(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】撮像および分光分析を合わせて行うためのポインタ・モードを備える分光反射干渉システム並びに分光反射干渉方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/12 20060101AFI20230220BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20230220BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20230220BHJP
A61B 3/14 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
A61B3/12
G01N21/27 B
A61B3/10 300
A61B3/14
A61B3/12 ZDM
(21)【出願番号】P 2020549843
(86)(22)【出願日】2018-12-05
(86)【国際出願番号】 CA2018051559
(87)【国際公開番号】W WO2019109186
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-19
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520199495
【氏名又は名称】ジリア,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】ラポインテ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ソバジョウ,ドミニク
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-507445(JP,A)
【文献】米国特許第05308919(US,A)
【文献】国際公開第03/009750(WO,A2)
【文献】特開2005-296434(JP,A)
【文献】特開2006-191937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
A61B 9/00 -10/06
G01N 21/00 -21/01
G01N 21/17 -21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の目の眼底上において分光分析を行う分光反射干渉システムであって、
-撮像デバイスと、
-分光分析器と、
-前記患者の目と前記撮像デバイスとの間に撮像光路を定め、前記患者の目と前記分光分析器との間に分光分析光路を定める光学アセンブリと、
-ポインタ光ビームを生成するように動作可能であり、前記ポインタ光ビームが前記分光分析器の分析スポットにおいて前記患者の目の眼底上に投射可能となるように、前記分光分析光路に光学的に結合されたポインタ光源と、
を備える、分光反射干渉システム。
【請求項2】
請求項1記載の分光反射干渉システムにおいて、前記光学アセンブリが、前記撮像光路に沿って位置付けられ、前記撮像光路に沿って進行する光の撮像部分を前記撮像デバイスに導き、前記光の分光分析部分を前記分光分析光路に導くように構成されたビームスプリッタを含む、分光反射干渉システム。
【請求項3】
請求項2記載の分光反射干渉システムにおいて、前記ビームスプリッタが、ダイクロイック・ビームスプリッタである、分光反射干渉システム。
【請求項4】
請求項3記載の分光反射干渉システムにおいて、前記ダイクロイック・ビームスプリッタが、
-前記撮像光路に沿って進行する光の撮像部分のスペクトルと関連付けられた1つ以上の高透過率領域、
-前記撮像光路に沿って進行する光の分光分析部分のスペクトルと関連付けられた低透過率領域、および
-前記ポインタ光ビームのスペクトルと関連付けられた部分的透過率領域、
を定める透過スペクトル・プロファイルを有する、分光反射干渉システム。
【請求項5】
請求項2記載の分光反射干渉システムにおいて、前記ビームスプリッタが、前記撮像光路に沿って進行する光を、強度比率にしたがって、前記撮像部分および前記分光分析部分に分割するように構成される、分光反射干渉システム。
【請求項6】
請求項2記載の分光反射干渉システムにおいて、前記ビームスプリッタが、前記撮像光路に沿って進行する光を、偏光方向にしたがって、前記撮像部分および前記分光分析部分に分割するように構成される、分光反射干渉システム。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の分光反射干渉システムにおいて、前記光学アセンブリが、
-前記分光分析光路と前記分光分析器との間に延びる第1光ファイバ・リンクと、
-前記分光分析光路と前記ポインタ光源との間に延びる第2光ファイバ・リンクと、
-前記分光分析光路、前記第1光ファイバ・リンク、および前記第2光ファイバ・リンクを光学的に結合する三叉カプラと、
を含む、分光反射干渉システム。
【請求項8】
請求項7記載の分光反射干渉システムにおいて、前記三叉カプラがマルチモード光サーキュレータを含む、分光反射干渉システム。
【請求項9】
請求項7記載の分光反射干渉システムにおいて、前記三叉カプラが二重クラッド光ファイバを含む、分光反射干渉システム。
【請求項10】
請求項7記載の分光反射干渉システムにおいて、前記三叉カプラが自由空間ビーム分割構成を含む、分光反射干渉システム。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の分光反射干渉システムにおいて、前記光学アセンブリが、照明光を前記患者の目の眼底に向けて投射するように構成された照明サブアセンブリを含む、分光反射干渉システム。
【請求項12】
請求項11記載の分光反射干渉システムであって、更に、前記照明光を生成するように動作可能であり、前記照明サブアセンブリに光学的に結合された照明光源を備える、分光反射干渉システム。
【請求項13】
患者の目の眼底上において分光分析を行う分光反射干渉システムであって、
-撮像デバイスと、
-分光分析器と、
-前記患者の目と前記撮像デバイスとの間に撮像光路を定め、前記患者の目と前記分光分析器との間に分光分析光路を定める光学アセンブリと、
-ポインタ光ビームを生成するように動作可能であり、前記ポインタ光ビームが前記分光分析器の分析スポットにおいて前記患者の目の眼底上に投射可能となるように、前記分光分析光路に光学的に結合されたポインタ光源と、を備え、
前記光学アセンブリが、前記撮像光路に沿って位置付けられ、前記撮像光路に沿って進行する光の撮像部分を前記撮像デバイスに導き、前記光の分光分析部分を前記分光分析光路に導くように構成されたビームスプリッタを含み、
前記光学アセンブリが、照明光を前記患者の目の眼底に向けて投射するように構成された照明サブアセンブリを含み、
当該分光反射干渉システムが、更に、前記照明光を生成するように動作可能であり、前記照明サブアセンブリに光学的に結合された照明光源を備え、
前記照明サブアセンブリが、
-前記患者の目と前記ビームスプリッタとの間において、前記撮像光路に沿ってある角度で位置付けられた孔開きミラーであって、前記撮像光路と整列された中央孔を有する、孔開きミラーと、
