(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】保冷庫の密閉構造および保冷庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/02 20060101AFI20230220BHJP
【FI】
F25D23/02 305Z
(21)【出願番号】P 2021542749
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(86)【国際出願番号】 JP2020030914
(87)【国際公開番号】W WO2021039444
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2019154911
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592031097
【氏名又は名称】PHC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津久井 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】森 栄市
(72)【発明者】
【氏名】土居 英二
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-098233(JP,A)
【文献】実公昭46-017423(JP,Y1)
【文献】実開昭50-147960(JP,U)
【文献】実開平03-087460(JP,U)
【文献】特許第6521665(JP,B2)
【文献】米国特許第02659115(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104534792(CN,A)
【文献】実開平06-086296(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0259244(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 3/04
E06B 7/18
F16J 15/10
F25D 23/00 - 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料で構成された磁性部を有する長尺部材と、
前記磁性部と互いに引き寄せ合うマグネットと、
前記マグネットを保持する保持部と、保冷室の密閉時に前記保持部よりも前記保冷室の内部側又は外部側で前記長尺部材に密着するシール部とを有し、前記長尺部材から離れる際に、前記マグネットの一部と前記長尺部材との距離よりも先に前記マグネットの他の一部と前記長尺部材との距離を大きくするパッキンと、
を備
え、
前記保持部は、前記マグネットと前記長尺部材との間に位置し、かつ、前記密閉時に前記長尺部材と当接することにより前記保持部及び前記マグネットを、前記長尺部材に対して前記マグネットの延在方向に平行な軸周りに傾斜させる突起を有し、
前記保持部は、前記密閉時に、前記長尺部材に対して傾斜した状態で前記長尺部材に密着する、
保冷庫の密閉構造。
【請求項2】
前記パッキンの断面形状は、前記内部側と前記外部側とで非対称な形状である、
請求項
1に記載の保冷庫の密閉構造。
【請求項3】
前記パッキンは、被取付対象物に取り付けられる部位である取付部と、前記マグネットと前記取付部との間に設けられ、前記取付部と前記保持部とをつなぐ接続部と、をさらに有する、
請求項
2に記載の保冷庫の密閉構造。
【請求項4】
前記接続部は、撓んだ形状を有する、
請求項
3に記載の保冷庫の密閉構造。
【請求項5】
前記被取付対象物は、引戸であり、
前記引戸の厚さ方向における前記マグネットの中心は、前記厚さ方向における前記引戸の中心を通り、かつ、前記引戸の移動方向に平行な線上に位置する、
請求項
3又は
4に記載の保冷庫の密閉構造。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の保冷庫の密閉構造を有する保冷庫。
【請求項7】
枠体と、
前記枠体に配置されている引戸と、
をさらに備え、
前記パッキンは、前記引戸に設けられ、
前記長尺部材は、前記枠体に設けられている、
請求項
6に記載の保冷庫。
【請求項8】
磁性材料で構成された磁性部を有する長尺部材と、
前記磁性部と互いに引き寄せ合うマグネットと、
前記マグネットを保持する保持部と、保冷室の密閉時に前記保持部よりも前記保冷室の内部側又は外部側で前記長尺部材に密着するシール部とを有し、前記長尺部材から離れる際に、前記マグネットの一部と前記長尺部材との距離よりも先に前記マグネットの他の一部と前記長尺部材との距離を大きくするパッキンと、
を備え
、
