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特許7230203テーパ付き金属製カップ及びその形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】テーパ付き金属製カップ及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/26 20060101AFI20230220BHJP
   B65D 21/02 20060101ALI20230220BHJP
   B21D 22/28 20060101ALI20230220BHJP
   A47G 19/23 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
B65D1/26 110
B65D21/02 410
B21D22/28 G ZAB
B21D22/28 E
A47G19/23
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021530957
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 US2019064905
(87)【国際公開番号】W WO2020123291
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】16/214,477
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501019620
【氏名又は名称】ボール コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】BALL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】スコット,アンソニー ジェイ
【審査官】二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0221936(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0189361(US,A1)
【文献】実開昭63-40327(JP,U)
【文献】中国実用新案第207956318(CN,U)
【文献】特開平1-150418(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0112100(US,A1)
【文献】特表2009-541066(JP,A)
【文献】特表平9-508086(JP,A)
【文献】特表2015-506842(JP,A)
【文献】特表2020-508874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/26
B65D 21/02
B21D 22/28
A47G 19/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺にカールを有する上端、下端、及びそれらの間に延びる高さと、
前記上端と前記下端の間に設けた複数のテーパ部と、
を備え、
前記各テーパ部の間に段差が設けられ、
前記各テーパ部は、ほぼ一定の壁厚を有するテーパ付きの外形を備え、
前記複数のテーパ部のうち、隣接するテーパ部が連続する小径を有し、前記各テーパ部の間に設けた段差が径を変化させ、
前記テーパ部は、薄肉のアルミニウムからなり、
前記下端は、ドーム壁厚を有するドーム部を備え、前記ドーム壁厚は前記ドーム部に隣接する前記テーパ部の壁厚より大きく、
前記ドーム部は、第1半径からなる第1凸状屈曲部に移行し、
前記第1凸状屈曲部は、内側に向かってテーパが付けられた側壁に移行し、前記側壁は、上端が下端よりも中心線に近くなるように、中央長手軸に向かって内方に延びる傾斜を有し、
前記側壁は、第2半径からなる第1凹状屈曲部に移行し、
前記第1凹状屈曲部は、第3半径からなる第2凸状屈曲部に移行する、
テーパ付き金属製カップ。
【請求項2】
前記第2半径は、0.05インチ(1.27ミリ)と0.2インチ(5.08ミリ)の間の半径を有する、請求項1に記載のテーパ付き金属製カップ。
【請求項3】
前記高さは、約4.0インチ(101.6ミリ)から約7.0インチ(177.8ミリ)の間である、請求項1に記載のテーパ付き金属製カップ。
【請求項4】
少なくとも3つのテーパ部を備える、請求項1に記載のテーパ付き金属製カップ。
【請求項5】
最大内径が少なくとも約3.0インチ(76.2ミリ)である、請求項1に記載のテーパ付き金属製カップ。
【請求項6】
最小内径が約2.50インチ(63.5ミリ)以下である、請求項1に記載のテーパ付き金属製カップ。
【請求項7】
複数のテーパ部の最小肉厚が約0.0070インチ(0.18ミリ)以下である、請求項1に記載のテーパ付き金属製カップ。
【請求項8】
前記下端は、環状の起立面からなり、前記ドーム部は、環状の起立面に設けられている、請求項1に記載のテーパ付き金属製カップ。
【請求項9】
積み重ねることができるように適合された幾何学的外形を有するテーパ付き金属製カップであって、
上端と下端、及び上端と下端の間に延びる高さと、
前記上端と前記下端の間に設けた複数のテーパ部と、
を備え、
前記各テーパ部は、ほぼ一定の壁厚を有するテーパ付きの外形を備え、
前記複数のテーパ部のうち、隣接するテーパ部は、連続する小径を有し、
前記下端は、複数の変曲点を有する積み重ね機能を備え、前記積み重ね機能は、前記下端のドームに隣接して配置され、そこから上方に延びる内側にテーパの付いた側壁を有する第1半径を有する第1凸状屈曲部と、第2半径を有する第1凹状屈曲部と、第3半径を有する第2凸状屈曲部と、を備え、前記第1凹状屈曲部と前記第2凸状屈曲部との間に延びるほぼ水平方向の段差を有し、
前記ドームは、強度を向上するために、隣接する前記テーパ部より大きな壁厚を有し、
ある金属製カップの前記第1凸状屈曲部が、第2の金属製カップの前記第1凹状屈曲部の凸状の内面上に位置するように動作可能であり、金属製カップが積み重ねられたときに、上端及び下端の少なくとも一方が垂直方向に間隔を空ける、テーパ付き金属製カップ。
【請求項10】
前記第1半径は約0.05インチ(1.27ミリ)と0.20インチ(5.08ミリ)の間である、請求項9に記載のテーパ付き金属製カップ。
【請求項11】
前記第1凸状屈曲部は内側に向かってテーパが付けられた側壁に移行し、前記内側に向かってテーパが付けられた側壁は第1凹状屈曲部に移行し、前記第1凹状屈曲部は前記第2凸状屈曲部に移行する、請求項9に記載のテーパ付き金属製カップ。
【請求項12】
前記第2半径は、約0.050インチ(1.27ミリ)から0.20インチ(5.08ミリ)の間である、請求項9に記載のテーパ付き金属製カップ。
【請求項13】
