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特許7230125細胞を単離し分析するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】細胞を単離し分析するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6837 20180101AFI20230220BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20230220BHJP
   C12Q 1/24 20060101ALI20230220BHJP
   C12N 1/02 20060101ALI20230220BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20230220BHJP
   C12Q 1/6816 20180101ALI20230220BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20230220BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230220BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20230220BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20230220BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20230220BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230220BHJP
【FI】
C12Q1/6837 Z
C12Q1/04
C12Q1/24
C12N1/02
C12N5/07
C12Q1/6816 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
G01N37/00 101
G01N35/10 A
G01N1/00 101F
C12N15/09 Z
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021115857
(22)【出願日】2021-07-13
(62)【分割の表示】P 2020512888の分割
【原出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2021176312
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】62/671,750
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/551,575
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502416811
【氏名又は名称】バイオ-ラッド ラボラトリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ハンディーク,カリヤン
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ,ヴィシャール
(72)【発明者】
【氏名】ゴゴイ,プリヤダルシニ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ペイン,オースティン
(72)【発明者】
【氏名】ボニフェイス,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】グリーソン,カイル
(72)【発明者】
【氏名】コノリー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】タック,サム
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/162997(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/151719(WO,A1)
【文献】特開2017-063716(JP,A)
【文献】特開2009-195160(JP,A)
【文献】特表2015-527588(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0199838(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0258383(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0289669(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M
G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一細胞形式で標的細胞の集団を分析する方法において:
・基板の表面に画定されたウェルアレイにわたって粒子の集団を分配するステップであって、前記ウェルアレイの第1のウェルは、第1の内面と、前記表面に垂直に、前記表面の下に、前記表面の中に延在する第1のウェルキャビティとを備え、前記粒子の集団の各粒子は、前記第1のウェルキャビティの第1の内面に対する第1の結合親和性を有する第1の領域と、前記標的細胞の集団に関連する生体分子に対する第2の結合親和性を有する第2の領域とを有するプローブに取り外し可能に結合される、ステップと;
・少なくとも前記第1のウェルに、前記表面の下に、前記粒子の集団の第1の粒子を、前記第1のウェルの開放端を通して受け取ることにより、前記粒子の集団をウェルアレイに捕捉するステップと;
・前記ウェルアレイの第1のウェル内に、前記第1の粒子から第1のプローブを放出するステップと;
・前記第1のプローブを前記第1の粒子から放出したら、前記第1のプローブの第1の領域を、前記第1のウェルの第1の内面に結合させるステップと;
・前記第1のプローブを第1のウェルに結合させたら、前記第1のウェルから第1の粒子を取り出すステップと;
・少なくとも前記第1のウェルに、前記表面の下に、前記第1のウェルの開放端を通して標的細胞の集団の第1の標的細胞を受け取ることにより、前記標的細胞の集団をウェルアレイに捕獲するステップと;
・前記ウェルアレイの第1のウェル内に、前記第1の標的細胞から第1の生体分子を放出するステップであって、前記表面に沿って前記ウェルアレイにまたがる流体リザーバを通る流体経路に沿って、前記表面に平行な方向に、プロセス試薬を流すことを含むステップと;
・前記第1の生体分子と、前記第1のウェルの第1の内面に結合された第1のプローブとを含む第1の遺伝子複合体を生成するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記粒子の集団をウェルアレイに捕捉するステップは、前記流体経路に沿って粒子分配流体を流すことをさらに含み、前記粒子分配流体が、前記ウェルアレイのうちの粒子飽和ウェルのサブセットから、部分的に保持された粒子のサブセットを出し、前記部分的に保持された粒子のサブセット内の第1の部分的に保持された粒子は、第1の粒子飽和ウェルの開放端を介して前記表面を横切ることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、さらに:
・前記第1の部分的に保持された粒子が前記第1の粒子飽和ウェルから出たら、前記第1の部分的に保持された粒子を前記ウェルアレイにわたって前記流体経路の下流に移動させるステップと;
・前記第1の部分的に保持された粒子を、前記第1の粒子飽和ウェルの下流の内部に他の細胞または非細胞粒子がないウェル(非占有ウェルに受容するステップであって、前記第1の部分的に保持された粒子は、前記非占有ウェルの表面の下へと下降する、ステップとを含む方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、前記粒子分配流体を流すステップは、前記流体リザーバに結合されたフロー制御モジュールで、前記粒子分配流体の流量を制御することを含み、当該流量は0.5mL/分より大きいことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法において、前記粒子分配流体を流すステップは、前記流体リザーバに結合されたフロー制御モジュールで、前記粒子分配流体の流れ方向を制御することを含み、この流れ方向は、第1の方向と、当該第1の方向と反対の第2の方向との間で交互に切り替わることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記標的細胞の集団をウェルアレイに捕獲するステップは、前記流体経路に沿って細胞分布流体を流すステップをさらに含み、ここでは前記細胞分布流体が、前記ウェルアレイの細胞飽和ウェルのサブセットから、部分的に保持された標的細胞のサブセットを出し、第1の部分的に保持された標的細胞は、第1の細胞飽和ウェルの開放端を通って前記表面を横切ることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、さらに:
・前記第1の細胞飽和ウェルから前記第1の部分的に保持された標的細胞を出したときに、前記ウェルアレイを横切る流体経路の下流に前記第1の部分的に保持された標的細胞を移動させるステップと、
・前記第1の部分的に保持された標的細胞を、前記第1の細胞飽和ウェルの下流の内部に他の細胞または非細胞粒子がないウェル(非占有ウェルに受容するステップとを含み、前記第1の部分的に保持された細胞は、非占有ウェルの前記表面の下に下降することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記粒子の集団の各粒子のプローブが、光開裂可能なリンカーによって、前記粒子の集団の一つの粒子に脱着可能に連結されており、前記第1の粒子から前記第1のプローブを放出するステップは、少なくとも1つの波長の光で前記ウェルアレイを照明して、前記第1の粒子から前記第1プローブを放出することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記光の波長は300~400nmであることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記第1の粒子の前記第1のプローブは、可逆的化学結合により前記第1の粒子に結合されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法において、前記第1の生体分子がリボ核酸であり、前記第の粒子の第1のプローブが核酸物質に結合するように構成されたヌクレオチド配列を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記第1のプローブは、前記第1のプローブについて第1の一意の識別子を含み、前記第1の遺伝子複合体を生成するステップは、前記第1の一意の識別子を前記第1の標的細胞に関連付けることを含む方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記第1の遺伝子複合体を生成するステップは、前記基板に結合された熱制御モジュールを用いて前記ウェルアレイの温度を10℃未満に低下させることをさらに含む、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、前記第1の遺伝子複合体に対して生化学プロセスを実行するステップをさらに含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記生化学プロセスを実行するステップは、逆転写を実行して、前記第1のウェル内の前記第1の遺伝子複合体に関連する少なくとも第1のヌクレオチド配列を生成することを含む、方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法において、前記生化学プロセスを実行するステップは、少なくとも前記第1のウェル内でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施して、前記第1のウェル内の前記第1の標的細胞に関連する増幅された遺伝物質を生成することを含む、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、前記第1の遺伝子複合体の少なくとも一部を前記第1のウェルから取り出すステップをさらに含む、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、前記ウェルアレイの各ウェルは、前記標的細胞の集団のうちの正確に1つの標的細胞と、前記表面の下の粒子の集団のうちの正確に1つの粒子と、のいずれか1つを保持するように構成され、ここで各ウェルの高さは10~40マイクロメートルであり、各ウェルの幅は20~40マイクロメートルであることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法において、前記ウェルアレイの各ウェルが、前記基板内に容積を画定しており、前記ウェルが、前記基板の表面に広がる六角形の最密構成で配置されていることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法において、前記ウェルアレイ内の各ウェルの開放端が六角形を画定しており、各ウェルの開放端が表面と整列していることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]この出願は、2017年8月29日に提出された米国仮出願番号62/551,575および2018年5月15日に提出された米国仮出願番号62/671,750の利益を主張するものであり、これらはともにこの参照により全体として本書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
[0002]本発明は、一般に、細胞を選別し分析する分野に関し、より具体的には、細胞選別分野において細胞を捕捉し分析するための新規かつ有用なシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]細胞特異的な薬物検査、診断、およびその他のアッセイへの関心が高まっているため、細胞分析の分野では、個々の細胞の単離、識別、取得を可能にするシステムがより望まれている。さらに、個別化医療の開始により、低コスト、高忠実度の細胞選別および遺伝子配列決定システムが非常に望まれている。しかし、細胞捕獲システムの従来技術には、細胞固有の試験への広範な採用を妨げる様々な欠点がある。例えば、フローサイトメトリでは、細胞を同時に識別して分類する必要があり、細胞の観察は細胞が分類される時点に制限されている。フローサイトメトリでは、単一のフローサイトメトリワークフローにおいて同じ細胞に複数の分析を行うことができず、任意の細胞亜集団の分類が不可能である。他の例では、従来のマイクロ流体デバイスは、細胞選択は細胞特異的抗体に依存し、ここではマイクロ流体デバイスの基質に結合した抗体は、所望の抗原を発現する細胞に選択的に結合する。また、従来のマイクロ流体デバイスでは、細胞に損傷を与えずにその後の細胞除去ができず、特定の抗原を発現している細胞のみを捕捉するため、必要となり得る非発現細胞は、これらのシステムでは捕捉されない。このような細胞生存率の低下は、選別または単離された細胞で生細胞アッセイを実施することを妨げる可能性がある。セルラーフィルタは、細胞に大きな損傷を与えることなくサイズに基づいてサンプル要素を分離できるが、目詰まりが発生し、特定細胞の識別、個々の細胞の単離、識別された個々の細胞の取得ができない。この分野の他の技術では、個々の細胞に複合アッセイを行う能力がさらに制限されるが、サンプル調製ステップと過度に高価な機器が最小限に抑えられる。
【0004】
[0004]単一細胞分析の分野において、がん幹細胞などの希少細胞の単離、同定、および遺伝子分析では、現在、精度、速度、およびスループットに限界がある。さらに、単離プロセスにおいて細胞を識別する典型的な方法は、高温での固定、染色、または追加の生化学プロセスを必要とし、これが処理速度の低下に加えて、細胞および/またはその遺伝物質を損傷し得るため、多くのシステムでは、生細胞または細胞から抽出された生物材料の生存率および/または品質が維持されない。したがって、細胞選別分野では、下流での分析のために、メッセンジャーRNAなどの生体分子を含む細胞および細胞内物質の生存率を最大化できる、細胞を単離および分析するための新しい有用なシステムおよび方法を作成する必要があった。さらに、生体分子の分子インデックス付けと遺伝子転写処理をさらに含む細胞単離ワークフローは、完全長mRNA、全ゲノム、および/または単一細胞エクソームの大規模な並列RNAシーケンスを含む、細胞分析アプリケーションのスループットと精度を向上させるいくつかの利点を提供できる。これまで、単一の統合デバイスで単一細胞の分離とDNA/RNAシーケンスライブラリの構築を容易にするシステムや方法はなかった。本書で説明するシステムと方法は、単一細胞の捕捉、生体分子ラベリング、流体送達、温度調節などの機能を統合することでこれらの制限に対処し、細胞をキャプチャするのに用いられる同じウェルアレイ内の個々の細胞により高度な生化学プロセスを実行できるようにし(例:逆転写、ポリメラーゼ連鎖反応、単一細胞ゲノム(DNA/RNA)シーケンス)、それによって、所望の細胞のキャプチャ効率が大幅に向上し、単一細胞実験ワークフローの速度と分析機能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】[0005]図1は、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の実施形態の概略図である。
図2】[0006]図2A~2Cは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す。
図3】[0007]図3A~3Bは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す。
図4】[0008]図4Aは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す。[0009]図4B~4Eは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の例示的な構成の概略図を示す。
図5】[0010]図5A~5Cは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す図である。
図6】[0011]図6A~6Bは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す図である。
図7】[0012]図7は、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す図である。
図8】[0013]図8A~8Bは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す図である。
図9】[0014]図9A~9Bは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の例示的な構成の概略図を示す。
図10】[0015]図10は、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例の概略図を示す。
図11】[0016]図11A~11Bは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例の概略図を示す。
図12】[0017]図12A~12Bは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す。
図13A】[0018]図13Aは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す図である。
図13B】[0019]図13Bは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す図である。
図14】[0020]図14は、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す。
図15】[0021]図15A~15Bは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例の断面図を示す。
図16】[0022]図16は、細胞を単離および分析するためのシステムの変形例を示す。
図17】[0023]図17は、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す図である。
図18】[0024]図18は、細胞を単離および分析する方法の実施形態のフローチャートを示す。
図19】[0025]図19は、細胞を単離および分析するための方法の一部の変形例の概略図を示す。
図20】[0026]図20は、細胞を単離および分析するための方法の実施形態の一部の変形例の概略図を示す。
図21】[0027]図21は、細胞を単離および分析する方法の実施形態の一部の変形例の概略図を示す。
図22】[0028]図22は、細胞を単離および分析する方法の実施形態の一部の変形例の概略図を示す。
図23】[0029]図23は、細胞を単離および分析するための方法の実施形態の一部の変形例の概略図を示す。
図24】[0030]図24は、細胞を単離および分析する方法の実施形態のフローチャートを示す。
図25】[0031]図25は、細胞を単離および分析するための方法の実施形態の一部の変形例の概略図を示す。
図26】[0032]図26は、細胞を単離および分析する方法の実施形態の一部の変形例の概略図を示す。
図27】[0033]図27は、細胞の単離および分析のためのシステムおよび方法の一部の実施形態の例を示す。
図28】[0034]図28A~28Cは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の実施形態の例を示す。
図29】[0035]図29は、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す図である。
図30】[0036]図30A~30Bは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す図である。
図31】[0037]図31A~31Cは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す図である。
図32】[0038]図32A~32Cは、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す図である。
図33】[0039]図33は、細胞を単離および分析するためのシステムの一部の変形例を示す図である。
図34】[0041]図34は、細胞を単離および分析する方法の実施形態の一部の3つの変形例の概略図を示す。
図35】[0042]図35は、細胞を単離および分析するためのシステムの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0043]本発明の好ましい実施形態の以下の説明は、本発明をこれらの好ましい実施形態に限定することを意図するものではなく、むしろ当業者が本発明を製造および使用できるようにすることを意図する。
【0007】
1.システム
[0044]図1に示されるように、細胞のセットを単離および分析するためのシステム100は、広範面を有する基板110と、基板の第1面112(例えば、上側広範面)に画定されたウェルアレイ120とを備え、ウェルアレイ120の各ウェル128は、第1面112に画定された開放面122と、第1面112に直接対向する第2面114(例えば、下側広範面)の近くの基板内に規定された底面124と、底面124と開放面122との間に延びてウェル128のウェルキャビティ128を形成する一組の壁126とを備える。ウェルアレイ120は、基板の活性領域116に、または他の適切な配置で配置することができる。ウェルアレイ120へのサンプルまたは流体40の送達を促進するために、システム100は、基板110に結合し、細胞のセットおよび/または別の流体40を含むサンプルをウェルアレイ120に移送するように構成される流体送達モジュール140をさらに含むことができる。追加的または代替的に、システム100は、システム100を通る流体40(例えば、生物学的サンプル、プロセス試薬、非細胞粒子を含む溶液)の流れ(例えば、方向、速度、流体の体積)、ならびにシステムを通る制御および/または作動を必要とする任意の他の適切な流れを制御する流量制御サブシステム(例えば、圧力ポンプシステム)180を含むことができる。追加的または代替的に、システム100は、システム100の複数部分の温度を制御するための熱制御モジュール190を含むことができる。追加的または代替的に、システム100は、ウェルアレイ120の内容物の光学イメージング、照明、または照射を実行し、ウェルアレイ120によって保持される細胞の識別、局在化、および定量化を可能にするように構成されるイメージングサブシステム194を含むことができる。追加的または代替的に、システム100は、ウェルアレイから、標的細胞、粒子、細胞粒子ペア、遺伝子複合体、および/または遺伝子産物の1つ以上を抽出できる抽出モジュールを含むことができる。しかしながら、システム100の変形例は、2016年10月25日出願の「細胞捕捉システムおよび使用方法」と題する米国出願番号15/333,420、2014年3月13日出願の「細胞を捕獲および分析するためのシステム」と題する出願番号14/208,298、および2014年5月28日出願の「細胞を単離および分析するためのシステムと方法」と題する米国出願番号14/289,155に記載されるように、任意の適切な構成および/または組み合わせの他の適切な部品を含むことができ、これらの文献はこの参照によりその全体が組み込まれる。
【0008】
