(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】障害のある乗客のための入口を備えた乗客シート配置
(51)【国際特許分類】
B64D 11/06 20060101AFI20230220BHJP
【FI】
B64D11/06
(21)【出願番号】P 2021501104
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(86)【国際出願番号】 GB2018053560
(87)【国際公開番号】W WO2019186090
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-11-17
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515069875
【氏名又は名称】アキュメン デザイン アソシエイツ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス, リチャード ピーター ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ドライバーグ, イアン ハミルトン
(72)【発明者】
【氏名】マッキーバー, ジョン デイビッド ヘンリー
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-219882(JP,A)
【文献】国際公開第2018/033599(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0332734(US,A1)
【文献】特表2015-535769(JP,A)
【文献】特開2001-253283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 11/06
B60N 2/00- 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機客室の乗客シート配置であって、該乗客シート配置は、通路に隣接して配置され
た複数のシートユニットを含む列を備え、該シートユニットの列と通路との両方が航空機
客室の長手方向軸に平行な長手方向に延びており、
前記列は、前記長手方向に沿って連続的に配置された多数のシートユニットを備え、
各シートユニットは、シートパン及び背もたれを有するシートを形成するようにシート
要素が配置されたシート形態と、フラットベッドの面を形成するようにシート要素が配置
されたフラットベッド形態とに変更可能となるように、複数の可動シート要素を備え、
各シートユニットにおいて、各シート要素は、前記長手方向と鋭角をなすとともに、前
記通路に向かって内側を向き、
各シートユニットは、前記ユニットがフラットベッド形態にあるときに乗客の足を受け
るための足受け構造を備えるとともに、シートユニットの足受け構造と、前記列内で該シ
ートユニットの片側にあるシートユニットの足受け構造との間の間隔は、該シートユニッ
トの入口開放部の範囲を定めており、
前記入口開放部は、健常な乗客がアクセスするための第1幅を有し、
前記シートユニットの少なくとも1つは、障害のある乗客がシートユニットにアクセス
できるように、一時的に入口開放部が前記第1幅から前記第1幅よりも広い第2幅に拡大
されて成る障害者アクセス形態へと変形可能となって
おり、
前記入口開放部に近接する前記各足受け構造の少なくとも一部は、前記ユニットが前記障害者アクセス形態になるとき、前記入口開放部が一時的に前記第1幅から前記第2幅へと拡大するように移動可能になっており、
各シートユニットの前記足受け構造は、前記乗客の足を前記通路から遮蔽するように配置された端壁を備え、該端壁の少なくとも一部は、前記入口開放部を一時的に前記第1幅から前記第2幅に広げるように移動可能になっている、乗客シート配置。
【請求項2】
請求項1に記載の乗客シート配置において、前記第1幅は、前記入口開放部の最小幅である、乗客シート配置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乗客シート配置において、前記第2幅は、少なくとも前記通路の幅である、乗客シート配置。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれか1つに記載の乗客シート配置において、前記端壁の少なくとも一部は、一方側に移動可能になっており、一方側に移動することにより、前記入口開放部が一時的に前記第1幅から前記第2幅に広がる、乗客シート配置。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれか1つに記載の乗客シート配置において、前記足受け構造は、前記乗客の足の上方に有用面を形成する上面を備え、該有用面は、隣接する前記シートユニットに配置された乗客により使用されるようになっており、該上面は、前記ユニットが前記障害者アクセス形態になるとき、前記入口開放部を一時的に前記第1幅から前記第2幅に広げるように移動可能になっている、乗客シート配置。
【請求項6】
請求項
5に記載の乗客シート配置において、前記上面は、低い位置まで移動可能になっている、乗客シート配置。
【請求項7】
請求項
6に記載の乗客シート配置において、前記上面は、前記低い位置にあるときに前記乗客を前記シートユニットに搬送するための搬送面となるように配置されている、乗客シート配置。
【請求項8】
請求項
7に記載の乗客シート配置において、前記搬送面は、前記障害のある乗客が前記シートパンにアクセスするために移動することができる搬送面を形成するように、前記シートパンと実質的に同一平面上にある、乗客シート配置。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1つに記載の乗客シート配置において、各シートユニットの前記足受け構造は、前記ユニットが前記フラットベッド形態になるときに前記乗客の足を支持するように配置された足支持面を備えている、乗客シート配置。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか1つに記載の乗客シート配置において、各シートユニットは、機内エンターテインメント(IFE)モニタを備えており、該IFEモニタは、収納位置と使用位置との間で配置変更可能となっており、該モニタは、さらに前記シートユニットへのアクセスを容易にするための通行位置へと配置変更可能となっている、乗客シート配置。
【請求項11】
請求項
10に記載の乗客シート配置において、隣接する各モニタの間にある前記入口開放部の上の間隔は、前記通行位置にあるとき、前記収納位置にあるときと比較して広くなっている、乗客シート配置。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか1つに記載の乗客シート配置において、前記障害者アクセス形態になるとき、前記各シート要素の少なくとも1つは、前記シート形態におけるその位置と比較して前記入口開放部に近接した位置へと移動される、乗客シート配置。
【請求項13】
請求項
12に記載の乗客シート配置において、前記障害者アクセス形態になるとき、前記シートパンは、前記シート形態における位置と比較して前記入口開放部に近接した位置に向かって前方に移動される、乗客シート配置。
【請求項14】
請求項