前記高さは、約4.0インチ(101.6ミリ)から約7.0インチ(177.8ミリ)の間である、請求項9に記載のテーパ付き金属製カップ。
【請求項14】
前記下端は、第1半径部の下部に環状の起立面を備え、ドーム部は、環状の起立面に設けられている、請求項9に記載のテーパ付き金属製カップ。
【請求項15】
ストック材料を提供するステップと、
前記ストック材料からブランクを切断するステップと、
打ち抜き処理と引張処理を用いて、前記ブランクから少なくとも1つのカップを形成するステップと、
前記カップに再引張処理を施し、前記カップに所定の高さと壁厚を付与するステップと、
再引張作業の後、前記カップを第2の高さにトリミングするステップと、
トリミングされたカップの上端をカールさせてリップを形成するステップと、
前記カップの引張加工により、カップ内に1以上の直線壁部を形成するステップと、
テーパ状の外形を有する1以上のダイを使用して、1以上の直線壁部のそれぞれを拡張するステップと、
前記カップの底部にドームを形成するステップと、
前記カップの下部が内向きのテーパ又は傾斜で構成されるように、カップの底部に圧縮力を付与することにより、カップの底部に積み重ね機能を形成するステップと、
を備える、積み重ね可能なテーパ付き金属製カップを形成する方法。
【請求項16】
前記ストック材料はアルミニウムコイルを含み、少なくとも1つのカップを形成するステップは、アルミニウムコイルの少なくとも一部に打ち抜き処理及び引張処理を施す、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カップの少なくとも内部にコーティングを施すステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記金属製カップの内表面及び外表面の少なくとも一方を装飾又はコーティングするステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記上端をカールさせるステップは、1以上の直線壁部を形成するステップの前に行う、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ストック材料は、プレコートされたアルミニウムシートを備えることにより、前記カップの形成に追加の洗浄及びコーティングステップの必要性を低減する、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、金属製カップ及びその形成方法に関するものである。より具体的には、本開示は、金属から形成された飲料カップに関するものである。本開示の様々な実施形態は、同様な構造のカップと積み重ねることができる薄肉の飲料カップを提供する。
【背景技術】
【0002】
一般に、既存の使い捨ての飲料カップ及び飲料容器は、プラスチック材料からなる。プラスチックカップは、射出成形又は熱成形処理で製造される。これにより、多くの軽量で使い捨てのカップが形成される。通常、既存の金属製飲料容器は、充填された缶の上端に固定された閉鎖部を含む飲料缶からなる。
【0003】
ダージンらに対する米国特許第4366696号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、入れ子式の缶、及びブランクからこの缶を形成する方法を開示する。しかしながら、ダージンらは、例えば、本明細書に図示され、記載されるテーパ付き又は階段状の幾何学的形状及びそれを形成する方法を含む本開示の様々な特徴については開示していない。
【0004】
ブルソらに対する米国特許第4914937号は、テーパ付き容器を形成する方法を開示し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ブルソらは、直線的壁面のカップ及びその形成方法を提供するが、本開示の様々な教示を欠いている。
【0005】
エノキらに対する米国特許第6463776号は、ネック部とショルダー部を有するボトル型缶の製造方法を開示し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。エノキらは、本開示の様々な特徴及び方法を開示していない。例えば、エノキらは、テーパの付いた直線状の側壁を有するカップ状の容器を提供していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4366696号
【文献】米国特許第4914937号
【文献】米国特許第6463776号
【発明の概要】
【0007】
このため、再利用やリサイクルが可能な金属製カップを提供することが長年の課題となっていた。また、複数のカップの出荷や保管を容易にするために、積み重ね可能なテーパ付き金属製カップを提供することも必要とされてきた。
【0008】
様々な実施形態において、浅い壁角を備えたテーパ付き金属製カップが提供される。浅い壁角は、少なくとも本明細書で使用されるように、カップに垂直な中心線すなわち垂直軸から測定して10度未満の壁角を備える。本明細書に図示され、記載されるようなカップの角張った側面及び浅い壁角は、少なくとも2つのカップの積み重ねを可能にし、出荷及び保管のための利点を提供する。
【0009】
様々な実施形態において、薄肉のアルミニウムを含む金属製カップが提供される。好ましくは、リサイクルされたアルミニウム合金を含む金属製カップが提供される。薄肉のアルミニウムからなるものを含む様々な実施形態は、軽量で、リサイクル及び/又はリサイクル可能な材料で形成され、例えば従来のプラスチックカップよりも剛性が高く、有用であり、耐久性のあるカップを提供する。
【0010】
好ましい実施形態では、金属製カップは、カップの少なくとも一部に沿う一定の壁厚を備える。カップの入口ゲージは、カップの側壁でより薄い壁厚に減少する。水平方向に伸びる段差やリブは、カップの全周に渡って設けるのが好ましく、カップの軽量性を維持しつつ、完成したカップに強度を持たせるために設けられる。段差やリブは、異なる直径を持つ完成したカップのセクション間の移行点として設けられている。また、リブのないテーパ付きカップもある。この場合、カップはテーパ付きカップの上端から閉鎖した下端まで、比較的滑らかで直線的な側壁を備える。
【0011】
