(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】表示システム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20230220BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
(21)【出願番号】P 2020573390
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(86)【国際出願番号】 US2019014849
(87)【国際公開番号】W WO2020005320
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-10-25
(32)【優先日】2018-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506144891
【氏名又は名称】イシイ フサオ
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】イシイ フサオ
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/009717(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0285137(US,A1)
【文献】特表2010-533316(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03104215(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/065975(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0322414(US,A1)
【文献】特表2015-528919(JP,A)
【文献】特開2007-079297(JP,A)
【文献】特開2015-172713(JP,A)
【文献】特開2006-318794(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0149791(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01,27/02
H04N 5/64
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置と、
投影レンズセットと、
ライトパイプと、
前記表示装置および前記投影レンズセットからの光線を前記ライトパイプに入力する入力結合プリズムと、
出力結合導波路と、
前記ライトパイプからの前記光線を前記出力結合導波路に反射する折り返し式ミラーと、を備え、
前記ライトパイプは矩形の断面を有し、前記ライトパイプの側面の表面は、開口部以外はコーティングまたは全反射(TIR)によって反射性を有し、前記光線は、前記開口部を通って前記ライトパイプから出て前記折り返し式ミラーに向かい、前記折り返し式ミラーは、鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を前記出力結合導波路に向けて反射し、前記出力結合導波路は、複数の前記鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を見る者の目に向けて反射
し、
前記投影レンズセットはテレセントリックであり、前記表示装置から出射される主光線は、前記表示装置の表面に対して実質的に垂直をなし、ピクセルからの主光線は、前記入力結合プリズムの内部または近くで互いに交差する、
ことを特徴とする、表示システム。
【請求項2】
表示装置と、
投影レンズセットと、
ライトパイプと、
前記表示装置および前記投影レンズセットからの光線を前記ライトパイプに入力する入力結合プリズムと、
出力結合導波路と、
前記ライトパイプからの前記光線を前記出力結合導波路に反射する折り返し式ミラーと、を備え、
前記ライトパイプは矩形の断面を有し、前記ライトパイプの側面の表面は、開口部以外はコーティングまたは全反射(TIR)によって反射性を有し、前記光線は、前記開口部を通って前記ライトパイプから出て前記折り返し式ミラーに向かい、前記折り返し式ミラーは、鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を前記出力結合導波路に向けて反射し、前記出力結合導波路は、複数の前記鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を見る者の目に向けて反射し、