前記パッキンの断面形状は、前記内部側と前記外部側とで非対称な形状であり、
前記パッキンは、被取付対象物に取り付けられる部位である取付部と、前記マグネットと前記取付部との間に設けられ、前記取付部と前記保持部とをつなぐ接続部と、をさらに有し、
前記被取付対象物は、引戸であり、
前記引戸の厚さ方向における前記マグネットの中心は、前記厚さ方向における前記引戸の中心を通り、かつ、前記引戸の移動方向に平行な線上に位置する、
保冷庫の密閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保冷庫の密閉構造および保冷庫に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を低温環境で保存する保冷装置として、例えば、特許文献1に冷蔵用ショーケースが開示されている。特許文献1に開示されている冷蔵用ショーケースは、マグネットを保持するマグネットパッキンを有するガラス扉と、磁性体からなるプレートが取り付けられた本体枠材とを有しており、マグネットがプレートに吸着されることでスライド扉が密閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1におけるマグネットパッキンは、機能性の面で十分ではない。そのため、保冷装置の密閉構造の機能向上が求められている。
【0005】
本開示は、このような状況に鑑み、機能性が高い保冷庫の密閉構造およびその密閉構造を備える保冷庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る保冷庫の密閉構造は、磁性材料で構成された磁性部を有する長尺部材と、前記磁性部と互いに引き寄せ合うマグネットと、前記マグネットを保持する保持部と、保冷室の密閉時に前記保持部よりも前記保冷室の内部側又は外部側で前記長尺部材に密着するシール部とを有し、前記長尺部材から離れる際に、前記マグネットの一部と前記長尺部材との距離よりも先に前記マグネットの他の一部と前記長尺部材との距離を大きくするパッキンと、を備える。
上述のような保冷庫の密閉構造を実施する場合に、保持部は、マグネットと長尺部材との間に位置し、かつ、密閉時に長尺部材と当接することにより保持部及びマグネットを長尺部材に対して傾斜させる突起を有してもよい。
そして、保持部は、密閉時に、長尺部材に対して傾斜した状態で、長尺部材に密着する。
【0007】
本開示に係る保冷庫は、上述の保冷庫の密閉構造を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、機能性が高い保冷庫の密閉構造およびその密閉構造を備える保冷庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本開示に係る保冷庫の密閉構造を示す断面図であり、パッキンが長尺部材と接していない状態を示す図である。
【
図3】本開示に係る保冷庫の密閉構造を示す断面図であり、パッキンが長尺部材と密着している状態を示す図である。
【
図4A】本開示に係るパッキンの断面図であり、保冷庫の引戸に開方向の力が加えられる前の状態を示す図である。
【
図4B】本開示に係るパッキンの断面図であり、保冷庫の引戸に開方向の力が加えられた後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は一例であり、本開示はこの実施形態により限定されるものではない。
【0011】
まず、保冷庫1の構成について、
図1、および
図2を用いて説明する。
図1は、本開示に係る保冷庫1の斜視図である。
図1は、後述する引戸4、5が、全閉位置にある状態を示している。
図2は、本開示に係る保冷庫の密閉構造100を示す断面図であって、後述するパッキン50が長尺部材30と接していない状態を示す図である。ここでいう断面は、後述する引戸4の厚み方向および引戸4の開閉方向に沿う平面、つまり、水平面による断面のことである。なお、本実施形態における保冷庫1は、例えば、薬剤を保管しておく薬剤保冷庫である。また、本明細書において、使用時にユーザが正対する側(引戸4、5がある側)を保冷庫1の前側、その反対側を保冷庫1の後側とする。また、前側から視て左側及び右側を保冷庫1の左側及び右側とする。
【0012】
保冷庫1は、筐体2と、枠体3と、引戸4、5と、機械収容庫6と、を備える。
【0013】
筐体2の前面には開口Hが形成されている。筐体2の外周面と内周面との間には断熱材IMが充填されている。筐体2の内周面に囲まれた空間は、保冷室Rであり、対象物が収容される空間である。
【0014】
