(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】留め具
(51)【国際特許分類】
F16B 19/00 20060101AFI20230220BHJP
F16B 21/06 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
F16B19/00 R
F16B19/00 E
F16B21/06 A
(21)【出願番号】P 2021545524
(86)(22)【出願日】2020-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2020033778
(87)【国際公開番号】W WO2021049458
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2019167066
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】清田 光
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/084670(WO,A1)
【文献】特開平08-326726(JP,A)
【文献】特開2012-113835(JP,A)
【文献】特開2018-017250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 17/00-21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール溝を有する部品を取付部材に取り付ける留め具であって、
部品に連結する連結部と、
前記連結部を支持し、取付部材に固定する固定部と、を備え、
前記連結部は、
レール溝に挿入される挿入部と、
挿入方向において前記挿入部とずれて位置する弾性片と、を有し、
前記弾性片は、部品に係止して前記挿入部がレール溝から抜ける移動を規制する係止部を有し、撓んだ状態で部品に当接して付勢することを特徴とする留め具。
【請求項2】
前記係止部は、部品に対向する前記弾性片の表面に、前記弾性片の基端部の表面より凹んで形成され、部品に形成された爪部に係止することを特徴とする請求項1に記載の留め具。
【請求項3】
前記弾性片は、前記弾性片の裏面に、前記弾性片の基端部の裏面より取付部材側に突出するように形成された段部を有し、
前記段部は、前記係止部と厚さ方向に重なる位置に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の留め具。
【請求項4】
前記連結部は、前記弾性片より挿入方向にずれた位置で部品に当接する突起部を有し、
前記弾性片が部品に当接した状態で前記突起部が部品に当接することで、部品の弾性片に対向する部分が前記弾性片に押し当てられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の留め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を取付部材に取り付けるための留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コネクターを装着する装着部と、取付孔に係止する係止脚部とを備えるコネクター取付クランプが開示されている。この装着部は、コネクターの係合片を挿入可能な挿入部と、コネクターの係止爪に係止する係止片とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるコネクター取付クランプでは、挿入部と係止片とが軸方向に並ぶように配置されるため、コネクターと取付孔までの軸方向の距離が長くなり、コネクターの取付状態がガタつくおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、部品を取付部材に安定して取り付けられる留め具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、レール溝を有する部品を取付部材に取り付ける留め具であって、部品に連結する連結部と、連結部を支持し、取付部材に固定する固定部と、を備える。連結部は、レール溝に挿入される挿入部と、挿入方向において挿入部とずれて位置する弾性片と、を有する。弾性片は、部品に係止して挿入部がレール溝から抜ける移動を規制する係止部を有し、撓んだ状態で部品に当接して付勢する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、部品を取付部材に安定して取り付けられる留め具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2(a)は、留め具の正面図であり、
図2(b)は、留め具の平面図である。
【
図3】
図3(a)は、留め具の側面図であり、
図3(b)は、留め具の底面図である。
【
図4】
図4(a)は、コネクタの斜視図であり、
図4(b)は、コネクタの長手方向に沿った断面図である。