前記入力結合プリズムは反射面を有し、前記反射面は前記投影レンズセットからの光線を受光し、前記光線を前記ライトパイプ内に反射し、前記反射面の法線ベクトルは、前記投影レンズセットの光軸に対して15度から45度の間にある、
ことを特徴とする、表示システム。
【請求項3】
表示装置と、
投影レンズセットと、
ライトパイプと、
前記表示装置および前記投影レンズセットからの光線を前記ライトパイプに入力する入力結合プリズムと、
出力結合導波路と、
前記ライトパイプからの前記光線を前記出力結合導波路に反射する折り返し式ミラーと、を備え、
前記ライトパイプは矩形の断面を有し、前記ライトパイプの側面の表面は、開口部以外はコーティングまたは全反射(TIR)によって反射性を有し、前記光線は、前記開口部を通って前記ライトパイプから出て前記折り返し式ミラーに向かい、前記折り返し式ミラーは、鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を前記出力結合導波路に向けて反射し、前記出力結合導波路は、複数の前記鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を見る者の目に向けて反射し、
前記入力結合プリズムは反射面を有し、前記反射面は前記投影レンズセットからの光線を受光し、前記光線を前記ライトパイプ内に反射し、前記反射面の法線ベクトルは、前記ライトパイプの長辺に対して30度から60度の間にある、
ことを特徴とする、表示システム。
【請求項4】
表示装置と、
投影レンズセットと、
ライトパイプと、
前記表示装置および前記投影レンズセットからの光線を前記ライトパイプに入力する入力結合プリズムと、
出力結合導波路と、
前記ライトパイプからの前記光線を前記出力結合導波路に反射する折り返し式ミラーと、を備え、
前記ライトパイプは矩形の断面を有し、前記ライトパイプの側面の表面は、開口部以外はコーティングまたは全反射(TIR)によって反射性を有し、前記光線は、前記開口部を通って前記ライトパイプから出て前記折り返し式ミラーに向かい、前記折り返し式ミラーは、鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を前記出力結合導波路に向けて反射し、前記出力結合導波路は、複数の前記鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を見る者の目に向けて反射し、
前記ライトパイプから光が出ていく前記開口部のサイズは、前記ライトパイプの長辺沿いの位置によって変化する、
ことを特徴とする、表示システム。
【請求項5】
表示装置と、
投影レンズセットと、
ライトパイプと、
前記表示装置および前記投影レンズセットからの光線を前記ライトパイプに入力する入力結合プリズムと、
出力結合導波路と、
前記ライトパイプからの前記光線を前記出力結合導波路に反射する折り返し式ミラーと、を備え、
前記ライトパイプは矩形の断面を有し、前記ライトパイプの側面の表面は、開口部以外はコーティングまたは全反射(TIR)によって反射性を有し、前記光線は、前記開口部を通って前記ライトパイプから出て前記折り返し式ミラーに向かい、前記折り返し式ミラーは、鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を前記出力結合導波路に向けて反射し、前記出力結合導波路は、複数の前記鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を見る者の目に向けて反射し、
前記折り返し式ミラーは、前記ライトパイプの上面に対して15度から45度の間で傾斜しており、前記折り返し式ミラーの法線ベクトルは、前記投影レンズにおける光軸に対して平行な光線が前記ライトパイプの上面の法線ベクトルに実質的に平行となるように設定されている、
ことを特徴とする、表示システム。
【請求項6】
表示装置と、
投影レンズセットと、
ライトパイプと、
前記表示装置および前記投影レンズセットからの光線を前記ライトパイプに入力する入力結合プリズムと、
出力結合導波路と、
前記ライトパイプからの前記光線を前記出力結合導波路に反射する折り返し式ミラーと、を備え、
前記ライトパイプは矩形の断面を有し、前記ライトパイプの側面の表面は、開口部以外はコーティングまたは全反射(TIR)によって反射性を有し、前記光線は、前記開口部を通って前記ライトパイプから出て前記折り返し式ミラーに向かい、前記折り返し式ミラーは、鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を前記出力結合導波路に向けて反射し、前記出力結合導波路は、複数の前記鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を見る者の目に向けて反射し、
