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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】高圧水素容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/02 20060101AFI20230220BHJP
   F17C 13/06 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
F17C1/02
F17C13/06 301A
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021069733
(22)【出願日】2021-04-16
(65)【公開番号】P2021173415
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2020074739
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391018019
【氏名又は名称】JFEコンテイナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】岡野 拓史
(72)【発明者】
【氏名】門田 皓太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 周作
(72)【発明者】
【氏名】松原 和輝
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-062666(JP,A)
【文献】特許第6156712(JP,B1)
【文献】特開2019-035441(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110242858(CN,A)
【文献】特開2017-183275(JP,A)
【文献】特開平06-286993(JP,A)
【文献】特開2014-015983(JP,A)
【文献】特公昭54-006505(JP,B2)
【文献】特許第3532714(JP,B2)
【文献】特開平08-219284(JP,A)
【文献】特公昭50-018613(JP,B1)
【文献】特開昭62-101969(JP,A)
【文献】実公平6-6540(JP,Y2)
【文献】実開昭63-170987(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
F16J 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水素の貯蔵用の金属円筒と、
前記金属円筒の両端部を覆った一対の蓋部材と、
長手方向を前記金属円筒の中心軸に平行にして配列された複数の締結部材と、
を備え、
前記一対の蓋部材のそれぞれには、前記複数の締結部材を挿通する複数の貫通孔が形成され、
前記複数の締結部材のそれぞれは、
両端部が前記一対の蓋部材のそれぞれに形成された前記複数の貫通孔に差し込まれ、
前記金属円筒よりも外側に点在して前記金属円筒の外周を囲んで配置され、
前記一対の蓋部材の間に前記金属円筒を挟み込んだ状態で固定し
前記一対の蓋部材は、
前記金属円筒の両端面と直接当接して前記金属円筒の内部を密封した高圧水素容器。
【請求項2】
高圧水素の貯蔵用の金属円筒と、
前記金属円筒の両端部を覆った一対の蓋部材と、
前記一対の蓋部材の間に前記金属円筒を挟み込んだ状態で固定した複数の締結部材と、
を備え、
前記金属円筒及び前記一対の蓋部材の中における前記金属円筒の内部から外部に至る際に、前記一対の蓋部材のうちどちらか一方の前記蓋部材において、外部に至る経路と、前記複数の締結部材のうち前記金属円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置に至る経路と、のうち共通する最短の距離の共通経由位置を有し、
当該蓋部材における前記共通経由位置から外部への最低厚みがt[mm]とされ、
前記共通経由位置と前記複数の締結部材のうち前記金属円筒に最も近い締結部材が当該蓋部材に挿通された位置との間がL0[mm]とされると、
L0>tが満たされている高圧水素容器。
【請求項3】
前記一対の蓋部材のそれぞれには、前記複数の締結部材を挿通する複数の貫通孔が形成され、
前記複数の締結部材のそれぞれは、前記一対の蓋部材のそれぞれに形成された前記複数の貫通孔に差し込まれている請求項2に記載の高圧水素容器。
