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  • 特許-ブレーキ制御弁装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】ブレーキ制御弁装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/94 20060101AFI20230220BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
B60T8/94
B60T17/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021513425
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2019074271
(87)【国際公開番号】W WO2020053302
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】18193590.9
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503159597
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア シーネンファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Schienenfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80,D-80809 Muenchen,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ナイジェル アンスティ
(72)【発明者】
【氏名】ベン ドリュット
(72)【発明者】
【氏名】マーク ヘミングス
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン ペアー
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0286583(US,A1)
【文献】特表2017-519678(JP,A)
【文献】国際公開第2013/144543(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 15/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非常制動を実現するように構成されたレール車両用の電空式のレールブレーキシステムであって、ブレーキ力を加えるためのブレーキシリンダを有し、前記レールブレーキシステムが、非常調整器弁(15)に流入する空気流を制御する非常電磁弁(19)を備え、前記非常調整器弁が、非常バックアップチャンバを有し、前記非常調整器弁(15)が、公称では応荷重圧に等しくかつ空車質量バックアップ設定よりも低くない出力圧を提供するように適合させられており、前記非常電磁弁(19)が、第1の電子制御ユニットによって制御され、該第1の電子制御ユニットが、ブレーキシリンダ圧を調整することができ、前記非常電磁弁が、通電されたときに閉鎖され、
前記レールブレーキシステムへの電力供給の損失が生じた場合には、制御チャンバの圧力を逃がし、前記電力供給の損失により前記非常電磁弁への通電が停止されると、前記非常バックアップチャンバに圧力を加えることが可能になり、前記第1の電子制御ユニットによるブレーキシリンダ圧の調整は、非常停止中に加えられる前記ブレーキシリンダ圧が所定のレベルを下回らないように、非常作用中に継続され、非常ブレーキ停止中に電力損失が生じた場合には、前記ブレーキシリンダに公称非常ブレーキ圧が加えられる、
電空式のレールブレーキシステム。
【請求項2】
前記レールブレーキシステムは、前記第1の電子制御ユニットによって前記ブレーキシリンダ圧が調整されている間に所定のレベルの非常ブレーキ力を提供するための第2の電子制御ユニットを備え、前記ブレーキシリンダ圧が前記公称非常ブレーキ圧の所定の量またはパーセンテージをいつ下回ったのかを検出するように適合させられた前記第2の電子制御ユニットによって、前記ブレーキシリンダ圧が独立して監視される、請求項1記載の電空式のレールブレーキシステム。
【請求項3】