様々な実施形態において、金属製カップを形成する方法が提供される。一実施形態では、金属製カップを形成する方法は、アルミニウムコイルをカッピングプレスに供給するステップと、アルミニウムコイルから切断されたほぼ円形のブランクから直線的壁面のカップを製造するステップとを備える。カップは、アルミニウムの入口ゲージとほぼ等しい一定の壁厚を有するのが好ましい。その後、カップを、金属がしごき加工される本体形成部に供給する。さらに、カップを洗浄し、カップの外側と内側に装飾やコーティングを施すことにより、カップが形成される。カップの外側の少なくとも一部には、色やロゴなどの視覚情報が施される。洗浄とコーティングの後、カップの上端をカールさせたり、部分的にカールさせたり、絞りをかけたりして、プレスで形成された鋭利な角をなくす。その後、カップを径方向に引っ張り、複数の直線壁部を形成する。各直線壁部は、テーパ付き金型を使用して、より大きな直径に拡張する。最後に、カップの底壁にボトムドームを設け、カップの構造的安定性を高める。このように、金属製カップの底部にドームを設けることで、強度と積載性を向上させることができる。しかしながら、「ドーム」という用語は、任意特定の幾何学的形状に限定されるものではなく、円錐状及び円錐台状の「ドーム」部材を含むものとして認識されなければならない。本開示は、カップの中央底部を、カップの起立面上に垂直に配置することを企図している。
【0012】
別の実施形態では、本体形成ステップを排除し、カップ状とした後の複数の再引張ステップを優先する方法が提供されている。この場合、カップは容器全体で一定の壁厚を維持する。
【0013】
一実施形態では、テーパ付き金属製カップを形成する方法が提供される。この方法は、ストック金属材料を提供するステップと、打ち抜き及び引張処理を施して少なくとも1つのカップを形成するステップと、カップに再引張処理を施してカップを所定の高さ及び壁厚とするステップと、再引張処理に続いて、カップを第2の高さにトリミングするステップと、トリミングされたカップの上端をカールさせてリップを形成するステップと、カップを引っ張ることにより、カップ内に1以上の直線壁部を形成するステップと、1以上の直線壁部のそれぞれを、テーパ形状を有する1以上のダイを用いて拡張するステップと、カップの底部にドームを形成するステップと、を備える。
【0014】
別の実施形態では、テーパ付き金属製カップを形成する方法が提供される。この方法は、金属製のストック材料を提供するステップと、ストック材料から少なくとも1つの円筒形のプリフォームを形成するステップと、円筒形のプリフォームを第2の高さにトリミングするステップと、トリミングされた円筒形のプリフォームの上端をカールさせてリップを形成するステップと、円筒形のプリフォームを絞り加工して1以上の直線壁部を設け、テーパ形状の1以上のダイを用いて1以上の直線壁部を大径に拡大し、カップの底部にドームを形成することでカップを形成するステップと、を備える。
【0015】
一実施形態では、テーパ付き金属製カップが提供される。テーパ付き金属製カップは、上端と下端と、上端と下端の間に延びる高さとを備える。上端は、カールした、部分的にカールした、又は絞り込まれたリップと、開口とを備える。上端と下端の間には、複数のテーパ部が設けられ、各テーパ部の間には段差が設けられている。各テーパ部は、ほぼ一定の壁厚とテーパ付きの外形で構成されている。複数のテーパ部のうち、隣接するテーパ部は、順次小径となり、各テーパ部の間に設けた段差は径が変化している。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示の容器及びカップは、カップを積み重ねることを可能にし、積み重ねたカップを分離する容易さを向上させる形状、幾何学的構造、又は外形を備える。具体的には、特定の実施形態では、カップの少なくとも下部は、本明細書に図示され、記載されているような外形からなり、積み重ねられたカップの分離を阻止又は妨げやすい真空又は吸引力を低減又は防止する。
【0017】
本開示の実施形態は、金属製カップを形成するための方法及びシステムを提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも積層されたカップが引き離されるときに、積層されたカップの間に付与される真空力、吸引力、及び摩擦力のうちの少なくとも1つを低減する機能又は形状を有するカップを形成するための方法及び関連する金型が提供される。
【0018】
いくつかの実施形態では、本開示の固着防止機能は、隣接するカップが入れ子になっているか、又は積み重ねられている場合でも、隣接するカップのカールの間に隙間を提供するか、又は分離することを可能にするカップの幾何学的構造及び外形を提供する。これにより、隣接するカップが互いに付着するのをほぼ防ぐことができる。ある実施形態では、積み重ねられたカップの隣接するカールには、隣接するカップが完全に入れ子になっている(すなわち、1つのカップが隣接するカップに完全に挿入されている)場合でも、少なくとも約0.20インチ(5.08ミリメートル(以下、単に「ミリ」)と記載する。)の隙間が設けられる。
【0019】
カップの下端は、ドーム部、第1半径部、内側テーパ付き側壁、第2半径部、及び第3半径部を備える。第1及び第3半径部は、凸状の特徴を備え、第2半径部は、第1及び第3半径部の間に設けられている。
【0020】
一実施形態では、上端、下端、及び上端と下端の間に延びる高さを備えるテーパ付き金属製カップが提供される。上端はカールを備え、上端と下端の間には複数のテーパ部が設けられ、各テーパ部の間には段差が設けられている。各テーパ部は、ほぼ一定の肉厚とテーパ付きの外形を備える。複数のテーパ部のうち、隣接するテーパ部は、連続する小径を備え、各テーパ部の間に設けた段差は径が変化している。
【0021】
一実施形態では、上端と下端、及び上端と下端の間に延びる高さからなるテーパ付き金属製カップが提供される。上端と下端の間には、複数のテーパ部が設けられている。各テーパ部は、ほぼ一定の壁厚とテーパ付きの外形を備える。複数のテーパ部のうち、隣接するテーパ部は、連続する小径である。カップの下端は、複数の変曲点を有する積み重ねの特徴を備える。積み重ねの特徴は、第1半径部、内側にテーパの付いた側壁、第2半径部、及び第3半径部を備える。第1半径部と第3半径部は、凸状の特徴を備え、第2半径部は、第1半径部と第3半径部の間に設けられている。
【0022】
一実施形態では、テーパ付き金属製カップを形成する方法が提供される。この方法は、ストック材料を提供するステップと、打ち抜き及び引張処理を行って少なくとも1つのカップを形成するステップと、所定の高さ及び壁厚を形成するためにカップに再引張処理を行うステップと、再引張処理に続いて、カップを第2の高さにトリミングするステップと、トリミングされたカップの上端をカールしてリップを形成するステップと、カップを引っ張ることによりカップに1又は複数の直線壁部を形成するステップと、1又は複数の直線壁部を、テーパ形状を有する1又は複数のダイを使用して拡張するステップと、カップの底部にドームを形成するステップと、カップの下部が内向きのテーパ又はスロープで構成されるように、ドームの半径方向外側でカップの底部に圧縮力を付与することにより、カップの底部にスティッキング防止機能を形成するステップと、を備える。
【0023】