【請求項4】
前記複数の締結部材のそれぞれは、長手方向を前記金属円筒の中心軸に平行に配列されている請求項3に記載の高圧水素容器。
【請求項5】
前記複数の締結部材は、前記金属円筒の外周に点在して前記金属円筒の外周を囲んでいる請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の高圧水素容器。
【請求項6】
前記複数の締結部材は、
同一円周上に同じ間隔で点在し、
前記金属円筒と前記金属円筒の外周を囲んだ前記複数の締結部材とは、
前記金属円筒の中心軸を中心とした同心円を構成している請求項1又は請求項5に記載の高圧水素容器。
【請求項7】
前記金属円筒と前記金属円筒の外周を囲んだ前記複数の締結部材との間には、前記金属円筒と前記複数の締結部材とを離間させた隙間が形成されている請求項5又は請求項6に記載の高圧水素容器。
【請求項8】
前記複数の締結部材には、ボルトが用いられている請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の高圧水素容器。
【請求項9】
前記金属円筒と前記一対の蓋部材のそれぞれとを嵌め合う2つの嵌め合い構造を有する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の高圧水素容器。
【請求項10】
前記一対の蓋部材のそれぞれは、
前記金属円筒側にて前記金属円筒の内周に嵌め合わせる外周を有する凸部を有する請求項に記載の高圧水素容器。
【請求項11】
前記凸部の側周面と前記金属円筒の内周面とを密封する第1シール部が設けられている請求項10に記載の高圧水素容器。
【請求項12】
前記第1シール部は、
前記凸部の側周面を一回りして形成された第1シール溝と、
前記第1シール溝内に配置された第1オーリングと、
前記第1シール溝内の前記第1オーリングよりも前記蓋部材側に配置されたバックアップリングと、を有する請求項11に記載の高圧水素容器。
【請求項13】
前記一対の蓋部材と前記金属円筒の前記一対の蓋部材のそれぞれに当接する端面とを密封する第2シール部が設けられている請求項11又は請求項12に記載の高圧水素容器。
【請求項14】
前記第2シール部は、
前記金属円筒の前記端面を一回りして形成された第2シール溝と、
前記第2シール溝内に配置された第2オーリングと、を有する請求項13に記載の高圧水素容器。
【請求項15】
前記金属円筒における前記第1シール部と前記第2シール部との間には、内部から外部に貫通したリークポートが設けられている請求項13又は請求項14に記載の高圧水素容器。
【請求項16】
前記リークポートを通る気体に含まれる水素を検知する水素センサを更に備える請求項15に記載の高圧水素容器。
【請求項17】
前記水素センサは、
前記リークポートを通る気体に含まれる水素の量を常時監視し、前記リークポートを通る気体に含まれる水素の量が規定値以上の場合に報知する請求項16に記載の高圧水素容器。
【請求項18】
前記水素センサは、
前記リークポートを通る気体に含まれる水素の量が0になった場合に報知する請求項16又は請求項17に記載の高圧水素容器。
【請求項19】
前記一対の蓋部材のそれぞれは、
前記凸部の外周側に位置する溝部を更に備え、
前記溝部は、前記凸部の突出方向とは反対方向に凹んで前記金属円筒が嵌め込まれる請求項10~請求項18のいずれか1項に記載の高圧水素容器。
【請求項20】
前記一対の蓋部材のぞれぞれは、表裏形状が正方形である板状体を用いている請求項1~請求項19のいずれか1項に記載の高圧水素容器。
【請求項21】
当該高圧水素容器は、輸送用車両のカウンターウェイトの一部を兼ねる請求項1~請求項20のいずれか1項に記載の高圧水素容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧水素を貯蔵する高圧水素容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池式の搬送用車両では、高圧水素の出入口を円筒部の一端部に形成されたドーム状の頂部に設けた高圧水素容器を用いる技術が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6120017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、搬送用車両に搭載された高圧水素容器の使用中に想定される高圧水素の繰り返し圧力サイクルが存在するため、応力水準を低減するように胴部分に厚肉の円筒部を用い、当該円筒部の一端部にドーム状の部分を形成している。このため、耐圧を確保した高圧水素容器の製造に手間がかかり、製造コストが高くなる課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、簡易な構成で製造に手間がかからず、製造コストが低減できる耐圧を確保した高圧水素容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の高圧水素容器は、