前記折り返し式ミラーは、前記ライトパイプの上面に対して15度から45度の間で傾斜しており、前記折り返し式ミラーの法線ベクトルは、前記投影レンズにおける光軸に対して平行な光線が前記ライトパイプの上面の法線ベクトルに実質的に平行となるように設定されている、
ことを特徴とする、表示システム。
【請求項7】
表示装置と、
投影レンズセットと、
ライトパイプと、
前記表示装置および前記投影レンズセットからの光線を前記ライトパイプに入力する入力結合プリズムと、
出力結合導波路と、
前記ライトパイプからの前記光線を前記出力結合導波路に反射する折り返し式ミラーと、を備え、
前記ライトパイプは矩形の断面を有し、前記ライトパイプの側面の表面は、開口部以外はコーティングまたは全反射(TIR)によって反射性を有し、前記光線は、前記開口部を通って前記ライトパイプから出て前記折り返し式ミラーに向かい、前記折り返し式ミラーは、鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を前記出力結合導波路に向けて反射し、前記出力結合導波路は、複数の前記鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を見る者の目に向けて反射し、
前記出力結合導波路は、光線が入射しているプリズムに形成された傾斜側面を有し、前記傾斜側面の法線ベクトルは、前記折り返し式ミラーからの前記光線が前記出力結合導波路内へ反射され得るように、前記ライトパイプの上面に対して15度から45度の間にある、
ことを特徴とする、表示システム。
【請求項8】
表示装置と、
投影レンズセットと、
ライトパイプと、
前記表示装置および前記投影レンズセットからの光線を前記ライトパイプに入力する入力結合プリズムと、
出力結合導波路と、
前記ライトパイプからの前記光線を前記出力結合導波路に反射する折り返し式ミラーと、を備え、
前記ライトパイプは矩形の断面を有し、前記ライトパイプの側面の表面は、開口部以外はコーティングまたは全反射(TIR)によって反射性を有し、前記光線は、前記開口部を通って前記ライトパイプから出て前記折り返し式ミラーに向かい、前記折り返し式ミラーは、鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を前記出力結合導波路に向けて反射し、前記出力結合導波路は、複数の前記鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を見る者の目に向けて反射し、
前記出力結合導波路は、光線が入射するプリズムに形成された傾斜側面を有し、前記傾斜側面の法線ベクトルは、前記折り返し式ミラーからの前記光線が前記出力結合導波路内へ反射され得るように、前記ライトパイプの上面に対して15度から45度の間にある
ことを特徴とする、表示システム。
【請求項9】
表示装置と、
投影レンズセットと、
ライトパイプと、
前記表示装置および前記投影レンズセットからの光線を前記ライトパイプに入力する入力結合プリズムと、
出力結合導波路と、
前記ライトパイプからの前記光線を前記出力結合導波路に反射する折り返し式ミラーと、を備え、
前記ライトパイプは矩形の断面を有し、前記ライトパイプの側面の表面は、開口部以外はコーティングまたは全反射(TIR)によって反射性を有し、前記光線は、前記開口部を通って前記ライトパイプから出て前記折り返し式ミラーに向かい、前記折り返し式ミラーは、鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を前記出力結合導波路に向けて反射し、前記出力結合導波路は、複数の前記鋸歯状ミラーを有するとともに前記光線を見る者の目に向けて反射し、
前記出力結合導波路の表面は、内部反射された光線が完全に平坦な表面の角度と同じ角度となるように、複数の平坦な表面から形成される湾曲外殻を有している
ことを特徴とする、表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年6月30日に先出願された仮出願第62/692,699号の優先日を主張する非仮出願であり、また、2016年5月9日に先出願された非仮出願第14/999,458号の一部継続出願でもある。
【0002】
本発明は、微小プリズムを用いて薄型導波路を通して画像を投影するシースルー式ディスプレイに関する。このディスプレイは、反射面を有するプリズムまたはフレネルレンズと組み合わせた薄型導波路を有する潜望鏡として機能する。このディスプレイは、自動車用のシースルー式ヘッドアップディスプレイおよびウェアラブルディスプレイおよび広視野角(Field of ViewまたはFOV)および大型アイボックスを有する眼鏡ディスプレイに適している。
【背景技術】
【0003】