-前記患者の目の眼底に向かう反射のために、前記照明光源からの照明光を前記孔開きミラー上に投射するビーム整形光学素子と、
を含む、分光反射干渉システム。
【請求項14】
請求項13記載の分光反射干渉システムにおいて、前記照明サブアセンブリのビーム整形光学素子が、前記照明
光の中心部を遮断し、前記孔開きミラーの中央孔と光学的に整列されたスクリーンを含む、分光反射干渉システム。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の分光反射干渉システムであって、更に、
コントローラであって、
-前記患者の目の眼底の画像と、前記眼底上における分析スポットの分光分析とが同時に得られるように、前記コントローラが前記撮像デバイスおよび分光分析器を動作させる取得モード、
並びに
-前記画像内において前記分析スポットの視覚表現を得るように、前記コントローラが前記ポインタ光源および
前記撮像デバイスを動作させるポインタ・モード、
で動作するように構成されたコントローラを備える、分光反射干渉システム。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項記載の分光反射干渉システムであって、更に、前記分光分析光路内に位置付けられ、前記患者の前記眼底全域にわたって前記分析スポットの位置をずらすように構成されたスポット転移機構を備える、分光反射干渉システム。
【請求項17】
請求項2から6までのいずれか1項記載の分光反射干渉システムであって、更に、前記分光分析光路内に位置付けられ、前記患者の目の前記眼底全域にわたって前記分析スポットの位置をずらすように構成されたスポット転移機構を備え、前記スポット転移機構が、前記
分光分析光路と前記ビームスプリッタとの間の入射角を変更する少なくとも1つの調整可能なミラーを含むシフト光学素子を含む、分光反射干渉システム。
【請求項18】
患者の目の眼底上において分光分析を行う分光反射干渉システムであって、
-撮像デバイスと、
-分光分析器と、
-照明光を生成するように制御可能な照明光源と、
-前記患者の目と前記撮像デバイスとの間に撮像光路を定め、前記撮像光路と前記分光分析器との間に分光分析光路を定める光学アセンブリであって、
前記照明光源に光学的に結合され、前記照明光源からの照明光を前記患者の目の眼底に向けて投射するように構成された照明サブアセンブリと、
前記撮像光路に沿って位置付けられ、前記撮像光路に沿って進行する光の撮像部分を
前記撮像デバイスに到達させ、前記光の分光分析部分を前記分光分析光路に逸らせるように構成されたビームスプリッタと、
を含む、光学アセンブリと、
-前記分光分析光路に光学的に結合され、ポインタ光ビームを生成するように制御可能なポインタ光源と、
-コントローラであって、
前記患者の目の眼底の画像と、前記眼底上における分析スポットの分光分析とが同時に得られるように、前記コントローラが、前記照明光源、前記撮像デバイスおよび、前記分光分析器を有効化する取得モード、
並びに
前記画像内において前記分析スポットの視覚表現を得るように、前記コントローラが前記ポインタ光源および
前記撮像デバイスを有効化するポインタ・モード
で動作するように構成される、コントローラと、
を備える、分光反射干渉システム。
【請求項19】
請求項18記載の分光反射干渉システムにおいて、前記ビームスプリッタがダイクロイック・ビームスプリッタである、分光反射干渉システム。
【請求項20】
請求項19記載の分光反射干渉システムにおいて、前記ダイクロイック・ビームスプリッタが、
-前記撮像光路に沿って進行する光の撮像部分のスペクトルと関連付けられた1つ以上の高透過率領域、
-前記撮像光路に沿って進行する光の分光分析部分のスペクトルと関連付けられた低透過率領域、および
-前記ポインタ光ビームのスペクトルと関連付けられた部分的透過率領域、
を定める透過スペクトル・プロファイルを有する、分光反射干渉システム。
【請求項21】
請求項18記載の分光反射干渉システムにおいて、前記ビームスプリッタが、前記撮像光路に沿って進行する光を、強度比率および偏光方向の内1つにしたがって、前記撮像部分および前記分光分析部分に分割するように構成される、分光反射干渉システム。
【請求項22】
請求項18記載の分光反射干渉システムにおいて、前記光学アセンブリが、
-前記分光分析光路と前記分光分析器との間に延びる第1光ファイバ・リンクと、
-前記分光分析光路と前記ポインタ光源との間に延びる第2光ファイバ・リンクと、
-前記分光分析光路、前記第1光ファイバ・リンク、および前記第2光ファイバ・リンクを光学的に結合する三叉カプラと、
を含む、分光反射干渉システム。
【請求項23】
請求項18項記載の分光反射干渉システムであって、更に、前記分光分析光路内に位置付けられ、前記患者の目の前記眼底全域にわたって前記分析スポットの位置をずらすように構成されたスポット転移機構を備える、分光反射干渉システム。
【請求項24】
請求項23項記載の分光反射干渉システムにおいて、前記スポット転移機構が、前記分
光分析光路と前記ビームスプリッタとの間の入射角を変更する少なくとも1つの調整可能なミラーを含むシフト光学素子を含む、分光反射干渉システム。
【請求項25】
患者の目の眼底上において分光分析を行う分光反射干渉方法であって、
-取得モードおよびポインタ・モードで動作可能な分光反射干渉システムを設けるステップと、
-前記取得モードにおいて、
前記患者の目の眼底を照明することにより、前記眼底から戻り光を得るステップであって、前記戻り光が撮像光路に沿って伝搬する、ステップと、
前記戻り光を、前記撮像光路に沿って継続する撮像部分と、分光分析光路に逸らされる分光分析部分とに分離するステップと、
撮像デバイスを使用して前記撮像部分を検出し、前記患者の目の眼底の画像を得るステップと、
分光分析器を使用して前記分光分析部分を検出し、前記眼底上において分析スポットの分光分析を得るステップと、
-前記ポインタ・モードにおいて、
ポインタ光ビームが前記患者の目の眼底に向けて投射され、その反射が前記撮像光路に沿って前記撮像デバイスまで伝搬されるように、
前記ポインタ光ビームを前記分光分析光路に結合するステップと、
前記撮像デバイスを使用して前記ポインタ光ビームの反射を検出し、前記画像内において前記分析スポットの視覚表現を得るステップと、
を含む、分光反射干渉方法。
【請求項26】
媒体上において分光分析を行うシステムであって、
-撮像デバイスと、
-分光分析器と、
-前記媒体と前記撮像デバイスとの間に撮像光路を定め、前記媒体と前記分光分析器との間に分光分析光路を定める光学アセンブリであって、前記撮像光路に沿って位置付けられ、前記撮像光路に沿って進行する光の撮像部分を前記撮像デバイスに導き、前記光の分光分析部分を前記分光分析光路に導くように構成されたビームスプリッタを含む、光学アセンブリと、
-前記分光分析光路に光学的に結合され、ポインタ光ビームを生成するように動作可能なポインタ光源と、
-コントローラであって、
前記媒体の画像と、前記媒体内における分析スポットの分光分析とが同時に得られるように、
前記コントローラが前記撮像デバイスおよび分光分析器を動作させる取得モード、
並びに
前記画像内において前記分析スポットの視覚表現を得るように、
前記コントローラが前記ポインタ光源および
前記撮像デバイスを動作させるポインタ・モード、
