(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】コイル巻回熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28D 7/02 20060101AFI20230220BHJP
F25J 1/00 20060101ALI20230220BHJP
F25J 5/00 20060101ALI20230220BHJP
F28D 7/10 20060101ALI20230220BHJP
F28F 9/26 20060101ALI20230220BHJP
F28F 27/02 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
F28D7/02
F25J1/00 A
F25J5/00
F28D7/10 Z
F28F9/26
F28F27/02 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021077325
(22)【出願日】2021-04-30
【審査請求日】2021-06-04
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(74)【代理人】
【識別番号】100219553
【氏名又は名称】板谷 一弘
(72)【発明者】
【氏名】マーク ジュリアン ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン デイビッド ブコウスキ
(72)【発明者】
【氏名】アンネマリー オット ウィースト
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-524140(JP,A)
【文献】特表2013-530365(JP,A)
【文献】特開平07-305976(JP,A)
【文献】特開昭61-059189(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0261088(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0209118(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 13/00
F25J 1/00
F25J 5/00
F28F 9/26
F28F 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル巻回熱交換器であって、
シェルと、
第1のバンドルであって、
第1のバンドル端部、および前記第1のバンドル端部の遠位に位置する第2のバンドル端部、
前記第1のバンドル内の中央に位置するマンドレル、前記第1のバンドル端部から前記第2のバンドル端部まで延在し、かつ前記第1のバンドルマンドレルから前記シェルまで延在する第1のバンドルシェル空間、
前記第1のバンドルシェル空間内に位置する複数のチューブであって、前記複数のチューブの各々は、前記第1のバンドル端部に位置する第1のチューブ端部および前記第2のバンドル端部に位置する第2のチューブ端部を有し、前記複数のチューブは、複数の巻回層を形成する前記マンドレルの周囲に巻き付けられ、前記複数の巻回層は、前記第1のバンドルシェル空間内に同心円状に配置された複数のゾーンに分割され、前記複数のチューブは、複数のチューブセットを含み、前記複数のチューブセットの各々は、前記複数のゾーンのうちの異なる1つ内に位置する、複数のチューブ、を備える、第1のバンドルと、
前記第1のバンドル端部に位置する第1の群のチューブシートであって、前記第1の群のチューブシートの各々は、前記複数のチューブセットのうちの1つと前記第1のチューブ端部において流体流連通している、第1の群のチューブシートと、
複数のバルブであって、前記複数のバルブの各々は、前記第1の群のチューブシートの各々と流体流連通しており、前記第1のバンドル端部に位置する、複数のバルブと、
前記第2のバンドル端部に位置する第2の群のチューブシートであって、前記第2の群のチューブシートのうちの少なくとも1つは、前記複数のチューブセットのうちの2つ以上と前記第2のチューブ端部において流体流連通している、第2の群のチューブシートと、を備える、コイル巻回熱交換器。
【請求項2】
前記第1のバンドル端部は、前記第1のバンドルの低温端部であり、前記第2のバンドル端部は、前記第1のバンドルの高温端部である、請求項1に記載のコイル巻回熱交換器。
【請求項3】
前記第2の群のチューブシートの各々は、前記複数のチューブセットの各々からの前記複数のチューブのうちの少なくとも1つと、前記第2のチューブ端部において流体流連通している、請求項1に記載のコイル巻回熱交換器。
【請求項4】
前記第2のバンドル端部は、前記マンドレルの周囲に周方向に配置された複数のセクタを備え、前記第2の群のチューブシートの各々は、前記複数のセクタのうちの単一のものからの第2のチューブ端部と流体流連通している、請求項1に記載のコイル巻回熱交換器。
【請求項5】
前記複数のゾーンの各々に位置する温度センサをさらに備える、請求項1に記載のコイル巻回熱交換器。
【請求項6】
前記
第1のバンドルは、前記低温バンドル端部から前記高温バンドル端部まで延在するバンドル高さを有し、前記温度センサの各々は、前記バンドル高さの中間50%以内に位置する、請求項5に記載のコイル巻回熱交換器。
【請求項7】
前記
第1のバンドルは、前記低温バンドル端部から前記高温バンドル端部まで延在するバンドル高さを有し、前記温度センサの各々は、前記バンドル高さの中間20%以内に位置する、請求項5に記載のコイル巻回熱交換器。
【請求項8】
前記第1の群のチューブシートおよび前記第2の群のチューブシートと流体流連通している第1の入口導管と、第3の群のチューブシートおよび第4の群のチューブシートと流体流連通している第2の入口導管と、をさらに備える、請求項1に記載のコイル巻回熱交換器。
【請求項9】
