(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】フェナルカミンエポキシ硬化剤およびこれを含有するエポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 215/54 20060101AFI20230220BHJP
C08G 59/50 20060101ALI20230220BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230220BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20230220BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230220BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
C07C215/54
C07C215/54 CSP
C08G59/50
C09D7/61
C09D163/00
C09J11/06
C09J163/00
(21)【出願番号】P 2020552748
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2019058033
(87)【国際公開番号】W WO2019185876
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-10-19
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/057481
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ガウリ サンカー ラル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル クック
(72)【発明者】
【氏名】ガミニ アナンダ ヴェディジ
(72)【発明者】
【氏名】エマヌイル ルムペラキス
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-119099(JP,A)
【文献】特表2002-519480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C08G
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IV):
【化1】
[式中、nは、0、2、4、または6であり、
Rは、H、C
1~C
10アルキル、Ph、またはC
5~C
6脂環式基であり、
A、B、C、D、およびEはそれぞれ、Hであるか、または式(V):
【化2】
[式中、nは、0、2、4、または6であり、
Rは、独立して、H、C
1~C
10アルキル、Ph、またはC
5~C
6脂環式基である]の構造を有する基であり、
ただし、A、B、C、D、およびEから選択される少なくとも2個の置換基はHであり、
結合はアスタリスクを介して行われる]
の構造で表される、フェナルカミン。
【請求項2】
請求項1記載のフェナルカミンを含む、硬化剤組成物。
【請求項3】
少なくとも2個のアミン官能基を有するさらなるアミンをさらに含む、請求項2記載の硬化剤組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂用硬化剤としての、請求項1記載のフェナルカミンまたは請求項2もしくは3記載の硬化剤組成物の使用。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂が少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含む、請求項4記載の使用。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂が、芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル樹脂、チオグリシジルエーテル樹脂、N-グリシジルエーテル樹脂、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4記載の使用。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂が、多価フェノールのグリシジルエーテルを含む、請求項6記載の使用。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂が、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル、およびそれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1つのグリシジルエーテルを含む、請求項6記載の使用。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂が、式(VI):
【化3】
[式中、R’は、二価フェノールの二価炭化水素基であり、pは、0
~7の平均値である]
の構造の少なくとも1つの二価フェノールを含む、請求項6記載の使用。
【請求項10】
前記少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAの高度化ジグリシジルエーテル、およびビスフェノールFのジグリシジルエーテルのうちの少なくとも1つを含む、請求項5記載の使用。
【請求項11】
前記少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂が、式(VII):
【化4】
[式中、R’’は、HまたはCH
3であり、pは、0
~7の平均値である]
の構造で表される、請求項10記載の使用。
【請求項12】
前記エポキシ樹脂が、単官能性エポキシドをさらに含む、請求項5記載の使用。
【請求項13】
前記エポキシ
樹脂中のエポキシ基と前記硬化剤組成物中のアミン水素との化学量論比が、1.5:1~0.7:1の範囲にある、請求項4記載の使用。
【請求項14】
カルダノールと、トリアミノノナンと、アルデヒドとを反応させるステップを含む、請求項1記載のフェナルカミンの製造方法。
【請求項15】
カルダノールとトリアミノノナンとのモル比が、1:1~1:3の範囲にあり、トリアミノノナンとアルデヒドとのモル比が、1:1~1:6の範囲にある、請求項14記載の方法。
【請求項16】
アルデヒドが、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、オクタナール、ヘプタナール、デカナール、ベンズアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、およびシクロヘキサンカルボキシアルデヒドからなる群から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項17】
式(IV)のフェナルカミンと、少なくとも2個のアミン官能基を有するさらなるアミンとを組み合わせることを含む、請求項2記載の硬化剤組成物の製造方法。
【請求項18】
硬化した製造物品を製造するための、少なくとも1つのエポキシ樹脂との併用での、請求項1記載のフェナルカミンまたは請求項2もしくは3記載の硬化剤組成物の使用。
【請求項19】