一実施形態では、コイルをカッピングプレスに送り込み、材料の一部をカップ状に打ち抜いて引っ張る初期ステップを備える、テーパ付き金属製カップを形成する方法が提供される。続いて、カップに絞り加工、アイロン加工、トリミング、洗浄、乾燥、装飾、オーバーニス、内部コーティング、ボトムスプレーの少なくとも1つを施す。その後、カップの上端又はリップにカールを形成する。次に、少なくとも1つの、好ましくは複数の引張ステージを実行し、カップをより大きな高さに引っ張り、引張ステージの少なくとも1つで容器を狭める。絞り段階の少なくとも1つに続いて、カップの幅及び直径を所望の量に拡張するために、(例えば)拡張ダイによって少なくとも1つの拡張ステップを実行する。最終ステップは、カップの底部に逆テーパを形成する逆テーパステップで構成され、積み重ねられた配置で提供されたときにカップが入れ子又は積み重ねとなるのを防止又は低減する積み重ね防止機能を形成することが企図されている。この最終ステップは、オプションステップとして考えられているが、隣接する積み重ねたカップを抽出又は分離するのが容易になる。
【0024】
本発明の概要は、本開示の全範囲を代表することを意図したものではなく、またそのように解釈されるべきでもない。本開示は、概要、添付図面、及び詳細な説明に様々なレベルで記載されており、本開示の範囲に関するいかなる制限も、この概要に要素、構成要素などを含めること、又は含めないことのいずれかも意図していない。本開示の追加的な態様は、詳細な説明から、特に図面と共に、より容易に明らかとなる。
【0025】
当業者であれば、以下の説明は、本開示の原理を単に例示するものであり、この原理は、多くの異なる代替的な実施形態を提供するために様々な方法で適用することができることが理解されるであろう。この説明は、本開示の教示の一般的な原理を説明するためになされたものであり、本明細書に開示された発明的概念を限定することを意味しない。
【0026】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本開示の実施形態を示し、上記で与えられた本開示の一般的な説明及び以下で与えられた図面の詳細な説明とともに、本開示の原理を説明する役割を果たす。
【0027】
図面は必ずしも縮尺通りではない。特定の例では、本開示の理解に必要ではない詳細、又は他の詳細の認識を困難にする詳細が省略されている場合がある。勿論、本開示は、本明細書に例示されている特定の実施形態に必ずしも限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本開示の一実施形態に係る、形成の一段階にある容器本体の正面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る、形成の一段階にある容器本体の正面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る金属製容器の正面図である。
図4】本開示の一実施形態に係る積み重ね可能な金属製容器の正面図である。
図5図4の実施形態に係る容器のA-A線断面図である。
図6図4の実施形態に係る容器の平面図である。
図7】本開示の一実施形態に従って積み重ねられた複数の容器の一部を示す詳細正面図である。
図8】本開示の一実施形態に係る容器の一部の詳細正面図である。
図9図4の実施形態に係る容器の一部分の詳細正面図である。
図10】本開示の一実施形態に係る、金属製カップを形成する方法を示すフローチャートである。
図11】本開示の1つの実施形態に係る金属製カップを形成する方法を示すフローチャートである。
図12】本開示の一実施形態に係る金属製カップを形成する方法を示すフローチャートである。
図13】本開示の一実施形態に係る金属製カップを形成する方法を示すフローチャートである。
図14】本開示の一実施形態に係る金属製カップを形成する方法を示すフローチャートである。
図15A】本開示の一実施形態に係るカップの正面断面図である。
図15B図15Aのカップの下側部分の詳細図である。
図16A】本開示の代替的な実施形態に係るカップの正面断面図である。
図16B図16Aのカップの下側部分の詳細図である。
図17】積み重ねた又は入れ子式の配置で提供される複数のカップの断面図である。
図18】本開示の一実施形態に係る金型の断面図である。
図19図18の実施形態の金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、直線壁プリフォーム2の正面図である。このプリフォーム2は、本開示の一実施形態に係る金属製カップの初期形成段階を表す。直線壁プリフォーム2は、所定量の金属(例えばアルミニウム)をカッピングプレスに供給し、金属材料のコイルから切り出されたブランクシートから予備成形されたカップを加工することによって形成されるのが好ましい。その結果、得られる直線壁に成形されたカップは、カッピングプレスに投入された金属のゲージにほぼ等しい一定の肉厚からなるのが好ましい。この予備成形されたカップは、本体形成部に送られ、金属がプレス加工される。結果として得られる直線壁プリフォーム2は、ベースが金属の入口ゲージにほぼ等しい厚さの側壁からなり、いくつかの実施形態では、側壁は薄肉部と厚肉部からなる。いくつかの実施形態では、薄肉部は設けられていない。直線壁プリフォーム2は、大略、カップを形成するパンチの直径に一致し、ほぼ等しい初期直径Diを備える。様々な実施形態において、初期直径Diは、約2.0インチ(50.8ミリ)から約6.0インチ(152.4ミリ)の間である。好ましい実施形態では、初期直径Diは、約3.0インチ(76.2ミリ)から4.0インチ(101.6ミリ)の間であり、より好ましくは、約3.290インチ(83.6ミリ)である。
【0030】
直線壁プリフォーム2は、約3.0から10.0インチ(76.2から254ミリ)の間の高さH1を備える。好ましい実施形態では、プリフォーム2の高さH1は、約3.5~5.5インチ(88.9~139.7ミリ)、より好ましくは約4.463インチ(113.4ミリ)である。プリフォームの底部は、カップを形成するために使用されるパンチの形状及び接触に起因する曲率半径を備える。この半径Rは、約0.025インチ(0.635ミリ)から約0.250インチ(6.35ミリ)の間で、好ましくは約0.059インチ(1.50ミリ)である。
【0031】
図2は、形成の次の段階にあるカールしたプリフォームカップ4の正面図である。図2のカールしたプリフォーム4は、図1の薄肉のプリフォーム2を備え、カップの上縁又はリップにカール6が設けられている。カール6は、鋭利なエッジをなくし、剛性を高め、金型から取り外すための手段を提供するために設けられている。図2に示すように、カールしたプリフォームカップ4は、図1のプリフォーム2と比較して高さが削減されている。具体的には、図2のカールしたプリフォームカップ4は、約4.5から5.5インチ(114.3から139.7ミリ)、好ましくは約4.947インチ(125.7ミリ)の高さH2を備える。