高圧水素の貯蔵用の金属円筒と、
前記金属円筒の両端部を覆った一対の蓋部材と、
前記一対の蓋部材の間に前記金属円筒を挟み込んだ状態で固定した複数の締結部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の高圧水素容器によれば、複数の締結部材は、一対の蓋部材のうち一方の蓋部材と他方の蓋部材とを双方の間に金属円筒を挟み込んで固定している。このため、高圧水素容器は、一対の蓋部材を複数の締結部材によって固定して製造できる。したがって、簡易な構成で製造に手間がかからず、製造コストが低減できる耐圧を確保した高圧水素容器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係るフォークリフトを示す概略構成図である。
図2】実施の形態に係る高圧水素容器を示す外観斜視図である。
図3】実施の形態に係る高圧水素容器を示す分解斜視図である。
図4】実施の形態に係る高圧水素容器を示す概略構成図である。
図5】実施の形態に係る高圧水素容器を図4の矢印Aの方向から示す側面図である。
図6図4のB部を拡大して示す拡大図である。
図7】実施の形態に係る高圧水素容器1の変形例の一部の拡大図である。
図8図4のC部を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の蓄圧器の好ましい実施の形態が図面を参照して詳しく説明されている。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0010】
<フォークリフト100の構成>
図1は、実施の形態に係るフォークリフト100を示す概略構成図である。図1に示されるフォークリフト100は、燃料電池式の輸送用車両である。フォークリフト100は、車体101の前部に荷役装置102を備える。フォークリフト100は、車体101の中央部に運転席103を備える。
【0011】
フォークリフト100は、運転席103の下方に燃料電池104を備える。燃料電池104は、発電ユニット105と、高圧水素容器1と、を有する。発電ユニット105は、空気中の酸素と高圧水素容器1から供給される水素とを化学反応させて電力を発生させる。
【0012】
フォークリフト100は、車体101の前部に駆動輪である一対の前輪106と、車体101の後部に送舵輪である一対の後輪107と、を備える。一対の前輪106は、図示しない電動モータに駆動される。電動モータには、発電ユニット105から電力が供給される。一対の後輪107は、運転席103に搭乗した運転者によって操舵される。
【0013】
フォークリフト100は、車体101の後部にカウンターウェイト108を備える。カウンターウェイト108は、車両重量調整と車体101における重量バランスとを図る。フォークリフト100は、車体101の前部にカウンターウェイトを備えない。フォークリフト100の車体101の中央部に備えた高圧水素容器1は、カウンターウェイト108を補助する重量を有する。すなわち、高圧水素容器1は、フォークリフト100のカウンターウェイトの一部を兼ねる。このため、燃料電池104は、軽量で加工のし易い図示しないケースに収容されている。ケースは、カウンターウェイトの一部を兼ねない。
【0014】
<その他の輸送用車両>
上述のようにフォークリフト100に高圧水素容器1が用いられる。しかし、高圧水素容器1は、これに用いられることに限られない。その他の輸送用車両にも高圧水素容器1が用いられる。たとえば、高圧水素容器1が用いられる輸送用車両は、空港などで使用されるトーイングカーなどでも良い。
【0015】
<高圧水素容器1の構成>
図2は、実施の形態に係る高圧水素容器1を示す外観斜視図である。図3は、実施の形態に係る高圧水素容器1を示す分解斜視図である。図4は、実施の形態に係る高圧水素容器1を示す概略構成図である。図5は、実施の形態に係る高圧水素容器1を図4の矢印Aの方向から示す側面図である。
【0016】
