(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】粉末用ニッケル基合金および粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20230220BHJP
B22F 9/08 20060101ALI20230220BHJP
B22F 10/20 20210101ALI20230220BHJP
C22C 19/05 20060101ALI20230220BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230220BHJP
【FI】
B22F1/00 M
B22F9/08 A
B22F10/20
C22C19/05 B
C22C19/05 C
B33Y70/00
(21)【出願番号】P 2021568159
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 DE2020100576
(87)【国際公開番号】W WO2021004580
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】102019118221.2
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020116865.9
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516236078
【氏名又は名称】ファオデーエム メタルズ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VDM Metals International GmbH
【住所又は居所原語表記】Plettenberger Strasse 2, D-58791 Werdohl, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヴォルフ
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102013018006(DE,A1)
【文献】特表2013-522465(JP,A)
【文献】国際公開第2017/026519(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108941588(CN,A)
【文献】特開2019-035144(JP,A)
【文献】特開2015-224394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-12/90
C22C 19/00-19/05
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末用のニッケル基合金であって、以下の含分(質量%):
C
>0.15%~0.5%
S 最大0.15
%
Cr 20~25%
Ni 残部
Mn 最大1%
Si 最大1%
Mo 10%まで
Ti 0.25~0.6%
Nb 5.5%まで
Cu 5%ま
で
Fe 25%まで
P 最大0.03
%
Al 0.8~1.5%
V 最大0.6%
Zr 最大0.12
%
Co 15%まで
B 0.006~0.125%
O >0.00001~0.1%
および製造に起因する不純物
によって定義され、ここで炭素のホウ素に対する比(C/B)が4~25である、前記ニッケル基合金。
【請求項2】
Sが(質量%で)最大0.03%である、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
Cuが(質量%で)0.5%までである、請求項1または2に記載の合金。
【請求項4】
Pが(質量%で)最大0.02%である、請求項1~3のいずれかに記載の合金。
【請求項5】
Zrが(質量%で)最大0.1%である、請求項1~4のいずれかに記載の合金。
【請求項6】
Coが(質量%で)>11%~<15%である、請求項
1~5のいずれかに記載の合金。
【請求項7】
Mnが(質量%で)>0.001~<0.30%である、請求項
1~6のいずれかに記載の合金。
【請求項8】
Moが(質量%で)>8.4%~<10%である、請求項
1~7のいずれかに記載の合金。
【請求項9】
Tiが(質量%で)>0.25%~<0.35%である、請求項
1~8のいずれかに記載の合金。
【請求項10】
Bが(質量%で)>0.010%且つ<0.05%である、請求項
1~9のいずれかに記載の合金。
【請求項11】
C/Bが>10~25である、請求項
1~10のいずれかに記載の合金。
【請求項12】
C+Bの合計が0.156~0.625
%である、請求項
1~11のいずれかに記載の合金。
【請求項13】
