(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】GIPRアゴニスト化合物
(51)【国際特許分類】
C07K 14/605 20060101AFI20230220BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230220BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230220BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
C07K14/605 ZNA
A61P3/10
A61P3/04
A61K38/16
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2022506052
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 US2020043988
(87)【国際公開番号】W WO2021021877
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-28
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】アルシナ-フェルナンデス,ホルヘ
(72)【発明者】
【氏名】ガイザー,アンドレア レネー
(72)【発明者】
【氏名】グオ,リリ
(72)【発明者】
【氏名】カイザー,サマンサ グレイス ライオンズ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ク,ホンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ロール,ウィリアム クリストファー
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/125929(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/066744(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/111971(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/155407(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/605
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号7または配列番号10を含む、化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記化合物が、配列番号7を含む、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記化合物が、配列番号10を含む、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項5】
糖尿病、肥満、およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される病気を治療するための薬剤の製造における、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項6】
インスリン療法を受けている患者における糖尿病を治療するための薬剤の製造における、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項7】
前記病気が、肥満である、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記病気が、2型糖尿病である、請求項5に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体で活性を有する化合物に関する。本発明はまた、GIP受容体において、延長された作用持続時間を有する化合物に関する。これらの化合物は、2型糖尿病(「T2DM」)の治療に有用であり得る。また、これらの化合物は、肥満の治療に有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
過去数十年間、糖尿病の有病率は上昇し続けている。T2DMは、糖尿病全体の約90%を占める、糖尿病の最も一般的な形態である。T2DMは、主にインスリン耐性と関係がある高血糖値を特徴とする。T2DMの現在の標準治療としては、食事制限および運動、経口薬での治療、ならびにGLP-1受容体アゴニストなどのインクレチンベースの療法を含む、注射可能な血糖降下薬での治療が挙げられる。T2DMの治療には、現在様々なGLP-1受容体アゴニストが利用可能であるが、現在市販されているGLP-1受容体アゴニストは、吐き気および嘔吐といった胃腸管系の副作用のため、一般的に投与量が制限されている。
【0003】
利用可能なGLP-1受容体アゴニストの投与経路として、皮下注射が一般的である。経口薬およびインクレチンベースの療法が不十分な場合は、インスリン治療が検討される。今日利用可能な治療の進歩にもかかわらず、多くのT2DM患者は、依然血糖コントロール目標を達成できない。糖尿病は制御できないと、患者の罹患率および死亡率の上昇に関わる各種疾患につながる。
【0004】
より多くのT2DM患者が血糖治療目標を達成できるような治療が必要とされている。
【0005】
肥満は、脂肪組織量の過剰な蓄積につながる複雑な内科的障害である。今日、肥満は、好ましくない健康上の転帰および罹病率に関連する世界的な公衆衛生上の懸念である。肥満の患者の望ましい治療においては、過度の体重が低減され、肥満に関連する併存症が改善され、かつ長期的な減量が維持されるべきである。利用可能な肥満の治療は、重度肥満の患者にとっては特に不十分である。かかる治療を必要とする患者に治療的減量を誘導させるための代替治療の選択肢が必要とされている。
【0006】
WO2016/111971は、GLP-1RおよびGIPRアゴニスト活性を有するとされるペプチドを説明している。また、WO2013/164483は、GLP-1RおよびGIPR活性を有するとされる化合物を開示している。
【0007】
WO2018/181864は、GIPRアゴニスト活性を有するとされる化合物を開示している。
【0008】
かかる治療を必要とする患者のより大部分に効果的なグルコース制御を提供することができるT2DM治療が必要とされている。効果的なグルコース制御を提供でき、かつ良好な副作用プロファイルを有するT2DM治療がさらに必要とされている。重度の肥満の患者など、かかる治療を必要とする患者に治療的減量を提供するための代替治療の選択肢が必要とされている。患者に優れた血糖結果および/またはより望ましい副作用プロファイルを提供するために、インスリン療法および/またはインクレチン療法と組み合わせることができる糖尿病治療の選択肢が望まれている。
【0009】
化合物の投与頻度を減らすことができるため、GIP受容体において延長された作用持続時間を有する化合物が望ましい。
【発明の概要】
【0010】
したがって、実施形態1は、式I:
Z1X1X2EGTX6ISDYSIX13LDX16X17X18QX20X21X22VX24X25X26LX28X29GPSSGAPPPSZ2(配列番号4)
[式中、
Z1は、N末端アミノ基の修飾であり、この修飾はアセチルおよび不存在からなる群から選択され、
X1は、YおよびD-Tyrからなる群から選択され、
X2は、Aib、A、およびD-Alaからなる群から選択され、
X6は、F、αMeF、Iva、L、αMeL、およびαMeF(2F)からなる群から選択され、
X13は、αMeL、A、L、およびAibからなる群から選択され、
X16は、K、E、およびOrnからなる群から選択され、
X17は、IおよびK(2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)2-(γ-Glu)-CO-(CH2)q-CO2Hからなる群から選択され、
X18は、H、A、およびRからなる群から選択され、
X20は、AibおよびQからなる群から選択され、
X21は、DおよびEからなる群から選択され、
X22は、FおよびαMeFからなる群から選択され、
X24は、E、N、Q、およびD-Gluからなる群から選択され、
X25は、Y、4-Pal、W、およびαMeYからなる群から選択され、
X26は、LおよびK(2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)2-(γ-Glu)-CO-(CH2)q-CO2Hからなる群から選択され、
X28は、EおよびAからなる群から選択され、
X29は、G、A、Q、およびTからなる群から選択され、qは、16および18からなる群から選択され、