前記第3の群のチューブシートは、前記第1のバンドル端部に位置し、前記第3の群のチューブシートの各々は、前記複数のチューブセットのうちの2つ以上と前記第1のチューブ端部において流体流連通し、前記第2の群のチューブシートは、前記第2のバンドル端部に位置し、前記第2の群のチューブシートの各々は、前記複数のチューブセットのうちの2つ以上と前記第2のチューブ端部において流体流連通している、請求項8に記載のコイル巻回熱交換器。
【請求項10】
前記複数のゾーンは、最内ゾーンと最外ゾーンとを含み、前記最内ゾーンおよび前記最外ゾーンのうちの少なくとも一方は各々、前記複数のチューブの10~20パーセントを包含している、請求項1に記載のコイル巻回熱交換器。
【請求項11】
前記複数のゾーンは、最内ゾーンと最外ゾーンとを含み、前記最内ゾーンおよび前記最外ゾーンのうちの少なくとも一方は各々、前記複数のチューブの10パーセント未満を包含している、請求項1に記載のコイル巻回熱交換器。
【請求項12】
コイル巻回熱交換器を作製する方法であって、
(a)複数のチューブをマンドレルの周囲に巻回して複数のチューブ層を形成することによって、高温端部および低温端部を有する高温バンドルを形成することであって、前記複数のチューブ層は、複数のゾーン間で分割され、前記複数のゾーンは、前記高温バンドル全体を通して同心円状に配置される、形成することと、
(b)シェルと前記マンドレルとの間にシェル空間を画定する前記シェルを設けることと、
(c)第1の群のチューブシートの各々を前記複数のチューブの第1のサブセットに接続することであって、各第1のサブセットは、複数のゾーン内に位置するチューブを含み、前記第1の群のチューブシートは、前記高温バンドルの前記高温端部および前記低温端部の群から選択される一方に位置する、接続することと、
(d)第2の群のチューブシートの各々を前記複数のチューブの第2のサブセットに接続することであって、前記第2のサブセットの各々は、前記複数のゾーンのうちの1つのゾーン内に位置するチューブを含み、前記第2の群のチューブシートは、前記第1の群のチューブシートとは異なる、前記高温バンドルの前記高温端部および前記低温端部の群から選択される一方に位置する、接続することと、
(e)前記第2の群のチューブシートの各々と下流流体流連通するバルブを設けることと、を含む、方法。
【請求項13】
(f)前記シェル空間内に低温バンドルを形成することであって、前記低温バンドルは、前記複数のチューブのうちの少なくともいくつかと流体流連通する、形成することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(g)前記複数のゾーンの各々に温度センサを配置することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
(h)前記複数のゾーンの各々の、高温バンドル高さの中間50%以内に温度センサを配置することであって、前記高温バンドル高さは、前記高温バンドルの前記高温端部から前記高温バンドルの前記低温端部まで延在する、配置することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のゾーンの各々の、高温バンドル高さの中間20%以内に温度センサを配置することであって、前記高温バンドル高さは、前記低温端部から前記高温端部まで延在する、配置することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
供給ガスを液化するためのシステムであって、
高温バンドル、シェル、および前記シェル内に包含されるシェル空間を備えるコイル巻回熱交換器であって、前記高温バンドルは、
高温端部および低温端部、
前記高温バンドル内の中央に位置するマンドレル、
前記高温端部から前記低温端部まで延在し、かつ前記マンドレルから前記シェルまで延在する高温バンドルシェル空間、
前記
高温バンドルシェル空間内に位置する複数のチューブであって、前記複数のチューブの各々は、前記高温バンドルの前記高温端部に位置する第1のチューブ端部および前記高温バンドルの前記低温端部に位置する第2のチューブ端部を有し、前記複数のチューブは、複数の巻回層を形成する前記マンドレルの周囲に巻き付けられ、前記複数の巻回層は、前記
高温バンドルシェル空間内に同心円状に配置された複数のゾーンに分割され、前記複数のチューブは、複数のチューブセットを含み、前記複数のチューブセットの各々は、前記複数のゾーンのうちの異なる1つ内に位置する、複数のチューブ、を備える、コイル巻回熱交換器と、
供給ストリーム導管、前記高温端部に位置する複数の高温端部
供給チューブシート、前記低温端部に位置する複数の低温端部供給チューブシート、および生成物導管を有する供給回路であって、前記複数の高温端部供給チューブシートおよび前記複数の低温端部供給チューブシートは、第1の群の前記複数のチューブと流体流連通しており、前記供給ストリーム導管、前記複数の高温端部供給チューブシート、前記複数の低温端部供給チューブシート、および前記生成物導管はすべて、流体流連通している、供給回路と、
閉ループを含む冷媒回路であって、前記少なくとも1つの冷媒回路は、
少なくとも1つの圧縮段、ならびにインタークーラーおよびアフタークーラーの群から選択される少なくとも1つを備える圧縮回路、
冷媒ストリーム導管、
前記冷媒ストリーム導管と下流流体流連通している複数の高温端部冷媒チューブシート、
前記複数の高温端部冷媒チューブシートと下流流体流連通している、前記低温端部に位置する複数の低温端部冷媒チューブシート、および
前記複数の低温端部冷媒チューブシートと下流流体流連通している冷却冷媒導管、
前記冷却冷媒導管と下流流体流連通している膨張バルブ、
前記低温端部において前記膨張バルブと下流流体流連通し、かつ前記シェル空間と上流流体流連通している膨張冷媒導管、ならびに
前記高温端部に位置する気化冷媒導管であって、前記気化冷媒導管は、前記シェル空間と下流流体流連通し、かつ前記圧縮回路と上流流体流連通している、気化冷媒導管、を備える、冷媒回路と、を備え、
前記複数の高温端部冷媒チューブシートおよび前記複数の低温端部冷媒チューブシートは、第2の群の前記複数のチューブと流体流連通しており、
前記冷媒ストリーム導管、前記複数の高温端部冷媒チューブシート、前記複数の低温端部冷媒チューブシート、および前記冷却冷媒導管はすべて、流体流連通しており、