C+Bの合計が0.16~0.6%である、請求項1~11のいずれかに記載の合金。
【請求項14】
C+Bの合計が0.1875~0.530%である、請求項1~11のいずれかに記載の合金。
【請求項15】
750℃で、且つ261MPaの負荷で到達されるクリープ値が322時間を上回る、請求項
1~14のいずれかに記載の合金。
【請求項16】
請求項
1~15のいずれかに記載のニッケル基合金からの粉末の製造方法であって、
・ 合金をVIM炉内で溶解し、
・ その液状の溶湯を5分~2時間の間、保持して均質化し、
・ 閉じた噴霧装置を供給ガスで-10℃~-120℃の露点に制御し、
・ 前記溶湯を、ノズルを通じて、ガス流量2qm
3/分~150qm
3/分を有するガス流中に吹き込み、
・ 凝固した粉末粒子をガス密の密閉容器に集め、ここで、
・ 前記粒子は粒子サイズ5μm~250μmを有し、
・ 前記粉末粒子は球状であり、
・ 前記粉末は評価された対象の総面積に対して0.0~4%の細孔面積(細孔 >1μm)のガス包有物を有し、
・ 前記粉末は2g/cm
3
~8g/cm
3のかさ密度を有し、
・ 前記粉末を、アルゴンを有する保護ガス雰囲気下で気密包装する、
前記方法。
【請求項17】
前記合金をまず、定義された化学分析を伴う母合金ブロックとして、VIM炉において溶解することによって製造し、
・ 前記母合金ブロックを鋸引きによって小さな片に分離し、
・ その母合金の片をVIM炉において溶解する、
請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
供給ガスとして不活性ガスを用いることを特徴とする、請求項
16または17に記載の方法。
【請求項19】
供給ガスとしてアルゴンを用いることを特徴とする、請求項
16または17に記載の方法。
【請求項20】
前記溶湯が噴霧されるガス流がアルゴンからなることを特徴とする、請求項
16~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記溶湯が噴霧されるガス流が窒素からなることを特徴とする、請求項
16~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記溶湯が噴霧されるガス流が窒素とアルゴンとの混合物からなることを特徴とする、請求項
16~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
溶湯の噴霧を0.5~80kg/分で行うことを特徴とする、請求項
16~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
部品または部材の付加製造のための、請求項
16~23のいずれかに記載の方法によって製造される粉末の使用。
【請求項25】
部品または部材上の層の付加製造のための、請求項
16~23のいずれかに記載の方法によって製造される粉末の使用。
【請求項26】
タービンの部品の製造のための、請求項
16~23のいずれかに記載の方法によって製造される粉末の使用。
【請求項27】
オイル産業およびガス産業用の部品の製造のための、請求項
16~23のいずれかに記載の方法によって製造される粉末の使用。
【請求項28】
バルブまたはフランジの製造のための、請求項
16~23のいずれかに記載の方法によって製造される粉末の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末用ニッケル基合金に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2015/110668号(WO2015/110668A2)には、遠心分離器を利用して噴霧される鉄基の粉末の製造方法であって、以下の工程段階:
・ 1040℃を上回る融点を有する合金を準備する段階、
・ 前記の組成物を溶解する段階、
・ その溶解した組成物を、遠心分離器または回転噴霧装置を利用して噴霧する段階
を有する方法が記載されている。
【0003】
独国特許出願公開第102015016729号明細書(DE102015016729A)は、50%を上回るニッケルを有する合金からの金属半製品の製造方法であって、以下の工程段階:
・ VIMにより電極を製造する段階、
・ 前記電極を、応力の低減およびエージングのために炉内で温度範囲400~1250℃で、時間10~336時間の間、熱処理に供する段階、
・ 前記電極を、寸法に応じて、殊に直径に応じて、空気中または炉内で、室温~1250℃未満、殊に900℃未満の温度に冷却する段階、
・ 引き続き、その冷却された電極をVARによって再溶解速度3.0~10kg/分で再溶解してVARブロックにする段階、
・ 前記VARブロックを炉内で、温度範囲400~1250℃で、時間10~336時間の間、熱処理する段階、