[0045]システム100は、既知のアドレス可能な場所で、単一細胞形式および単一クラスタ形式の少なくとも一方で、細胞集団20の細胞を単離、捕捉、保持、および分析し、さらに個々の標的細胞(例えば、生物学的サンプル中の希少細胞)または細胞クラスタ(例えば、二重、三重)に実行可能な複数の単一細胞アッセイの実行を促進するように機能する。好ましい実施形態では、システム100は、同一装置内で、細胞キャプチャとして、近接後続を配列決定するための捕捉された単一細胞の遺伝子ライブラリ(例えば、溶解させた標的細胞からの捕捉したmRNAから生成されたcDNA、増幅cDNA、増幅DNA)の調製を促進するように機能する。単一の細胞捕捉ウェルによって決定された定義された位置で細胞が捕捉されると、システム100の流体送達モジュールを使用して、試薬を同時に、連続的に、および/または反復的に提供および送達して、単一細胞/細胞クラスタのそれぞれで実行される様々な細胞、亜細胞または分子の反応が実行されるようにする。追加的または代替的に、システム100は、非細胞粒子(例えば、核酸材料、他の生物学的材料、他の非生物学的材料、分子プローブや試薬を含む粒子など)、ならびに単一細胞および単一の非細胞粒子(例えば、細胞粒子ペア)を捕捉し処理するように機能し得る。さらに、システム100は、ウェルアレイおよび追加的または代替的にウェルアレイに送達される流体40の制御された迅速な熱変調(例えば、95℃から5℃の加熱と冷却サイクル)を可能にし、細胞または生物学的材料の生存率を維持し、生物学的アッセイの効率を高め、一連のウェル内で様々な生化学プロセスを実行することができる。システム100はまた、単一細胞/単一クラスタレベルで、捕捉された細胞のそれぞれにおける事象の光学的調査および検出を可能にすることができる。システム100は、追加的または代替的に、さらなる処理と分析のために、捕捉された細胞または非細胞粒子の1つ以上の選択的放出および/または選択的除去を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、システム100は、同じマイクロ流体チップ内またはチップ外のいずれかで、リアルタイム細胞追跡、生細胞回収、生化学プロセス(例えば、細胞溶解、細胞固定、ポリメラーゼ連鎖反応、逆転写など)および選択的下流分子分析(例えば、電気泳動、配列決定、蛍光イメージング)の利益を享受することができる。いくつかの実施形態では、システム100を使用して、循環腫瘍細胞(CTC)と、循環幹細胞(CSC)などのCTCの亜集団とを捕捉することができるが、追加的または代替的に、任意の他の適切な細胞(例えば、赤血球、単球、マクロファージ、破骨細胞、樹状細胞、ミクログリア細胞、T細胞、B細胞、巨核球、生殖細胞、ナース細胞、神経細胞、幹細胞など)または可能性のある生物学的材料を捕捉するのに用いることができる。システム100は、好ましくは基板110、より好ましくはマイクロ流体チップ上に規定されるが、代替として、任意の適切な基板上に配置するか、またはそれによって画定することができる。
【0009】
[0046]具体例では、システム100は、単一細胞ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で動作可能な方法に使用することができ、そのようなシステムは、ウェル内の単一細胞形式(または単一クラスタ形式)で複数細胞(例えば、100細胞、1000細胞、10,000細胞、100,000細胞、1,000,000細胞など)の高効率の捕捉とともに、ウェルへのオンチップ試薬送達、インキュベーション、およびサーモサイクリングを実現し、細胞捕獲からPCRへのワークフローを提供する。より詳細には、システムのマイクロ流体およびその他の部分は、単一細胞または単一細胞クラスタの解像度のサンプル(例えば、前立腺臨床サンプル)を使用したPCRを使用して、アッセイ(例えば、ARV7mRNAに関連するアッセイ)を実行することができる。特定例では、システム100は、ウェルアレイ120に関連する流体リザーバ160内で10μlから最大1mLのオーダーのサンプル量を収容でき、ここでサンプルは500から100,000までの範囲の標的細胞を含むことができ、それによって多数の対象細胞を含む大量のサンプルを処理することができる。
【0010】
[0047]システム100は、好ましくは、抗体被覆ウェルなしで細胞集団20を含む生物学的サンプルから個々の細胞の捕捉および保持を達成し、好ましくは、単離、捕捉、保持、および/または除去を通して細胞の生存率が維持される。個々の細胞の捕捉は、好ましくは、流体層内の単一細胞のグループを含むサンプルを、基板の広範面に対して平行な方向(例えば、実質的に平行、0.1度以内、1度以内、45度以内の平行度、完全に平行など)に、ウェルアレイ120上に流すか供給し、重力の影響下で流体層を通ってウェルアレイ120に向かって下降した細胞を捕捉することによって達成される。代替的に、個々の細胞の捕捉は、単一細胞のグループを含むサンプルを、基板の広範面に垂直な方向にウェルアレイ120上で流体リザーバ160によって提供される流体層に送達し、重力の影響下で細胞がウェルアレイ120に向かって流体層を通って下降した後に捕捉することによって達成される。しかしながら、いくつかの変形例では、個々の細胞の捕捉は、追加的にまたは代替的に、ウェルのセットのうちの1のウェルへ単一細胞の移動を促進するための任意の適切なメカニズムによって達成され得る。さらに、システム100は、好ましくは、細胞を基板から持ち上げたり、細胞が捕捉され完全に保持されているウェルキャビティ128から細胞/細胞クラスタを移動させたりする望ましくない流体流を防ぐように構成される。しかし、いくつかの変形例では、システム100は、任意の適切な方法で細胞/細胞クラスタの移動を促進するように構成することができる。システム100を通る流体(例えば、生物学的サンプル、プロセス試薬40)の流路は、システム100内の各細胞/細胞クラスタが一貫した条件(例えば、勾配長スケール圧力、密度、温度、溶液組成、およびその他の適切な特性などの流れ特性の流路は、システムの長さスケールに比べて大きい)となるように多方面かつ均一であることが好ましいが、ただし、代わりに流路は単方向、双方向、または他の適切な特性を有してもよい。特定の実施例の変形例では、図2A~2Cに示されるように、システムを通る流体の流路141は、等しい長さ(例えば、ほぼ等しい長さ、製作公差内での等しい長さなど)の流体経路146のセット(例えば、ウェルアレイに結合されたマニホルドの)を含み、これらはマニホルド入口440で流体経路146のセットに供給される試薬が入口444の各アレイ(例えば、単一のウェル、リザーバの第1の縁の領域に沿って、基板の活性領域の第1の縁の領域に沿って)に実質的に同じ時点(例えば、同時に、1秒以内、1分以内など)に到達し、(例えば、ウェルアレイ120を含む)基板の活性領域116を横切って出口445のアレイを通ってマニホルド出口442まで通過するするように構成されている。細胞の輸送、単離、選別、および生存率の維持は、システムを通るサンプル流量を制御することによって(例えば、流れの特徴的な長さの尺度がウェルの特徴的な長さの尺度とほぼ同じになるように流量を調整することによって、高流量条件と低流量条件の間で流量をディザリングすることによってなど)、または他の適切な手段を通じて追加的に実現することができる。しかしながら、システム100を通る流体の流れ特性は、他の方法で構成されてもよい。
【0011】
[0048]運用中、システム100は、好ましくは、細胞集団20を含む生物学的サンプルを受け取り、ウェルアレイ120全体に均一に生物学的サンプルの分布を促進する(例えば、均一なクロスフロー、スミアリング、サイトスピン手順、アレイの異なる領域での試料の一定部分のピペッティングを用いてなど)。しかしながら、システム100は、追加的または代替的に、陽圧(例えば、アレイへ入口での陽圧)、および/または、流量制御サブシステム180によって加えられる負圧(例えば、アレイ出口での負圧)用いて、ウェルのセットにわたる流体40(例えば、生物学的サンプル、処理試薬、非細胞粒子)の分配を促進することができる。追加的または代替的に、試料の分配を促進する作動圧力をパルス幅変調方式または正弦波方式で循環させて正味の作動圧力を提供し、入口で正味の陽圧または出口で正味の陰圧を提供してもよい。このように、生物学的サンプルがウェルアレイ120を横切って流れるときに、所定特性(例えば、サイズベースの特性、密度ベースの特性、粘着ベースの特性など)を有する所望の細胞をウェル128内に閉じ込めることができる。例えば、CTCを捕捉するように構成されたシステム100の変形例では、ウェルは、単一細胞または単一クラスタ形式でのCTCの捕捉および保持を促進するために、CTC細胞の形態学的特徴の定義に基づいて構成されることが好ましい。しかしながら、システム100は、追加的または代替的に、他の適切な形式の任意の他の適切な対象粒子を保持および促進するように構成することができる。作動圧力は、好ましくは、システム100と流体連通する流量制御サブシステム180(例えば、手動操作ピペット、自動流体処理ロボット、真空圧力システム、電気機械マイクロポンプなど)によって提供されるが、追加的または代替的に任意の適切なメカニズムによって提供されてもよい。
【0012】
[0049]図35に示されるシステム100の好ましい実施形態では、最大2つの個別のウェルアレイを並行して(同期的に、非同期的に)処理することができる。しかしながら、システムの要素は、適切な数のアレイに対応するように、任意の数で構成することができる。
【0013】
1.1システム-基板
[0050]図3に示されるように、基板110は、ウェルアレイ120(マイクロウェルのセット、マイクロウェル、ウェル)を画定できる媒体を提供するように機能する。変形例では、基板110は、第1面(例えば、上側広範面)112と、第1面に直接対向する第2面(例えば、下側広範面)を有することができる。基板110の上側広範面112は、システム100のマイクロ流体要素(例えば、入口、出口、入口マニホルド、出口マニホルド、流体チャネルなど)が少なくとも部分的に平面に画定されるように、平面であることが好ましい。あるいは、基板110の上側広範面112は、システム100のマイクロ流体素子が少なくとも部分的に非平面的な面に画定されるように、非平面であり得る。変形例では、非平面的な表面は、凹面、凸面、または凹面、平面、および/または凸面を有する表面であり得る。そのような変形例は、ウェルアレイ120にサンプルを堆積および分配する様々な方法を実現することができる。非平面である上側広範面112を有する基板110の任意の変形例では、非平面部分は、浅い(例えば、広範面の幅に対して深さが浅い)または短い(例えば、広範面の幅に比べて高さが低い)。しかしながら、この非平面部分は、追加的または代替的に、深い部分(例えば、広範面の幅に対して深さが大きい)または高い部分(例えば、広範面の幅に対して相対的に高い高さを有する)を含むことができる。しかしながら、この表面は、代替的に、任意の他の適切な軸または対称の種類を有してもよく、または非対称であってもよい。好ましい用途では、基板の第1面は、平坦面118の整列軸を規定することができ、ここで平坦面118は基板の第1面と平行かつ同軸であり、基板の第1面と、基板のウェルアレイにアクセスするためにサンプルや処理試薬などの流体が流れる流体リザーバの基部との間に整列されている。
【0014】
[0051]基板110組成物は、機械的特性(例えば、機械的励振としての基板の機械的特性)、光学的特性(例えば、透明性)、電気的特性(例えば、導電性)、熱的特性(例えば、伝導率、比熱など)、物理的特性(例えば、濡れ性、多孔性など)、およびその他の適切な特性、の1以上に関する所望の特性を呈することができる。基板110は、好ましくは、基板110をイメージングして捕捉された単一細胞/細胞クラスタを分析するために、高い透明度を有する剛性材料(例えば、透明材料、半透明材料)から構成される。高透明性材料は、好ましくは光学的に透明であるが、追加的または代替的に、電磁スペクトルの他の部分(例えば、マイクロ波、近赤外線、紫外線など)に対して透明および/または半透明にすることができる。そのようないくつかの変形例では、基板110は、ガラス、セラミック、シリコーンベース材料(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS))、ポリマー(例えば、アガロース、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレングリコールなど)、紙、多孔質材料、およびその他の適切な材料(高い透明性を有するそれらの複合材料を含む)のいずれか1つ以上から構成され得る。あるいは、基板110は、他の適切な光学特性を有する他の適切な材料で構成することができる。追加的または代替的に、基板は、セラミック材料、半導体材料、ポリマー、および任意の他の適切な材料のいずれか1つまたは複数で構成することができる。
【0015】
[0052]基板は、エッチング方法、成型方法、印刷方法(3D印刷プロセスなど)、機械加工方法、および脆性、弾性、または延性のある基板材料に適した他の適切な製造プロセスのいずれか1つまたは複数を使用して加工することができる。さらに、ウェルアレイを含む上側広範面112に画定された特徴は、成型、研磨、流動相での材料のスピンに続く材料のセット、機械加工、印刷(3D印刷など)、エッチング、およびその他の適切なプロセスによって作成することができる。具体例では、ウェルアレイ120は、シリコンモールド内にマイクロ流体要素をエッチングするために3マスクフォトリソグラフィプロセスおよび深反応性イオンエッチング(DRIE)プロセスを使用してシリコンモールド内に画定される。具体例では、シリコンモールドのエッチングされた要素は、その後、ホットエンボス加工プロセスを使用して、ポリメチルメタクリレート(PMMA)シートを基板110として転写される。この特定例における基板110は、ガラス顕微鏡スライドの寸法に実質的に一致するように、3インチ×1インチの寸法を有する。この特定例の変形例、および/またはウェルアレイ120の他の変形例では、環状オレフィンポリマー(COP)のホットエンボス加工をPMMAの代わりに使用して、ウェルアレイ120のマイクロ流体構造を形成することができる。しかしながら、代替的に、基板110は、他の適切な方法で処理された他の適切な基板120であってもよい。
【0016】
[0053]好ましくは、基板は、システム100の他のサブコンポーネントとの相互作用(例えば、可逆的または非可逆的な取り付け、結合)を可能にする特徴を含む。一変形例では、基板110は、流体送達モジュール140の構成要素に結合することができ、基板は、基板の活性領域116に流体40を出し入れする入口142および出口144を含む。このバリエーションの一例では、入口マニホルドの入口チャネルのセットと出口マニホルド164の出口チャネルのセットは、上部と下側広範面の間の基板内に直接埋め込むことができるが、追加的または代替的に、基板の上側広範面の少なくとも一部に作成することができる。別の例では、図28A~28C、図29、および図30Aおよび30Bに示されるように、基板110は、基板の活性領域よりも上に凹部152を含む第1のプレート150に位置合わせすることができ、第1のプレート150を基板に取り付けると、第1のプレート150の一領域をウェルアレイの上方に整列させて、システム100の運用中にウェルアレイ全体に流体を移送する流体リザーバ160を協働的に画定することができる。流体リザーバ160は、第1のプレート150に可逆的に取り付けられるリザーバ蓋164によって密封され、その結果、組み合わされたアセンブリは、ウェルアレイの表面に平行に流れる試薬、空気、油または他の材料の送達のための流体経路162を提供する。再シール可能なリザーバ蓋164は、リザーバ蓋の底部に、液体リザーバ内に挿入されるリザーバ蓋の領域に、不混和液体(水交換油、油交換水)の移動、および、追加的または代替的に、流体経路162に沿った異なる流体相(空気交換水または空気置換水)の移動を容易にする一連の溝165を備えることができる。リザーバ蓋164の溝165は、25ミクロン、50ミクロン、100ミクロン、150ミクロン、200ミクロン、250ミクロン、300ミクロン、350ミクロン、400ミクロン、500ミクロン、および/または1ミリメートルのオーダーの特性寸法を呈することができる。溝の数と溝165の寸法を調整して、約10マイクロリットル、25マイクロリットル、50マイクロリットル、75マイクロリットル、100マイクロリットル、150マイクロリットル、および/または200マイクロリットルなど、特定のデッドボリュームの液体をシステムに供給することができる。蓋の材料は、第2章に記載のように、マイクロウェルアレイで捕捉される細胞またはビーズのイメージングおよび/またはマイクロウェルの表面、粒子、および/または遺伝的複合体からの特定の生体分子を光切断するUV照射を可能にするために光学的に透明であってもよい。リザーバ蓋164はまた、流体マニホルドとの適切なシールを可能にするエラストマー面(図33)を有する。再シール可能な蓋は、流体操作の開始時、プロセスの途中、またはプロセスの終了時に、必要に応じてウェルアレイに細胞を送達し、ウェルアレイに粒子を送達し、ウェルアレイに試薬を送達し、および/またはウェルアレイから特定の細胞、粒子、および/または流体を取り去るために開閉することができる。リザーバ蓋164は、手動または自動で簡単に取り付けまたは取り外しできるように設計されているが、流体システムを完成させるために他の適切な方法で動作するように構成してもよい。
【0017】
[0054]第2の変形例では、基板110は、基板をプラットフォーム、加熱素子(例えば、熱制御モジュール194)、および/またはアッセイが実行されるステージに可逆的に取り付けおよび整列させるように機能する基板プラットフォーム105に取り付けることができる。このステージは、システム100内の基板の位置を物理的に調整し、イメージングサブシステム194、熱制御モジュール190、および/または抽出モジュールといったシステムの他の要素へのウェルアレイのアクセスを改善するのに用いることができる。好ましくは、基板プラットフォーム105は、高精度の様々なアレイ構成(例えば、50,000ウェルアレイ、100万ウェルアレイなど)を備えた基板を収容、固定、および操作するように構成でき、オプションの基板取り付け機構110を含むことができる。図30A~30B、図31A~31C、図32A~32C、および図33の実施例に示されるように、基板プラットフォームは、リザーバ蓋164を収容および支持することができるプラットフォーム蓋115を含むことができ、プラットフォーム蓋115は、リザーバ蓋164を、基板に取り付けられた第1のプレート150によって形成された流体リザーバ160内に可逆的に固定および密封するように機能する。変形例では、プラットフォーム蓋115は、流体リザーバを気密封止するために、エラストマーガスケットまたは封止要素、および1~4ポンドの範囲の圧力を加える戻り止めプランジャを含むことができる。特定の用途において、プラットフォーム蓋115は、リザーバ蓋164がウェルアレイ上で開ポジションまたは閉ポジションにある状態で、ウェルアレイを(例えば、イメージングサブシステム194を介して、肉眼で)観察できるようにする。さらに、基板110の光学的検査および/または熱変調を可能にするために、基板プラットフォームの底面が、基板プラットフォームに固定されたウェルアレイ120へのアクセス領域として機能する光学的に透明および/または高導電性材料を含むことができる。好ましい用途では、基板プラットフォーム105を使用して、熱制御モジュール190の加熱素子(例えば、サーモサイクラー面)に基板を正確かつ再現可能に配置し、加熱/冷却源へのウェルアレイの信頼性の高い均一な露出をより確実にすることができる。しかし、基板は、システムの他の適切な要素とエンゲージするように、他の適切な方法で構成することができる。
【0018】
1.2システム-ウェルアレイ
[0055]ウェルアレイ(マイクロウェルのセット、マイクロウェル、ウェル)120は、細胞のセットを個別に識別、処理、および分析できるように、アドレス可能な既知の位置にある細胞のセットを捕捉するように機能する。そのようなものとして、ウェルアレイ120は、好ましくは、単一細胞形式および単一クラスタ(例えば、細胞粒子ペア)形式の少なくとも一方での細胞捕獲を促進するように構成される。しかしながら、ウェルアレイ120は、追加的にまたは代替的に、任意の他の適切な形式で、任意の他の適切なタイプの粒子を受け取るように構成され得る。例えば、ウェルアレイ120は、哺乳動物の細胞、エンビロス、ミクロスフェア、粒子、細胞粒子ペア、およびミクロスフェア結合細胞を受容するように構成(例えば、寸法決め、成形)することができる。
【0019】
[0056]図1および図3A~3Bに示すように、ウェルアレイ120は、好ましくは、基板110の上側広範面112に画定され、ウェルアレイ120の各ウェル128は、基板内であって第2面(例えば、下側広範面114)の近くに規定される底面124と、底面124に直接対向し上側広範面の近くにある開放面122と、底面と開放面との間に延在しウェルキャビティ128を画定する一組の壁126とを備える。
【0020】
[0057]ウェルアレイ120は、基板110の活性領域116に画定され、この活性領域は、基板の任意の適切なエリア(例えば、1平方インチ、10cm、2平方インチ、3平方インチ、4平方インチなど)であり得る(図2A-2C)。好ましくは、基板の活性領域(およびウェルアレイ)は、単一の捕捉細胞の単離、処理、および分析を実行するために、イメージングサブシステム194、流体送達モジュール140、熱制御モジュール190、および/または抽出モジュールを含むシステム100の他の要素によってアクセス可能である。ウェルアレイ120は、任意の適切な数のウェルを含むことができる(例えば、100、1,000、10,000ウェル、50,000ウェル、100,000ウェル、100万ウェル、200万ウェル、300万ウェル、400万ウェル、500万スケール、600万ウェル、700万ウェル、900万ウェル、1000万ウェルなどの規模で)。好ましい変形例では、ウェルアレイは少なくとも250,000のウェルを含む。特定例において、ウェルアレイは約100万個のウェルを含む(図28A-28Cおよび図29)。ただし、ウェルアレイは、他の適切な方法で構成することができる。
【0021】
[0058]開放面122は、好ましくは、ウェル128の底面124へのアクセスを提供する基板110の開口部であり、基板110の上側広範面112に垂直な方向から単一の細胞、単一の粒子、および単一の細胞または粒子のクラスタ(例えば、細胞-粒子対)を受けるように構成されている。システムが細胞-粒子対を保持するように構成されている変形例では、図3Aに示されるように、細胞-粒子対における細胞と粒子のそれぞれは、順番にまたは同時に受け取られ得る。したがって、開放面122は、底面124の特性寸法よりも大きい、小さい、または等しい特性寸法(例えば、幅、直径、円周など)を有することができる。循環腫瘍細胞(CTC)および単一細胞粒子ペア形式の粒子を捕捉する実施例では、底面124または開放面122の特性寸法は20~40マイクロメートルの範囲であり、ウェルキャビティの高さは20~75マイクロメートルの範囲であり得る。図3Bに示すように、システムが単一細胞または単一粒子のいずれかを保持するように構成されている別の変形例では、底面および/または開放面の特性寸法は20~40マイクロメートルの範囲であり、ウェルキャビティの高さは10~40マイクロメートルの範囲であり得る。ただし、他の変形例では、ウェルキャビティの高さやウェルキャビティの幅などの、ウェルアレイ内のウェルの寸法は、0.5ミクロンから50ミクロンの間の任意の値にすることができ、システム100で実行するアッセイ、標的細胞の寸法、および/または使用される粒子の寸法に基づいて任意に選択することができる。ウェルアレイ120の開放面積(すなわち、ウェルのセットにおける各ウェルの開放面の総面積)は、ウェルが画定されている基板の領域の総面積の50%よりも大きいことが好ましく、より好ましくは、開放面積は総面積の80%より大きい。しかしながら、開放面積は、基板の総面積の任意の適切な断片領域またはパーセンテージであり得る。
【0022】
[0059]各ウェルの開放面は、好ましくは、基板の上面と同一平面上に(例えば、平坦面118で)整列されるが、代替的に、基板内にわずかに凹んでいるか、他の方法で構成することができる。好ましくは、図3Aおよび3Bに示されるように、ウェルアレイにおけるウェルの開放面は、基板の平坦面118と整列され、開放面の水平軸は平坦面118と同軸である。一例では、平坦面118は、基板の上側広範面に平行な側面を有する平面であり、基板の上側広範面と、基板の上側広範面よりも上の空間の領域との交差点で規定される。具体例では、平坦面118は、基板の上側広範面と、ウェルアレイの上方に位置する流体リザーバの下部領域との間に配置され、ウェルアレイの開放面と流体リザーバ内の流体経路との間の界面で定義される空間的境界である。好ましい用途では、平坦面118の下のウェルに受け入れられる細胞および/または粒子は、ウェルの開放面における流体流によってはアクセスできず、したがってウェルのウェルキャビティ128によって完全に保持され、一方で平坦面118を横切るまたは平坦面118上に残っている細胞および/または粒子は流体流によってアクセス可能であり、流体経路の下流へと移動され、したがってウェルキャビティ128によって部分的におよび/またはまったく保持されないと考えられる。しかしながら、平坦面118は、追加的または代替的に、基板および/またはウェルアレイの任意の寸法に関して構成することができる。さらに、各ウェルの開放面は、基板、流体リザーバ、および/または流体経路の任意の領域に対して配置することができる。
【0023】
