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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】差込みコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/64 20060101AFI20230220BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
H01R13/64
H01R13/52 301H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021576954
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2020066883
(87)【国際公開番号】W WO2020260117
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】102019209235.7
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ ヴィットマン
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-308734(JP,A)
【文献】特開平10-172647(JP,A)
【文献】特表2013-524421(JP,A)
【文献】特表2002-539589(JP,A)
【文献】特表2017-510048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/64
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差込み方向(E)に沿って対応差込みコネクタ(60)に嵌合する差込みコネクタ(1)であって、該差込みコネクタ(1)は、
内部空間(3)と、該内部空間(3)内に配置されたコンタクト部材(20)とを備えたケーシング(2)と、
CPA(Connector Position Assurance;コネクタ位置保証手段)と
を有し、
前記ケーシング(2)は、前記内部空間(3)を、前記ケーシング(2)の外部空間(6)に対して圧力補償する圧力補償要素(5)を有しており、
前記CPA(4)は、前記ケーシング(2)に配置されており、該ケーシング(2)に対して相対的に第1の位置(P1)と第2の位置(P2)との間で移動可能であり、
前記CPA(4)にはシール部材(30)が設けられており、
前記第2の位置(P2)において、前記圧力補償要素(5)は前記シール部材(30)により前記外部空間(6)に対してシールされている、
差込みコネクタ(1)
【請求項2】
前記CPA(4)は、当該差込みコネクタ(1)と前記対応差込みコネクタ(60)とが所定の差込み位置で嵌合している場合にのみ、前記第2の位置(P2)へ移動可能であるように構成されている、請求項1記載の差込みコネクタ(1)
【請求項3】
前記圧力補償要素(5)は、前記ケーシング(2)の開口(7)により形成されている、請求項1または2記載の差込みコネクタ(1)
【請求項4】
前記開口(7)は、ダイヤフラム(8)により覆われており、該ダイヤフラム(8)は、水密ではあるが気体は通すように構成されている、請求項3記載の差込みコネクタ(1)
【請求項5】
前記シール部材(30)は、栓(31)として形成されており、
前記CPA(4)の前記第2の位置(P2)において、前記シール部材(30)は前記開口(7)内に挿入されている、
または
前記CPA(4)の前記第2の位置(P2)において、前記シール部材(30)は全面的に前記開口(7)に押し当てられている、
または
前記シール部材(30)は、スリーブの形式で形成されており、
前記CPA(4)の前記第2の位置(P2)において、前記シール部材(30)は前記開口(7)を覆うように被せられており、
または
前記シール部材(30)は、Oリング(32)として形成されており、
前記CPA(4)の前記第2の位置(P2)において、前記シール部材(30)は前記ケーシング(2)に当て付けられ、前記開口(7)の縁部を完全に包囲している、
請求項3または4記載の差込みコネクタ(1)
【請求項6】
前記開口(7)に、パイプ状の接続管片(40)が設けられており、
該接続管片(40)の、前記開口(7)とは反対の側の連通端部(41)には別の開口(42)が設けられており、
前記CPA(4)は、少なくとも前記第2の位置(P2)において前記接続管片(40)の前記連通端部(41)に面する第1の端部(9)を有しており、前記シール部材(30)は、前記CPA(4)の前記第1の端部(9)に配置されている、請求項3または4記載の差込みコネクタ(1)
【請求項7】
前記シール部材(30)は、前記CPA(4)の第1の端面(10)に配置されており、
該第1の端面(10)は、特に前記CPA(4)の前記第1の位置(P1)から前記第2の位置(P2)への移動により規定された方向に向いている、
請求項6記載の差込みコネクタ(1)
【請求項8】
前記シール部材(30)は、栓(31)として形成されており、
前記CPA(4)の前記第2の位置(P2)において、前記シール部材(30)は前記接続管片(40)の前記別の開口(42)内に挿入されている、
または
前記CPA(4)の前記第2の位置(P2)において、前記シール部材(30)は全面的に前記接続管片(40)の前記別の開口(42)に押し当てられている、
または
前記シール部材(30)は、スリーブの形式で形成されており、
前記CPA(4)の前記第2の位置(P2)において、前記シール部材(30)は前記接続管片(40)の前記連通端部(41)を覆うように被せられている、