前記物品が、コーティング、接着剤、建造物、床材製品、または複合材製品である、請求項18記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
マンニッヒ反応は、アルデヒド、通常はホルムアルデヒドと、フェノール化合物と、アミンとの反応に基づく。この反応では、フェノール化合物、アミンおよびアルデヒドのさまざまな形態が利用されている。マンニッヒ塩基生成物は、エポキシ樹脂の硬化に特に適している。
【0002】
フェナルカミン硬化剤は、カルダノールと、カシューナッツ殻液の抽出物と、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド化合物と、アミンとを反応させることにより得られるマンニッヒ塩基のクラスである。通常、フェナルカミン硬化剤は、1モル当量のカルダノールと、1~2モル当量の脂肪族ポリエチレンポリアミンと、1~2モル当量のホルムアルデヒドとを80~100℃で反応させることにより製造される。芳香族ポリアミンがこの反応に使用されることもあった。Cardolite Inc.から入手可能な市販のフェナルカミンNC 541およびNC 540には、アミン源としてエチレンジアミンおよびジエチレントリアミンが使用されている。Evonik Corp.から入手可能なSunmide 1151フェナルカミンには、アミン原料としてm-キシレンジアミンが用いられている。
【0003】
フェナルカミンは、室温または低温での硬化用途に良好なエポキシ樹脂硬化剤である。さらに、フェナルカミンは、良好な耐薬品性、優れた耐水性、エポキシ樹脂との良好な相溶性、低毒性、および良好な柔軟性をもたらす。その結果、これらは、船舶、産業用のメンテナンスおよび土木工学の用途で使用されている。
【0004】
英国特許第1,529,740号明細書には、カルダノールから製造されたポリ(アミノアルキレン)置換フェノール(以下の式(I)による構造)と、ポリエチレンポリアミンと、ホルムアルデヒドとの混合物としてのフェナルカミンが記載されている。通常、これらの生成物の分子量分布を容易に制御することは不可能であるため、これらは、通常は粘性の液体である。
【0005】
【0006】
米国特許第6,262,148号明細書には、芳香環または脂環式環を有するフェナルカミンの組成物が記載されている。これらの組成物は、アルデヒドと脂環式ポリアミンまたは芳香族ポリアミンとを用いてカルダノールから製造された。国際出願公開である国際公開第2009/080209号には、ポリアミン塩とブレンドされたフェナルカミンを含むエポキシ硬化剤の製造が記載されている。これらの硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化速度を向上させるために使用された。
【0007】
当技術分野において、エポキシ樹脂用のフェナルカミン硬化剤であって、準周囲温度(sub-ambient temperature)(例えば、5℃)で硬化速度を加速することができ、かつ最小限の量の揮発性有機溶媒とともに使用可能なフェナルカミン硬化剤が必要とされている。結果的に、低粘度の液体フェナルカミンが非常に望ましい。
発明の概要
【0008】
本開示には、新規の構造クラスのフェナルカミン、かかるフェナルカミンを含む硬化剤組成物、かかるフェナルカミンの製造方法、およびかかる組成物の製造方法が開示されている。これらのフェナルカミンおよび硬化剤組成物は、エポキシ樹脂の硬化(cure, harden)および/または架橋に使用することが可能である。本発明は、低粘度(25℃で3000cP未満)の硬化剤であって、そのまま使用されても、またはエポキシ樹脂の硬化を起こす最小限の量(20重量%未満)の有機溶媒もしくは希釈剤に溶解されて使用されてもよい硬化剤を提供することにより、フェナルカミンとフェナルカミンを含む硬化剤とに関連する問題を解決する。さらに、本発明のフェナルカミン硬化剤は、周囲温度(25℃)で8時間未満に、または5℃で16時間未満に、エポキシコーティングの乾燥硬化をもたらすことができる。
【0009】
本発明は、以下の式(IV)による構造で表される組成物を得るための、カルダノール(以下の式(II)による構造)と、化合物のトリアミノノナン(以下の式(III)による構造)と、アルデヒドとの反応により得られる、フェナルカミン組成物に関する。
【0010】
【0011】
[式中、nは、0、2、4、または6であり、Rは、H、C
1~C
10アルキル、Ph、またはC
5~C
6脂環式基であり、A、B、C、D、およびEはそれぞれ、Hまたは
【化3】
【0012】
[式中、nは、0、2、4、または6であり、Rは、独立して、H、C1~C10アルキル、Ph、またはC5~C6脂環式基である]
であり、ただし、A、B、C、D、およびEから選択される少なくとも2個の置換基はHであり、結合はアスタリスクを介して行われる]。
【0013】
本開示は、式(IV)のフェナルカミンを含む硬化剤組成物も提供する。
【0014】
本開示の好ましい硬化剤組成物は、100%の固体を基準として、約30~約500のアミン水素当量(AHEW)を有する。別の態様において、本開示は、アミン-エポキシ組成物およびこのアミン-エポキシ組成物から製造される硬化した製品を提供する。例えば、本開示によるアミン-エポキシ組成物は、少なくとも1個のカルダノール基を含み、かつ少なくとも2個の活性アミン水素原子を有する新規のフェナルカミン組成物を含有する硬化剤組成物と、少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含むエポキシ組成物とを含む。
【0015】
本開示は、エポキシ樹脂用硬化剤として式(IV)のフェナルカミンを含む硬化剤組成物の使用も提供する。
【0016】
本明細書に開示されているアミン-エポキシ組成物から製造される製造物品としては、接着剤、コーティング、プライマー、シーラント、硬化化合物、建造物、床材製品、および複合材製品が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、そのようなコーティング、プライマー、シーラント、または硬化化合物は、金属基材またはセメント基材に塗布することが可能である。硬化剤とエポキシ樹脂との混合物は、高い光沢度および透明度を有する接触生成物を得るための「熟成時間」を必要としないことがよくある。熟成時間またはインキュベーション時間または誘導時間は、エポキシ樹脂とアミンとを混合してから、生成物をターゲット基材に塗布するまでの時間と定義される。また、混合物が透明になるのに必要な時間とも定義され得る。さらに、新規のフェナルカミン組成物は、より高いアミン-エポキシ反応速度および比較的低い粘度ももたらす。これらの独自の特性により、カルバメート化の傾向がより低くなり、コーティングの乾燥時間が短縮され、必要な溶媒量が削減または排除されるという利点がもたらされる。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明の新規のフェナルカミンは、カルダノールと、アルデヒド化合物と、トリアミノノナンと反応させて、以下の構造:
【化4】
【0018】
[式中、nは、0、2、4、または6であり、Rは、H、C
1~C
10アルキル、Ph、またはC
5~C
6脂環式基であり、A、B、C、D、およびEはそれぞれ、Hまたは
【化5】
【0019】
[式中、nは、0、2、4、または6であり、Rは、独立して、H、C1~C10アルキル、Ph、またはC5~C6脂環式基である]であり、ただし、A、B、C、D、およびEから選択される少なくとも2個の置換基はHであり、結合はアスタリスクを介して行われる]