枠体3は、開口Hを取り囲むように筐体2に設けられている。枠体3は、上枠(不図示)、下枠32、および縦枠33を備えている。上枠および下枠32には、引戸4、5がそれぞれ配置される前側レールおよび後側レール(不図示)が設けられている。縦枠33の引戸4に対向する側にプレート部材34が配置されている。プレート部材34は、磁性材料で構成された磁性部である。なお、プレート部材34は、縦枠33の内部に埋め込まれていてもよいし、縦枠33と筐体2との間に配置されていてもよい。また、縦枠33は、プレート部材34とは異なる形状の磁性部を有していてもよい。本実施形態において、縦枠33およびプレート部材34によって長尺部材30が構成されている。なお、縦枠33そのものが磁性材料で構成された磁性部であってもよい。この場合、縦枠33が長尺部材30である。
【0015】
引戸4、5は、それぞれ前側レールおよび後側レール上を左右方向に移動可能である。引戸4および引戸5は互いに同様の構成を有するため、以下、引戸4の構成について説明し、引戸5の説明を省略する。なお、引戸4の開方向および閉方向は、それぞれ左方向および右方向に対応し、引戸5の開方向および閉方向は、それぞれ右方向および左方向に対応する。
【0016】
図2に示されているように、引戸4は、サッシ41、ガラス層42、および取っ手43から構成されている。サッシ41は、引戸4の閉方向側の面であってプレート部材34に対向する面に被取付部41aを有している。被取付部41aには、マグネットMを保持しているパッキン50が取り付けられている。
【0017】
サッシ41には、ガラス層42が嵌め込まれている。ガラス層42は、透明な複数枚のガラスで構成されている。取っ手43は、引戸4の開閉時に、保冷庫1のユーザが把持する部位である。
【0018】
機械収容庫6は、筐体2の下部に設けられている。機械収容庫6の内部空間は機械室である。機械室には、保冷室R内を冷却するための冷凍回路を構成する圧縮機および凝縮器などが配置されている。
【0019】
次に、保冷庫の密閉構造100について、
図2および
図3を用いて説明する。
図3は、本開示に係る保冷庫1の密閉構造100を示す断面図であって、パッキン50が長尺部材30と密着している状態を示す図である。密閉構造100は、長尺部材30、パッキン50、および、マグネットMで構成されている。
【0020】
パッキン50は、軟質樹脂材で構成されている。
【0021】
パッキン50は、引戸4の上端から下端にかけて上下方向に延在している。パッキン50の水平面による断面形状は、いずれの位置においても等しい。
図2に示されているように、パッキン50の形状は、前後方向の中心を挟んで、前後で非対称である。以下、保冷室Rの内部側を単に「内部側」、保冷室Rの外部側を単に「外部側」と称する。
【0022】
パッキン50は、マグネットMも含めて、前後方向の中心が、引戸4の前後方向の中心と、前後方向で同じ位置となるように配置されている。言い換えると、引戸4の前後方向(つまり、厚さ方向)におけるマグネットMの中心である点MOおよびパッキン50の中心である点POは、引戸4の前後方向における引戸4の中心であるDO点を通り、かつ、引戸4の開閉方向に平行な線CL上に位置する。このため、前後方向におけるパッキン50の寸法が、前後方向の引戸4の寸法よりも長かったとしても、パッキン50が引戸4に対して前後方向に飛び出す部分の長さを最小限にすることができる。すなわち、引戸4に対して、パッキン50は、前後方向に過度に飛び出さない。よって、パッキン50が取り付けられた引戸4を、枠体3に取り付ける作業が容易になる。
【0023】
なお、パッキン50のシール性および断熱性(これらの効果については後述する)を高めるために、パッキン50の前後方向の寸法をある程度大きくする必要が生じた場合も、マグネットMの中心(点MO)を線CL上に位置させておきさえすれば、引戸4に対するパッキン50の前後方向における飛び出し量を小さくすることができる。
【0024】
パッキン50は、保持部51、シール部52、取付部53、および接続部54を有する。
【0025】
保持部51には、挿入空間51aが形成されている。挿入空間51aには、マグネットMが挿入されている。保持部51の内周面によってマグネットMが挟み込まれることで、保持部51はマグネットMを保持する。マグネットMは、パッキン50の上端から下端にかけて上下方向に延在している。マグネットMは、プレート部材34と互いに引き寄せ合う。
【0026】
保持部51は、マグネットMとプレート部材34との間に位置する縦枠側部位510を有している。縦枠側部位510は、引戸4が全閉位置にあるときにプレート部材34に密着する。縦枠側部位510は、その中央部に、突起511を有する。突起511は、パッキン50の上端から下端にかけて上下方向に延在している。
【0027】
引戸4が全閉位置にあるとき、つまり、保冷室Rが密閉されているとき、突起511はプレート部材34に密着する。また、鉛直軸回りのいずれかの方向に、保持部51が傾く。その結果、縦枠側部位510の内部側端部または外部側端部のいずれかが、突起511とともにプレート部材34に密着する。