【
図5】連結部およびコネクタが連結した状態の留め具について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施例の留め具10の斜視図である。
図1(a)は上方から見た留め具10の斜視図であり、
図1(b)は下方から見た留め具10の斜視図である。また、
図2(a)は、留め具10の正面図であり、
図2(b)は、留め具10の平面図である。また、
図3(a)は、留め具10の側面図であり、
図3(b)は、留め具10の底面図である。
【0010】
留め具10は、部品を取付部材に取り付けるために用いられる。例えば、留め具10は、車体パネルや内装パネルにコネクタを固定するために使用される。つまり、部品としてコネクタがあり、取付部材として車体パネルや内装パネルがある。留め具10は、取付孔に取り付けられるが、車体パネルに立設するボルトに取り付けられてもよい。
【0011】
コネクタは、配線同士を接続するために用いられ、複数の配線の端子を保持可能である。コネクタは、配線を接続するための本体部と、留め具10に連結するためのレール溝とを有する。コネクタは金属材の配線を接続するため、留め具10より硬い樹脂材料で形成される。コネクタについての詳細は後述する。
【0012】
留め具10は、連結部20および固定部22を備え、樹脂材により形成される。連結部20は、コネクタに連結する。固定部22は、連結部20を支持し、取付部材の取付孔に固定する。取付孔は、留め具10の軸周りの回転を抑えるため長孔であるが、角孔であってもよい。
【0013】
固定部22は、軸部40、弾性係止部42、フランジ部44および回転規制部46を有する。軸部40は、連結部20の下面から垂下するように形成される。弾性係止部42は、軸部40の先端からフランジ部44側に向かって折り返すように延出する。弾性係止部42は、取付孔の裏縁に係止する。
【0014】
フランジ部44は、軸部40の基端から径方向外向きに張り出し、傘状に形成される。フランジ部44は、取付部材の表面に当接し、弾性係止部42と取付部材を挟んだ状態をとる。これにより、固定部22が取付部材に固定される。回転規制部46は、
図3(b)に示すように軸部40の側面から長手方向D1に突出し、取付孔に挿入される。回転規制部46が取付孔の縁に当たることで、留め具10が取付孔に対して軸周りに回転することを規制できる。
【0015】
連結部20は、基部24、挿入部26、突起部28および弾性片30を有する。基部24は、略平板状に形成され、固定部22に連設する。基部24は、略直方体であって、長手状に形成される。
図2(b)に示す基部24の長手方向D1は、コネクタの挿入方向に沿っている。また、基部24および弾性片30の幅方向D2は、長手方向D1に直交する。また、長手方向D1および幅方向D2に直交する方向を軸方向という。
【0016】
挿入部26は、コネクタの挿入方向に沿って延在し、基部24から側方に張り出すように壁状に形成される。挿入部26は、コネクタのレール溝に挿入されるレールとして機能する。
【0017】
突起部28は、基部24の表面に突出して形成され、コネクタに当接して、コネクタを弾性片30側に傾かせるように作用する。突起部28は、
図2(a)に示すように、長手方向に沿って立ち上がるように傾斜している。突起部28は、挿入部26をコネクタへ挿入する際の挿入方向の後端側に位置する。なお、突起部28は1つに限られず、複数であってよい。
【0018】
弾性片30は、コネクタへの挿入方向において挿入部26とずれて位置し、基部24から挿入方向に延出する。弾性片30は、基部24からフランジ部44より径方向外側に延びる。弾性片30の根元側を基端部30aという。弾性片30はコネクタに当接してコネクタを取付部材から離れる方向に付勢して、コネクタのガタつきを抑える。挿入部26と弾性片30をずらして設けることで、連結部20が軸方向に高くなるのを抑え、コネクタを取付部材に近づけて取付状態を安定させることができる。コネクタのレール溝に挿入部26を挿入するため、弾性片30は挿入部26の挿入に干渉しない位置に設けられ、軸方向において挿入部26より低い位置に設けられる。
【0019】
弾性片30は、コネクタに係止して挿入部26がレール溝から抜ける移動を規制する係止部32と、弾性片30の裏面に位置して弾性片30の基端部30aの裏面より取付部材側に突出するように形成される段部34とを有する。基端部30aの裏面は弾性片30の下面であって取付部材14に対向する面である。
【0020】
係止部32は、弾性片30の表面に弾性片30の基端部30aの表面より凹んで形成される。弾性片30の表面はコネクタに対向する。係止部32は、コネクタに形成された爪部に係止する係止面32aを有する。係止部32が弾性片30の表面に凸状に形成されるとコネクタの挿入時に爪部12bに干渉して挿入抵抗が増すことがあるが、係止部32を凹状に形成することで、コネクタの挿入を容易にしつつ、係止部32の掛かり代を十分に確保できる。取付部材に近い位置でコネクタを付勢することで、コネクタのガタつきを効果的に抑えられる。また、係止部32を弾性片30の基端部30aより凹ませることで基端部30a側の剛性を確保し、延出された弾性片30の付勢力を確保できる。