で示される組成物を製造することにより、製造可能である。当業者は、少なくとも2個のHを有する化合物が、適切なモル比のカルダノール、アルデヒドおよびトリアミノノナンを選択することにより製造可能であることを知っている。好ましいアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルが挙げられる。好ましい脂環式基としては、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられる。
【0020】
好ましくは、カルダノールとトリアミノノナンとのモル比は、1:1~1:3の範囲にある。別の好ましい実施形態において、カルダノールとトリアミノノナンとのモル比は、1:1~1:2の範囲にある。好ましくは、トリアミノノナンとアルデヒドとのモル比は、1:1~1:6の範囲にある。別の好ましい実施形態において、トリアミノノナンとアルデヒドとのモル比は、1:1~1:1.2の範囲にある。
【0021】
この反応は、好ましくは、カルダノールとアミンとを混合し、この混合物を所望の反応温度にてホルムアルデヒドで処理することにより、一段階プロセスで実施される。あるいは、カルダノールは、好ましくは、アルデヒドと混合され、反応温度にてトリアミノノナンで処理されてもよい。この反応は、好ましくは40℃~150℃で実施される。別の好ましい実施形態において、この反応は、80℃~120℃で実施されてもよい。生成物は、通常、反応が完了した後に水を蒸留することにより得られる。
【0022】
使用されるアルデヒド化合物は、構造式RCOHで表される。Rは、H、C1~C10アルキル、Ph、C5~C6脂環式基またはそれらの混合物である。好ましいアルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、オクタナール、ヘプタナール、デカナール、ベンズアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒドである。より好ましいアルデヒドは、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドである。ホルムアルデヒドは、水溶液として、またはポリマー形態であるパラホルムアルデヒドとして使用され得る。
【0023】
カルダノールとトリアミノノナンとアルデヒドとのモル比により、トリアミノノナンにおける3個のアミノ置換基の反応の程度が決定される。トリアミノノナンの3個のアミノ基は、カルダノールにおける置換に対して反応性が類似している。したがって、モノアミノ、ジアミノ、およびトリアミノ置換基の混合物が予想される。アルデヒドに対するアミノ基のモル比が等しいと想定すると、カルダノールに対するアミノ基のモル比が1.0超の場合、カルダノールにおけるジアミノ置換基およびトリアミノ置換基の比が増加する。カルダノールにおいて置換されるアミン基の数は、得られる組成物の粘度に影響を与える。生成物粘度は、25℃で300センチポアズ~3,000センチポアズの範囲にあることが好ましい。別の好ましい実施形態において、生成物粘度は、25℃で300センチポアズ~1500センチポアズの範囲にある。さらなる別の実施形態において、好ましい生成物粘度は、25℃で300センチポアズ~1,000センチポアズの範囲にある。この粘度の低さは、エポキシコーティングの製造においてこの硬化剤を使用するのに有利である。というのも、それにより、揮発性有機溶媒がまったくまたは最小限しか必要なくなり、これは、環境と、この材料を使用する作業員の健康および安全にとって有益であり得るからである。
【0024】
本開示は、式(IV)のフェナルカミンを含む硬化剤組成物も提供する。
【0025】
本開示は、アミン-エポキシ組成物およびこのアミン-エポキシ組成物から製造される硬化した製品も提供する。後者は、以下の反応生成物:
(a) 以下に示される、カルダノールのトリアミノノナン由来マンニッヒ塩基(フェナルカミン)を含む硬化剤組成物:
【化6】
【0026】
[式中、nは、0、2、4、または6であり、Rは、H、C
1~C
10アルキル、Ph、またはC
5~C
6脂環式基であり、A、B、C、D、およびEはそれぞれ、Hまたは
【化7】
【0027】
[式中、nは、0、2、4、または6であり、Rは、独立して、H、C1~C10アルキル、Ph、またはC5~C6脂環式基である]であり、ただし、A、B、C、D、およびEから選択される少なくとも2個の置換基はHであり、結合はアスタリスクを介して行われる]、および
(b) 少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含むエポキシ組成物
を含む。
【0028】
本開示は、エポキシ樹脂用硬化剤として式(IV)のフェナルカミンを含む硬化剤組成物の使用も提供する。
【0029】
本開示は、上記のアミン-エポキシ組成物から製造される製造物品も含む。そのような物品としては、好ましくは、接着剤、コーティング、プライマー、シーラント、硬化化合物、建造物、床材製品、複合材製品、ラミネート、ポッティング化合物、グラウト材、フィラー、セメント系グラウト材、またはセルフレベリング床材が挙げられる。さらなる成分または添加剤を本開示の組成物と一緒に使用して製造物品を製造してもよい。さらに、そのようなコーティング、プライマー、シーラント、硬化化合物、またはグラウト材は、金属基材またはセメント基材に塗布することが可能である。
【0030】
エポキシ組成物について選択される相対量と、硬化剤組成物について選択される相対量とは、例えば、最終用途の物品、その所望の特性、ならびにこの最終用途の物品を製造するために使用される製造方法および条件に応じて異なり得る。例えば、特定のアミン-エポキシ組成物を使用するコーティング用途において、硬化剤組成物の量よりも多くのエポキシ樹脂を組み込むと、乾燥時間が増加しているものの、硬度が増加しており、かつ光沢度により測定される外観が改善されたコーティングを得ることができる。本開示のアミン-エポキシ組成物は、好ましくは、エポキシ組成物中のエポキシ基と硬化剤組成物中のアミン水素との化学量論比が、1.5:1~0.7:1の範囲にある。例えば、そのようなアミン-エポキシ組成物は、好ましくは、化学量論比が、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、0.9:1、0.8:1、または0.7:1であり得る。別の態様において、化学量論比は、好ましくは、1.3:1~0.7:1、または1.2:1~0.8:1、または1.1:1~0.9:1の範囲にある。
【0031】
本開示のアミン-エポキシ組成物は、硬化剤組成物と、少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含むエポキシ組成物とを含む。本明細書において使用される場合、多官能性エポキシ樹脂とは、1分子あたり2個以上の1,2-エポキシ基を含む化合物を表す。エポキシ樹脂は、好ましくは、芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル樹脂、チオグリシジルエーテル樹脂、N-グリシジルエーテル樹脂、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0032】