で動作するように構成される、コントローラと、
を備える、システム。
【請求項27】
請求項26記載のシステムにおいて、前記ビームスプリッタがダイクロイック・ビームスプリッタである、システム。
【請求項28】
請求項27記載のシステムにおいて、前記ダイクロイック・ビームスプリッタが、
-前記撮像光路に沿って進行する光の撮像部分のスペクトルと関連付けられた1つ以上の高透過率領域、
-前記撮像光路に沿って進行する光の分光分析部分のスペクトルと関連付けられた低透過率領域、および
-前記ポインタ光ビームのスペクトルと関連付けられた部分的透過率領域、
を定める透過スペクトル・プロファイルを有する、システム。
【請求項29】
請求項26記載のシステムにおいて、前記ビームスプリッタが、前記撮像光路に沿って進行する光を、強度比率および偏光方向の内1つにしたがって、前記撮像部分および前記分光分析部分に分割するように構成される、システム。
【請求項30】
請求項26から29までのいずれか1項記載のシステムにおいて、前記光学アセンブリが、
-前記分光分析光路と前記分光分析器との間に延びる第1光ファイバ・リンクと、
-前記分光分析光路と前記ポインタ光源との間に延びる第2光ファイバ・リンクと、
-前記分光分析光路、前記第1光ファイバ・リンク、および前記第2光ファイバ・リンクを光学的に結合する三叉カプラと、
を含む、システム。
【請求項31】
請求項30記載のシステムにおいて、前記三叉カプラが、マルチモード光サーキュレータ、二重クラッド光ファイバ、および自由空間ビーム分割構成の内1つを含む、システム。
【請求項32】
請求項26から31までのいずれか1項記載のシステムにおいて、前記光学アセンブリが、照明光を前記媒体に向けて投射するように構成された照明サブアセンブリを含む、システム。
【請求項33】
請求項32記載のシステムであって、更に、前記照明光を生成するように動作可能であり、前記照明サブアセンブリに光学的に結合された照明光源を備える、システム。
【請求項34】
請求項
33記載のシステムにおいて、前記照明サブアセンブリが、
-前記患者の目と前記ビームスプリッタとの間において、前記撮像光路に沿ってある角度で位置付けられた孔開きミラーであって、前記撮像光路と整列された中央孔を有する、孔開きミラーと、
-前記媒体に向かう反射のために、前記照明光源からの照明光を前記孔開きミラー上に投射するビーム整形光学素子と、
を含む、システム。
【請求項35】
請求項34記載のシステムにおいて、前記照明サブアセンブリのビーム整形光学素子が、前記照明
光の中心部を遮断し、前記孔開きミラーの中央孔と光学的に整列されたスクリーンを含む、システム。
【請求項36】
請求項26から35までのいずれか1項記載のシステムであって、更に、コントローラ
であって、
-前記媒体の画像と、前記媒体上における分析スポットの分光分析とが同時に得られるように、
前記コントローラが前記撮像デバイスおよび分光分析器を動作させる取得モード、
並びに
-前記画像内において前記分析スポットの視覚表現を得るように、
前記コントローラが前記ポインタ光源および
前記撮像デバイスを動作させるポインタ・モード、
で動作するように構成される
コントローラを備える、システム。
【請求項37】
請求項26から36までのいずれか1項記載のシステムであって、更に、前記分光分析光路内に位置付けられ、前記媒体全域にわたって前記分析スポットの位置をずらすように構成されたスポット転移機構を備える、システム。
【請求項38】
請求項37記載のシステムにおいて、前記スポット転移機構が、前記
分光分析光路と前記ビームスプリッタとの間の入射角を変更する少なくとも1つの調整可能なミラーを含むシフト光学素子を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、一般に、酸素飽和度測定法または他の眼球関係測定のためのデバイスに関し、更に特定すれば、患者の目の眼底内において、分光分析および分析スポットの視覚表現の双方を提供する分光反射干渉システムおよび方法に関する。
【従来技術】
【0002】
眼球酸素飽和度測定法、即ち、目の組織における血液酸素飽和度の測定は、有用な非侵襲的ツールであり、医療および健康管理に幅広く応用されている。実際、生体組織内における酸素飽和度の測定は、代謝、ストレスに対する反応、異なる病気の病態生理学、および施された治療の条件または効率について貴重な情報を提供することができる。
【0003】
分光反射干渉システムは、照明光と眼底(eye fundus)における眼底媒体または構造との相互作用から生ずる光の分光分析によって、患者の目の眼底から酸素飽和度測定値または他の情報を提供するために使用することができる。この分野における最適な使用のためには、酸素飽和度計または同等のデバイスおよびシステムは、効率的であり、簡単に使えて容易に製造できることが好ましく、このような機器の低コスト化および微小化も関心のある要素である。このような特徴を提供する場合の課題は、画像およびデータ取得ならびに分析のための信号方向転換のための光学的構成の適正な設計にある。このような設計では、分析スポットの適正な絞り込み(targeting)および識別が行われ、分析スポットと光との相互作用が分光分析されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上で述べた利点の少なくとも一部を提供する眼球酸素飽和度測定、または患者の目における他のパラメータの分析のために使用することができるデバイスを改良することが求められ続けている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様によれば、患者の目の眼底上において分光分析を行う分光反射干渉システムを提供する。この分光反射干渉システムは、
-撮像デバイスと、
-分光分析器と、
-患者の目と撮像デバイスとの間に撮像光路を定め、患者の目と分光分析器との間に分光分析光路を定める光学アセンブリと、
-ポインタ光ビームを生成するように動作可能であり、前記ポインタ光ビームが前記分光分析器の分析スポットにおいて患者の目の眼底上に投射可能となるように、分光分析光路に光学的に結合されたポインタ光源と、を備える。
【0006】
ある実施態様では、光学アセンブリが、撮像光路に沿って位置付けられ、撮像光路に沿って進行する光の撮像部分を撮像デバイスに導き、前記光の分光分析部分を分光分析光路に導くように構成されたビームスプリッタを含んでもよい。ビームスプリッタは、ダイクロイック・ビームスプリッタでもよい。一例では、ダイクロイック・ビームスプリッタが、
-撮像光路に沿って進行する光の撮像部分のスペクトルと関連付けられた1つ以上の高透過率領域、
-撮像光路に沿って進行する光の分光分析部分のスペクトルと関連付けられた低透過率領域、および
-ポインタ光ビームのスペクトルと関連付けられた部分的透過率領域、
を定める透過スペクトル・プロファイルを有してもよい。
【0007】
他の例では、ビームスプリッタが、撮像光路に沿って進行する光を、強度比率または偏光方向にしたがって、撮像部分および分光分析部分に分割するように構成されてもよい。
【0008】
ある実施態様では、光学アセンブリが、
-分光分析光路と分光分析器との間に延びる第1光ファイバ・リンクと、
-分光分析光路とポインタ光源との間に延びる第2光ファイバ・リンクと、