[0060]好ましい変形例では、各ウェルの開放面は、ウェルアレイの真上かつ横方向に上の流体経路に直接流体的に結合される。ウェルアレイの開放面を横切る流体の流れを強化するために、各ウェルの開放面は任意で、コーティング(例えば、疎水性、親水性、静電物質、化学誘引性など)または物理的特徴(例えば、テクスチャ化、ノッチ、リッジなど)を有することができる。さらに、各ウェルの開放面は、単一の細胞または単一の細胞粒子ペアを確保して保持するための受動的または能動的な保持機能を任意で有することができる(例えば、ウェルキャビティ128が埋まっている場合に物理的または化学的にトリガしてウェルの開放面を増減する)。開放面122が底面124よりも小さい特性寸法を有する一実施例では、図4Aに示すように、ウェル128は、底面124のよりも小さい特性寸法を提供するために開放面122の境界を形成するリップを有してもよい。このリップは、平面的または非平面的であり得、ウェル128での単一細胞または単一細胞クラスタの保持をさらに促進することができる。図4B~4Eは、各ウェルの開放面の実施例を示し、円形開口、長方形開口、六角形開口、または他の適切な形状を含む、細胞および/または粒子をウェルキャビティに収容するための任意の形状を確定することができる。ただし、開放面122は、ウェルアレイ120のウェル128からの流体流、細胞の受容、および/または粒子の回収を促進する他の適切な特徴を含むことができる。
【0024】
[0061]底面124は、好ましくは、開放面122に平行であり、対称であり、開放面122に直接対向する。しかしながら、いくつかの変形例では、代替的に、底面124は、開放面122に対して非平行、非対称、および/またはずれていてもよい。基板110の上側広範面112と同様に、底面124は平面または非平面であってよく、非平面を有する底面124の実施例では、非平面は、図5Aに示すように、任意の適切な幾何学的特性を有する凸部および/または凹部を含んでもよい。追加的または代替的に、図5Bおよび5Cに示されるように、底面124は、テクスチャード(例えば、所望の流体流動挙動を実現するため、所与の粒子タイプを誘引または反発するため)、所望の多孔性を特徴とする、所望の表面処理を特徴とする、固定化粒子または生化学部分を特徴とする、および他の適切な方法で細胞の受容および/または保持を促進する、の1以上であり得る。好ましい変形例では、チャンバの開放面から流体がチャンバの底面を通って流れないように底面が閉じているが、標的細胞よりも小さい特性寸法の粒子が下ってウェルキャビティ128を出られるように、この底面は代わりに1つ以上の流体チャネルを含むように構成することができる。ただし、底面は、他の適切な方法で構成してもよい。
【0025】
[0062]底面124および開放面122に関して、各ウェル128は、底面124と開放面122との間に延在する少なくとも1つの壁(例えば、一組の壁)126を有することが好ましい。実施例において、少なくとも図1および図4Aに示されるように、各ウェル126の壁は、少なくとも1つの他の隣接するウェルから個々のウェル128を少なくとも部分的に物理的および流体的に分離しており、ある深さ、幅、および/またはウェルの断面寸法を規定しており、好ましくは、開放面122の水平軸によって規定される平面に垂直である。好ましくは、壁126の壁厚は4~5マイクロメートルの間であるが、10マイクロメートル未満の任意の寸法とすることができる。壁126は、開放面122によって画定される平面から底面124まで垂直に延びて、ウェルキャビティ128を画定することができる。そのようなものとして、いくつかの実施例では、ウェルアレイ内の各ウェルのウェルキャビティ128は、柱状(例えば、円柱、六角柱、多角柱、非多角柱など)であり得る。具体例では、各ウェルのウェルキャビティは六角柱を規定する。しかしながら、図6Aおよび図6Bの変形例に示されるように、他の実施例において壁126は他の適切な方法で開放面122と底面124との間に延びることができる(例えば、湾曲壁、直線壁、曲がった壁など)。例えば、壁126は、開放面から底面へのウェルの特性寸法(例えば、直径、水平断面、垂直断面)を徐々に減少させてもよい(例えば、別個のステップを形成することによって、適切な勾配などを備えた線形または非線形の方法で特性寸法を徐々に調整することによって)。しかし、いくつかの変形例では、ウェル128は、開放面122によって規定される平面に垂直な明確な壁126を有さなくてもよい(例えば、底面が、開放面への垂直な壁を形成することなく何らかの方法で直接開放面まで延びてもよい)。実施例では、底面124と開放面122は、壁の有無にかかわらず、0.5ミクロンから50ミクロン(例えば、単一CTCのキャプチャを伴う応用例では約25ミクロン、単一の細胞粒子ペアのキャプチャを伴う応用例では約40ミクロン)の間の距離(すなわちウェルキャビティ128の高さ)で分離してもよい。しかし、方法200で説明した単離、処理、および分析のステップを実行するために、ウェルアレイのウェルを他の物理的特性および/または寸法で構成することができる。好ましい用途では、方法200は、捕捉したい標的細胞の寸法、用いられる非細胞粒子の寸法、システム100を使用して特定のアッセイを実行するために必要な他のパラメータ(ブロックS218で説明)に応じて、特定の寸法、数、幾何学、空間配置および/または他の適切な特性を有するウェルアレイを選択するステップを含むことができる。追加的または代替的に、壁のセットは、各ウェルをウェルアレイ120内の少なくとも1つの隣接するウェルに流体的に結合するチャネルのセットを含むことができる。そのような変形例では、一組のチャネルのチャネルは、隣接するウェル間の基板110の領域内に画定したり、または隣接するウェルの重複部分によって画定することができる。具体例では、チャネルは5ミクロンの特性寸法を有することができ、具体例の変形例では、チャネルは0.5ミクロンから75ミクロンの範囲の特性寸法を有することができる。
【0026】
[0063]ウェルアレイの壁は、(前章で説明したように)基板の材料と同じ材料で構成されることが望ましいが、代わりに、他の適切な材料で構成して、所望の物理的または化学的特性をウェルアレイにおけるウェルキャビティに付与することもできる。例えば、壁は、ウェルの空洞に入った溶液中の様々な粒子または流体に対して非透過性または半透過性になるように構成することができ、付加的または代替的に、ウェルへの細胞や粒子の進入を制御するために、永久的または非永久的に剛性、可撓性、または形状変化するように構成することができる(例えば、伸びて開いたり、折りたたんで閉じたりする機能)。方法200の一実施形態では、システム100は単一の細胞-粒子対を捕捉するために使用され、細胞が第1のステップで捕捉され、第1のステップに続く第2のステップで粒子が捕捉され、ウェルアレイ内の各ウェルの壁の少なくとも一部は形状記憶ポリマーでできており、第1の開いた状態と第2の閉じた状態の間で動作可能である。一実施例では、標的細胞が第1のステップでウェル内に捕捉されたら、ウェルキャビティ128の壁は、第2のステップでウェル内への粒子の捕捉を可能にするために第1の開放状態を維持するが、第1のステップで標的細胞がウェル内に捕捉されなかったら、ウェルキャビティ128の壁を活性化して第2の閉じた状態に移行させ、入っていない各ウェルの開放面を本質的に閉じて、ウェル内での細胞粒子ペアの生成効率を高めることができるとともに、所望の標的細胞が入ったアレイのウェルを識別するのに役立つ。しかしながら、ウェルの物理的および化学的特性は、第2章で説明した方法200の任意の適切な用途および/または実施例のためのシステムの性能を高めるべく、他の適切な方法で構成することができる。
【0027】
[0064]ウェルアレイ内の各ウェルのウェルキャビティ128の内面(例えば、ウェルキャビティ128の内部に面する壁の側壁)は、ウェルキャビティ128内に保持される内容物(例えば、捕獲された細胞、生物材料、非生物材料、非細胞粒子、細胞粒子ペアなど)と相互作用するように任意で構成することができる。そのような相互作用を可能にするために、内部表面は、ウェルキャビティ128のすべての側壁に機能的特徴(物理的または化学的)または表面結合部分を含むことができるが、代わりにウェルキャビティ128の任意の適切な部分または特定の領域に局在化してもよい(例えば、底面、開放面の近位、側壁に沿ってなど)。図7に示す第1の実施例では、内部表面は、溶解した捕捉細胞から放出された核酸物質、非細胞粒子から放出されたプローブまたはプローブセット36、および/またはウェル内の他の適切な捕獲された物質に結合するように構成された機能性表面コーティング131を含む。機能性表面コーティング131は、第2章でさらに説明されるように、核酸プローブ36の機能的リンカーに結合できる合成、動物由来、ヒト由来、または植物由来のタンパク質であり得る。一実施例では、機能性表面コーティングにより、ビオチン化表面化学(例えば、ビオチン-ストレプトアビジンリンカー)が機能的リンカーを含むプローブに結合することが可能になる。しかしながら、ウェル内面の機能性表面コーティングは、他の適切な方法でウェルキャビティ128内に保持された内容物に結合するように構成することができる。第2の実施例では、機能性表面コーティングは、下流での分析(例えば、光学イメージング)のために、捕捉された標的細胞または粒子を特定の方向に方向付けるなど、捕捉された内容を物理的に保持および/または操作するように構成されている。一実施例では、機能性表面コーティングは、捕捉された標的細胞の一領域に粘着する粘着層を提供するポリマーまたはタンパク質を含む(例えば、ポリマー接着剤、カテコール-ポリスチレン、ポリ-D-リジン、フィブロネクチン、コラーゲン、ビトロネクチンなど)。別の例では、機能性表面コーティングは、ウェルの開放面に向かって細胞を引き付けるポリマーまたはタンパク質を含むか、ウェルへの粒子の進入を制御するためのウェルの開放面における半永久的なバリアである。第3の実施例では、ウェルの内部表面は、捕捉された細胞の下流でのアッセイと分析を実行するために、化学薬剤(例えば、細胞と相互作用する薬物、ウェル内の溶液のpHを制御する薬剤、ウェル内の流体の密度を制御する薬剤)、生化学物質(例えば、蛍光マーカー、抗体など)、および/またはプロセス試薬(例えば、徐放性送達媒体/マイクロスフィアなどに含まれる溶解バッファ)を加えるように構成される。第4の実施例では、ウェルの内面は、表面積を増加、減少、または変化させる物理的特徴(例えば、ウェルキャビティ128内の隆起、突起、細孔、くぼみ)を含むことができる。さらに、これらの物理的特徴には、ウェル内に固定化された機能化微粒子、ウェル内に保持された内容物の光学的アクセスと光学検査を強化する反射要素、および/またはウェル内の細胞または粒子の位置を操作するための磁気要素が含まれる。
【0028】
[0065]ウェルアレイ120内のすべてのウェル128は実質的に同一であってよいが、代替的に、ウェルアレイ120は、任意の適切な特徴(例えば、形態的特徴、機械的特徴、表面コーティング特徴、熱伝導性特徴、導電性性特徴など)を備えてもよい。したがって、システム100のいくつかの変形例は、処理および分析のために、複数の粒子タイプおよび複数のタイプのフォーマットの粒子のうちの少なくとも1つをアドレス可能な場所に取り込むように構成することができる。第1の例では、ウェルアレイ120は、単一細胞内の第1の細胞タイプを捕捉するために、第1の特性寸法(例えば、ウェル直径、ウェル深さ、ウェル容積など)を有するウェルを含むウェルの第1のサブセットと、単一の細胞フォーマットで第2の細胞タイプを捕捉するために、第2の特徴的寸法(例えば、ウェル直径)を有するウェルを含む第2のサブセットとを含むことができる。第1の例では、第1のサブセットをウェルアレイ120内の中央に配置し、第2のサブセットをウェルアレイ120内の周辺部に配置し、これが第1の特性寸法よりも小さい第2の特性寸法を有することにより、ウェルアレイ120の中央部分でより大きな粒子を捕獲し、アレイ100の周辺部分でより小さな粒子の捕獲を促進することができる(例えば、サイトスピン用途)。この第1実施形態の1つの変形例では、ウェルアレイ120は、半径方向に特性寸法の勾配を有するウェルを有することができる(例えば、アレイの中心に向かってより大きなウェル寸法を有し、アレイの周辺部に向かってより小さなウェル寸法を有する)。第1実施形態の他の変形例では、ウェルアレイ120は、半径方向に他の適切な構造特性(例えば、形態学的特徴、機械的特徴、表面コーティング特徴、熱伝導性特徴、導電性特徴など)の勾配を有するウェルを有することができる。他の実施例では、ウェルアレイ120は、任意の適切な方向(例えば、直線方向、半径方向、円周方向など)に沿って、任意の適切な特徴特性(例えば、形態学的特徴、機械的特徴、表面コーティング特徴、熱伝導性特徴、導電性特徴など)の分布(例えば、勾配)を有するウェルを含むことができる。
【0029】
[0066]ウェルのサブセットを含む実施例では、サブセットを互いに分離することができる。第1の変形例では、各サブセットは、ウェルが画定されていない基板部分(例えば、広範面の平坦な領域)によって他のサブセットから分離することができる。第2の変形例では、サブセットは、ウェルの連続構造における流体的に分離された領域であり、ここでは特定のサブセットのウェルがいずれも別のサブセットのウェルに流体的に結合されていない。具体例では、基板は、アレイ縁間の均一な間隔(例えば、1mm、100ミクロン、3mmなど)で、広範面の平坦領域によって隣接するサブセットから分離された、2×6グリッドに配置されたウェルアレイ120の12個の異なるサブセットを規定する。ウェルのサブセットは、複数グループ(例、250,000ウェルセットのうちの20,000ウェルのサブセット内の7ウェルの複数グループ)にさらに分割することができ、各ウェルの一連のチャネルによってウェル間の適切な相互接続(例、サブセット間、グループ間など)を提供することができる。そのような構成により、ウェルのグループによる効率的な細胞捕捉(例えば、相互接続された7つのウェルを含むグループによる)が可能になり、ウェルのセットを複数の異なるサンプル(例えば、ウェルのサブセットのサブセットごとに1つのサンプル)にさらすことができる。一例では、ウェルは、直径が約30ミクロン、深さが30ミクロン、壁の厚さが4~5ミクロンであり得る(例えば、これがより効率的な細胞捕捉を提供する)。しかし、関連する変形例では、ウェルアレイ120は、代替的に、任意の適切な方法で細分化および/または相互接続することができる。ウェルのサブセットおよび/またはグループは、任意の適切な方法で構成することができる。例えば、サブセットは直線的に配置してもよく(例えば、ウェルサブセットのグリッドレイアウト)、グループをパック構成で配置してもよい(例えば、六方最密、正方格子など)、またはその逆もしかりである。グループとサブセットの配置は、互いに独立していることが好ましいが、代替的に相互を基準とすることもできる(例えば、グループが直線的に配置されているため、サブセットが直線的に配置される)。さらに、システム100の各基板110は、ウェル120の単一アレイを有してもよいし、任意の適切な方法で基板に画定されたウェルの複数のサブセットを有してもよい(例えば、放射状構成、長方形構成、線形構成、曲線構成、ランダム構成など)。
【0030】
[0067]図8Aに示すように、ウェルアレイの具体例では、144mmの250,000ウェルのアレイを、フォトリソグラフィーエッチングプロセスを使用してプラスチック(例えば、材料COP480R)にエンボス加工することができる。次いで、運用時に比較的多くの液体試料(例えば、0.5mLから5mL)を配置できるようにするウェルアレイを含む活性領域の周りに流体リザーバ160を設ける(例えば、接着または他の方法で取り付ける)。この特定例は、活性領域でウェルアレイに流体的に結合されたリザーバへの入口および出口として機能する2つのマイクロチャネルをさらに含むことができる。さらに、図8Bに示されるように、細胞含有サンプル(例えば、容積最大1ml)を、基板の活性領域の周囲を取り囲む流体送達モデルの第1のプレート150の凹部領域によって形成される流体リザーバ160に分配することができる。試料中に存在する細胞は、リザーバ内の流体層を介して経時的に下降し(例えば、重力により誘導される)、ウェルの開放面を通ってウェルキャビティ128内に入る。特定用途では、沈下時間は細胞のサイズに依存する。サイズが10~25ミクロンの典型的な癌細胞は、約30分で沈下する。細胞がウェルキャビティに入り、細胞の全容積がウェルキャビティ128内に完全に収まる(例えば、完全に保持され、平坦面118の下に下がり、ウェルの開放面の下に下がる)と、それらは単一細胞形式で捕捉される。ウェルアレイ内の各ウェル間の壁は薄いため(例えば、厚さ10ミクロン未満、厚さ5ミクロン未満など)、殆どの細胞は内側に落ち着き、ウェル上部または部分的に保持されているのとは異なり、ウェル内に完全に保持される傾向がある。1ml PBSにスパイクされた細胞追跡染色癌細胞(SKBR3)の特定用途では、システム100は90%以上の捕捉効率を示した。
【0031】
[0068]さらに、ウェルアレイ120は、好ましくは、パックされたアレイに構成されるが、代替的に、任意の他の適切な方法で構成することができる。一例では、図9Aに示されるように、ウェルアレイ120は六角形の最密充填アレイに配置することができる。別の例では、図9Bに示すように、ウェルアレイを長方形のアレイに配置することができる。別の例では、ウェルアレイ120は、例えば、ウェルアレイ120の一部からウェルアレイ120の別の部分への流体の流れを促進するために、任意の適切な不規則または不均一な様式で配置することができる。具体例では、各ウェルの中心からウェルアレイの隣接するウェルの中心までの最短距離は約30ミクロンである。ただし、代替的に、ウェルアレイ120は、ウェル間の任意の適切な間隔で(例えば、パック構成または非パック構成で)、および他の適切な方法で配置されてもよい。
【0032】
[0069]図10に示すようなウェルのセットの特定の構成例において、ウェルアレイは、六角形の最密充填構成で配置され、ウェルアレイの各ウェルは、基板の広範面(例えば、平坦面118)と位置合わせされた六角形の開放面を含む。さらに、各ウェルは、六角形の開放面に対向する底面に六角形のフットプリントを有する。ウェルアレイの各ウェルは、厚さ約5ミクロン、高さ約40マイクロメートル、および構造的な幅約25マイクロメートルの壁のセットを含む六角柱を形成するウェルキャビティ128を有する。基板は、約150平方ミリメートルの基板の活性領域内に267,000個のこのような六角形のウェルを画定する。ただし、ウェルアレイは、他の適切な方法で構成することができる。
【0033】
[0070]システム100のいくつかの変形例では、ウェルアレイ120の1つまたは複数のウェルはさらに、ウェルアレイ120のウェルにおけるパラメータ(例えば、細胞応答パラメータ)の刺激および/または検出を促進する他の適切な要素を含むことができる。一実施例では、ウェルアレイ120の1つ以上のウェルは、ウェル128の内容物からの生体電気信号の検出を実現し、および/またはウェル128の内容物の刺激を実現するために、ウェル128の表面で基板110に埋め込まれた電極を含むことができる。この実施例の変形例では、電極は、底面124とウェル128の壁126の少なくとも一方の露出部分に埋め込むことができる。他の実施例では、ウェルは、ウェル128の細胞/細胞クラスタへのプロセス試薬の送達を促進するか、ウェル128の内容物(例えば、処理された細胞内内容物)のウェル128からの抽出を促進するチャネルに結合されてもよい。しかしながら、システム100は、単一細胞形式および単一クラスタ形式の少なくとも一方の細胞の処理および/または分析を容易にする他の適切な要素を含むことができる。
【0034】
1.3 システム-流体供給モジュール
[0071]システム100は、細胞の集団、粒子の集団、および/またはプロセス試薬および/または分配流体などの別の流体を含むサンプルをウェルアレイ120に移送し、基板に結合できるように機能する流体送達モジュール140を含むことができる。そのようなものとして、流体送達モジュールは、システムの様々な部分の内外へ、およびその全体にわたる流体移動を可能にする入口142、出口144、および流体ガイドおよび/または構造を含むことができる。少なくとも図11A~11B、図28A~28C、および図29に示すように、流体送達モジュール140は、基板112の上側広範面の近位に配置された第1のプレート150と、基板114の下側広範面の近位に配置された第2のプレート156と、さらに任意選択で、第1のプレート150を第2のプレートに結合させ、それによって第1のプレート150と第2のプレートとの間に基板110を位置決めおよび/または整列させるように構成されたクランプモジュールとを備えることができる。しかしながら、代替的に、第1のプレート150は、基板110および/またはシステム100の任意の他の適切な要素に直接結合することができ、この場合は流体送達モジュール140から第2のプレートを省略することができる。このように、流体送達モジュール140は、基板120の位置決めを容易にして、ウェルアレイ120でサンプルまたは流体を受容および/または密封する(例えば、圧縮力、密閉シールなどにより)。追加的または代替的に、流体送達モジュール140は、第1プレートと基板の広範面との間に画定され、ウェルアレイ120を横切ってリザーバを通る制御された流体流れを実現する流体経路162の領域を提供する流体リザーバ160を含むことができる。
【0035】
[0072]変形例では、第1のプレート150は、基板110の上側広範面112にわたる長方形のフットプリントを有し得る。しかしながら、代替的に、第1のプレート150は、基板110の上側広範面112の全部または一部に及ぶように構成された他の任意の適切なフットプリント(例えば、非矩形フットプリント、円形フットプリント、楕円フットプリントなど)を有することができる。好ましい変形例では、図28A~28Cおよび図29に示すように、第1のプレート150は、ウェルアレイ120の上に配置される開口部または凹部152を有する。第1のプレート150が基板110に取り付けられると、第1のプレート150の凹部152は、ウェルアレイに面する流体リザーバ160を画定する。流体リザーバ160は、リザーバ蓋164によって密封することができ、追加的および/または代替的に、任意選択でリザーバ蓋を流体リザーバ内に密閉するためのエラストマーガスケットおよび戻り止めプランジャを有するプラットフォーム蓋115内に配置することができる。図11Aおよび11Bに示される別の変形例では、第1のプレート150は、第1のプレートの閉じた面の片側であって基板110の上側広範面112に面する表面に凹部152を有し、この凹部152および上側広範面112が共同で、流体送達モジュールの入口142および出口144に流体的に接続され得る管腔を規定する。凹部152の管腔は、好ましくは、(例えば、凹部と基板の広範面によって画定される管腔を占める流体層および/または流体経路162内に)ウェルアレイ120の近位のサンプルおよび/または処理試薬を一時的に保持する流体リザーバ160として機能する。したがって、凹部152は、ウェルアレイ120が画定された基板の活性領域にわたるとともに、第1のプレート150が基板110に結合されたときにアレイと整列することが好ましい。管腔(例えば、流体リザーバ)は、好ましくは凹部の底面と凹部の投影面積との間のギャップ距離の積によって規定される、任意の適切な容積を有することができる。ギャップ距離(例えば、流体リザーバの高さ)は、25ミクロンから5mmの間であることが好ましいが、代わりに任意の適切な距離であってもよい。
【0036】
[0073]一変形例では、凹部152は、基板110に面する第1のプレート150の表面に画定された長方形の凹部とすることができる。さらに、凹部は、図11Aおよび11Bに示すような実質的に平坦な底面、または任意の他の適切な底面(例えば、非平坦底面)を有することができる。しかしながら、凹部152は、代替的に、他の適切な形態を有することができる。追加的または代替的に、凹部152は、第1のプレート150を基板110に結合したときに密閉シールを提供するために、基板110に近い凹部152の領域を囲むシール要素157(例えば、Oリング、シーラントなど)を含むことができる。追加的または代替的に、シーリング要素は、基板プラットフォーム蓋115上に配置され、閉じた構成(図33)で第1のプレートに固定されてもよい。しかしながら、代替的に、第1のプレート150は、任意の他の適切な方法で構成されてもよい。
【0037】
[0074]第2のプレートは、基板110の広範面に直接対向する基板110の表面に近接して構成され、第1のプレート150を結合できるベースを提供し、それによって第1のプレート150と第2のプレートとの間に基板110を位置決めするように機能する。第2のプレートは、上側広範面112に対向する基板110の表面が結合できる相補的な表面を提供することが好ましい。一変形例では、第2のプレートは、基板110の平坦な表面(例えば、基板の広範面に直接対向する平坦な面)を結合できる表面を提供するために、実質的に平坦である。しかしながら、第2のプレートは、基板110に対して任意の他の適切な態様で構成されてもよい。さらに、第2のプレートは、基板110および/または第1のプレート150に対する第2のプレートの位置合わせを容易にする位置合わせ要素を含むことができる。変形例では、位置合わせ要素は、位置合わせを容易にする第2プレートの突起および/または凹部、位置合わせを容易にするトラック、磁気要素、および他の適切な位置合わせ要素のいずれか1以上を含むことができる。
【0038】
[0075]一変形例では、第1のプレート150は、ピン、ねじ、磁気カプラ、クランプ、および他の適切な結合機構のうちの1以上を含む結合機構で第2のプレートに結合されることが好ましい。閉塞を防ぐために、この結合機構は、システムの周辺部分(例えば、第1のプレート150、第2のプレート、および/または基板の周辺部分)、または基板の機能に干渉しない他の適切な場所に配置することができる。あるいは、システム100のいくつかの変形例では、第2のプレートを省略し、任意の適切な方法で第1のプレート150と基板110との間に直接結合を有してもよい。
【0039】