【0032】
カール6の形成の前又は後に、プリフォーム4を洗浄し、コーティングし、及び/又は装飾してもよい。プリフォームの内側及び外側の少なくとも一方が、エポキシ樹脂及び/又は当業者に分かる他の材料でコーティングすることを意図している。カップは、アルミニウムを酸化から保護し、カップの内容物によるアルミニウムの腐食を防止するためにコーティングされる。さらに、カップの内側及び/又は外側に、塗装又は他の装飾的な処理を施すことも意図している。
【0033】
ストレートドローンカップ8は、図3に示すように、複数のセクション10a、10b、10c、10d、10eを備え、各セクションは、連続する、小径で高さが相違する直線壁セクションを備える。図3は、本開示の他の図と同様に、寸法が提供されている。これらの寸法は、例示としてのみ提供されており、特定の実施形態によるカップ及び特徴を示している。本開示の装置、発明及び特徴は、図面に提供された寸法に限定されず、様々な修正及び比率を意図することが明示的に認識される。図3のストレートドローンカップ8は、本開示のカップの形成プロセスの中間段階を構成する。
【0034】
図3は、本開示の一実施形態に係る、図2のカールされたプリフォームカップ4から形成された、トレートドローンカップ8の正面図である。図示されるように、ストレートドローンカップ8は、カップの上端又はリップにカール6を備える。
【0035】
図3に示すように、ストレートドローンカップ8は、複数のセクション10からなり、各セクション10は、ストレートドローンカップ8の上端から下端に向かって連続的な小径を備え、最上部のセクション10aが最大の直径を備え、最下部のセクション10eが最小の直径を備える。セクションは、高さが変化し、相対的な高さは、10c>10d>10b>10e>10aを満足する。図3に示すように、ストレートドローンカップ8は、5つのセクションと4つのリブを備える。セクションとリブの数は、消費者の要求に応じて変更してもよい。セクションの高さも、消費者の要求に応じて変更してもよい。
【0036】
図4及び図5は、本開示の一実施形態に係る完成した金属製のテーパ付きカップ20を示す。テーパ付きカップ20は、好ましくは、テーパ付きの外形を有するダイ(図示せず)を用いて、図3のストレートドローンカップ8から各直線壁部10を(図3に示すものと比較して)より大きな直径に拡張することにより形成される。
【0037】
図4にさらに示すように、完成したテーパ付きカップ20は、H2よりも大きい最終的な高さH3まで拡張される。具体的には、完成したテーパ付きカップ20は、約4.5から6.50インチ(114.3から165.1ミリ)、好ましくは約5.330インチ(135.4ミリ)の高さH3を備える。最終的な高さH3は、最終成形工程中に拡張ダイによって形成される。テーパ付きカップ20の上端には、閉鎖部、シール等のない開口部7が設けられている。開口部は、少なくとも一部がカール部6の周縁によって形成されている。カール部6は、飲用時にユーザの口が接触するユーザインタフェースの少なくとも一部を備える。
【0038】
図5は、図4に示す金属製の先細りカップ20のA-A線断面図である。図5に示すように、先細りカップ20は、複数の段付きセクション10a、10b、10c、10d、10eからなるテーパ付きの外形からなり、連続する各セクションは、段差22によってより小さな直径を備える。さらに、各セクションは、テーパ付き拡張ダイによって形成された角度付き又はテーパ付き側壁を備える。
【0039】
複数のセクション10の様々な内径が提供される。好ましい実施形態では、完成したテーパ付きカップ20は、10a>10b>10c>10d>10eを満足する相対的な直径からなる複数のセクション10を備える。特定の直径は、各セクション10の上部から測定され、図示されている。複数のセクション10は、様々な高さからなり、相対的な高さは10c>10d>10b>10e>10aを満足する。飲み口を構成するカール部6の内径は、約2.0~5.0インチ(50.8~127.0ミリ)、好ましくは約3.290インチ(83.6ミリ)である。図5に図示する詳細Y及びZは、図9及び図8にそれぞれ詳細に示されている。様々な拡張角度が図5に示され、各セクション10は、その高さに沿って外側に拡張する。図示されるように、各セクション10は、(セクションの高さに対する直径の割合として表される)異なる拡張角度を備える。しかし、代替的な実施形態では、各セクション10が同じ膨張角を備えることを意図している。図示された実施形態では、相対的な膨張角は10e>10b>10d>10cと表すことができる。図5に示される最上部のセクション10aは、膨張角を持たない直線壁のセクションを備える。
【0040】
図5の直線壁部は、カップを絞り、各部分に拡張又は増加した直径を与えることによって形成することを意図している。いくつかの実施形態では、各セクションは、引張を使用して形成され、引っ張られた各セクションの最初の形成に続いて、各セクションを拡張するために1以上の拡張ダイを設けることが考えられている。他の実施形態では、直線壁部の延伸及び拡大が、第1の部分が延伸された後に拡大され、第2の部分が延伸された後に拡大されるなど、交互に行うことが考えられている。また、引張及び拡大処理の数は、等しくなくてもよい。例えば、1回の引張処理で形成された部分に、複数の拡張ステップを施してもよい。さらに、ある部分が引っ張られ、それに対応する拡張処理が施されない場合もある。
【0041】
図6は、図4の実施形態に係る完成したテーパ付きカップ20の平面図である。複数の段差部10が平面図で示されており、テーパ付きカップ20の底部は、いくつかの実施形態ではドーム20を備える。
【0042】
図7は、積層配置された2つの完成したテーパ付きカップ20の詳細図であり、各テーパ付きカップ20の各カール部6には、分離又はスタンドオフ高さが設けられている。スタンドオフ高さは、カール部6の連続した上端の間の高さ又は距離を構成するように設けられている。図示された実施形態では、スタンドオフ高さは、約0.00インチ(0.00ミリ)から約1.0インチ(25.4ミリ)の間である。好ましくは、スタンドオフ高さは、約0.28インチ(7.1ミリ)である。スタンドオフ高さは、例えば、積み重ねたカップをユーザが把持して分離することを可能にする。様々な実施形態ではスタンドオフ高さが考慮されているが、そのようなスタンドオフ機能は必須ではなく、代替の実施形態ではそのようなスタンドオフを提供しないことが考えられている。
【0043】