Z2は、不存在であるか、またはC末端基の修飾であり、この修飾は、アミド化であり、
X17およびX26から選択される1つのみが、K(2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)2-(γ-Glu)-CO-(CH2)q-CO2Hである]
で示される化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0011】
実施形態2は、Z1が、不存在であり、X1が、Yである、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0012】
実施形態3は、X2が、Aibである、実施形態1または実施形態2に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0013】
実施形態4は、X6が、FおよびαMeF(2F)からなる群から選択される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0014】
実施形態5は、X13が、LおよびαMeLからなる群から選択される、実施形態1~4のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0015】
実施形態6は、X16が、KまたはOrnである、実施形態1~5のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0016】
実施形態7は、X16が、Kである、実施形態6に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0017】
実施形態8は、X18が、Hである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0018】
実施形態9は、X20が、Aibであり、X22が、Fである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0019】
実施形態10は、X21が、Dである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0020】
実施形態11は、X25が、4-PalまたはYである、実施形態1~10のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0021】
実施形態12は、
X17が、K(2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)2-(γ-Glu)-CO-(CH2)q-CO2Hであり、
X26が、Lである、実施形態1~11のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0022】
実施形態13は、
X17が、Iであり、
X26が、K(2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)2-(γ-Glu)-CO-(CH2)q-CO2Hである、実施形態1~11のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0023】
実施形態14は、qが、16である、実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0024】
実施形態15は、qが、18である、実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0025】
実施形態16は、
Z1が不存在であり、
X1が、Yであり、
X2が、AibおよびD-Alaからなる群から選択され、X6が、Fであり、
X13が、αMeLおよびLからなる群から選択され、
X16が、KおよびOrnからなる群から選択され、
X18が、HおよびAからなる群から選択され、
X20が、Aibであり、
X22が、Fであり、
X24が、E、N、およびD-Gluからなる群から選択され、
X25が、Y、4-Pal、およびWからなる群から選択され、
X28が、EおよびAからなる群から選択され、
X29が、G、A、およびQからなる群から選択され、qが、16および18からなる群から選択される、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0026】
実施形態17は、
Z1が、不存在であり、
X2が、Aibであり、
X13が、αMeLであり、
X18が、Hであり、
X24が、EおよびD-Gluからなる群から選択され、
X25が、Yおよび4-Palからなる群から選択され、
X28が、Eであり、
X29が、GおよびAからなる群から選択される、
実施形態16に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0027】
実施形態18は、X17が、K(2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)2-(γ-Glu)-CO-(CH2)q-CO2Hであり、
X26が、Lである、実施形態17に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0028】
実施形態19は、X17が、Iであり、X26が、K(2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)2-(γ-Glu)-CO-(CH2)q-CO2Hである、実施形態17に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0029】
実施形態20は、化合物が、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、および配列番号11からなる群から選択される、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0030】
実施形態21は、化合物が、配列番号5である、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。実施形態22は、化合物が、配列番号6である、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。実施形態23は、化合物が、配列番号7である、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。実施形態24は、化合物が、配列番号8である、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。実施形態25は、化合物が、配列番号9である、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。実施形態26は、化合物が、配列番号10である、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。実施形態27は、化合物が、配列番号11である、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0031】
一実施形態は、糖尿病、肥満、およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される病気を治療する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の実施形態1~27のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。一実施形態は、T2DM、肥満、およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される病気を治療する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。一実施形態は、治療的減量を提供するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。一実施形態は、T2DMを治療する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の実施形態1~27のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法である。
【0032】