[0076]図2A~2Cおよび図14に示すように、流体送達モジュール140のいくつかの変形例は、システム100の入口142をウェル120の各アレイに接続し、付加的または代替的に、ウェルアレイ120を出口144に接続する入口および出口チャネルのセット(例えば、それぞれのマニホルド入口440およびマニホルド出口442に関連する流体経路146のセット)を含むことができ、ここで出口はウェルアレイから除去された流体および/またはサンプル流体を収集するための(例えば、廃棄物を収容する、余剰の試薬を収容する、下流での処理のために所望のサンプルを収集する)容器に流体的に結合される。流体経路146のセットは、所望の流体(例えば、試薬含有流体、サンプル含有流体など)を実質的に一貫した流体流量および体積でウェルアレイ120に分配および配送するように機能する。流体経路146のセットは、ウェルのセットと任意の適切な対応を有することができ、例えば、単一のウェル128あたり1つの流体経路、単一のウェル128あたり複数の流体経路146、および/または複数のウェルに1つの流体経路などである。別の例では、流体経路146のセットは、入口142に接続された単一の流体経路から、各ウェルに個別に接続された流体経路146のセットに分岐する流体経路146のネットワークであり、この場合に入口とウェルの間の流体経路は、長さが実質的に等しい(例えば、正確に等しい長さ、10~100ミクロン以内、所与の流量および経路断面についての特徴的な長さ以内、任意の適切なしきい値長さに等しい)。流体経路146のセットは、追加的または代替的に、グループおよび/またはウェルのサブセットを入口、ならびに他のグループおよび/またはウェルのサブセットに接続する流体経路146を含むことができる。このように接続されたサブセットのそれぞれは、同じ数のウェルを含んでもよいし、代替的に、各サブセットに流体経路146のセットによって接続された異なる数のウェルを有することができる。
【0040】
[0077]一実施例では、流体送達モジュールは第1のプレート150を備え、第1のプレート150は入口142および出口144を画定する。プレートはさらに、入口に流体的に接続され、ウェルアレイ120と協同で隣接する管腔(例えば、流体リザーバ160)を画定するように基板の広範面に面する凹部領域152をさらに画定する。流体送達モジュールは、細胞捕獲モードで動作可能であり、そこでは細胞の集団および/または堆積細胞を再分配するために使用される分配流体を含む流体サンプルが、入口と出口の間の流体リザーバ160に(例えば、差圧によって)流される。この例では、流体サンプルは、流体経路162を通って基板の広範面に実質的に平行に流される。サンプルはある流量(例えば、少なくとも0.5ミリリットル/秒、1ミリリットル/秒、1ミリリットル/分、1マイクロリットル/秒、10マイクロリットル/秒、100マイクロリットル/秒など)で流され、この流量は、単一の細胞にかかる垂直方向の力(重力、浮力など)の組み合わせが広範面にかかり、横方向に流れるサンプルから単一細胞のウェルのセットへの沈降を促進するために周囲の流体からの横方向の圧力が大きくなるように選択(例えば、制御)される。
【0041】
[0078]流体リザーバ160は、対象細胞および少なくとも1の流体を含む生物学的サンプルを流体送達モジュール140から受け取り、生物学的サンプルおよび少なくとも1の流体を流体経路146のセット(例えば、マニホルド、入口マニホルド、出口マニホルド)に送達して、細胞の捕捉や分析を実現するように機能する。第1の変形例では、流体リザーバ160は、大気圧への開口部を含み、流量制御サブシステム180と連通するとともに流体経路146のセットおよび廃棄物チャンバのうちの少なくとも1つによって流体リザーバ160に間接的に結合されるポンプによって加えられる負圧によって、流体リザーバ160からの入口から出口方向への流体送達が可能になる。第1の変形例では、出口から入口方向への流れを促進するために、加えられる負圧を逆にすることができる。第2の変形例では、流体リザーバ160は、大気圧への開口部を備えなくてもよいが、代わりに、それぞれ出口から出口方向と出口から入口方向の両方の流れを促進するために、流体リザーバ160で正圧および負圧を提供するように構成されたポンプに結合されてもよい。第2の変形の具体例では、流体リザーバ160は、手動ポンピングによって正圧および負圧を提供するように構成されたシリンジポンプに結合される。しかしながら、流体リザーバ160からマニホルドへの流体送達は、任意の代替の適切な方法で実行され得る。
【0042】
[0079]流体リザーバ160は、流体リザーバ160内の流体レベルを検出するように構成されたレベルセンサをさらに備えることができ、これは、気泡が流体経路146のセットに入るのを防ぐように機能する。したがって、レベルセンサは、トリガ流体レベル(例えば、閾値としての低い流体レベル)を検出したら信号を生成し、プロセッサに信号を送信し、これが信号を受信して、信号に基づいて流体経路146のセットに入る流体送達を制御するコマンドを生成するように構成することができる(例えば、流量制御サブシステム180を介して)。このコマンドは、流体リザーバ160から流体経路146のセットへの流体の流れを自動的に停止するのに使用したり、および/または他の適切な方法で流体の流れの制御を実施するように機能することができる。レベルセンサを備える流体リザーバ160の変形例では、レベルセンサは、ロードセル、超音波レベルセンサ、または流体リザーバ160内の流体レベルがある閾値を超えたときに信号を生成するように構成された任意の適切な信号であり得る。信号が検出されると、システム100内の流体の流れを停止する応答および/または流体リザーバ160にさらに流体を追加する応答を生成し、したがって、気泡がマニホルドに入るのが防がれる。具体例では、流体リザーバ160は6mLを超える体積容量を有し、ねじ付き雄雌カプリングによってマニホルド入口160に結合するように構成され、大気圧への開口部を備え、開口部はまた、シリンジポンプに結合する。具体例では、流体リザーバ160は、流体リザーバ160内の流体レベルがある閾値を通過したときに信号を生成するように構成された超音波レベルセンサをさらに含む。システム100の他の変形例では、流体リザーバ160を完全に省略し、バルブの有無に拘わらず、流体送達導管のネットワークを使用して、少なくとも1つの流体を流体経路146のセットに送達することができる。
【0043】
1.3.1.液体送達モジュール-カートリッジ
[0080]流体送達モジュール140はさらに、ウェルアレイ内の細胞の捕捉および/または分析を容易にするために、少なくとも1つの流体を収容し、流体リザーバ160に送達するように機能する。好ましくは、図12Aおよび12Bに示されるように、流体送達モジュール140は、試薬チャンバ172のセットを有する試薬カートリッジ170を備え、試薬チャンバのセット内の各試薬チャンバ176は、細胞の捕獲および/または分析を行うために流体セットのうちの1の流体を収容するように構成される。カートリッジ170は、円筒形、円錐形、円錐台形、角柱形、角錐形、または他の適切な形態であり得る。試薬チャンバ172のセット内の各試薬チャンバ176は、他のチャンバと同一であることが好ましいが、流体貯蔵の要件(例えば、容積要件、温度要件、露光要件、圧力要件)によっては他の試薬チャンバと同一でなくてもよい。流体のセットは、好ましくは、緩衝液(例えば、プライミング、洗浄、および透過化緩衝液)、固定液(例えば、固定前および固定後の溶液)、およびカクテル(例えば、溶解、阻害剤、一次抗体、および二次抗体カクテル)を含み、追加的または代替的に、染色剤(例えば、蛍光染色剤または組織学的染色剤)や、細胞捕捉または分析に適した他の液体を含むことができる。第1の例では、液体のセットには、溶解バッファ、RNase阻害剤、dNTPなど、捕捉されたmRNAからオンチップcDNA合成を実行するために使用される試薬が含まれる。第2の例では、流体のセットは、ウェルアレイ内の内容物のエキソヌクレアーゼ処理を実行して、一本鎖オリゴヌクレオチド配列を除去するために使用される試薬を含み得る(例えば、オリゴヌクレオチドプローブを含む粒子の捕獲集団から)。第3の例では、流体のセットには、PCRマスターミックス、dNTP、およびプライマーセットを用いるcDNA増幅用の試薬を含み得る。第4の例では、流体のセットは、単一細胞から回収された核酸からの産物(例えば、遺伝物質、方法200の実施例で生成された遺伝子複合体のセット)の標的増幅のための試薬を含み得る。第5の例では、流体のセットは、特定のオリゴヌクレオチド配列を単一細胞のDNAまたはRNAに連結するための酵素混合物およびオリゴヌクレオチド配列を含み得る。第6の例では、流体のセットは、核酸のタグ付けと標識のための酵素混合物を含み得る。第7の例では、流体のセットは、特定の塩基対長の核酸のサイズベースの精製および溶出に用いられるSPRIビーズの集団を含む試薬を含み得る。ただし、流体のセットは別の方法で構成することができ、システム100および/または方法200によって実行できる任意のアッセイ用の試薬の他の適切な組み合わせを含むことができる。磁気分離による捕捉細胞の精製をさらに促進するように構成されたシステム100の実施例では、流体のセットは、生物学的サンプル内の対象物質(例えば、望ましくない細胞、断片、老廃物)に結合するように構成された親和性分子と結合した磁気ビーズの溶液も含んでもよい。一例では、試薬チャンバ176は、CD45結合白血球(WBC)に結合するように構成されたストレプトアビジン被覆磁性微粒子の溶液を含み得る。代替の変形例では、流体送達モジュール140は、単一の流体または複数の流体の送達を促進して生物学的サンプル内の細胞の捕捉および/または分析を促進するように構成された単一チャンバを含むことができる。他の変形例では、流体送達モジュール140のチャンバは、任意の適切な流体導管で置換することができる。
【0044】
[0081]流体送達モジュール140は、好ましくは、チャンバ内の1以上の流体(例えば、試薬、緩衝液、カクテル、染色、磁性粒子溶液など)とともに事前包装されるように構成され、この流体は事前定義された特定のプロトコルによる関心細胞の捕捉および/または分析を促進するように機能する。あるいは、流体送達モジュール140は、異なるプロトコルに従って関心細胞の捕捉および/または分析を容易にするために、ユーザが1以上の流体を流体送達モジュール140の1以上の試薬チャンバ176に移せるように、開放または半開放構成で事前包装することができる。好ましくは、流体送達モジュール140の少なくとも一部は、一回の使用または複数回の使用後に流体送達モジュール140の一部を廃棄できるように、消費可能に構成される。あるいは、流体送達モジュール140は再利用可能に構成され、流体を流体リザーバ160に移送するように構成された再利用可能な流体送達モジュール140に流体が繰り返し移送されてもよい。
【0045】
[0082]試薬チャンバ172のセットを有するカートリッジ170を含む流体送達モジュール140の実施形態では、各チャンバは、好ましくは、他の試薬チャンバから隔離され、個別にアクセス可能に構成されており、これが特定の流体の流体リザーバ160への送達を制御するように機能する。第1の実施例では、流体送達モジュール140は試薬チャンバ172のセットを備えるとおもに、当該試薬チャンバ172のセットを密閉するように構成された少なくとも1つのシールを備え、したがって、試薬チャンバのセット内の各チャンバを他のチャンバから隔離する。第1の実施例のシールは、チャンバのある位置でシールを穿刺することによって試薬チャンバ176へのアクセスを提供するように、穿刺可能なホイルシールである。第1の実施例では、各チャンバは2箇所でシールされ、これらの2箇所でシールを穿刺するとチャンバが大気圧にさらされ、静水圧によって、穿刺箇所を介してチャンバ内の流体を流体リザーバ160に送達しやすくなる。第1の実施例の別の例では、各チャンバは密封されており、穿刺位置においてシールを穿刺しつつ、穿刺位置に正圧をかけると(例えば、皮下注射針を用いたり、シリンジポンプを用いるなど)、チャンバ内の流体が流体リザーバ160に送られる。第3の実施例のさらに別の例では、各チャンバは密閉され、チャンバ位置に負圧を加えると(例えば、バルブや開口部を通して)、チャンバ内の流体の流体リザーバ160への送達が促進される。チャンバにおけるシールの穿刺、正圧の適用、および/または負圧の適用は、手動で実行してもよいし、カートリッジ170の試薬チャンバの内容物にアクセスできるように構成された作動システムを使用して自動的に実行してもよい。あるいは、流体送達モジュール140は、任意の他の適切な機構または要素の組み合わせを使用して、試薬チャンバ176の個々のアクセスおよび/または隔離を実現することができる。
【0046】
[0083]図12Aおよび12Bに示される第1の具体例では、流体送達モジュール140’は、各々が細胞捕捉および/または分析を促進する流体または試薬を含むように構成された10個の同一の隔離された試薬チャンバ176を含む実質的に円筒形のカートリッジ170を備える。この第1の具体例において、円筒形カートリッジ170は、開放されたチャンバを有する開放構成、開放された試薬チャンバと予めパッケージ化された試薬を含む密閉試薬チャンバとを有する半開放構成、および予めパッケージ化された試薬を含む密閉試薬チャンバを有する完全密閉構成のうちの1つを有し得る。半開放または密閉構成では、密閉された試薬チャンバの両端が穴あけ可能なホイルシールで密閉され、開放または半開放構成では、開放された試薬チャンバの一端が穴あけ可能なホイルシールで密閉される。10個の試薬チャンバはそれぞれ4~6mLの容積を有し、2インチの長さの大部分に沿って実質的に均一なくさび形の断面を有する。第1の特定例において、流体がカートリッジ170のシール近くの下部領域に向かって流れるように、カートリッジ170は、図12Bに示されるように、カートリッジ170の下部領域に傾斜を有する。
【0047】
[0084]第1の具体例の流体送達モジュール140’はまた、各チャンバ内の流体の流体リザーバ160への自動送達を実現進するために、円筒形カートリッジの各チャンバに個別にアクセスするように構成された作動システムに結合することができる。第1の具体例の作動システムは、ステッピングモータによって駆動される回転軸を備え、この回転軸は円筒形カートリッジに取り付けられる。第1の具体例では、10個の試薬チャンバ172が回転軸を取り囲むように、回転軸は、カートリッジ170の回転軸(例えば、垂直回転軸)に沿って取り付けられる。この構成は、ステッピングモータとともに、運用時にカートリッジ170が回転するときに10個の試薬チャンバ172の位置を特定できるように機能する。第1の具体例の作動システムはまた、カートリッジ170の単一の試薬チャンバ176のシールの穿刺を容易にするために、第1の穿孔器とカートリッジ170との間に相対変位を提供するように構成される第1のアクチュエータを含む。第1の具体例では、第1の穿孔器は、カートリッジ170の下方に位置し、カートリッジ170の回転構成を異ならせるとカートリッジ170の試薬チャンバ172と整列する穿刺チップを備え、この穿刺チップは第1の穿孔器の開口部の境界と近く(例えば、同心であり)、結合されている(例えば、隣接する)。したがって、穿刺チップを介して、あるチャンバ位置においてカートリッジ170のシールを穿刺することにより、チャンバの内容物が第1の穿孔器の開口部を通って、チャンバの内容物を受けるように構成された流体リザーバ160に流れる。いくつかの変形例では、穿刺チップは、流体がカートリッジ170から流体リザーバ160に流れるようにする開口部(例えば、垂直チャネル、傾斜チャネル、または他の適切な向きあるいは経路を有するチャネルへの開口部)を有してもよい。追加的または代替的に、穿刺チップの構造は、第1の穿孔器の表面の下に延在して、流体が流体リザーバ160に向かって誘導されるように滴下できるようにしてもよい。
【0048】
[0085]第1の具体例の1つの変形例では、作動システムは、穿孔器をカートリッジ170のシール内へと駆動するために、カートリッジ170に対して穿孔器を変位させることができる(例えば、垂直方向、非垂直の上下方向)。この変形例では、第1の穿孔具は、流体リザーバ160への流体送達を促進するドリッププレートに結合させることができる。第1の具体例の別の変形例では、作動システムは、カートリッジのシールを穿孔器の穿刺チップの方へ駆動するために、カートリッジ170を穿孔器に対して(例えば、垂直方向、非垂直の上下方向に)変位させることができる。第1の具体例のさらに他の変形例では、作動システムは、カートリッジ170のシールの穿刺を実現するために、カートリッジ170および穿孔器の一方または両方を他の任意の適切な方向(例えば、垂直方向、垂直方向から角度的に変位した方向、水平方向)に変位させることができる。このように、第1の具体例のいくつかの変形例では、カートリッジ170および/または穿孔器は、垂直または水平構成から離れるように傾けることができる。傾斜した変形例では、重力および/またはカートリッジ170の試薬チャンバ176への正圧または負圧の印加により、流体の流れを促進することができる。
【0049】
[0086]流体送達モジュール140”の第2の具体例では、作動システムは、試薬チャンバ176の第1の端部でシールを穿刺するために第1の穿孔器を駆動するように構成された第1のアクチュエータと、試薬チャンバ176の第2の端部に開口を作成するように構成される第2の穿孔器を駆動するように構成された第2のアクチュエータとを備える。試薬チャンバ176の第1の端部を穿刺することで、試薬チャンバ176の第1の端部を大気圧に通気し、試薬チャンバ176からの流体送達を促進する機能を果たし、試薬チャンバ176の第2の端部に開口部を形成することで、静水圧により、試薬チャンバ176内の流体が試薬チャンバ176から流体リザーバ160に流れるようにする機能を果たす。第2の具体例では、第1のアクチュエータは、チャンバに対して第1の穿孔具を直線的に変位させて、第1の穿孔具をチャンバの第1の端部の穿刺可能なフォイルシールへと駆動するように構成されるソレノイドアクチュエータである。第2のアクチュエータは、回転運動を直線運動に変換するように構成された回転ソレノイドアクチュエータであり、回転ソレノイドアクチュエータに連結された第2の穿孔器が、試薬チャンバ176の第2の端部にある穿刺可能なホイルシールを貫通してチャンバに開口部を作成する。しかしながら、第1のアクチュエータおよび第2のアクチュエータは、第2の具体例の変形例において、任意の適切なアクチュエータ(例えば、空気圧または油圧アクチュエータ)あるいは複数のアクチュエータによって置換または補完することができる。さらに、第1および第2の具体例の変形例では、穿孔器が試薬チャンバ176の内容物へのアクセス提供を可能にする任意の適切なアクチュエータを含むことができる。同様に、第1および第2の具体例のステッピングモータは、アクチュエータ位置の決定を可能にする任意の適切なアクチュエータまたは要素(例えば、リニアエンコーダに連結されたアクチュエータ)によって交換または補完することができる。このように、第1および第2の具体例の作動システムは、カートリッジ170を回転可能にして、個々の試薬チャンバ176をステッピングモータを使用して少なくとも1つの穿孔要素と位置合わせし、1以上のアクチュエータのサブシステムを使用して個々の試薬チャンバの穿刺を実現する。
【0050】
[0087]第1および第2の具体例の両方において、カートリッジの回転は、図13に示すように、所望の試薬チャンバ176を、流体リザーバ160に連結され試薬チャンバ176の内容物を受けてマニホルド(例えば、流体経路146のセット)内へと分配するように構成された流体入口142と直接整列するように(例えば、直上に)位置付ける。しかしながら、第1および第2の具体例の変形例では、カートリッジ170、試薬チャンバ176、および/または流体リザーバ160は、整列しなくても(例えば、ずれていても)よいが、試薬チャンバ176から流体リザーバ160までの流体の流れを実現する任意の適切な方法で流体的に結合される。一例では、図13Bに示すように、流体リザーバ160は、カートリッジの試薬チャンバ176と整列しなくてもよいが、流体導管(例えば、可撓性流体導管)を使用して穿孔器(または試薬チャンバ176)に結合されている。さらに、第1および第2の具体例のさらなる他の変形例は、カートリッジ170が回転せず、追加的または代替的にカートリッジの並進(例えば、X、Y、および/またはZ方向)によって、所望のカートリッジ試薬チャンバ112を整列させて処理流体を流体リザーバ160へ送達するようにしてもよい。さらに、他の変形例では、試薬カートリッジを所定の位置に固定したままにし(例えば、穿孔器および/または入口へアクセスするために回転させることなく)、ピペッターまたはキャピラリーを使用して目的の試薬チャンバの上部から液体を吸引して抽出し、必要に応じて、ウェルアレイの流体マニホルド、入口、流体リザーバ、流体経路、および/または出口へ流体分配するようにしてもよい。
【0051】
1.3.2 流体送達モジュール-流量制御サブシステム
[0088]システム100は、システム100を通る流体および/またはサンプルの流れ、ならびにシステムを通る試薬の流れまたはその他の適切な流体の流れを制御するように構成された流量制御サブシステム180をさらに含むことができる。流量制御サブシステムは、好ましくは、フロー制御システムが流体送達モジュールの入口と出口との間に圧力勾配を適用するフローモードで動作可能である。この圧力勾配は、正の圧力勾配(入口と出口の間で定義される)または負の圧力勾配であり、連続的、周期的、非同期、(正負間での)往復式、またはその他の適切な方法であり得る。変形例では、流量制御サブシステムは、正圧および負圧の少なくとも一方を提供するように構成され、システム100を通る流体の流れを促進するように機能するポンプを有する。好ましくは、ポンプ182は、システム100の要素内で流体が順方向および逆方向に流れるように、正圧および負圧の両方を提供するように構成される。順方向の流れは、好ましくは、生物学的サンプルからの関心細胞の捕捉を促進し、逆方向の流れは、好ましくは、生物学的サンプルからの関心のある細胞の回収および/または分析を実現する。好ましくは、ポンプ182は、廃棄物チャンバに連結されるように構成され、少なくともポンプ182と大気の間、およびポンプ182と廃棄物チャンバの間に接続を提供するように構成される多方向バルブを備える。しかしながら、ポンプ182は、システムの任意の適切な要素に追加的または代替的に連結され、流体の流れを促進し、任意の適切な代替接続を提供するように構成されたバルブを備えてもよく、および/または多方向バルブ162を備えなくてもよい。いくつかの変形例では、ポンプ182はまた、ポンプ182によって提供される圧力の測定を可能にするように機能する圧力センサを備えることができる。一例では、ポンプ182はシリンジポンプであるが、ポンプ182は、システム100内の流体の流れを促進するために正圧および負圧の少なくとも一方を提供するように構成された任意の適切なポンプであり得る。細胞の損傷を最小限に抑えるために、液体送達に用いられる圧力は低いものである(例えば、2psi未満または1psi未満)。好ましい変形例では、ポンプシステムは、0.1psiの低いポンプ圧力を制御することができる。
【0052】
1.4 システム-熱制御モジュール
[0089]システム100は、システム100の運用中にウェルのセットおよび/または流体送達モジュールの内容物の温度を制御するために、基板およびその内容物を加熱および/または冷却するように機能する熱制御モジュール190をさらに含むことができる。実施例では、熱制御モジュールは、関心細胞および/または流体を含む生物学的サンプルを加熱および/または冷却して細胞の捕捉と分析を促進し、さらに細胞溶解、プローブハイブリダイゼーションのための酵素活性化、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの分子診断プロトコルのための生物学的サンプル混合物の熱サイクリングといった低温から高温へのサイクリングを必要とする反応を促進する機能を果たし得る。熱制御モジュール190は、ヒータ、ヒートシンク、センサ、ファン、および1つ以上のプロセッサを含むことができるが、この熱制御モジュールは、任意の指示に従って(例えば、ユーザ入力、自動、事前設定された温度スケジュール、特定のアッセイに従ってなど)、ウェルアレイの温度を感知し変更するための適切な要素を含むことができる。変形例では、熱制御モジュールのヒータ192は、好ましくは、生物学的サンプルおよび/または流体を制御可能に加熱および冷却するように構成された薄いヒータ(例えば、ペルチェ素子)である。熱制御モジュール190は、追加的または代替的に、温度センサ、または温度制御を実現するように構成された他の適切な要素を含むことができる。例えば、温度センサは、熱伝導性基板、加熱素子、または板状ヒータに結合することができる。温度制御は、ファジーロジック制御、比例-積分-微分アルゴリズム、またはその他の適切な手段によるパルス幅変調を用いて実現することができる。温度制御は、1℃の解像度、またはア用途に応じて他の適切な解像度で提供することができる。
【0053】
[0090]ヒータ192は、基板110のウェルアレイの温度を調節するように機能するが、追加的または代替的に、任意の適切な温度制御機構(例えば、電熱冷却プレート)を含んでもよい。変形例では、ヒータは、(例えば、PCR成分、試薬、および/またはサンプルの)サーモサイクリングまたはインキュベーションのために基板110とインターフェースする低質量ヒータを含み、具体例では、ヒータは抵抗性電力抵抗器(7オーム)と2線式100オームRTDに接続されたアルミニウムヒータを含むことができ、ここで発熱素子はインハウスのヒータドライバおよび温度コントローラに接続されている。アルミニウムヒータを加熱するために、12ボルトのPWM信号が発熱素子に供給される。RTDは温度検知を提供し、制御アルゴリズムを用いて温度が変調される。冷却時、加熱は停止され、熱を除去するためにファンが作動される。熱質量が小さいため、アニール温度(~60℃)から変性(~94℃)への加熱は20秒で達成でき、94℃から60℃への冷却は特定の条件下で40秒で達成することができる。別の具体例では、捕捉細胞から抽出されたmRNAの生存率を保つために、熱制御モジュールを使用してウェルアレイの温度を10℃未満(例えば5℃)に維持することができる。
【0054】
[0091]ヒータは、好ましくは抵抗電熱加熱素子であるが、代替的または追加的に、誘導加熱素子、対流加熱素子、光学加熱素子、または他の適切な加熱機構を含むことができる。好ましくは、ヒータは基板の底面に隣接配置され、加熱素子の側方広範面は、ウェルアレイの下の基板の下側広範面114に直接結合されるが、代わりに基板112の上面