-分光分析光路、第1光ファイバ・リンク、および第2光ファイバ・リンクを光学的に結合する三叉カプラと、を含む。
【0009】
三叉カプラは、例えば、マルチモード光サーキュレータ、二重クラッド光ファイバ、または自由空間ビーム分割構成を含んでもよい。
【0010】
ある実施態様では、光学アセンブリが、照明光を患者の目の眼底に向けて投射するように構成された照明サブアセンブリを含む。分光反射干渉システムは、更に、照明光を生成するように動作可能であり、照明サブアセンブリに光学的に結合された照明光源を含んでもよい。ある実施態様では、照明サブアセンブリが、
-患者の目とビームスプリッタとの間において、撮像光路に沿ってある角度で位置付けられた孔開きミラーであって、撮像光路と整列された中央孔を有する、孔開きミラーと、
-患者の目の眼底に向かう反射のために、照明光源からの照明光を孔開きミラー上に投射するビーム整形光学素子と、を含んでもよい。
【0011】
照明サブアセンブリのビーム整形光学素子は、照明ビームの中心部を遮断し、孔開きミラーの中央孔と光学的に整列されたスクリーンを含んでもよい。
【0012】
ある実施態様では、分光反射干渉システムは、更に、コントローラを備えてもよく、このコントローラが、
-患者の目の眼底の画像と、前記眼底上における分析スポットの分光分析とが同時に得られるように、コントローラが撮像デバイスおよび分光分析器を動作させる取得モード、および
-前記画像内において分析スポットの視覚表現を得るように、コントローラがポインタ光源および撮像デバイスを動作させるポインタ・モード、
で動作するように構成される。
【0013】
ある実施態様では、分光反射干渉システムは、更に、分光分析光路内に位置付けられ、患者の目の前記眼底全域にわたって分析スポットの位置をずらすように構成されたスポット転移機構を備える。スポット転移機構は、スペクトル撮像光路とビームスプリッタとの間の入射角を変更する少なくとも1つの調整可能なミラーを含むシフト光学素子を含んでもよい。
【0014】
1つの態様によれば、患者の目の眼底上において分光分析を行う分光反射干渉システムを提供する。
この分光反射干渉システムは、撮像デバイスと、分光分析器と、照明光を生成するように制御可能な照明光源とを含んでもよい。
【0015】
更に、分光反射干渉システムは、患者の目と撮像デバイスとの間に撮像光路を定め、撮像光路と分光分析器との間に分光分析光路を定める光学アセンブリを含む。光学アセンブリは、前記照明光源に光学的に結合され、照明光源からの照明光を患者の目の眼底に向けて投射するように構成された照明サブアセンブリを含む。更に、光学アセンブリは、撮像光路に沿って位置付けられ、撮像光路に沿って進行する光の撮像部分を撮像デバイスに到達させ、前記光の分光分析部分を分光分析光路に逸らせるように構成されたビームスプリッタを含む。
【0016】
分光反射干渉システムは、更に、分光分析光路に光学的に結合され、ポインタ光ビームを生成するように制御可能なポインタ光源を含む。
【0017】
最後に、コントローラを提供する。このコントローラは、
-患者の目の眼底の画像と、前記眼底上における分析スポットの分光分析とが同時に得られるように、コントローラが照明光源、撮像デバイスおよび分光分析器を有効化する(activate)取得モード、および
-前記画像内において分析スポットの視覚表現を得るように、コントローラがポインタ光源および撮像デバイスを有効化するポインタ・モード、
で動作するように構成される。
【0018】
ある実施態様では、ビームスプリッタがダイクロイック・ビームスプリッタである。このダイクロイック・ビームスプリッタは、
-撮像光路に沿って進行する光の撮像部分のスペクトルと関連付けられた1つ以上の高透過率領域、
-前記撮像光路に沿って進行する光の分光分析部分のスペクトルと関連付けられた低透過率領域、および
-ポインタ光ビームのスペクトルと関連付けられた部分的透過率領域、
を定める透過スペクトル・プロファイルを有してもよい。
【0019】
あるいは、ビームスプリッタが、撮像光路に沿って進行する光を、強度比率および偏光方向の内1つにしたがって、撮像部分および分光分析部分に分割するように構成されてもよい。
【0020】
ある実施態様では、光学アセンブリが、
-分光分析光路と分光分析器との間に延びる第1光ファイバ・リンクと、
-分光分析光路とポインタ光源との間に延びる第2光ファイバ・リンクと、
-分光分析光路、第1光ファイバ・リンク、および第2光ファイバ・リンクを光学的に結合する三叉カプラと、を含む。
【0021】
ある実施態様では、分光反射干渉システムは、更に、分光分析光路内に位置付けられ、患者の目の前記眼底全域にわたって分析スポットの位置をずらすように構成されたスポット転移機構を備えてもよい。このスポット転移機構が、スペクトル撮像光路とビームスプリッタとの間の入射角を変更する少なくとも1つの調整可能なミラーを含むシフト光学素子を含んでもよい。
【0022】
他の態様によれば、患者の目の眼底上において分光分析を行う分光反射干渉方法を提供する。この方法は、
-取得モードおよびポインタ・モードで動作可能な分光反射干渉システムを設けるステップと、
-取得モードにおいて、
○患者の目の眼底を照明することにより、前記眼底から戻り光を得るステップであって、戻り光が撮像光路に沿って伝搬する、ステップと、
○例えば、ビームスプリッタを使用して、戻り光を、撮像光路に沿って継続する撮像部分と、分光分析光路に逸らされる分光分析部分とに分離するステップと、
○撮像デバイスを使用して撮像部分を検出し、患者の目の眼底の画像を得るステップと、
○分光分析器を使用して分光分析部分を検出し、前記眼底上において分析スポットの分光分析を得るステップと、
-ポインタ・モードにおいて、
○前記ポインタ光ビームが患者の目の眼底に向けて投射され、その反射が撮像光路に沿って撮像デバイスまで伝搬されるように、ポインタ光ビームを分光分析光路に結合するステップと、
○撮像デバイスを使用してポインタ光ビームの反射を検出し、前記画像内において分析スポットの視覚表現を得るステップと、
を含む。
【0023】
他の態様によれば、媒体上において分光分析を行うシステムを提供する。このシステムは、
-撮像デバイスと、
-分光分析器と、
-媒体と撮像デバイスとの間に撮像光路を定め、媒体と分光分析器との間に分光分析光路を定める光学アセンブリであって、撮像光路に沿って位置付けられ、撮像光路に沿って進行する光の撮像部分を撮像デバイスに導き、前記光の分光分析部分を分光分析光路に導くように構成されたビームスプリッタを含む、光学アセンブリと、
-分光分析光路に光学的に結合され、ポインタ光ビームを生成するように動作可能なポインタ光源と、
-コントローラであって、
○媒体の画像と、前記媒体内における分析スポットの分光分析とが同時に得られるように、撮像デバイスおよび分光分析器を動作させる取得モード、および
○前記画像内において分析スポットの視覚表現を得るように、ポインタ光源および撮像デバイスを動作させるポインタ・モード、
で動作するように構成される、コントローラと、を備える。
【0024】
ある実施態様では、ビームスプリッタがダイクロイック・ビームスプリッタである。このダイクロイック・ビームスプリッタは、
-撮像光路に沿って進行する光の撮像部分のスペクトルと関連付けられた1つ以上の高透過率領域、