請求項6または7記載の差込みコネクタ(1)
【請求項9】
差込みコネクタユニットであって、
請求項1から8までのいずれか1項記載の差込みコネクタ(1)と、
対応差込みコネクタケーシング(61)を備えた対応差込みコネクタ(60)と
を有し、
前記対応差込みコネクタケーシング(61)内には、前記コンタクト部材(20)に接触接続する対応コンタクト部材(62)が設けられている、
差込みコネクタユニット。
【請求項10】
前記CPA(4)は、当該差込みコネクタ(1)と前記対応差込みコネクタ(60)とが所定の差込み位置で嵌合している場合にのみ、前記第2の位置(P2)へ移動可能であるように構成されており、
前記差込みコネクタ(1)と前記対応差込みコネクタ(60)とが所定の差込み位置において嵌合しておりかつ前記CPA(4)が前記第2の位置(P2)に移動させられた状態において、前記ケーシング(2)の前記内部空間(3)は、前記ケーシング(2)の前記外部空間(6)に対してシールされている、請求項9記載の差込みコネクタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差込みコネクタに関する。
【0002】
背景技術
従来技術から、差込みコネクタと対応差込みコネクタとから成る電気的な差込み接続部の機能に関して有利であり得るのは、差込み接続部が、差込み動作もしくは嵌合動作後に所定の差込み位置に位置していることである、ということが周知である。この所定の差込み位置もしくは差込みポジションもしくは接続ポジションもしくは接続位置は、例えば終端位置であってもよい。所定の差込み位置において、差込み接続部は例えば終端係止位置に係止されていてもよい。
【0003】
女性オペレータもしくは組立工(もしくは男性オペレータもしくは組立工)に所定の差込み位置の存在を示すためには、追加的な操作部材、いわゆるコネクタ位置保証手段(connector position assurances(CPAs))または制御スライダも使用されることが多い。これらはオペレータにとって良好に認識可能であり、差込み接続部が所定の差込み位置に位置している場合にのみ、終端位置に動かすもしくは移動させることができる。
【0004】
CPAの1つの具体的な構成は、例えばCPAが制御スライダと呼ばれている独国実用新案第29904381号明細書から公知である。
【0005】
独国特許出願公開第102014206431号明細書からは、CPAおよびCPAを備えた差込みコネクタユニットが公知である。
【0006】
発明の開示
本発明は、差込み接続部の所定の差込み位置はオペレータまたは組立工により確実に認識されることが望ましく、差込みコネクタもしくはプラグと対応差込みコネクタもしくは対応プラグとから成る差込みコネクタユニットの内部空間は、嵌合状態において外部空間に対して媒体密に形成されていることが望ましい、という知見から出発する。これにより、一方では確実な電気接続が生ぜしめられると共に、他方では内部空間内で長持ちする電気接続が保証されることが望ましい。この場合、流れ媒体(例えば液体または気体)ならびに汚れ、微粒子および泥の流入が防がれるまたは少なくとも大幅に阻止されることにより、長持ちするということが達成され得る。ただし、プラグと対応プラグとの嵌合状態では、プラグと対応プラグとにより包囲された(共通の)内部空間容積が減少する。嵌合時にシール位置もしくはシールポジションからシール作用が生じると直ちに、内部空間容積内の空気は引き続く嵌合において最早容易に逃げることができなくなり、これにより、差込み抵抗もしくは差込み力が大幅に高められる。
【0007】
極遅くに(例えば所定の差込み位置の直前で)初めて生じるシール作用を想定することは、技術的な要件および/または顧客の要求により妨げられる場合がある。
【0008】
したがって、所定の差込み位置に到達したことが簡単かつ確実に、例えば制限された視認条件下でも認識され得、その内部空間が、対応差込みコネクタとの嵌合状態において外部空間もしくは差込みコネクタの外部環境に対してシールされている差込みコネクタを提供する、という要望が生じ得る。同時に、対応差込みコネクタと嵌合する際の差込みコネクタの差込み力は最小限であることが望ましい。内部空間内に密封された空気体積による嵌合時の差込み力の増大は、可能な限り回避されることが望ましい。同様に、差込みコネクタと対応差込みコネクタとの差込み解除に際して必要な力も可能な限り、密閉された内部空間容積の拡大により生じる負圧に抗する仕事によって高められないことが望ましい。
【0009】
発明の利点
前記要望には、独立請求項に記載の本発明の対象により応えることができる。本発明の有利な実施形態は、各従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明の第1の態様では、差込み方向に沿って対応差込みコネクタに嵌合する差込みコネクタを提案する。差込みコネクタは、内部空間と、内部空間内に配置されたコンタクト部材とを備えたケーシングを有している。差込みコネクタはさらに、コネクタ位置保証手段(CPA)を有している。ケーシングは、ケーシングの外部空間に対して内部空間を圧力補償する圧力補償要素を有している。CPAは、ケーシングに配置されておりもしくは取り付けられており、第1の位置と第2の位置との間でケーシングに対して相対的に移動可能である。CPAにはシール部材もしくはシール手段が設けられており、この場合、第2の位置においてシール部材により、圧力補償要素が外部空間に対してシールされている。
【0011】
