】
本方法によれば前述のデータ処理ユニット8は、少なくとも2つの凝固デバイス配分101、102の各々に関して、それぞれの配分されたパートの製造時間を計算する(ステップ202)。この製造時間は、前述の複数の凝固デバイス7、7’の各々に関し、前述の層のそれぞれの割り当てパート171、172;171’、172’を凝固する時間を表す。ここでこの計算は予想障害領域19(これは、前述の複数の凝固デバイス7、7’の1つを用いて前述の材料を凝固するときの障害となる)を考慮に入れる(
図2参照)。ここでこの障害領域は、少なくとも層104上の予想される煙19に関する。
【0044】
従って割り当て101に関し(
図3の左部分)、物体部分171を製造するのに掛かる時間が計算される。そして物体部分172を製造するのに掛かる時間が計算される(ステップ202)。さらに配分102(
図3の右部分)、物体部分171’を製造するのに掛かる時間が計算される。そして物体部分172’を製造するのに掛かる時間が計算される。
【0045】
一旦製造時間計算されると(ステップ202)、データ処理ユニット8は、前述の少なくとも2つの凝固デバイス配分101、102の各々に関し、層104のそれぞれの層の製造スループット時間を決定する(ステップ203)。ここで層の製造スループット時間のそれぞれは、計算された層104に関し、配分されたパートの製造時間の最長時間に一致する。
【0046】
例えば
図3(左側)には、部分172は相対的に大きく、部分171は相対的に小さいことが示される。従って、配分172のパートの製造時間は配分171のパートの製造時間より長いことが予想される。これは、配分171の部分に関する凝固デバイスのアイドル時間がより長いことを意味する。
図3(右側)では、配分171’および172’はサイズの点では互いに比較的等しい。従って配分171’および172’のパートの製造時間は、概ね互いに等しい(この例では、予想される煙のような障害とは関係なく)。
図3から、(配分172のサイズが大きいことに起因して)配分101には最も時間が掛かることが予想される。従って配分102を製造するのに掛かる時間は最も短い。
【0047】
一旦製造スループット時間が決定されると(ステップ203)、前述のデータ処理ユニット8は、前述の決定された層の製造スループット時間に基づいて前述の複数の凝固デバイス7、7’の確定配分102を選択してよい。その後この確定配分102は、前述の複数の凝固デバイス7、7’で前述の層104を製造するために、装置1によって使用される。
【0048】
図5に示される通り、最適化するステップが実行される。これは、前述の定義するステップ201、計算するステップ202、決定するステップ203を繰り返すことによって(少なくとも1回)行われる。繰り返された定義するステップ201では、前述の決定するステップ203で取得された情報が使われる。
【0049】
図5では、全部で24個の配分r
a1-r
a4が定義され(ステップ201)、結果としてのスループット時間が計算される(ステップ202)。その後24個の配分r
a1-r
a4は、4つの特別なグループA1-A4もグループ化される。これはランダムに行われてもよいし、任意の方法で行われてもよい。その後各グループA1-A4に関し、最良の(すなわち製造時間が最短の)3つの配分r
a1-r
a4が選択される。その後1つのグループからのこうした3つの配分に関する情報は、他のグループからのこうした配分に関する情報と組み合わされる。
図5では、グループB1内でさらなる配分を定義するために、グループA1からの情報とグループA2からの情報とが組み合わされることが見られる。同様に、グループB2内でさらなる配分を定義するために、グループA3からの情報とグループA4からの情報とが組み合わされる。従ってこの最適化するステップは、少なくとも2つの決定された製造スループット時間に関する情報(特に、少なくとも1つの層の最短製造スループット時間に関する情報)を組み合わせるステップを備える。
【0050】
その後、配分のさらなるグループC1を定義するために、前述のプロセスがグループB1およびB2で繰り返される。最後に装置で使われるために、最良の製造スループット時間rFが決定され(ステップ203)、選択される(ステップ204)。
【0051】
前述の配分されたパートの製造時間を計算するステップ202の間、この計算は以下の少なくとも1つを考慮に入れる。
-前述の電磁放射のビームの波長
-前述の層の電磁放射のビームのジオメトリ
-前述の電磁放射のビームのパワーレベル
-前述の電磁放射のビームの前述の層に沿った速度
【0052】
前述の方法は、少なくとも部分的には、各層に関して繰り返される。この場合本方法の配分を定義するステップ、計算するステップ、決定するステップおよび選択するステップは、前述の積層の少なくとも2つの層に関して(好ましくは前述の積層の各層に関して)実行される。
【0053】
望まれる保護の範囲は添付の請求項によって定められる。