12又は13に記載の乗客シート配置において、前記障害者アクセス形態になるとき、前記シートユニットは、前記各シート要素が前記フラットベッド用の面を形成するように配置された前記フラットベッド形態となるように移動される、乗客シート配置。
【請求項15】
請求項1から
14のいずれか1つに記載の乗客シート配置において、前記シート要素が前記長手方向となす鋭角は、少なくとも45度である、乗客シート配置。
【請求項16】
請求項
15に記載の乗客シート配置において、前記シート要素が前記長手方向となす鋭角は、47度から51度の間である、乗客シート配置。
【請求項17】
請求項
16に記載の乗客シート配置において、前記シート要素が前記長手方向となす鋭角は、実質的に49度に等しい、乗客シート配置。
【請求項18】
請求項1から
17のいずれか1つに記載の乗客シート配置において、前記列内で連続する各シートユニットの間の間隔は、27インチから29インチの間である、乗客シート配置。
【請求項19】
請求項
18に記載の乗客シート配置において、前記列内で連続する各シートユニットの間の間隔は、実質的に28インチに等しい、乗客シート配置。
【請求項20】
請求項1から
19のいずれか1つに記載の乗客シート配置において、前記フラットベッド形態にあるとき、前記ベッドの長さは、少なくとも75インチである、乗客シート配置。
【請求項21】
請求項
20に記載の乗客シート配置において、前記フラットベッド形態にあるとき、前記ベッドの長さは、77インチから78インチの間である、乗客シート配置。
【請求項22】
請求項1から
21のいずれか1つに記載の乗客シート配置において、前記各シートユニットの列は、一側で前記通路に隣接し、他側で前記航空機側壁に隣接する、乗客シート配置。
【請求項23】
請求項
22に記載の乗客シート配置において、前記客室は、前記通路の反対側で複数のシートユニットを含む第2の列を備え、該第2の列は、第1の列を参照して説明したように配置されている、乗客シート配置。
【請求項24】
請求項
23に記載の乗客シート配置において、前記通路は、前記客室の中心線に沿って延び、前記第2の列は、一側で前記通路に隣接し、他側で前記航空機側壁に隣接している、乗客シート配置。
【請求項25】
請求項1から
24のいずれか1つに記載の乗客シート配置を形成する多数のシートユニット。
【請求項26】
請求項1から
24のいずれか1つに記載の乗客シート配置を構成する複数のシートユニ
ットのうちの1つとして使用されるシートユニット。
【請求項27】
航空機客室内で適用される乗客シート配置であって、該乗客シート配置は、内向きヘリンボーンで配置された複数のシートユニットを含む列を備えており、
各シートユニットは、シート形態とフラットベッド形態との間で変形可能であり、
各シートユニットは、当該各シートユニットにアクセスするための入口開放部を有し、 前記シートユニットの少なくとも1つは、障害のある乗客が前記シートユニットにアクセスできるように入口開放部が一時的に拡大される障害者アクセス形態に変形可能となって
おり、
各シートユニットは、部分的にオットマンを囲む端壁を備えており、前記障害者アクセス形態になるとき、前記端壁は通行位置に一時的に移動され、それによって障害のある乗客が前記シートユニットにアクセスできるように前記入口開放部が拡大するようになっている、乗客シート配置。
【請求項28】
請求項
27に記載の乗客シート配置において、前記シートユニットは、単通路機で使用するために大角度/狭間隔のヘリンボーンになっている、乗客シート配置。
【請求項29】
請求項
27又は28に記載の乗客シート配置におけるシートユニットの1つとして使用するためのシートユニット。
【請求項30】
請求項1から
29のいずれか1つに記載の、入口開放部をシートユニットに近接させるための構造であって、前記構造の少なくとも一部は、前記入口開放部を第1幅から第2幅に一時的に拡大させるように移動可能になっている、構造。
【請求項31】
請求項
30に記載の構造において、前記構造は、前記シートユニットがフラットベッド形態にあるときに前記乗客の足を受ける足受け構造である、構造。
【請求項32】
請求項
31に記載の構造において、前記足受け構造は、前記乗客の足を前記通路から遮蔽するように配置された端壁を備え、該端壁の少なくとも一部は、前記入口開放部を一時的に前記第1幅から前記第2幅に広げるように移動可能になっている、構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客シート配置及び乗客シート配置に用いるシートユニット一式に関する。
【背景技術】
【0002】
シート形態とフラットベッド形態との両方に切り換え可能なシートユニットを有する航空機の乗客シート配置は、周知のものである。これらの切り換え可能なシートユニットは、通常、航空機のプレミアムシート(例えば、ビジネスクラス、及び/又は、ファーストクラス)の客室に使用される。シート形態において、シートユニットは、通常、比較的直立したシートを提供する一方で、フラットベッド形態において、シートユニットは、乗客を支持するために実質的に平面状の就寝面を提供する傾向がある。特許文献1(ブリティッシュエアウェイズ)、特許文献2(ヴァージンアトランティック)、及び特許文献3(ブリティッシュエアウェイズ)に示すシートユニットは、シート形態と、リクライニングしたシートにおける快適性を向上させたフラットベッド形態との両方を有するそうした切り換え可能シートユニット(「フルフラット」シートを有すると言及されることがある)の例である。フルフラットシートは、過去10年ほどでますます人気になってきている。
【0003】
米国の航空アクセス法(Air Carrier Access legislation)のような法律は、航空旅行において障害に基づく差別を禁止している。例えば、Title 14 CFR Part 382は、米国の航空会社のすべてのフライトならびに外国の航空会社における米国発着のフライトについて、米国運輸省(DOT)が従う規則を定めている。
【0004】
多くのプレミアムクラスのシート配置では、ビジネスクラスやファーストクラスで望ましいとされる比較的に大きなシートユニットや低いPAX密度(すなわち、客室単位面積当たりの乗客数が比較的に少ない状態)の結果としてシートへの入口がすでに比較的広々としている傾向があり、このため、DOTの要件は本質的に満たされる傾向にある。
【0005】
上述の特許文献1及び特許文献2は、各々のシートが航空機の長手方向軸と所定の角度をなす、ビジネスクラス配置の中のいわゆるヘリンボーン配置の例である。比較的に大きいヘリンボーン角度や狭い間隔を必要とする配置であるため、このタイプのヘリンボーン配置における各シートの入口開放部の幅は、必然的に比較的狭くなる(すなわち、ヘリンボーン角度が大きくなり、間隔が狭くなるにつれて、これに対応するように、各シートユニットの隣り合う各フットエンド(foot-end)の間の間隔は狭くなる)。このような入口開放部の狭い幅は、上述のDOTの要件に準拠するうえで問題となりうる。この問題は、特に使用可能な客室スペースを効率的に使用するために大角度/狭間隔の配置が必要とされる傾向のあるナローボディ(例えば単通路)機の場合に生じる。
【0006】