換言すると、差込みコネクタにおいて、CPAはシール部材に結合されている、ということが想定されている。これにより、CPAがその、正しい差込みポジションを示す終端位置(第2の位置)に移動することで、内部空間用の圧力補償要素もシールされることになる。このためにシール部材は弁機能を有している必要はない。差込み接続部の差込み解除もしくは取外しに際しては、まずCPAを第2の位置から(例えば出発位置に)戻す必要があり、これにより、圧力補償要素のシール部が再び開放されてもよい。
【0012】
CPAは、ケーシングに紛失不能かつ移動可能に取り付けられていてもよい。CPAは、例えばリンク内でガイドされていてもよい。
【0013】
これにより有利には、CPAを介して、差込みコネクタと対応差込みコネクタとの正しい嵌合が、簡単、安全かつ確実に認識され得る、ということが生ぜしめられる。同時に、差込み力もしくは取外し力が、内部空間内に溜められたもしくは封入された空気体積により増大されることはない。それというのも、空気体積は、圧力補償要素を介して差込みコネクタの外部空間もしくは外部環境と連通可能もしくは交換可能であるからである。これにより有利には、嵌合時に差込み力を増大させる過剰圧力が内部空間に生じることはない。同様に、有利には、差込み接続部を取り外す際に取外し力を高める恐れがある内部空間内の負圧の形成に抵抗する作用が生じる。有利には、最終的に差込みコネクタはシールされた差込み接続部の提供を可能にする、ということが保証されている。それというのも、対応差込みコネクタとの嵌合動作において、確かに圧力補償ひいては流体流との交換が可能にはなるが、ただし同時に、差込み動作を終了しCPAを作動させた後は、外部空間に対して内部空間のシールが生ぜしめられることが保証されているからである。
【0014】
このようにしてCPAは、有利には複数の機能を果たしている。すなわち:
・CPAは、正しい差込み状態もしくは差込み位置の確認を可能にし、
・さらにCPAは嵌合状態において、CPAが圧力補償要素をシールすることにより、シール手段と共に、外部空間からの、内部空間の(媒体)密なシールを生ぜしめ、
・最終的にCPAは、圧力補償要素と協働して、差込み動作もしくは取外し動作の最中に、このために必要な力が不必要に増大させられないことを可能にする。それというのも、差込み動作もしくは取外し動作の最中には、CPAは第2の位置にではなく、例えば第1の位置に位置しており、圧力補償要素はシール手段によりシールされないからである。
【0015】
内部空間内にコンタクト部材は1つだけ配置されて、例えば差し込まれていてもよいということ、しかしまた内部空間内には複数のコンタクト部材、例えば2つまたは3つ以上のコンタクト部材が配置されていてもよい、ということは自明である。
【0016】
差込みコネクタの内部空間内には、コンタクト部材を収容するために構成されたコンタクト室が配置されていてもよい。また、内部空間内に複数のコンタクト室が配置されていてもよい、ということは自明である。1つのコンタクト室内に複数のコンタクト部材が配置されていてもよい。また、各コンタクト室内にただ1つのコンタクト部材だけが配置されていてもよい。
【0017】
コンタクト部材は、コンタクト室内で例えば係止されていてもよい。このために、コンタクト部材には例えば(弾性的に可逆的に変向可能な)係止ランスが設けられていてもよく、コンタクト室内にはアンダカットが設けられていてもよい。係止ランスをコンタクト室の壁に設けることも可能であってもよく、この場合、係止ランスはコンタクト部材のアンダカット内に係合する。
【0018】
コンタクト部材は、差し込まれたまたは隣接して配置された対応コンタクト部材との確実な電気的な接触接続を生ぜしめる例えば1つまたは複数のコンタクト薄板を有していてもよい。
【0019】
コンタクト部材(もしくは複数のコンタクト部材)は、対応差込みコネクタの対応コンタクト部材に接触接続するように構成されていてもよい。コンタクト部材は、例えば打抜き・曲げ部材として金属薄板から形成されていてもよく、対応コンタクト部材を挿入することができるコンタクトケースを有していてもよい。コンタクト部材は、導線またはケーブルに電気的に接続されていてもよい。
【0020】
対応コンタクト部材は、例えばピン、コンタクトナイフ等として形成されていてもよい。
【0021】
対応コンタクト部材が雌コンタクトの形態で形成されていてもよく、コンタクト部材は雄コンタクトの形態で形成されていてもよい、ということは自明である。
【0022】
第2の位置において、CPAはシール手段と共に、ケーシングの外部環境に対して圧力補償要素をシールする。
【0023】
さらに、差込み接続部をシールするために、差込みコネクタもしくは対応差込みコネクタに別のシール部材が設けられていてもよい、ということは自明である。これらの別のシール部材は、例えばケーシングを貫通するケーブル貫通部の領域に配置されていてもよい。嵌合状態において差込みコネクタと対応差込みコネクタの各ケーシング壁の間に配置されるラジアルシールが設けられていてもよい。択一的に、シールは外部のシール部材により生ぜしめられてもよい。
【0024】
本願の文脈において本文中に特記しない限り、半径方向は、差込み方向に対して垂直な方向を意味し、周方向は、差込み方向の周りを取り囲むように延びる方向を意味する。
【0025】
CPAは、差込みコネクタと対応差込みコネクタとが所定の差込み位置で嵌合している場合にのみ、第2の位置へ移動可能であるように構成されていることにより、有利には、差込みコネクタと対応差込みコネクタとから成る差込み接続部が正しく嵌合させられたということを、組立工またはオペレータが常に確実に認識することができる、ということが生ぜしめられる。有利には、正しい嵌合、つまり例えば終端位置、終端係止位置等(つまり所定の差込みポジション)は、劣悪な視認状況下でもまたは狭い取付け状況下でも確実に認識され得る。それというのも、CPAは所定の差込み位置に達した場合にのみ移動され得るからである。CPAは、差込みコネクタが対応差込みコネクタに嵌合させられる前は、例えば最初に第1の位置に位置していてもよい。