-撮像光路に沿って進行する光の分光分析部分のスペクトルと関連付けられた低透過率領域、および
-ポインタ光ビームのスペクトルと関連付けられた部分的透過率領域、
を定める透過スペクトル・プロファイルを有してもよい。
【0025】
ある実施態様では、ビームスプリッタが、撮像光路に沿って進行する光を、強度比率および偏光方向の内1つにしたがって、撮像部分および分光分析部分に分割するように構成される。
【0026】
ある実施態様では、光学アセンブリが、
-分光分析光路と分光分析器との間に延びる第1光ファイバ・リンクと、
-分光分析光路とポインタ光源との間に延びる第2光ファイバ・リンクと、
-分光分析光路、第1光ファイバ・リンク、および第2光ファイバ・リンクを光学的に結合する三叉カプラと、を含む。
【0027】
ある実施態様では、三叉カプラが、マルチモード光サーキュレータ、二重クラッド光ファイバ、および自由空間ビーム分割構成の内1つを含む。
【0028】
ある実施形態では、光学アセンブリが、照明光を媒体に向けて投射するように構成された照明サブアセンブリを含む。
【0029】
ある実施態様では、このシステムは、更に、照明光を生成するように動作可能であり、照明サブアセンブリに光学的に結合された照明光源を備える。
【0030】
ある実施態様では、照明サブアセンブリが、
-患者の目とビームスプリッタとの間において、撮像光路に沿ってある角度で位置付けられた孔開きミラーであって、撮像光路と整列された中央孔を有する、孔開きミラーと、
-媒体に向かう反射のために、照明光源からの照明光を孔開きミラー上に投射するビーム整形光学素子と、
を含む。
【0031】
ある実施態様では、照明サブアセンブリのビーム整形光学素子が、照明ビームの中心部を遮断し、孔開きミラーの中央孔と光学的に整列されたスクリーンを含む。
【0032】
ある実施態様では、このシステムは、更に、コントローラを備え、このコントローラが、
-媒体の画像と、前記媒体上における分析スポットの分光分析とが同時に得られるように、コントローラが撮像デバイスおよび分光分析器を動作させる(operate)取得モード、および
-前記画像内において分析スポットの視覚表現を得るように、コントローラがポインタ光源および撮像デバイスを動作させる(operate)ポインタ・モード、
で動作するように構成される。
【0033】
ある実施態様では、このシステムは、更に、分光分析光路内に位置付けられ、前記媒体全域にわたって分析スポットの位置をずらすように構成されたスポット転移機構を備える。スポット転移機構は、スペクトル撮像光路とビームスプリッタとの間の入射角を変更する少なくとも1つの調整可能なミラーを含むシフト光学素子を含んでもよい。
【0034】
他の特徴および態様は、添付図面を参照して、その実施形態を読むことによって、一層深く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、実施形態による分光反射干渉システムの模式図である。
【
図2】
図2Aは、患者の目の眼底において分光分析を実行するために使用される、実施態様の一例による分光反射干渉システムの詳細図である。
図2Bは、血液試料の分光分析を実行するために使用される、実施態様の一例による分光反射干渉システムの詳細図である。
【
図3】
図3は、実施態様の一例によるシステムにおいて使用するためのダイクロイック・ビームスプリッタの透過プロファイルのグラフである。
【
図4】
図4A~
図4Cは、いくつかの実施形態によるシステムにおいて使用するための三叉カプラの異なる構成を示す。
【
図5】
図5A~
図5Cは、それぞれ、実施態様の一例における、分析スポットの視覚表現、画像および患者の目の眼底の対応する分光分析、ならびに眼底の画像上に重ね合わされた分析スポットの視覚表現である。
【
図6】
図6は、一実施態様によるシステムの動作のタイミング図である。
【
図7】
図7Aおよび
図7Bは、一実施形態による分光反射干渉システムにおいて使用するためのスポット転移機構の構成の例である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
この説明は、一般には、患者の目の眼底上において分光分析を実行する分光反射干渉システムに関する。
【0037】
本願のコンテキストでは、「分光反射分析」という表現は、一般に、分光反射干渉法に関する技術を参照する用語「分光」(spectral)および「反射干渉」 (reflectrometric) の短縮として使用される。当業者には容易に理解されようが、反射干渉法とは、反射光または他の電磁波を使用して媒体のプロパティを分析することを指す。光は、通例、媒体に向けて投射され、光の波面の媒体界面との相互作用が、媒体による影響を受けた光学プロパティを有する戻り光の生成につながる。分光反射干渉法では、その波長プロファイルを関数とする戻り光の分光分析、即ち、戻り光のプロパティの分析が、媒体およびその組成について情報を得るまたは推測するために使用される。
【0038】
分光反射干渉法は、患者の目の眼底における酸素レベルを検知するために、眼科のコンテキストで使用することができる。一例として、酸素レベルは、特性光吸収パターンを有するオキシヘモグロビンの存在を通じて評価される。同様に、ディオキシヘモグロビンおよびカルボキシルヘモグロビンの濃度(存在する二酸化炭素のレベルに関係する)も、それらそれぞれの光吸収パターンに基づいて判定することができる。これらのパラメータおよびそれらの調整(regulation)は、代謝、ストレスおよび刺激に対する反応、ならびに潜在的に病態生理(pathophysiologies)を示す。しかしながら、例えば、蛍光のような、他の分子および現象も、これらは反射光の分光プロファイルにおける変更を来すのであるから、研究してもよいことは、理解されよう。また、分光分析は、患者の目の眼底の異なる領域に対して、または眼底上に存在する構造(features)に対して実行されてもよいことも理解されよう。他の実施態様では、分光分析は結膜のような目の他の部分に対して実行することもできる。
【0039】
しかしながら、本明細書において説明するシステムは、目の分光反射干渉分析以外の用途に使用してもよいことは、容易に理解されよう。更に広義には、撮像された媒体の一部からの分光情報が望まれるコンテキストであればいずれでも、以下のシステムを使用することができる。尚、ある用途では、本システムは対象の媒体を透過または反射する光を分析するためにも使用できることは、当業者には容易に理解されよう。研究対象の媒体は、例えば、皮膚、臓器組織、露出した筋肉組織、およびその他の生体組織というような、目以外のものであってもよい。ある実施形態では、研究対象の媒体は、バッグ、バイアル、シリンジ、またはキュベットのような透明な容器内、あるいは適した基板上に保管された血液、組織等のような生体外試料であってもよい。
【0040】
図1を参照すると、患者の目21の眼底30上において分光分析を実行する分光反射干渉システム20の上位模式図が示されており、一実施形態による分光反射干渉法を例示する。
【0041】
分光反射干渉システム20は、撮像デバイス50、分光分析器52、およびポインタ光源66を含む。この図示する構成では、分光反射干渉システム20は、2つのモード、即ち、取得モードおよびポインタ・モードで動作可能である。