この点において、ナローボディ機のヘリンボーンレイアウトは、必要な通路幅を達成することができないと考えられ、航空機業界において非現実的であるとして却下される傾向にあった。その代わりとして、特許文献4(トンプソン)で提案されているような直列配置(in-line arrangement)が好まれる傾向がある。特許文献4は、複数のシートユニットを含む列を複数備え、各々のユニットが客室の長手方向軸に平行な方向を向く前向きのフルフラットシートを有する航空機客室を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】英国特許第2326824号明細書
【文献】国際公開第03013903号
【文献】米国特許第7,178,871号明細書
【文献】米国特許第7,918,504号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題を軽減することを目的とする。本発明は、代替的又は追加的に、改善された乗客シート配置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態においては、航空機客室の乗客シート配置が提供され、該乗客シート配置は、通路に隣接して配置された複数のシートユニットを含む列を備え、該シートユニットの列と通路との両方が航空機客室の長手方向軸に平行な長手方向に延びている。当該列は、長手方向に沿って連続的に配置された複数の或いは好ましくは多数のシートユニットを備えている。各シートユニットは、シートパン及び背もたれを有するシートを形成するようにシート要素が配置されたシート形態と、フラットベッドの面を形成するようにシート要素が配置されたフラットベッド形態とに変更可能となるように、複数の可動シート要素を備えている。各シートユニットにおいて、各シート要素は、上記長手方向と鋭角をなすとともに、上記通路に向かって内側を向いている。各シートユニットは、構造、例えば、上記ユニットがフラットベッド形態にあるときに乗客の足を受ける足受け構造を備えている。シートユニットの該構造(例えば、足受け構造)と、上記列内における該シートユニットの片側にあるシートユニットの構造(例えば、足受け構造)との間の間隔は、該シートユニットの入口開放部の範囲を定めるものとなる。入口開放部は、健常な乗客がアクセスするための第1幅を有している。上記シートユニットの少なくとも1つは、障害のある乗客がシートユニットにアクセスできるように、一時的に入口開放部が上記第1幅から上記第1幅よりも広い第2幅に拡大されて成る障害者アクセス形態へと変形可能となっている。
【0010】
第2幅まで拡大できる入口開放部を提供することにより、比較的にスペース効率の良いシート配置が提供されると同時に、必要に応じて障害のある乗客がアクセスできるようにもなる。該障害者アクセス形態によれば、障害のある乗客が上記シートユニットに堂々とする姿勢でアクセスできる。
【0011】
「障害」という用語は、これと同義の用語と置き換え可能であることは理解されるであろう。例えば、障害のある乗客は、運動機能障害を持つ人(PRM)と呼ばれることもある。
【0012】
上記障害者アクセス形態では、上記入口開放部が一時的に拡大される。上記乗客が上記シートユニットに出入りした後、そのシートユニットを上記障害者アクセス形態から戻すことができる。
【0013】
上記シートユニットの少なくとも1つは、上記入口開放部を拡大できるように、障害者アクセス形態に変形可能である。上記障害者アクセス形態において、上記入口開放部は、一時的に拡大されるものであってもよい。上記乗客が上記シートユニットに出入りした後、そのシートユニットを上記障害者アクセス形態から戻すことができる。上記シートユニットは、上記障害者アクセス形態へと繰り返し変形可能であるか、或いは、上記障害者アクセス形態から繰り返し変形可能であることが好ましい。例えば、上記シートユニットは、健常者アクセス形態(通常は初期形態)と上記の障害者アクセス形態との間で繰り返し変形可能となっている。したがって、上記入口開放部は、上記シートユニットへの繰り返しの出入りの要求に応じて、上記の第1幅と第2幅との間で繰り返し拡大/縮小できることは理解されるであろう。
【0014】
本明細書では、特に明示しない限り、上記シートユニットの各特徴は、通常、上記健常者アクセス形態におけるそれらの配置を参照して説明する。特に明示しない限り、上記シートユニットを障害者アクセス形態へと移動させる点の説明は、通常、上記健常者アクセス形態から離れる動作を参照して行われる。
【0015】
本明細書では、入口開放部について言及する。上記入口開放部は、上記シートユニットから出るためにも使用されることは理解されるであろう。上記入口開放部の特徴は、例えば乗客がシートユニットから出る場合で、上記開放部が出口開放部となる場合でも同様に適用可能である。
【0016】
一部の実施形態では、上記入口開放部は、シートユニットの上記足受け構造と、上記列内において該シートユニットの片側にあるシートユニットの上記足受け構造との間にありうる。原理的には、上記の各シートユニットのうちの1つだけが、上記開放部を一時的に拡大させる特徴を有するものでもよい(例えば、上記の足受け構造の両方である必要はなく、その足受け構造の1つ(又はその一部)が移動可能であればよい)。したがって、一部の実施形態では、障害者のアクセスを可能とする上記シートユニットは、障害者アクセス形態へと動かされたシートユニットに隣接してもよい。他の実施形態では、上記障害者アクセス形態を採るシートユニットは、上記障害のある乗客がアクセスするものと同じシートユニットであってもよい。
【0017】
障害のある乗客が複数のシートユニットにアクセスできるように、複数のシートユニットが上記障害者アクセス形態へと変形可能となっていてもよい。障害のある乗客が少なくとも50%のシートユニットにアクセスできるように、複数の或いは好ましくは多数の上記シートユニットが上記障害者アクセス形態に変形可能となっていてもよい。上記の多数のシートユニットのすべてが、上記障害者アクセス形態に変形可能となっていてもよい。上記障害者アクセス形態に変形可能な各シートユニットの何れの各シートユニットも実質的に同じものであることが好ましい。全てのシートユニットが実質的に同じものであることが好ましい。
【0018】
一部の実施形態では、シートユニットの上記足受け構造と、上記列内で該シートユニットの片側にあるシートユニットの上記足受け構造との間の間隔は、上記シートユニットに至る上記入口開放部の範囲を定めるものとなる。所与のシートユニットの入口開放部は、そのシートユニットの上記足受け構造と、上記列内でその後方にある機尾側シートユニットの上記足受け構造との間で、その範囲が定められる。これは、例えば一定程度の前方向きヘリンボーン配置の場合に当てはまるであろう。所与のシートユニットの上記入口開放部は、そのシートユニットの足受け構造と、上記列内でその前方にある機首側シートユニットの足受け構造との間で、その範囲が定められる。これは、例えば一定程度の後方向きヘリンボーン配置の場合に当てはまるであろう。
【0019】
各シートユニットにおいて、各シート要素は、上記長手方向と鋭角をなすとともに、上記通路に向かって内側を向いている。このような配置は、一般的に内向きヘリンボーン配置と呼ばれる。シート要素の各セット(より好ましくはシートユニット)は、中心軸を含みうる。該中心軸は、上記シート要素の中心を通って延びることが好ましい(例えば、該中心軸は、シート形態の場合にはシートのシートパン及び/又は背もたれを二等分するものでありうる)。一部の例では、該中心軸は固定されているが、他の例では、回転軸を用いた回転シートのように当該中心軸が移動可能であってもよい。上記シート要素の角度は、上記中心軸と上記長手方向との間の角度として定義されることが好ましい。一部の実施形態においては、各シート要素の当該角度は、使用可能な最大ベッド長を定義する線と長手方向との間の角度として定義することもできる。