【0026】
所定の差込みポジションにまだ到達していない場合にCPAの第2の位置への移動を防ぐ、機械的なロックが設けられていてもよい。移動は、例えばガイド構造体、例えばガイドリンクに沿ってCPAを差込みコネクタに対して相対的に摺動または回動させることにより生ぜしめられてもよい。所定の差込み位置への到達後には、CPA用の例えば機械的なロックは克服可能であってもよく、次いでCPAは第2の位置に移動可能である。
【0027】
圧力補償要素が、ケーシングの開口により形成されていることにより、特に簡単かつ廉価に製造可能な圧力補償要素もしくは差込みコネクタケーシングが提供され得る。
【0028】
開口は、1つだけ設けられていてもよい、ということは自明である。しかしまた、例えば互いに近くにまとまって位置する複数の開口が設けられていてもよい。複数の開口が圧力補償要素を形成する場合には、CPAの第2の位置において全ての開口が、CPAのシール部材もしくはシール手段により外部空間に対してシールされる。
【0029】
開口もしくは貫通開口は、例えばケーシングの壁に設けられた開口であってもよい。この開口は、例えばケーシングの内部空間を外部空間に接続するため、内部空間内の空気は、外部空間からの空気と連通可能であるもしくは交換され得る。開口は、好適には対応差込みコネクタを挿入するための開口ではない開口であってもよい。開口は、例えば内部空間のシールされる部分、つまり例えば既存のラジアルシールの奥側に位置している。
【0030】
開口が、ダイヤフラムにより覆われており、この場合、ダイヤフラムは水密ではあるが気体は通すように構成されていることにより、有利には、CPAが依然として第2の位置に移動させられていない場合に、内部空間内に液体または泥、汚れまたは塵埃が流入するリスクが最小化される、ということが生ぜしめられる。これにより、有利には内部空間が、例えば差込みコネクタの運搬または差込みコネクタの取扱いに際して保護される。さらにこれにより有利には、差込み接続部の取外しに際してCPAが第2の位置から第1の位置へ移動させられた後で、泥、汚れ、微粒子または液体が、外部空間から開口を介して内部空間内へ流入する可能性が阻止される。このことは例えば、差込み接続部がエンジンルーム内で外される場合、エンジンルーム内の差込み接続部の周辺環境および差込み接続部自体も経時的に汚染される可能性がありかつ湿分にも晒されている可能性があるため、自動車分野において重要である。
【0031】
1つの改良は、シール部材が栓として形成されていることを想定しており、この場合、CPAの第2の位置において、シール部材は開口内に挿入されている。これにより有利には、開口が簡単、安全かつ永続的に、確実にシールされる、ということが生ぜしめられる。このように形成されたシール部材は、例えば大きな温度変動、振動等の挑戦的な運転条件に対しても、有利には特に丈夫である。この場合、栓は、例えば瓶に挿入するコルクと同様に、開口内に挿入され得る。
【0032】
択一的または追加的に、CPAの第2の位置において、シール部材は(好適には弾性的に形成されて)全面的に開口に押し当てられている、ということが想定されていてもよい。この場合、シール部材は例えば特に開口の縁部または縁部の周りに押し当てられていると同時に、開口を全面的に覆い隠している。有利には、シール部材は縁部との接触領域に平らなもしくは平面的な表面を有しており、これにより、漏れを回避することができる。これにより、有利には特に簡単なシールが可能である。さらに有利には、これにより開口の縁部も汚染前に保護される。最終的に、このようなシール部材は特に廉価に製造され得る。それというのも、開口の縁部が確実に覆われている間は、シール手段のサイズ誤差に関係無く、シールが保証されているからである。このように形成されたシール手段は、さらに有利には、内部空間内に突然過剰圧力が生じた場合には、圧力リリーフ弁の形式で働くことができる。
【0033】
択一的または追加的に、シール部材はスリーブの形式で形成されている、ということが想定されていてもよく、この場合、CPAの第2の位置において、シール部材は開口を覆うように被せられている。換言すると、シール部材は開口の縁部を覆うように被せられており、例えば瓶の注ぎ口を覆う王冠コルクと同様に、開口を全面的に覆っており、この場合、シール機能は例えばさらに追加的に、スリーブの内壁に開口の外壁が当て付けられることにより生ぜしめられてもよい。これにより、シール手段の、開口からの距離に誤差がある場合でも確実なシールを生ぜしめる、特に簡単なシール手段が提供されることになる。スリーブの、カラーと呼ばれることもある壁により、カラーの高さに相当する距離に誤差が生じた場合でも、シールは保証され得る。
【0034】
択一的または追加的に、シール部材はOリングとして形成されていてもよく、この場合、CPAの第2の位置において、シール部材はケーシングに当て付けられ、開口の縁部を完全に包囲している。これにより、特に簡単かつ廉価なシール手段が提供される。Oリングは、多数の品揃えの材料、コード太さおよび直径が入手可能であり、開口の大きさもしくは開口の直径が変わっても、種々様々な差込みコネクタのために問題なく廉価に、相応して適合するOリングを選択することができ、このようにして、シールは常に保証されている。ケーシングの種々様々な材料または異なる運転条件についても問題なく、適合するOリングを廉価に選択して使用することができる。
【0035】