前記第2の電子制御ユニットは、加えられる前記公称非常ブレーキ圧が、予め定義された上限を超えないことを確保するように適合させられている、請求項2記載の電空式のレールブレーキシステム。
【請求項4】
過少制動に対する防護が、非常ブレーキ作用中にのみ有効である、請求項1から3までのいずれか1項記載の電空式のレールブレーキシステム。
【請求項5】
過剰制動に対する防護が、非常ブレーキモードと常用ブレーキモードとの両方において有効である、請求項1から4までのいずれか1項記載の電空式のレールブレーキシステム。
【請求項6】
非常制動中に、前記第2の電子制御ユニットが、前記第1の電子制御ユニットによるブレーキシリンダ圧の調整を無効にし、公称非常圧レベルを前記ブレーキシリンダに加える、請求項2または3記載の電空式のレールブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両ブレーキシステムに用いられるレール車両用の電空式の(electropneumatic)ブレーキシステムに関し、詳細には、遠隔緩め機能および非常制動機能において使用するための吐き出し弁装置に関する。
【0002】
欧州特許出願公開第1588913号明細書および英国特許出願公開第2359599号明細書に開示されているような公知のシステムでは、車両(現在のその荷重も含む)の最大減速を支援するのに必要なブレーキ力が利用可能になるように、かつそのブレーキ力がブレーキシリンダに加えられて、完全に空気圧式の非常ブレーキ停止が実現可能になるように、利用可能な空気圧ブレーキ力が設定される。常用制動中には、実際のブレーキ要求(たとえば、選択されたブレーキ段階)や、他のブレーキサブシステム(たとえば、電動ブレーキまたは路面ブレーキ)によって提供されるブレーキ力に応じて、加えられるブレーキ圧(すなわち、ブレーキシリンダ内の圧力)が、利用可能な圧力より低いレベルに調整される。
【0003】
このシステムは、当該分野で実証済みであるが、ブレーキ作用中に生じることがあるブレーキパッドの摩擦のばらつきや、任意のボギー台車のブレーキを作動させて、ブレーキシステムの仕様から計算されたブレーキ力とは異なるブレーキ力を生じさせることがある何らかの機械的要因によって、影響を受ける。これらの機械的影響は、列車の過少制動と過剰制動との両方につながることがある。
【0004】
国際公開第2011/086029号では、通電が停止すると閉鎖されるという原理に基づき機能するソレノイドを備える非常ブレーキを有する鉄道車両のブレーキ装置であって、このソレノイドが、通常動作では通電され開放位置に保持されるブレーキ装置が開示されている。まだ市販されていないこのシステムは、同様の問題によって影響を受ける。
【0005】
本発明は、ブレーキ圧のより正確な制御を可能にして、その結果、限定しないが、特に非常制動中の過少制動または過剰制動の可能性を低下させるブレーキシステムを提供することを目的とする。
【0006】
本発明によれば、請求項1の特徴によるブレーキシステムが提供される。
【0007】
本発明の好ましい態様は、従属請求項に認めることができる。
【0008】
この概念は、有利には、ブレーキ作用中に生じることがあるブレーキパッドの摩擦のばらつきや、任意のボギー台車のブレーキを作動させて、ブレーキシステムの仕様から計算されたブレーキ力とは異なるブレーキ力を生じさせることがある何らかの機械的要因から影響を受けずに、所与のブレーキ段階に対して期待される車両減速率を実現する。
【0009】
ここで図面を参照しながら、本発明の例示的な実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ブレーキ弁装置の空気圧回路の概略図である。
図2】遠隔緩め弁17および関連する圧力コントローラの概略図である。
【0011】
空気圧ブレーキ(非常ブレーキと常用ブレーキの両方)の減速制御を可能にするには、ブレーキ作用中にブレーキ力を増大させて、ブレーキパッドを含むブレーキシステムの機械的構成要素によって引き起こされるブレーキ力の低下をオフセットできるようにするために、利用可能なブレーキ力を、ブレーキ計算から導かれたレベルより高いレベルに設定しなくてはならない。制御アルゴリズムに応じて、ブレーキ力の低下は列車全体に生じることもあれば、区分全体に生じることもある。同様に、ブレーキシステムの仕組みによって引き起こされる過剰制動に対抗するために、減速制御にはブレーキ力の低下ひいては加えられるブレーキ圧の低下が必要な場合もある。