・ 前記VARブロックを、寸法に応じて、殊に直径に応じて、空気中または炉内で、室温~1250℃未満、殊に900℃未満の温度に冷却する段階、
・ 前記VARブロックを再度、再溶解速度3.0~10kg/分で再溶解する段階、
・ その再溶解されたVARブロックを温度範囲400~1250℃で、時間10~336時間の間、熱処理に供する段階、
・ 引き続き、前記VARブロックを熱間成形および/または冷間成形によって、所望の製品の形状および寸法にする段階
を含む前記方法を開示している。
【0004】
米国特許第3802938号明細書(US3802938)によれば、以下の組成: Cr 5.0~25%、Co 5.0~25%、Mo 12%まで、W 15%まで、Nb 4%まで、Ti 0.5~6、Al 1~7%、B 0.4%まで、Zr 0.3%まで、Ta 12%まで、Hf 5%まで、Re 1%までを有し得るニッケル基合金の製造方法が公知である。前記合金は粉末からなることができ、それはプレスにより成形され且つ熱処理に供され、ここで粉末の成分は、大部分が炭素不含のニッケル基超合金と、粉末形態の炭化物からの他の成分とからなる。
【0005】
Ni合金およびNi-Co合金は、耐食性および良好な機械的特性、例えば強度、耐熱性および破壊靱性に関して特別な特性を有する部材を製造するために使用されることが一般に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2015/110668号
【文献】独国特許出願公開第102015016729号明細書
【文献】米国特許第3802938号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、Ni合金およびNi-Co合金の有利な特性を有し且つ安価に製造される、部品の付加製造用の粉末を提供するという課題に基づいている。その際、粉末の粒子サイズ分布、粒子の形状および流動性についての特別な要求が満たされることが重要である。
【0008】
さらに、そのような粉末の製造方法が提案されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、粉末用のニッケル基合金であって、以下の含分(質量%):
C 0.15~0.5%
S 最大0.15%、殊に最大0.03%
Cr 20~25%
Ni 残部
Mn 最大1%
Si 最大1%
Mo 8~10%
Ti 0.25~0.6%
Nb 5.5%まで
Cu 5%まで、殊に0.5%まで
Fe 25%まで
P 最大0.03%、殊に最大0.02%
Al 0.8~1.5%
V 最大0.6%
Zr 最大0.12%、殊に最大0.1%
Co 10~15%
B 0.0060~0.125%
O >0.00001~0.1%
および製造に起因する不純物
によって定義され、ここで炭素のホウ素に対する比(C/B)が4~25である、前記ニッケル基合金によって解決される。
【0010】
本発明による粉末合金の有利なさらなる態様は、関連する従属請求項に記載されている。
【0011】
前記の課題は、ニッケル基合金からの粉末の製造方法であって、
・ 合金をVIM炉内で溶解し、
・ その液状の溶湯を5分~2時間の間、保持して均質化し、
・ 閉じた噴霧装置を供給ガスで-10℃~-120℃の露点に制御し、
・ 前記溶湯を、ノズルを通じてガス流量2qm3/分~150qm3/分を有するガス流中に吹き込み、
・ 凝固した粉末粒子をガス密の密閉容器に集め、ここで、
・ 前記粒子は粒子サイズ5μm~250μmを有し、
・ 前記粉末粒子は球状であり、
・ 前記粉末は評価された対象の総面積に対して0.0~4%の細孔面積(細孔 >1μm)のガス包有物を有し、
・ 前記粉末は2g/cm3~合金の密度である約8g/cm3のかさ密度を有し、
・ 前記粉末を、アルゴンを有する保護ガス雰囲気下で気密包装する、
前記方法によっても解決される。
【0012】
本発明による方法の有利なさらなる態様は、関連する方法の従属請求項に記載されている。
【0013】
以下の出発製造段階が考えられる:
・ 定義された化学分析を伴う母合金ブロックを、VIM炉において溶解することにより製造する、
・ 母合金ブロックを鋸引きによって小さな片に分離する、
・ その母合金の片をVIM炉で溶解する、
または
・ 定義された重量の合金元素を化学分析に応じてVIMにおいて溶解する、
・ その液状の溶湯を5分~2時間の間、保持して均質化する。
【0014】
以下のさらなる処理段階が、前記の代替的な出発製造段階に続くことができる:
・ 閉じた噴霧装置をアルゴンガスで露点-10℃~-120℃、好ましくは-30℃~-100℃の範囲に制御する、
・ 前記溶湯を、ノズルを通じてガス流量2qm3/分~150qm3/分を有するアルゴンガス流中に吹き込む、
・ 凝固した粉末粒子をガス密の密閉容器に集める、