図3には、保持部51の内部側端部がプレート部材34に密着している状態が例示されている。
【0028】
引戸4が全閉位置にあるとき、保持部51とともにマグネットMも傾いているので、マグネットMの外部側の部位からプレート部材34までの距離と、マグネットMの内部側の部位からプレート部材34までの距離とに差が生じている。よって、
図3に示されている状態では、プレート部材34からマグネットMの外部側の部位に作用する引力が、プレート部材34からマグネットMの内部側の部位に作用する引力よりも弱い。
【0029】
シール部52は、保持部51および接続部54よりも外部側および内部側それぞれに位置する。外部側に位置するシール部52は、外部側で保持部51および取付部53と繋がっている。内部側に位置するシール部52は、内部側で保持部51および取付部53と繋がっている。なお、パッキン50は、外部側のシール部52と内部側のシール部52のいずれかのみを有していてもよい。
【0030】
引戸4が全閉位置にあるとき、保持部51が傾いているので、内部側および外部側のシール部52の一方が突き出し、他方が引っ込んだ状態になる。よって、内部側のシール部52および外部側のシール部52の一方は、プレート部材34に強く密着する。
図3には、内部側に位置するシール部52が、プレート部材34に密着している状態が示されている。
【0031】
取付部53は、被取付対象物である引戸4のサッシ41に取り付けられる部位である。
【0032】
接続部54は、マグネットMと取付部53との間に設けられている。接続部54は、保持部51および取付部53それぞれの外部側の部位同士を繋いでいる。このように、接続部54が、保持部51および取付部53を繋いでいるので、パッキン50には2つの断熱空間Sが形成されている。接続部54は、撓んだ形状を有している。接続部54の水平面による断面形状は、外部側に向けて突出するU字形状である。
【0033】
次に、保冷庫の密閉構造100の作用について、
図2、
図4Aおよび
図4Bを用いて説明する。
図4Aは、パッキン50の断面図であり、引戸4に開方向の力が加えられる前の状態を示す図である。
図4Bは、本開示に係るパッキン50の断面図であり、引戸4に開方向の力が加えられた後の状態を示す図である。
【0034】
図4Aに示されているように、引戸4が全閉位置に位置しているとき、パッキン50は、プレート部材34に密着している。引戸4のマグネットMとプレート部材34が引き合うことで、引戸4が全閉位置に保持される。
【0035】
マグネットMは、保持部51と同様、プレート部材34に対して傾いており、
図4Aでは、縦枠側部位510の内部側端部および内部側のシール部52がプレート部材34に密着している。
【0036】
保冷庫1のユーザが取っ手43に手をかけて、
図4Aの太矢印で示されている方向、つまり、開方向に力を加えると、引戸4が開方向に移動する。引戸4の移動に伴い、サッシ41の被取付部41aによってパッキン50の取付部53が開方向に引っ張られる。
【0037】
取付部53が引っ張られると、マグネットMとプレート部材34との吸着が維持されながら、パッキン50のシール部52および接続部54が弾性変形して左右方向に伸張する。その結果、保持部51と取付部53との距離が大きくなる。
【0038】
シール部52および接続部54が弾性変形しているとき、保持部51の外部側の部位が接続部54によって開方向に引っ張られる。つまり、保持部51の外部側の部位に接続部54による開方向の力が作用する。他方、保持部51の内部側の部位には、接続部54による開方向の力が作用しない。
【0039】
このように、保持部51の外部側の部位に作用する開方向の力、および、保持部51の内部側に作用する開方向の力の大きさに差が生じると、マグネットMの内部側の部位とプレート部材34との間の距離よりもマグネットMの外部側の部位とプレート部材34との間の距離の方が先に大きくなる。即ち、引戸4が全閉位置に位置するときに比べてマグネットMがプレート部材34に対してより傾いた状態になる。
【0040】
引戸4がさらに開方向に移動すると、保持部51の外部側の部位は接続部54によってさらに開方向に引っ張られる。また、引戸4の移動に伴い、取付部53によってシール部52も開方向に引っ張られる。これにより、縦枠側部位510の内部側端部、および、内部側のシール部52はプレート部材34から離れる。つまり、保冷室Rは密閉状態から開放状態になる。保冷室Rが開放状態になると、
図2に示されているように、パッキン50は、弾性変形した状態から自然状態に戻る。
【0041】
なお、
図3に例示されている場合とは異なり、保持部51の外部側端部がプレート部材34に密着した場合、引戸4を開くときにパッキン50は、以下のような挙動を示す。すなわち、接続部54により保持部51の外部側の部位が開方向に引かれると、突起511を支点として、保持部51およびマグネットMが、シーソーのように回転し、