【0012】
図1は、マニホールド1を備えるブレーキ弁装置の空気圧回路の概略図であり、このマニホールド1は、主ブレーキ供給圧2を受け、ブレーキシリンダ3,4への空気圧接続部を提供する。マニホールドは、選択的な外部荷重計量接続部5および分配器弁7からの更なる空気圧接続部を提供する。標準的な使用における荷重計量の入力は、1つまたは2つの補助変換器によって測定される。
【0013】
空気圧弁ユニット8は、ブレーキ供給圧2から入口圧を受ける主中継調整器9を収容している。主中継調整器9の出口は、構成モジュール14を介して制御弁12,13のそれぞれの入口10,11に接続されており、これについては以下でより詳細に説明する。
【0014】
主中継調整器9は、空車質量のバックアップ設定レベルを提供する非常調整器15およびクラッシュ調整器16からの圧力によってパイロット操作される。これらの調整器は、パイロット圧レベルを制限する。複式逆止弁18および非常調整器の出力が、主中継調整器9をパイロット操作する。空車質量のバックアップ設定は、応荷重制御圧(VLCP)の圧力が空車質量設定より小さい場合に、非常時において利用可能な最小圧である。クラッシュ調整器の設定レベルは、VLCP制御弁に対して利用可能な最大圧である。非常調整器15は、非常ブレーキループソレノイド19を介して、主供給圧2と主中継調整器9のパイロット入力とに接続される。
【0015】
クラッシュ調整器16は、主ブレーキ供給圧2から空気圧入力を受け、出口は入口および吐き出し弁装置に接続され、この吐き出し弁装置は、主中継調整器9の出口に接続される遠隔緩め弁17に対する実際の圧力を制御する。したがって、クラッシュ調整器は、遠隔緩め弁17を介して主中継調整器9に接続される。選択的な低計量接続部には、遠隔緩め弁17の入口に向かう経路が設けられる。複式逆止弁18が、遠隔緩め弁17と主中継調整器9との間の経路に設けられ、この複式逆止弁は、間接ブレーキ入力7にも空気圧接続されている。
【0016】
各制御弁12,13は、それぞれのソレノイドによって制御される入口および吐き出し膜弁と、吐き出し膜間で圧力を等化するように構成された更なるソレノイドとを備える。制御弁12および13の出口は、それぞれのブレーキシリンダに接続される。膜弁およびソレノイドを備えるリンク弁が、それぞれの制御弁12,13の出口間に空気圧接続部を提供する。
【0017】
上述したように、主中継調整器9の出口は、構成モジュール14に接続される。構成モジュール14には、主中継調整器9からそれぞれの入口膜の入口までの空気圧経路20,21に、それぞれのチョークが設けられる。入口膜の出口は、構成モジュール14のそれぞれのチョーク22,23を介して吐き出し膜に空気圧接続される。吐き出し膜は、構成モジュールを介してブレーキシリンダを真空にする。
【0018】
使用に際し、ブレーキの作用時間と吐き出し時間がチョーク穴のサイズによって特定され、このチョーク穴のサイズは、標準的なまたは所望の作用時間および緩め時間をブレーキシリンダの容積とは無関係に達成できるようにする。これにより、予測可能なブレーキシリンダの圧力制御および車輪滑走防護性能が確保される。
【0019】
本発明では、減速制御機能を提供するために、(マイクロコントローラによる)ブレーキシリンダ圧の調整が、非常作用中に継続される。しかし、非常停止中に加えられるブレーキシリンダ圧が最小レベルを下回らないこと、および非常ブレーキ停止中に電力損失が生じた場合に、公称非常ブレーキ圧(車両の現在の荷重に対して必要な非常減速を提供するものとしてブレーキ計算から特定された圧力; nominal emergency brake pressure)がブレーキシリンダに加えられることを、ブレーキコントローラが確保しなくてはならない。
【0020】
さらに、通常はSIL2であるマイクロコントローラによりブレーキシリンダ圧が調整されている間に、非常制動に関して理想的にはSIL3であるブレーキ弁装置が最小レベルの非常ブレーキ力を提供することを確保するために、ブレーキシリンダ圧は、電子機器または電子論理デバイス(FPGA)によって独立して監視され、この電子機器または電子論理デバイス(FPGA)は、公称非常ブレーキ圧の予め設定されたパーセンテージをブレーキシリンダ圧が下回る条件を検出することになる。
【0021】