【0021】
係止部32は、長手方向D1において弾性片30の中途に位置し、
図2(b)に示すように弾性片30の幅方向D2において部分的に切り欠くように形成される。係止部32は、幅方向D2において弾性片30を半分以上切り欠くように形成され、弾性片30の柱部36が残る。凹んだ係止部32と突出した柱部36とが幅方向D2に隣り合っている。これにより、係止部32を形成したことによる剛性の低下を抑えることができる。
【0022】
段部34は、弾性片30の裏面に係止部32と厚さ方向(軸方向)に重なる位置に形成され、下方に突出する。段部34を形成することで、軸方向において係止部32が挿入部26に干渉しない位置に設けつつ、係止部32を深く形成して、コネクタへの掛かり代を確保できることができる。また、係止部32を設けても弾性片30の先端側の剛性の低下を抑えることができる。また、段部34を設けることで弾性片30の基端部30aとフランジ部44の隙間を確保して、弾性片30の基端部30aがフランジ部44の変形に干渉しないようにできる。
【0023】
図4(a)は、コネクタ12の斜視図であり、
図4(b)は、コネクタ12の長手方向に沿った断面図である。実施例で示すコネクタ12では、配線を繋ぐ本体部分が省略されているが、実際には
図4(a)に示すコネクタ12の上部に設けられる。
【0024】
コネクタ12は、一対のレール溝12aと、爪部12bと、挿入口12cと、一対の張出部12dとを有する。一対のレール溝12aは、コネクタ12の両側に形成され、留め具10の挿入部26が挿入される。一対の張出部12dは、コネクタ12の両側に対向配置され、内方に張り出すように形成される。
【0025】
挿入口12cは、留め具10の挿入部26を受け入れるよう開口する。爪部12bは、コネクタ12の裏面に突出して形成され、留め具10の弾性片30に係止される。爪部12bは、長手方向にレール溝12aからずれて位置する。
【0026】
図5は、連結部20およびコネクタ12が連結した状態の留め具10について説明するための図である。
図5(a)は留め具10の正面図を示し、
図5(b)は留め具10の断面図を示す。なお、
図5(b)では、留め具10の作用を理解しやすくするため、コネクタ12が
図5(a)に示す実際の連結状態より大きく傾いた状態で表示されている。
【0027】
連結状態では、挿入部26がレール溝12aに挿入され、係止部32が爪部12bに係止している。挿入部26がレール溝12aに挿入されることで、コネクタ12が取付部材14から離れる動きが制限される。また、係止部32が爪部12bに係止することで、コネクタ12が連結部20から外れる動きが制限される。なお、レール溝12aの軸方向の幅は、挿入部26を挿入しやすくするため、挿入部26の軸方向幅より大きく形成される。つまり、レール溝12aと挿入部26とは連結状態で軸方向に隙間を有する。
【0028】
突起部28は、レール溝12aと挿入部26との軸方向隙間より大きくなるように突出する。係止部32が爪部12bを係止した状態で突起部28の頂点がコネクタ12に当たる。
図5(b)に示すように、突起部28は、弾性片30より長手方向D1(挿入方向)にずれた位置で当接する。弾性片30がコネクタ12に係止した状態で突起部28がコネクタ12を持ち上げるように当たることで、基部24の上縁を支点Sとして揺動するように作用し、コネクタ12の弾性片30に対向する部分が弾性片30に押し当てられる。弾性片30は、コネクタ12に当たって取付部材14に接近するように下方に撓んだ状態となり、その反力でコネクタ12に弾接する。これにより、コネクタ12が長手方向に沿った状態で揺動することを抑えることができ、配線が外れることを抑えることができる。なお、係止部32の底面が爪部12bの先端に当たるが、弾性片30の別の部分がコネクタ12に当たる設定にしてもよい。つまり、弾性片30に当たる箇所である、コネクタ12の弾性片30に対向する部分は、爪部12bに限られない。
【0029】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0030】
実施例では、固定部22が取付孔14aに固定される態様を示したが、この態様に限られない。例えば、固定部22は、取付部材14から突出するボルトに固定されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、部品を取付部材に取り付けるための留め具に関する。
【符号の説明】
【0032】
10 留め具、 12 コネクタ、 12a レール溝、 12b 爪部、 12c 挿入口、 14 取付部材、 14a 取付孔、 20 連結部、 22 固定部、 24 基部、 26 挿入部、 28 突起部、 30 弾性片、 30a 基端部、 32 係止部、 32a 係止面、 34 段部、 36 柱部、 40 軸部、 42 弾性係止部、 44 フランジ部、 46 回転規制部。