本開示における使用に適した好ましい芳香族エポキシ樹脂は、二価フェノールのグリシジルエーテルを含む、多価フェノールのグリシジルエーテルを含む。レゾルシノール、ヒドロキノン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(商業的にはビスフェノールAとして知られている)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(商業的にはビスフェノールFとして知られており、さまざまな量の2-ヒドロキシフェニル異性体を含み得る)のグリシジルエーテルなど、またはそれらの任意の組み合わせがさらに好ましい。さらに、本開示において、以下の構造:
【化8】
【0033】
[式中、R’は、二価フェノール、例えば先に挙げた二価フェノール類の二価炭化水素基であり、pは、0~7の平均値である]
の高度化二価フェノールも有用である。この式による材料は、二価フェノールとエピクロロヒドリンとの混合物を重合することにより、または二価フェノールのジグリシジルエーテルと二価フェノールとの混合物を高度化することにより製造することが可能である。任意の所与の分子においては、pの値は整数であるが、これらの材料は常に混合物であり、これらは、必ずしも整数ではない平均値pを特徴とし得る。本開示の一態様では、平均値pが0~7であるポリマー材料が使用され得る。
【0034】
本開示の一態様において、少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂は、好ましくは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、DGEBAの高度化されたまたはより高分子量のバージョン、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ノボラック樹脂のジグリシジルエーテル、またはそれらの任意の組み合わせである。DGEBAのより高分子量のバージョンまたは誘導体は、過剰なDGEBAがビスフェノールAと反応してエポキシ末端生成物を生成する高度化プロセスにより製造される。そのような生成物についてのエポキシ当量(EEW)は、450~3000以上の範囲にある。これらの生成物は室温で固体であるため、多くの場合、固体エポキシ樹脂と称される。
【0035】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂は、以下の構造:
【化9】
【0036】
[式中、R’’はHまたはCH3であり、pは0~7の平均値である]
で表されるビスフェノールFまたはビスフェノールAのジグリシジルエーテルである。DGEBAは、R’’がCH3であり、かつpが0である場合、先の構造で表される。DGEBAまたは高度化DGEBA樹脂は、それらのコストが低いことと、一般的に特性が高性能であることとが組み合わさっていることを理由に、コーティング配合物において使用されることが多い。約174~約250、より一般的には約185~約195の範囲のEEWを有するDGEBAの市販グレードは、容易に入手可能である。これらの低分子量では、エポキシ樹脂は液体であり、多くの場合、液体エポキシ樹脂と称される。純粋なDGEBAは約174のEEWを有するため、ほとんどのグレードの液体エポキシ樹脂はわずかにポリマーであると当業者に理解されている。同様に高度化プロセスにより製造された約250~約450のEEWを有する樹脂は、室温で固体および液体の混合物であるため、半固体エポキシ樹脂と称される。約160~約750の固体ベースのEEWを有する多官能性樹脂が、本開示において有用である。別の態様において、多官能性エポキシ樹脂は、約170~約250の範囲のEEWを有する。
【0037】
脂環式エポキシ化合物の例としては、少なくとも1個の脂環式環を有するポリオールのポリグリシジルエーテル、またはシクロヘキセン環もしくはシクロペンテン環を含む化合物を酸化剤でエポキシ化することにより得られるシクロヘキセンオキシドまたはシクロペンテンオキシドを含む化合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの特定の例としては、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシラート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシラート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシラート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシラート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジパート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシラート)、ジオクチルエポキシヘキサヒドロフタラート、およびジ-2-エチルヘキシルエポキシヘキサヒドロフタラートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
脂肪族エポキシ化合物の例としては、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルまたはそのアルキレンオキシド付加物、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートをビニル重合することにより合成されるホモポリマー、およびグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートと他のビニルモノマーとをビニル重合することにより合成されるコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの特定の例としては、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルなどのポリオールのグリシジルエーテル;1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;ソルビトールのテトラグリシジルエーテル;ジペンタエリトリトールのヘキサグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル;およびポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパンおよびグリセリンなどの脂肪族ポリオールに1種または2種以上のアルキレンオキシドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
グリシジルエステル樹脂は、分子中に少なくとも2個のカルボン酸基を有するポリカルボン酸化合物とエピクロロヒドリンとを反応させることにより得られる。そのようなポリカルボン酸の例としては、脂肪族、脂環式、および芳香族ポリカルボン酸が挙げられる。脂肪族ポリカルボン酸の例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、アゼライン酸、または二量化もしくは三量化リノール酸が挙げられる。脂環式ポリカルボン酸としては、テトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、または4-メチルヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。また、芳香族ポリカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、またはテレフタル酸が挙げられる。