【0020】
一部の実施形態では、上記入口開放部の幅は、(例えば、足受け具の形状による影響を受けて)上記客室の床からの高さに応じて変化するものでもよい。上記入口開放部の第1幅は、上記客室の床からの第1高さで測定されることが好ましい。上記第2幅は、上記第1幅と同じ高さで測定されることが好ましい。
【0021】
上記第1幅は、上記入口開放部の最小幅であってもよい。つまり、上記第1高さは、上記入口開放部が最も狭くなる高さであってもよい。上記最小幅は、9インチ以上であることが好ましい。上記最小幅が(上記第2幅へと)拡大する配置を提供することは、上記開放部で最も問題になりそうな部分(つまり、最も狭い部分)が、障害のある乗客のアクセスが可能となるように拡大されることを確実にする傾向があるので、有益なものになりうる。
【0022】
上記入口開放部を一時的に上記第1幅から上記第2幅に広げるとき、上記入口開放部は、上記第2幅よりも狭くなく、かつ、上記第1高さよりも上にあることが好ましい。
【0023】
上記第2幅は、少なくとも上記通路の幅があればよい。上記第2幅は、上記通路の幅と実質的に等しいものであってもよい。例えば、上記通路の幅は、20インチである。上記第2幅は、少なくとも20インチであることが好ましい。上記第2幅は、20インチであってもよい。上記通路幅は、一般的に上記通路に沿って障害者(例えば、車椅子)がアクセスするのに十分なものであり、上記第2幅を上記通路幅に一致させると障害者の上記シートユニットへの十分なアクセスも確保される傾向がある。上記通路は、最小通路幅を有するものでもよい。上記第2幅の大きさは、少なくとも該最小通路幅と同じでもよい。当該最小通路幅は、床から25インチ未満の位置から測定されるものでよい。
【0024】
一部の実施形態では、上記各シートユニットは、上記障害者アクセス形態において、上記乗客を上記シートユニットに移すための搬送面が提供されるように配置されるものでもよい。該搬送面は、上記入口開放部が上記第1幅から第2幅へと一時的に拡大されることにより提供されるものであってもよい。例えば、上記障害者アクセス形態では、該搬送面は、上記第1高さ(すなわち、上記開放部が上記の第1幅から第2幅に拡大される位置における高さ)にあってもよい。該搬送面は、上記シートユニットが上記シート形態にあるときに、上記シートパンと実質的に同一平面上にあることが好ましい。該搬送面は、実質的に足掛けと同一平面上にあってもよい。代替的に又は追加的に、上記シートユニットが上記フラットベッド形態にある場合には、該搬送面は、上記フラットベッドの面と実質的に同一平面上にあってもよい。
【0025】
上記足受け構造は、上記ユニットがフラットベッド形態にあるときに乗客の足を受けるためのものである。上記足受け構造は、多くの形態をとることができる。
【0026】
各シートユニットの上記足受け構造は、上記ユニットが上記フラットベッド形態にあるときに上記乗客の足を支持するように配置された足支持面を備えていてもよい。該足支持面は、上記ユニットがフラットベッド形態にあるときに上記フラットベッドの面と実質的に同一平面上にあってもよい。該足支持面は、オットマンを構成してもよい。
【0027】
各シートユニットの上記足受け構造は、上記乗客の足を上記通路から遮蔽するように配置された端壁を備えていてもよい。足支持面を備えた実施形態では、該端壁は、上記通路と上記足支持面との間に配置されていてもよい。上記足受け構造は、上記乗客の足を隣接する上記シートユニットから遮蔽するように配置された側壁を備えていてもよい。足支持面を備える実施形態では、該側壁は、隣接する上記ユニットを該足支持面から分離するものとなりうる。
【0028】
上記足受け構造は、上面を備えるものでもよい。該上面は、上記乗客の足の上方に有用面を形成しうる。該有用面は、上記隣接するシートユニットに配置された乗客が使用するためのものでもよい。例えば、該有用面は、テーブル面であってもよい。
【0029】
例えば上記足受け構造等、上記入口開放部に近接する各構造の少なくとも一部は、上記各ユニットが上記障害者アクセス形態になるとき、上記入口開放部が一時的に上記第1幅から上記第2幅へと拡大するように移動可能になっていてもよい。
【0030】
一部の実施形態では、上記の足受け構造の一部は、一時的に上記入口開放部を広げるために別の位置へと移動可能(例えば、一方の側に引っ込められ或いは移動されるもの)であってもよい。この代替位置においては、上記の足受け構造の一部は、上記足受け構造の他の部位に取り付けられたままであってもよい。上記の足受け構造の部分の動き方は、多くの形態をとることができる。例えば、限定するわけではないが、上記の足受け構造の一部は、平行移動によって移動可能であってもよく、該平行移動は、上記入口開放部の拡大の機能を実現する任意方向の移動でよいし、該平行移動は、限定するわけではないが、レール上にスライド可能に取り付けられて或いは平行四辺形リンク(parallelogram linkage)を介して移動可能となるような、適切な機構によって実現されればよい。一部の実施形態では、上記の足受け構造の一部は、枢動、回転、ヒンジや折り畳みによる動きにより移動可能となるものであればよく、そのような動きの軸は、該軸周りの回転が上記入口開放部の拡大の機能を実現するのであれば任意の方向を向いていてよい。
【0031】
他の一部の実施形態では、上記の足受け構造の一部は、取り外し可能であることによって移動可能であってもよく、取り外したときには、上記入口開放部は一時的に上記第1幅から第2幅に拡大されることとなる。そのような実施形態では、上記の足受け構造の一部は、(例えば、ファスナーや掛け金により)繰り返しの取り外しと再取り付けとが可能であることが好ましい。
【0032】
一部の実施形態では、上記の足受け構造の端壁の少なくとも一部は、上記入口開放部を一時的に上記の第1幅から第2幅に広げるように移動可能になっていてもよい。上記の移動可能な端壁の少なくとも一部は、上記各シートユニットが上記健常者アクセス形態にあるときに上記開放部に近接する部分であることが好ましい。上記端壁の全てがそのように移動可能であってもよい。
【0033】
上記入口開放部が一時的に広がるように上記構造の一部(例えば、足受け構造の一部)が移動可能になっている実施形態において、上記可動部は一般的には通常使用中に固定される、ということは理解されるであろう。例えば、上記可動部は、上記健常者形態での概ね全般的な使用の間に亘って固定されるものであってもよい。上記可動部は、上記入口開放部が健常者のアクセスに使用されることを可能にするために移動させる必要はないであろう。上記構造の可動部は、上記シートユニットを上記障害者アクセス形態に変形する目的のためだけに動かせる部分であってもよい。
【0034】
一部の実施形態では、上記の入口開放部に近接する各足受け構造の1つの実質全てが上記入口開放部を一時的に上記の第1幅から第2幅に広げるように移動可能であってもよい。上記足受け構造は、上記各ユニットが上記障害者アクセス形態になるとき、上記入口開放部を一時的に上記の第1幅から第2幅に広げるように回転位置に向かって回転可能となっていてもよい。上記足受け構造は、上記各ユニットが上記障害者アクセス形態になるとき、上記入口開放部を一時的に上記の第1幅から第2幅に広げるように平行移動位置に向かって平行移動可能であってもよい。
【0035】