CPAには、ただ1つのシール手段だけが配置されているわけでなくてもよい、ということは自明である。2つ以上のシール手段を設けることも可能である。このことは、例えば複数の開口が圧力補償要素を形成する場合に当てはまることがある。しかしまた、複数のシールの段状配置により、シールを特に確実に形成する、ということが想定されていてもよい。例えば-例示的であるに過ぎないが-シール部材は、Oリングにより包囲された栓であってもよい。もちろん、その他全ての2重またはそれどころか3重に組み合わせられたシール手段、例えばスリーブにより包囲されており、スリーブもやはりOリングにより包囲された、栓としてのシール手段も可能である。
【0036】
シール手段は、例えば弾性材料から製造されていてもよい、ということは自明である。弾性材料には、例えばゴム、シリコーン等が含まれていてもよい。
【0037】
1つの改良では、開口に、パイプ状の接続管片が設けられている、ということが想定されており、この場合、接続管片の、開口とは反対の側の連通端部には別の開口が設けられており、この場合、CPAは、少なくとも第2の位置において接続管片の連通端部に面する第1の端部を有しており、この場合、シール部材はCPAの第1の端部に配置されている。これにより有利には、開口が、CPAもしくはシール手段により閉鎖されていない状態で不都合に覆われまたは閉じられ、内部空間と外部空間との間の圧力補償が不都合に妨げられるリスクが低下する、ということが生ぜしめられる。さらにこれにより有利には、外部空間から内部空間までの距離が延長され、その結果、場合により侵入する汚れまたは湿分が、最初に接続管片の内壁に堆積することができるようになっており、最初に内部空間に到達するということが一切なくなる。最後に、これにより有利には、開口に対する空気流出もしくは空気流入の方向が変向もしくは回動され得、これにより、CPAとその所定の移動方向とに基づくより簡単なシールが可能になる。
【0038】
パイプ状の接続管片は、例えば内部空間からの空気を外部空間に連通することができる一種の通路を成していてもよい。この場合、接続管片は、例えば湾曲部を有していてもよく、これにより別の開口は、ケーシングに設けられた開口とは異なる方向に向いている。このことは、内部空間内への汚れまたは湿分の侵入を大幅に有利に減らすことができる。しかしまた、接続管片はまっすぐに形成されていてもよく、これにより別の開口は、ケーシングに設けられた開口と同じ方向に向いている。
【0039】
よって有利には、接続管片により、例えばCPAに配置されたシール手段までの距離が減少される、ということが生ぜしめられてもよい。また有利には、CPAの第2の位置への移動時にシール手段が内部空間を確実に外部空間からシールすることができるように、別の開口が方向付けられている、ということが生ぜしめられてもよい。差込みコネクタの設計、つまりケーシングにおけるCPAの配置、CPAの移動方向およびケーシングに設けられる開口の位置に応じて、接続管片はシール構想の機能を簡単にし得るまたはそもそも差込みコネクタにおいて大幅な再設計を行う必要無しに初めて可能にし得る。このようにして、この構想は、有利には既存の差込みコネクタでも小さな手間でもって実行され得る。
【0040】
シール部材がCPAの第1の端面に配置されていることにより、有利には、CPAの特に簡単な製造が可能になる。さらにこのようにして、場合により欠陥のあるシール部材を、有利には特に簡単に交換することができる。第1の端面は、例えばCPAの第1の位置から第2の位置への移動により規定された方向に向いていてもよい。これにより有利には、シール手段が第2の位置において開口もしくは別の開口内に(例えば栓として)挿入もしくは押圧されかつ/または開口もしくは別の開口の縁部に押し当てられ、開口もしくは別の開口を(例えば開口縁部の領域において例えば平らなもしくは平面的なシール部材として)覆いかつ/または開口もしくは別の開口の縁部を(例えばスリーブとして)覆うように被せられる、ということが保証される。
【0041】
シール部材は、栓として形成されている、ということが想定されていてもよく、この場合、CPAの第2の位置において、シール部材は接続管片の別の開口内に挿入されている。これにより、有利には特に安全、確実かつ丈夫なシールが生ぜしめられる。この場合、栓としての構成に関して上述した利点も同様に当てはまる。
【0042】
択一的または追加的に、CPAの第2の位置において、シール部材は全面的に、接続管片の別の開口に押し当てられている、ということが想定されていてもよい。これにより、シール部材の廉価な製造が生ぜしめられる。それというのも、例えば別の開口またはシール部材の面の直径において、比較的大きな製造誤差が可能であるからである。有利には、シール部材は縁部との接触領域に平らなもしくは平面的な表面を有しており、これにより、漏れを回避することができる。この場合、全面的な押当てに関して上述した利点、特に圧力リリーフ弁として可能な機能も同様に当てはまる。
【0043】
択一的または追加的に、シール部材はスリーブの形式で形成されていてもよく、この場合、CPAの第2の位置において、シール部材は接続管片の連通端部を覆うように被せられている。これにより、シール手段の、別の開口からの距離に誤差がある場合でも確実なシールを生ぜしめる、特に簡単なシール手段が提供されることになる。スリーブの、カラーと呼ばれることもある壁により、カラーの高さに相当する距離に誤差が生じた場合でも、シールは保証され得る。接続管片の場合、スリーブの形式で形成されるシール手段もしくはシール部材は、例えばCPAの第2の位置において接続管片の別の開口の領域の縁部を包囲してシールするOリングとして形成されていてもよい。
【0044】