【0040】
チオグリシジルエーテル樹脂は、ジチオール、例えばエタン-1,2-ジチオール、またはビス(4-メルカプトメチルフェニル)エーテルから誘導される。
【0041】
N-グリシジル樹脂は、エピクロロヒドリンと少なくとも2個のアミン水素原子を含むアミンとの反応生成物を脱塩化水素することにより得られる。そのようなアミンは、例えば、アニリン、n-ブチルアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、m-キシリレンジアミン、またはビス(4-メチルアミノフェニル)メタンである。しかしながら、N-グリシジル樹脂としては、トリグリシジルイソシアヌラート、シクロアルキレン尿素、例えばエチレン尿素または1,3-プロピレン尿素のN、N’-ジグリシジル誘導体、およびヒダントイン、例えば5,5-ジメチルヒダントインのジグリシジル誘導体も挙げられる。
【0042】
1つ以上の実施形態について、樹脂成分は、反応性希釈剤をさらに含む。反応性希釈剤は、硬化プロセス中に硬化剤成分との化学反応に関与し、かつ硬化される組成物に組み込まれる化合物であり、好ましくは単官能性エポキシドである。さまざまな用途のために、反応性希釈剤を使用して、硬化性組成物の粘度および/または硬化特性を変化させることもできる。いくつかの用途では、反応性希釈剤は、より低い粘度を付与して流動特性に影響を与えること、ポットライフを延長すること、および/または硬化性組成物の接着特性を改善することができる。例えば、粘度を低下させると、配合物または組成物中の顔料の水準を増加させつつ容易な塗布が可能になるか、またはより高分子量のエポキシ樹脂の使用が可能になる。したがって、少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含むエポキシ成分が単官能性エポキシドをさらに含むことは、本開示の範囲にある。モノエポキシドの例としては、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、ならびにフェノール、クレゾール、tert-ブチルフェノール、他のアルキルフェノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール、C4~C14アルコールなどのグリシジルエーテル、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。多官能性エポキシ樹脂は、溶液またはエマルション中に存在していてもよく、希釈剤は、水、有機溶媒、またはそれらの混合物である。多官能性エポキシ樹脂の量は、エポキシ成分の50重量%~100重量%、50重量%~90重量%、60重量%~90重量%、70重量%~90重量%、場合によっては80重量%~90重量%の範囲にあり得る。1つ以上の実施形態について、反応性希釈剤は、樹脂成分の総重量の60重量パーセント未満である。
【0043】
特に適切な多官能性エポキシ化合物は、ビスフェノールAおよびビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAおよびビスフェノールFの高度化ジグリシジルエーテル、ならびにエポキシノボラック樹脂である。エポキシ樹脂は、単一の樹脂であっても、または互いに相溶性のエポキシ樹脂の混合物であってもよい。
【0044】
本開示の組成物を、さまざまな製造物品を製造するために使用することができる。物品の製造中または最終用途のための要件に応じて、特定の特性を調整するために、配合物および組成物にさまざまな添加剤が使用されてもよい。これらの添加剤としては、溶媒(水を含む)、促進剤、可塑剤、フィラー、ガラス繊維もしくは炭素繊維などの繊維、顔料、顔料分散剤、レオロジー調整剤、チキソトロープ、流動助剤もしくはレベリング助剤、界面活性剤、消泡剤、殺生物剤、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。当技術分野で知られている他の混合物または材料が、組成物または配合物に含まれていてもよく、かつ本開示の範囲にあると理解される。
【0045】
本開示はまた、本明細書に開示されている組成物を使用して製造される製造物品を対象とする。例えば、硬化剤組成物とエポキシ組成物とを含むアミン-エポキシ組成物から物品を製造することができる。硬化剤組成物は、カルダノールのトリアミノノナン由来マンニッヒ塩基(フェナルカミン)を含み得る。エポキシ組成物は、少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含み得る。任意で、所望の特性に応じて、加工品を製造するために使用される組成物または配合物中にさまざまな添加剤が存在していてもよい。これらの添加剤としては、溶媒(水を含む)、促進剤、可塑剤、フィラー、ガラス繊維もしくは炭素繊維などの繊維、顔料、顔料分散剤、レオロジー調整剤、チキソトロープ、流動助剤もしくはレベリング助剤、界面活性剤、消泡剤、殺生物剤、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0046】
本開示による物品としては、コーティング、接着剤、建造物、床材製品、または複合材製品が挙げられるが、これらに限定されない。これらのアミン-エポキシ組成物に基づくコーティングは、特定の用途での必要性に応じて、溶媒不含であっても、または水もしくは有機溶媒などの希釈剤を含有していてもよい。コーティングは、塗料およびプライマーの用途での使用のために、さまざまな種類および水準の顔料を含有していてもよい。アミン-エポキシコーティング組成物は、金属基材に塗布される保護コーティングでの使用の場合、40~400μm(マイクロメートル)、好ましくは80~300μm、より好ましくは100~250μmの範囲の厚さを有する層を含む。さらに、床材製品または建造物での使用の場合、コーティング組成物は、製品の種類および必要な最終特性に応じて、50~10,000μmの範囲の厚さを有する層を含む。限定的な機械的耐久性および耐薬品性をもたらすコーティング製品は、50~500μm、好ましくは100~300μmの範囲の厚さを有する層を含み、その一方で、例えば高い機械的耐久性および耐薬品性をもたらすセルフレベリング床材などのコーティング製品は、1,000~10,000μm、好ましくは1,500~5,000μmの範囲の厚さを有する層を含む。
【0047】
当業者に周知であるように、適切な表面処理を施した本発明のコーティングの塗布には、さまざまな基材が適している。そのような基材としては、コンクリート、ならびに鋼およびアルミニウムなどのさまざまな種類の金属および合金が挙げられるが、これらに限定されない。本開示のコーティングは、船舶、橋梁、産業プラントおよび設備、ならびに床を含む大型の金属物体またはセメント基材の塗装またはコーティングに適している。
【0048】
本発明のコーティングは、スプレー、ブラシ、ローラ、塗装用ミットなどを含むあらゆる技術により塗布可能である。固形分が非常に高いかまたは100%固体の本発明のコーティングを塗布するために、多成分用スプレー塗布設備が使用されてもよく、この装置内では、アミン成分およびエポキシ成分が、スプレーガンに通じるライン内で混合されるか、スプレーガン自体内で混合されるか、またはこれらの成分がスプレーガンを出たら2つの成分をまとめて混合することにより混合される。この技術を使用することにより、通常アミンの反応性および固形分の双方の増加に伴って低下する配合物のポットライフについての制限を緩和することができる。加熱された多成分用設備を用いることにより、成分の粘度を低下させ、それにより塗布の容易性を改善することができる。