前記高温端部供給チューブシートおよび低温端部供給チューブシートの群から選択される第1のものの各チューブシートは、前記複数のチューブセットのうちの1つのみと流体流連通し、前記高温端部供給チューブシートおよび低温端部供給チューブシートの群から選択される第2のものの各チューブシートは、前記複数のチューブセットのうちの2つ以上と流体流連通している、システム。
【請求項18】
前記複数のゾーンの各々に位置する温度センサをさらに備える、請求項17に記載の供給ガスを液化するためのシステム。
【請求項19】
前記高温バンドルは、前記低温バンドル端部から前記高温バンドル端部まで延在するバンドル高さを有し、前記温度センサの各々は、前記バンドル高さの中間50%以内に位置する、請求項18に記載の供給ガスを液化するためのシステム。
【請求項20】
前記高温バンドルは、前記低温バンドル端部から前記高温バンドル端部まで延在するバンドル高さを有し、前記温度センサの各々は、前記バンドル高さの中間20%以内に位置する、請求項18に記載の供給ガスを液化するためのシステム。
【請求項21】
請求項1に記載のコイル巻回熱交換器を動作させる方法であって、
(a)前記複数のゾーンの各々におけるゾーン温度を測定することと、
(b)前記複数のバルブのうちの少なくとも1つの位置を調整することによって、前記複数のゾーンのうちの2つのゾーンの前記ゾーン温度間の差を低減することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
コイル巻回熱交換器(「CWHE」)は、多くの場合、天然ガス液化システムに使用される好ましいタイプの熱交換器である。CWHEでは、冷却されるべき流体(複数可)が、中心マンドレルの周囲に巻き付けられ、軸方向スペーサによって分離され、シェル空間内に包含された多くのチューブ層を通して循環される。チューブ、マンドレル、およびスペーサのアセンブリは、チューブバンドル、またはバンドルを形成する。冷却作用は、シェル空間を通る膨張冷媒(多くの場合、混合冷媒)の流れによって提供される。CWHEの一般的な問題は、シェル空間内の同心ゾーン間の冷媒の温度分布不良であり、これは、バンドルの高温端部と低温端部との間の特定の位置のゾーン間に半径方向温度勾配が存在することを意味する。
【0002】
そのような半径方向温度分布不良を、チューブシートを「ゾーニング」することによって補正しようとする試みがなされており、これは、低温端部および高温端部チューブシートの各々に接続されたチューブを単一のゾーンを通して経路設定することを意味する。この構成は、本明細書では、
図3および
図3Aに関連してより詳細に説明される。高温端部チューブシートの各々の上流にバルブを設けて、各ゾーンを通る流量が独立して制御されることを可能し、それによって、各ゾーン内のチューブ側の流量の割合を、そのゾーン内のシェル側の冷媒の割合により緊密に整合させるように変更することによって温度勾配を低減するための手段を提供する。
【0003】
そのような構成は、低温端部および高温端部の両方で必要とされるチューブシートの数がゾーンの数の関数であり、バンドル内のチューブ数を収容するのに必要とされるよりも多くのチューブシート数となることが多いので、CWHEを構築するコストを増加させる。
【0004】
したがって、半径方向分布不良に対する従来技術の解決策に関連付けられている増加コストおよび複雑性が少ない、半径方向温度分布不良を補正するための流量調整を可能にするCWHE構成が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に開示される主題のシステムおよび方法のいくつかの特定の態様の概要を以下に示す。
【0006】
態様1:コイル巻回熱交換器であって、
シェルと、
第1のバンドルであって、
第1のバンドル端部、および第1のバンドル端部の遠位に位置する第2のバンドル端部、
第1のバンドル内の中央に位置するマンドレル、第1のバンドル端部から第2のバンドル端部まで延在し、かつ第1のバンドルマンドレルからシェルまで延在する第1のバンドルシェル空間、
第1のバンドルシェル空間内に位置する複数のチューブであって、複数のチューブの各々は、第1のバンドル端部に位置する第1のチューブ端部および第2のバンドル端部に位置する第2のチューブ端部を有し、複数のチューブは、複数の巻回層を形成するマンドレルの周囲に巻き付けられ、複数の巻回層は、第1のバンドルシェル空間内に同心円状に配置された複数のゾーンに分割され、複数のチューブは、複数のチューブセットを含み、複数のチューブセットの各々は、複数のゾーンのうちの異なる1つ内に位置する、複数のチューブ、を備える、第1のバンドルと、
第1のバンドル端部に位置する第1の群のチューブシートであって、第1の群のチューブシートの各々は、複数のチューブセットのうちの1つと第1のチューブ端部において流体流連通している、第1の群のチューブシートと、
複数のバルブであって、複数のバルブの各々は、第1の群のチューブシートの各々と流体流連通しており、第1のバンドル端部に位置する、複数のバルブと、
第2のバンドル端部に位置する第2の群のチューブシートであって、第2の群のチューブシートのうちの少なくとも1つは、複数のチューブセットのうちの2つ以上と第2のチューブ端部において流体流連通している、第2の群のチューブシートと、を備える、コイル巻回熱交換器。
【0007】
態様2:第1のバンドル端部は、第1のバンドルの低温端部であり、第2のバンドル端部は、第1のバンドルの高温端部である、態様1に記載のコイル巻回熱交換器。
【0008】
態様3:第2の群のチューブシートの各々は、複数のチューブセットの各々からの複数のチューブのうちの少なくとも1つと、第2のチューブ端部において流体流連通している、態様1および2のいずれかに記載のコイル巻回熱交換器。
【0009】
態様4:第2のバンドル端部は、マンドレルの周囲に周方向に配置された複数のセクタを備え、第2の群のチューブシートの各々は、複数のセクタのうちの単一のものからの第2のチューブ端部と流体流連通している、態様1~3のいずれかに記載のコイル巻回熱交換器。
【0010】
態様5:複数のゾーンの各々に位置する温度センサをさらに備える、態様1~4のいずれかに記載のコイル巻回熱交換器。