上記の足受け構造の上面は、上記各ユニットが上記障害者アクセス形態になるとき、上記入口開放部を一時的に上記の第1幅から第2幅に広げるように移動可能であってもよい。上記上面は、低い位置まで移動可能になっていてもよい。上記上面は、その低い位置にあるときに上記乗客をシートユニットに搬送する搬送面となるように配置されるものであってもよい。該搬送面は、障害のある乗客が上記のシートパンのようなシート要素にアクセスするために移動できる搬送面を形成するよう、上記シートパンのようなシート要素と実質同一平面上にあってもよい。
【0036】
一部の実施形態では、上記足受け構造は、上述した特徴のうちの1つのみを含むものであってもよい。他の一部の実施形態では、上記足受け構造は、上述した複数の特徴を組み合わせて含むものであってもよいことは理解されるであろう。
【0037】
各シートユニットは、モニタを備えていてもよい。該モニタは、機内エンターテインメント(IFE)モニタであってもよい。該モニタは、(例えば、滑走、離着陸 - TTOLのための)収納位置と(乗客が観るための)使用位置との間で配置変更可能であってもよい。上記モニタは、さらに上記シートユニットへのアクセスを容易にするための通行位置に配置可能となっていてもよい。該通行位置では、上記モニタは、上記の収納位置及び使用位置とは異なる位置にあってもよい。上記モニタは、上記収納位置から第1方向にある上記使用位置に向けて展開されるものであってもよい。上記モニタは、上記の収納位置から上記第1方向とは反対の第2方向にある通行位置へと移動可能であってもよい。例えば、上記の第1方向及び第2方向は、共通の回転軸周りにおける逆方向の回転であってもよい。
【0038】
隣接する各モニタの間にある上記入口開放部の上方の間隔は、上記通行位置にあるとき、上記収納形態にあるときと比較して広くなっている。上記モニタは、上記シートユニットが上記障害者アクセス形態にあるとき、上記通行位置にあってもよい。
【0039】
上記障害者アクセス形態になるとき、上記各シート要素の少なくとも1つは、上記シート形態におけるその位置と比較して上記入口開放部に近接した位置に移動されるものでもよい。上記入口開放部に近接した位置は、上記障害のある乗客を上記入口開放部を経て上記シート要素の上へと移すのに適していると思われる。該シート要素は、上記シートパンであってもよい。該シート要素は、足掛けであってもよい。一部の実施形態において、上記シートパンは、上記障害者アクセス形態になるとき、上記シート形態における位置から相対的に上記入口開放部に近接した位置に向かって、前方に移動されるものでもよい。上記の入口開放部に近接した位置は、障害のある乗客が上記入口開放部を経て上記シートパンの上へと移動するのに十分であると思われる。上記シートパンは、上記シートの前方への移動の結果として(すなわち、上記のシートユニットの中心軸に沿って)、前方へ移動するものであってもよい。例えば、上記シートは、上記前方にスライド移動可能であってもよい。一部の実施形態では、上記シートユニットが上記のシート形態からフラットベッド形態に切り替わった結果として、上記シートパンが前方に移動されるものであってもよい。したがって、そのような実施形態では、上記シートユニットは、上記障害者アクセス形態になるときに上記フラットベッド形態となるように動かされるものであってもよい。
【0040】
各実施形態は、比較的大角度/狭間隔のレイアウトへの適用において、特に有益であることが判明している。上記シート要素が長手方向となす上記鋭角は、少なくとも45度とすることができる。上記のシート要素が長手方向となす鋭角は、47度から51度の間とすることができる。上記のシート要素が長手方向となす上記鋭角は、48度から50度の間とすることができる。上記シート要素が長手方向となす上記鋭角は、実質的に49度に等しくすることができる。
【0041】
上記の列内で連続する各シートユニットの間の間隔は、33インチ未満とすることができる。上記の間隔は、隣接する各シートユニット上の2つの対応する共通点の間の長手方向に沿った距離と定義される点については、理解されるであろう。上記の列内で連続する各シートユニットの間の間隔は、32インチ未満とすることができる。上記の列内で連続する各シートユニットの間の間隔は、31インチ未満とすることができる。上記の列内で連続する各シートユニットの間の間隔は、30インチ未満とすることができる。上記の列内で連続する各シートユニットの間の間隔は、24インチから33インチの間とすることができる。上記の列内で連続する各シートユニットの間の間隔は、24インチから30インチの間とすることができる。上記の列内で連続する各シートユニットの間の間隔は、25インチから29インチの間とすることができる。上記の列内で連続する各シートユニットの間の間隔は、27インチから29インチの間とすることができる。上記の列内で連続する各シートユニットの間の間隔は、実質的に28インチに等しくすることができる。
【0042】
上記フラットベッド形態では、ベッドの長さを少なくとも75インチとすることができる。上記フラットベッド形態では、ベッドの長さを77インチから78インチの間とすることができる。
【0043】
各実施形態は、ナローボディ機への適用において、特に有益であることが判明している。上記各シートユニットの列は、一側で上記通路に隣接し、他側で上記航空機側壁に隣接するものであってもよい。上記客室は、上記通路の反対側において複数のシートユニットを含む第2の列を含むものでもよく、第2の列は、第1の列を参照して説明したように配置される。上記通路は、上記客室の中心線に沿って延びるものであってもよい。上記第2の列は、一側で上記通路に隣接し、他側で上記航空機側壁に隣接するものであってもよい。すなわち、該シート配置は、単通路型航空機に適用されるものであってもよい。
【0044】
一部の実施形態では、本明細書に記載の乗客シート配置を形成する多数のシートユニットが提供される。
【0045】
一部の実施形態では、本明細書で説明した乗客シート配置における上記シートユニットの1つとして使用するためのシートユニットが提供される。
【0046】
一部の実施形態では、障害のある乗客が乗客シート配置に係るシートユニットにアクセスできるようになる方法が提供され、該乗客シート配置は、多数のシートユニットを備えており、それぞれが健常な乗客がアクセスするための第1幅を持つ個別の入口開放部を有している。この方法は、障害のある乗客が上記シートユニットにアクセスできるように入口開放部が上記の第1幅から該第1幅よりも広い第2幅へと拡大される障害者アクセス形態へとシートユニットを一時的に変形させるステップを備えている。
【0047】
一部の実施形態では、航空機客室内の乗客シート配置が提供され、該乗客シート配置は、内向きヘリンボーンで配置された複数のシートユニットを含む列を備えている。各シートユニットは、シート形態とフラットベッド形態との間で変形可能である。各シートユニットは、当該各シートユニットにアクセスするための入口開放部を有している。上記シートユニットの少なくとも1つは、障害のある乗客が上記シートユニットにアクセスできるように入口開放部が一時的に拡大される障害者アクセス形態に変形可能である。各シートユニットは、部分的にオットマンを囲む端壁を備えている。上記障害者アクセス形態になるとき、上記端壁は一時的に通行位置に移動され、それによって障害のある乗客が上記シートユニットにアクセスできるように上記入口開放部が拡大するようになっていてもよい。上記シートユニットは、単通路機で使用するために大角度/狭間隔のヘリンボーンになっている。