・ 前記粒子は粒子サイズ5μm~250μmを有し、ここで、好ましい範囲は5~150μm、もしくは10~150μmである、
・ 前記粉末粒子は球状である、
・ 前記粉末は評価された対象の総面積に対して0.0~4%の細孔面積(細孔 >1μm)のガス包有物を有し、ここで、好ましい範囲は0.0~2%である。前記粉末のガス包有物の量は、製造される部分に残る空孔率を低くすることができる、
・ 前記粉末は2g/cm3~合金の密度である約8g/cm3のかさ密度を有し、ここで、好ましい範囲は4~5g/cm3の値である、
・ 前記粉末を、アルゴンを有する保護ガス雰囲気下で気密包装する。
【0015】
本発明による粉末は、好ましくは、真空不活性ガス噴霧装置(VIGA)において製造される。この装置において、合金は真空誘導溶解(VIM)において溶解され、注入漏斗にみちびかれ、それがガスノズルにつながっており、そこで、溶解された金属が5~100barの高圧下で不活性ガスを用いて金属粒子へと噴霧される。その溶湯は、溶解るつぼ内で融点より5~400℃上で加熱される。噴霧の際の金属流量は0.5~80kg/分であり、且つガス流量は2~150m3/分である。急冷によって、金属粒子は球状(球状の粒)に凝固する。噴霧の際に使用される不活性ガスは、必要に応じて0.01~100%の窒素を含有し得る。次いで、サイクロンにおいて気相が粉末から分離され、引き続き粉末が包装される。
【0016】
代替的に、本発明による粉末を、VIGAを介する代わりにいわゆるEIGA法を介して製造できる。その際、回転電極の形態の既製の合金ブロックが、誘導コイルによって、接触せずに溶け落とされる。その溶湯は電極から直接、ガスノズルのガス流に滴下する。
【0017】
EIGA用の合金ブロックは、ここでもまた、溶解法のVIM、ESU、VAR、VODもしくはVLF、およびそれらの組み合わせによって製造でき、且つ任意に、熱間成形工程、例えば鍛造および圧延を経ることができる。EIGA法において使用する前に、研削および/または剥離などの処理によってブロックの表面を清浄化することが有利である。
【0018】
粉末製造の際の不活性ガスは、選択的にアルゴン、もしくはアルゴンと0.01~100%の窒素との混合物であってよい。窒素含分に以下の制限があることがある:
0.01~80%
0.01~50%
0.01~30%
0.01~20%
0.01~10%
0.01~10%
0.1~5%
0.5~10%
1~5%
2~3%。
【0019】
代替的に、不活性ガスは選択的にヘリウムであってよい。
【0020】
不活性ガスは好ましくは少なくとも99.996体積%の純度を有し得る。殊に、窒素含分0.0~10ppmv、酸素含分0.0~4ppmv、およびH2O含分≦5ppmvを有するべきである。
【0021】
殊に、不活性ガスは好ましくは少なくとも99.999体積%の純度を有し得る。殊に、窒素含分0.0~5ppmv、酸素含分0.0~2ppmv、およびH2O含分≦3ppmvを有するべきである。
【0022】
装置における露点は-10~-120℃の範囲である。それは好ましくは-30~-100℃の範囲である。
【0023】
粉末の噴霧の際の圧力は、好ましくは10~80barであってよい。
【0024】
付加製造を用いて製造された部材および部品、もしくは部材および部品上の層は、5~500μmの層厚から構築され、且つ製造直後に、構造の方向に延伸する平均粒子サイズ2μm~1000μmの粒子を有する組織化構造を有する。好ましい範囲は5μm~500μmである。
【0025】
付加製造を用いて製造された部材および部品、もしくは部材および部品上の層は、選択的に、700℃~1250℃の温度範囲で0.1分~70時間の間、場合により保護ガス、例えばアルゴンまたは水素下での溶体化熱処理、続いて空気中、動かされる熱処理雰囲気中、または水浴中での冷却に供され得る。その後、選択的に、表面を酸洗い、ブラスト処理、研削、旋削、剥離、フライス加工によって、浄化または加工することができる。そのような加工を選択的に、部分的または全体的に、熱処理の前でも行うことができる。
【0026】
付加製造を用いて製造された部材および部品、もしくは部材および部品上の層は、熱処理後に平均粒子サイズ2μm~2000μmを有する。好ましい範囲は20μm~500μmである。
【0027】
本発明により製造された粉末から付加製造を用いて製造された部材および部品、もしくは部材および部品上の層は、好ましくは、その材料が、関連分析を伴う鍛錬用合金または鋳造用合金としても用いられる分野において用いられるべきである。付加製造は、生成的製造、ラピッド技術、ラピッドツーリング、ラピッドプロトタイピングまたはその種のものの概念とも理解される。
【0028】