に隣接して、基板の底面または上面から離して(例えば、ヒータが非接触加熱機構を含む実施例)、あるいは基板に対する他の適切な位置に配置することができる。
【0055】
[0092]第1の実施例では、ヒータ170は、加熱素子に連結された熱伝導性基板を含む。この第1の変形例では、熱伝導性基板は、好ましくは加熱素子を収容するが、代わりに、加熱素子は、熱伝導性基板の表面に接触するように構成することができる。熱伝導性基板は、伝導性材料(例えば、シリコン、アルミニウム、銅、金、銀)、または発熱素子から熱を伝達するための他の適切な材料で構成され得る。好ましくは、熱伝導性基板は、発熱面全体にわたって温度が1℃未満のばらつきで、発熱面全体にわたって温度均一性を維持する。しかしながら、熱伝導性基板は、発熱面全体に適切な温度プロファイルを提供することができる。第1の実施例では、熱伝導性基板を特定の温度に加熱するのに必要なエネルギーを低減するために、熱伝導性基板は薄いプロファイルを有することが好ましい(例えば、厚さが4mm未満の寸法を有する)。熱伝導性基板は、冷却を提供するようにさらに構成してもよい。第1の実施例の具体例では、熱伝導性基板を室温から適切な時間内に100℃の温度に加熱するのに必要な電力は50ワット(例えば、40、30、20、10)未満である。
【0056】
[0093]第1の変形例では、1つの露出面と、他のすべての面を覆う断熱材とを有する板状の抵抗加熱器を使用することにより、1つの面を介した加熱を達成することができる。第2の変形例では、ペルチェヒータを使用することにより、ヒータの1の面を通して加熱を提供することができる。ペルチェヒータを使用するヒータ192の変形例では、ヒータ192は熱電材料を含み、熱電材料にかかる電圧差に応じてヒータ192の対向面に異なる温度を生成する。したがって、電流がペルチェヒータに流れると、ペルチェヒータの一方の面の温度が下がり、ペルチェヒータのもう一方の面の温度が上がる。しかしながら、システム100は、生物学的サンプルおよび/または流体を加熱するように構成された他の任意の適切なヒータ170をさらに含むことができる。
【0057】
[0094]熱制御モジュールは、上記のヒータ192に加えておよび/または代わりに、試薬送達中にウェルアレイに提供される流体の温度を調節および制御するように機能する第2の加熱素子を含むことができる。図15Aおよび15Bに示されるように、流体ヒータ154(例えば、規定された形状を有するアルミニウムヒータ)が、流体送達モジュール140の凹部152内に結合され得る。流体加熱プレート154は、プレート(例えば、流体送達モジュール140の第1プレート150)に結合されることが好ましく、この第1プレート150は、流体経路146のセットをウェルアレイに結合するように構成される(例えば、マニホルドを介して)。1の変形例では、流体ヒータ154は第1プレート150の表面に結合され、別の変形例では、流体ヒータ154は第1プレート150内に埋め込まれる。プレート150は、好ましくは、流体ヒータ154と、ウェルアレイに連結された流体リザーバ内の流体との間の熱伝達を促進し、生物学的サンプルおよび/またはウェルアレイ内の流体を適切に加熱できるように構成される。プレート150は、流体経路162を介して伝導性冷却を提供するようにさらに構成することができる。しかしながら、冷却は提供されなくてもよく、または他の適切な要素(例えば、必要に応じて強制空冷を提供するために連結されたファン送風機)を用いて提供してもよい。プレート150が冷却を提供するように構成される変形例では、冷却剤(例えば、水、油、空気、複合液体)を流体経路162に流し、制御流体ポンプを使用して制御することにより冷却を実現することができる。
【0058】
[0095]したがって、図16に示されるシステム100の変形例は、凹部領域内の流体送達モジュールの第1プレートに結合された流体ヒータ154をさらに含むことができ、流体ヒータ154は、流体ヒータ154によって提供される対流が広範面に平行な第2の方向に流れることができる流体層を少なくとも部分的に画定し、システムは、対流とウェルのセットとの間の拡散輸送を提供する拡散モードで動作可能である。より詳細には、ウェルのセットの開放面は、流体経路を通る対流試薬の流れが確立されるリザーバの領域と比較して非常に小さい。拡散輸送により、試薬を流体層からウェルのセットに輸送することができる。試薬がウェル(約30-50ミクロンの深さ)に拡散するのに必要な時間は、式:拡散時間~(拡散長)/拡散率で見積もることができ、複数および/または連続した試薬がウェルアレイに分配されるタイミング、速度、および温度は、適切に調整および/または任意に自動化して、様々な生化学アッセイ中にウェルの内容物が試薬に適切に均一に曝されるようにすることができる。例えば、PCRプライマ(拡散率10-6cm/s)などの小分子は、ウェルに拡散するのに約9秒かかる。およそ4.7×10-7cm/sの拡散率のTaqポリメラーゼは、ウェルキャビティ全体に拡散するのに約19秒必要である。したがって、「オールインワン」(例えば、連続、同時、単一、複数、試薬の混合)PCR試薬をウェルアレイに送達するために、試薬は試薬がウェルアレイに拡散するまで十分な時間の提供を前提として対流式に流体リザーバに輸送される(約2~3分)。変形例では、約40ミクロンのウェルキャビティの高さを有する細胞粒子ペアを含むウェルの場合、細胞の上に不浸透性の非細胞粒子が存在すると、流体リザーバ160内の流体経路162およびの下のウェルキャビティの間の拡散流体経路を妨害する可能性があり、それによって単一細胞のみを含むウェルの場合よりも、捕捉された細胞に到達する試薬の拡散時間が少なくとも2倍(例えば、3、4、5、10倍)長くなる。
【0059】
1.5 システム-イメージングサブシステム194
[0096]システム100は、ウェルのセットの内容物をイメージングするように機能するイメージングサブシステム194をさらに含むことができ、ウェルのセットに捕捉された標的物体(例えば、CTC、標識細胞、ミクロスフェア)を、システム100に導入されたサンプル内の他の細胞や物質から区別するようにさらに機能し得る。イメージングサブシステム194は、好ましくは蛍光顕微鏡を含むが、追加的または代替的に、任意の適切なイメージング機構(例えば、光学顕微鏡、CCDカメラ、フォトダイオードアレイ、発光ダイオード、反射器、1つまたは複数のプロセッサなど)を含むことができる。蛍光顕微鏡は、好ましくは、ウェルのセットのうちの1つまたは複数において標的オブジェクトから放出される蛍光信号を検出し、それによってウェルが標的物体を含むことを同定するように動作可能である(例えば、識別モード、検出モードなど)。具体例において、イメージングシステム(例えば、蛍光イメージングシステム)は、アッセイに従って処理されたサンプルのリアルタイムまたはほぼリアルタイムの蛍光イメージングを提供するモードで動作可能であり得る。イメージングサブシステム194は、好ましくは、基板の下に配置され、基板の透明(または半透明)材料を通してウェルのセットの内容物をイメージングするように方向づけられる。あるいは、イメージングサブシステム194は、基板の上に配置され、ウェルのセットの内容物を基板自体の材料によって妨害されないようにイメージングするように方向付けることができる。しかしながら、イメージングサブシステム194は、他の方法で任意の適切な方法で配置することができる。
【0060】
[0097]追加的または代替的に、システム100は、細胞の処理および/または分析を促進する他の適切な要素を含むことができる。例えば、システム100は、イメージングを促進するように機能する光学素子(例えば、基板110内に埋め込んだり、基板110に結合された)を含むことができる。光学素子は、好ましくはイメージングを促進するために入射光を調整するように機能する。光学素子は、入射光を曲げたり、反射したり、コリメートしたり、焦点を合わせたり、排除したり、他の調整をしたりする機能を果たし得る。光学素子は、好ましくは基板内に画定されるが、代わりにシステム100の任意の他の適切な部品によって画定してもよい。光学素子には、ウェルアレイ120を画定している反対側の基板面に画定されたアレイに隣接する基板の厚さ内に配置された光反射器、ウェルアレイ120を画定する近くの基板110の広範面に画定されたマイクロレンズ、光コリメータ、偏光子、干渉フィルタ、光反射器(例えば、90°照明素子)、収集された蛍光放射光の経路への励起光線の進入を最小化する要素、回折フィルタ、光拡散器、および他の適切な光学素子、のいずれか1つ以上を含み得る。システム100は、追加的にまたは代替的に、関心細胞10をウェル128に引き付けるように機能するウェル親和性機構を含むことができる。ウェル親和性メカニズムには、電界トラップ、親和性部分(ウェル表面へのコーティングなど)、要素へ流れを誘導する機能(マイクロ流体構造など)、またはその他の適切な細孔親和性メカニズムが含まれる。しかしながら、システム100は、他の適切な要素を含むことができる。
【0061】
[0098]変形例では、図17に示されるように、イメージングサブシステム194は、ウェルを滅菌し、追加的または代替的に、光分解性化学結合などの光反応物質を含むウェルを照射する機能を果たす紫外線照明要素を含むことができる。この紫外線照明要素は、300から400nmの間の波長を放出する1以上の発光ダイオード、水銀灯、および/またはメタルハライドランプを含むことができる。第2.4章で説明されているように、特定用途では、ウェルアレイに305nm以下の波長のUV照射を5~20分間行って、プローブのセット36を粒子に結合している(例えば、ビオチン化性質)感光性結合を切断することにより、粒子からプローブのセットを分離することができる。照明要素がウェルアレイの上方に配置されるいくつかの変形例では、ウェルアレイの下の熱制御モジュールの加熱要素は、ウェルアレイの各ウェル内の粒子の均一な照明を増進する反射面を含むことができる。しかしながら、ウェルアレイの内容物の光照明は、任意の適切な方法で、任意の照明要素の構成によって実行することができる。さらに、システム100のイメージングサブシステムおよび/または他の要素は、各ウェルキャビティの内部を均一に照明するために、ウェルアレイに対して異なる位置に配置された反射面を含んでもよい。第2章でさらに説明される一実施例では、基板の下の熱制御モジュール190の加熱面は反射性であり、したがってUV光が粒子の外側面および/またはウェルキャビティの内側面から捕捉された粒子の全面を照射するようにして分子(例えば、プローブのセット、遺伝子複合体)の光分解を生じさせる。しかしながら、イメージングサブシステムからウェルアレイへの入射光は、システム100の他の要素の任意の他の機能によって修正、反射、屈折、拡散、および/または他の方法で操作して、各ウェルの内容の光学的検査を改善することができる。
【0062】
[0099]イメージングサブシステム194は、検出モジュールと、情報を提供するように構成された少なくとも1つのタグとを含むタグ識別システムもさらに含むことができる。タグ識別システムは、システム100のバーコード、QRコード、および/または他の識別タグを読み取り、識別タグからプロセッサに情報を伝達するように機能する。タグ識別システムを照明モジュール110に結合して、プラットフォームまたは他の適切なシステム要素に結合されたイメージング基板上に設けられたタグの識別および読み取りを容易にすることができる。他の変形例では、タグ識別システムは照明モジュールに結合されていなくてもよい。タグ識別システムは、位置が固定されていることが好ましいが、他のシステム要素に対して移動するように構成することもできる。代替例では、タグ識別システムは、システム100の要素に配置されたタグまたはラベルをスキャンするためにユーザによって操作されるように構成されたスタンドアロンユニットであり得る。タグ識別システムは、バーコードリーダ、無線周波数識別(RFID)リーダ、QRコードリーダ、近距離通信デバイス、あるいはイメージング基板上またはシステム100の他の態様(例えば、スライドガラス、カートリッジ、ウェルアレイなど)にある一意の識別子を識別できる機構を実装する他の適切な要素を含むことができる。タグ識別システムは、代替的または追加的に、識別タグ上のエンコードされていない情報(テキストなど)を解析および解釈するように構成することができる。システム100のいくつかの変形例では、イメージングサブシステム194の光学センサは、タグ識別システムとしてさらに機能することができる。
【0063】
[00100]好ましくは、タグ識別システムによって識別および/または読み取られるように意図されたタグは、読み取られると情報をタグ識別システムに伝達することが好ましい。情報は、イメージング基板(例えば、ウェルアレイ、ガラススライド)の識別情報、プロトコル情報(例えば、染色プロトコル情報)、プロトコルを実行するために必要な推奨システムパラメータに関する情報、特定のイメージング基板に関するシステム100のキャリブレーションに関する情報に関する情報、イメージング基板の内容物に関する情報、イメージング基板またはイメージング基板内の位置の確実な位置識別を容易にするように構成された情報、および/または他の適切なタイプの情報を含み得る。情報は、光学センサによってキャプチャされた画像データに結合(例えば、内部に埋め込まれ)、および/または他の適切な手段を使用してプロセッサに通信することができる。
【0064】
1.6 システム-追加要素
[00101]捕捉された細胞のさらなる精製を促進するように構成されたシステム100の実施形態では、システム100は、望ましくない試料材料から捕捉された細胞の分離を可能にする磁石90をさらに含むことができる。磁石90は、好ましくは単一の磁石であるが、代替的に、磁気的に結合された粒子を捕捉するために大きな磁束を提供する目的で、(例えば、並列に並べられた)複数の磁石の1つであってもよい。好ましくは、磁石または磁石群90は、システム100の磁石ホルダに結合され、この磁石ホルダは、実験の一貫性のためにシステム100の磁石の位置を安定させるように構成される。さらに、磁石90は、磁石によって提供される磁場によって捕捉された細胞の精製が流体リザーバ160内で促進されるように、好ましくは流体リザーバ160の近位に配置されるように構成される。しかしながら、代替例では、システムの任意の適切な要素に対して磁石を固定したり、固定しなくてもよい。一実施例では、磁石90は、流体リザーバ160の近位のマニホルド(例えば、流体経路146のセット)に固定され、磁気ビーズに結合されたサンプルの粒子が流体リザーバ160内の壁に可逆的に捕捉されるように、流体リザーバ160の壁に接触する長方形プリズム形状の磁石90である。別の実施例では、磁石は、マニホルド、ウェルアレイ180、または流体リザーバ160の出口に磁場を提供するように構成することができ、それにより、処理および/または精製中に、磁気的に結合した粒子をマニホルド、細胞アレイ180、および流体リザーバ160の出口の少なくとも1つの中に捕捉することができる。
【0065】
[00102]システム100は、アレイのウェル128から単一細胞および細胞クラスタの少なくとも一方を抽出するように機能する抽出モジュール(例えば、細胞回収サブシステム)をさらに含むことができる。単一のウェル128から個々の細胞が選択的に取り出されることが好ましいが、抽出モジュールは、ウェルアレイ120からの複数の細胞/細胞クラスタの同時取り出しを実現することができる。細胞/細胞クラスタは、細胞に取り除く力を加えることにより取り出されることが好ましい。取り除く力は、内容物をウェル128から吸引することによって(すなわち、負圧を用いて)適用されることが好ましい。しかしながら、除去力は、追加的または代替的に、ウェルアレイ120を通して流体をポンピングして(例えば、周囲チャネル150を介して)、ウェル128から細胞/細胞クラスタを駆動する正圧を提供することにより適用することができる。一変形例では、抽出モジュールでポンプ機構によって提供されるポンプ圧は、10,000Pa未満であり、特定の変形例では、提供されるポンプ圧は6,000Paである。別の特定の変形例では、提供されるポンプ圧は1,000Paである。ただし、他の適切なポンプまたは吸引圧力を使用することができる。
【0066】
[00103]いくつかの変形例では、抽出モジュールは粒子抽出器を含むことができる。粒子抽出器は、システム100内のアドレス可能な場所から1つまたは複数の単離された細胞および/または非細胞粒子を選択的に取り出すように機能する。粒子抽出器は、単一のウェル128から細胞/粒子クラスタを除去するように構成されることが好ましいが、複数のウェルから複数の細胞/粒子クラスタを同時に取り出すように構成することもできる。抽出モジュールは、好ましくは抽出モードで動作可能であり、抽出モードでは、抽出モジュールは、ウェルの底面に垂直な方向に沿って、ウェルのセットのウェルから単一細胞のセットおよび非細胞粒子のセットの少なくとも一方を抽出する。抽出モードでは、流体送達モジュールは基板から取り外されることが好ましい。しかしながら、細胞除去モジュールが抽出モードで動作する場合、流体送達モジュールは代替的に基板に結合されたままであってもよい。しかしながら、粒子抽出器は、2012年7月25日に提出され、この参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第13/557,510号「Cell Capture System and Method of Use」に記載されたものなど、他の適切な細胞除去ツールを含むことができる。
【0067】
[00104]粒子抽出器の第1の実施例では、粒子抽出器は、基板110の上側広範面112に垂直な方向からウェルアレイ120にアクセスするように構成される。粒子抽出器は、好ましくは、基板110の上側広範面112から実質的に垂直方向に細胞/粒子クラスタを取り去るが、代替として、基板110の上側広範面112に対して角度のついた方向に細胞/粒子クラスタを取り去ることができる。粒子抽出器は、ウェルアレイ120にアクセスし、1以上のウェルと流体連通する実質的に流体的に隔離された容積を画定する(例えば、マイクロピペット、毛細管などの)中空チャネルを含むことが好ましい。中空チャネルは、ウェルでの流体シール形成を促進する1つまたは複数のシーリング要素(例えば、ポリマーコーティングまたは適切な幾何学形状)を先端に含むことができる。粒子抽出器は、ウェルの内容物を粒子抽出器に受け入れるための適切な形状を提供するために、近位端から先端に向かって先細になっていることが好ましい。しかしながら、粒子抽出器は、代わりに他の適切な形態を有することができる。したがって、中空針は、好ましくは、関心のあるウェル128内に実質的に流体的に隔離された容積を形成するように構成され、その後、低圧発生器(例えば、ポンプ)を使用して、保持された細胞/細胞クラスタをウェル128から吸引し、中空チャンネルを通って、粒子抽出器の細胞収集ボリュームに入る。一変形例では、粒子抽出器は、高さが200マイクロメートル、中空チャネル直径が25マイクロメートルのマイクロピペットである。別の変形では、粒子抽出器は、150マイクロメートルのチャネル直径を有する毛細管である。別の変形例では、ウェルアレイ120のウェルは、各グループが基板の広範面に平行な平面内の閉曲線によって囲まれるようにグループ化され、粒子抽出器は、この閉曲線の最大の弦よりも小さい内径を有する。ただし、これらの具体例の他の変形例は、他の適切な画定寸法を有してもよい。
【0068】
[00105]システム100からの細胞および/または非細胞粒子の除去は、好ましくは自動化されるが、追加的または代替的に、半自動化または手動化することができる。さらに、細胞および/または非細胞粒子の除去は、画像解析(例えば、プロセッサでの視覚処理を介して、光検出器を用いてなど)を通してウェルアレイ120から除去された細胞の自動固定化、透過化、染色、イメージング、および識別を含む細胞識別、または他の適切な方法とともに実行することができる。抽出モジュールは、例えば、作動サブシステムを用いて、関心のある細胞/粒子クラスタを含有するウェル128へ粒子抽出器を進めるのを促進するように構成することができる。抽出モジュールは、追加的または代替的に、細胞および/または粒子除去方法の選択および/または細胞除去ツールの選択を促進するように構成することができる。別の変形例では、抽出モジュールでの細胞の識別は半自動化することができ、細胞および/または粒子の回収を自動化してもよい。例えば、細胞の染色とイメージングを自動で行い、関心細胞の識別と選択は手動で行うことができる。別の変形例では、すべてのステップを手動で実行してもよい。ただし、自動または手動のステップの任意の組み合わせを使用することができる。
【0069】
[00106]システム100の実施例は、2016年10月25日出願の米国出願番号15/333,420「Cell Capture System and Method of Use」、2014年1月24日出願の米国出願番号14/163,185「System and Method for Capturing and Analyzing Cells」、2015年9月23日出願の米国出願番号14/863,191「System and Method for Capturing and Analyzing Cells」、および2014年5月28日出願の米国出願番号14/289,155「System and Method for Isolating and Analyzing Cells」に記載の方法に類似する様式でアッセイを容易にするように動作可能である。このシステムは、オンチップ免疫化学、オンチップDNAおよび/またはmRNA FISH、オンチップmRNAおよび/またはDNA PCR、オンチップ等温増幅、オンチップ生細胞アッセイ、オンチップ細胞培養、および他の類似のアッセイを含む、様々なオンチップ(例えば、基板でのinsitu)分析およびアッセイのために追加的または代替的に動作可能である。
【0070】
[00107]具体例では、システムは以下の手順に従って操作することができる:4ミリリットルの全血サンプルを10分間、0.4%PFAの等量で部分的に固定する;サンプルは癌細胞が濃縮されており、PBSで洗浄される;約85%の癌細胞と約20,000の全血細胞を含む細胞を1ミリリットルのPBSで逆流させて、細胞を含む逆流溶液を生成する;逆流溶液がシステム100のウェルアレイ120上に流され、細胞がウェルに捕捉される;免疫染色試薬が、流体送達モジュールによってウェルのセットの各ウェルに流される;癌細胞が、免疫染色試薬でタグ付けされた細胞から放出される蛍光シグナルを検出する蛍光顕微鏡を使用して識別される;システムの細胞除去モジュール(例えば、3軸移動ステージのキャピラリーチューブ)を使用して、識別された細胞を対応するウェルから抽出し、PCRチューブに移して、単一細胞ゲノムを増幅する;増幅された単一細胞ゲノムは、下流での処理(例えば、全ゲノムシーケンス、ターゲットシーケンスなど)のためにパックされる。
【0071】
[00108]さらに、細胞選別の分野の当業者が前述の詳細な説明および図面および特許請求の範囲から認識するように、上記システム100の範囲から逸脱することなく、システム100の実施形態、変形例、実施例、および特定用途に修正および変更を加えることができる。
【0072】
2. 方法
[00109]図18に示されるように、標的細胞の集団を単離および分析する方法200は、ブロックS210で、標的細胞の集団をウェルアレイに受け取るステップと;ブロックS220で、粒子の集団をウェルアレイに分配するステップであって、粒子の集団の各粒子は、標的細胞の集団に関連する生体分子に対する結合親和性を有するプローブのセット36に任意選択的に結合することができる、ステップと;ブロックS230で、ウェルアレイ全体に部分的に保持された粒子のサブセットを再配布するステップと;ブロックS240で、ウェルアレイを処理するステップとを含む。いくつかの変形例では、ブロックS240は、ブロックS242で、標的細胞の集団および粒子の集団の一部(例えば、プローブ36のセット)から放出された核酸物質を含む遺伝子複合体70のセットを生成するステップと、追加的または代替的に、ブロックS244で、ウェルアレイで生化学プロセスを実行するステップを含む。さらに、方法200は、追加的または代替的に、ブロックS250における下流での分析のために、ブロックS240で、ウェルアレイから生成された遺伝子複合体70のセットを取り出すステップを含み得る。
【0073】
[00110]方法200は、細胞の単離、捕捉、および保持を可能にするように機能し、より好ましくは、既知のアドレス可能な場所で、単一細胞形式および/または単一クラスタ形式(例えば、同じウェル内内に共局在する単一細胞と単一粒子の対)の細胞の効率的な捕捉を可能にし、さらに個々の細胞または細胞クラスタ(例えば、生物学的サンプル中の希少細胞、細胞粒子ペア)に実行できる複数の単一細胞/単一クラスタアッセイのパフォーマンスを促進する。好ましい実施形態では、図19に示されるように、方法200は、ウェルアレイのサブセットについて理想状態を達成するように機能し、理想状態のウェルは、ウェルアレイ内で単一クラスタ形式で個々の細胞粒子ペアを捕捉するために、ブロックS210で単一の細胞を受け取り、ブロックS220でその後に単一の粒子が続く。しかしながら、変形例では、方法200は、単一の細胞および/または粒子より多くを受け取ったウェルアレイのサブセットについて、(例えば、基板の平坦面118に画定される空間的境界を横断する)ウェルの容量を超える細胞および/または粒子の集団を再分配し、それにより、ブロックS210とブロックS230の分配ステップにおけるエラー(例えば、凝集、過飽和)を修正して、ウェルアレイ内の単一細胞および/または単一クラスタの捕捉を改善することにより、理想状態を達成することができる。さらなる変形例では、方法200は、前の分配ステップの結果としてウェルアレイにまだ入っていない(例えば、平坦面118上に残る)細胞および/または粒子の集団を再分配することができ、それにより、捕捉されていない細胞および/または粒子に、アクセス可能なウェルに収容される追加の機会を与え、導入された細胞および/または粒子集団の捕捉効率の向上を実現することができる。特に、好ましい実施形態の変形例の実装により、方法200のステップは、他の方法による20%未満の捕捉効率と比較して、単一細胞粒子ペアの捕捉効率を80%を超える捕捉効率に高めることができる。方法200のステップは、捕獲された細胞の集団の下流での分析を可能にするために、任意の順序または反復数でウェルアレイのサブセットの理想状態を達成するのに用いることができ、追加的および/または代替的に、任意の数の細胞、非細胞粒子、および/またはそれらの任意の組み合わせ(例えば、1またはそれ以上の細胞、1またはそれ以上の粒子などの組み合わせ)を保持するようにウェルアレイの内容物を操作するのに用いることができる。