図2図3図4及び図5に示される高圧水素容器1は、高圧水素を貯蔵する。高圧水素容器1は、金属円筒2と、一対の蓋部材3と、複数の締結部材4と、を備える。金属円筒2は、高圧水素の貯蔵用である。一対の蓋部材3は、金属円筒2の両端部を相互に覆っている。複数の締結部材4は、一対の蓋部材3のうち一方の蓋部材3と他方の蓋部材3とを双方の間に金属円筒2を挟み込んで固定している。
【0017】
<金属円筒2>
金属円筒2は、両端部が開放された高圧水素の貯蔵用の円筒部材である。金属円筒2は、内部に貯蔵する高圧水素の漏れを防ぐため、継目無しの金属製円筒部材で構成されている。
【0018】
金属円筒2は、たとえば、低合金鋼で構成されている。すなわち、金属円筒2は、たとえばクロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、マンガンクロム鋼、マンガン鋼もしくはボロン添加鋼のうちいずれか1つを有するものとして構成されている。
【0019】
金属円筒2の内周面は、脱炭層が除去されている。また、金属円筒2の内周面は、脱炭層の除去の後、質量の大きいショット玉の照射によって内面に残留圧縮応力が付与されている。
【0020】
なお、金属円筒2の外周には、炭素繊維強化樹脂部が巻き付けられても良い。炭素繊維強化樹脂部は、金属円筒2の所要の耐圧性である機械的強度を確保するために設けられる。炭素繊維強化樹脂部は、強化材に炭素繊維を用い、これに樹脂を含浸させて強度を向上させた複合材料であり、たとえばPAN系炭素繊維あるいはPITCH系炭素繊維などが用いられる。
【0021】
<蓋部材3>
蓋部材3は、金属円筒2の両端部にそれぞれ取り付けられて覆い、金属円筒2を閉塞する。一対の蓋部材3のぞれぞれは、表裏形状が正方形である板状体を用いている。一対の蓋部材3は、容易に設置又は積み上げできるように、双方の上下左右の各辺を平行に取り付けられている。なお、蓋部材3の形状は、上記構成に限られず、適宜設計変更可能である。少なくとも一方の蓋部材3には、図示しない水素通し孔に繋がった図示しないバルブが設けられ、高圧水素の封入又は放出に利用される。一対の蓋部材3は、金属円筒2と同様な金属製である。
【0022】
一対の蓋部材3のそれぞれには、複数の締結部材4を挿通する複数の貫通孔3aが形成されている。なお、蓋部材3の貫通孔3aには、締結部材4のナット5を収納する凹部が形成されても良い。ここでは、凹部が無い場合であるので、締結部材4のナット5が蓋部材3の外側に突出している。
【0023】
<締結部材4>
締結部材4には、ボルトが用いられている。締結部材4に用いられたボルトは、両端部にそれぞれナット5をネジ固定するロングボルトである。このため、複数の締結部材4のそれぞれは、一方の蓋部材3に形成された貫通孔3aと他方の蓋部材3に形成された貫通孔3aとに差し込まれて双方の蓋部材3の外側に突出している。そして、双方の蓋部材3の外側に突出した締結部材4の両端部にそれぞれナット5がネジ固定されている。なお、締結部材4は、一方の端部に頭部を有するとともに他方の端部のみをナット5によってネジ固定されるボルトを用いても良い。
【0024】
一方の蓋部材3に形成された貫通孔3aと他方の蓋部材3に形成された貫通孔3aとに差し込まれた複数の締結部材4のそれぞれは、伸びる方向、即ち長手方向を金属円筒2の中心軸Oに平行に配列されている。複数の締結部材4は、金属円筒2の外周に点在して金属円筒2の外周を囲んでいる。詳しくは、複数の締結部材4は、一定の同じ間隔で同一円周上に複数箇所に点在して固定を行っている。そして、金属円筒2と金属円筒2の外周を囲んだ複数の締結部材4とは、金属円筒2の中心軸Oを中心とした同心円を構成している。つまり、複数の締結部材4は、金属円筒2の中心軸Oを中心とした円上に配置されている。金属円筒2と金属円筒2の外周を囲んだ複数の締結部材4との間には、金属円筒2と複数の締結部材4とを離間させた隙間Sが形成されている。なお、複数の締結部材4の配置は、上記構成に限られず、適宜設計に応じて変更可能である。
【0025】
複数の締結部材4のそれぞれの両端部は、双方の蓋部材3の外側にてネジ固定される。なお、締結部材4は、蓋部材3の凹部とナット5との間にスパナなどの工具を差し込んでネジ固定されても良い。また、締結部材4は、頭部に六角レンチなどの工具を嵌め込む差し込み穴を有してネジ固定されても良い。
【0026】
<高圧水素容器1のB部の詳細>
図6は、図4のB部を拡大して示す拡大図である。図4及び図6に示されるように、高圧水素容器1は、金属円筒2と一対の蓋部材3のそれぞれとを嵌め合う2つの嵌め合い構造6を有する。
【0027】