近年、スマートフォンが市場に広く受け入れられた後、シースルー式ディスプレイは、特にヘッドアップディスプレイおよびウェアラブルディスプレイ用として注目を集めている。シースルー式ディスプレイは、ハンズフリー操作を提供するとともに、通常の視界と同様の距離で画像を示す。シースルー式ディスプレイに対する多大なニーズが存在している。ホログラムを用いたシースルー式ディスプレイが提案され、ある程度の成功した結果が得られた。しかし、従来、ホログラムを用いたシースルー式ディスプレイは、必ずしも見る者を満足させるものではなかった。その理由は、これらのシースルー式ディスプレイは、解像度が低すぎたり、光利用率が低すぎたり、視野角が十分でなかったり、結果的にゴースト像になってしまう不要な高次回折を除去することが困難である、ということが多かったからである。軽量で小型で明るく高解像度およびシースルー方式を可能にする光学システムが必要とされている。本発明は、LCD、LCOS、OLED、マイクロミラー、およびレーザビームスキャナなどの従来の表示装置を使用して、上記のニーズのすべてを満たす新しい光学システムを提供する。
【0004】
図1に示すように、Freedmanは、米国特許第777960号明細書において、フレネルレンズを使用して画像の反射方向を変換するヘッドアップディスプレイを開示した。しかし、当該発明では、ディスプレイの小型化ができない。
【0005】
図2に示すように、Voloschenkoらは、米国特許第7031067号明細書において、自動車のダッシュボードに組み込まれたヘッドアップディスプレイを開示した。当該発明は、ディスプレイの小型化ができない。
【0006】
図3に示すように、Kasaiらは、米国特許第7460286号明細書において、ホログラフィック光学素子を用いてシースルー機能を実装する眼鏡型表示システムを開示している。このシステムは、ディスプレイのサイズを実質的に減少させることができる。しかし、このシステムにはホログラムが必要であり、光の利用効率が低く、高解像度および広視野角が困難である。
【0007】
図4に示すように、Mukawaらは、SID2008ダイジェストISSN/008-0906X/08/3901-0089「ホログラフィック平面導波路を用いたフルカラーアイウェアディスプレイ」において、2つのホログラフィック光学素子を有するシースルー機能を実行する眼鏡型表示システムを開示した。当該システムは、ディスプレイのサイズを実質的に減少させることができる。しかし、このシステムにはホログラムが必要であり、光の利用効率が低く、高解像度および広視野角が困難である。
【0008】
図5に示すように、Saarikkoらは、米国特許出願公開公報US2016/0231568号明細書において、シースルー式ディスプレイを可能にする回折面を使用する導波路を開示した。このディスプレイは、見る者にとって閲覧領域を制限する大きなアイボックスを形成するために大きな「折り返し」領域を必要とする。また、回折は、格子表面による位相変化を細かく調整することを必要とする。また、広スペクトル光源が使用される場合には色収差が生じる。
【0009】
図6に示すように、Takagiらは、米国特許第8,780,447号明細書において、ハーフミラーを使用して虚像を形成するシースルー式ディスプレイを可能にする光学系を開示した。この光学系では、平面ミラーが1枚であるため、導波路の厚さを減少させるには限界がある。この光学系を用いた製品は、市販されている。
【0010】
図7によると、Amitai(米国特許第7672055号明細書)は、傾斜角面を有するプレートを有して製造されたダイクロイックミラーを備える導波路を使用するシースルー式ディスプレイを開示している。この構造は、導波路の厚さに起因して視野の制限がある。
【0011】
携帯可能であり、ハンズフリーであり、かつ安全性があるため、ウェアラブルシースルー式ディスプレイが人気を博しつつある。しかし、通常の眼鏡と同様にコンパクトで高解像度と広視野と大型アイボックスとを有するウェアラブルシースルー式ディスプレイは、まだ市場に出回っておらず、この技術に対してする要望は長い間ある。本発明は、これらのニーズを満たすものを提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、眼鏡型ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイおよび薄型投影ディスプレイに適した独自の非常にコンパクトなシースルー式ディスプレイを開示する。このディスプレイは、
図8に示されるように、1)プロジェクタ(801)と、2)入力結合プリズム(802)を有するライトパイプ(803)と、3)鋸歯状プリズムを有する折り返し式ミラー(805)と、4)出力結合導波路(807)と、を備える。
【0013】