この場合、スリーブとしての構成およびOリングとしての構成に関して上述した利点も同様に当てはまる。
【0045】
本発明の第2の態様では、差込みコネクタユニットを提案する。差込みコネクタユニットには、上述したような差込みコネクタが含まれている。差込みコネクタユニットにはさらに、対応差込みコネクタケーシングを備えた対応差込みコネクタが含まれており、この場合、対応差込みコネクタケーシング内には、コンタクト部材に接触接続する対応コンタクト部材が設けられている。
【0046】
差込みコネクタと対応差込みコネクタとの嵌合状態において、差込み接続部が形成されている。
【0047】
差込みコネクタユニットでは、所定の差込み位置(例えば最終位置、終端係止位置、終端位置等)に到達したか否かを、CPAを用いて有利には安全かつ確実に確認することができる。さらに圧力補償要素を介して、差込み接続部の嵌合中の小さな差込み力、もしくは差込み接続部の差込み解除中もしくは解消中もしくは取外し中の小さな取外し力が保証されている。最後に、有利には、CPAが第2の位置に移動させられた嵌合状態では、流れ媒体、特に液体や汚れまたは泥も、外部空間から圧力補償要素を通って差込みコネクタもしくは差込み接続部の内部空間内もしくは差込みコネクタと対応差込みコネクタとの共通の内部空間内に流入することが一切できない、ということが保証される。
【0048】
差込みコネクタと対応差込みコネクタとが所定の差込み位置において嵌合しておりかつCPAが第2の位置に移動させられた状態において、ケーシングの内部空間がケーシングの外部空間に対してシールされていることにより、有利には、コンタクト部材と対応コンタクト部材との間に耐用年数にわたり安全で確実な電気的な接続が生ぜしめられる。コンタクト部材および/または対応コンタクト部材の腐食のリスクも、差込みコネクタユニットに2つ以上のコンタクト部材・対応コンタクト部材対が設けられている場合の、例えば内部空間内の湿分による短絡の危険と同様に低下させられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明の別の特徴および利点を、当業者は添付の図面を参照して、以下の例示的な、ただし本発明を限定はしないと解釈されるべき実施形態の説明から看取することができる。
図1a】第1の位置にあるCPAを備えた、非嵌合差込み位置にある差込みコネクタおよび対応差込みコネクタ(差込みコネクタユニット)を示す概略横断面図である。
図1b】所定の差込み位置において差込み接続を確立した後の、図1aに示した差込みコネクタユニットを示す図であり、CPAは引き続き第1の位置に位置している。
図1c図1bに示した差込み接続部において、CPAが第2の位置に移動させられたところを示す図である。
図2a】第1の位置にあるCPAを備えた、非嵌合差込み位置にある別の差込みコネクタおよび別の対応差込みコネクタ(別の差込みコネクタユニット)を示す概略横断面図である。
図2b】所定の差込み位置において差込み接続を確立した後の、図2aに示した差込みコネクタユニットを示す図であり、CPAは引き続き第1の位置に位置している。
図2c図2bに示した差込み接続部において、CPAが第2の位置に移動させられたところを示す図である。
【0050】
図1aには、差込みコネクタ1と対応差込みコネクタ60とを有する差込みコネクタユニット100の概略横断面図が示されている。
【0051】
差込みコネクタ1は、差込み方向Eに沿って対応差込みコネクタ60に嵌合するように構成されている。差込みコネクタ1は、内部空間3と、内部空間3内に配置された1つのコンタクト部材20とを備えたケーシング2を有しており、この場合、複数のコンタクト部材20が設けられていてもよく、図示の横断面では、これらのコンタクト部材20のうちの1つだけが見えている。差込みコネクタ1は、コネクタ位置保証手段(CPA,4)を有している。ケーシング2は、ケーシング2の外部空間6に対して内部空間3を圧力補償する圧力補償要素5を有している。CPA4は、ケーシング2に配置されており、第1の位置P1と第2の位置P2との間でケーシング2に対して相対的に移動可能である。CPA4にはシール部材30が設けられており、例えば紛失不能に間接的にまたは直接に固定されているもしくは取り付けられている。差込みコネクタ1と対応差込みコネクタ60との嵌合を差込み力の増大無しに可能にするため、引き続いて所定の差込み位置に到達したことを認識するため、かつ同時に嵌合状態において内部空間3内への湿分、汚れまたは泥の侵入を防ぐために、第2の位置P2では、圧力補償要素5はシール部材30により外部空間6に対してシールされている(これについては図1cも参照)、ということが想定されている。
【0052】
半径方向Rは、差込み方向Eに対して垂直に延びており、周方向Uは、差込み方向Eの周りに延びている。
【0053】
差込みコネクタ1は、第1のケーブル50に接続されているもしくは第1のケーブル50を有している。第1のケーブル50は、内側から外側に見て第1の導体52と、第1の導体52を包囲する第1の絶縁体51とを有している。基本的に、さらに遮蔽導体と外側絶縁体とが設けられてもよく、この場合、外側絶縁体は遮蔽導体を包囲する。第1のケーブル50は、複数の第1の導体52を有していてもよい。例えば、第1の導体52にはそれぞれ、各コンタクト部材20が接続されていてもよい。また、複数のコンタクト部材20と1つの第1の導体52との電気的な接続も可能である。第1の導体52は、例えば信号を伝達するように形成されていてもよい。しかしまた第1の導体52は、高電流(例えば10A超またはそれどころか50A超)を伝達するようにかつ/または高電圧(例えば40V超またはそれどころか100V超またはそれどころか400V超)を印加するように形成されていてもよい。高電流の伝達用に、第1の導体52は、例えば1mm超または4mm超の横断面積を有していてもよい。