さらに、上述の粉末は、熱間等方圧加圧法(HIP)または従来の焼結法および押出法を用いた部材の製造のためにも使用できる。さらに、付加製造と引き続くHIP処理との方法の組み合わせが可能である。その際、生成的製造について以下で記載される後処理段階を、HIP部材のために使用することが可能である。
【0029】
一般に、ここで以下が識別される:
粉末を用いた3D印刷
選択的レーザー焼結および
選択的レーザー溶融
レーザークラッディング
選択的電子ビーム溶接。
【0030】
ここで使用される略語は以下のとおりに定義される:
VIM 真空誘導溶解
VIGA 真空不活性ガス噴霧装置
VAR 真空アーク再溶解
VOD 真空酸素脱炭
VLF 真空取鍋炉
EIGA 電極誘導溶解ガス噴霧。
【0031】
本発明による方法の有利なさらなる態様は、従属請求項に記載されている。
【0032】
粉末の粒子サイズの広がりの範囲は5~250μmであり、ここで好ましい範囲は5~150μm、もしくは10~150μmである。
【0033】
前記粉末は評価された対象の総面積に対して0.0~4%の細孔面積(細孔 >1μm)のガス包有物を有し、その際、好ましい範囲は
0.0~2%
0.0~0.5%
0.0~0.2%
0.0~0.1%
0.0~0.05%
である。
【0034】
前記粉末は2g/cm3~合金の密度である約8g/cm3のかさ密度を有し、ここで好ましい範囲は以下の値であってよい:
4~5g/cm3
2~8g/cm3
2~7g/cm3
3~6g/cm3。
【0035】
前記粉末のガス包有物の量は、製造される部分に残る空孔率を低くすることができる。
【0036】
この方法により製造された粉末も、この粉末から製造された部品(3D印刷された試料)も、窒化物および炭化物および/または炭窒化物不含である。窒化物および炭化物が存在する場合、これらは直径<100nm、殊に<50nmの粒子サイズを有する。
【0037】
この粉末から製造された部品(3D印刷された試料)を熱処理して均質化し、900℃を上回る、特に1000℃を上回る、理想的には1100℃を上回る、1時間より長い拡散熱処理をした後、製造された部品(3D印刷された試料)中に窒化物および炭化物、および/または炭窒化物が生じることがある。これらは直径<8μm、もしくは<5μm、理想的には<1μmの粒子サイズを有する。
【0038】
現状の技術とは対照的に、遠心法がなくて済み、これによって装置の稼働時間が最適化される。引き続く仕上げ工程により、付加製造用の粉末の品質が最適化される。
【0039】
ブロックが分割前に表面処理(例えばブラッシング、研削、酸洗い、分離、剥離などによる)に供されることが有利であることがある。ここで、さらなる再溶融によって除去できず且つ後の使用に有害となることがある欠陥を取り除くことができる。
【0040】
本発明による方法を、あらゆるNi基合金またはNi-Co基合金に適用できる。
【0041】
以下に、本発明による方法のパラメータを用いて粉末として製造され得る合金組成物を示す。この炭素含有合金組成物は、有利には粒子サイズ15μm~53μm、または45μm~150μmを有する粉末として、溶融溶接工程、例えばレーザーまたは電子線を用いて部材に加工され得る。該合金組成物は、粉末中の炭素のホウ素に対する比(C/B比)が>4~<25であり、且つB+Cの合計が>0.1875%~<0.525%である場合に、熱クラックが特に少ない形態での特に良好な加工性を特徴とする。
【0042】
この合金組成物から溶接法を用いて製造された部材は、高温用途(使用温度>550°C)の範囲で同時に機械的負荷(クリープ(Zeitstand)負荷>10,000時間)の際に有利に使用される。
【0043】
本発明による粉末の有利な組成を以下に示す(全て質量%での記述):
C 0.15~0.50%
S 最大0.150%、殊に最大0.03%
Cr 22~25%
Ni 残部
Mn 最大1%
Si 最大1%
Mo 8~10%
Ti 0.25~0.5%
Nb 最大5.5%
Cu 最大5%、殊に最大0.5%
Fe 最大25%
Al 0.80~1.50%
V 最大0.6%
Zr 最大0.12%、殊に最大0.1%
Co 11~13%
O 0.00001~0.1%
B 0.0060~0.125%
および製造に起因する不純物、
ここで、炭素のホウ素に対する比(C/B)は4~25であり、且つB+Cの合計は>0.1875%~<0.525%である。
【0044】
最適な炭素のホウ素に対する比は4~25であり、且つB+Cの合計は>0.1875%~<0.525%である。これは、以下のように理由付けられる: 溶融法、鋳造法および溶接法の場合、凝固範囲、つまり液相線温度と固相線温度との間の温度差が、凝固に起因する不完全性、例えば熱クラックまたは内部のボイドの発生に対して決定的である。元素のホウ素の添加は、その凝固範囲を広げる。例えば、ホウ素含分を0.005%から0.020%に高めると、凝固範囲を127Kから141Kに広がることが確認できている。これに対し、元素の炭素の添加を高める場合、これが元素のホウ素と関連して、凝固範囲を効果的に狭める。例えば、炭素含分を0.055%から0.500%に高めると、ホウ素含分が0,005%の場合、凝固範囲は127Kから99Kに縮小する。ホウ素含分が0.020%の場合、0.350%の炭素含分は123Kの凝固範囲をもたらすが、0.500%の炭素含分は113Kの凝固範囲をもたらすに過ぎない(表1参照)。