プロジェクタ(801)は、LCDと、マイクロミラーデバイスまたはOLED表示装置と、携帯電話のカメラのレンズセットと同様のレンズセットと、を備える。プリズムは、プロジェクタからの光線をライトパイプ(1004)内に導くための入力結合光学系(
図10の1003)に使用される。携帯電話のカメラは非テレセントリックレンズを使用するが、テレセントリック光学系(1002)が投影光学系により適している。入力結合プリズムの後、光線はライトパイプ(
図11の1101または
図12の1203)に入力される。
図11に示すようなパイプ内の光線は、出力結合導波路(807)に向けて90度折り曲げられるか屈折されなければならない。ライトパイプ(1101)の表面は、表示装置内のピクセルの各々からの光線(1105)の1つの方向のみを受け取る。しかしながら、このタイプのライトパイプは、上部が大きく、空間を占有し過ぎる。従来技術において開示されたディスプレイは、この空間に悩まされているが、本発明は、実質的により小型のライトパイプを提供することができる。本発明は回折を使用しないので、投影レンズの後に色収差が存在せず、従来技術のような三層の導波路ではなく単一の出力結合導波路が可能になる。
【0014】
本発明の一態様は、表示装置と、ライトパイプに光を投影するための投影レンズセットとを備える、新規かつ改良された表示システムを提供することである。このシステムは、表示装置および投影レンズセットからの光線をライトパイプに入力する入力結合プリズムをさらに備える。システムは、出力結合導波路と、ライトパイプからの光線を出力結合導波路に向けて反射する折り返し式ミラーとをさらに備え、ライトパイプは矩形の断面を有し、ライトパイプの側面の表面は、開口部以外はコーティングまたは全反射(TIR)による反射性を有し、光線は、開口部を通ってライトパイプから出て折り返し式ミラーに向かい、折り返し式ミラーは、鋸歯状ミラーを有し、光線を前記出力結合導波路に向けて反射し、出力結合導波路は、複数の鋸歯状ミラーを有するとともに光線を見る者の目に向けて反射する。別の好適な一実施形態において、投影レンズセットはテレセントリックであり、表示装置から出射される主光線は、表示装置の表面に対して実質的に垂直であり、ピクセルからの主光線は、入力結合プリズムの内部または近くで互いに交差する。別の好適な一実施形態において、入力結合プリズムは反射面を有し、反射面は投影レンズセットからの光線を受光し、光線をライトパイプ内に反射し、反射面の法線ベクトルは、投影レンズセットの光軸に対して15度から45度の間にある。別の好適な一実施形態において、入力結合プリズムは反射面を有し、反射面は投影レンズセットからの光線を受光し、光線をライトパイプ内に反射し、反射面の法線ベクトルは、ライトパイプの長辺に対して30度から60度の間にある。別の好適な一実施形態において、入力結合プリズムおよびライトパイプの屈折率が1.4を上回る。別の好適な一実施形態において、開口部のサイズは、ライトパイプの長辺沿いの位置によって変化する。別の好適な一実施形態において、折り返し式ミラーは、ライトパイプの上面に対して15度から45度の間で傾斜しており、折り返し式ミラーの法線ベクトルは、投影レンズにおける光軸に対して平行な光線が前記ライトパイプの上面の法線ベクトルに実質的に平行となるように設定されている。別の好適な一実施形態において、折り返し式ミラーは、ライトパイプの上面に対して15度から45度の間で傾斜しており、折り返し式ミラーの法線ベクトルは、投影レンズにおける光軸に対して平行な光線がライトパイプの上面の法線ベクトルに実質的に平行となるように設定されている。別の好適な一実施形態において、出力結合導波路は、光線が入射しているプリズムを形成する傾斜側面を有し、傾斜側面の法線ベクトルは、ライトパイプの上面に対して15度から45度の間にあり、それにより、折り返し式ミラーからの光線が出力結合導波路内へ反射され得る。別の好適な一実施形態において、出力結合導波路は、光線が入射するプリズムを形成する傾斜側面を有し、傾斜側面の法線ベクトルは、ライトパイプの上面に対して15度から45度の間にあり、それにより、折り返し式ミラーからの光線が出力結合導波路内へ反射され得る。別の好適な一実施形態において、出力結合導波路は、折り返し式ミラーからの光線を見る者の目に向けて反射する複数の鋸歯状ミラーを有し、フレネルミラーが存在しない平坦領域は、TIR(全反射)によって光線を反射するとともに、外部光が見る者の目に到達できるように透明であり、鋸歯状ミラーの領域は、反射コーティングを有する。別の好適な一実施形態において、ライトパイプおよび/または出力結合導波路は、光を部分的に反射して非照明領域を減少させる1つまたは複数の層を有する。別の好適な一実施形態において、出力結合導波路の表面は、複数の平坦な表面から形成される湾曲外殻を有しており、それにより、内部反射された光線ビームが完全に平坦な表面の角度と同じ角度となる。