【0054】
対応差込みコネクタ60は、対応差込みコネクタケーシング61を有しており、この場合、対応差込みコネクタケーシング61内には、コンタクト部材20が接触接続する対応コンタクト部材62が設けられている。対応コンタクト部材62は、例えばピンまたはコンタクトナイフとして形成されていてもよい(雄コンタクト)。基本的に、対応コンタクト部材62は例えば雌コンタクトとして形成されていてもよい、またはコンタクト部材20と対応コンタクト部材62とは、接触接続状態において互いに押圧される舌片の形式で形成されている、ということが想定されていてもよい。対応差込みコネクタ60内にもしくは対応差込みコネクタ60に接して複数の対応コンタクト部材62が設けられている、ということも可能である。
【0055】
対応差込みコネクタ60は、第2のケーブル70に接続されているもしくは第2のケーブル70を有している。第2のケーブル70は、内側から外側に見て第2の導体72と、第2の導体72を包囲する第2の絶縁体71とを有している。基本的に、さらに遮蔽導体と外側絶縁体とが設けられてもよく、この場合、外側絶縁体は遮蔽導体を包囲する。第2のケーブル70は、複数の第2の導体72を有していてもよい。例えば、第2の導体72にはそれぞれ、各対応コンタクト部材62が接続されていてもよい。また、複数の対応コンタクト部材62と1つの第2の導体72との電気的な接続も可能である。第2の導体72は、例えば信号を伝達するように形成されていてもよい。しかしまた第2の導体72は、高電流(例えば10A超またはそれどころか50A超)を伝達するようにかつ/または高電圧(例えば40V超またはそれどころか100V超またはそれどころか400V超)を印加するように形成されていてもよい。高電流の伝達用に、第2の導体72は、例えば1mm超または4mm超の横断面積を有していてもよい。
【0056】
差込みコネクタ1の内部空間3内には、コンタクト部材20を収容するコンタクト室11が配置されている。内部空間3内には複数のコンタクト室11が配置されていてもよい。各コンタクト室11内にはコンタクト部材20が1つだけ位置し得るが、しかしまた各コンタクト室11内に複数のコンタクト部材20が挿入されて、例えば差し込まれていてもよい。図1aに示す横断面では、1つのコンタクト室11のみが認められる。
【0057】
コンタクト部材20はコンタクトケース23を有しており、コンタクトケース23内には、正面側に配置された、つまり対応差込みコネクタ60に面した差込み開口26を介して、対応差込みコネクタ60の対応コンタクト部材62が差し込まれてもよい。コンタクトケース23の内部には、例えばコンタクト薄板24が配置されていてもよく(ここでは2つのコンタクト薄板24が見えている)、コンタクト薄板24は嵌合状態(図1c)において、対応コンタクト部材62に対する電気的なコンタクトを形成もしくは保証もしくは改良する。この場合、コンタクト部材20の後端部には-例示的なものに過ぎないが-第1の導体52を固定する導電クリンプ22と、第1の絶縁体51を固定する絶縁クリンプ21とが設けられている。コンタクトケース23はさらに、例えば弾性的に可逆的に移動可能な係止ランス25を有しており、係止ランス25により、コンタクト部材20はコンタクト室11のアンダカット12において係止され得る。
【0058】
図示の実施例では、ケーシング2の前端部にラジアルシール13が設けられているもしくは配置されているもしくは取り付けられている。ラジアルシール13は、対応差込みコネクタ60との嵌合状態において、内部空間3を外部空間6に対してシールし、これにより、内部空間3内への湿分、液体、汚れおよび泥の侵入を防ぐ。
【0059】
この場合、CPA4は、差込みコネクタ1と対応差込みコネクタ60とが所定の差込み位置において嵌合している場合にのみ、第2の位置P2に移動可能であるように構成されている。この所定の差込み位置に到達していない状態では、例えばCPA4の第1の位置P1から第2の位置P2への移動または回動は機械的に妨げられている、ということが想定されていてもよい。同時に、差込み接続の解消、すなわち差込みコネクタ1と対応差込みコネクタ60との差込み解除は、事前にCPA4が移動させられ、CPA4が最早第2の位置P2に位置していない場合にのみ可能である、ということが想定されていてもよい。このことは例えば、第1の位置P1に向かってまたはそれどころか第1の位置P1までCPA4を移動または回動させることにより生ぜしめられてもよい。この移動により、外部空間6に対する圧力補償要素5のシールも解消される。
【0060】
図示の実施例では、圧力補償要素5はケーシング2に設けられた開口7により形成されており、この場合は別の形式の圧力補償要素5、例えば複数部分から成るケーシング2も同様に考えられ、この場合、各ケーシング部分は例えば互いに摺動可能である。前記開口7は、本実施例ではケーシングの側壁14に位置している。しかしまた、開口7はケーシング2の底部15において第1のケーブル50の近くに位置することも可能である。開口7は、例えば本実施例において例示的に設けられたラジアルシール13に対して、このラジアルシールの後方に、つまりより奥の内部空間3内に配置されていてもよい。
【0061】