図6に示されるように、2つの嵌め合い構造6のそれぞれは、凸部6aと、溝部6bと、を有する。凸部6aは、一対の蓋部材3のそれぞれの金属円筒2側にて金属円筒2の内周に嵌め合わせる外周を有する。溝部6bは、一対の蓋部材3のそれぞれの金属円筒2側の凸部6aの外周にて凸部6aの突出方向とは反対方向に凹んで金属円筒2の端部を嵌め込む。なお、嵌め合い構造6は、その他の形状で嵌め合っても良い。
【0028】
凸部6aの側周面と金属円筒2の内周面とを密封する第1シール部7が設けられている。第1シール部7は、凸部6aの側周面を一回りして形成された第1シール溝7aと、第1シール溝7a内に配置された第1オーリング7bと、第1シール溝7a内の第1オーリング7bよりも蓋部材3側に配置されたバックアップリング7cと、を有する。第1シール溝7aは、凸部6aを設けた蓋部材3の突出部にリテーナリング7dをネジ7eによってネジ固定して構成されている。リテーナリング7dの外径は、第1シール溝7aの底面の径よりも大きく形成されている。これにより、第1シール溝7aは、蓋部材3の突出部とリテーナリング7dとの間で凸部6aの外周寸法が小さい環状溝に形成されている。第1オーリング7bとバックアップリング7cとは、リテーナリング7dにより環状溝に形成された第1シール溝7aから脱落しないように構成されている。なお、第1シール部7は、バックアップリング7cを有さなくても良いし、第1シール溝7a内の第1オーリング7bよりも金属円筒2側に配置された第2バックアップリングを有しても良い。凸部6aの側周面及び金属円筒2の内周面は、金属円筒2の中心軸Oに沿って平行である。なお、リテーナリング7dは、蓋部材3と異なる金属材料により構成されていても良い。
【0029】
溝部6bの底部と金属円筒2における溝部6bに嵌め込まれて溝部6bの底部に当接する端面とを密封する第2シール部8が設けられている。第2シール部8は、金属円筒2の端面を一回りして形成された第2シール溝8aと、第2シール溝8a内に配置された第2オーリング8bと、を有する。金属円筒2の端面及び溝部6bの底面は、金属円筒2の中心軸Oに対して直交した平面である。
【0030】
なお、第1シール部7と第2シール部8とは、密封機能を発揮できれば上記構成に限られず、周知技術を用いても良い。
【0031】
金属円筒2における第1シール部7と第2シール部8との間には、内部から外部に貫通したリークポート9が設けられている。リークポート9の出口には、水素センサ10が設けられる。水素センサ10は、第1シール部7が破断して第2シール部8が破断する以前の漏洩水素の漏れを監視する。また、水素の漏洩は、第1シール部7又は第2シール部8が破断に至らずとも、シールを構成する材料の劣化により生ずる場合がある。ここでは、リークポート9は、少なくとも一方の蓋部材3に形成されている。なお、リークポート9は、金属円筒2の第1シール部7よりも蓋部材3側の位置、即ち蓋部材3の表面のうち金属円筒2側の面のうち、第1シール部7が当接する部分と第2シール部8が当接する部分との間に位置する面に開口するように形成されていれば良い。また、リークポート9が第2シール部8よりも、水素が貯蔵される内部側に位置することにより、応力が集中し易い溝部6b及び締結部材4が締結されている部分へ水素が到達しない。そのため、応力集中部に水素による強度低下の影響が及ばないため、高圧水素容器1の強度の信頼性が向上する。
【0032】
図6に示すように、リークポート9は、高圧水素容器1の外部に連通している。リークポート9を通った気体は、高圧水素容器1の外部に設置された水素センサ10に導かれるように構成されている。水素センサ10は、リークポート9を通って導かれた気体の水素を検知する。高圧水素容器1は、水素センサ10が気体に含まれる水素の含有量が規定値以上であることを検知した場合に、警告を報知するように構成されていても良い。
【0033】
また、水素センサ10は、リークポート9を通って導かれた気体を常時監視していても良い。高圧水素容器1の第1シール部7は、水素が第1オーリング7bを構成する材料を透過することにより常時所定量の水素がリークポート9から漏洩している。水素センサ10は、リークポート9を通って導かれた気体を常時監視することにより、気体に含まれる水素の量の変化を検知できるため、その変化により第1シール部7の劣化又は破断などの異常による水素漏洩を検知できる。
【0034】