【0011】
態様6:高温バンドルは、低温バンドル端部から高温バンドル端部まで延在するバンドル高さを有し、温度センサの各々は、バンドル高さの中間50%以内に位置する、態様5に記載のコイル巻回熱交換器。
【0012】
態様7:高温バンドルは、低温バンドル端部から高温バンドル端部まで延在するバンドル高さを有し、温度センサの各々は、バンドル高さの中間20%以内に位置する、態様5に記載のコイル巻回熱交換器。
【0013】
態様8:第1の群のチューブシートおよび第2の群のチューブシートと流体流連通している第1の入口導管と、第3の群のチューブシートおよび第4の群のチューブシートと流体流連通している第2の入口導管と、をさらに備える、態様1~7のいずれかに記載のコイル巻回熱交換器。
【0014】
態様9:第3の群のチューブシートは、第1のバンドル端部に位置し、第3の群のチューブシートの各々は、複数のチューブセットのうちの2つ以上と第1のチューブ端部において流体流連通し、第2の群のチューブシートは、第2のバンドル端部に位置し、第2の群のチューブシートの各々は、複数のチューブセットのうちの2つ以上と第2のチューブ端部において流体流連通している、態様8に記載のコイル巻回熱交換器。
【0015】
態様10:複数のゾーンは、最内ゾーンと最外ゾーンとを含み、最内ゾーンおよび最外ゾーンのうちの少なくとも一方は各々、複数のチューブの10~20パーセントを包含している、態様1~9のいずれかに記載のコイル巻回熱交換器。
【0016】
態様11:複数のゾーンは、最内ゾーンと最外ゾーンとを含み、最内ゾーンおよび最外ゾーンのうちの少なくとも一方は各々、複数のチューブの10パーセント未満を包含している、態様1~10のいずれかに記載のコイル巻回熱交換器。
【0017】
態様12:コイル巻回熱交換器を作製する方法であって、
(a)複数のチューブをマンドレルの周囲に巻回して複数のチューブ層を形成することによって、高温端部および低温端部を有する高温バンドルを形成することであって、複数のチューブ層は、複数のゾーン間で分割され、複数のゾーンは、高温バンドル全体を通して同心円状に配置される、形成することと、
(b)シェルとマンドレルとの間にシェル空間を画定するシェルを設けることと、
(c)第1の群のチューブシートの各々を複数のチューブの第1のサブセットに接続することであって、各第1のサブセットは、複数のゾーン内に位置するチューブを含み、第1の群のチューブシートは、高温バンドルの高温端部および低温端部の群から選択される一方に位置する、接続することと、
(d)第2の群のチューブシートの各々を複数のチューブの第2のサブセットに接続することであって、第2のサブセットの各々は、複数のゾーンのうちの1つのゾーン内に位置するチューブを含み、第2の群のチューブシートは、第1の群のチューブシートとは異なる、高温バンドルの高温端部および低温端部の群から選択される一方に位置する、接続することと、
(e)第2の群のチューブシートの各々と下流流体流連通するバルブを設けることと、を含む、方法。
【0018】
態様13:
(f)シェル空間内に低温バンドルを形成することであって、低温バンドルは、複数のチューブのうちの少なくともいくつかと流体流連通する、形成することをさらに含む、態様12に記載の方法。
【0019】
態様14:
(g)複数のゾーンの各々に温度センサを配置することをさらに含む、態様12および13のいずれかに記載の方法。
【0020】
態様15:
(h)複数のゾーンの各々の、高温バンドル高さの中間50%以内に温度センサを配置することであって、高温バンドル高さは、高温バンドルの高温端部から高温バンドルの低温端部まで延在する、配置することをさらに含む、態様12~14のいずれかに記載の方法。
【0021】
態様16:
複数のゾーンの各々の、高温バンドル高さの中間20%以内に温度センサを配置することであって、高温バンドル高さは、低温端部から高温端部まで延在する、配置することをさらに含む、態様12~15のいずれかに記載の方法。
【0022】
態様17:供給ガスを液化するためのシステムであって、
高温バンドル、シェル、およびシェル内に包含されるシェル空間を備えるコイル巻回熱交換器であって、高温バンドルは、
高温端部および低温端部、
高温バンドル内の中央に位置するマンドレル、
高温端部から低温端部まで延在し、かつマンドレルからシェルまで延在する高温バンドルシェル空間、
第1のバンドルシェル空間内に位置する複数のチューブであって、複数のチューブの各々は、高温バンドルの高温端部に位置する第1のチューブ端部および高温バンドルの低温端部に位置する第2のチューブ端部を有し、複数のチューブは、複数の巻回層を形成するマンドレルの周囲に巻き付けられ、複数の巻回層は、第1のバンドルシェル空間内に同心円状に配置された複数のゾーンに分割され、複数のチューブは、複数のチューブセットを含み、複数のチューブセットの各々は、複数のゾーンのうちの異なる1つ内に位置する、複数のチューブ、を備える、コイル巻回熱交換器と、
供給ストリーム導管、高温端部に位置する複数の高温端部チューブシート、低温端部に位置する複数の低温端部供給チューブシート、および生成物導管を有する供給回路であって、複数の高温端部供給チューブシートおよび複数の低温端部供給チューブシートは、第1の群の複数のチューブと流体流連通しており、供給ストリーム導管、複数の高温端部供給チューブシート、複数の低温端部供給チューブシート、および生成物導管はすべて、流体流連通している、供給回路と、
閉ループを含む冷媒回路であって、少なくとも1つの冷媒回路は、
少なくとも1つの圧縮段、ならびにインタークーラーおよびアフタークーラーの群から選択される少なくとも1つを備える圧縮回路、
冷媒ストリーム導管、
冷媒ストリーム導管と下流流体流連通している複数の高温端部冷媒チューブシート、
複数の高温端部冷媒チューブシートと下流流体流連通している、低温端部に位置する複数の低温端部冷媒チューブシート、および
複数の低温端部冷媒チューブシートと下流流体流連通している冷却冷媒導管、
冷却冷媒導管と下流流体流連通している膨張バルブ、
低温端部において膨張バルブと下流流体流連通し、かつシェル空間と上流流体流連通している膨張冷媒導管、ならびに