一実施形態は、療法での使用のための、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態は、糖尿病、肥満、およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される病気を治療するための療法での使用のための、実施形態1~27のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態は、T2DM、肥満、およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される病気を治療するための療法での使用のための、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態において、病気は、T2DMである。一実施形態において、病気は、肥満である。一実施形態において、病気は、1型糖尿病(T1DM)である。一実施形態において、病気は、インスリン療法を受けている患者における糖尿病である。一実施形態において、病気は、メタボリックシンドロームである。
【0033】
式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩は、様々な症状または障害の治療に有用であり得る。例えば、特定の実施形態は、患者におけるT2DMの治療のための方法であって、かかる治療を必要とする対象に、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。一実施形態には、患者における肥満の治療のための方法であって、かかる治療を必要とする対象に、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法がある。一実施形態において、方法は、対象における非治療的な減量の誘導であって、かかる治療を必要とする対象に、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む誘導である。
【0034】
特定の実施形態において、本発明は、患者におけるメタボリックシンドロームの治療のための方法であって、かかる治療を必要とする対象に、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。一実施形態において、方法は、インスリン療法を受けている患者における糖尿病の治療であって、かかる治療を必要とする対象に、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む治療である。本明細書はまた、T2DM、肥満、およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される病気の治療における、メトホルミン、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、ナトリウム-グルコース共輸送体-2(SGLT-2)阻害剤、成長分化因子15モジュレーター(「GDF15」)、ペプチドチロシンチロシンモジュレーター(「PYY」)、修飾インスリン、アミリン、デュアルアミリン-カルシトニン受容体アゴニスト、およびオキシントモジュリンアゴニスト(「OXM」)から選択される1つ以上の薬剤との同時、個別、または逐次の組み合わせに使用するための本発明の化合物を提供する。本明細書はまた、T2DM、肥満、およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される病気の治療における、メトホルミン、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、ナトリウム-グルコース共輸送体-2(SGLT-2)阻害剤、成長分化因子15モジュレーター(「GDF15」)、ペプチドチロシンチロシンアナログ(「PYY」)、修飾インスリン、アミリン受容体アゴニスト、デュアルアミリン-カルシトニン受容体アゴニスト、修飾ウロコルチン2(UCN-2)アナログ、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体アゴニスト、グルカゴン受容体アゴニスト、ならびにオキシントモジュリンおよびそのアナログを含むデュアルGLP-1グルカゴン受容体アゴニストから選択される1つ以上の薬剤との同時、個別、または逐次の組み合わせに使用するための本発明の化合物を提供する。一実施形態では、本発明の化合物は、メトホルミン、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、SGLT-2阻害剤、GDF15、PYY、修飾インスリン、アミリン、デュアルアミリン-カルシトニン受容体アゴニスト、およびOXMから選択される1つ以上の薬剤との、一定投与量の組み合わせで提供される。一実施形態において、本発明の化合物は、メトホルミン、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、SGLT-2阻害剤、GDF15、PYYアナログ、修飾インスリン、アミリン受容体アゴニスト、デュアルアミリン-カルシトニン受容体アゴニスト、修飾ウロコルチン2(UCN-2)アナログ、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体アゴニスト、グルカゴン受容体アゴニスト、ならびにOXMおよびそのアナログを含むデュアルGLP-1グルカゴン受容体アゴニストから選択される1つ以上の薬剤との、一定投与量の組み合わせで提供される。一実施形態において、本発明の化合物は、T2DMおよび肥満からなる群から選択される病気の治療における、メトホルミン、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、SGLT-2阻害剤、GDF15、PYY、修飾インスリン、アミリン、デュアルアミリン-カルシトニン受容体アゴニスト、およびOXMから選択される1つ以上の薬剤との同時、個別、または逐次の組み合わせに使用するための化合物である。一実施形態において、本発明の化合物は、T2DMおよび肥満からなる群から選択される病気の治療における、メトホルミン、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、SGLT-2阻害剤、GDF15、PYYアナログ、修飾インスリン、アミリン受容体アゴニスト、デュアルアミリン-カルシトニン受容体アゴニスト、修飾ウロコルチン-2(UCN-2)アナログ、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体アゴニスト、グルカゴン受容体アゴニスト、ならびにOXMおよびそのアナログを含むデュアルGLP-1グルカゴン受容体アゴニストから選択される1つ以上の薬剤との同時、個別、または逐次の組み合わせに使用するための化合物である。一実施形態において、本発明の化合物は、T2DMおよび肥満からなる群から選択される病気の治療における、メトホルミン、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤、およびSGLT-2阻害剤から選択される1つ以上の薬剤との同時、個別、または逐次の組み合わせに使用するための化合物である。
【0035】
一実施形態には、インスリン療法を受けている患者における糖尿病を治療するための方法であって、それを必要とする患者に、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法がある。一実施形態は、T1DMのための患者投与インスリン療法で処置されることである。一実施形態は、T2DMのための患者投与インスリン療法で処置されることである。一実施形態は、週に1回の投薬である。一実施形態は、患者投与インスリン療法で週に1回皮下処置されることである。インスリン療法が基礎インスリン療法を含む一実施形態が存在する。インスリン療法が食事時インスリン療法を含む一実施形態が存在する。インスリン療法が超速効型インスリン療法を含む一実施形態が存在する。式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩の急性注入で投与されるインスリン療法は、低血糖クランプを受けている患者におけるグルカゴンエクスカーションを強化し、低血糖に対する身体の自然な防御を強化し得る。式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩は、使用されるインスリンの種類または使用されるインスリンの投与量とは無関係に、週に1回投与することができる。一実施形態は、使用されるインスリンの種類または使用されるインスリンの投与量とは無関係に、インスリン療法を受けている患者に有効量として投与される、実施形態1~27のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。一実施形態は、使用されるインスリンの種類または使用されるインスリンの投与量とは無関係に、インスリン療法を受けている患者に有効量として週に1回投与される、実施形態1~27のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。本明細書で使用される場合、「インスリン療法」は、糖尿病の患者を、承認されたインスリン治療を使用して治療することを意味する。そのようなインスリン療法は、熟練した職人および/または臨床医療専門家に知られている。例えば、インスリン療法は、基礎インスリンを使用する治療を含み得る。そのような基礎インスリン「インスリン療法」は、食事時インスリンおよび/または超速効型インスリンを用いた投薬レジメンで使用することができる。本明細書で使用される場合、「食事時インスリン」は、食事と共に投与されるインスリンおよび/または修飾インスリン、例えば、限定されないが、インスリンリスプロを意味する。本明細書で使用される場合、「基礎インスリン」は、例えば、限定されないが、インスリングラルギンなどの、より長い作用持続時間を有する修飾インスリンを意味する。