また、水素センサ10が常時監視を行うことにより、水素センサ10自体の動作が正常であるか否かを判定することもできる。つまり、水素センサ10が正常であれば、第1シール部7を透過する水素を常時検知し続けるため、水素センサ10が水素を検知していない場合は、水素センサ10自体が正常に動作していないと判断できる。よって、水素センサ10が水素を検知していない場合にも警告を報知することにより、水素センサ10自体の異常も検知できるため、高圧水素容器1の信頼性が向上する。
【0035】
水素センサ10は、リークポート9を通って導かれた気体中の水素量の変化を報知する報知装置50を備えていても良い。また、報知装置50は、水素センサ10が水素を検知していないこと、即ち気体中に含まれる水素量が実質的に0になったことを報知しても良い。報知装置50は、外部のディスプレイ又は警告灯などの手段により実現されても良い。
【0036】
図7は、実施の形態に係る高圧水素容器1の変形例の一部の拡大図である。図7に示す高圧水素容器1の変形例は、蓋部材3の形状が変更されており、金属円筒2の端部が溝部6bに嵌合されているのではなく、フランジ部6cに突き当てられている。変形例に係る蓋部材13は、フランジ部6cの強度が確保できれば、蓋部材3と同様の強度を確保でき、内部からの水素漏洩も抑止できる。
【0037】
<高圧水素容器1のC部の詳細>
図8は、図4のC部を拡大して示す拡大図である。図8に示されるように、高圧水素容器1は、金属円筒2及び一対の蓋部材3の中における金属円筒2の内部から外部に至る際に、一対の蓋部材3のうちどちらか一方の蓋部材3において、外部に至る経路と、複数の締結部材4のうち金属円筒2に最も近い締結部材4が蓋部材3に挿通された位置に至る経路と、のうち共通する最短の距離の共通経由位置Pを有する。蓋部材3における共通経由位置Pから外部への最低厚みがt[mm]とされる。共通経由位置Pと複数の締結部材4のうち金属円筒2に最も近い締結部材4が蓋部材3に挿通された位置との間がL0[mm]とされる。このとき、L0>tが満たされている。ここで、L0を金属円筒2に最も近い締結部材4が一対の蓋部材3のうちどちらか一方の蓋部材3に挿通された位置とした理由は、複数の締結部材4が同一円上に点在しない場合も考慮しているためである。
【0038】
<実施の形態の効果>
実施の形態によれば、高圧水素容器1は、高圧水素の貯蔵用の金属円筒2を備える。高圧水素容器1は、金属円筒2の両端部をそれぞれ覆う一対の蓋部材3を備える。高圧水素容器1は、一対の蓋部材3のうち一方の蓋部材3と他方の蓋部材3とを双方の間に金属円筒2を挟み込んで固定した複数の締結部材4を備える。
【0039】
この構成によれば、複数の締結部材4は、一対の蓋部材3のうち一方の蓋部材3と他方の蓋部材3とを双方の間に金属円筒2を挟み込んで固定している。このため、高圧水素容器1は、一対の蓋部材3を複数の締結部材4によって固定して製造できる。したがって、簡易な構成で製造に手間がかからず、製造コストが低減できる耐圧を確保した高圧水素容器1が提供できる。
【0040】
実施の形態によれば、締結部材4には、ボルトが用いられている。
【0041】
この構成によれば、高圧水素容器1は、一対の蓋部材3をボルトを用いた複数の締結部材4によって固定して製造できる。
【0042】
実施の形態によれば、一対の蓋部材3のそれぞれには、複数の締結部材4を挿通する複数の貫通孔3aが形成されている。複数の締結部材4のそれぞれは、一方の蓋部材3に形成された貫通孔3aと他方の蓋部材3に形成された貫通孔3aとに差し込まれている。
【0043】
この構成によれば、複数の締結部材4のそれぞれが一方の蓋部材3に形成された貫通孔3aと他方の蓋部材3に形成された貫通孔3aとに差し込まれ、高圧水素容器1が一対の蓋部材3を複数の締結部材4によって固定して製造できる。
【0044】
実施の形態によれば、一方の蓋部材3に形成された貫通孔3aと他方の蓋部材3に形成された貫通孔3aとに差し込まれた複数の締結部材4のそれぞれは、伸びる方向、即ち長手方向を金属円筒2の中心軸Oに平行に配列されている。
【0045】
この構成によれば、複数の締結部材4のそれぞれにおける金属円筒2を挟み込んで固定する挟持力が金属円筒2の中心軸Oに平行な方向であり、当該挟持力にはねじれが生じず、高圧水素容器1の耐久性が向上できる。
【0046】
実施の形態によれば、複数の締結部材4は、金属円筒2の外周に点在して金属円筒2の外周を囲んでいる。
【0047】
この構成によれば、金属円筒2の外周に点在して金属円筒2の外周を囲んだ複数の締結部材4のそれぞれは、金属円筒2の外周に分散して金属円筒2を挟み込んで固定する挟持力を発揮できる。これにより、当該挟持力が金属円筒2の外周にて相互にバランス良く発揮され、高圧水素容器1の耐久性が向上できる。