図1a~図1cに示す実施例では、開口7にパイプ状の接続管片40が設けられており、この場合、接続管片40の、開口7とは反対の側の連通端部41に、別の開口42が設けられている。接続管片40は、ここでは湾曲した形状を有しており、これにより別の開口42は、差込み方向Eとは反対の方向に向いているのに対し、開口7は、半径方向Rにおいて内部空間3から外部空間6に向いている。つまり接続管片40は、向きを90°だけ回動させている。これにより、別の開口42内に侵入する湿分または汚れは、最初に接続管片40の内壁に堆積してもよい。これにより、汚れや湿分が内部空間3内に流入するリスクが低下する。
【0062】
CPA4は、ここでは少なくとも第2の位置P2において接続管片40の連通端部41に面する第1の端部9を有している。シール部材30は、ここではCPA4の第1の端部9に配置されている。シール部材30は、本実施例では栓31として形成されており、栓31は、例示的であるに過ぎないが複数のノッチを備えて形成されている。栓31は、好適には別の開口42に比べて過剰寸法を有しているため、栓31が別の開口42内に挿入されるもしくは差し込まれるもしくは押し込まれると、別の開口42をシールすることになる。栓31は、例えば弾性材料を有していてもよく(例えばゴムまたはプラスチックまたはコルク)、これにより、例えば温度変動に際してもシール機能は維持され続ける。
【0063】
図1a~図1cに示す実施例では、シール部材30は、CPA4の第1の端面10に配置されている。第1の端面10は、ここではCPA4の第1の位置P1から第2の位置P2への移動により規定された方向に向いている。図示の実施例では、CPA4は上から下に向かう、つまり差込み方向Eに沿った移動により、第1の位置P1から第2の位置P2に移動させられてもよい。
【0064】
図1bには、所定の差込み位置において差込み接続を確立した後の、図1aに示した差込みコネクタユニット100が示されており、所定の差込み位置においてCPA4は引き続き第1の位置P1に位置している。つまり、オペレータもしくは組立工は、既に正しい差込みポジションもしくは差込み状態において差込み接続を確立している。ただし、CPA4は依然として移動させられてはいないため、接続管片40に設けられた別の開口42は引き続き開いており、内部空間3から外部空間6への媒体交換もしくは流体連通が依然として可能である。
【0065】
図1cには、図1bに示した差込みコネクタユニット100においてCPA4が(CPA4内に示した矢印の方向に沿って)第2の位置P2に移動しているところが示されている。今、栓31の形態のシール部材30は別の開口42内に挿入されており、これにより、外部空間6から内部空間3をシールしている。
【0066】
基本的に、開口7および/または別の開口42にもしくは接続管片40内に、気体は通すが液体は通さないダイヤフラム(図2a~図2c参照)を配置するもしくは取り付けることも可能である。これにより、汚れ、泥および液体の侵入が追加的に防止され得る。
【0067】
図2a~図2cには、1つの別の差込みコネクタユニット100が示されている。
【0068】
図2aには、第1の位置P1にあるCPA4を備えた、非嵌合差込み位置にある別の差込みコネクタ1と別の対応差込みコネクタ60とを示す概略横断面図が示されている。
【0069】
図2aに示す差込みコネクタ1は、図1aに示した差込みコネクタととりわけ、図2aに示す差込みコネクタ1では開口7の内部空間3に面した側にダイヤフラム8が配置されている、という点において相違している。このダイヤフラム8は、例えば気体は通すが液体は通さない。よって、差込みコネクタ1と対応差込みコネクタ60との嵌合状態において、内部空間3から空気は逃げることができるが、(液状の)水分や汚れや泥の侵入は防止されるまたは少なくとも大幅に減少される。
【0070】
さらに、ここに示す差込みコネクタ1では、開口7として形成された圧力補償要素5に接続管片40が配置されていない。
【0071】
CPA4の一方の面18にシール部材30が配置されており、この場合、面18はケーシング2に面している。シール部材30は、ここでは例えばOリング32として形成されている。しかしまた、スリーブとしてまたは別の形態で形成されていてもよい。
【0072】
CPA4の第1の位置P1では、開口7は開いているため、内部空間3と外部空間6との間に流体案内接続が生じている。
【0073】
図2bには、所定の差込み位置において差込み接続を確立した後の、図2aに示した差込みコネクタユニット100が示されている。ただしCPA4は引き続き第1の位置P1に位置しているため、開口7は引き続き開いている。
【0074】
図2cには、図2bに示した差込み接続部において、CPA4が例えばオペレータもしくは組立工により第2の位置P2に移動させられたところが示されている。Oリング32として形成されたシール部材30もしくはシール手段は、ケーシング2に当て付けられていると共に、開口7の縁部を完全に包囲している。これにより、最早空気は内部空間3から逃げることができないもしくは内部空間3内に侵入することができない。それというのも、内部空間3は対応差込みコネクタ60に面した側において、ラジアルシール13と対応差込みコネクタケーシング61とによりシールされているからである。面18もしくはCPA4は、開口7とは反対の側において、内部空間3と外部空間6との間の流体連通もしくは流体案内を防いでいる。
【0075】
最後に、差込みコネクタ1もしくは差込みコネクタユニット100は、自動車における適用もしくは使用を想定されているもしくは想定されていてもよいもしくは自動車における適用もしくは使用に適しているもしくは適していてもよいもしくは自動車における適用もしくは使用のために構成されているもしくは構成されていてもよい、という点に留意されたい。ただし、差込みコネクタ1は、このような適用もしくは使用に限定はされない。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c