【0042】
更に、分光反射干渉システム20は、患者の目21と撮像デバイス50との間に撮像光路34、および患者の目21と分光分析器52との間に分光分析光路36を定める光学アセンブリを含む。取得モードにおいて、患者の目21の眼底30が示され、これによって、撮像光路34に沿って伝搬する、眼底30からの戻り光32を得る。戻り光32は、好ましくは、撮像光路32に沿って伝搬する撮像部分54と、分光分析光路36に逸らされる分光分析部分56とに分割される。撮像部分54は、患者の目21の眼底30の画像を得るために、撮像デバイス50によって検出される。分岐した分光分析部分56は、眼底30上の分析スポットの分光分析を得るために、分光分析器52を使用して検出される。
【0043】
ポインタ・モードにおいて、ポインタ光源66はポインタ光ビーム68を生成する。ポインタ光ビーム68は、分光分析光路36に結合され、ポインタ光ビーム68が患者の目21の眼底上において、分光分析器の分析スポットに投射されるようになっている。
【0044】
尚、「分析スポット」(analysis spot)という表現は、患者の目の眼底上における領域またはエリア、あるいは分光分析器に達する戻り光の一部が発生する他の分析対象媒体を指すことは容易に理解されよう。分析スポットは、異なるサイズおよび/または形状を有してもよい。これらは殆どの場合分光反射干渉システムの外形(geometry)および構成によって決定される。
【0045】
図2Aを参照すると、一例による分光反射干渉システム20を具体化する構成の模式図が示されている。
【0046】
前述のように、分光反射干渉システム20は撮像デバイス50を含む。ある実施態様では、撮像デバイス50はCCDまたはCMOSセンサ、あるいは光に感応し光強度またはエネルギを有用な信号に変換する任意の表面によって具体化されてもよい。撮像デバイス50は、プロセッサ、コンピュータ、回路、あるいは撮像デバイス50によって取得された画像を組み立てる、格納する、または表示する命令がプログラミングされた任意の他のハードウェア部品もしくはハードウェア部品の集合体を含んでもよく、あるいはこれらと通信してもよい。分光反射干渉システム20の操作者またはユーザによる最終画像の視認を可能にするために、一体化されたディスプレイまたは別個のディスプレイを設けてもよい。
【0047】
分光分析器52は、波長を関数として光の分析を可能にする任意の適したデバイスによって具体化されればよい。分光分析器52は、例えば、光学分光計によって具体化されてもよい。当技術分野では知られているように、光学分光計は、通例、入射光をそのスペクトルにしたがって、通例では光屈折(例えば、プリズムにおける)または光回折(回折格子において)を使用して分解し、分解された光の分布強度を測定する検出器を含む。分光分析器52は、先に説明したように、所定のパラメータにしたがって、検出した光スペクトルを分析する命令がプログラミングされたコンピュータまたはプロセッサを含んでもよい。ある実施形態では、分光分析器52は、一例として
図2に示したように、格子に基づいてもよい。しかしながら、本説明の範囲から逸脱することなく、種々の他の構成および構造用部品が使用されてもよいことは、容易に理解されよう。一例として、分光分析器52は、反射または透過格子あるいはプリズムのような、少なくとも1つの分散エレメントを含んでもよい。
【0048】
更に、分光反射干渉システム20は、照明光24を生成するように動作可能な照明光源22も含むことができる。照明光24は、取得モードにおいて、患者の目21の眼底30に向けて投射することができる。照明光源22は、1つ以上のLED(発光ダイオード)発光器を含んでもよい。所与の照明光源22のLED発光器は、一旦組み合わせられたなら、照明光24の所望の光学プロパティを得るために選択される、同様の光学プロパティまたは異なる相補光学プロパティを有することができる。尚、レーザ、OLED、蛍光、白熱光、タングステン、およびその他の電球のような、多数の他の光源の異形(variant)も代替実施形態において使用されてもよいことは、容易に理解されよう。「照明光」(illumination light)という表現は、本明細書において使用する場合、患者の目21の中への投射に適した電磁放射光線、および適した分析を行うときに患者の目21の眼底30上において対象の情報を生成することができる戻り光32を誘発、生成(produce)、または言い換えると発生(generate)するのに適した電磁放射光線を指す。尚、「光」という用語は、電磁スペクトルの可視部分に限定して考慮されるのではないことは、容易に理解されよう。照明光24は、好ましくは、本システムが実行するように構成された分光分析のために、対象波長の全てを包含する広帯域スペクトル・プロファイルを有する。ある異形では、照明光が白色光であってもよい。他の異形では、照明光24は分光反射干渉システム20の使用分野を考慮して設計されたスペクトル・プロファイルを有すればよい。更に他の1組の異形では、照明光は、患者の目の光学プロパティ、光源の可用性、実行する分光分析の性質および特性等のような、1つ以上の要因によって決定される任意の他の適したスペクトル・プロファイルを有してもよい。
【0049】
前述のように、分光反射干渉システム20は光学アセンブリ26を含む。光学アセンブリ26は、一方では、患者の目21と撮像デバイス50との間に撮像光路34を定め、他方では、患者の目21と分光分析器52との間に分光分析光路36を定める。
【0050】
尚、光学アセンブリ26は、患者の目を照明し、結果的に生じる戻り光を集光する目的に適した種々の構成によって具体化されればよいことは、容易に理解されよう。光学アセンブリ26は、眼底30の画像を撮像面46上に転送するように構成された1つ以上の光学部品を含んでもよい。光学部品には、レンズ、ミラー、偏光板、フィルタ等を含むことができる。光学部品は、当業者には一般的に知られているような任意の適した方法で配置されればよい。更に、光学アセンブリ26は、固定または変位可能な取付台(mount)、スクリーン、ピンホール、ステップ・モータ等のような、光学部品に対して構造的および/または機能的支持を行う、機械部品または電気部品のような、他の非光学部品を含んでもよい。
【0051】
光学アセンブリ26は、照明光源22に光学的に結合された照明サブアセンブリ28を含んでもよい。照明サブアセンブリ28は、照明光24を照明光源22から患者の目21の眼底30に向けて投射するように構成される。
【0052】
図示する構成では、照明サブアセンブリ28は、撮像光路34に沿ってある角度で位置付けられた孔開きミラー(holed mirror)38を含む。孔開きミラー38は、撮像光路34と整列された中央孔39を有する。好ましくは、照明光源22は、患者21の目に対して直交するように位置付けられ、孔開きミラーは照明光24の光軸に対して45°の角度をなす。代替実施形態では、照明サブアセンブリ28は、種々の透過および反射プロパティを有する1つ以上の光学部品、例えば、中心部に低い反射率を有し、この中心部の周囲に高い反射率を有するように設計されたミラーを含んでもよい。
【0053】