別の好適な一実施形態において、出力結合導波路の複数の鋸歯状ミラーの角度は場所によって可変であり、それにより、画像が有限距離で合焦するようになっている。別の好適な一実施形態において、表示システムが複数セット重ねられており、それにより、複数の距離における画像が見ることができるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、或る米国特許に公開されたフレネルレンズを有する反射スクリーンを有するヘッドアップディスプレイを示している。このヘッドアップディスプレイは、従来型のミラーからの反射方向を変換するが、表示システムのサイズは減少しない。
【
図2】
図2は、大きなスペースを必要とするダッシュボードに埋め込まれた別のヘッドアップディスプレイを示す。
【
図3】
図3は、米国特許第7460286号明細書に関連する公開技術報告書にKasaiが示した先行技術の画像表示システムの断面図である。
【
図4】
図4は、MukawaらによるSID2008ダイジェストISSN/008-0906X/08/3901-0089「ホログラフィック平面導波路を用いたフルカラーアイウェアディスプレイ」である。
図4に示されるウェアラブルディスプレイは、シースルー機能を備え得ることが実証されている。
【
図5】
図5は、入力結合および出力結合の両方のために回折格子を使用する、米国特許出願公開第20160231568号明細書に開示される別のシースルー式ディスプレイである。
【
図6】
図6は、Takagiらによる米国特許第8,780,447号明細書に開示されているハーフミラーを用いて仮想イメージを形成することによってシースルー式ディスプレイを可能にする光学系を示す。
【
図7】
図7は、導波路の厚さ全体にわたって延在するダイクロイックコーティングを用いる光学系を有する、Amitaiらによって開示された別のシースルー式ディスプレイである。
【
図8】
図8は、眼鏡型ディスプレイを示す本発明の例示的な一実施形態を示す。
【
図9】
図9は、投影表示装置および投影レンズセットを示す図である。
【
図10】
図10は、導波路に光線を導入する入力結合光学系を示している。
【
図12】
図12は、大型の導波路ではなく狭いライトパイプを有する入力結合光学系から光を導くライトパイプの一例を示す。
【
図13】
図13は、表示装置(1301)から出て投影レンズ(1302)と、入力結合プリズムと、ライトパイプ(1304)と、開口部(1305)と、折り返し式ミラー(1306)と、出力結合導波路(1308)とを通過する光の軌跡を例示的に示す。
【
図14】
図14は、ライトパイプ、開口部および折り返し式ミラーの詳細を示す。
【
図16】
図16は、本発明の別の例示的な実施形態を示し、導波路全体にわたって中心ビームに対して極めて均一な光線の分布を示す。
【
図17】
図17は、右下の光線の領域の中に非照明領域が含まれている、本発明の別の例示的な一実施形態を示す。
【
図18】
図18は、9つの点すべてを含む光線の軌跡の一例を示す本発明の別の例示的な一実施形態を示す。
【
図19】
図19は、光線の軌跡を上から示す本発明の別の例示的な一実施形態であり、非常に大型のアイボックスが示されている。
【
図20】
図20は、出力結合導波路を示す本発明の別の例示的な一実施形態を示す。
【
図21】
図21は、すべてのフレネルミラーの角度が等しく、無限遠の画像となる本発明の別の例示的な一実施形態を示す。
【
図22】
図22は、場所によってフレネルミラーの角度を変化させることによって有限遠の画像となる本発明の別の例示的な一実施形態を示す。
【
図23】
図23は、表示システムの追加セット(1つまたは複数)が追加され二つまたは複数の距離の画像を得る、本発明の別の例示的な一実施形態を示す。
【
図24】
図24は、除去すべきゴースト像である不所望の反射を生じる可能性のあるフレネルミラーを示す。
【
図25】
図25は、画像の可視性に影響を及ぼす非照明領域のいくつかが最小化される別の例示的な一実施形態を示す。
【
図26】
図26は、本発明の別の例示的な一実施形態であって、導波路の表面に段を導入して同一の反射角度を維持することによって、反射角度を変えることなく導波路の湾曲した眼鏡が達成される、一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、実施形態を詳細に参照する。実施形態の例は、添付の図面に示されている。以下の詳細な説明では、本明細書に提示される主題の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。しかし、当該主題がこれらの具体的な詳細なしに実施または設計され得ることは、当業者には明らかであろう。他の事例、周知の方法、手順、構成要素、および回路は、実施形態の態様を不必要に曖昧にしないように詳細には記載されていない。