高温端部に位置する気化冷媒導管であって、気化冷媒導管は、シェル空間と下流流体流連通し、かつ圧縮回路と上流流体流連通している、気化冷媒導管、を備える、冷媒回路と、を備え、
複数の高温端部冷媒チューブシートおよび複数の低温端部冷媒チューブシートは、第2の群の複数のチューブと流体流連通しており、
冷媒ストリーム導管、複数の高温端部冷媒チューブシート、複数の低温端部冷媒チューブシート、および冷却冷媒導管はすべて、流体流連通しており、
高温端部供給チューブシートおよび低温端部供給チューブシートの群から選択される第1のものの各チューブシートは、複数のチューブセットのうちの1つのみと流体流連通し、高温端部供給チューブシートおよび低温端部供給チューブシートの群から選択される第2のものの各チューブシートは、複数のチューブセットのうちの2つ以上と流体流連通している、システム。
【0023】
態様18:複数のゾーンの各々に位置する温度センサをさらに備える、態様17に記載のコイル巻回熱交換器。
【0024】
態様19:高温バンドルは、低温バンドル端部から高温バンドル端部まで延在するバンドル高さを有し、温度センサの各々は、バンドル高さの中間50%以内に位置する、態様18に記載のコイル巻回熱交換器。
【0025】
態様20:高温バンドルは、低温バンドル端部から高温バンドル端部まで延在するバンドル高さを有し、温度センサの各々は、バンドル高さの中間20%以内に位置する、態様18に記載のコイル巻回熱交換器。
【0026】
態様21:態様1~20のいずれかに記載のコイル巻回熱交換器を動作させる方法であって、
(a)複数のゾーンの各々におけるゾーン温度を測定することと、
(b)複数のバルブのうちの少なくとも1つの位置を調整することによって、複数のゾーンのうちの2つのゾーンのゾーン温度間の差を低減することと、を含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、天然ガス液化システムの例示的な実施形態の概略図である。
【0028】
【
図2】
図2は、第1の例示的な従来技術のコイル巻回熱交換器の概略立面図である。
【
図2A】
図2Aは、第1の例示的な従来技術のコイル巻回熱交換器の上面図である。
【
図2B】
図2Bは、第1の例示的な従来技術のコイル巻回熱交換器の下面図である。
【0029】
【
図3】
図3は、第2の例示的な従来技術のコイル巻回熱交換器の概略立面図である。
【
図3A】
図3Aは、第2の例示的な従来技術のコイル巻回熱交換器の下面図である。
【0030】
【
図4】
図4は、本発明の発明概念を実装するコイル巻回熱交換器の第1の例示的な実施形態の概略立面図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の発明概念を実装するコイル巻回熱交換器の第1の例示的な実施形態の上面図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の発明概念を実装するコイル巻回熱交換器の第1の例示的な実施形態の下面図である。
【0031】
【
図5】
図5は、本発明の発明概念を実装するコイル巻回熱交換器の第2の例示的な実施形態の概略立面図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の発明概念を実装するコイル巻回熱交換器の第2の例示的な実施形態の上面図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の発明概念を実装するコイル巻回熱交換器の第2の例示的な実施形態の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施可能な詳細な説明は、好ましい例示的な実施形態のみを提供し、本発明の範囲、適用性、または構成を限定することを意図しない。むしろ、好ましい例示的な実施形態の実施可能な詳細な説明は、本発明の好ましい例示的な実施形態を実装するための実施可能な説明を当業者に提供する。様々な変更を、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、要素の機能および配置に行い得ることを理解されたい。
【0033】
本発明を説明する助けとなるように、本明細書および特許請求の範囲では、方向用語を使用して本発明の部分を説明する場合がある(例えば、上、下、左、右など)。これらの方向用語は、本発明を説明し、特許請求するのを支援することを意図するものに過ぎず、いかようにも本発明を限定することを意図するものではない。加えて、図面に関連して明細書中に導入された参照番号は、他の特徴部についてのコンテクストを提供するために、本明細書中で追加の説明なしに、1つ以上の後続の図面に繰り返される場合がある。
【0034】
特許請求の範囲では、特許請求されたステップを識別するために文字が使用される(例えば、(a)、(b)、および(c))。これらの文字は、方法ステップを参照するのを助けるために使用され、そのような順序が特許請求項に具体的に列挙されている場合を除き、特許請求されたステップが実行される順序を示すことを意図しない。
【0035】
本明細書および特許請求の範囲では、方向用語を使用して本発明の部分を説明する場合がある(例えば、上、下、左、右など)。これらの方向用語は、例示的な実施形態を説明するのを支援することを意図するものに過ぎず、特許請求された発明の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、用語「上流」は、基準点からの導管内の流体の流れの方向と反対の方向を意味することを意図している。同様に、用語「下流」は、基準点からの導管内の流体の流れの方向と同じ方向を意味することを意図している。
【0036】
用語「流体流連通」は、本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、液体、蒸気、および/または二相混合物が、構成要素間で、制御された方法(すなわち、漏れなく)で直接的または間接的のいずれかで輸送されることを可能にする、2つ以上の構成要素間の接続性の性質を指す。2つ以上の構成要素を互いに流体流連通するように結合することは、溶接、フランジ付き導管、ガスケット、およびボルトの使用など、当技術分野で知られている任意の好適な方法を伴うことができる。2つ以上の構成要素はまた、それらを分離し得るシステムの他の構成要素、例えば、バルブ、ゲート、または流体流を選択的に制限または誘導し得る他のデバイスを介して、互いに結合し得る。