図8は、カール部6を含むカップの上部を示す、完成したテーパ付きカップ20の正面詳細断面図である。図8は、図5のZの詳細図である。図8に示すように、カップのカール部6は、約0.010インチ(0.254ミリ)から約0.250インチ(6.35ミリ)の間の曲率半径を備える。図示された実施形態では、好ましい曲率半径は、約0.040インチ(1.02ミリ)である。図8はまた、テーパ付きカップ20の隣接するセクション10a、10bの間の段差22を提供する。図示されるように、段差は、約0.040インチ(1.02ミリ)の第1の曲率半径及び約0.040インチ(1.02ミリ)の第2の曲率半径からなり、2つの曲率半径はそれぞれ、セクション10a、10bの隣接する側壁からの移行又は離脱を含む。図8には1つの段差22のみが図示されているが、テーパ付きカップ20の各段差22は、図8に示す段差22と同じ寸法を備えて提供することが意図されている。段差22は、任意の寸法又は1以上の半径の組み合わせであってもよい。
【0044】
図9は、ドーム24を備えるテーパ付きカップ20の底部を示す、完成したテーパ付きカップ20の正面詳細断面図である。図9は、図5のYの詳細図である。図9は、本開示の一実施形態に係るテーパ付きカップ20の様々な寸法及び詳細を含む。図示されるように、テーパ付きカップ20は、プリフォーム20の下部にあるドーム24を備える。カップの底部10eは、約1.50から3.50インチ(38.1から88.9ミリ)の間、好ましくは約2.349インチ(59.7ミリ)の外径を備える。曲率半径R2は、底部10eとドームとの間の移行部として提供され、曲率半径R2は、約0.010インチ(0.254ミリ)から約0.250インチ(6.35ミリ)の間の半径を備える。好ましくは、曲率半径は、約0.10インチ(2.54ミリ)である。半径R2とドーム24との間には、平坦面30が設けられている。この平坦面30は、完成したプリフォーム20を支持する。平坦面30は、大略、約0.0010インチ(0.025ミリ)から0.125インチ(3.2ミリ)の間、好ましくは約0.084インチ(2.13ミリ)の幅を有する環状の表面からなる。平坦面30は、複数の曲率半径からなるドーム24内に延びている。ドーム24の中央部分は、約15.0インチ(381.0ミリ)の半径を備える。ドーム24は、図示のように平坦面30に移行する。ドーム24の寸法は異なっていてもよい。さらなる実施形態では、平坦面は設けられていない。
【0045】
図9に示すように、カップの底セクション10eは、約0.0090インチ(0.23ミリ)のゲージ又は壁厚を備え、隣接するセクション10dは、約0.0040インチ(0.10ミリ)のゲージ又は壁厚を備える。底セクション10eは、強化されたゲージのセクションを備える。したがって、底セクション10eは、カップが表面に置かれたとき、落とされたときなど、別の表面に接触することが、強化された耐久性を備える。特定の実施形態では、カップは、単一の金属の厚さからなる。
【0046】
図10は、本開示の一実施形態に係る金属製カップを形成する方法を示すフローチャートである。図示するように、図10の方法は、カップを形成する金属材料のコイルを提供する第1のステップ50を備える。ステップ50で提供されるコイルは、アルミニウムのストック材料のコイルを含むのが好ましい。コイルから切断されたブランクから少なくとも1つのカップが形成される第2のステップ52が提供される。カップは、打ち抜き及び引張処理を用いて形成されるのが好ましい。続いて、カップに少なくとも1回の再引張処理を行う再引張ステップ54が提供される。方法ステップ50、52及び54は、本開示の方法による更なる処理の準備が整った初期カップを提供する。
【0047】
再引張ステップ54で提供されたカップは、本明細書に図示されて説明されるように、さらに形成及び仕上げのステップが行われる。図10に図示された実施形態では、カップは、ステップ58で、カップの上部の開放端を切断すなわちトリミングして材料を除去するトリミング処理を受ける。そして、ステップ60で、カップの上部の切り取られた端部に、少なくとも1つのカール(例えば、図2の6参照)が設けられる。続いて、ステップ62を参照すると、少なくとも1つの段階的な引張処理が行われ、複数の直線的な壁部がカップに形成される(例えば、図3参照)。次に、ステップ64において、少なくとも1つの拡張処理によりカップが拡張される。いくつかの実施形態では、拡張ステップ64では、テーパ付きの外形を有する1以上のダイを用いて、各直線壁部をより大きな直径に拡張する。その後、ドーミング処理66が行われ、カップの底部にドームが設けられる。ドームは、カップの構造的完全性及び安定性を高めるために設けられる。本明細書に記載され、シーケンス56として参照される一連のステップは、設計、顧客の要求、及び/又は機械技術に応じて再順序付け又は排除されるステップを含む。少なくとも1つの実施形態では、図10に示すようにステップを実行することが企図されているが、56で示すステップの1又は複数が排除されるか、又は再順序付けされることもあり得る。
【0048】
図10に56として示されるシーケンスに続いて、カップは洗浄ステップ68が施される。洗浄後、カップは、ステップ70で装飾され、ステップ72でボトムコートが提供され、及び/又は、ステップ74で内部コーティング(「IC」)スプレーが提供される。図10の76で示す複数の方法ステップは、デザイン、顧客の要求、及び/又は機械技術に応じて、再順序付け又は排除される。例えば、顧客のニーズや要求に応じて、本方法は装飾ステップ70の後に終了してもよい。
【0049】
図11は、本開示の別の実施形態に係る金属製カップを形成する方法を示すフローチャートである。図示されるように、初期ステップ80が設けられ、被覆されたコイルがストック材料の形態で提供される。好ましくは、ステップ80のコイルは、被覆されたアルミニウムを備える。しかし、本開示の様々な実施形態は、様々な方法を用いて金属の表面に硬化、積層、又は押し出されたエポキシ、フィルム、ポリマー、又は他の「塗料」からなる「コーティングされた」コイルを提供することが考えられている。ステップ82では、コイルから少なくとも1つのカップが形成される。カップは、コイルから切断された材料のブランクシートと引張ダイから形成される。ステップ82で形成された初期カップは、ステップ84で少なくとも1回の再引張処理を受ける。初期カップが形成されると、プロセスはステップ88に進み、カップ上部の開放部分がトリミングされ、続いてステップ90でカールが付けられ、ステップ92で段階的な再引張処理が行われて少なくとも1つの直線壁部が形成され、ステップ94で直径が拡大され、ステップ96でドーミング操作により底部のドームが設けられる。図11のステップ88~96は、まとめてシーケンス86と呼ばれる。このシーケンス86のステップは、設計、顧客の要求、及び/又は機械に応じて、再順序付け又は排除される。
【0050】
図示されたシーケンス86の方法ステップに続いて、カップは、すすぎ又は洗浄処理100及び装飾ステップ102を受ける。図11では、洗浄および装飾は、カップが完成する最終シーケンス98として図示されている。しかしながら、シーケンス98は、再引張ステップ84に続いて、シーケンス86の前に提供することも考えられている。