【0048】
実施の形態によれば、複数の締結部材4は、同一円周上に同じ間隔で点在している。金属円筒2と金属円筒2の外周を囲んだ複数の締結部材4とは、金属円筒2の中心軸Oを中心とした同心円を構成している。
【0049】
この構成によれば、金属円筒2の中心軸Oを中心とした同心円を構成した複数の締結部材4のそれぞれは、金属円筒2の外周に金属円筒2に対する距離を等しく分散して金属円筒2を挟み込んで固定する挟持力を発揮できる。これにより、当該挟持力が金属円筒2の外周にて相互に金属円筒2に対する影響を等しくかつバランス良く発揮され、高圧水素容器1の耐久性が向上できる。
【0050】
実施の形態によれば、金属円筒2と金属円筒2の外周を囲んだ複数の締結部材4との間には、金属円筒2と複数の締結部材4とを離間させた隙間Sが形成されている。
【0051】
この構成によれば、貯蔵する高圧水素に直接接触する金属円筒2には、水素が浸透する。しかし、隙間Sを隔てた複数の締結部材4には、金属円筒2からにじみ出た水素が隙間Sから拡散して浸透しない。そのため、高圧水素容器1は、複数の締結部材4の水素劣化を生じず、複数の締結部材4の耐久性が向上できる。また、隙間Sが金属円筒2と複数の締結部材4との間に存在することにより、金属円筒2が貯蔵する高圧水素によって周方向に変形してもその変形応力が複数の締結部材4に伝わらない。また、締結部材4が隙間Sをおいて配置されていることにより、蓋部材3の締結部材4から荷重を受ける部分も、金属円筒2と蓋部材3とが嵌合する部分から離れているため、応力発生部が水素脆化の影響を受けにくく、強度の信頼性が向上する。
【0052】
実施の形態によれば、高圧水素容器1は、金属円筒2と一対の蓋部材3のそれぞれとを嵌め合う2つの嵌め合い構造6を有する。
【0053】
この構成によれば、金属円筒2と一対の蓋部材3のそれぞれとが2つの嵌め合い構造6のそれぞれによって嵌め合い、金属円筒2と一対の蓋部材3のそれぞれとの間には密封性が確保できる。これにより、高圧水素容器1は、貯蔵する高圧水素が漏れ難い容器を構成できる。
【0054】
実施の形態によれば、2つの嵌め合い構造6のそれぞれは、一対の蓋部材3のそれぞれの金属円筒2側にて金属円筒2の内周に嵌め合わせる外周を有する凸部6aを有する。また、一対の蓋部材3のそれぞれは、金属円筒2側の凸部6aの外周にて凸部6aの突出方向とは反対方向に凹んで金属円筒2の端部を嵌め込む溝部6bと、を有する。
【0055】
この構成によれば、金属円筒2と一対の蓋部材3のそれぞれとが凸部6aと溝部6bとを有する2つの嵌め合い構造6のそれぞれによって嵌め合い、金属円筒2と一対の蓋部材3のそれぞれとの間には密封性が確保できる。
【0056】
実施の形態によれば、凸部6aの側周面と金属円筒2の内周面とを密封する第1シール部7が設けられている。
【0057】
この構成によれば、第1シール部7が凸部6aの側周面と金属円筒2の内周面とを密封し、金属円筒2と一対の蓋部材3のそれぞれとの間には密封性が確保できる。
【0058】
実施の形態によれば、第1シール部7は、凸部6aの側周面を一回りして形成された第1シール溝7aと、第1シール溝7a内に配置された第1オーリング7bと、第1シール溝7a内の第1オーリング7bよりも蓋部材3側に配置されたバックアップリング7cと、を有する。
【0059】
この構成によれば、第1シール溝7a内に配置された第1オーリング7b及びバックアップリング7cを用いた第1シール部7が凸部6aの側周面と金属円筒2の内周面とを密封し、金属円筒2と一対の蓋部材3のそれぞれとの間には密封性が確保できる。
【0060】
実施の形態によれば、溝部6bの底部と金属円筒2における溝部6bに嵌め込まれて溝部6bの底部に当接する端面とを密封する第2シール部8が設けられている。
【0061】
この構成によれば、第2シール部8が溝部6bの底部と金属円筒2の端面とを密封し、金属円筒2と一対の蓋部材3のそれぞれとの間には密封性が確保できる。しかも、第2シール部8は、ボアシールとして機能する第1シール部7とは密封面の異なるトップシールとして機能する。これにより、第2シール部8は、第1シール部7に対して密封面を異ならせることにより、第1シール部7の密閉性の影響を受けることがないため、第1シール部7に加えて更に高圧水素容器1の密封性を確保し、高圧水素容器1の水素漏洩防止性能をより向上できる。さらに、第1シール部7及び第2シール部8は、双方をそれぞれ設けた異なる面を有する同一の嵌め合い構造6にひとまとめに設けられ、効率良く配置できる。