【0048】
一部の実施形態では、本明細書で説明したように入口開放部をシートユニットに近接させるための構造が提供される。該構造の少なくとも一部は、上記入口開放部を第1幅から第2幅に一時的に拡大させるように移動可能である。該構造は、上記シートユニットがフラットベッド形態にあるときに上記の乗客の足を受ける足受け構造であってもよい。該足受け構造は、上記通路から乗客の足を遮蔽するように配置された端壁を備えていてもよい。該端壁の少なくとも一部は、上記入口開放部を上記の第1幅から第2幅に一時的に拡大させるように移動可能であってもよい。
【0049】
勿論、いくつかの実施形態に関連して説明した各特徴は、他の実施形態に組み込まれてもよいことは理解されるであろう。例えば、ある実施形態の方法は、他の実施形態の装置を参照して説明した如何なる特徴も組み込むことができ、また、その逆も同様である。一態様に係るシート配置の特徴は、他の態様に係るシート配置に組み込まれてもよく、また、その逆も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、第1実施形態の配置における複数のシートユニットを含む列の一部を示し、
図1a~
図1dは、シートユニットの1つが障害者アクセス形態に変化するように示したものであり、
図1eは、
図1a~
図1eに示す複数のシートユニットを含む列が設置された航空機の客室を示したものである。
【
図2】
図2は、第2実施形態の配置における複数のシートユニットを含む列の一部を示し、
図2a~
図2cは、シートユニットの1つが障害者アクセス形態に変化するように示したものである。
【
図3】
図3は、第3実施形態の配置における複数のシートユニットを含む列の一部を示し、
図3a~
図3cは、シートユニットの1つが障害者アクセス形態に変化するように示したものである。
【
図4】
図4は、第4実施形態の配置における複数のシートユニットを含む列の一部を示し、
図4a~
図4cは、シートユニットの1つが障害者アクセス形態に変化するように示したものである。
【
図5】
図5は、第5実施形態の配置における複数のシートユニットを含む列の一部を示し、
図5a~
図5eは、シートユニットの1つが障害者アクセス形態に変化するように示したものである。
【
図6】
図6は、第6実施形態の配置における複数のシートユニットを含む列の一部を示し、
図6a~
図6dは、シートユニットの1つが障害者アクセス形態に変化するように示したものである。
【
図7】
図7は、第7実施形態の配置における複数のシートユニットを含む列の一部を示し、
図7a~
図7dは、シートユニットの1つが障害者アクセス形態に変化するように示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、あくまでも一例として、添付の概略図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0052】
図1a~
図1dは、第1実施形態の配置における複数のシートユニットを含む列の一部を示す。
図1eは、
図1a~
図1dに示す複数のシートユニットを含む列が設置された航空機の客室を示す。
【0053】
先ず
図1eを参照すると、第1実施形態の乗客シート配置101は、ボーイング757-200やボーイング737-900のようなナローボディ機105の航空機客室103に配置されている。乗客シート配置101は、航空機客室の中心に沿って走る単一の通路111に隣接して配置された複数のシートユニット109(
図1a-
図1dを参照して、より詳細に説明する)を含むカラム107を備えている。複数のシートユニットを含む列107及び通路111は、いずれも航空機客室の長手方向軸113と平行な長手方向(L)に延びている。
【0054】
列107は、長手方向に沿って連続して配置された多数のシートユニット109を備えている。第2の列107’は、通路の反対側に配置され、軸113を挟んで第1の列と実質的に対称になっている。本明細書で説明する各特徴は、第1の列107を参照して説明する傾向があるが、シートユニットの他の列107’においても対応する特徴が見られることは理解されるであろう。
【0055】
ここで
図1aを参照すると、各シートユニット109は、背もたれ115a、シートパン115b、及び足掛け115cの形で複数の可動シート要素を備えている。上記シートユニットの一側には、上記列内の機尾側シートユニットの乗客をその前方にある同じ列内の機首側シートユニットの乗客から分離するように配置された湾曲間仕切117が設けられている。肘掛け面119は、上記シートの乗客が使用するために上記ユニットの両内側端に沿って延びている(これらの図では、乗客の右手側の肘掛けだけが見えている)。
【0056】
図1aは、乗客が着座可能なシートを形成するように各シート要素が配置されたシート形態の複数のシートユニットを示す。また、各シートユニットは、フラットベッド用に実質同一平面上の面を形成するように各シート要素が配置されたフラットベッド形態に変形可能である(このシート形態とベッド形態との違いは、本明細書において
図5a及び
図5bの実施形態を参照して説明され、
図5bはそのベッド形態のシートを示している)。フラットベッドに切り換え可能なシートユニットは、それ自体は公知であり、ベッドを形成するために各シート要素を再配置する正確な方法(例えば、リクライニング/切り換え機構)については、本発明に関する説明において更に説明する必要はない。
【0057】
各シートユニットにおいて、各シート要素は、長手方向(L)と49度の角度をなすとともに、上記通路に向かって内側を向いている(
図1e参照)。角度は、各シートの中心軸121の間で測定される(中心軸121は、シートパン及び背もたれの中心を通って延びており、
図1a~
図1eにおいては各シートを二等分するようにして概略的に示している)。このような配置は、通常、内向きヘリンボーンと呼ばれる。第1実施形態では、ヘリンボーンが比較的大きな(急勾配の)角度をなし、それ相応に、連続する各シートユニットの間の間隔が比較的小さくなっている(
図1aに示すように、第1実施形態における該間隔は28インチである)。
【0058】
各シートユニット109は、フラットベッド形態にあるときに乗客の足を受けるための足受け構造123を備えている。該足受け構造は、それぞれ乗客の足を通路111と隣接するシートユニットとから遮蔽するための端壁125と側壁127とを備えている。該端壁125及び側壁127は、オットマン126(
図1a~
図1dの最も左のシートユニット109において部分的に見えるのみである)を部分的に囲んでいる。オットマン126は、ユニット109が上記ベッド形態にあるときに上記各シート要素と同一平面上にある足支持面126’を有しており、該足支持面はベッド面の一部を形成する。
【0059】
端壁125及び側壁127並びにオットマン126の上方には、隣接するシートユニットの乗客によって使用される平坦なテーブル面129が設けられている。テーブル面129の直下には、引き出し式テーブル(図示せず)を受けるための水平スロット130(
図1d参照)が設けられている。
【0060】
IFEモニタ131は、TTOL用の収納位置にあるとき、上記テーブルの片側に沿って延びている。モニタ131は、ヒンジにより湾曲間仕切117の端部に取り付けられており、この収納位置から乗客に面する使用位置へと移動させることができる。
【0061】