【0049】
建設および床材の用途としては、本開示のアミン-エポキシ組成物をコンクリートまたは建設産業で一般的に使用される他の材料と組み合わせて含む組成物が挙げられる。参照により本明細書に組み込まれるASTM C309-97で参照されるように、本開示の組成物の用途としては、新しいもしくは古いコンクリート用のプライマー、深浸透プライマー(deep penetrating primer)、コーティング、硬化化合物、および/またはシーラントとしてのその使用が挙げられるが、これらに限定されない。本開示のアミン-エポキシ組成物をプライマーまたはシーラントとして表面に塗布して、コーティングの塗布前に接着接合を改善することができる。これはコンクリートおよびセメントの用途に関連するため、コーティングとは、保護層または装飾層または塗膜を生じさせるために表面塗布に使用される薬剤である。また、亀裂注入用および亀裂充填用の製品を、本明細書に開示されている組成物から製造することができる。本開示のアミン-エポキシ組成物を、コンクリート混合物などのセメント系材料と混合して、ポリマーセメントまたは改質セメント、タイル用グラウト材などを形成することができる。本明細書に開示されているアミン-エポキシ組成物を含む複合材製品または物品の非限定的な例としては、テニスラケット、スキー板、自転車のフレーム、航空機の翼、ガラス繊維強化複合材、および他の成形品が挙げられる。
【0050】
本開示の硬化剤組成物の特定の使用において、コーティングは、高い硬化速度および良好なコーティング外観を伴って、低温でコンクリートおよび金属表面などのさまざまな基材に塗布可能である。これは、優れた審美性が望まれるトップコート用途で特に重要であり、優れたコーティング外観を伴った迅速な低温硬化が克服されるべき産業における長年の課題に対する解決策をもたらす。低温硬化速度が高いと、作業もしくは設備の停止時間を短縮することができるか、または屋外用途の場合、寒冷気候における作業期間を延ばすことができる。
【0051】
高速エポキシ硬化剤により、アミン硬化エポキシコーティングが、高い硬化度を伴って短時間で硬化することが可能になる。コーティングの硬化速度は、コーティングが乾燥する時間を測定する薄膜硬化時間(TFST)によりモニタリングされる。薄膜硬化時間は、4段階に分類される:段階1;指触乾燥(set to touch)、段階2;固着乾燥(tack free)、段階3;定着乾燥(dry hard)、および段階4;硬化乾燥(dry through)。段階3の乾燥時間は、どの程度速くコーティングが硬化および乾燥するかを示す。高速周囲硬化コーティングの場合、段階3の乾燥時間は、6時間未満もしくは4時間未満であり、または4時間未満であることが好ましい。低温硬化とは、いくつかの場合において、通常、周囲温度未満の温度、10℃、5℃、または0℃での硬化を指す。高速低温硬化の場合、5℃での段階3の乾燥時間は16時間未満であり、段階3の乾燥時間が10時間未満、好ましくは8時間未満の数値である場合、大きな生産性の利点がもたらされる。
【0052】
どの程度良好にコーティングが硬化するかは、硬化度により測定される。硬化度は、多くの場合、当業者に周知のDSC(示差走査熱量測定)技術を使用することにより決定される。コーティングが完全に硬化すると、硬化度は、7日後に、周囲温度(25℃)で、少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%になる。コーティングが完全に硬化すると、硬化度は、7日後に、5℃で、少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%になる。
【0053】
高速低温エポキシ硬化剤の多くは、エポキシ樹脂を迅速に硬化させることができる。ただし、特に摂氏10度または摂氏5度の低温の場合、エポキシ樹脂と硬化剤との相溶性が低いことから、樹脂と硬化剤との間で相分離が起こり、硬化剤がコーティング表面に移動するため、外観の不良なコーティングが、粘着性のある曇ったコーティングとして生じる。エポキシ樹脂と硬化剤との間の相溶性が良好であると、良好なカルバメート化耐性および良好なコーティング外観を有する透明で光沢のあるコーティングが得られる。本開示の硬化剤組成物は、高い硬化速度と、良好な相溶性と、高い硬化度との組み合わせを提供する。
【0054】
本発明の別の態様において、本発明のフェナルカミン硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させるために、(共硬化剤としての)別のアミン硬化剤と組み合わせて使用されてもよい。したがって、本開示によるアミン-エポキシ組成物は、
(a) 以下に示される、カルダノールのトリアミノノナン由来マンニッヒ塩基(フェナルカミン)を含む硬化剤組成物:
【化10】
【0055】
[式中、nは、0、2、4、または6であり、Rは、H、C
1~C
10アルキル、Ph、またはC
5~C
6脂環式基であり、A、B、C、D、およびEはそれぞれ、Hまたは
【化11】
【0056】
[式中、nは、0、2、4、または6であり、Rは、独立して、H、C1~C10アルキル、Ph、またはC5~C6脂環式基である]
であり、ただし、A、B、C、D、およびEから選択される少なくとも2個の置換基はHであり、結合はアスタリスクを介して行われる]
(b) 先に記載の少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含むエポキシ組成物、および
(c) 少なくとも2個のアミン官能基を有するアミン共硬化剤
を含む。
【0057】
アミン共硬化剤の好ましい例としては、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサアミン(PEHA)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,3-ペンタンジアミン(DYTEK(登録商標)EP)、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン(DYTEK(登録商標)A)、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン(N-3-アミン)、N,N’-1,2-エタンジイルビス-1,3-プロパンジアミン(N4-アミン)またはジプロピレントリアミン;アリール脂肪族アミン、例えば、m-キシリレンジアミン(mXDA)またはp-キシリレンジアミン;脂環式アミン、例えば、1,3-ビスアミノシクロヘキシルアミン(1,3-BAC)、イソホロンジアミン(IPDA)または4,4’-メチレンビスシクロヘキサンアミン;芳香族アミン、例えば、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)またはジアミノジフェニルスルホン(DDS);複素環式アミン、例えば、N-アミノエチルピペラジン(NAEP)または3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン;アルコキシ基が、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシ-1,2-ブチレン、オキシ-1,4-ブチレンであり得るポリアルコキシポリアミンまたはそのコポリマー、例えば、4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン、1-プロパンアミン、3,3’-(オキシビス(2,1-エタンジイルオキシ))ビス(ジアミノプロピル化ジエチレングリコールANCAMINE1922A)、ポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル))、アルファ-(2-アミノメチルエチル)オメガ-(2-アミノメチルエトキシ)(JEFFAMINE