【0036】
別の実施形態は、T2DM、肥満、およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される病気の治療のための薬剤の製造における、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。一実施形態は、糖尿病、肥満、およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される病気の治療のための薬物の製造における、実施形態1~27のいずれか1つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。一実施形態において、薬剤は、T2DMの治療用である。一実施形態において、薬剤は、肥満の治療用である。一実施形態において、薬剤は、インスリン療法を受けている患者において糖尿病の治療に使用するためのものである。
【0037】
別の実施形態は、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩と、担体、希釈剤、および賦形剤からなる群から選択される少なくとも1つのものと、を含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、皮下投与用の医薬組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書で使用される場合、「治療すること(treating)」または「治療すること(to treat)」という用語には、症状、病気もしくは障害の進行または重症度を制限、減速、停止、または反転させることが含まれる。
【0039】
本発明の特定の化合物は一般に、幅広い投与量範囲にわたって有効である。例えば、週に1回の非経口投薬の投与量は、1人1週間当たり0.05mg~約60mgの範囲内であり得る。
【0040】
式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩は、GIP受容体に対して親和性を有し、受容体において所望の効力を有する新規のアミノ酸配列を含む。GIPは、GLP-1と同様にインクレチンとして知られる42アミノ酸ペプチド(配列番号1)であり、グルコースの存在下で膵臓ベータ細胞からのインスリン分泌を刺激することにより、グルコースの恒常性に生理的役割を果たす。
【0041】
GLP-1は36アミノ酸ペプチドであり、その主要な生物活性フラグメントは、30アミノ酸のC末端アミド化ペプチド(GLP-17-36)(配列番号2)として生成される。
【0042】
グルカゴンは、膵臓のランゲルハンス島のα細胞で分泌される29アミノ酸のペプチドホルモン(配列番号3)であり、グルコース恒常性に関与する。
【0043】
本発明の化合物は、GLP-1Rおよびグルカゴン受容体に対して高度の選択性で、GIP受容体において所望の効力を提供する。一実施形態では、化合物は、所望のGIP受容体活性および延長された作用持続時間を有する。
【0044】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、天然由来アミノ酸、および非天然アミノ酸の両方を意味する。アミノ酸は典型的に、標準的な1文字のコード(例えば、L=ロイシン)、および天然アミノ酸のアルファ-メチル置換残基(例えば、α-メチルロイシン、またはαMeLおよびα-メチルフェニルアラニン、またはαMeF)、ならびにアルファ-アミノイソ酪酸、または「Aib」、「4Pal」、「Orn」などの、他の特定非天然アミノ酸を使用して示される。これらのアミノ酸の構造を以下に示す。
【化1】
【0045】
本明細書で使用される場合、「Orn」は、L-オルニチンを意味する。本明細書で使用される場合、「4Pal」は、3-(4-ピリジル)-L-アラニンを意味する。本明細書で使用される場合、「αMeF(2F)」は、アルファ-メチル2-フルオロ-L-フェニルアラニンを意味する。本明細書で使用される場合、「αMeY」および「αMeL」は、それぞれ、アルファ-メチル-L-チロシンおよびアルファ-メチル-L-ロイシンを意味する。本明細書で使用される場合、「e」および「D-Glu」は、D-グルタミン酸を意味する。本明細書で使用される場合、「D-Tyr」および「y」は、それぞれ、D-チロシンを意味する。本明細書で使用される場合、「D-Ala」および「a」は、それぞれ、D-アラニンを意味する。本明細書で使用される場合、「αMeF」は、アルファ-メチル-Fおよびアルファ-メチル-Pheを意味する。本明細書で使用される場合、「Iva」は、L-イソバリンを意味する。
【0046】
一実施形態において、コンジュゲーションは、アシル化である。一実施形態において、コンジュゲーションは、K側鎖のε-アミノ基へのものである。本発明の化合物の一実施形態において、脂肪酸部分は、リンカーを介して17位のKにコンジュゲートする。本発明の化合物の一実施形態において、脂肪酸部分は、リンカーを介して26位のKにコンジュゲートする。
【0047】
一実施形態において、qは、16および18からなる群から選択される。一実施形態において、qは16である。一実施形態において、qは18である。
【0048】
本明細書でGIP受容体に関して使用される場合、「活性」、「活性化する」「活性化」などの用語は、下記に記載されるインビトロアッセイなど、当技術分野で公知のアッセイを使用して測定される化合物、またはその薬学的に許容される塩の、結合能力、および受容体での応答誘導能力を示す。
【0049】
式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩の、GIP受容体に対する親和性は、例えば以下の実施例に記載される測定技術が含まれ、一般的にKi値で表される、当技術分野で公知の受容体結合レベルの測定技術を使用して測定することができる。GIP受容体における本発明の化合物の活性は、さらに、例えば、以下に記載されるインビトロ活性アッセイを含む、当技術分野で公知の技術を使用して測定してよく、一般的にEC50値で表され、これは、投与量応答曲線で最大半量のシミュレーションを起こす化合物の濃度である。
【0050】
さらに、GIPRに対する本発明の化合物の選択性の程度を実証するために、GLP-1およびグルカゴン受容体での活性および親和性についてのデータが各化合物について提供される。
【0051】
一実施形態において、式Iの化合物の医薬組成物は、非経口経路による投与に適している(例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、または経皮)。いくつかの医薬組成物およびその調製方法は、当技術分野において周知である。(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(D.B.Troy,Editor,21st Edition,Lippincott,Williams&Wilkins,2006)を参照されたい)。
【0052】
本発明の化合物は、いくつかの無機および有機酸/塩基のうちの任意のものと反応して、薬学的に許容される酸/塩基付加塩を形成し得る。薬学的に許容される塩およびそれらを調製するための一般的な方法は、当技術分野において周知である。(例えば、P.Stahl,et al.Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use,2nd Revised Edition(Wiley-VCH,2011)を参照されたい)。本発明の薬学的に許容される塩としては、ナトリウム、トリフルオロ酢酸、塩酸塩、アンモニウム、および酢酸塩が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、薬学的に許容される塩は、ナトリウム、塩酸塩、および酢酸塩からなる群から選択される。
【0053】
本発明はまた、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩の合成に有用な、新規の中間体およびプロセスも包含する。本発明の中間体および化合物は、当技術分野で公知の様々な手順によって調製し得る。特に、以下の実施例では、化学合成を使用したプロセスが説明される。記載される各経路のための具体的な合成ステップは、本発明の化合物を調製するために、異なる方法で組み合わされてもよい。試薬および出発材料は、当業者にとって容易に入手可能である。