更に、照明サブアセンブリ28はビーム整形光学素子も含む。ビーム整形光学素子は、患者の目の眼底に向けた反射のために、照明光24を照明光源22から孔開きミラー38上に投射する。ビーム整形光学素子は、照明光24と相互作用する1つ以上の光学部品を含む。図示する実施形態では、ビーム整形光学素子は、第1レンズ40a、第2レンズ40b、および第3レンズ40cを含み、これらは照明光源22から孔開きミラー38までの光路に沿って順次配置されている。第2レンズ40bと第3レンズ40cとの間にマスク42が位置付けられている。マスク42は、孔開きミラー38の中心孔39と光学的に整列され、照明ビーム24の中心部を遮断するような大きさに作られている。この構成により、照明光24が孔開きミラー38上で反射するようなドーナツ形状にする。更に、スクリーン44が第1および第2レンズ40aおよび40bの間に設けられ、マスク42から逆反射した光が照明光源22に到達するのを防止する。出力レンズ41および任意の他の関連する光学素子も、孔開きミラー38と患者21の目との間に設けてもよい。
【0054】
ある実施態様では、整列光源43を随意に設け、ここから生成される整列光ビームを照明光と同じ光路内に発射できるように、照明サブアセンブリ28に光学的に結合してもよい。ある実施態様では、整列光源43は、患者に対する不快感を回避するために、近赤外線スペクトル範囲の光を生成してもよい。
【0055】
尚、照明サブアセンブリ28は、照明光源からの照明光を、所望の光学特性で患者の目に導くように協働する、任意の適した集合体または光学部品および付随する構造的、機械的、電気的、または他の構造によって具体化されてもよいことは、容易に理解されよう。照明サブアセンブリの部品は、種々の方法で、光に対して方向転換、合焦、平行化、濾波、またはそれ以外の処理(act)を行うことができる。尚、複数の設計によってこのような結果が得られることは、当業者には容易に理解されよう。例えば、ある異形では、照明光24を少なくとも部分的に照明光源22から眼底30に向けて搬送するために、1本以上の光ファイバを使用してもよい。更に、照明光源22は光学アセンブリ26とは別個にまたは一体化して設けられてもよいことも理解されよう。一例では、光学アセンブリ26は、照明光を照明光源から直接または間接的に受光するように構成された光ポートを含んでもよい。
【0056】
引き続き
図2Aを参照すると、光学アセンブリ26は、更に、撮像光路34に沿って位置付けられたビームスプリッタ48を含む。ビームスプリッタ48は、戻り光32の撮像部分54を撮像光路34に導き、戻り光32の分光分析部分56を分光分析光路36に導くように構成されている。尚、図示する異形では、ビームスプリッタ48が戻り光32の撮像部分54を透過させ、戻り光32の分光分析部分56を反射するように構成および配置されているが、他の異形では、撮像部分54を撮像デバイス50に向けて反射し、分光分析部分56を分光分析器52に向けて透過させるように構成および配置されてもよいことは、容易に理解されよう。
【0057】
ある実施態様では、合焦レンズを孔開きミラー38とビームスプリッタ48との間に配置してもよい。ある実施形態では、合焦レンズは、撮像光路34に沿ったその変位を可能にする、適した並進アクチュエータ上に取り付けられてもよい。このような移動により、異なる患者の目における屈折率のばらつきを補償するように撮像面46を変位させる。他の異形では、合焦レンズは可変焦点を有してもよく、更に異なる手段によって調節可能にしてもよい。
【0058】
戻り光32の撮像部分54は、検出のために撮像デバイス50に達するまで、撮像光路34に沿って進行する。勿論、撮像デバイス50に達する前に、撮像部分54を平行化する、合焦する、濾波する、方向転換する、またはそれ以外の作用を受けるために、撮像光路に沿って多数の光学部品を設けることができる。ビーム整形光学素子51は、
図2Aに示す構成では、このような部品のブラックボックス表現として示されている。
【0059】
戻り光32の分光分析部分56は、分光分析光路36に向けて逸らされ、最終的に分光分析器54によって検出される。また、分光分析光路36は、ポインタ光ビーム68が分光分析光路36に沿ってビームスプリッタ48に向かって反対方向に伝搬できるように、ポインタ光源66にも光学的に結合されている。ポインタ光源66および分光分析光路36に沿って設けることができる他の機能(feature)の動作について、以下で更に詳しく説明する。
【0060】
ビームスプリッタ48は、そこに入射する光を、他の部分に応じて分離するように、種々の原理の内任意の1つにしたがって動作することができる。一実施形態では、ビームスプリッタ48はダイクロイック・ビームスプリッタである。当技術分野では良く知られているように、ダイクロイック光学部品は、そのスペクトル特性にしたがって光に作用する。ダイクロイック・ビームスプリッタ48は、分光反射干渉システム20の動作に合わせて形成されたスペクトル透過プロファイルを有することができる。
図3も一緒に参照すると、一例では、ダイクロイック・ビームスプリッタ48は、以下を定める透過スペクトル・プロファイルを有する。
【0061】
-各々100%の透過率を有する、2つの高透過率領域60a、60bであって、撮像光路に沿って進行する光の撮像部分54のスペクトルと関連付けられる。言い換えると、これらの領域内の波長を有する戻り光の部分は、逸れることなく、ビームスプリッタを透過できる。図示する例では、高透過率領域は、それぞれ、500nm未満そして620nm超である。
【0062】
-撮像光路34に沿って進行する光32の分光分析部分56のスペクトルと関連付けられた低透過率領域62。図示の例では、分光分析は、好ましくは、500nmから620nmの範囲の光に対して行われ、ビームスプリッタ48の透過率はこの範囲内では0または無視し得る程度とすると、戻り光32のこのスペクトル成分が分光分析光路36に完全に反射されることが確保される。
【0063】
-ポインタ光ビーム68のスペクトルと関連付けられた部分的透過率領域64。図示する異形では、ポインタ光ビーム68は赤色範囲、例えば、635nmまたはその付近の波長を有する。このスペクトル範囲の光は、ビームスプリッタによって部分的に透過され、そして部分的に反射される。一例として、50/50の比率である。
【0064】
当業者には容易に理解されるであろうが、
図3のグラフは、理想的なスペクトル・プロファイルを示すのであり、実際の実施態様はこのような理想的な変動(variations)を近似するに過ぎないのはもっともである。
【0065】
他の実施形態では、ビームスプリッタ48は、そのスペクトル成分以外の特性にしたがって光を分離することもできる。例えば、ビームスプリッタ48は光の波長または偏光状態とは独立して、強度比にしたがって、撮像光路34に沿って進行する戻り光32を撮像部分および分光分析部分に分割するように構成することもできる。他の異形では、ビームスプリッタ48は、偏光方向にしたがって、撮像光路34に沿って進行する戻り光32を撮像部分および分光分析部分に分割するように構成することもできる。
【0066】
再度
図2Aを参照すると、ある実施態様では、光学アセンブリ26は第1および第2光ファイバ・リンク70および72を含む。第1光ファイバ・リンク70は分光分析光路34と分光分析器52との間に延びる。第2光ファイバ・リンク72は、分光分析光路34とポインタ光源66との間に延びる。更に、光学アセンブリ26は、三叉カプラ74も含む。三叉カプラ74は、分光分析光路34、第1光ファイバ・リンク70、および第2光ファイバ・リンク72を光学的に結合する。