図3に示されている状態と略同様の状態になる。その後の挙動は、先に説明した通りである。
【0042】
つまり、引戸4が全閉位置にあるときに、マグネットMが、内部側の部位と外部側の部位のいずれがプレート部材34に近くなるように傾いたとしても、マグネットMの外部側の部位からプレート部材34までの距離の方が、マグネットMの内部側の部位からプレート部材34までの距離よりも先に大きくなる。
【0043】
なお、接続部54は、保持部51および取付部53のそれぞれ内部側の部位同士を繋いでいてもよい。この場合、引戸4が開方向に移動したとき、接続部54により保持部51の内部側の部位に開方向の力が作用するので、マグネットMの外部側の部位とプレート部材34との間の距離よりもマグネットMの内部側の部位とプレート部材34との間の距離の方が先に大きくなる。
【0044】
上述したように、本実施形態によれば、パッキン50は、その断面形状が、保冷室Rの内部側と保冷室Rの外部側とで非対称になるように形成されている。このため、全閉位置にある引戸4が開方向に移動する場合、保持部51の外部側の部位と内部側の部位とに作用する開方向の力の大きさに差が生じる。その結果、マグネットMの内部側の部位からプレート部材34までの距離と、マグネットMの外部側の部位からプレート部材34までの距離とのいずれか一方側が先に大きくなる。つまり、マグネットMとプレート部材34との吸着は、外部側と内部側のうちの片方から先に弱められる。したがって、より小さい力で引戸4を全閉状態から開方向に移動させることができる。また、引戸4が全閉位置にあるとき、保持部51の縦枠側部位510だけでなく、シール部52もプレート部材34に密着しているので、プレート部材34に対するパッキン50の密着箇所を増やすことができ、より保冷室Rの密閉性を高めることができる。
【0045】
本実施形態によれば、引戸4の厚さ方向(前後方向)におけるマグネットMの中心(点MO)は、引戸4の厚さ方向における引戸4の中心(点DO)を通り、かつ、引戸4の前後方向に平行な線CL上に位置しているので、引戸4に対して、パッキン50は、前後方向に過度に飛び出さない。よって、パッキン50が取り付けられた引戸4を、枠体3に取り付ける作業が容易になる。また、本実施形態によれば、縦枠33は、前後方向に長い寸法を必要としないので、保冷庫1の奥行きをコンパクトにすることができる。
【0046】
接続部54が、保持部51と取付部53とを繋いでいるので、パッキン50には断熱空間Sが複数形成される。よって、パッキン50が接続部54を備えていない場合、つまり、断熱空間Sが1つである場合に比べて、より保冷室Rの断熱性が高い。
【0047】
縦枠側部位510は突起511を有するので、引戸4が全閉位置にあるとき、マグネットMはプレート部材34に対して平行にならず、傾いた状態になる。つまり、引戸4が全閉位置にある状態において、プレート部材34からマグネットMの一部分に作用する引力と、プレート部材34からマグネットMの他の部分に作用する引力に差が生じている。よって、パッキン50が突起511を有さない場合に比べて、さらに小さい力で引戸4を全閉位置から開方向に移動させることができる。
【0048】
本実施形態の接続部54は撓んだ形状を有しているで、引戸4の開閉方向に容易にパッキン50が伸長する。よって、接続部54の上端部分と下端部分とは、互いに異なる長さとなるように伸びることができる。したがって、引戸4が全閉位置において引戸4の厚み方向に平行な軸周りに傾いた場合でも、引戸4の上端から下端にかけてパッキン50は、プレート部材34に確実に密着することができる。
【0049】
(変形例1)
以下、変形例1について説明する。以下に説明する変形例1において、上述の実施形態と異なる点について主に説明する。なお、変形例1は、先に説明した実施形態とは、パッキンの形状のみが異なる。
【0050】
図5Aは、変形例1に係るパッキン60の水平面による断面図である。パッキン60は、挿入空間61aが形成された保持部61、シール部62、取付部63、および接続部64を有する。シール部62、および取付部63は、上述した実施形態おける、シール部52、および取付部53と同様の構成および機能を備えている。
【0051】
縦枠側部位610は突起を有していないので、引戸4が全閉位置にあるとき、縦枠側部位610の閉方向側の面の全域がプレート部材34に密着している。また、外部側および内部側のシール部62の両方がプレート部材34に密着している。また、マグネットMとプレート部材34とは互いに平行であるので、マグネットMの外部側の部位からプレート部材34までの距離と、マグネットMの内部側の部位からプレート部材34までの距離とには、略差が生じていない。