【0054】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、患者に1回または複数回投与されると、診断中または治療中の患者に所望の効果を提供する、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩の量または投与量を指す。有効量は、公知技術を用いて、および類似の状況下で得られた結果を観察することによって、当業者が判断することができる。対象のための有効量を決定する際には、哺乳動物の種、サイズ、年齢、および健康状態全般、関与する特定の疾患または障害、疾患または障害の程度もしくは関与度もしくは重症度、個々の患者の応答、投与される特定の化合物、投与の様式、投与される製剤の生物学的利用能特性、選択された投与レジメン、併用薬の使用、ならびに他の関連する状況を含むがこれらに限定されない、多数の要因が考慮される。
【0055】
本明細書で使用される場合、「それを必要とする対象」という用語は、治療または療法を必要とする疾患または病気を有する哺乳動物、好ましくはヒトを指し、例えば上記段落に列挙されたものが含まれる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「EDTA」は、エチレンジアミン四酢酸を意味する。本明細書で使用される場合、「DMSO」は、ジメチルスルホキシドを意味する。本明細書で使用される場合、「CPM」は、1分当たりのカウントを意味する。本明細書で使用される場合、「IBMX」は、3-イソブチル-1-メチルキサンチンを意味する。本明細書で使用される場合、「LC/MS」は、液体クロマトグラフィー/質量分析法を意味する。本明細書で使用される場合、「HTRF」は、均一な時間分解蛍光を意味する。本明細書で使用される場合、「DMF」は、N,N-ジメチルホルムアミドを指す。本明細書で使用される場合、「DCM」は、ジクロロメタンを指す。本明細書で使用される場合、「TFA」は、トリフルオロ酢酸を指す。本明細書で使用される場合、「TFA塩」は、トリフルオロ酢酸塩を指す。本明細書で使用される場合、「RP-HPLC」は、逆相高速液体クロマトグラフィーを意味する。
【0057】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0058】
ペプチドの合成
実施例1
Y-(D-Ala)-EGTFISDYSILLDKK((2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)
2-(γ-Glu)-CO-(CH
2)
18-CO
2H)AQ-Aib-DFVNWLLAQGPSSGAPPPS-NH
2(配列番号5)
配列番号5の構造を、標準的な1文字のアミノ酸コードを使用して以下に示す。ただし、アミノ酸残基の構造が拡張されている残基D-Ala2、K17、Aib20、およびSer39は例外とする。
【化2】
【0059】
実施例1のペプチド主鎖は、Symphony多重ペプチド合成機(Gyros Protein Technologies、Tucson,AZ、3.3.0.1)、ソフトウェアバージョン3.3.0でフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)/tert-ブチル(t-Bu)化学を使用して合成される。
【0060】
樹脂は、0.8mmol/gの置換でリンクアミドリンカー(ポリスチレンAM RAM、RAPPポリマーGmbH、H40023、200~400メッシュ)で官能化されたアミノメチルポリスチレンからなる。標準の側鎖保護基が使用されるが、例外として、Mttが4-メチルトリチルであるFmoc-Lys(Mtt)-OHが、17位のリジンに使用され、Boc-Tyr(t-Bu)-OHが、1位のチロシンに使用される。各カップリングステップ(10分間×2回)に先立ち、DMF中の20%ピペリジンを使用して、Fmoc基を除去する。標準的なアミノ酸カップリングは、すべてFmocアミノ酸(DMF中0.3M)、ジイソプロピルカルボジイミド(DCM中0.9M)、およびOxyma(DMF中0.9M)の等モル比を使用して、理論上ペプチド負荷に対して9倍のモル過剰で実施される。カップリングは、1.5時間続行されるが、例外として、バリンのカップリング、3時間;Cα-メチル化アミノ酸のカップリング、6時間;Cα-メチル化アミノ酸へのカップリング、6~10時間がある。ペプチド主鎖の合成が完了した後、樹脂をDCMで十分に洗浄して、残留DMFを除去する。17位のリジンのMtt保護基は、DCM中の30%ヘキサフルオロイソプロパノール(Oakwood Chemicals)の処理を3回施して(20分処理×3回)ペプチド樹脂から選択的に除去され、樹脂は、DCMおよびDMFで十分に洗浄される。
【0061】
脂肪酸リンカー部分のその後の付着は、標準的なカップリングおよび脱保護反応のための上記手順に従って、2-[2-(2-Fmoc-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-酢酸(Fmoc-AEEA-OH、ChemPep,Inc.)およびFmoc-グルタミン酸α-t-ブチルエステル(Fmoc-Glu-OtBu、Ark Pharm,Inc.)をカップリングすることにより達成される。最後のFmoc保護基を除去した後、モノ-OtBu-エイコサン二酸(WuXi AppTec、Shanghai,China)を、1:1 DCM/DMF中で4倍過剰量の二酸、PyBOP、およびジイソプロピルエチルアミン(1:1:1mol/mol/mol)を使用して1時間カップリングする。
【0062】
合成が完了したら、ペプチド樹脂をDCMで洗浄し、完全に真空乾燥させる。乾燥ペプチド樹脂を切断カクテル(10mL TFA、0.5mLトリイソプロピルシラン、0.5mLの水、および0.5mL 1,2-エタンジチオール)で、室温で2時間処理する。ペプチド樹脂溶液を50mLの円錐形遠心分離管にろ過し、5倍過剰量の冷ジエチルエーテル(-20℃)で処理して、粗ペプチドを沈殿させる。ペプチド/エーテル懸濁液を3000rcfで1.5分間遠心分離して固体ペレットを形成し、上澄みをデカントする。ペレットを冷ジエチルエーテルでさらに2回洗浄し、毎回1分間遠心分離し、次いで真空乾燥する。粗ペプチドを20%の酢酸/80%の水で可溶化し、100%のアセトニトリルおよび0.1%のTFA/水緩衝系の線形勾配(65分で25-45%のアセトニトリル)を有するSymmetryPrep 7μm C18分取カラム(18×300mm、Waters)上でRP-HPLCによって精製する。ペプチドの純度は分析用RP-HPLCを使用して評価され、プーリング基準は95%を超える。実施例1の化合物の主なプール純度は、96.8%であることが分かる。最終主要生成物プールをその後凍結乾燥した結果、凍結乾燥されたペプチドTFA塩が生成された。分子量はLC/MSによって決定される(実測値:[M+3H]3+=1638.4、計算値[M+3H]3+=1638.53、実測値MW(平均)=4912.2、計算値MW(平均):4912.58)。
【0063】
実施例2
Y-(D-Ala)-EGTFISDYSILLDKK((2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)
2-(γ-Glu)-CO-(CH
2)
16-CO
2H)AQ-Aib-DFVNWLLAQGPSSGAPPPS-NH
2(配列番号6)
配列番号6の構造を、標準的な1文字のアミノ酸コードを使用して以下に示す。ただし、アミノ酸残基の構造が拡張されている残基D-Ala2、K17、Aib20、およびSer39は例外とする。
【化3】
【0064】
配列番号6による化合物は、実質的に、実施例1の手順で記載されるように調製されるが、保護された二酸は、代わりに、モノ-OtBu-オクタデカン二酸(WuXi AppTec、Shanghai,China)である。分子量は、LC/MSによって決定される(実測値:[M+3H]3+=1629.15、計算値[M+3H]3+=1629.18、実測値MW(平均)=4884.45、計算値MW(平均)=4884.53)。
【0065】
実施例3
Y-Aib-EGTFISDYSI-αMeL-LDKK((2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)
2-(γ-Glu)-CO-(CH
2)
18-CO
2H)HQ-Aib-DFVE-4-Pal-LLEAGPSSGAPPPS-NH
2(配列番号7)
配列番号7の構造を、標準的な1文字のアミノ酸コードを使用して以下に示す。ただし、アミノ酸残基の構造が拡張されている残基Aib2、αMeL13、K17、Aib20、4-Pal25およびSer39は例外とする。
【化4】
【0066】