同様にこの監視システムは、加えられるブレーキ圧が、予め定義された上限を超えないことを確保することもでき、これにより過剰制動防護が実現される。過少制動に対する防護は、非常ブレーキ作用中にのみ有効である。そうでなければ、ブレーキ解除および低いブレーキ段階が、常用ブレーキモードにおいて不可能になる。過剰制動に対する防護は、非常ブレーキモードと常用ブレーキモードとの両方において有効である。
【0022】
非常ブレーキモードでは、ブレーキシリンダを監視する電子機器または論理デバイスが、マイクロコントローラによるブレーキシリンダ圧の調整を無効にし(ひいては、ヘッドエンドデバイスによる制御も無効にし)、標準的な既知の非常ブレーキ作用と類似した方法で、公称非常圧レベルをブレーキシリンダに加える。
【0023】
常用ブレーキ動作では、ブレーキシリンダを監視する電子機器または論理デバイスが、(過剰圧力を検出すると)ブレーキシリンダ圧を放出するように動作する。これは、以下で説明する緩め機能との両立が可能である。
【0024】
WSPは、(ユニットに通電されていれば)非常ブレーキ作用中に動作を維持するので、被制御非常ブレーキが有効な間に、WSP動作を行うことが可能である。非常ブレーキ停止中に、車輪滑走を制御し、利用可能な粘着力を最適化するために、WSP制御作用は、被制御非常ブレーキ向けに規定された最小圧レベルよりブレーキシリンダ圧を低下させてよい。過少圧力が検出された場合に、機能がすぐに途切れるのを防止するために、監視電子機器が提供されてよい。この圧力低下が許容可能なとき、WSPシステムによってブレーキシリンダ圧を制御することにより、監視電子機器/論理デバイスが過少圧力トリップ(under-pressure trip)を強制することが防止される。監視電子機器/論理デバイスによって使用されるWSP作用は、弁の作動時点で検出され、それによりWSP制御による圧力の何らかの変調(保持または吐き出し)により、過少圧力トリップが無効になる。WSP動作自体は、信頼性の高い(SIL3)電子機器(または電子論理デバイス)によって監視されて、WSP制御によるブレーキシリンダ圧の低下が長引くことが防止される。これらの電子機器の動作は、低圧を維持するためのWSP動作により弁が継続的に駆動可能になるわけではないことを確保し、こうして監視電子機器/論理デバイスが、過少圧力状態に対して恒久的に作用できなくなるわけではないことを確保する。
【0025】
図2は、遠隔緩め弁17および関連する圧力コントローラの概略図を示す。遠隔緩め弁は、以下のポート接続部を有する。ポート1:圧力コントローラ、ポート2:中継弁制御チャンバ、ポート3:大気への接続。
【0026】
遠隔緩め弁17(ソレノイド)への通電が停止されると、ポート2がポート3に接続され、ポート1が遮断され、遠隔緩め弁17(ソレノイド)に通電されると、ポート1がポート2に接続され、ポート3が遮断される。図1の中継弁9に等しい空気圧中継弁は、制御入力と出力の比が1:1である。
【0027】
弁装置は、以下の機能を提供するかまたは可能にする。
【0028】
ブレーキ制御弁への電力供給の損失が生じた場合には、常用ブレーキが作用していれば、それを解除すべきであり、更なる作用は防止されるべきである。これは、ソレノイド弁17に通電されて、弁のポート2からポート1を介して制御チャンバがVLCP圧力コントローラに接続されているときに利用可能な電力を有する、正常な走行条件において達成される。中継弁は、常用ブレーキが制御するVLCPに等しい出力を提供する。
【0029】
電力の損失が生じた場合には、ソレノイド17は通電が断たれ、一時停止して、弁のポート2からポート3を介して、制御チャンバ圧が大気へ逃がされる。ここで中継弁は、出力圧を逃がしてゼロにし、ここで任意のブレーキシリンダの圧力は、常用ブレーキ制御膜を通って逆向きに供給されることになる。なぜなら、供給圧が除去された場合には、これらの常用ブレーキ制御膜が圧力を保持していないからである。したがって、ブレーキ解除が達成され、保持弁の膜に対する供給圧が除去されて、その後の常用ブレーキ作用が防止される。
【0030】
被制御非常制動が安全エンベロープを超える場合には、FPGAが被制御非常制動をオーバライドし、空気圧のみによって制御される荷重計量非常ブレーキをかけることになる。これは、常用ブレーキ(すなわち、保持弁を開放して吐き出し弁を閉鎖する)を無効にし、制御チャンバの吐き出し電磁弁17への通電を停止することによって、達成される。これにより、制御チャンバの圧力が、電磁弁のポート2からポート3を介して大気中に逃がされる。この圧力は、非常制動機能を有効にするために、荷重計量レベルの増強値に設定されてよい。増強値の例示的な値は、125%である。