D 230、D-400)、トリエチレングリコールジアミンおよびオリゴマー(JEFFAMIN EXTJ-504、JEFFAMINE XTJ-512)、ポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル))、アルファ,アルファ’-(オキシジ-2,1-エタンジイル)ビス(オメガ-(アミノメチルエトキシ))(JEFFAMINE XTJ-511)、ビス(3-アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン350、ビス(3-アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン750、ポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル))、2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオールを有するa-ヒドロ-w-(2-アミノメチルエトキシ)エーテル(3:1)(JEFFAMINE T-403)、ならびにジアミノプロピルジアミノプロピルジプロピレングリコールが挙げられる。
【0058】
他のアミン共硬化剤としては、アミドアミンおよびポリアミド硬化剤が挙げられる。ポリアミド硬化剤は、二量化脂肪酸(ダイマー酸)およびポリエチレンアミンの反応生成物と、通常は、分子量および粘度の制御に役立つ特定量のモノマー脂肪酸とからなる。「二量化」または「ダイマー」または「重合」脂肪酸とは、不飽和脂肪酸から得られる重合された酸を指す。これらは、J. I.Kroschwitz (ed.), Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 4’ Ed., Wiley, New York, 1993,Vol. 8, pp. 223-237のT. E. Breuer, ’Dimer Acids’において、より十分に記載されている。ポリアミドの製造にも使用される一般的な単官能性不飽和C6~C20脂肪酸としては、トール油脂肪酸(TOFA)またはダイズ脂肪酸などが挙げられる。
【0059】
他のアミン共硬化剤としては、フェノール化合物と、アミンと、ホルムアルデヒドとのフェナルカミンおよびマンニッヒ塩基が挙げられる。
【0060】
カルダノールのトリアミノノナン由来マンニッヒ塩基(フェナルカミン)とアミン共硬化剤との重量比は、好ましくは1:1~1:0.05である。別の好ましい実施形態において、カルダノールのトリアミノノナン由来マンニッヒ塩基(フェナルカミン)とアミン共硬化剤との重量比は、1:0.75~1:0.25である。
【0061】
カルダノールのトリアミノノナン由来マンニッヒ塩基(フェナルカミン)とアミン共硬化剤とを組み合わせた本開示のエポキシ組成物は、好ましくは、エポキシ組成物中のエポキシ基と硬化剤組成物中のアミン水素との化学量論比が、1.5:1~0.7:1の範囲にある。例えば、そのようなアミン-エポキシ組成物は、好ましくは、化学量論比が、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、0.9:1、0.8:1、または0.7:1であり得る。別の好ましい態様において、化学量論比は、1.3:1~0.7:1、または1.2:1~0.8:1、または1.1:1~0.9:1の範囲にある。
【0062】
以下の発明は、以下の態様を対象とする:
<1> 式(IV):
【化12】
【0063】
[式中、nは、0、2、4、または6であり、Rは、H、C
1~C
10アルキル、Ph、またはC
5~C
6脂環式基であり、A、B、C、D、およびEはそれぞれ、Hであるか、または式(V):
【化13】
【0064】
[式中、nは、0、2、4、または6であり、Rは、独立して、H、C1~C10アルキル、Ph、またはC5~C6脂環式基である]の構造を有する基であり、結合はアスタリスクを介して行われる]
の構造で表される、フェナルカミン。
【0065】
<2> 態様<1>記載のフェナルカミンを含む、好ましい硬化剤組成物。
【0066】
<3> 少なくとも2個のアミン官能基を有するさらなるアミンをさらに含む、態様<2>記載の好ましい硬化剤組成物。
【0067】
<4> エポキシ樹脂用硬化剤としての、態様<1>記載のフェナルカミンまたは態様<2>もしくは<3>記載の硬化剤組成物の使用。
【0068】
<5> エポキシ樹脂が少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含む、態様<4>記載の好ましい使用。
【0069】
<6> エポキシ樹脂が、芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル樹脂、チオグリシジルエーテル樹脂、N-グリシジルエーテル樹脂、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様<4>記載の好ましい使用。
【0070】
<7> エポキシ樹脂が多価フェノールのグリシジルエーテルを含む、態様<6>記載の好ましい使用。
【0071】
<8> エポキシ樹脂が、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル、およびそれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1つのグリシジルエーテルを含む、態様<6>記載の好ましい使用。
【0072】
【0073】
[式中、R’は、二価フェノールの二価炭化水素基であり、pは、0~約7の平均値である]
の構造を有する少なくとも1つの二価フェノールを含む、態様<6>記載の好ましい使用。
【0074】
<10> 少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAの高度化ジグリシジルエーテル、およびビスフェノールFのジグリシジルエーテルのうちの少なくとも1つを含む、態様<5>記載の好ましい使用。
【0075】
<11> 少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂が、式(VII):
【化15】
【0076】
[式中、R’’はHまたはCH3であり、pは0~約7の平均値である]
の構造で表される、態様<10>記載の好ましい使用。
【0077】
<12> エポキシ樹脂が単官能性エポキシドをさらに含む、態様<5>記載の好ましい使用。
【0078】
<13> エポキシ組成物中のエポキシ基と硬化剤組成物中のアミン水素との化学量論比が、1.5:1~0.7:1の範囲にある、態様<4>記載の好ましい使用。
【0079】
<14> カルダノールと、トリアミノノナンと、アルデヒドとを反応させるステップを含む、態様<1>記載のフェナルカミンの製造方法。
【0080】