【0051】
図12は、本開示の別の実施形態に係る金属製カップを形成する方法を示すフローチャートである。図12に示すように、複数の初期カップ形成ステップが設けられ、ここでコイル104が提供される。少なくとも1つのカップが、ステップ106において、好ましくは打ち抜き及び引張処理によって、コイル材料から形成される。いくつかの実施形態では、カップをさらに形成するために、再引張ステップ108が設けられる。最終的なカップの高さを形成するために、ステップ110で本体形成部が任意に使用される。
【0052】
次に、ステップ112でカップの上部がトリミングされる。その後、トリミングされたカップは洗浄処理114を受けるのが好ましい。洗浄に続いて装飾及び/又はコーティングシーケンス116が行われる。装飾シーケンスは、ステップ118でカップを装飾するステップ、ボトムコート120を施すステップ、及び/又はステップ122でカップに内部コーティングを施すステップを備える。コーティングシーケンス116の1以上のステップは、すすぎステップ132の後に再オーダー、排除、及び/又は移動してもよい。
【0053】
コーティングシーケンス116に続いて、最終形成ステップ124を設けるのが好ましい。最終形成ステップは、ステップ126でカップのトリミング部をカールするステップ、カップ内に1以上の直線壁部を形成するために少なくとも1つの段階的な引張処理128を施すステップ、及び直線壁部の直径を拡大するための拡張ステップ130のうちの少なくとも1つを備えるのが好ましい。最終形成ステップ124は、ユーザの要求に応じて順序を変更したり、なくしたりすることが考えられる。仕上げステップとして、すすぎステップ132が設けられている。しかし、前述のように、コーティングシーケンス116の1以上のステップは、すすぎステップ132の後に行うように再度順番を決めてもよい。図12の実施形態は、カップの底面部分にドームを設けることを企図している。ドーミング処理134が実行され、本体形成処理110の間に、又は最終的な別個の処理としてすすぎの前に実行される。
【0054】
図13は、本開示の別の実施形態に係る金属製カップを形成する方法を示すフローチャートである。図13に示すように、カップは、ステップ140で提供され、ブランクアルミニウムのコイルから形成されるのが好ましい。次いで、カップはステップ142で再度引っ張られ、1以上の再引張処理を受ける。その後、ステップ144でカップを本体形成部に供給し、最終的なカップの高さと直径に形成される。その後、ステップ146でカップがトリミングされ、再引張及び/又は本体形成処理で生じた過剰なカップの高さがトリミングされる。洗浄及び装飾シーケンス150が実行され、カップは、152での洗浄ステップ及び154での装飾ステップの少なくとも1つを施される。洗浄及び装飾シーケンス150のステップは、図13で提供される拡張ステップ162又はドーミングステップ164の後に移動してもよい。
【0055】
その後、カップは仕上げシーケンス156に進む。仕上げシーケンスは、ステップ158でカップのトリム部分にカールを施すステップと、段階的な引張処理160を実行するステップと、拡張処理162を実行するステップと、ステップ164でカップの底部にドームを設けるステップと、を備える。ドーミングステップ164は、図13の実施形態の最終ステップとして行うことが考えられているが、ドーミングステップは、ステップ144で本体形成部内にて行われ、膨張処理162を図13の実施形態の最終ステップとすることも考えられている。図13の仕上げシーケンス156のステップは、設計、顧客の要求、及び/又は機械技術に応じて、再度順番を決めたり、あるいは排除したりしてもよい。
【0056】
図14は、本開示の別の実施形態に係る金属製カップを形成する方法を示すフローチャートである。図14に示すように、カップは、ブランク材料のスラグから提供される。図示されるように、材料(例えばアルミニウム)のスラグを提供することを含む初期ステップ170がある。スラグは、ステップ172で衝撃押出されてカップが形成される。カップの上端は、ステップ174で好ましい高さにトリミングされ、その後、ステップ176及び178で磨き及び洗浄がそれぞれ行われる。いくつかの実施形態では、衝撃押出されたカップをプレスするステップが、衝撃押出(ステップ172)の後、トリミング(ステップ174)の前に設けられる。その後、洗浄されたカップ178が提供され、図示されるように、コーティング及び装飾シーケンス180を施される。図14のコーティング及び装飾シーケンス180は、カップ182を装飾するステップと、カップ184にボトムコートを施すステップと、カップ186に内部コーティング(例えば、スプレーコーティング)を施すステップとを備える。コーティング及び装飾シーケンス180のステップは、順序を変えてもよく、及び/又は、すすぎステップ198に続いて行うようにしてもよい。
【0057】
コーティング及び装飾シーケンス180の後、図14の方法は、ステップ190でカップの上部のトリミング部をカールさせるステップと、段階的な引張処理192を行うステップと、1以上の拡張ダイ194を使用して拡張操作を行うステップと、カップの底部にドーム196を形成するステップと、を含む仕上げシーケンス188に進む。仕上げシーケンスのステップは、ユーザの好み、デザイン、顧客の要求、及び/又は利用可能な機械技術に応じて、順序を変えたり削除したりすることができる。仕上げシーケンス188に続いて、カップはステップ198で洗浄され、及び/又はすすがれる。
【0058】
図15A及び図15Bは、本開示の一実施形態に係るカップを示す。図示されるように、カップ200は、複数の段差すなわちリブ202を有する回転対称の外形を備える。図15A及び図15Bの実施形態では、カップ200は、本開示の他の実施形態に係る固着防止機能を備えていない。したがって、図15A及び図15bの実施形態の複数のカップは、コンパクトな態様で積層又は入れ子にすることが可能である。しかし、1つのカップの底部の側壁204の外側と、第2の隣接するカップの側壁204の内側との間の密着及び入れ子を含むこのコンパクトな態様は、2つのカップの間の摩擦力及び/又は真空力のために、隣接するカップを分離することが困難になる可能性がある。図15Bは、図15Aの実施形態のカップの下部の詳細図である。
【0059】
図16A及び図16Bは、積層された隣接するカップの分離をユーザが容易に行うための特定の形状及び構造を有する底部212を備える、本開示の一実施形態に係る容器210を示す図である。図16Aは容器210の正面図である。この容器210は、段差すなわちリブ216によって分離された複数のテーパ部214を備える。底部212は、角度又はテーパが形成された部分と底部とからなる。
【0060】