配列番号7による化合物は、実質的に、実施例1の手順で記載されるように調製される。分子量は、LC/MSによって決定される(実測値:[M+3H]3+=1662.52、計算値[M+3H]3+=1662.55、実測値MW(平均)=4984.55、計算値MW(平均)=4984.64)。
【0067】
実施例4
Y-Aib-EGTFISDYSI-αMeL-LD-Orn-K((2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)
2-(γ-Glu)-CO-(CH
2)
18-CO
2H)HQ-Aib-DFVE-4-Pal-LLEAGPSSGAPPPS-NH
2(配列番号8)
配列番号8の構造を、標準的な1文字のアミノ酸コードを使用して以下に示す。ただし、アミノ酸残基の構造が拡張されている残基Aib2、αMeL13、Orn16、K17、Aib20、4-Pal25、およびSer39は例外とする。
【化5】
【0068】
配列番号8による化合物は、実質的に実施例1の手順で記載されるように調製される。分子量は、LC/MSによって決定される(実測値:[M+3H]3+=1657.82、計算値[M+3H]3+=1657.87、実測値MW(平均)=4970.46、計算値MW(平均)=4970.62)。
【0069】
実施例5
Y-Aib-EGTFISDYSI-αMeL-LDKIHQ-Aib-DFVEYK((2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)
2-(γ-Glu)-CO-(CH
2)
18-CO
2H)LEGGPSSGAPPPS-NH
2(配列番号9)
配列番号9の構造を、標準的な1文字のアミノ酸コードを使用して以下に示す。ただし、アミノ酸残基の構造が拡張されている残基Aib2、αMeL13、Aib20、K26、およびSer39は例外とする。
【化6】
【0070】
配列番号9による化合物は、実質的に実施例1の手順で記載されるように調製されるが、Fmoc-Lys(Mtt)-OHは、17位の代わりに26位でリジンのために使用される。分子量は、LC/MSによって決定される(実測値:[M+3H]3+=1662.8、計算値[M+3H]3+=1662.88、実測値MW(平均)=4985.4、計算値MW(平均)=4985.63)。
【0071】
実施例6
Y-Aib-EGTFISDYSI-αMeL-LD-Orn-IHQ-Aib-DFVEYK((2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)
2-(γ-Glu)-CO-(CH
2)
18-CO
2H)LEGGPSSGAPPPS-NH
2(配列番号10)
配列番号10の構造を、標準的な1文字のアミノ酸コードを使用して以下に示す。ただし、アミノ酸残基の構造が拡張されている残基Aib2、αMeL13、Orn16、Aib20、K26、およびSer39は例外とする。
【化7】
【0072】
配列番号10による化合物は、実質的に実施例1の手順で記載されるように調製されるが、Fmoc-Lys(Mtt)-OHは、17位の代わりに26位でリジンのために使用される。分子量は、LC/MSによって決定される(実測値:[M+3H]3+=1658.1、計算値[M+3H]3+=1658.20、実測値MW(平均)=4971.3、計算値MW(平均)=4971.6)。
【0073】
実施例7
Y-Aib-EGTFISDYSI-αMeL-LD-Orn-IHQ-Aib-EFV-(D-Glu)-YK((2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-アセチル)
2-(γ-Glu)-CO-(CH
2)
16-CO
2H)LEGGPSSGAPPPS-NH
2(配列番号11)
配列番号11の構造を、標準的な1文字のアミノ酸コードを使用して以下に示す。ただし、アミノ酸残基の構造が拡張されている残基Aib2、αMeL13、Orn16、Aib20、D-Glu24、K26、およびSer39は例外とする。
【化8】
【0074】
配列番号11による化合物は、実質的に実施例1の手順で記載されるように調製されるが、Fmoc-Lys(Mtt)-OHは、17位の代わりに26位でリジンのために使用され、保護された二酸は、モノ-OtBu-オクタデカン二酸(WuXi AppTec、Shanghai,China)である。分子量は、LC/MSによって決定される(実測値:[M+3H]3+=1653.4、計算値[M+3H]3+=1653.52、実測値MW(平均)=4957.2、計算値MW(平均)=4957.57)。
【0075】
実施例8(配列番号12)~実施例122(配列番号126)による化合物は、実質的に実施例1の手順で記載されるように調製される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【0076】
結合アッセイ
グルカゴン(GcgまたはhGcgと称される)は、Eli Lilly and Companyで調製された標準試料である。GLP-1(7-36)-NH2(GLP-1またはhGLP-1と称される)は、CPC Scientific(Sunnyvale,CA、純度97.2%、100%DMSO中100μMアリコート)から入手する。GIP(1-42)-NH2(GIPと称される)は、上述のように、ペプチド合成およびHPLCクロマトグラフィーを使用してLilly Research Laboratoriesで調製される(純度>80%、100%DMSO中100μMアリコート)。[125I]と放射標識されたGcg、GLP-1、またはGIPは、[125I]-ラクトペルオキシダーゼを使用して調製され、Perkin Elmer(Boston,MA)から入手する。
【0077】
安定的にトランスフェクトされた細胞株は、受容体cDNAをpcDNA3発現プラスミドにサブクローニングし、ヒト胚腎臓(HEK)293(hGcgRおよびhGLP-1R)またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)(hGIPR)細胞にトランスフェクトした後、Geneticin(hGLP-1RおよびhGIPR)またはハイグロマイシンB(hGcgR)で選択することによって調製される。
【0078】
粗細胞膜の調製には2つの方法が使用される。
【0079】
方法1:pHが7.5である50mMのTris HCl、およびEDTAを含むRoche Complete(商標)プロテアーゼ阻害剤を含有する低張緩衝液中で凍結細胞ペレットを氷上溶解させる。Teflon(登録商標)内筒を備えた、ガラス製Potter-Elvehjemホモジナイザーを使用して、細胞懸濁液を25回撹乱する。ホモジネートを4℃、1100×gで10分間遠心分離する。上清を収集し、氷上で保存する一方で、ペレットを均質化緩衝液に再懸濁し、上述のように再ホモジナイズする。ホモジネートを1100×gで10分間、遠心分離する。第2の上清を第1の上清と合わせ、35000×g、4℃で1時間遠心分離する。得られた膜ペレットを、プロテアーゼ阻害剤を約1~3mg/mLで含有する均質化緩衝液に再懸濁し、液体窒素中で急速凍結し、使用するまでアリコートとして-80℃の冷凍庫内で保存する。
【0080】
方法2:pHが7.5である50mMのTris HCl、1mMのMgCl2、Roche Complete(商標)EDTA非含有プロテアーゼ阻害剤、および25単位/mLのDNAse I(Invitrogen)を含有する低張緩衝液中で、凍結細胞ペレットを氷上溶解させる。Teflon(登録商標)内筒を備えたガラス製Potter-Elvehjemホモジナイザーを使用して、細胞懸濁液を20回~25回撹乱する。ホモジネートを4℃、1800×gで15分間遠心分離する。上清を収集し、氷上で保存する一方で、ペレットを均質化緩衝液(DNAse Iは含まない)に再懸濁し、上述のように再ホモジナイズする。ホモジネートを1800×gで15分間、遠心分離する。第2の上清を第1の上清と合わせ、さらに1800×gで15分間、遠心分離する。次に、上清全体を4℃で、25000×gで30分間、遠心分離する。得られた膜ペレットを、プロテアーゼ阻害剤を約1~3mg/mLで含有する均質化緩衝液(DNAse Iは含まない)に再懸濁し、使用するまでアリコートとして-80℃の冷凍庫内で保存する。
【0081】
結合判定方法
各種受容体/放射性リガンド相互作用の平衡結合解離定数(Kd)は、[125I]ストック材料のプロパノール含有量が多いため、飽和結合ではなく、相同競合結合分析から判定される。受容体調製物について判定されたKd値は次のとおりであった:hGcgR(3.9nM)、hGLP-1R(1.2nM)、およびhGIPR(0.14nM)。
【0082】
[125I]-グルカゴン結合