<15> カルダノールとトリアミノノナンとのモル比が、1:1~1:3の範囲にあり、トリアミノノナンとアルデヒドとのモル比が、1:1~1:6の範囲にある、態様<14>記載の好ましい方法。
【0081】
<16> アルデヒドが、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、オクタナール、ヘプタナール、デカナール、ベンズアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、およびシクロヘキサンカルボキシアルデヒドからなる群から選択される、態様<14>記載の好ましい方法。
【0082】
<17> 式(IV)のフェナルカミンと、少なくとも2個のアミン官能基を有するさらなるアミンとを組み合わせることを含む、態様<2>記載の硬化剤組成物の製造方法。
【0083】
<18> 硬化した製造物品を製造するための、少なくとも1つのエポキシ樹脂との併用での、態様<1>記載のフェナルカミンまたは態様<2>もしくは<3>記載の硬化剤組成物の使用。
【0084】
<19> 物品が、コーティング、接着剤、建造物、床材製品、または複合材製品である、態様<18>記載の好ましい使用。
【0085】
実施例
これらの実施例は、本発明の特定の態様を説明するために設けられており、本明細書に添付のクレームの範囲を限定するものではない。
【0086】
例1:カルダノール:トリアミノノナン:ホルムアルデヒド(1:1:1)のモル比でのトリアミノノナンのフェナルカミンの合成
N2注入口と、添加漏斗と、温度プローブとを備える三ツ口の1L丸底フラスコに、カルダノール(298g、1.0モル)およびトリアミノノナン(TAN)(173.3g、1.0モル)を充填した。混合物を80℃に加熱した。37%のホルムアルデヒド溶液(81g、37重量%、30g、1.0モル)を添加して、80~90℃の反応温度を維持した。添加後に、混合物を90~95℃で1時間にわたり保った。水を120℃で蒸留すると、淡褐色の液体としての生成物が得られた。
【0087】
例2:カルダノール:トリアミノノナン:ホルムアルデヒド(1:1.3:1.3)のモル比でのトリアミノノナンのフェナルカミンの合成
N2注入口と、添加漏斗と、温度プローブとを備える三ツ口の1L丸底フラスコに、カルダノール(298g、1.0モル)およびTAN(225.29g、1.30モル)を充填した。混合物を80℃に加熱した。37%のホルムアルデヒド溶液(105.40g、37重量%、39g、1.3モル)を添加して、80~90℃の反応温度を維持した。添加後に、混合物を90~95℃で1時間にわたり保った。水を120℃で蒸留すると、淡褐色の液体としての生成物が得られた。
【0088】
例1A~3B
特に指定のない限り、先の例で与えられている成分と、EEW190の標準的なビスフェノールAベースのエポキシ樹脂(Epon 828、DER 331タイプ)のエポキシ成分とを混合することにより硬化剤混合物を製造した。使用された配合物は、表1に定義されている。その後、1:1(アミン:エポキシ当量)の化学量論水準を用いてこれらを混合した。硬化剤は、そのままで、およびキシレン:n-ブタノール(重量で3:1)の組み合わせで固体80%で試験した。比較例(3)は、エチレンジアミン[EDA]に由来する市販のフェナルカミン硬化剤であり、参照として使用した。
【0089】
【0090】
表1に定義されている配合物を、それらの一般的な性能特性を決定するために一連の塗布試験に供した。採用された試験プロトコルは、表2に定義されている。
【0091】
【0092】
ゲル化時間は、組成物が液体からゲルに移行する時間を特徴付けるものである。アミン-エポキシ組成物のゲル化時間は、ASTM D2471を使用して、TECHNEのゲル化タイマーモデルFGT 6を用いて測定された。乾燥時間または薄膜硬化時間(TFST)は、ASTM D5895に従って、Beck-Koller記録計を使用して決定された。アミン-エポキシコーティングは、バードアプリケータ(Bird applicator)を使用して、湿潤膜厚150μWFT(wet film thickness:湿潤膜厚)で標準的なガラスパネル上に製造され、これは、100~130μの乾燥膜厚になった。コーティングを、23℃および5℃、ならびに相対湿度(RH)60%で硬化させた。溶媒なし(A系列)および20%の溶媒あり(B系列)の硬化剤のデータが、表3に報告されている。
【0093】
【0094】
本発明の硬化剤を含有するコーティングは、23℃および5℃の双方で硬化させた場合に、市販のEDAベースのフェナルカミンを使用して得られる乾燥速度と比較して、はるかに速い薄膜乾燥時間を示す。このことは、特性の発現がより速いことで工業用コーティング用途において生産性の利点がもたらされ得るため、これらの種類のコーティングについて重要な性能上の利点であると考えられる。コーティング系中に溶媒が存在すると、塗布粘度を下げることができたものの、すべての場合において、全体的な乾燥速度が低下した。それにもかかわらず、本発明に基づく硬化剤の乾燥速度特性は、市販のEDAベースでもたらされるものに基づく乾燥速度特性よりも速い。
【0095】
23℃では、コーティングはすべて、良好な光沢の発現を示し、グリーシーなアミン(greasy amine)および表面欠陥がなかった。より低い塗布温度では、参照用のフェナルカミンを含むすべてのコーティングが、光沢度の低下を示し、透明塗膜は、固有のヘイズを発現した。TANアミンベースの新しいフェナルカミンについての光沢度の低下は、EDAベースの材料よりも少なく、このことは、TANアミンベースの硬化剤技術について、相溶性が改善されていることを示す。相溶化溶媒を用いて硬化剤を配合した場合、同等の表面外観が観察された。得られた結果は、本発明の硬化剤を含有するコーティングが、迅速な硬化性と良好なコーティング外観との双方を有することを明確に示しており、硬化剤とエポキシ樹脂との間の相溶性が良好であることを示す。
【0096】
多くのアミンベースの系は、カルバメート化、すなわち、コーティングの表面に存在する遊離アミンが大気中の水分および二酸化炭素と反応し、その結果としてコーティング表面に不溶性の白色塩が形成される傾向がある。これを評価するために、バードアプリケータを用いて、約75μ(湿潤膜厚)の湿潤膜厚で、きれいなレナータチャート(Lenata chart)に透明なコーティングを塗布した。レナータチャートは、使用前にエタノールで洗浄した。コーティングを、23℃および5℃、ならびに相対湿度(RH)60%で、1日、2日、および7日間にわたり硬化させた。リントフリーの綿パッチを試験パネル上に置き、これがパネルの端から少なくとも12mm離れていることを確実にした。綿パッチを2~3mlの脱塩水で湿らせ、適切な蓋(例えば、時計皿)で覆った。パネルを、指定時間(標準的な時間は24時間)にわたり継続的に静置した。その後、パッチを取り外し、コーティングを布またはティッシュで乾燥させた。パネルをカルバメート化について直ちに検査および評価した。その際、5は、カルバメート化なし、優れた表面を表し、0は、過度の白化または激しいカルバメート化を表す。表3にまとめられているデータは、本発明の硬化剤を用いて硬化させたコーティングが、特に5℃の低温で塗布された場合に、標準的なEDA市販グレードと同等のカルバメート化耐性を有することを示す。新たなTANアミンフェナルカミンは、DSCで測定した初期全硬化度(initial degree of through cure)がより高く、25℃で塗布24時間後に、EDAグレードの硬化66%に対して、硬化79%を達成する。