【0017】
以下、本開示の技術的な解決策を、添付の図面を参照しながら明瞭にかつ完全に記載する。記載される実施形態は例であり、本開示の実施形態の全てではなく一部にすぎないということは明らかである。本開示の説明された実施形態に基づいて当業者が得られるすべての他の実施形態は、本開示の保護範囲内に入るものとする。
【0018】
本発明の目的は、シースルー式ディスプレイを達成することである。このシースルー式ディスプレイは、水平方向に60度(またはプラスマイナス30度)を超える広視野(FOV)と15mm程度の大きさのアイボックスと4K程度の高解像度とを有し、眼鏡に適合するコンパクトなサイズで、見る者のニーズおよび要望を満たすものである。上記の仕様の全てを満たす拡張現実またはARディスプレイが、本発明によって達成され得る。アイレリーフは、結合器までの距離として定義される。なお、結合器とは、外部の実像と生成した画像とを結合する装置である。本願では、導波路の出力結合ユニットが結合器である。アイレリーフは、典型的には、本物または偽物の睫毛に応じて8ミリメートルから15ミリメートルである。眼球の直径は、約1インチまたは25ミリメートルであり、眼球は球の中心回りに回転する。見る者のアイレリーフが15ミリメートルであり見る者がFOVの縁部を凝視しているとき、眼球は約30度回転し、画像はこの条件で可視である必要がある。これには、アイボックスのサイズが水平方向に13ミリメートル以上であることが必要とされる。
【0019】
本発明の例示的な一実施形態を
図8に示す。ピクセル配列を有するディスプレイが(808)に配置され、一組の投影レンズ(801)が配置される。光線がプリズム(802)上に投影され、ライトパイプ(803)に入力される。光線は、ライトパイプ(803)内に伝播し、プリズム(802)からの元の光線と同じ方向を有する光線のみが選択され、折り返し式ミラー(805)に導かれる。光線は、折り返し式ミラーによって出力結合導波路(807)に向けて約90度反射される。光線は、出力結合導波路内で鋸歯状であるフレネルミラーによって見る者の目に向かって反射される。各ブロックの詳細については後の段落で述べる。
【0020】
本発明の入力結合光学系の例示的な一実施形態を
図9に示す。表示装置(903)が配置されており、この表示装置は光線(904)を一組の投影レンズ(905)に出射する。このレンズセットは、テレセントリック光学系として設計されている。このことが意味するのは、投影レンズセットに入射する表示装置の各ピクセルからの光線(904)のうち主光線が投影レンズセットの光軸(909)に実質的に平行である、ということである。このレンズセットは、907a、907b、および907cに示されるように、単一のピクセルから投影される光線のすべてが互いに実質的に平行であるように、画像が無限遠または実質的に無限遠となる距離に合焦されるように設計されなければならない。この光学系は、単一のピクセルからの光線のすべてが平行であることを確実にする。これは、光線がライトパイプ内で混合された後に画像を合焦するための重要な原理である。なぜなら、この光学系は、同じ方向を有する全ての光線が単一のピクセルからのものであることを保証するからである。この入力結合光学系は、90%から100%の効率で光線を伝達する。最大角度(902)は、プリズムがポリカーボネートで作られている場合にはプラスマイナス42.6度までとすることができる。そして、この角度は、ポリカーボネートの屈折率よりも高い屈折率のものが使用される場合には、さらに大きくすることができる。このことによって、プラスマイナス30度以上または60度以上のFOVが確実になる。
【0021】
本発明のライトパイプの例示的な一実施形態を
図12に示す。入力結合プリズムの鏡面(1202)は、投影レンズからの全ての光線をライトパイプの側壁に当たるように45度回転させる。光線が入力結合導波路に入力された後、9つの点(x軸およびy軸上の中心、4つの角、および4つのエッジ点)を含む光線の方向が
図11に示される。光線は、この導波路内で出力結合に向かって約90度屈折することができるが、そのためには大きな領域を必要とする。折り返し領域を減少させるために、1つの光が使用される。しかし、(1203)として示されるライトパイプは、側壁ならびに頂壁および底壁での反射に起因して、4つの異なる方向を含むことになる。必要な方向は、4つの方向のうち1つの方向のみである。必要な方向の光線を選択するために選択機構が必要である。
【0022】
本発明の選択機構の例示的な一実施形態を
図13および