ヒトGcg受容体結合アッセイを、小麦胚芽凝集素(WGA)ビーズ(Perkin Elmer)を用いたシンチレーション近接アッセイ(SPA)フォーマットを使用して実施する。結合緩衝液は、pHが7.4である25mMの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2.5mMのCaCl2、1mMのMgCl2、0.1%(w/v)のバシトラシン(Research Products)、0.003%(w/v)のポリエチレンソルビタンモノラウレート(TWEEN(登録商標)-20)、およびEDTAを含まないRoche Complete(商標)プロテアーゼ阻害剤を含有する。ペプチドおよびGcgを解凍し、100%DMSO中で3倍ずつ段階希釈する(10ポイント濃度応答曲線)。次に、45μLのアッセイ結合緩衝液または未標識のGcg対照(非特異的結合またはNSB、1μM最終)を含有する、Corning(登録商標)3632底部透明アッセイプレートに、5μLの段階希釈した化合物またはDMSOを移す。次に、50μLの[125I]-Gcg(0.15nM最終)、50μLのヒトGcgR膜(1.5μg/ウェル)、および50μLのWGA SPAビーズ(80~150μg/ウェル)をBiotek Multifloディスペンサーで加える。プレートを密封し、プレートシェーカー上で1分間混合し(設定6)、室温で12時間インキュベート/静置した後、PerkinElmer Trilux MicroBeta(登録商標)シンチレーション計数器で読み取る。応答曲線で試験されたペプチドの最終アッセイ濃度範囲は、典型的に、1150nM~0.058nMであり、対照Gcgは、1000nM~0.05nMである。
【0083】
[125I]-GLP-1結合
ヒトGLP-1受容体結合アッセイは、WGAビーズを用いたSPAフォーマットを使用して実施される。結合緩衝液は、pHが7.4である25mMのHEPES、2.5mMのCaCl2、1mMのMgCl2、0.1%(w/v)のバシトラシン、0.003%(w/v)のTWEEN(登録商標)-20、およびEDTAを含まないRoche Complete(商標)プロテアーゼ阻害剤を含有する。ペプチドおよびGLP-1を解凍し、100%DMSOで3倍ずつ段階希釈する(10ポイント濃度応答曲線)。次に、45μLのアッセイ結合緩衝液または未標識のGLP-1対照(非特異的結合またはNSB、0.25μM最終)を含有する、Corning(登録商標)3632底部透明アッセイプレートに、5μLの段階希釈した化合物またはDMSOを移す。次に、50μL[125I]-GLP-1(0.15nM最終)、50μLのヒトGLP-1R膜(0.5μg/ウェル)、および50μLのWGA SPAビーズ(100~150μg/ウェル)をBiotek Multifloディスペンサーで加える。プレートを密封し、プレートシェーカー上で1分間混合し(設定6)、室温で5~12時間インキュベート/静置した後、PerkinElmer Trilux MicroBeta(登録商標)シンチレーション計数器でプレートを読み取る。応答曲線で試験されたペプチドの最終アッセイ濃度範囲は、典型的に、1150nM~0.058nMであり、対照GLP-1は250nM~0.013nMである。
【0084】
[125I]-GIP結合
ヒトGIP受容体結合アッセイは、WGAビーズを用いたSPAフォーマットを使用して実施される。結合緩衝液は、pHが7.4である25mMのHEPES、2.5mMのCaCl2、1mMのMgCl2、0.1%(w/v)のバシトラシン、0.003%(w/v)のTWEEN(登録商標)-20、およびEDTAを含まないRoche Complete(商標)プロテアーゼ阻害剤を含有する。ペプチドおよびGIPを解凍し、100%DMSO中で3倍ずつ段階希釈する(10ポイント濃度応答曲線)。次に、45μLのアッセイ結合緩衝液または未標識のGIP対照(非特異的結合またはNSB、0.25μM最終)を含有する、Corning(登録商標)3632底部透明アッセイプレートに、5μLの段階希釈した化合物またはDMSOを移す。次に、50μLの[125I]-GIP(0.075~0.15nM最終)、50μLのヒトGIPR膜(3μg/ウェル)、および50μLのWGA SPAビーズ(100~150μg/ウェル)をBiotek Multifloディスペンサーで加える。プレートを密封し、プレートシェーカー上で1分間混合し(設定6)、室温で2.5~12時間インキュベート/静置した後、PerkinElmer Trilux MicroBeta(登録商標)シンチレーション計数器で読み取る。応答曲線で試験されたペプチドの最終アッセイ濃度範囲は、典型的に、1150nM~0.058nMまたは115nM~0.0058nMであり、対照GIPは、250nM~0.013nMである。
【0085】
結合アッセイデータ分析
ペプチド、Gcg、GLP-1、またはGIPの濃度曲線のCPM生データを、各CPM値から非特異的結合(未標識Gcg、GLP-1、またはGIPがそれぞれ過剰に存在する場合の結合)を減算し、同じく非特異的結合を減算して補正された総結合シグナルで除算することで、阻害率に変換する。4パラメータ(曲線最大値、曲線最小値、IC
50、ヒル勾配)非線形回帰ルーチン(Genedata Screener、バージョン12.0.4、Genedata AG、Basal,Switzerland)を使用してデータを分析する。親和性定数(K
i)は、式K
i=IC
50/(1+D/K
d)に基づき絶対IC
50値から計算される。式中、Dは実験で使用された放射性リガンドの濃度であり、IC
50は結合の50%阻害を引き起こす濃度であり、K
dは放射性リガンドの平衡結合解離定数である(上述)。K
i値は幾何平均として報告され、誤差は平均の標準誤差(SEM)として表され、nは独立した複製物(異なる日に実施されたアッセイで判定)と等しい。幾何平均は次のように計算される:
幾何平均=10
(Log Ki値の加算平均))
n=y/xは、複製総数(x)のうち、1つの複製物のサブセット(y)のみが平均を表すのに用いられることを意味する。SEMは、y=2以上の場合にのみ計算される。平均は、幾何平均として表し、平均値の標準誤差(SEM)および複製物の数(n)は括弧内に示す。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【0086】
表1に示されるように、本発明の実施例は、ヒトGIPRの非常に強力な結合剤であり、GLP-1RおよびGcgRに対してより低い親和性を有する。
【0087】
0.1%カゼイン存在下でのcAMP薬理機能アッセイ
1セットのcAMPアッセイを、ヒトGLP-1受容体(GLP-1R)、グルコース依存性インスリン分泌刺激ペプチド受容体(GIPR)、またはグルカゴン受容体(GcgR)を発現するHEK293細胞で実施した。20μlのアッセイ体積中、0.1%カゼイン(Sigmaカタログ番号C4765)、250μMのIBMX、1X GlutaMAX(商標)(Gibcoカタログ番号35050)、および20mMのHEPES(HyCloneカタログ番号SH30237.01)を補充した、DMEM(Gibcoカタログ番号31053)中の試験ペプチドで、細胞株を過剰発現する各受容体(20μl)を処理する。室温で60分インキュベートした後、それによって生じた細胞内cAMPの増加を、CisBio cAMP Dynamic 2 HTRFアッセイキット(62AM4PEJ)を使用して定量的に判定する。次に、cAMP-d2コンジュゲート(20μl)および抗体である抗cAMP-Eu3+-クリプテート(20μl)を含有するLysis緩衝液を加えて、cAMPレベルを判定する。室温で60分インキュベートした後、HTRFシグナルをEnvision 2104プレートリーダー(PerkinElmer)で検出する。620nmおよび665nmで蛍光発光を測定し、620nmおよび665nmでのその比率を計算した後、cAMP標準曲線を使用してウェル当たりのnM cAMPに変換する。化合物の投与量応答曲線を、最小値(緩衝液のみ)および最大値(各対照リガンドの最大濃度)に正規化された刺激のパーセンテージとしてプロットし、可変勾配にフィットさせた4パラメータ非線形回帰(Genedata Screener 13)を使用して分析する。EC50は、投与量応答曲線で最大半量のシミュレーションを起こす化合物の濃度である。4パラメータロジスティック方程式にフィットさせた、最大応答パーセント対添加ペプチド濃度を使用する非線形回帰分析によって、相対EC50値を導く。
【0088】
実施例および比較分子の固有の効力を判定するために、ホモジニアス時間分解蛍光測定法を使用してアッセイを実施し、それは、非特異的ブロッカーとして(血清アルブミンの代わりに)カゼインが存在する中で実施され、このカゼインは、分析された分子の脂肪酸部分と相互作用しない。
【0089】
細胞内cAMPレベルは、標準曲線を使用して外挿によって判定される。化合物の投与量応答曲線を、最小値(緩衝液のみ)および最大値(各対照リガンドの最大濃度)に正規化された刺激のパーセンテージとしてプロットし、可変勾配にフィットさせた4パラメータ非線形回帰(Genedata Screener 13)を使用して分析する。EC50は、投与量応答曲線で最大半量のシミュレーションを起こす化合物の濃度である。幾何平均計算値の各相対EC50値は、カーブフィッティングから判定される。