【0074】
[00111]好ましい応用例において、方法200は、ウェルアレイの下流での遺伝分析の処理を可能にするように機能することができる。実施例では、図20に示すように、ウェル内で捕捉された単一の細胞粒子ペアをウェル内で、識別可能な遺伝子配列を形成するように処理することができ、ここで細胞の核酸物質は粒子に結合された相補的ヌクレオチドプローブ結合することができる。このようにして、方法200は、ウェルアレイから取り出す必要なく、細胞粒子ペアを迅速に単離および保持し、細胞粒子ペアに対して生化学的処理を実行することにより、短時間で処理できる細胞の数を増やすことに大きな利益を提供できる。いくつかの実施形態では、方法200を使用して、循環腫瘍細胞(CTC)および循環幹細胞(CSC)などのCTCの亜集団の捕捉および分析を促進することができるが、追加的または代替的に、処理および分析の対象となる可能性のある任意の他の適切な細胞を捕捉するために使用することができる。しかしながら、方法200は、高スループットの細胞/粒子の単離またはペアリングが望まれる他の適切な用途に適した他の方法で実装することができる。
【0075】
[00112]方法200の変形例では、ブロックS210、S220、および/またはS230は、異なるアッセイに従って細胞集団を処理するためのプロトコルに従って、任意の適切な回数で実行され得る。さらに、ブロックS210、S220、S230、およびS240は、異なるアッセイに従って細胞集団を処理するためのプロトコルに従って、任意の適切な順序でまたは同時に実行することができる。方法200の代替実施形態では、ブロックS220での粒子の分配、および追加的または代替的にブロックS230での再分配を、ブロックS210での標的細胞の分配の前に実行することができる。
【0076】
[00113]方法200のこの代替実施形態の変形例では、図24図25、および図26に示すように、ブロックS220はブロックS210の前に実行することができ、これがウェルアレイの各ウェル内の粒子集団の単一粒子捕捉を可能にするように機能し、ここで粒子の集団は、ラベリングされたプローブのセットを各ウェルに送達する送達媒体として作用する。好ましくは、粒子の集団の各粒子は、プローブのセット36内のすべてのプローブに共通のユニット識別子を含むプローブまたはプローブのセット36に取り外し可能に結合される(図7)。単一粒子がウェルにうまく捕捉されると、プローブのセット36が粒子から放出され、各ウェルキャビティの内面に結合することができる。粒子はウェルから任意に除去することができ、それにより、ブロックS210に記載のように、単一細胞の捕捉のために単一細胞がウェルアレイにアクセスし易くなる。各ウェルはプローブのセット36のユニット識別子を介して個々のウェルに固有のプローブのセット36を含み、単一細胞がウェル内に捕捉されると、遺伝物質を含む捕捉された細胞の生体分子が放出され、ブロックS240の実施例(図24、25、および26)で説明されているように、遺伝子複合体を生成するためのプローブのセット結合され得る。遺伝子複合体の取り出し、処理、および/または分析は、ブロックS250で実行することができる。図24に示すように、標的細胞の集団を単離および分析する方法200’は、各粒子がプローブ36のセットを含む単一粒子形式でウェルアレイに粒子の集団を受け取るステップと;標的細胞の集団を単一細胞形式のウェルアレイ内に捕捉するステップであって、各細胞は各ウェル内のプローブ36の対応するセットと相互作用することができる、ステップと;プロセス試薬をウェルアレイに入れて、ウェルアレイで生化学プロセスを実行するステップと;ウェルアレイからの生化学プロセスの産物を処理するステップとを含む。いくつかの変形例では、方法200’は、粒子の集団のプローブ36のセットをウェルアレイに結合するステップと;各細胞の放出された核酸物質および各ウェル内のプローブ36のセットを含む遺伝子複合体70のセットを生成するステップと;ウェルアレイ内の遺伝子複合体を処理するステップと;ウェルアレイから遺伝子複合体70のセットを取り出すステップとを含む。方法200’は、下流での処理のためにウェルアレイから追加の取り出すステップを必要とせずに、高スループット方式の単一細胞形式の遺伝子ライブラリを生成するために、単一細胞の分離、捕捉、およびラベリングを実現する機能を果たし得る。一意のラベル(単一細胞形式で捕捉された粒子)を含むプローブ36のセットで各ウェルをラベリングすることにより、単一細胞形式で捕捉された細胞は、同じウェル内に位置する対応するプローブ36のセットを用いてその後処理することができる。しかしながら、方法200のステップの変形例では、単一細胞に由来する遺伝物質を単離およびラベリングし、容易に識別、処理、および分析できる遺伝子複合体の生成を達成するために任意の適切な順序で実行することができる。
【0077】
[00114]方法200は、好ましくは、上記第1章で説明したシステム100を使用して少なくとも部分的に実施される。しかしながら、方法200は、追加的または代替的に、細胞捕捉および分析のための他の適切なシステム100を使用して実施することができる。上記第1章の実施例で説明したように、ウェルの寸法は、基板の平坦面118の下に細胞および/または粒子(例えば、完全に保持された細胞および粒子)を保持し、基板の平坦面118を交差する細胞および/または粒子(例えば、部分的に保持された細胞および粒子)が出るように構成および選択することができる。そのような実施例では、関連するウェルに完全に保持されていない細胞および/または粒子は、以下の章で説明する後続の再分配ステップで排出される。好ましい変形例では、ウェルの寸法は、単一細胞と単一粒子をウェルキャビティ128内かつ平坦面118の下の細胞粒子ペアとして保持するように選択されるが、ウェルの寸法は、任意の数または細胞および非細胞粒子の組み合わせを保持し、したがって方法200によって他の適切な方法で利用されてもよい。
【0078】
2.1 方法-標的細胞の集団の受容
[00115]ブロックS210は、標的細胞の集団をウェルアレイに受けることを記述する。ブロックS210は、上記第1章で説明したシステム100の実施形態で関心のある標的細胞を含む生物学的サンプルを受け取り、単一細胞形式および単一クラスタ形式の少なくとも一方でシステム100のウェルへの標的細胞の分配を促進する機能を果たす。しかしながら、ブロックS210は、代替的に、単一細胞形式および単一クラスタ形式の少なくとも1つで細胞を捕捉するように構成された他の任意の適切なシステムで生物学的サンプルを受けるステップを含むことができる。ブロックS210の実施例では、生物学的サンプルは、体送達モジュールの第1のプレートの変形例により(例えば、第1のプレートの凹部によって画定される流体リザーバ160を介して、第1のプレート内に埋め込まれ、アレイと流体連通する流体チャネルからなど)、および/または任意の他の適切な方法で、アレイの実施例で直接受け取られる(例えば、ピペッティングにより、アレイに連結された流体チャネルを介した流体送達により)。さらに、ブロックS210の変形例では、細胞集団は、標的細胞(例えば、CTC、CSC、免疫細胞)の細胞集団および/または関心のある他の適切な粒子を含むことができる。
【0079】
[00116]ブロックS210の変形例では、図21に示すように、標的細胞の集団を受け取るステップは、標的細胞の集団をウェルアレイに分配するステップを含むことができ、任意で1以上の追加のステップで標的細胞の集団を再分配して最初の分配ステップの不正確さ(例えば、ウェルのサブセットが必要以上の細胞を受け取っている場合、細胞のサブセットが基板の一領域で凝集している場合など)を修正することを含み、これにより各ウェルに所望の量の標的細胞を捕捉することが促進される。好ましい実施形態では、ブロックS210とウェルアレイのウェルキャビティのサイズ制約との調整により、以下にブロックS218でさらに説明するように、ウェル内に捕捉および保持できる細胞の数および形状を決定することができる。例えば、高さが30マイクロメートルのウェルは、平坦面118より15~25マイクロメートルの間の特性直径を持つ1つの標的細胞を受容し、この最初の標的細胞の上にウェルに入るさらなる標的細胞は、平坦面118と交差し、ウェルキャビティ128の高さによって規定される境界線を超えることになる。したがって、ウェルキャビティ128によって完全に保持されず、むしろ平坦面118と交差する細胞は、後続の細胞再分配ステップによって、1より多い細胞を受け取った(すなわち、細胞が飽和状態にある)ウェルアレイのサブセットを、この再分配ステップによって単一細胞のみを含有するように修正することができる。しかしながら、標的細胞の集団を受け取るステップは、各ウェル内に所望の内容物を得るための分配および再分配ステップの任意の方法またはシーケンスを含むことができる。
【0080】
[00117]ブロックS210は、好ましくは、方法200の最初のステップとして、他の細胞または粒子分配ステップの前に実行され、このときウェルアレイは、ウェル内に他の細胞または非細胞粒子がない状態である(例えば、ウェルはブロックS210の前は非占有状態にある)。しかしながら、ブロックS210は、ブロックS220で粒子の集団の分配ステップの後など他の任意の適切なときに実行することができ、および/または、最初の細胞分布ステップの後に繰り返してもよい。さらに、標的細胞のウェルアレイへの所望の分布を達成するために、ブロックS210またはブロックS210のサブステップを、任意の適切な回数繰り返すことができる。
【0081】
[00118]標的細胞の集団をウェルアレイに分配するステップは、標的細胞をウェル内に捕捉する際の細胞生存率を最大化するようにも機能する。第1の実施例では、標的細胞集団の最初の分配ステップは、細胞に追加の物理力を加えることなく、重力誘導エントリによってウェル内に細胞を装填するステップを含むことができる。一例では、ウェルアレイへの細胞の重力誘導エントリは、アレイの異なる複数領域でサンプルの少量のアリコート(例えば、アリコートあたり50~500μlの範囲)をピペッティングし、生物学的サンプルをアレイの開放面(各ウェルの開口端が配置されている)で所定時間インキュベートして、標的細胞が重力によってウェルに入るようにする。より具体的には、各アリコートをウェルアレイよりも上の流体リザーバ内のウェルアレイの異なる領域に送達して、各ウェルの開放面にわたってサンプルを分配して、ウェルアレイの上に流体層を生成し、ここから細胞がウェル内に降りるようにすることができる。変形例では、ウェルアレイへの単一の標的細胞の重力誘導エントリに割り当てられる時間は、1mLの容量で5分から60分までの範囲である(例えば、K562細胞では約20分、PBMCでは約30分)。しかしながら、細胞の重力誘導エントリは、他の適切な方法によっても達成することができ、例えば、基板のアレイに生物学的サンプルを塗りつけ、一貫した安定した速度で液体リザーバ内の生物学的サンプルの安定した液体層を維持し、および/または、標的細胞へのさらなる物理力を最小化するサンプル堆積および分配のその他の適切な方法とすることができる。
【0082】
[00119]第2の実施例では、標的細胞の集団の分配は、重力のみの場合以上に細胞捕捉の速度を加速する力の適用を含み得る。一例において、標的細胞の分配は、基板の広範面に平行な軸を中心に生物学的サンプルと基板をサイトスピンしたり、基板の広範面に垂直な軸を中心に生物学的サンプルと基板をサイトスピンしたり、または基板の広範面に対して任意の適切な角度に向けられた軸を中心に、生物学的サンプルと基板をサイトスピンすることによって達成できる。さらに、サイトスピニングを含むブロックS210の応用例において、回転軸は、任意の適切な方法で、基板の任意の適切な基準点からオフセットしてもよい。別の変形例では、ウェルアレイの開放面にわたるサンプルの分配は、基板の中点を通る横軸、または他の適切な回転軸の周りで基板を静かに傾けたり揺動させたりすることによって達成できる。ただし、細胞の捕捉には、細胞の損傷を最小限に抑えながら、ウェルへの細胞の進入の効率と速度を促進するためのサンプル分配に適した他の方法を含めることができる。
【0083】
[00120]ブロックS210は、細胞の最適な分配を確保し、単一細胞形式で捕捉される標的細胞の数を最大化するために、追加の再分配ステップをオプションで含むことができる。好ましい実施形態では、図21に示されるように、再分配は、平坦面118に平行な流体リザーバを通る流体経路に沿って細胞分配流体を流すステップを含み、ここで流体リザーバは、平坦面118でウェルの開放端に沿ってウェルアレイに広がっている。一変形例では、再分配は、細胞分配流体から部分的に保持された細胞のサブセットに(平坦面118を横断する)力を加え、それぞれの細胞飽和ウェルから部分的に保持された細胞を出して、これらの部分的に保持されていた細胞をウェルアレイの下流の、細胞を受け入れることができるウェル(例えば、非占有状態、細胞にアクセス可能な状態)に送ることができる。しかしながら、再分配は、追加的および/または代替的に、ウェルアレイに対する任意の位置で、ウェルアレイ全体に細胞の任意のサブセット(例えば、平坦面118より上であって流体リザーバ内のウェルアレイから遠位の細胞)を、他の占有状態のウェル(例えば、1つ以上の細胞を含むウェル、1つ以上の非細胞粒子を含むウェル)へと送るように機能してもよい。好ましい応用例において、ブロックS210における再分配は、単一細胞捕捉効率を改善することができ、ここでは標的細胞の集団内の細胞の少なくとも50%が単一細胞形式で捕捉される。
【0084】
[00121]細胞の再分布に使用される細胞分布流体は、任意の適切な流体であり得る。一変形例では、細胞分配流体は、ウェルアレイのウェルキャビティ内の溶液よりも低い密度を有し、それにより細胞分配流体がウェルアレイよりも上の流体経路を横切って流れる際に、細胞分配流体がウェルのウェルキャビティ128に進入しづらくなり、したがって、基板の平坦面118に交差して流路内に突出している細胞のみを出すことができる。しかしながら、細胞分布流体は、部分的に保持された細胞または流路の下流の基板の表面境界より上の細胞の受け渡しを支援することができる任意の適切な密度または特性を有することができる。
【0085】
[00122]さらに、細胞分布流体の流量と流れ方向を調整および制御することができる。好ましい実施例では、流量および流れ方向は、細胞分配流体が流れることができる流体リザーバのいずれかの側に正味の正圧または正味の負圧を加えることが可能な流量制御サブシステムを備える流体送達モジュールによって制御することができる。流れの方向は、流路に沿って一方向にすることができるが、追加的および/または代替的に、細胞分配流体内の細胞をアクセス可能なウェルの開放端にさらすことができるように、双方向、多方向、ランダム化、および/または流路に対して任意の角度にすることができる。一例では、再分配は、細胞分配流体の少なくとも1つのフローサイクルを含むことができ、このフロー方向は、第1の順方向と、この順方向と反対の第2の逆方向との間で交互になり、第1の順方向の流体流によってウェルから出された部分的に保持された細胞が、ウェルアレイのうちの細胞アクセス可能なウェルにアクセスするために、第2の逆方向の流体流によってウェルアレイの方へ戻される。再分配フローサイクルの数は、細胞の集団内の標的細胞の少なくとも大部分がウェルアレイ内の基板の平坦面118の下に保持されるように必要な任意の適切なサイクル数であり得る。好ましい応用例において、再分配は、ウェルアレイ内に単一細胞形式で捕捉される標的細胞の集団の標的細胞の最大数をもたらす。ただし、細胞分配流体の流量と流れの方向は、別の方法で構成してもよい。
【0086】
[00123]好ましい応用例では、図21に示されるように、ウェルアレイのウェルは、平坦面118の下のウェルによって最大で単一の細胞が完全に保持されるように構成される。したがって、最初に完全に保持された細胞の上からウェルに入る追加の細胞は、平坦面118より下に降下することはない。代わりに、追加の細胞がウェルの開口端から突出し、ウェルキャビティ128と流体経路の間の平坦面118と交差し、したがって後続の再分配ステップにおいて細胞分配流体がアクセス可能になる。方法200の第1のステップとしてブロックS210が実行され、ウェルアレイの各ウェルが他の細胞や非細胞粒子を含まない非占有状態にある第1の実施例では、ウェルアレイに細胞の集団を受け取るための最初の分配ステップは、本明細書で粒子アクセス可能状態または単一細胞状態として定義される単一の細胞を受容したウェルアレイのウェルの第1のサブセットと、本明細書で細胞飽和状態として定義される2つ以上の標的細胞を受容したウェルの第2のサブセットと、本明細書で非占有状態として定義される標的細胞を受容していないウェルの第3のサブセットとの任意の組み合わせをもたらし得る(図21)。最初の分配ステップの完了時点では、ウェルの第1のサブセットのみが各ウェルに単一の細胞を正常に捕捉し、単一細胞捕捉を伴う好ましい用途の後続の処理ステップに利用可能である。ウェルの第1のサブセットのウェルの数を増やすため(ウェルアレイへの単一細胞の取り込み効率を高めるため)、追加の再分配ステップを用いて、粒子飽和ウェルの第2のサブセットに局在する追加の細胞を、非占有状態の第3のサブセットのウェルに再分配することができる。第2の実施例では、細胞集団を受け取るための最初の分配ステップは、細胞の亜集団が基板の平坦面118上および流体リザーバ内に残る出力条件をもたらし得る。ウェルアレイを埋めてウェルの第1のサブセットのウェルの数を増やすために利用可能な細胞の亜集団を利用するために、追加の再分配手順を用いて、空いているウェルの第3のサブセットのウェルに細胞の亜集団を任意で再分配してもよい。
【0087】
[00124]ブロックS210は、第1章で説明した熱制御モジュールを使用して、低温で実行することができる。好ましい実施例では、ウェルアレイの温度は10℃未満に維持されるが、ブロックS210は、追加的および/または代替的に、ウェルアレイ内の標的細胞の集団の生存率を維持するために他の適切な温度で実行することができる。
【0088】
[00125]単一細胞形式での標的細胞の集団の効率的な捕捉を促進するために、標的細胞とウェルアレイ内のウェルの数の特定の比率を有する生体学的サンプルを使用して、ブロックS210を実行することができる。一変形例では、生物学的サンプル中の標的細胞の数は、ウェルアレイ内のウェルの数の20%未満であることが好ましい。好ましくは、サンプル中の細胞数とアレイ中のウェル数との比は、1:10まで低くすることができるが、その比は他の適切な比でもよい。具体例では、200,000ウェルを含むアレイの場合、生物学的サンプル溶液中の20,000未満の標的細胞(例えば、約2,500細胞、5,000細胞、10,000細胞、15,000細胞など)を使用してブロックS210を実行することができる。ただし、ブロックS210は、200,000ウェルで150,000個の細胞、または200,000ウェルで250,000個の細胞など、ウェルアレイのウェルの数に関連して、サンプルの任意の適切な数の細胞を使用して実行することができる。さらに、細胞の捕捉には、単一細胞の捕捉を促進するために、サンプル中の細胞の他の適切な濃度を含めることができる。
【0089】
[00126]ブロックS210は、ウェルアレイへの生物学的サンプルの分配の前に、標的細胞の集団を含む生物学的サンプルを準備するステップS212をさらに含むことができる。実施例では、ブロックS212は、サンプル内の標的細胞の濃度を増加させることにより、ウェルアレイ内への標的細胞の捕捉効率を高めるように機能し、生物学的サンプルに細胞を加えるステップと、生理的サンプルに固定液を組み合わせるステップと、生物学的サンプルに食塩水を加えるステップと、生物学的サンプルをウェルアレイに送達するステップとの1以上を含み得る。しかしながら、ブロックS212は、追加的または代替的に、任意の他の適切な生物学的サンプル調製ステップを含むことができる。例えば、生物学的サンプルは、関心のある細胞集団を標的細胞集団として含み、したがって、生物学的サンプルに細胞を加える必要性をなくすことができる。生物学的サンプルには、生の生物学的サンプル(血液、尿、組織など)、濃縮された細胞株(血液から分離されたものなど)、または標的細胞の増強(例えば、マーカーで事前にラベリングされた小粒子に結合されたもの)が含まれる。第1の実施例では、生物学的サンプルは血液から分離されたがん幹細胞の濃縮された集団である。第2の実施例では、標的細胞(T細胞、B細胞、癌幹細胞など)を小さな粒子と結合させて、有効な細胞サイズが選択的に大きくなる。第3の実施例では、下流での細胞の同定および/または定量化を支援するために、標的細胞が蛍光標識、金ナノ粒子、または化学リンカーで事前ラベリングされる。しかしながら、生物学的サンプルは、他の適切な成分を含むことができ、適切な方法で前処理することができる。
【0090】
[00127]一例では、上記のシステム100の具体例を使用して、ブロックS212は、関心のある細胞集団(例えば、MCF7乳癌細胞、SKBR3乳癌細胞、LnCAP前立腺癌細胞、PC3前立腺癌細胞、HT29結腸直腸癌細胞)とともに生物学的サンプル(例えば、2mLの全血)を、細胞スパイクありまたはなしで、液体リザーバ160に送達し、流体送達モジュールの円筒形カートリッジを回転させて、適切な生物学的サンプル調製溶液を含むチャンバが、作動システムにより穴を開けられるようにする。次いで、生物学的サンプル調製溶液は、流体リザーバ160に流入し、生物学的サンプルと組み合わされ、その後、流量制御サブシステムのポンプによる圧力発生によってウェルアレイに送達され得る。しかしながら、ブロックS212は、基板のウェルアレイに受容される標的細胞集団を含む生物学的サンプルを調製する任意の他の適切な方法を含むことができる。
【0091】
[00128]ブロックS210はさらに、生物学的サンプルをウェルアレイに分配する前に、ブロックS214で基板をプライミングするステップを含むことができ、これは基板の流体チャネル内に空気および/または細胞凝集体が閉じ込められるのを最小限に抑え、標的細胞集団を含む生物学的サンプルを受け取るシステムを準備するように機能する。基板のプライミングには、プライミング試薬または緩衝液を基板の流体チャネルに流すステップが含まれる。一例では、ウェルアレイに緩衝液を送達するステップは、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)および2mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む緩衝液を送達するステップを含む。ただし、緩衝液を送達するステップは、他の適切な流体をウェルアレイに送達するステップを含み得る。この例では、上述のシステム100の具体例を使用して、ブロックS214の基板のプライミングは、緩衝液を含むチャンバが作動システムによって穿刺されるように、流体送達モジュールの円筒形カートリッジを回転させるステップを含み得る。次いで、緩衝液が流体リザーバ160に流入し、ポンプによる圧力発生によってマニホルドおよびマイクロ流体チップに送達され得る。その後、ポンプで緩衝液を順方向と逆方向に駆動して、ウェルアレイから気泡を適切に除去することができる。しかしながら、ブロックS214は、標的細胞集団を捕捉するように構成されたウェルアレイに緩衝液を送達する他の適切な方法を含むことができる。
【0092】
[00129]別の変形例では、基板のプライミングは、基板を滅菌するように機能し得る。一例では、基板の滅菌は、基板に合計800μlの100%エタノールを添加し、続いて基板を紫外線下で(例えば、第1章で説明したイメージングサブシステム194を介して)約5~20分インキュベートして基質を殺菌する。しかしながら、細胞および/または非細胞粒子を分配する前に、他の適切な方法で基板をプライミングすることができる。
【0093】
[00130]標的細胞の集団を捕捉した後、ブロックS210では、ブロックS216における捕捉細胞の識別、定量化、および位置特定を含む、捕捉細胞からの情報収集を任意で含むことができる。ブロックS216は、好ましくは、第1章で説明したイメージングサブシステム194を使用して達成されるが、システム100の他の方法および/または要素を使用して達成することができる。ブロックS216で得られた情報は、方法200の後続のまたは同時のステップの設定を通知、修正、および/または調整するためにさらに利用することができる。実施例では、捕捉された細胞を(例えば、直接的または間接的にラベリングされた)蛍光抗体で染色することにより、標的細胞の捕捉された集団を表現型で特徴付けおよび/または定量化することができる。例えば、特定の染色を使用して、生存細胞の数、細胞周期における細胞の特定の状態、および/または標的細胞のサブタイプを定量化することができる。さらに、イメージングサブシステム194を介したウェルアレイのイメージングを利用して、捕捉された細胞粒子ペアの正確な数を確認し、下流のライブラリ調製および/または次世代シーケンシングに適したパラメータを決定することができる(例えば、PCR増幅サイクル数および/またはシーケンシング深度を決定するため)。第1の例では、単一細胞形式で正常に捕捉された細胞数に関する情報を使用して、ブロックS220での効率的な分配と単一の細胞粒子の捕獲に必要な粒子の数を決定および選択(例えば、溶液中の粒子の濃度を増減)することができる。第2の例では、サンプル内の細胞の大部分がすでに単一細胞形式で正常に捕捉されていることを示す情報を用いて、さらなる再分配ステップおよび/または処理ステップをスキップおよび/または調整するようシステムに指示することができる。これにより、処理時間が短縮され、パフォーマンスが向上する。あるいは、細胞凝集または不十分な細胞捕捉(例えば、流体リザーバに非捕捉細胞が大部分残っている)を示す情報により、追加の再分配ステップおよび/または処理ステップを含めるようにシステムに指示することができる。第2の実施例では、捕捉された細胞の個々の位置とウェルアレイ内の相対的な分布に関する情報を使用して、第1章で説明した流体送達モジュールの要素に指示して、より効率的な捕捉の設定へと調整することができる。一例では、捕捉された細胞の大部分が基板の第2面と比較して基板の第1面に位置することを示す情報を流体制御サブシステムに伝えて、特定の流量および流れ方向を選択させて、再分配ステップ中に非捕捉および/または部分的に保持された細胞を基板の第2面の方へ流すことができる。別の例では、流量制御サブシステムが単一細胞を含有するウェル(例えば、粒子がアクセス可能なウェル)の位置情報を使用して、ブロックS220で粒子がアクセス可能なウェルが粒子を受け取るように粒子の集団を分配する特定のプロトコルを選択し、理想的な状態を実現することができる。ただし、捕捉細胞に関する情報は、ウェルアレイ内の定量化および位置に限定されず、方法200のステップのいずれかを指示および修正するために使用することができる。さらに、ブロックS216は、方法200全体で任意の回数繰り返すことができるとともに、ブロックS210の細胞分配、ブロックS220の粒子分布、およびブロックS230の粒子再分布の個々のステップのパフォーマンスを評価および指示することを含む、方法200の任意のステップの前、後、および/または間に実行することができる。