シートユニット109の足受け構造123と当該列107におけるその片側のシートユニット109の足受け構造123との間の間隔は、該シートユニット109に至る入口開放部133の範囲を定めている。
【0062】
初期形態においては、各シートユニットは、健常者のアクセス用に構成されており、その形態を
図1aに示す。当該形態では、入口開放部は、高さごとに異なる幅を有している。上記開放部の最小幅は、シートユニットの足受け構造の端壁125と上記列内でその後ろに位置する機尾側シートユニットの足受け構造の側壁127との間に形成されるものであり、12インチとなっている。該最小幅は、客室の床から10インチから25インチの間にある。上記の端壁及び側壁の水平面の下には、足受け構造の基部137が設けられており、該基部137は、上記の端壁及び側壁の占有領域内に配置されている。したがって、隣接する基部同士の間の幅は、それらの上方における12インチの幅よりも広いものとなっている。上記テーブル面の水平面の上方には、25.5インチの間隔(隣接するモニタ131同士の間に形成される)がある。この間隔/幅は、図において点線で示されている。
【0063】
該入口開放部は、健常な乗客にとっては完全に使用可能であるが、障害のある乗客のアクセスには使用できないことがある。例えば、乗務員が該開放部を通じて障害のある乗客を堂々とする姿勢のまま介助できるとは思えない。この問題に対処するため、第1実施形態は、障害のある乗客のアクセスが可能となるように上記入口開放部が一時的に拡大される障害者アクセス形態へと、シートユニットを変形できる配置を提供する。次に、障害者アクセス形態への切り替えについて、
図1bから
図1eを参照して説明する。
【0064】
先ず
図1bを参照すると、最初のステップでは、上記シートパンが開放部133に近接するように、アクセスが求められるシートユニット109のシート(背もたれ、シートパン、及び足掛け)を中心軸121に沿って(例えば、通路に向かって)12インチ前方に平行移動させる。
【0065】
次に、オットマン126を囲む上記構造(すなわち、端壁125、側壁127、及びテーブル129)を通路の床まで下降させる(例えば、
図1d参照)。基部137の占有領域は小さいため、この構造は、基部137を包み込むことができる。
【0066】
この構造の下降には、2つの効果がある。第一に、客室の床から17.5インチの高さを超える位置における上記開放部の幅が12インチから25.5インチに拡大されることである。第二に、一旦下降すると、テーブル面129が実質的にシートパン115bと同一平面をなして隣接することである。したがって、テーブル面129は、障害のある乗客を移すための搬送面として使用することができる。例えば、障害のある乗客は、通路111からシートパン115bの上へとスライド移動するのにテーブル面を利用することができる。また、この操作は、下降したテーブルの高さよりも上に位置する開放部の幅が12インチから25.5インチ超えに拡大することにより容易となる。
【0067】
乗客がシートユニットにアクセスできるようになったら、上述した各ステップを逆に実行して、シートユニットを初期形態に戻すことができる。勿論、乗客がシートユニットから出たいと思うならば、必要に応じてこのプロセスを繰り返すことができる。
【0068】
第1実施形態では、2つの隣接するシートユニットは、健常者アクセス形態と障害者アクセス形態との間で変形の操作を受ける。アクセスが必要とされる上記シートユニットのシート要素を移動させて、上記の機尾側シートユニットの足受け構造を下げる。これに関連して、障害のある乗客がこれら2つのシートユニットのうちの1つにアクセスできるようにするために、これら2つのシートユニットが障害者アクセス形態に変形可能になっていることは理解されるであろう。
【0069】
複数のシートユニットのうちの1つだけに障害者のアクセスが必要となることに言及して第1実施形態を説明したが、
図1a~
図1eのシート配置は、実際には実質同一の多数のシートユニットを備えており、それらの何れでも或いは全てが障害者アクセス形態に変形可能である。そのような配置は、障害のある乗客において自由なシートの選択が可能となる点、及び、それら全てのシートユニットが実質同一であることで各シートユニットの構造を単純化できる点において魅力的である。
【0070】
他の実施形態(図示せず)では、多数のシートユニットのうちの一部のみのシートユニット、例えば、50%のシートユニットが障害者のアクセスを可能にするために変形可能となっていてもよい。
【0071】
図2aから
図6dは、更なる追加の実施形態を示す。これらの実施形態の各特徴は、特に記載がない限り、第1実施形態における対応する各特徴と実質同様のものを想定できる、ということは理解されるであろう。同様の特徴には同様の符号が注釈として付されているが、実施形態に応じて100、200などのように適宜値が増やされている。特に記載がない限り、これら全ての実施形態において、各シートユニットは、単通路型の航空機の客室内を対象とし、内向きヘリンボーンレイアウト(すなわち、一般的には
図1eのレイアウトに従う)で配置されるものとする。分かり易くするため、全てのシートユニットについて全ての符号が図示されているわけではない。
【0072】
図2a~
図2cは、第2実施形態の乗客シート配置の一部を示す。健常者アクセス形態においては、テーブル面229と通路との間に任意追加的な通路仕切235が設けられている点を除き、そのレイアウトは、
図1aのレイアウトと略同じである。障害者アクセス形態となるように動かすためには、上記シート(各シート要素215a、b、c)を
図2aに示す位置まで前方へ平行移動させる。次に、仕切235を取り外す(
図2bでは全てのシートで取り外した状態を示しているが、これらの目的のためには、そのうちの1つから取り外すだけで済む)。次に、(第1実施形態とは対照的に)足受け構造223の全体を長手方向Lと平行な方向に10インチだけ後方へ平行移動させる(
図2b参照)。
【0073】
該平行移動の結果、入口開放部233の12インチの幅が22インチまで拡大される。開放部233は、依然として同じ構造223の間でその範囲が定められるが、そのうちの一方が機尾側に向かって平行移動しているため、該開放部の幅は増加している。該入口開放部の幅は22インチであるため、通路211の幅(本実施形態では20インチである)よりも僅かに広くなっている。該通路の幅は、当該通路に沿った障害者(例えば、車椅子)のアクセスに十分であるため、入口開放部233の幅も障害者のシートユニット209へのアクセスに適していると確信できる。第2実施形態では、該開放部の拡大された幅により、乗客はシートパン215b(開放部233の近傍に平行移動されている)上に直接移動できるので、搬送面を設ける必要はない。
【0074】
第3実施形態を
図3aから
図3cに示す。本実施形態は、足受け構造323を機尾側に平行移動させる代わりに上記のモニタのヒンジに同軸結合された垂直ヒンジ339の周りに回転させる点を除き、第2実施形態と類似している。該回転は、開放部333の最小幅を12インチから22インチに広げるものである。足受け構造323と共にモニタ331も回転する結果(第2実施形態のように静止したままであるのと対照的)、テーブル329の高さよりも上に位置する間隔は、特に大きくなり(33.5インチ)、有利となりうる。仕切335の設置は任意であり、これを含めてもよいし含めなくてもよい(それゆえ、該仕切は、一部の図では示されているが、他の図では示されていない)。