【0052】
接続部64は、接続部54と同様、マグネットMと取付部63との間に設けられており、保持部61および取付部63のそれぞれ外部側の部位同士を繋いでいる。接続部54との違いは、接続部64の水平面による断面形状が直線形状であることである。
【0053】
次に、パッキン60を備える保冷庫の密閉構造100の作用について説明する。なお、特別記載していないパッキン60の作用は、実施形態のパッキン50の作用と同じである。
【0054】
引戸4が全閉位置にあるとき、上述したようにプレート部材34に縦枠側部位610が密着している。
【0055】
全閉位置にある引戸4が開方向に移動されると、接続部64によって保持部51の外部側の部位が開方向に引っ張られ、外部側のシール部62、および、縦枠側部位610の外部側端部がプレート部材34から離れる。すなわち、マグネットMの内部側の部位とプレート部材34との間の距離よりもマグネットMの外部側の部位とプレート部材34との間の距離の方が先に大きくなる。つまり、マグネットMがプレート部材34に対して傾いた状態になる。
【0056】
さらに、引戸4が開方向に移動すると、保持部61が接続部64によって開方向に引っ張られ、シール部62も取付部63によって引っ張られる。これにより、縦枠側部位610の内部側端部、および、内部側のシール部62がプレート部材34から離れ、保冷室Rは密閉状態から開放状態になる。保冷室Rが開放状態になると、パッキン60は、弾性変形した状態から自然状態に戻る。
【0057】
上述したように、パッキンの断面形状は、保冷室Rの内部側と保冷室Rの外部側とで非対称であればよいので、変形例1におけるパッキン60のように、パッキン60の外部側に直線形状を有する接続部が設けられていてもよい。変形例1によれば、実施形態と同様、より小さい力で引戸4を全閉位置から開方向に移動させることができる。また、シール部62を有するので、引戸4が全閉時における保冷室Rの密着性を高めることができる。
【0058】
変形例1によれば、上述した実施形態と同様の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0059】
縦枠側部位610は突起を有していないので、実施形態のパッキン50と比べて、引戸4が全閉位置にあるときに縦枠側部位610とプレート部材34との密着面積をより広く確保できる。よって、パッキン60は、上述した実施形態のように、縦枠側部位610のうち、内部側又は外部側端部と突起との2か所のみがプレート部材34と密着するパッキン50と比べて保冷室Rの密閉性は高い。
【0060】
なお、パッキン60は、内部側のシール部62と外部側のシール部62の一方のみを備えていてもよい。
【0061】
(変形例2)
以下、変形例2について説明する。以下に説明する変形例2において、上述の実施形態および変形例1と異なる点について主に説明する。なお、変形例2は、先に説明した実施形態とは、パッキンの形状のみが異なる。
【0062】
図5Bは、変形例2に係るパッキン70の水平面による断面図である。パッキン70は、挿入空間71aが形成された保持部71、シール部72、取付部73、および接続部74を有する。シール部72、および取付部73は、上述した実施形態おける、シール部52、および取付部53と同様の機能を備えている。保持部71は、変形例1における保持部61と同様の構成および機能を備えている。
【0063】
接続部74は、直線形状接続部741および撓み形状接続部742を備えている。直線形状接続部741は、上述した変形例1の接続部64と同様の構成および機能を備えている。撓み形状接続部742は、保持部71および取付部73のそれぞれ内部側の部位同士を繋いでいる。撓み形状接続部742の断面形状は、内部側に向けて突出するU字形状である。撓み形状接続部742の他の構成については、上述した実施形態の接続部54と同様である。
【0064】
次に、パッキン70を備える保冷庫の密閉構造100の作用について説明する。なお、特別記載していないパッキン70の作用は、変形例1のパッキン60の作用と同じである。
【0065】
引戸4が全閉位置にあるとき、縦枠側部位710と、外部側および内部側のシール部72の両方がプレート部材34に密着している。このとき、マグネットMとプレート部材34とは互いに平行である。
【0066】
全閉位置にある引戸4が開方向に移動すると、直線形状接続部741によって保持部71の外部側の部位が開方向に引っ張られる。また、撓み形状接続部742によって保持部51の内部側の部位が開方向に引っ張られる。しかしながら、直線形状接続部741は撓み形状接続部742よりも開閉方向に弾性変形しにくいため、直線形状接続部741から保持部71に作用する開方向の力は、撓み形状接続部742から保持部71に作用する開方向の力よりも大きい。したがって、縦枠側部位710の外部側端部が内部側端部よりも先にプレート部材34から離れる。すなわち、マグネットMの内部側の部位とプレート部材34との距離よりもマグネットMの外部側の部位とプレート部材34との距離の方が先に大きくなる。