【0045】
【0046】
従って、ホウ素含分を高めることは、同時に炭素含分が上げられる場合、溶融段階、例えば溶接または選択的レーザー溶融にわたる加工特性の受け容れられない悪化をもたらさない。CとBとの理想的な比は14.8であると特定された。これは、炭素がホウ素に対して14.8倍高められる場合、ホウ素を添加した際にも凝固範囲が一定のままであることを意味する。
【0047】
ホウ素を高めると同時に炭素含分を上げることは、さらに、M23C6一次炭化物の優勢な発生と同時にM6C炭化物の発生の低減をもたらす。M23C6炭化物のM6C炭化物に比した利点は、これが熱処理、例えば溶体化熱処理の際に再度溶解せず、構造内、ひいては粒子内で、特にエネルギー的に有利な粒界のところではなく、安定に分布したままであることである。
【0048】
さらに、より高い炭素含分によって、シグマ相の発生が低減されるか、完全に抑制されることすらあることが判明した。
【0049】
さらに、以下の元素が存在し得る(質量%で記述):
Nb+Ta 最大5.2%
Se 最大0.0005%
Bi 最大0.00005%
Pb 最大0.002%
P 最大0.01%。
【0050】
任意に、製造される合金の酸素含分は0.00001~0.1%、0.0001~0.1%、0.001~0.1%、0.001~0.002%、または0.0015~0.002%であることができる。
【0051】
代替的に、酸素含分を以下のとおり調整してもよい:
・ 0.00001~0.1
・ 0.00002~0.1
・ 0.00005~0.1
・ 0.00008~0.1
・ 0.0001~0.1
・ 0.0002~0.1
・ 0.0005~0.1
・ 0.0008~0.1
・ 0.001~0.1
・ 0.002~0.1
・ 0.005~0.1
・ 0.008~0.1
・ 0.010~0.1
・ 0.00001~0.10
・ 0.00001~0.08
・ 0.00001~0.05
・ 0.00001~0.03
・ 0.00001~0.02。
【0052】
必要に応じて以下の元素を、用途に応じて下記の広がりの範囲内で調整できる:
Co >11~<15%
Mn >0.001~<0.3%
Mo >8.4~<10%
Ti >0.25~<0.35%。
【0053】
有利な比:
C/Bは>12~<18である。
【0054】
さらに、C+Bの合計が0.156~0.625%、殊に0.16~0.6%の範囲、特に0.1875~0.530%の範囲である場合が有利である。
【0055】
以下に本発明による粉末の好ましい用途分野を示す:
・ 部品または部材の付加製造
・ 部品または部材上の層の付加製造
・ タービン用の部品の製造
・ オイル産業およびガス産業用の部品の製造
・ バルブ(Ventilatoren)およびフランジの製造。
【0056】
粒子サイズ5μm~250μmを有する粉末が得られる。
【0057】
5μm未満の小さすぎる粒子サイズは、流動挙動を悪化させるので回避すべきであり、250μmを上回る大きすぎる粒子サイズは付加製造の際の挙動を悪化させる。
【0058】
2g/cm2の低すぎるかさ密度は付加製造の際の挙動を悪化させる。約8g/cm3の最大のかさ密度は、合金の密度によってもたらされる。
【0059】
合金の製造性および使用性を確実にするために、酸素含分は0.100%以下でなければならない。酸素含分が低すぎると、コストが高くなる。従って、酸素含分は≧0.0001%である。
【0060】
この方法によって製造された粉末は、基礎となる合金の特性を有する部品を構築するために付加製造において使用できる。
【0061】
本発明による方法は、以下のとおり例示的に説明される:
【実施例】
【0062】
本発明による方法で可能な粉末の変種の例示的な化学組成(Var1~Var3)を表2に示す:
【表2】
【0063】
FM617B(バッチ#185855の溶接金属、C/B比(0.055/0.002)=27.5およびC+Bの合計0.057を有する)で測定された破壊までのクリープ値を表3に記載する。C/B比が>25であり且つC+Bの合計が小さいことに基づき、通常のアーク法で充分に有効な「溶接性」が達成され得るのだが、クリープ値(破壊までの時間t)は限定的であり、且つシグマ<83MPaの静的負荷の場合のみ、温度範囲650℃~800℃で、必要とされる>10,000時間のクリープ値に達する。
【0064】