【0075】
他の実施形態を
図4aから
図4cに示す。本実施形態は、モニタヒンジ439が足受け構造423のヒンジ439’から切り離されている点を除き、第3実施形態と類似している。また、上記のテーブル面と通路との間に仕切はない。足受け構造423が機尾側に回転されるとき、モニタ431は収納位置にとどまる。これは、入口開放部433の幅が22インチまで広げられることには影響しないが、(第3実施形態と比較して)テーブル面429の上方の間隔が僅かに狭くなってしまう。しかしながら、該配置の利点は、モニタ431の動きを障害者用形態に統合する必要が無いことによって、構造上の単純さの点で実現されるであろう。
【0076】
図5aから
図5eは、第5実施形態を示す。この例では、各モニタ531は、やや後退角(swept-back angle)をなして収納されている。これは、当該列内における機首側シートユニット509の乗客のためのテーブル面529の使用可能面をやや減少させるものとなる(これに対応してシートユニット509の乗客が使用するオットマン526の上方に小さい部分的な面541を露出させてはいるが)。第5実施形態では、隣接する足受け構造523同士の間の最小幅は、13インチである。この最小幅は、端壁525及び側壁527の高さに沿って幅広く延びている。
【0077】
障害者用形態に移行させるため、先ず、各シート要素515a、b、cを中心軸521に沿って前方に平行移動させるだけでなく、足掛け515cもシートパン515b及びオットマン526の足支持面526’と同一平面をなすように展開する。このようにして、シートパン515b及び足掛け515cの両方が入口開放部533に近接している状態にする(
図5b参照)。次いで、アクセスが必要とされるシートユニット109の足受け構造523から端壁525を取り外して入口開放部533を広げる(例えば、
図5d参照)。
【0078】
図5d及び
図5eに示されるように、端壁525の取り外しにより、入口開放部533は、少なくとも20インチまで広がる(オットマン526の足支持面526’の上方における高さ位置で)。該障害者アクセス形態では、障害のある乗客は、端壁525の存在及びそれに伴う開放部533の幅の限界による制限を受けることなく、通路511から足支持面526’及び/又は足掛け515c、及びシートパン515bの上に移動することによってシートユニット509にアクセスできるようになる。
【0079】
乗客がシートユニット509にアクセスした後、足受け構造523の残りの部分に端壁525を再び取り付け、また、必要に応じてシートをシート形態(又はフラットベッド形態)に戻すことができる。また、外に出たいときは、逆の手順を実行しうる。
【0080】
第5実施形態は、障害者アクセス形態への変形が隣接する乗客に最小限の影響しか及ぼさない(例えば、彼らのシートユニット各部の如何なる移動も必要としないか、或いは、彼らの個人スペースに影響を与えない)ため、特に有利と思われる。
【0081】
図6aから
図6dは、第5実施形態の変形例である別の実施形態を示す。本実施形態では、モニタ631は、収納位置にあるとき、通路611に対して垂直になっている。シートユニット609を障害者アクセス形態に変形させるとき、モニタ631と入口開放部633の反対側にあるモニタ631との間の間隔が25.5インチ(
図6a)から30.5インチ(
図6d)まで広がるように前方に回転した通行位置(
図6b参照)にモニタ631を移動させる。これは、端壁625の取り外しと組み合わせて実現され、より広い入口開放部を提供するだけでなく、乗客がシートユニットにアクセスするときに上半身を動かせるより広いスペースを与えるものとなる(例えば、
図6c参照)。
【0082】
図6aから
図6dの実施形態は、第5実施形態の配置よりも大きなテーブル面629を提供するが(モニタ631の収納位置によるもの)、これは、シートユニット609を障害者アクセス形態に変形させる際に隣接する(機首側の)乗客にやや影響が生じることとのトレードオフである(モニタ631を通行位置に移動させる必要があることによる)。
【0083】
図7aから
図7dは、第5実施形態及び第6実施形態の変形例である別の実施形態を示す。本実施形態では、端壁725は、障害者アクセス形態において取り外されない。その代わり、端壁725を形成するパネルは、スライド可能に一組のレール728に取り付けられており、スライド動作の下で入口開放部から離れるように平行移動できるようになっている。
図7aは通路側からシートユニットの1つに向かって見た図であり、
図7bはシート側から通路に向かって見た図である。
図7a及び
図7bに健常者アクセス形態から障害者用形態への移動途中にあるユニットを示す。すなわち、シートが前方に移動され、足掛け715cが伸長されている(先の実施形態の
図6aによる)。
【0084】
図7c及び
図7dは、
図7a/
図7bと同様の説明図であるが、ユニットが障害者アクセス形態にあるときのものである。これらの図から、端壁725が片側に移動すると入口開放部が13インチから20インチに一時的に広がることが容易に分かる。
【0085】
健常者用形態に戻すために、端壁725のパネルは、次に動かす必要があるまで、スライドして戻され、ラッチ(図示せず)を使用して所定の位置で再解放可能にロックされる(例えば、乗客の出口を確保しておくため)。端壁(又は入口開放部を広げるために移動される他の構造物)が取り付けられたままの配置は、そうでないものと異なり、置き場所を間違えたり或いはつまずく原因になったりする客室内の留められていない物体の発生を回避できるため、有益であることは明らかである。
【0086】
本発明は、特定の実施形態を参照して説明し図示してきたが、本発明が本明細書において具体的に図示されていない多くの異なるバリエーションに対しても適用可能である点は、当業者であれば理解するであろう。次に、あくまでも一例として、いくつかの可能性のあるバリエーションについて説明する。
【0087】
第5及び第6実施形態における足受け構造の一部は、必ずしも完全に取り外し可能である必要はなく、一部の実施形態においては、取り付けられたままであってもよい。第7実施形態の構造の一部は、上記入口開放部を広げるために一時的な位置に移動されるにあたり、必ずしもスライド可能であったり、純粋に平行移動したりする必要はなく、他の方法で移動可能となっていてもよい。図示しない他の実施形態では、上記入口開放部を一時的に広げるために、上記足受け構造の異なる部位が移動可能であってもよい。
【0088】
本発明の実施形態は、大角度/狭間隔の配置に最も良く適用できる傾向があるが、正確な間隔、角度、及び幅の値については、上述の各実施形態を参照して説明した通りのものである必要はない。
【0089】
前述の説明において、既知の、明白な、或いは予測可能な同等物を有する完全体又はその構成要素が言及されている場合には、そのような同等物は、個々に記載されているものとして本明細書に含まれる。本発明の真の範囲を決定する特許請求の範囲を参照すべきであり、特許請求の範囲は、そのような如何なる同等物も包含するように解釈されるべきものである。好ましい、有利、好都合などと説明した本発明の完全体又は特徴は、任意事項であり、独立請求項の範囲を限定しないことは、読者において理解されるであろう。さらに、そのような任意事項の完全体又は特徴については、本発明の一部の実施形態では有益となりうる一方で他の実施形態では望ましいものではなく欠けたるものかもしれない、という点を理解されたい。