【0094】
[00131]ブロックS210は、所望の標的細胞のサイズおよび数、ブロックS220で使用される粒子の寸法と数、捕捉の評価または実行されるプロトコル、および方法200の少なくとも一部の完了時のウェル状態についての望ましい出力条件(各ウェルに捕捉されるべき細胞および/または粒子の数を含む)のうちの1以上に従って、ブロックS218における基板内の特定の寸法、幾何学的形状、密度、および/または空間的配置を有するウェルを含むウェルアレイを選択するステップを任意で含むことができる。ウェルアレイのウェルは、ブロックS210および/またはブロックS220の完了時におけるウェルの出力状態に影響を与え得る様々な寸法範囲を呈することができ、これには、水平断面、垂直断面、各ウェルの開放端の幅、ウェルキャビティ128の高さ、およびウェルキャビティ128の総容積が含まれる。ウェルの理想的な状態が正確に1つの細胞と1つの粒子を同じウェルに入れることが望ましい実施例では、ウェルの寸法は、細胞と粒子の両方を平坦面118(例:ウェルの開放端)より下に保持するのに十分であるが、ブロックS210で最初の細胞が受け取られた(細胞飽和状態となる)後に2番目の細胞を保持したり、あるいはブロックS210で最初の細胞を受けた後に2以上の粒子を保持したり(粒子飽和状態になる)するのに十分ではない。具体例では、10~15マイクロメートルの特性直径を有する標的細胞と、18~22マイクロメートルの特性直径を有する粒子集団とを含む標的細胞集団の場合、ウェルキャビティ128の高さは20~50マイクロメートルの範囲であり、各ウェルの幅(例えば、水平断面)は20~30マイクロメートルの範囲であり得る。別の例では、ウェルの理想的な状態が正確に1つの細胞(例えば10~15マイクロメートル)または1つの粒子(例えば18~22マイクロメートル)のいずれかを含む(ただし、細胞と粒子の両方ではない)場合、各ウェルキャビティ128の高さは10~30マイクロメートルの範囲であり、各ウェルの幅(例えば、水平断面)は20~30マイクロメートルの範囲であり得る。ただし、ウェルの寸法は、他の適切な基準に基づいて選択することができ、細胞集団の寸法および/または方法200の任意のステップで使用される粒子の集団の寸法と一致および相関させることができる。
【0095】
2.2 方法-粒子の集団を分配する
[00132]ブロックS220は、粒子集団をウェルアレイに分配することを記載する。ブロックS220は、好ましくは、粒子集団のうちの単一の粒子を、ブロックS210の実施例で説明した粒子アクセス可能ウェル(例えば、ウェルの第1のサブセット)内に前に保持されている単一の標的細胞と共局在させ、それにより個々のウェル内に単一の細胞粒子ペアを捕捉するように機能する。ただし、ブロックS220は方法200の任意の他のステップの前または後に実行できるとともに、前に任意数の細胞および/または非細胞粒子を含有するウェル、および/または前に占有されていないウェルを含むウェルアレイの個々のウェルに、任意の数の粒子を分配するのに利用することができる。好ましい応用例では、ブロックS210およびブロックS220の連続ステップの結果として、ブロックS230での粒子の再分配中に、細胞粒子ペアを含む粒子がウェルキャビティ128から出て行かないように、標的細胞および粒子はウェルのウェルキャビティ128によって完全に保持される(例えば、細胞粒子ペアは平坦面118の下に保持される)。ただし、ブロックS220は、ウェルアレイ全体に粒子の集団を分配し、ウェルアレイの個々のウェルに受け入れられて保持される粒子の数を制御するために、方法200で他の適切な方法で実装できる。
【0096】
[00133]好ましくは、ブロックS220は、ブロックS210に記載されるようにウェルアレイに標的細胞の集団を受けた後に実行され、標的細胞によって現在占有されているウェルに追加された粒子が標的細胞の上であって開口部の近位に定着するようにする。しかしながら、ブロックS220は、追加的および/または代替的に、ウェルアレイで標的細胞を捕捉する前に、および方法200の他の適切なステップと時間的に関連して実行することができる。粒子の集団がウェルアレイに均一に分配され、ウェルごとの標的細胞と粒子の1:1の比率を促進するために、ブロックS220の後にブロックS230が続き、そこで粒子がウェルアレイ全体に再分配され、これはブロックS210で説明した細胞の再分配と類似である。しかしながら、ブロックS220は、他の適切なステップを含むことができる。
【0097】
[00134]ブロックS220では、ウェルアレイに受容される粒子の集団(例えば、ミクロスフェア、ビーズなど)は、物理的特性(例えば、非膨張挙動、溶解性)、磁気特性、光学特性、化学特性(生体適合性、結合親和性)、および熱特性を含む、粒子の所望の特性をもたらす任意の適切な材料であり得る。粒子は、ポリスチレン、シリカ、非多孔質ガラス、多孔質ガラス、被覆ガラス、および/または1以上の適切な材料の組み合わせで作ることができる。粒子の密度は、好ましくは、含有溶液の緩衝液よりも大きい(例えば、少なくとも1.1g/cc)が、代わりに他の適切な密度であってもよい。
【0098】
[00135]好ましくは、粒子は、個々のウェル内に単一の細胞粒子ペアを共局在化するために、現在平坦面118より下で単一の標的細胞によって占有されているウェルに単一の粒子のみが入ることができるように構成される特性寸法を有する。好ましい実施例では、粒子集団内の各粒子は、直径が10~30マイクロメートルの外殻を含む球状粒子である。容易な分配とウェルアレイへの定着を実現するために、粒子の集団は実質的に単分散の形状で生成することができる。実施例では、粒子の集団は、20ミクロン、15ミクロン、30ミクロン、35ミクロン、および/または40ミクロンのいずれかの直径を含む特性寸法をもたらすことができ、標準偏差は20%未満または15%未満であり、これによって単一の細胞粒子ペアの捕捉効率が50%以上に向上する。さらに、粒子の集団の均一性により、単一細胞シーケンシング調製生化学プロセス(ブロックS250)の様々なステップの完了時に、粒子回収率を高めることができる。沈降を最小限に抑え、分布を改善するために、粒子集団を含む溶液には、任意で約10%のグリセロールを含めることができる。
【0099】
[00136]このバリエーションの具体例では、粒子は、直径が約20マイクロメートル(例えば、15~25マイクロメートル)のポリスチレンコーティングを有するガラスビーズであるが、代替的および/または追加的に任意の他の適切な直径であってもよい。さらに、粒子は、任意の他の適切な3次元(例えば、長方形、三角形、長円形、棒状または他の多角形)または2次元の形状(例えば、シート状)とすることができる。ウェルの高さが約40マイクロメートルであり、標的細胞が15~25マイクロメートルの範囲の特性寸法を有する具体例では、18~22ミクロンの直径を有する粒子を用いてステップS220で平坦面118の下に単一の捕獲細胞と単一の粒子とを共局在させることができる。ただし、システム100による方法200の実装例は、他の適切な方法で構成することができる。
【0100】
[00137]ブロックS220の変形例では、粒子集団の外殻は、捕捉された標的細胞、捕捉された標的細胞の生体分子、ウェルキャビティ128の内面130、ウェル内の溶液、および/または本出願に記載のシステムおよび/または方法の他の適切な要素と相互作用するように機能する、様々な表面特性および/または表面特徴を含むことができる。
【0101】
[00138]図20に示すように、第1の実施例では、粒子の外殻は、ブロックS240の実施例に記載されているように、細胞から放出され、下流プロセス(例、逆転写酵素、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)など)を促進するために、細胞から放出される細胞内核酸物質(例:mRNA、DNA、タンパク質など)に好ましく結合する機能を果たすプローブおよび/またはプローブ36のセット(例えば、オリゴヌクレオチド、化学リンカーなど)に結合できる。ただし、プローブ36のセットは、標的細胞の分析を実行するために、他の任意の方法で実装することができる。プローブがヌクレオチド配列を含む生体分子相互作用領域を含む実施例では、個々のプローブの生体分子相互作用領域は、追加的または代替的に、プライマー配列(例えば、PCRハンドル)、核酸物質が由来する細胞を同定するのに用いられる細胞バーコード(例えば、ユニット識別子)、同じ細胞の異なる分子(例えば、遺伝物質)を標識するための一意の分子識別子(UMI、1のバーコードは複数のUMIを有し得る)、ポリアデニル化mRNA種の捕捉を可能にするポリDT配列、およびオリゴ合成のサポートとして機能するポリエチレングリコール(PEG)誘導体と反応する表面ヒドロキシルの少なくとも1つの任意の組み合わせを含むことができる。生体分子相互作用領域に加えて、各プローブは、プローブを粒子に結合する粒子リンカーを含む粒子結合領域と、追加的または代替的に、(例えば、タンパク質、抗体親和性、化学的相互作用を介して)細胞の一部またはウェルの表面の一部に結合する機能的リンカーを含む基板結合領域を含むことができる(図20図7)。具体例において、粒子の外殻上の単一セットのプローブ36に結合された単一粒子が、ブロックS220にて個々のウェルのウェルキャビティ128に受け入れられる。プローブ36のセットは、紫外線(UV)波長を用いて活性化できる光開裂性結合を含む粒子リンカーによって粒子の外殻に結合される。UV照射下で、プローブ36のセットをウェル内の粒子から制御可能に分離することができ、粒子を任意でウェルキャビティ128から取り出すことができ、それによって粒子の物理的制約なしにプローブ36のセットがウェルキャビティ128内の環境と相互作用できるようになる。しかしながら、プローブ36のセットの生体分子相互作用領域、粒子結合領域、および基板結合領域は、他の方法で構成することができる。
【0102】
[00139]別の実施例では、各粒子の外殻を変更して、バーコード化されたオリゴヌクレオチドのリンカー密度を特定の数に合わせて調整し、単一細胞溶解物から捕捉される生体分子の数を最大化しつつ、cDNA逆転写、および/またはPCR増幅といった、プローブと形成された遺伝子複合体(例えば、ブロックS240中)の下流での処理における立体障害の影響を最小限に抑えることができる。単一細胞RNA配列の場合、粒子は0.1~5マイクロモル/グラムのリンカー密度になるように調整することができる。例えば、粒子上のリンカー密度は、単一細胞溶解物からの生体分子の最大数が約100,000分子、500,000分子、750,000分子、1,000,000分子、2,000,000分子、3,000,000分子、4,000,000分子、および/または5,000,000分子のいずれかになるように調整することができる。オリゴヌクレオチド結合の前に、化学エッチング、機能化された表面の薄い層(ほんの僅か、0.1、1、2、および/または3ミクロンまでの厚さ)の化学成長といった様々なプロセスによって、粒子の外表面積および/または多孔性を調整することができる。別の実施例では、粒子の外殻は、DNA、mRNA、タンパク質、代謝産物、グリカン、細胞酵素などの単一細胞または単一細胞溶解物からの異なるタイプの生体分子を結合できるように、所定の密度の複数の異なる官能基を含むことができる。ただし、粒子の集団の外殻の特徴と特性は、他の適切な方法で構成してもよい。
【0103】
[00140]さらに、それ以外にも、粒子の集団の表面構造は、ウェルアレイ内で他の適切な機能または相互作用を実現するように構成することができる。第2の実施例では、粒子の外殻は、細胞またはウェルの壁のいずれかで抗体または他の適切なタンパク質に結合できる表面結合部分を含むことができる。第3の実施例では、粒子の外殻は、粒子の生体適合性を改善する合成または有機材料(例えば、PEG、コラーゲンなど)を含むことができる。第4の実施例では、粒子の外殻は、フック、粘着剤、または拡張可能容積など、粒子がウェルに入り、ウェル内に保持されることを可能にする物理的特徴を含むことができる。ただし、粒子の外殻は別の方法で構成してもよい。
【0104】
[00141]さらに、粒子の集団の各粒子は、粒子内に、合成試薬、生化学剤、および/または捕捉された細胞の生化学的アッセイを実施するために使用できる有機材料を任意に含むことができる。実施例では、粒子は、当該粒子から放出される薬物を含むように製造することができ(例えば、時間、温度、pHなどによってトリガされる)、ウェルアレイ内の単一細胞での高スループット薬物試験に適用することができる。例えば、粒子の外殻は、特定の温度で経時的に溶解する生分解性材料で構成することができ、それによってウェル内の標的細胞の存在下で薬物が放出される。ただし、粒子の集団は、他の適切な方法で構成してもよい。
【0105】
[00142]ブロックS220を実行するために、粒子の数とウェルの数の比は少なくとも1:1であり、好ましくは少なくとも1.5:1であるが、粒子は他の任意の適切な数であってもよい。単一の細胞粒子ペアの捕捉が望ましい実施例では、粒子溶液内の粒子の数は、単一細胞を含有するすべてのウェルが少なくとも1つの粒子を受け取るように選択される。アレイ内のウェルの数が200,000である具体例では、アレイに添加される粒子数は、300,000~400,000粒子の範囲であることが好ましい。さらに、前述のように、ブロックS210の完了時に単一細胞形式で捕捉された細胞数に関する情報を取得することで、粒子溶液内の粒子数の選択を支援し、望ましい捕捉効率を高めることができ、ウェルアレイについて粒子の不飽和または過飽和を最小限にすることができる。一例では、200,000ウェルのアレイのうち5000~6000ウェルの範囲が粒子アクセス可能な状態にあると判断すると、粒子溶液中の粒子の数を10,000から50,000粒子の範囲内で選択して粒子飽和状態の発生を最小限に抑え、これによって単一細胞への単一粒子の共局在化の効率および/または速度を改善することができる。ただし、ブロックS220でウェルアレイに添加される粒子数の選択は、他の適切な様式で行うことができる。
【0106】
[00143]粒子の集団をウェルアレイに分配するステップは、ブロックS210で説明されるように、細胞の最初の分配と同様に、ウェルアレイに粒子をロードするように機能する最初の分配ステップを含む。実施例では、粒子の集団は、重力誘導エントリ(例えば、複数のアリコートでアレイにピペットで入れられる)、力を加えて(例えば、粒子の集団を含む溶液で基質をサイトスピニングする)、および/または第1章で説明した試薬送達モジュールによって流体リザーバ160に流入させることにより、ウェルアレイに入ることができる。具体例では、200,000~600,000の範囲の粒子を含む粒子溶液を、ウェルアレイの様々な領域で溶液の少量アリコートをピペッティングして、ウェルの開放端より上の流体リザーバ内に均一な流体層を形成し、その後ウェルアレイを330rpmで4分間遠心分離することにより、ウェルアレイに分配することができる。しかしながら、粒子の最初の分配は、システム100の任意の適切な要素を用いた他の適切な方法によって実行してもよい。
【0107】
[00144]ブロックS210の後にブロックS220が実行される好ましい応用例では、ウェルアレイに粒子の集団を受け取るための最初の分配ステップは、図22に示されるような、単一の細胞粒子ペアを含有する理想状態として定義される、単一粒子を受け入れる単一細胞を保持するウェルアレイの第1のウェルのサブセット;本明細書で粒子飽和状態として定義される、複数の粒子を受け入れる単一細胞を保持するウェルアレイの第2のサブセット;本明細書で細胞アクセス可能状態と定義される、単一粒子のみを受け入れる非占有ウェルの第3のサブセット、および複数の粒子を受け入れる非占有ウェルの第4のサブセット(図22);を含む結果の組み合わせをもたらし得る。最初の分布ステップが完了すると、理想状態のウェルの第1のサブセットのみが各ウェルに単一の細胞粒子ペアを正常に捕捉しており、単一細胞および/または単一の細胞粒子ペアの捕捉を伴う好ましい用途における後続処理ステップに利用することができる。理想状態のウェルの第1のサブセットのウェルの数を増やすため(ウェルアレイへの単一細胞粒子ペアの捕捉効率を高めるため)、粒子飽和ウェルの第2のサブセットに局在する追加の粒子が、ブロックS230に記載されているように、任意で、最初の分配ステップ後に占有されていないウェルおよび/または最初の分配ステップ後に粒子アクセス可能状態(例えば、単一の細胞のみを含む)のままであるウェルに再分配される。追加的および/または代替的に、流体リザーバに残っている部分的に保持された粒子および/または過剰な粒子は、廃棄物チャンバに連結された出口を通って流体リザーバから出ることができる。しかしながら、ブロックS220は、他の適切な方法で実行することができる。
【0108】
2.3 方法-粒子の集団を再分配する
[00145]ブロックS230では、粒子の集団を再分配するステップで、ウェルアレイ全体で粒子の最適な分配を確保するとともに、ウェルアレイにアクセスできる粒子の数を最大化して、好ましくは個々のウェル内で単一細胞の捕捉および/または単一の細胞粒子ペアリングを実現する。ブロックS230は、ウェルアレイに追加されたが個々のウェル(例えば、平坦面118の下のウェルキャビティ128に)内に完全に保持されていない粒子を再分配できる。これには平坦面118の上の流体リザーバに残った粒子(例えば、過剰な粒子)や、個々のウェルに入ったが、ウェルの容積容量を超え、平坦面118を横切って流体経路に入る粒子が含まれる。好ましい実施形態では、ブロックS110の細胞再分配ステップと同様に、粒子の再分配は、平坦面118に平行な流体リザーバを通る流体経路に沿って粒子分配流体を流すステップを含み、ここで流体リザーバは、平坦面118のウェルの開放端に沿ってウェルアレイにわたって広がる。1の実施例において、図22に示すように、再分配ステップは、粒子分配流体によって部分的に保持された粒子のサブセットに(平坦面118を横断する)力をかけ、部分的に保持された粒子をそれぞれの粒子飽和ウェルから排出し、これらの部分的に保持された粒子をウェルアレイの下流の、粒子を受け取ることができる(例えば、非占有状態、粒子アクセス可能状態の)ウェルへと移す。しかしながら、再分配は、追加的および/または代替的に、ウェルアレイに対する任意の位置で(例えば、平坦面118より上にある粒子、流体リザーバ内のウェルアレイから遠位の粒子)、ウェルアレイにわたって粒子の任意のサブセットを、他の占有状態のウェル(例えば、1以上の細胞を含むウェル、1以上の非細胞粒子を含むウェル)へ移すように機能してもよい。
【0109】
[00146]粒子および/または細胞の再分配に使用される粒子分配流体は、任意の適切な流体、またはウェルアレイの上面全体を流れる任意の適切な成分を含む流体であり得る。実施例では、粒子分配流体は、ウェルアレイのウェルキャビティ内の溶液よりも密度が低く、そのため、粒子分配流体がウェルアレイよりも上の流体経路を横切って流れるときに、粒子分配流体はウェルのウェルキャビティ128に簡単に進入せず、したがって、基板の平坦面118を交差して流路内に突出する粒子のみを排出することができる。ただし、分配流体は、他の適切な特性を有してもよい。流体リザーバが(例えば、流体経路に沿って)磁気要素のセットを含む別の変形例では、粒子分配流体は、ウェルアレイに対して特定の空間領域に渡って)分配流体の流れを制御および/または集中させる(例えば、流体リザーバ内の磁気要素に近い流体経路のみを通すのに利用できる磁気粒子のセットを含むことができる。しかしながら、分配流体は、分配流体の流量および/または流れ方向を変更できる他の機能的要素(例えば、静電特性、物理特性、化学特性、熱特性)をもたらしてもよい。さらに、粒子分配流体は、任意の適切な密度、特性を有し、および/または流路の下流で基板の平坦面118上に部分的に保持された粒子または過剰粒子を透過するのを助ける成分を含むことができる。
【0110】
[00147]粒子分配流体の流量および流れ方向は調整および制御可能であることが望ましい。ブロックS110の好ましい実施例と同様に、流量と流れ方向は、粒子分配液が通過できる流体リザーバのいずれかの側に正味の正圧または正味の負圧を印加可能な流量制御サブシステムを含む流体供給モジュールによって制御することができる。流れの方向は、流体経路に沿って一方向であってもよいが、追加的および/または代替的に、双方向、多方向、ランダム化、および/または流体経路に対して任意の角度として、粒子分配流体内の粒子が粒子アクセス可能ウェルの開放端にさらされるようにしてもよい。一実施例では、再分配は、粒子分配流体の少なくとも1つのフローサイクルを含むことができ、ここで流れ方向は、第1の順方向と順方向と、順方向とは反対の第2の逆方向の間で交互になり、第1の順方向の流体流によって粒子飽和ウェルから排出された部分的に保持された粒子は、第2の逆方向の流体流れによってウェルアレイの方へ流し戻され、ウェルアレイの粒子アクセス可能なウェルおよび/または非占有ウェルにアクセスすることができる。再分配フローサイクル数は、粒子の集団内の粒子の少なくとも大部分がウェルアレイ内の基板の平坦面118より下に保持されるのに必要な任意の適切なサイクル数であり得る。好ましい応用例では、再分配により、粒子アクセス可能なウェルの少なくとも80%が単一の粒子で満たされて、ウェルの理想状態が達成される。ただし、細胞分配流体の流量と流れ方向は、別の方法で構成してもよい。
【0111】
[00148]ブロックS216で説明したように、ブロックS210、ブロックS220、およびブロックS230の細胞および/または粒子分配流体の流体流量および流れ方向は、ウェルアレイ内の捕捉された細胞の量および位置に応じて、方法200の同期または非同期のステップ間に、それに応じて、および/またはリアルタイムで、変調および/または調整可能である。好ましい実施例では、光学サブシステムは一連の画像を記録して、粒子がアクセス可能なウェルの量と分布に関する情報を取得し、流体送達モジュールおよび/または流量制御サブシステムに指示を伝達して、捕捉効率を向上させるためn、粒子溶液中の粒子濃度、粒子分配流体の流量、粒子分配流体の方向、粒子分配流体の温度、および/または再分配の繰り返しサイクル数のうちの1以上の選択を補助する。ただし、ブロックS230の再分配のパラメータは、ユーザ入力(ブロックS210、ブロックS220、ブロックS230のいずれかの前、最中、および/または後)によって手動で決定したり、固定に設定したり(事前に決定、保存された設定に従って)、および/または他の方法で決定することができる。別の好ましい実施形態において、抽出モジュールは、イメージングサブシステムと協働するように使用され、イメージングのフィードバックに基づいて、複数の粒子を含むウェルから1つ以上の粒子を取り出し、粒子を含まない別のウェルに分配することができる。
【0112】
2.4 方法-ウェルアレイの処理
[00149]ブロックS240は、ウェルアレイの処理を規定するものであり、少なくとも1つのプロセス試薬をアレイで受け取ることにより、単一細胞形式および単一クラスタ形式のいずれかで1以上のプロセス試薬の細胞集団への拡散送達を促進すること、ウェルアレイで生化学プロセスを実行すること、ウェルアレイの内容を分析すること、追加的および/または代替的にウェルアレイで他の適切なプロセスのうちの以上を含むことができる。ブロックS240は、ウェルアレイから捕捉された成分(例えば、細胞および/または非細胞粒子)を取り出す必要がなく、ウェルアレイ内に捕捉された成分のシームレスで迅速な処理および分析を実現し、さらに複数のウェルアレイ(例えば、一度に2、4、6、10アレイ)を同時に処理するのに利用することができる。好ましい実施形態では、ブロックS240の複数部分を、システム100の構成要素と協調して自動的に実行することができ、ここで複数の試薬のシーケンス、タイミング(例えば、分配時間、流動期間)、速度、方向、および/またはプロセス試薬の量を含むプロセス試薬送達パラメータ(例えば、流体供給モジュールを使用)、ウェルアレイおよび/またはプロセス試薬の配列の温度変調のパラメータ(例えば、熱制御モジュールを使用)、および/または光学分析のパラメータ(例えば、光学サブシステムを利用)は、格納された設定、ユーザ入力、および/または適応入力、およびシステム100の1以上のプロセッサを使用して、決定、選択、および/または調整することができる。ただし、ウェルアレイの処理は、他の適切なステップおよび/またはパラメータを含むことができ、他の適切な方法で実行することができる。
【0113】