【0037】
用語「導管」は、本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、流体をシステムの2つ以上の構成要素間で輸送することができる1つ以上の構造を指す。例えば、導管には、液体、蒸気、および/または気体を輸送するパイプ、ダクト、通路、およびこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0038】
用語「回路」は、本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、特定の流体が流れる一群の導管および他の器材を指すことを意図している。開回路では、上流端部で回路に入るすべての流体は、下流端部で回路から出るが、漏れによる損失は許容される。閉回路では、回路内のすべての流体は(ここでも漏れによる損失は許容されながら)、一群の導管および他の器材を通って、閉ループを循環する。
【0039】
図1は、高温バンドル112、低温バンドル113、およびシェル115を有するコイル巻回熱交換器(「CWHE」)114を使用する例示的な天然ガス液化システム100を示す。天然ガスを含む供給ストリーム101と混合冷媒ストリーム102とが、予冷システム104内で予冷されて、予冷供給ストリーム106と予冷混合冷媒ストリーム105とを形成する。次いで、予冷混合冷媒ストリーム105は、相分離器107を使用して、蒸気(「MRV」)ストリーム108および液体(「MRL」)ストリーム110に分離される。予冷供給ストリーム106およびMRVストリーム108は各々、高温端部174で高温バンドル112に入り、低温端部176で出るが、各々は、約-110℃に冷却され、膨張MRLストリーム118の気化からCWHE114のシェル側に提供された冷却作用によって凝縮されて、冷却供給ストリーム116および冷却MRVストリーム119を形成する。MRLストリーム110もまた、高温端部174で高温バンドル112に入り、低温端部176で出るが、MRLストリーム110は、約-110℃に冷却されて、過冷MRLストリーム117を形成する。
【0040】
過冷MRLストリーム117は、圧力が低減されて膨張MRLストリーム118を形成し、一方、冷却供給ストリーム116および冷却MRVストリーム119は、CWHE114の低温バンドル113内で約-150℃までさらに冷却されて、液体天然ガス(「LNG」)を含む生成物ストリーム120と過冷液体MRVストリーム122とを形成し、過冷液体MRVストリーム12は、圧力が低減され、低温バンドル113のシェル側に送られ、そこで気化されて冷却作用を提供する。
【0041】
気化した混合冷媒ストリーム124が、高温端部174でCWHE114のシェル側を出て、40~70バールに圧縮され、次いで冷却されて混合冷媒ストリーム102を形成し、それによって冷却作用ループを完了する。
【0042】
図1に示された天然ガス液化システム100は、例示的であり、本発明のコンテクストを提供することが意図されていると理解されたい。本明細書に記載の発明概念は、コイル巻回熱交換器が使用される用途で実装され得る。
【0043】
本明細書に開示される後続の実施形態の各々では、第1の実施形態(システム100)と共有される要素は、因数100だけ増やした参照番号によって表される。例えば、
図1に示された高温バンドル112は、
図2の高温バンドル212および
図3の高温バンドル312に対応する。明確さと簡潔さの調和をはかるために、第1の実施形態と共有される後続の実施形態のいくつかの特徴部は、図では番号付けされているが、本明細書では別個に呼ばれることはない。
【0044】
図2は、CWHEバンドル内の回路の従来の配置の一例を示す。この例では、供給回路を示す。予冷供給ストリーム206は、冷却され、高温バンドル212を冷却供給ストリーム216として出る(それぞれ、
図1の高温バンドル112および冷却供給ストリーム116に対応する)。
【0045】
高温バンドル212の高温端部274では、予冷供給ストリーム206は、高温端部チューブシート226、228にそれぞれ供給される複数のサブストリーム225、227に分割される。チューブシート226、228は各々、複数のプロセスチューブ229a~c、231a~cにそれぞれ供給する。チューブシートは、本質的に、流体流を、サブストリーム225、227から、マンドレル230の周囲に巻き付けられて高温バンドル212を形成するプロセスチューブ229a~c、231a~c内にまで分配するマニホールドである。
【0046】
この例では、2つのチューブシート226、228が示されているが、回路内のプロセスチューブの数に応じて、任意の数のチューブシートを使用し得る。同様に、図面を簡略化するために、3本の例示的なプロセスチューブ229a~c、231a~cのみが、チューブシート226、228の各々と流体流連通しているように示されている。典型的なLNG用途に対して、チューブバンドル(コイル巻回熱交換器のあるセクション内のすべてのプロセスチューブを意味する)は、典型的には、マンドレル230の周囲に巻き付けられた50~120個の同心チューブ層内に巻き付けられた数千個のチューブを有し、層は、軸方向スペーサ(図示せず)によって分離されている。典型的なチューブバンドルは、2~5mの直径、および5~20mの長さを有する。
【0047】
高温バンドル212の低温端部では、プロセスチューブ229a~c、231a~cは、低温端部チューブシート232および234内に統合され、冷却流体は冷却供給ストリーム216にまとめられる。各例示的なプロセスチューブ229a~c、231a~cが高温バンドル212に出入りする箇所を示すために、各々は、高温バンドル212の高温端部274および低温端部276で標識されている。
【0048】
図2Aおよび