【0067】
さらに、引戸4が開方向に移動すると、保持部71が撓み形状接続部742によって開方向に引っ張られ始め、縦枠側部位710の内部側端部もプレート部材34から離れ、保冷室Rは密閉状態から開放状態になる。保冷室Rが開放状態になると、パッキン70は、弾性変形した状態から自然状態に戻る。
【0068】
上述したように、パッキンの断面形状は、保冷室Rの内部側と保冷室Rの外部側とで非対称であればよいので、変形例2におけるパッキン70のように、パッキン70の外部側および内部側にそれぞれ異なる形状の接続部が設けられていてもよい。変形例2によれば、実施形態と同様、より小さい力で引戸4を全閉位置から開方向に移動させることができる。
【0069】
変形例2によれば、上述した変形例1と同様の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0070】
パッキン70は、直線形状接続部741および撓み形状接続部742を備えているので、パッキン70には、実施形態および変形例1のパッキンに比べて、多くの断熱空間Sが形成されている。したがって、パッキン70は、パッキン50およびパッキン60に比べて、保冷室Rの断熱性をより高くすることができる。
【0071】
なお、パッキンは外部側の部位と内部側の部位とが非対称の形状であればよいので、接続部を有さなくてもよい。例えば、シール部の外部側および内部側を互いに異なる厚さになるようにパッキンが形成されていてもよい。
【0072】
さらに言えば、パッキンは、外部側と内部側において開閉方向の変形しやすさに差があればよい。したがって、パッキンの形状は、外部側と内部側とが対称な形状であってもよい。例えば、パッキンの外部側の部位と内部側の部位とが、互いに異なる弾性係数である材料で構成されていてもよい。
【0073】
なお、パッキンは、必ずしも、マグネットMの内部側の部位からプレート部材34までの距離と、マグネットMの外部側の部位からプレート部材34までの距離との一方を先に大きくする必要はない。例えば、パッキンが、下端に近いほど引戸4の開閉方向に弾性変形しやすく形成されていれば、引戸4が開方向に移動したとき、マグネットMの下端側の部位とプレート部材34との距離よりも、マグネットMの上端側の部位とプレート部材34との距離が先に大きくなる。よって、パッキンの上端側の部位および下端側の部位とで引戸4の開方向への弾性変形しやすさに差ができるようにパッキンが形成された場合でも、上述した実施形態と同様、より小さい力で引戸4を全閉位置から開方向に移動させることができる。
【0074】
また、引戸4が全閉位置にあるとき、マグネットMが直接プレート部材34に接触していてもよい。なお、パッキン50、60、70は、それぞれ、引戸4が全閉位置にあるときにプレート部材34に密着するシール部52、62、72を備えている。よって、パッキン50、60、70は、縦枠側部位510、610、710を備えていなくても、保冷室Rの密閉性は確保される。
【0075】
上述した実施形態、変形例1および変形例2では、引戸4に取り付けられているパッキンについて説明しているが、引戸5に取り付けられているパッキンも同様の構成であり、同様の作用効果を奏する。
【0076】
また、プレート部材34が引戸4、5のそれぞれ閉方向側の端部、つまり、サッシに設けられ、パッキンが枠体3のプレート部材34に対向する位置に取り付けられていてもよい。この場合、長尺部材30は、サッシおよびプレート部材34によって構成される。
【0077】
さらに、保冷庫1は、引戸4、5に替えて、引き出し式の扉や開き扉が設けられていてもよい。
【0078】
2019年8月27日出願の特願2019-154911の日本出願に含まれる明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示に係る保冷庫の密閉構造は、薬品などを保管する保冷庫の扉に適用することができる。よって、その産業上の利用可能性は多大である。
【符号の説明】
【0080】
1 保冷庫
2 筐体
3 枠体
4,5 引戸
6 機械収容庫
30 長尺部材
32 下枠
33 縦枠
34 プレート部材
41 サッシ
41a 被取付部
42 ガラス層
43 取っ手
50,60,70 パッキン
51,61,71 保持部
51a,61a,71a 挿入空間
510,610,710 縦枠側部位
511 突起
52,62,72 シール部
53,63,73 取付部
54,64,74 接続部
741 直線形状接続部
742 撓み形状接続部
100 密閉構造
R 保冷室
M マグネット
IM 断熱材
CL 線