図16Bは、図16Aの容器210の正面断面図である。より具体的には、容器210の底部212を明確にするために拡大している。図示されるように、底部212は、第1半径部224によって囲まれたドーム部226を備える。内側にテーパ付き側壁218が第2半径部220まで上向きに延び、第3半径部222が第2半径部220と先細り部214とを接続する。いくつかの実施形態では、第2半径部と第3半径部との間に直線壁部が設けられている。図16Bに示すように、第1及び第3半径部224、222は、凸状の屈曲部を備え、第2半径部220は、凹状の屈曲部を備える。さらに、内向きに傾斜した側壁部218は、外向きの斜面又は角度を備えたテーパ部214とは対照的に、内向きに(すなわち、下から上に向かって容器の中心軸に向かって)延びる斜面又は角度を備える。側壁部218は図16Bに示されているが、本開示の他の実施形態では、第1半径部224が第2半径部220に直接延びている。本開示の様々な実施形態は、第2半径部220が第1半径部224よりもカップの中心線に近い位置に設けられて、本明細書に示され記載されているスタンドオフ機能を提供する。カップは複数の変曲点を備え、ドームが第1半径部224に移行し、側壁218が第2半径部220に移行し、第2半径部が第3半径部222に移行する。
【0061】
様々な実施形態では、第1半径部224は、約0.050インチ(1.27ミリ)から0.20インチ(5.08ミリ)の間、好ましくは約0.100インチ(2.54ミリ)の半径を備える。様々な実施形態において、第2半径部220は、約0.050インチ(1.27ミリ)から0.20インチ(5.08ミリ)の間、好ましくは約0.100インチ(2.54ミリ)の半径を備える。様々な実施形態では、第3半径部222は、約0.030インチ(0.76ミリ)から0.20インチ(5.08ミリ)の間、好ましくは約0.060インチ(ミリ)の半径を備える。
【0062】
図16A及び図16Bに示す実施形態を含むがこれに限定されない様々な実施形態では、第3半径部222の凸状の曲率は、約0.040インチ(1.02ミリ)から0.060インチ(1.52ミリ)の間、好ましくは約0.050インチ(1.27ミリ)の曲率半径を備える。第2半径部220の凹状の曲率は、約0.050インチ(1.27ミリ)から1.00インチ(25.4ミリ)の間、好ましくは約0.080インチの曲率半径を備える。第2半径部220と第3半径部222との間には、ほぼ水平方向に向かう直線状の壁部が設けられている。
【0063】
図17は、積み重ねた配置で提供される複数の容器210a、210bの正面断面図である。図示されるように、容器210a、210bは、同様の構造及びサイズであり、図示されて本明細書に記載されるように、固着防止機能をそれぞれ備える(例えば、図16A及び図16B参照)。第1カップ210aの第1半径部224aは、第2カップ210bの第2半径部220bの内側に設けられている。第2カップ210bの第3半径部222bは、第1カップ210aから離れて外側に延び、2つのカップ210a、210bの間には、隙間230が設けられている。第1カップ210aの内向きテーパ部218と、第2カップ210bの外向きテーパ部214との間に隙間230が設けられている。さらに、カップ210a、210bの下部の構造には、各カップの上端に間隔を空けた、すなわち離れた高さ部225が設けられている。各カップの上端に設けたカールはそれぞれ間隔を空けて配置されている。これにより、入れ子になったカップや積み重ねられたカップをユーザが把持して容易に分離することができる。
【0064】
図18及び図19は、本開示の一実施形態に係る成形金型の正面断面図である。図示されるように、カップのドーム状の底面部分を受け入れるための空隙253を有するダイセンターパンチ252を備える金型250が設けられている。金型250はまた、再引張圧力パッド254と、再引張ダイ256と、再形成金型260とを備える。金属製カップ262が、形成金型に相対して示されている。再引張ダイ256は、成形動作中に空気を金型から逃がすための通気機能258を備える。
【0065】
図18は、カップの積み重ね防止機能を形成するための動作の初期位置又は開始位置にある金型250を示す。図18に示すように、カップ262はまだ、段状又は階段状の外形からなるが、本開示の積み重ね防止機能を備えていない。圧力パッド254及び再引張ダイ256が接触しており、カップ262は2つの構成要素の間で圧縮されている。内部ギャップ264は、カップ262の底部が外側に移動することを可能にするために設けられている。
【0066】
本明細書では、金属製カップの様々な特徴及び実施形態を提供してきた。しかしながら、様々な特徴は、必ずしも特定の実施形態に固有のものではなく、任意の1以上の実施形態として提供されてもよい。本開示及び本明細書で提供される実施形態は、相互に排他的なものではなく、組み合わせたり、置換したり、省略したりすることができる。したがって、本明細書で提供される発明の範囲は、任意の特定の実施形態、図面、又は特徴の特定の配置に限定されない。
【0067】
本開示の様々な実施形態を詳細に説明してきたが、それらの実施形態の改良及び変更を当業者が行えることは明らかである。しかしながら、そのような改良及び変更は、本開示の範囲及び精神の範囲内である。さらに、本明細書に記載された本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施されるか、又は実施することが可能である。さらに、本明細書で使用されている言い回しや用語は、説明のためのものであり、限定的なものとみなされるべきではない。本明細書での「含む」、「備える」、「加える」、及びその変形の使用は、以下に列挙された項目及びその等価物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。
【0068】
図19は、成形金型250と、成形位置にあるカップ262とを示す。図19に示すように、カップ262の底部には、積み重ね防止機能が設けられている。形成中、成形金型260は、(少なくとも図19に示すように)下方に移動して、カップ262の底部に接触する。成形金型260に設けた凹状の隙間266は、カップ262のドーム状領域の外側でカップ262の底部に接触し、底部を膨張させる。その結果、カップは、図19に示すような形状になり、カップ262の最下部が底部の残りの部分に対して外側に膨張し、カップ262は、例えば図16Bにさらに図示されて説明されるような内向きのテーパを備えることになる。カップの金属は、(図16Bの第1半径部224に対応する)底部で外向きに移動し、第2半径部(図16Bの220)の近傍で内向きに移動する。この移動の間、ドームホームは一定に維持されるのが好ましい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18
図19