図2Bはそれぞれ、高温バンドル212の低温端部276および高温端部274におけるプロセスチューブの配置を概略的に表す図である。高温バンドル212は、マンドレル230の周囲に周方向に配置され、各々がマンドレル230からシェル215まで延在する複数の扇形セクタ236~239に分割されている。高温端部274では、各チューブシート226および228からのプロセスチューブ229a~c、231a~cは、それぞれ、扇形セクタ236および238のうちの1つにおいて高温バンドル212に入る。これにより、各チューブシート226、228は、高温バンドル212の複数の層を通って経路設定されるプロセスチューブを有する。同様に、低温端部276では、高温バンドル212を出て、チューブシート232および234でそれぞれ接合されるプロセスチューブ229a~c、231a~cは、それぞれ扇形セクタ236、238においてバンドルを出る。
【0049】
各チューブシートのすべてのプロセスチューブをチューブシートに隣接する単一の扇形セクタにおいて各バンドルに出入りさせることにより、バンドルをチューブシートに接続するプロセスチューブの部分を比較的短くすることが可能になり、プロセスチューブが互いに交差するのを回避することが可能になる。したがって、この構成は、CWHEの製造を簡易化するので、多くの従来の実施態様において好ましい。
【0050】
予冷供給ストリーム206が流れるプロセスチューブによって占有されていない高温バンドル212の部分は、MRVストリーム(図示せず)またはMRLストリーム(図示せず)が流れるチューブによって占有される。そのようなチューブは、典型的には、それら自体のチューブシートを有する。図面を簡略化するために、MRVストリームまたはMRLストリームについてのチューブおよびチューブシートは省略されている。
【0051】
図3は、米国特許第9,562,718号および同第9,982,951号に記載の従来技術の構成を示す。これらの引例では、予冷供給ストリーム306は、3つのサブストリーム346、348、および344に分割され、それらの各々は、それぞれ高温端部チューブシート333、328、326に供給する。高温バンドル312は、同心熱交換ゾーン、つまり内側ゾーン350、中間ゾーン352、および外側ゾーン354に分割されている。高温チューブシート326、328、333のうちの各1つに関連付けられたプロセスチューブのすべては、単一のゾーン内に位置する。例えば、高温端部チューブシート326のすべてのプロセスチューブ329a~bは、両方とも外側ゾーン354に誘導されている。低温端部チューブシート332、334、335のうちの各1つに関連付けられたすべてのプロセスチューブもまた、単一のゾーンに誘導されている。例えば、低温端部チューブシート334内で終端するすべてのプロセスチューブ329a~bは、外側ゾーン354から引き出されている。図を簡略化するために、
図3および
図3Aでは、高温端部チューブシート326および低温端部チューブシート334に関連付けられたプロセスチューブ329a~bのみが、参照番号で標識されている。
【0052】
この構成は、プロセス全体を通して流体が分離したままという結果となる。例えば、サブストリーム344を通って高温バンドル312に入るすべての流体は、サブストリーム356を通って高温バンドルを出る。言い換えれば、高温端部チューブシート326、328、333の各々は、低温端部チューブシート334、332、335のうちの1つのみと流体流連通している。
【0053】
図3および
図3Aの構成は、異なるゾーンにおける高温バンドル内の流体の不均一な冷却を意味する、「半径方向分布不良」を低減することを意図している。そのために、CWHEは、低温端部チューブシート334、332、335を出るサブストリーム356、360、および358の温度を等しくするために、バルブ362、366、364を、それぞれ高温端部チューブシート326、328、333の各々から上流に含む。
【0054】
半径方向分布不良の問題に対するこの解決策はいくつかの欠点を有する。まず、バンドル内のチューブの数に純粋に基づいて必要とされるよりも多くのチューブシートが、各ゾーンに対してチューブシートを提供するために必要とされ得る。加えて、この解決策は、高温バンドルの高温端部に追加バルブを位置決めすることを必要とする。
【0055】
図4、
図4Aおよび、
図4Bは、例示的な本発明の実施形態を示す。この実施形態では、供給ストリーム406は、高温バンドル412の高温端部474に、この高温バンドル412に最適な数のチューブシート426、428(この場合、2つ)を使用して供給される。
図4Bに示すように、各チューブシート426、428からのプロセスチューブ429a~c、431a~cは各々、1つの扇形セクタ436、438にそれぞれ経路設定される。例えば、チューブシート426のプロセスチューブ429a~cはすべて、セクタ436内のバンドルに入る。
【0056】
低温端部476では、プロセスチューブ429a~c、431a~cは、高温バンドル412から低温端部チューブシート432、434、435まで、低温端部チューブシート432、434、435の各々が単一のゾーンからの流体流連通プロセスチューブ内にあるように経路設定される。例えば、外側ゾーン454からのプロセスチューブ429a、431aの各々は、低温端部チューブシート434で終端する。制御バルブ462、464、および466が、高温バンドル412の低温端部476におけるサブストリーム460、458、456の各々に位置する。
【0057】
温度センサ468、470、472が、高温バンドル412のシェル空間内のゾーン450、452、454の各々に設けられている。温度センサ468、470、472は、好ましくは高温バンドル412内の中間位置に位置し、好ましくは高温バンドル412の高さの中間50%以内(より好ましくは中間20%以内)に位置する。代替的に、温度センサ468、470、472は、低温端部476に位置してもよい。低温端部温度は必ずしも半径方向分布不良を反映するとは限らないので、中間位置が好ましい。
【0058】