【0090】
化合物の濃度応答曲線を、最小値(緩衝液のみ)および最大値(各対照リガンドの最大濃度)に正規化された刺激のパーセンテージとしてプロットし、可変勾配にフィットさせた4パラメータ非線形回帰(Genedata Screener 13)を使用して分析する。EC50は、投与量応答曲線で最大半量のシミュレーションを起こす化合物の濃度である。EC50要約統計量は次のように計算される:幾何平均:
GM=10(log10変換EC50値の加算平均)。平均の標準誤差は、次のように報告される:
SEM=幾何平均×(log10変換EC50値の標準偏差/実行回数の平方根)×10のloge。
【0091】
対数変換は、EC50値が算術スケールではなく、乗算スケールにあることを説明付ける。
【0092】
アッセイが実施されるたび、試験ペプチド、ならびに天然リガンドGIP、GLP-1、およびグルカゴンが試行され、緩衝液のみがベースライン(最小)として、ならびにGIP、GLP-1、およびグルカゴン標準の最高濃度が、それぞれ、計算の最大値として使用される。例示のために述べると、実施例1で示されるように、ペプチドは、hGIPR cAMPアッセイの8回の試行で試験される。誤解を避けるために、表2のhGIPアミド、hGLP-1アミドおよびグルカゴンEC50は、18の一連のアッセイ値からの幾何平均値を例示し、これらの値は、緩衝液ゼロに対して毎日異なる。したがって、各実施例は、これらの値の幾何平均を使用して実施例アッセイを正規化する。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0093】
表2のデータで示されているように、本発明の実施例の化合物は非常に効力があり、0.1%カゼインの存在下で、ヒトGIPRからのcAMPを刺激する。
【0094】
インビボ研究
雄カニクイザルにおける薬物動態
雄カニクイザルに50nmol/kgの単回皮下投与を実施した後、選択した実施例の薬物動態を評価する。血液試料を504時間にわたって収集し、結果として得られた個々の血漿中濃度を使用して薬物動態パラメータを計算する。ペプチド血漿(K
3 EDTA)濃度は、化合物の無傷の塊を測定する適格なLC/MS法を使用して判定する。各ペプチドおよび内部標準としてのアナログが、タンパク質沈殿法を使用して、100%カニクイザル血漿から抽出される。LC/MS検出用に機器を組み合わせる。平均薬物動態パラメータを表3に示す。
【表4】
【0095】
略語:T1/2=半減期、Tmax=最大濃度到達時間、Cmax/投与量=最大血漿濃度を投与量で除した値、AUCInf/投与量=AUCInfを投与量で除した値、CL/F=クリアランス/生物学的利用能。注記:データは平均値で、n=2/群である。
【0096】
表3が示すとおり、試験した実施例ペプチドについてのこの研究の結果は、拡張された薬物動態プロファイルと整合性がある。
【0097】
皮下投与後の雄スプラーグドーリーラットにおける薬物動態
選択した実施例の薬物動態は、雄スプラーグドーリーラットへの100nmol/kgの単回皮下(SC)投与を実施した後に評価する。血液試料をSC投与後168時間にわたって収集する。個々の血漿中濃度を使用して薬物動態パラメータを計算する。実施例の無傷の塊を測定する適格なLC/MS法を使用して、血漿(K
3 EDTA)濃度を判定する。各ペプチドおよび内部標準としてのアナログが、タンパク質沈殿法を使用して、100%ラット血漿から抽出される。LC/MS検出用に機器を組み合わせる。実施例の平均薬物動態パラメータを、表4に示す。
【表5】
【0098】
略語:T1/2=半減期、Tmax=最大濃度到達時間、Cmax/投与量=最大血漿濃度を投与量で除した値、AUCInf/投与量=AUCInfを投与量で除した値、CL/F=クリアランス/生物学的利用能。注記:データは平均値であり、n=3/群だが、実施例3は例外であり、データがn=1の動物に由来する。
【0099】
表4に示すように、これらの実施例ペプチドを使用したこの研究の結果は、拡張された薬物動態プロファイルと整合性がある。
【0100】
雄ウィスターラットのインスリン分泌に対するインビボ効果
大腿動脈および大腿静脈カニューレ(Envigo、Indianapolis,IN)を有する雄ウィスターラット(280~320グラム)を、フィルタートップ付きのポリカーボネート製ケージに単体収容する。ラットは、21℃で12:12時間の明暗サイクル(午前6:00に点灯)で維持し、餌および脱イオン水を自由に摂取させた。ラットは、体重によって無作為化し、グルコース投与の16時間前に0.3、1.0、3、10、30、および100nmol/kgの投与量で、1.5mL/kgで皮下(s.c.)投与し、次いで絶食させる。動物の体重を量り、ペントバルビタールナトリウムを腹腔内(i.p.)投与して麻酔をかける(65mg/kg、30mg/mL)。0時点の血液試料をEDTAチューブに収集し、その後グルコースを静脈内(i.v.)投与する(0.5mg/kg、5mL/kg)。血液試料を、グルコースの静脈内投与後2、4、6、10、20、および30分時点のグルコースおよびインスリンレベルについて収集する。血漿グルコースレベルは、臨床化学分析装置を使用して判定する。血漿インスリンは、電気化学発光アッセイ(Meso Scale、Gaithersburg,MD)を使用して判定する。グルコースおよびインスリンAUCを、n=5匹/群を有するビヒクル対照と比較して調査する。結果が(SEM)(N)で表示される。
【表6】
【0101】
表5によって提供されるデータは、インスリン分泌が投与量に依存して増加することを示している。
【表7】
【0102】
表6によって提供されるデータは、インスリン分泌が投与量に依存して増加することを示している。
【0103】
実施例1、2、3、5、および6の化合物の免疫原性評価
この研究の目的は、実施例化合物1、2、3、5、および6の臨床免疫原性の相対的可能性を判定することである。
【0104】
方法:
CD4+T細胞アッセイ:CD4+T細胞アッセイを使用して、当技術分野で知られている方法に従ってインビボで免疫応答を誘導する可能性について実施例1、2、3、5、および6の化合物を比較し(例えば、Jones et al.(2004)J.Interferon Cytokine Res.24:560-572、およびJones et al.(2005)J.Thromb.Haemost.3:991-1000を参照されたい)、臨床的に試験されたモノクローナル抗体およびペプチドの評価は、インビトロで観察されたT細胞の増殖と診療所での免疫原性との間に、ある程度の相関関係を示した。CD4+T細胞増殖アッセイで30%未満の陽性反応を誘導するタンパク質治療薬は、免疫原性のリスクが低いことに関連している。簡潔に述べると、実施例1、2、3、5、および6の化合物に対する臨床免疫原性応答の傾向を評価するために、CD8+T細胞枯渇末梢血単核細胞(PBMC)が調製され、多様なヒト白血球抗原(HLA)クラスIIハプロタイプを有する10人の健康なドナーのコホートに由来するカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE、Invitrogen)で標識化される。各ドナーは、2.0mLの培地対照、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH、0.33μM)、および実施例1、2、3、5、および6の化合物(0.33μM)を用いて3連で試験される。培養物をCO25%、37℃で7日間インキュベートする。7日目に、試料を、ハイスループットサンプラー(HTS)を備えたBD LSR II Fortessa(Becton Dickinson、Franklin Lakes,NJ)を使用して、フローサイトメトリーによって分析する。データを、FlowJo(登録商標)ソフトウェア(FlowJo,LLC/TreeStar、Ashland,OR)を使用して分析する。
【0105】
結果および考察
ドナー全員が、KLHに対して陽性のT細胞応答を示す(100%)。実施例化合物のCD4+T細胞応答の頻度および強さの分析を表7に示す。
【表8】
【0106】
細胞分裂指数(「CDI」):刺激された試料および刺激されていない試料における、CD4+T細胞の総数に対する分割CD4+T細胞の割合。
【0107】
これらのデータは、試験された実施例化合物では、陽性のCD4+T細胞応答(CDI>2.5)の頻度が低く、実施例2の群に属する唯一の陽性ドナーにおいては応答強度が低い(CDI<3)ことを示している。したがって、このアッセイに基づくと、これらの化合物は免疫原性のリスクが低い。
【0108】
アミノ酸配列
配列番号1
GIP 1-42(ヒト)
【表9】
配列番号2
GLP-1(7-36)アミド(ヒト)
【表10】
配列番号3
グルカゴン(ヒト)
【表11】
配列番号4
【表12】
【配列表】