図14に示す。ライトパイプ(1304および1401)の断面が示されている。ライトパイプの4つの側面は、TIR(全反射)または反射コーティング(1405)のいずれかによって反射する。ライトパイプの上面は、(1401)としてマークされている。必要な方向を有する光線(1406)のみが通過できる開口部(1404)がある。開口部を通過した光線(1406)は、折り返し式ミラー(1407)によって反射されることになる。折り返し式ミラーは、鋸歯状(フレネル型)プリズム(
図15の1507)であり、光線を出力結合(1308および1509)に向けて反射するように設計されている。ライトパイプの端から端まで輝度の均一性を得るために、開口部のサイズは場所によって変化している。入力結合プリズムに近い領域は、遠い領域よりも小さい開口部となっている。
【0023】
本発明の例示的な一実施形態を
図16に示す。中心ピクセルからの光線の軌跡を(1609)として示す。表示装置および投影レンズ(1601)、投影レンズからの全ての光線をライトパイプ(1603)の側壁に当たるように45度回転させる入力結合プリズム(1602)。ライトパイプに入る前の光線と同じ方向を有する光線が、折り返し式ミラー(1608)に伝えられて、出力結合導波路(1606)に向かって反射される。
図16に示すシミュレーションでは、導波路全体にわたって中心ビームに対して極めて均一な光線の分布を示している。右下部の光線に関するシミュレーションが
図17に示されている。この図は、非照明領域(1707)をいくつか示している。この非照明領域は、このディスプレイのアイボックスを制限する。眼球がこの領域を凝視すると、右下の画像は見えないが、他の方向の画像は見える。
図18のシミュレーションでは、9つの点全てを含む光の軌跡の一例を示している。
図19は、光線の軌跡を上から示す本発明の別の例示的な一実施形態であり、非常に大型のアイボックスが示されている。
【0024】
本発明の例示的な一実施形態を
図20に示す。この図は、出力結合導波路を示す。光線(2007)は、出力結合導波路の一部である別のプリズム(2006)に入力され、内部で反射される。光線(2008)は、導波路の頂壁および底壁で複数回反射され、それらの光線の一部は、フレネルミラー(2001)に当たって、見る者の目に向かって反射される。ミラーのピッチ(2003)および幅(2004)は、導波路全体にわたる輝度の均一性を保証するように選択される。全ての光線が必ずしもTIR(全内部反射)内にあるわけではないので、ミラー部分(2004)は反射材料でコーティングされる。
【0025】
本発明の例示的な一実施形態を
図21および
図22に示す。すべてのフレネルミラーの角度が等しい場合、
図21に示すように像距離は無限遠となるであろう。
図22に示すように、フレネルミラーの角度を場所によって変えることにより、有限遠の像距離を得ることができる。
【0026】
本発明の例示的な一実施形態を
図23に示す。
図23に示すように、追加の表示システム(1つまたは複数)が追加されることによって、2つ又は複数の像距離を実現可能である。
【0027】
本発明の例示的な一実施形態を
図24に示す。フレネルミラーは、
図24に示すよう不所望の反射(2405および2406)を生じる可能性があり、この不所望の反射はいわゆるゴースト像を生じる可能性があるので除去しなければならない。このタイプの不所望の反射は、ミラー前の所定の領域のみで起こることからこの領域に、光吸収材料(2414)をコーティングするとよい。
【0028】
本発明の例示的な一実施形態を
図25に示す。
図25に示す光線の軌跡は、いくつかの非照明領域(2501)を示している。この非照明領域は、画像の可視性に影響を与えるものであり、最小化しなければならない。部分反射層を、ライトパイプおよび/または出力結合導波路に挿入させるか、または、ライトパイプおよび/または出力結合導波路の上部に追加させる。この部分反射層は、異なる屈折率(複数可)を有する材料(複数可)の層をコーティングまたは挿入することによって実現できる。
【0029】
本発明の例示的な一実施形態を
図26に示す。見る者が、導波路が湾曲した眼鏡を望むことがある。そこで、
図26に示すように、導波路の表面に段を導入して同一の反射角度を維持することによって、反射角度を変えずに済む。溝が見えないようにするためには、段の高さを最小にしなければならない。
【0030】
前述の説明は、説明の目的で、特定の実施形態を参照して説明されている。しかしながら、前述の例示的な説明は、網羅的であること、または開示された厳密な形態に本開示を限定することを意図するものではない。上記の教示を考慮して、多くの修正および変形が可能である。実施形態は、本開示の原理およびその実際的な用途を最もよく説明するために選択され、説明され、それによって、他の当業者が、企図される特定の使用に適した様々な修正を伴う本開示および様々な実施形態を最もよく利用することを可能にする。