温度センサ468、470、472間で温度差が検出された場合、適切なゾーン450、452、454への流れを、制御バルブ462、464、および466を使用して、温度差を低減するように設計された方法で調整することができる。例えば、温度センサ472の読み取り値が温度センサ470よりも著しく低い場合、制御バルブ466を漸増的に開くか、または制御バルブ462、464を漸増的に閉じるかのいずれかによって、温度差を低減することができる。温度センサ468、470、472のモニタリング、ならびに制御バルブ462、464、および466の操作は、手動でまたはコントローラ(図示せず)を用いてのいずれかで実行することができる。制御バルブ462、464、および466はすべて、システムの流動能力を最大限に生かすために、可能な限り開かれることが望ましい。したがって、半径方向分布不良が検出されない場合、制御バルブ462、464、および466のすべては、通常、完全に開かれる。半径方向分布不良が検出されると、制御バルブ462、464、および466のうちの少なくとも1つが、通常、完全に開かれる。
【0059】
従来技術のように、出口サブストリーム456、458、および460の温度測定値を使用して、バルブの操作の指針としてもよいが、内部(すなわち、シェル空間内)バンドル温度を使用することが好ましい。進行中の動作によっては、高温バンドル高さに沿った中間位置におけるシェル空間内の著しい半径方向温度勾配にもかかわらず、低温端部におけるサブストリームの温度は、非常に類似し得る。例えば、CWHEが、チューブ側流量に対して高いシェル側冷媒流量で動作している場合、交換器は、低温端部で「挟まれ」得、これは、シェル側流体とチューブ側流体との間の温度差が非常に小さく、出口サブストリーム間の温度差も非常に小さいことを意味する。
【0060】
図4の構成は、
図3の実施形態と比較して、CWHEの簡易化された製造を可能にする。高温端部474におけるチューブシートの数は、プロセスチューブの数に基づいて必要最小限に低減され、ゾーン化された流量制御を通して半径方向分布不良を低減させる能力を維持しながら、高温バンドル412の一端におけるプロセスチューブの簡易化された配置を可能にする。
図4の例示的な実施形態の別の利点は、制御バルブ462、464、および466が、供給ストリームおよびMRVストリームが少なくとも部分的に液化される高温バンドルの低温端部476に位置することである。これにより、これらのストリームが気相である高温端部474にバルブを位置させることと比較して、必要とされるバルブのサイズが大幅に低減される。
【0061】
図5に示された例示的な実施形態、チューブシートおよび制御バルブの構成は逆転され、ゾーン固有のチューブシート526、533、528および制御バルブ562、564、566が、高温端部574に位置し、セクタ固有のチューブシート532、534が、低温端部576に位置する。この構成は、
図4の実施形態の利点のうちの多くを提供するが、上述したように、より大きな制御バルブ562、564、566を必要とする。
【0062】
図3~
図5に示されたゾーン数および各ゾーンの相対サイズは、単なる例示であることに留意されたい。用途に応じて、より多くまたはより少ない数のゾーンを画定することが望ましくあり得る。加えて、半径方向幅が等しくないゾーンを画定することが望ましい場合がある。例えば、外側ゾーン554は、内側ゾーン550よりも薄くてもよい(すなわち、より少数のチューブ層を含む)。特定の用途における各ゾーンの好ましい数および半径方向幅は、部分的に、予想される半径方向分布不良の関数である。例えば、ゾーンは、各ゾーン内に実質的に同じ数のチューブを含むように画定され得る。代替実施形態では、最内ゾーンおよび/または最外ゾーンは各々、回路のチューブの総数の10%~20%を含むように画定されるであろう。さらに別の代替実施形態では、最内および/または最外は各々、回路内のチューブの総数の10%未満を含むように画定されるであろう。
【0063】
好ましいゾーンの数は、分割されている回路内のチューブの数にも依存し得る。チューブの数は、最小数のチューブシートを決定付け得、例えば、3つのチューブシートが必要とされる場合、たとえ予想される分布不良を軽減するために2つだけ必要とされる場合であっても、交換器を3つのゾーンに分割することが好都合であり得る。
【0064】
図4~
図5Bはすべて、供給ガス回路に関連付けられた高温バンドル412、512の部分を示すことに留意されたい。各実施形態において、および
図1に関連して説明したように、少なくとも1つの混合冷媒回路も設けられるであろう。多くの実施形態において、蒸気混合冷媒回路および液体混合冷媒回路が設けられるであろう。
【0065】
半径方向温度勾配は、シェル側冷媒の半径方向分布とチューブ側熱負荷の半径方向分布との間に不整合が存在することを示し得る。本発明は、チューブ側流量の半径方向分布、したがって熱負荷を、シェル側冷媒の半径方向分布により良く整合させるように調整することを可能にし、半径方向温度勾配の低減をもたらす。
【0066】
回路のうちの少なくとも1つは、
図4~
図4Bおよび
図5~
図5Bの実施形態のうちの1つの低温および高温端部チューブシート構成を有することが好ましい。いくつかの用途では、半径方向温度勾配を低減させるのに十分なチューブ側熱負荷の再分布を提供するために、1つの回路のみの半径方向分布を調整する必要があり得る。例えば、そのような実施形態では、供給回路は、
図4~
図4Bおおよび
図5~
図5Bの実施形態のうちの1つのチューブシート構成を有し得、冷媒回路の各々は、
図2~
図2Bのチューブシート構成を有し得る。他の用途では、半径方向温度勾配を低減するのに十分なチューブ側熱負荷の再分布を提供するために、2つの回路の半径方向分布を調整する必要があり得る。例えば、1つのそのような実施形態では、供給回路およびMRV回路は各々、
図4~
図4Bおよび
図5~
図5Bの実施形態のうちの1つのチューブシート構成を有し得、MRL回路は、
図2~
図2Bのチューブシート構成を有し得る。
【0067】
したがって、本発明を、好ましい実施形態およびその代替実施形態に関して開示した。もちろん、本発明の教示からの様々な変更、改変、および代替が、その意図される趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって企図され得る。本発明は添付の特許請求の範囲の項によってのみ限定されることが意図される。