【0067】
三叉カプラ74は、分光分析光路36から第1光ファイバ・リンク70までの光循環路を提供して、戻り光32の分光分析部分56が分光分析器52に到達させ、第2光ファイバ・リンク72から分光分析路36までの光循環路を形成して、ポインタ光ビーム68を患者21の目に向けて本システム内に発射させる種々のデバイスおよび/または構成によって具体化することができる。
図4A~
図4Cを参照すると、三叉カプラ74の異なる異形が示されている。
図4Aの例では、三叉カプラ74はマルチモード光サーキュレータを含む。
図4Bは、三叉カプラ74が二重クラッド光ファイバを含む他の異形を示す。二重クラッド光ファイバは、ポインタ光ビームのコア内における伝搬を持続させ、クラッディングを通って分光分析器に送られる光の分光分析領域への集光を支援することができる。この場合、コア・モードが第1光ファイバ・リンクに光学的に結合され、クラッディング・モードが第2光ファイバ・リンクに光学的に結合される(またはこの逆)。更に他の異形では、三叉カプラ74は、例えば、自由空間ビーム分割構成76に基づく自由空間構成にすることもできる。
【0068】
勿論、三叉カプラ74に達する前に、撮像部分54を平行化する、合焦する、濾波する、方向転換する、またはそれ以外の作用を受けるために、分光分析光路に沿って多数の光学部品を設けることができる。ビーム整形光学素子78は、
図2Aの図示する構成では、このような部品のブラックボックス表現として示されている。一例として、光を三叉カプラ上に合焦するレンズ79も示す。
【0069】
ポインタ光源66は、指定機能(pointing functionalities)に適したポインタ光ビーム68を生成する任意の光源によって具体化されればよい。一例では、ポインタ光源66はレーザ・ダイオードでもよい。ポインタ光ビーム68は、患者の目に安全であり撮像デバイスの検出範囲内に入る任意の波長またはスペクトル成分を有するのでもよい。ポインタ光源は、例えば、可視光または近赤外線スペクトル範囲で発光するのでもよい。
【0070】
ある実施態様によれば、分光反射干渉システム20はコントローラ80を含む。コントローラ80は、取得モードおよびポインタ・モードで動作するように構成されている。ある実施態様では、取得モードおよびポインタ・モードを交互に動作させることができ、一方他の実施態様では、これらを同時に動作させることもできる。取得モードでは、コントローラ80は、患者の目21の眼底30の画像、およびこの眼底30上の分析スポットの分光分析が同時に得られるように、照明光源22、撮像デバイス50、および分光分析器52を動作させる。ポインタ・モードでは、コントローラ80は、取得モードにおいて得られた画像内における分析スポットの視覚表現が得られるように、ポインタ光源66および撮像デバイス50を動作させる。
【0071】
図5A~
図5Cを参照して、本明細書において説明した方法およびシステムの実施によって得られた結果の例について説明する。
図5Aは、ポインタ・モードにおいて得られた分析スポット82の視覚表現を示す。ここで、ポインタ光源からのポインタ光ビームは、本システムによって、患者の目の眼底に達するように光学的に導かれる。得られる視覚表現は、撮像デバイスのセンサ上におけるこの点光源(point source)の画像である。この画像は、分光分析を行うエリアを定めるための「レーザ・ポインタ」として使用することができる。何故なら、光ファイバ・リンク70および72は三叉カプラ74において同じ出力を共有するからである。
図5Bは、眼底の画像84、および取得モードにおいて一緒に得られた、ポインタによって定められた分析スポットの分光分析85を示す。好ましくは、コントローラは、ポインタ・モードおよび取得モードにおける本システムの連続動作を電子的に可能にする、正確な同期を含む。ある実施形態では、
図5Bに示す分光分析情報および画像は、
図5Aに示す分析スポットの視覚表現の前に得ることもできる。随意に、ポインタ・モードで得られた分析スポットの位置を、
図5Cに示すように、取得モードで得られた網膜の画像上に重ね合わせることもできる。対応する領域からの酸素濃度を、酸素飽和度測定の用途において、一緒に提供することもできる。
図6は、コントローラから照明光源22、撮像デバイス50、分光分析器52、およびポインタ光源66にそれぞれ供給される制御信号のタイミング図を示す。
【0072】
分光反射干渉システム20は、追加の部品および機能を含むこともできる。
【0073】
ある実施態様では、分光反射干渉システム20は、分光分析路36内に位置付けられ、撮像部分21に影響を及ぼすことなく、患者の目の眼底30全域にわたり分析スポットの位置をずらすように構成されたスポット転移機構86を含んでもよい。スポット転移機構86は、1つ以上の調製可能な(steerable)ミラーのような、転移光学素子を含んでもよい。調整可能なミラーの枢動(pivoting)を用いると、スペクトル撮像光路36に沿って進行するポインタ光ビーム68とビームスプリッタ48との間の入射角を変更することができる。
図7Aおよび
図7Bを参照して、スポット転移機構の構成についての例を、2つ示す。
図7Aでは、πおよびθ方向双方に変位する第1および第2ミラー88a、88bを使用して、ビームスプリッタ48上へのポインタ光ビーム68の入射角を変更する。第1ミラー88aの変位の方向は、ビームスプリッタ48上にポインタ光ビーム68の位置を維持し、入射角だけを変更するために、第2ミラー88bのそれとは逆でなければならない。
図7Bでは、第2ミラー88bの代わりに、ジンバル・ミラ89を使用する。この方式では、4f構成において使用された2つのレンズ90aおよび90bと一緒に使用すると、ポインタ光ビーム68がビームスプリッタに当たる位置を変化させることなく、ビームスプリッタ48上へのポインタ光ビーム68の入射角の変動を可能にする。
【0074】
図2Bを参照すると、目の眼底以外の媒体上で分光分析を行うために使用するための、 先に説明したものと同様の分光反射干渉システム20の異種が示されている。一例として、
図2Bの図では、研究対象の媒体は液体23のポケット(例えば、血液または血清を収容する)である。
【0075】
図2Bの分光反射干渉システムは、
図2Aに示したシステムと同じ部品を全て含み、光学アセンブリ26および照明サブアセンブリ28を含む。この異形では、照明サブアセンブリ28は、更に、追加の出力レンズ41’も含む。追加の出力レンズ41’は、
図2Aの構成に追加すると、撮像デバイス50上で探査される媒体の焦点を合わせ、その画像を形成することができる。当業者には容易に理解されるであろうが、この手法は、最初は目の眼底を探査することを着想されたシステムの容易な改造に対応することができる。何故なら、このような着想は、目のレンズによって行われる自然光の合焦を考慮しており、目のレンズは本質的に追加の出力レンズ41’で置き換えられるからである。他の異形では、出力レンズ41および追加の出力レンズ41’を1枚のレンズまたは異なる光学構成で置き換えてもよい。
【0076】
勿論、添付した請求項に記載した本発明の範囲から逸脱することなく、以上で説明した実施形態には、種々の変更を行うことができる。