【0062】
実施の形態によれば、第2シール部8は、金属円筒2の端面を一回りして形成された第2シール溝8aと、第2シール溝8a内に配置された第2オーリング8bと、を有する。
【0063】
この構成によれば、第2シール溝8a内に配置された第2オーリング8bを用いた第2シール部8が溝部6bの底部と金属円筒2の端面とを密封し、金属円筒2と一対の蓋部材3のそれぞれとの間には密封性が確保できる。また、第2オーリング8bが蓋部材3の溝部6bの底部ではなく金属円筒2の端面に形成された第2シール溝8a内に配置されるので、第2シール溝8aが形成し易く、かつ、第2オーリング8bが配置し易く、第2シール部8が製造し易い。
【0064】
実施の形態によれば、金属円筒2における第1シール部7と第2シール部8との間には、内部から外部に貫通したリークポート9が設けられている。
【0065】
この構成によれば、貯蔵する水素がリークポート9から流出することにより、第2シール部8の破断又は劣化以前に第1シール部7の破断又は劣化が検出できる。これにより、第2シール部8の破断又は劣化による高圧水素容器1からの水素漏れ以前に第1シール部7の破断又は劣化が検出でき、高圧水素容器1の水素漏れが防止できる。
【0066】
実施の形態によれば、リークポート9を通る気体に含まれる水素を検知する水素センサ10を更に備える。また、水素センサ10は、リークポート9を通る気体に含まれる水素の量を常時監視し、気体に含まれる水素の量が規定値以上の場合に報知する。さらに、水素センサ10は、気体に含まれる水素の量が0になった場合に報知する。このように構成されることにより、高圧水素容器1は、第1シール部7の破断又は劣化による水素漏洩を確実に検出でき、かつ水素センサ10が正常に作動しているか否かを判定することもできる。これにより、水素漏洩検知の確実性が向上し、高圧水素容器1の信頼性が向上する。
【0067】
実施の形態によれば、高圧水素容器1は、金属円筒2及び一対の蓋部材3の中における金属円筒2の内部から外部に至る際に、一対の蓋部材3のうちどちらか一方の蓋部材3において、外部に至る経路と、複数の締結部材4のうち金属円筒2に最も近い締結部材4が蓋部材3に挿通された位置に至る経路と、のうち共通する最短の距離の共通経由位置Pを有する。蓋部材3における共通経由位置Pから外部への最低厚みがt[mm]とされる。共通経由位置Pと複数の締結部材4のうち金属円筒2に最も近い締結部材4が蓋部材3に挿通された位置との間がL0[mm]とされる。このとき、L0>tが満たされている。
【0068】
この構成によれば、貯蔵する高圧水素に直接接触する金属円筒2及び一対の蓋部材3には、水素が浸透する。しかし、L0>tが満たされている場合に、複数の締結部材4には、水素が蓋部材3の内外にわたって浸透するよりも以前に蓋部材3を通じて締結部材4に浸透しない。そのため、高圧水素容器1は、蓋部材3よりも以前に複数の締結部材4の水素劣化を生じず、損傷し難い。
【0069】
実施の形態によれば、一対の蓋部材3のぞれぞれは、表裏形状が正方形である板状体を用いている。
【0070】
この構成によれば、製造者は、一対の蓋部材3のぞれぞれに対する加工をフライス加工ではなく旋盤加工によって実施できる。これにより、加工コストが低減でき、高圧水素容器1の製造が容易である。
【0071】
実施の形態によれば、高圧水素容器1は、輸送用車両のカウンターウェイトの一部を兼ねている。
【0072】
この構成によれば、金属円筒2、一対の蓋部材3及び複数の締結部材4によって高圧水素容器1の重量が重くなる。そのため、輸送用車両のカウンターウェイトの搭載総量が削減でき、輸送用車両の部品点数が削減できる。これにより、輸送用車両の製造コストが低減できる。
【符号の説明】
【0073】
1 高圧水素容器、2 金属円筒、3 蓋部材、3a 貫通孔、4 締結部材、5 ナット、6 嵌め合い構造、6a 凸部、6b 溝部、6c フランジ部、7 第1シール部、7a 第1シール溝、7b 第1オーリング、7c バックアップリング、7d リテーナリング、7e ネジ、8 第2シール部、8a 第2シール溝、8b 第2オーリング、9 リークポート、10 水素センサ、13 蓋部材、50 報知装置、100 フォークリフト、101 車体、102 荷役装置、103 運転席、104 燃料電池、105 発電ユニット、106 前輪、107 後輪、108 カウンターウェイト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8