[00150]実施例では、1以上のプロセス試薬をウェルアレイに送達することで、標的細胞集団の捕捉細胞の透過処理、標的細胞集団の捕捉細胞の後固定、標的細胞集団の捕捉細胞のブロック、標的細胞集団の捕捉細胞の洗浄、標的細胞集団の捕捉細胞の抗体カクテルでの処理、標的細胞集団の捕捉細胞のインキュベーション、標的細胞集団の捕捉細胞の染色、標的細胞集団の捕捉細胞の溶解、標的細胞集団の捕捉細胞内の成分の単利、ウェルアレイの加熱、の1以上を実行するように機能し得る。ステップS240は、追加的または代替的に、分析のためにウェルアレイに捕捉された対象細胞を調製する任意の適切なステップを含むことができ、例えば、対象細胞へのハイブリダイゼーション緩衝液の送達、対象細胞への粒子および/または制御プローブの送達、対象細胞の脱水、および/または対象細胞の変性などである。一実施例では、ステップS240は、染色(例えば、蛍光染色または組織学的染色)を必要とする分析のために標的細胞集団の細胞を調製することができる。別の変形例では、ステップS240は、電気泳動を伴う分析のために標的細胞集団の細胞を準備することができる。さらに別の変形例では、ステップS240は、PCRなどの分子診断アッセイのために標的細胞集団の細胞を調製することができる。
【0114】
[00151]変形例では、プロセス試薬は、ブロックS210、ブロックS220および/またはブロックS230について説明された実施例で生物学的サンプルまたは分配流体をアレイに分配するのと同様の方法で、ウェルアレイに送達され分配することができる。一例では、第1章で説明したように、流体送達モジュールのカートリッジに保存されたプロセス試薬は、カートリッジから分配され、ウェルアレイに直接かつ流体的に結合された流体リザーバ160を通してウェルアレイに分配され得る。ウェルアレイで様々なアッセイおよびプロセスを実行する速度を向上させるために、必要になるまで、流体送達モジュールの試薬カートリッジに複数のプロセス試薬を保存(例えば、プリロード)することができる。流体送達モジュールは、適切な量の所望の試薬を、流体入口を介してウェルアレイおよび流体リザーバ160に送達するように機能し、そこでは細胞への損傷を防ぎアッセイの効率(例えば、ウェル内の試薬の分布、ウェル全体の粒子の分布など)の改善のために、流体の流速がポンプシステムによって制御される。さらに、システムの上部蓋を使用して、流体リザーバ160全体の流体の流れをさらに制御して、流体リザーバ160に流体層を形成し、流体リザーバ160を横切ってウェルへの流体の移動を促進することができる。所望の試薬を流体リザーバに分配するために、ステップS240は、所望の試薬を含むチャンバが作動システムによって穿刺され得るように、流体送達モジュールの円筒形カートリッジを回転させることを含むことができる。次いで、プロセス試薬は、流体リザーバ160に流れ込み、流体制御モジュールのポンプによる圧力発生時にウェルアレイにわたって送達される。ただし、プロセス試薬をウェルアレイに分配するステップは、システム100の他のサブコンポーネントによって、ユーザが手動で、または別の方法で実行することができる。
【0115】
[00152]さらに、ブロックS240を熱制御モジュールと組み合わせて実行し、流体リザーバ160を横切る試薬の対流を制御し、ウェルアレイの温度を維持することができる(例えば、細胞の生存率を維持し、細胞内の遺伝物質物(例えば、mRNA、cDNA)の生存率を維持し、ウェルへの試薬の拡散を助け、流体リザーバ160にわたる試薬の流れの速度を高めるなど)。実施例では、ブロックS240は、基板を介して、アレイで捕捉された細胞集団に熱を伝達または除去するステップを含むことができ、これは、ブロックS240で受け取ったプロセス試薬で細胞集団の制御されたインキュベーションおよび/またはサーモサイクリングを提供する。加熱は、好ましくは、ウェルアレイのセットの各ウェルで均一な加熱および/または冷却を提供するステップを含む。ただし、代替的に、加熱は、アレイ全体にわたって不均一に加熱および/または冷却を提供するステップを含むことができる(例えば、細胞集団に対する異なる加熱パラメータの影響を調べるために熱勾配を提供する)。実施例では、加熱は、基板を少なくとも1つの加熱素子と接触させるステップ、基板の環境温度を調整するステップ、および/または基板に結合または埋め込まれた加熱素子によって基板全体に熱を伝達するステップを含み得る。一例では、1以上の加熱素子をウェルアレイの下の基板の基部に結合することができ(図31A~31C)、これはウェルアレイを急速に加熱および/または冷却する機能を果たす。システムは、追加的および/または代替的に、基板の上蓋内に埋め込まれた1つまたは複数の加熱素子を含むことができ、これは、流体リザーバの流路を流れるプロセス試薬の温度を調整して、ウェル内部へのアクセスを向上させるように機能する(図15A、15B、および図16)。ただし、ウェルアレイへの熱の伝達および/または除去は、追加的または代替的に、任意の他の適切な方法で実行することができる。熱を伝達するステップに、細胞集団およびプロセス試薬とともに基板を所望温度で所望時間インキュベートするステップが含まれる変形例では、熱の伝達は、細胞集団の溶解、細胞集団の固定、細胞集団の透過化、細胞集団の染色、細胞集団の免疫化学の実行、細胞集団の細胞内核酸物質へのプローブ結合、in-situハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、蛍光in-situハイブリダイゼーションアッセイ、FISH)の実行、細胞集団の核酸物質に対するポリメラーゼ連鎖反応の実行、細胞集団の培養、および他の適切な用途のうちの1以上を促進することができる。ただし、プロセス試薬を受け取り、および/またはプロセス試薬の流れ(体積、速度、温度など)を調整するステップは、追加的または代替的に、他の適切な用途に適した他の方法で実行することができる。
【0116】
[00153]ブロックS240の一実施例では、プロセス試薬は、標的細胞の集団から少なくとも1つの生体分子、例えば核酸物質(例えば、mRNA)および/またはタンパク質を放出する溶解試薬であり得る。捕捉された細胞の溶解は、溶解試薬を15℃未満の温度でウェルアレイに添加し、続いてウェルアレイを約25℃で、および/または50℃などの少し高い温度でインキュベートして反応を完了させることにより達成される。いくつかの変形例では、細胞を溶解させるステップは、溶解反応を行う前に油の層(またはウェルキャビティに含有された溶液と混ざらない他の溶液)をウェルの頂部に分配して、放出された成分がウェルアレイ内の隣接するウェルに移動するのを防ぐことが含まれる。別の変形例では、細胞の溶解は、溶解反応を行う前にウェルの上部に空気層を分配して、放出された成分がウェルアレイ内の隣接するウェルに移動するのを防ぐことを含み得る。
【0117】
[00154]理想的な状態でウェルアレイ内に捕捉された細胞粒子ペアを利用する好ましい応用例では、溶解反応後、ウェルアレイの温度を再び15℃未満(mRNAを保存するためには約5℃)に下げることができ、溶解した標的細胞のそれぞれから放出された生体分子は、対応する粒子(例えば、細胞粒子ペアに関して、標的細胞と同じウェル内に共局在化する粒子)のプローブにハイブリダイズし、捕捉された各細胞に関する遺伝子複合体70(プローブのセットのヌクレオチド配列とハイブリダイズした細胞からのmRNA)のセットを形成する。好ましくは、図23に示すように、遺伝子複合体70のセットの各遺伝子複合体は、少なくとも1のプローブと、標的細胞に由来する生体分子(例えば、mRNA)を含むことができ、ここで遺伝子複合体70の単一のセット(例えば、すべて同じ細胞に由来する生体分子に関連付けられている)は、ウェルアレイのそれぞれの個々のウェル内に含まれる。遺伝子複合体70のセットの生成は、ブロックS220でさらに説明されているように、粒子の集団の各粒子がプローブ36のセットを含み、各プローブがユニット識別子(例えば各粒子の一意のヌクレオチド配列)および生体分子識別子(例えば、各プローブの一意のヌクレオチド配列、UMI)を含む場合に達成される。細胞溶解時に、単一の標的細胞から放出された複数の分子は、個々の生体分子を粒子のプローブ36のセットのそれぞれのプローブに結合および/またはハイブリダイズし、それによって下流の処理中に簡単に識別できるユニット識別子と生体分子識別子(RNA、DNAシーケンスなど)を含む一意のヌクレオチド配列で各生体分子をラベリングすることにより、細胞-粒子ペアの細胞に由来するものとして識別することができる(例えば、相補的ヌクレオチドペアリング)。したがって、ヌクレオチド配列に同じユニット識別子を持つ遺伝子複合体は、細胞-粒子ペアの同じ標的細胞に由来すると考えられ、同じ細胞からの複数の分子の個々の分析を並行して行うことができる。個々のプローブへのmRNAの非特異的ラベリングを減らすために、緩衝液洗浄速度の最適化、個々のウェル内のすべてのmRNA転写物を捕捉するための最適な結合時間の設定、溶解およびハイブリダイズステップ中のオンチップ冷却、およびプローブ密度の増加などの様々なステップを用いることができる。追加的および/または代替的に、特定の分子および/または粒子を溶解後洗浄溶液に加えて、細胞から出た未結合の細胞物質を捕捉し、それにより未結合の細胞物質が隣接ウェルに拡散するのを防ぐことができる。しかしながら、遺伝子複合体70のセットは、別の方法で構成することができ、任意の生体分子、細胞、粒子、および/またはウェルアレイのウェルに関連する任意の適切なサブコンポーネントを含むことができる。
【0118】
[00155]方法200の代替実施形態では、図24図25、および図26に示されるように、プローブ36のセットは、追加的および/または代替的に、個々のウェルキャビティの内面130に固定されてもよく、個々のウェル内溶液中に浮遊してもよく、および/または任意の適切な方法で構成することができる。一実施例では、標的細胞から放出された生体分子は、単一粒子とウェル内の単一細胞の共局在化なしに、プローブ36のセットに結合してもよい。具体的には、ブロックS210で説明したように細胞を捕捉する前に、ブロックS220およびブロックS230で説明したのと同様の方法で、粒子を単一粒子形式でウェルに分配することができ、ここで各個別の粒子は、共通のユニット識別子を含むプローブ36のセットが含まれる。粒子の集団を受け取って各ウェルに細胞粒子ペアを生成するのではなく、粒子の集団を受け取ると、各ウェル内に単一の粒子が捕捉される出力条件が得られる。方法200’のこの実施形態の好ましい応用例において、単一細胞捕捉の前に各ウェル内に単一粒子を捕捉すると、各個々のウェルにプローブのセットの送達が可能となる(図26)。単一粒子の捕捉時に、プローブ36のセットを関連する粒子から分離し、個々のウェルキャビティ内に放出することができ、それにより各ウェルの内容物がその中の粒子のセットのユニット識別子によって識別可能になる。放出されたプローブ36の各セットは、好ましくは、ウェルキャビティ128の内面130に固定され(例えば、生化学結合、抗体抗原反応を介して)、各ウェルをユニット識別子で効果的にラベリングし、ウェルから粒子を取り除けるようにして、標的細胞の集団がウェルアレイにアクセスできるようにする。プローブのセットを個々のウェルキャビティに加えた後、ブロックS210で説明したように、標的細胞の集団をウェルに分配することができ、これにより、標的細胞を単一細胞形式で捕捉することができる(例えば、各ウェルに1つの細胞)(図25)。単一細胞の捕捉時に、上記のように細胞溶解を実施することができ、ここで放出された生体分子を含む遺伝子複合体70のセットおよびプローブ36のセットが各ウェル内に含まれ、粒子ではなくむしろウェルキャビティ128の内面130に結合される。このように、ユニット識別子で各ウェルに直接ラベリングすると、標的細胞の集団から遺伝子複合体のセットを生成する速度と効率を高めることができる。ただし、遺伝子複合体、細胞、生体分子、および/または非細胞粒子を含むウェルアレイの内容物は、他の適切な方法で処理することができる。
【0119】
[00156]ブロックS240の2番目の実施例では、プロセス試薬をウェルアレイに追加して、標的細胞の集団の遺伝物質(例えば、遺伝子複合体)のcDNA合成を実行し、それによって下流でさらに分析(例えば、遺伝子配列決定)可能な個々の細胞にそれぞれ関連する遺伝子産物80を生成する。逆転写を介したmRNAを含む遺伝子複合体からのcDNAの合成は、一連のプロセス試薬を所定のシーケンスでウェルアレイに追加することによって実行でき、これはシステム100の1以上のサブコンポーネントによって自動化されることが好ましい。好ましい実施例では、流体送達モジュールのプロセッサによって実行されるプログラムを使用して、一連のプロセス試薬を設定された時間、容積、速度、および温度でウェルアレイに追加することができる。この方法は、ブロックS242でサンプル調製プロトコルに関する情報を受信するステップをさらに含むことができる。ブロックS242は、好ましくはブロックS240の前に実行され、これは自動化システムを準備して情報に基づいて生物学的サンプルを処理および分析することができる。例えば、ブロックS242は、プロセス試薬をウェルアレイに送達するように構成された流体リザーバ160を備えた、流体送達モジュールの試薬チャンバのセットの試薬チャンバの自動整列を実施することができる。具体例では、隔離されたプロセス試薬を含有する円筒形カートリッジの回転を制御する整列コマンドのシーケンスを生成し、それにより、サンプル調製プロトコルに従って生物学的サンプルの処理を自動化することができる。あるいは、ブロックS242は、方法200の任意の適切なステップの前または後に実行することができ、方法200および/またはシステム100の他のステップで収集された情報と連携させて使用することができる。例えば、ブロックS242は、ブロックS216で前述したように、ユーザがサンプル調製プロトコルに関する情報を入力できるようにしてもよいし、および/またはイメージングサブシステム194を使用してサンプル調製プロトコルに関する情報を自動的に受信してもよい。しかしながら、ブロックS242は、サンプル調製プロトコルに関する情報を受信する他の適切な方法を含むことができる。ただし、一連のプロセス試薬は、手動で、または他の適切な生化学的プロセスを実行する他の適切な方法によって、ウェルアレイに追加することができる。
【0120】
2.5 方法-ウェルアレイからの遺伝物質の取り出し
[00157]ブロックS250は、ウェルアレイから遺伝物質を取り出すステップを記載しており、これは下流の処理のためにウェルから遺伝物質を収集するように機能する。実施例では、ブロックS240で生成された遺伝子複合体および遺伝子産物の一部を含む遺伝物質は、標的細胞の識別情報を含む任意の生物学的物質を含み得る(例えば、合成タンパク質、天然タンパク質、核酸、バイオマーカー、生化学反応の副産物など)。ウェルアレイから取り出す前に、ウェルキャビティ128内の溶液中に浮遊したり、ウェルキャビティ128の内面130の領域、またはウェル内の適切な箇所、あるいはウェル内の他の適切なサブコンポーネントに関連した箇所に結合している粒子の集団に、遺伝物質を結合させることができる。第1の実施例では、遺伝物質は、溶解細胞からの生の細胞内遺伝物質(例えば、タンパク質、mRNA、DNA、タンパク質)を含む。第2の実施例では、遺伝物質は、粒子から分離された、または粒子に結合されたプローブ36のセットを含む。第3の実施例では、遺伝物質は、遺伝子産物80(例えば、ブロックS240の実施例における遺伝子複合体の逆転写によって形成されるcDNA配列)を含む。第4の実施例では、遺伝物質は、ポリメラーゼ連鎖反応(例えば、cDNAライブラリ)により増幅されたブロックS240からの遺伝子産物80を含む。ただし、遺伝物質は、ウェルアレイから取り出して、その後分析または処理することができる適切な生物学的物質を含むことができる。ブロックS250は、好ましくはブロックS240が完了した後に実行されるが、方法200の他のステップに関して他の適切な時間に実行することができる。別の実施形態では、システム100は、ブロックS240およびS250の複数のサイクルを実行して類似の遺伝子産物の生成および溶出を繰り返し、それにより、複数のライブラリの調製および/または単一細胞由来の遺伝子複合体の同じセットからの配列決定を行うことが可能になる。
【0121】
[00158]遺伝物質が粒子の集団に結合したままである第1のバリエーションでは、遺伝物質の取り出しは、ウェルアレイから粒子の集団を取り出すことにより達成することができる。一実施例では、ウェルアレイ内の抽出流体の流体体積を増やすことにより、粒子をウェルアレイから洗い流すことができる(例えば、流体を手動でピペッティングしたり、ウェルアレイに流体を流すなど)。一例では、抽出流体(例えば、5~10mL PBS)を、基板の上側広範面に垂直な方向にウェルアレイに分配することができるが、追加的および/または代替的に、基板の上側広範面に平行な方向で流体リザーバを通る流体経路に沿って抽出流体を流し、抽出流体が拡散によってウェルの開放面を介してウェルアレイに入れるようになることによって、アレイに分配することができる。追加的および/または代替的に、抽出流体をウェルアレイに分配するステップは、抽出流体に力を加え、それによって抽出流体の速度を変更し、ウェル内の粒子を再配置するステップを含むことができる(例えば、流体リザーバ内に上下にピペッティングすることや、正味の正圧または正味の負圧を流体に加えるなど)。一実施例では、十分な量の抽出流体を特定の流体速度(または少なくとも第1および第2の流体速度のサイクル)で添加すると、ウェルの開放面を介してウェルキャビティ128内に以前に沈んでいた粒子を出すことができ、粒子を下流での処理のために収集することができる(例えば、出口を通して収集容器に流し込んだり、リザーバから直接回収するなど)。第2の実施例では、基板を反転させ(例えば、基板の中心点を通る横軸を中心に基板を180°回転させる)、最大60分間(例えば、約10、20、30、40、50、60分)基板をインキュベートすることにより、ウェルアレイから粒子を取り出すことができる。(前章で説明したように)流体リザーバが第1のプレート150で密閉されている実施例では、粒子は重力によってウェルの開放面からウェルアレイを出て流体リザーバに移動し得るが、粒子はウェルアレイから他の適切な収集容器へと出されてもよい。第3の実施例では、抽出モジュールを使用して、ウェルアレイから粒子を直接取り出すことができる。追加的および/または代替的に、粒子の抽出速度は、基板の遠心分離、基板の物理的振動(例えば、震盪、振動)、ウェルアレイへの流体体積の増加および/または減少、粒子に力を加える(例えば、磁気、電気、物理)、または他の適切な取り出し方法を含む追加のステップによって加速させることができる。
【0122】
[00159]遺伝物質が粒子の集団に結合したままである第2のバリエーションでは、遺伝物質80をウェル内の粒子から分離させ、流体をウェルからピペッティングして粒子をウェル内に残すことにより、遺伝物質を取り出すことができる。一実施例では、遺伝子複合体は、光切断可能なリンカーなどの可逆的生化学結合によって粒子に結合されており、ここでリンカーは粒子に可逆的に付着可能であり、粒子を特定の波長の光(例えば、可視光スペクトル、紫外線スペクトル)にさらすことで除去することができる。しかしながら、様々な化学物質を使用して、プローブを粒子、ウェル、または下流の分析に適した他の表面に制御可能に取り外す(または取り付ける)ことができる。具体例では、第1章で説明した光学サブシステムが発する均一な光によって、基板の第1の広範面の近くの基板の上から、ウェルの開放面を通してウェルキャビティ内へと、ウェルアレイを均一に照明することができる。この例では、300~400nm(例えば365nm)の範囲の紫外光を最大30分間(例えば約5、10、20、30分間)ウェルアレイに照射することができる。好ましい実施例では、熱制御モジュールが、紫外線が通過する第1の広範面に直接対向する第2の広範面(下面)にて基板の下に配置された反射面を有し、それによって入射光を反射させてウェルに戻してビーズの全体を照らし、粒子の集団からの遺伝子複合体の均一かつ同時の光切断を実現することができる。ただし、ウェル内に含まれる粒子の集団への均一な照射は、他の適切な方法によって達成することができ、これには露光中に基板を静かに振ったり回転させたりしてウェル内のビーズを回転させたり、液体リザーバ160を横切る流体流を圧力システムと組み合わせて利用し、ウェル内のビーズの回転を操作することが含まれる。さらに、任意の波長または光の波長の組み合わせを使用し、粒子の集団を照らして光に敏感な化学反応を実行してもよい。さらに、入射光ビームの強度は、任意の適切な強度にすることができる。ウェル内の粒子の集団から遺伝子産物80を分離するために光学照明が使用される本実施例では、遺伝子産物の品質を維持するために、熱制御モジュールを使用してウェルアレイの温度を制御し、ウェルキャビティによる溶液の加熱の影響を最小限に抑えることができる。さらに、例えば、回収の速度および/または効率を高める試薬、または回収中の遺伝物質の生存率を向上させる薬剤などの、追加の試薬をウェルアレイに添加して、効率を高めたり、光切断化学反応の実効性を支援したりすることができる。
【0123】
[00160]ブロックS250の別の変形例では、遺伝物質を粒子から分離するステップは、遺伝物質をウェルから取り出すのではなく、裸の粒子をウェルから取り出し、したがって遺伝物質をさらなる処理のために個々のウェルに残すステップをさらに含むことができる。この変形例では、遺伝物質は、ウェルキャビティ128内に自由に浮遊したままとしてもよいし、またはウェルキャビティ128内に固定化してもよい。粒子は、前述の実施例の方法(例えば、磁石)によって除去し、遺伝物質をウェルキャビティ128の内面130に結合したままにすることができる。第1章で説明したように、ウェルキャビティ128の内面130は、小さな分子を物理的、エネルギー的、または化学的に捕捉できる表面の特徴を有し、および/または小さな分子が高い親和性を有する(粒子より高い結合親和性を有する)表面特徴を有することができる。具体例では、遺伝物質は、各ウェルの壁内の一連の隆起または突起によって物理的に閉じ込められる。別の具体例では、遺伝物質はコンジュゲートプローブから組み込まれた機能的リンカー(例えば、ビオチンタンパク質)を含み、ウェルの内面130に前にコーティングされたストレプトアビジンと結合するように構成されてもよい。別の具体例では、遺伝物質は、ウェルの表面を覆う親和性ミクロスフェア/薬剤に結合してもよい。ただし、遺伝物質は様々な適切な方法で処理することができる。
【0124】
[00161]捕捉された標的細胞および/または捕捉された標的細胞に由来する遺伝物質の下流での分析は、ウェルのセットの内容物(例えば、細胞、細胞内成分)の採取、ウェルのセットで捕捉された細胞の培養、細胞集団によって発現されるバイオマーカーの検出(例えば、蛍光検出を使用)、定量分析(例えば、mRNA発現の定量分析)の実行、バイオマーカー発現に基づいた細胞表現型(例、癌細胞表現型)の特性評価、細胞表現型の特性評価に基づいた推奨療法の提供、細胞集団の捕捉細胞でフローサイトメトリを実行、および他の適切な分析の実行、のうちの1以上を含み得る。遺伝子材料、特にブロックS240で生成されたcDNAがRNA配列決定に使用される好ましい応用例では、遺伝子材料をさらに処理して、エキソヌクレアーゼ処理、前増幅PCR、SPRIクリーンアップ、およびタグ付けを実行することにより、特定のフラグメントサイズと品質の遺伝子材料を含むcDNAライブラリを生成することができる。さらに、システム100を使用して、および方法200の実施例の実装を通じて収集されたデータを使用して、ジェノタイピングライブラリ、CRISPRプール、免疫プロファイリング、経路分析、薬物スクリーニング、および系統追跡を含む単一細胞ターゲットパネルを生成および利用することができる(図34)。しかしながら、方法200の変形例は、追加的または代替的に、単一細胞形式および単一クラスタ形式の少なくとも一方における細胞集団の受け取り、処理、および/または分析を促進する他の適切なステップまたはブロックを含むことができる。
【0125】
[00162]好ましい実施形態およびその変形例のシステム100および方法200は、コンピュータ可読命令を格納するコンピュータ可読媒体を受け取るように構成された機械として少なくとも部分的に実施および/または実装することができる。命令は、好ましくはシステムおよびプロセッサおよび/またはコントローラの1つまたは複数の部分と統合されることが好ましいコンピュータ実行可能コンポーネントによって実行されることが好ましい。コンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EEPROM、光学デバイス(CDまたはDVD)、ハードドライブ、フロッピードライブ、または任意の適切なデバイスなど、任意の適切なコンピュータ可読媒体に保存することができる。コンピュータ実行可能コンポーネントは、好ましくは汎用または特定用途向けプロセッサであるが、任意の適切な専用ハードウェアまたはハードウェア/ファームウェアを組み合わせたデバイスが、代替的にまたは追加的に命令を実行してもよい。
【0126】
[00163]図面は、好ましい実施形態、構成例、およびそれらの変形例に係るシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能、および動作を示している。これに関して、フローチャートまたはブロック図の各ブロックは、指定された論理機能を実装するための1以上の実行可能な命令を含むモジュール、セグメント、またはコードの一部を表してもよい。また、いくつかの代替実施例では、ブロックに記載されている機能は、図に記載されている順序とは異なる順序で発生する可能性があることに留意されたい。例えば、実際には、関連する機能に応じて、連続して示された2つのブロックを実質的に同時に実行してもよいし、逆の順序で実行してもよい。また、ブロック図および/またはフローチャート図の各ブロック、およびブロック図および/またはフローチャート図のブロックの組み合わせは、指定された機能または工程を実行する専用ハードウェアベースシステム、または特殊用途のハードウェアとコンピュータ命令の組み合わせによって実装できることに留意されたい。
【0127】
[00164]当業者が上述の詳細な説明および図面および特許請求の範囲から認識するように、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の好ましい実施形態に修正および変更を加えることができる。
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