【0031】
制御チャンバのダイアフラム有効領域は、制御チャンバ圧と出力圧との間で1:1の比を実現する。制御チャンバが吐き出されない場合には、ブレーキシリンダに向かう出力圧は、必要な荷重計量レベルの125%になり、すなわち25%の過剰ブレーキになる。
【0032】
非常ブレーキ作用の最初に、被制御非常制動が有効になり、通電されたときに閉鎖される非常電磁弁が一時停止して、非常バックアップチャンバに圧力を加えることが可能になる。圧力レベルは、非常調整器によって設定される。非常調整器は、公称では(nominally)応荷重圧VLCP(variable load control pressure)に等しくかつ空車質量のバックアップ設定(tare back-up setting)よりも低くない出力圧を提供するように設計される。
【0033】
非常バックアップチャンバのダイアフラム有効領域は、非常バックアップチャンバ圧と出力圧との間で0.8:1の比を実現し、この0.8は、荷重計量レベルの増強値の逆数である。しかし、ダイアフラム有効領域は、制御チャンバで1:1の比を有する。被制御非常ブレーキ中には、制御チャンバの圧力と非常バックアップチャンバの圧力は等しい。したがって、ダイアフラムパイル(diaphragm pile)に下向きの力が加えられることはない。
【0034】
FPGAが、被制御非常ブレーキをオーバライドし、制御チャンバからのVLCP圧を逃がすことを決定した場合には、ここで非常バックアップチャンバのダイアフラムの下側において、平衡状態を保つ力が除去される。
【0035】
制御チャンバの吐き出しソレノイドへの通電が停止すると、VLCP圧は閉じ込められる。これにより、非常バックアップチャンバの圧力を維持している非常調整器のための基準圧が、公称荷重計量レベルの125%であることが確保される。
【0036】
制御チャンバ圧が逃がされると、非常チャンバダイアフラムから加えられる力が、ここでダイアフラムパイルを介して有効になる。この力は、制御ダイアフラムの下側に作用しているブレーキシリンダ圧によって平衡になる。非常バックアップチャンバのダイアフラムとブレーキシリンダのダイアフラムの比が0.8:1.0であるので、これにより、ブレーキシリンダの出力圧が補正されて公称荷重計量値になり、すなわち1.25×0.8=1になる。
【0037】
ブレーキ制御弁内で「ブレーキ引き摺り」などの不具合が検出された場合には、常用ブレーキが作用していれば、その解除が有効にされ、更なる作用が防止される。この機能は、FPGAに対して外部から直接デジタル入力を行うことによって達成される。FPGAは、この信号を受信すると、ソレノイド17の駆動を妨げ、ソレノイド17は通電が停止される。
【0038】
ソレノイド17への通電が停止されると、制御チャンバが吐き出される。ここで中継弁は、出力圧を逃がしてゼロにし、ここで任意のブレーキシリンダの圧力は、常用ブレーキ制御膜を通って逆向きに供給されることになる。なぜなら、供給圧が除去された場合には、常用ブレーキ制御膜が圧力を保持できないからである。したがって、ブレーキ解除が達成され、膜に対する供給圧が除去されて、その後の常用ブレーキ作用が防止される。
【0039】
更なる動作モードにより、列車内の直接ブレーキの故障した車両または電力供給問題を有する車両を、救助機関車または復旧列車によって移動することが可能になる。
【0040】
制御チャンバ電磁弁17への通電が停止されると、制御チャンバが吐き出される。ここで中継弁は、出力圧を逃がしてゼロにし、ここで任意のブレーキシリンダの圧力は、常用ブレーキ制御膜を通って逆向きに供給され、ブレーキ解除が達成される。
【0041】
第1の間接ブレーキ圧を加えることにより、ここで複式逆止弁18が切り替わって、電磁弁(ポート2からポート3)を介して排気するためのルートが閉鎖され、間接ブレーキ入力ポートが制御チャンバに接続される。
【0042】
この動作モードでブレーキ解除を達成するために、非常ブレーキループ(EBL)19を高にしなくてはならない。EBLが低になると、結果的にブレーキシリンダに入る出力は、制御チャンバと非常バックアップチャンバとの2つのチャンバのうちどちらが最も高い力を提供するかに依存することになる。
図1
図2