(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】ワーク側面成形装置
(51)【国際特許分類】
B21J 13/02 20060101AFI20230221BHJP
B21J 9/06 20060101ALI20230221BHJP
B21J 13/14 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
B21J13/02 K
B21J9/06 A
B21J13/14 B
B21J13/02 C
B21J13/14 Z
B21J13/02 N
(21)【出願番号】P 2019073834
(22)【出願日】2019-04-08
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2018076453
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 亮平
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-139945(JP,U)
【文献】特開2002-224785(JP,A)
【文献】米国特許第05619882(US,A)
【文献】特許第6245675(JP,B1)
【文献】特開2008-100282(JP,A)
【文献】特開2016-221535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 13/02
B21J 9/06
B21J 13/14
B21D 28/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの幅方向の側面の少なくとも一部を開放した状態で前記ワークを保持するダイスと、
保持された前記ワークの長さ方向に動作するパンチと、
前記パンチの動作によって前記ワークの幅方向に駆動され、前記ワークの開放された前記側面に成形加工を施す側面成形パンチと、
成形加工を施した後の前記側面成形パンチを前記ワークの前記側面から遠ざける方向に駆動する復帰駆動部材とを備えて、多工程圧造機のいずれかの一工程に組み込まれ
、
前記側面成形パンチを保持するとともに、前記ワークの前記長さ方向に対して傾斜した第1被押面を有する幅方向動作部材をさらに備え、
前記パンチは、前記ワークの前記長さ方向に対して傾斜し前記幅方向動作部材の前記第1被押面を押動する第1押動面を有する、
ワーク側面成形装置。
【請求項2】
ワークの幅方向の側面の少なくとも一部を開放した状態で前記ワークを保持するダイスと、
保持された前記ワークの長さ方向に動作するパンチと、
前記パンチの動作によって前記ワークの幅方向に駆動され、前記ワークの開放された前記側面に成形加工を施す側面成形パンチと、
成形加工を施した後の前記側面成形パンチを前記ワークの前記側面から遠ざける方向に駆動する復帰駆動部材とを備えて、多工程圧造機のいずれかの一工程に組み込まれ
、
前記ダイスから前記ワークを突き出すノックアウトピンと、
前記復帰駆動部材を先に駆動し、前記ノックアウトピンを後から駆動する駆動機構と、
をさらに備え、
前記駆動機構は、
前記復帰駆動部材を駆動する復帰駆動カム、および、前記ノックアウトピンを駆動するノックアウトカムを含み、
前記復帰駆動部材および前記ノックアウトピンの動作タイミングを個別に調整可能である、
ワーク側面成形装置。
【請求項3】
ワークの幅方向の側面の少なくとも一部を開放した状態で前記ワークを保持するダイスと、
保持された前記ワークの長さ方向に動作するパンチと、
前記パンチの動作によって前記ワークの幅方向に駆動され、前記ワークの開放された前記側面に成形加工を施す側面成形パンチと、
成形加工を施した後の前記側面成形パンチを前記ワークの前記側面から遠ざける方向に駆動する復帰駆動部材とを備えて、多工程圧造機のいずれかの一工程に組み込まれ
、
前記ダイスから前記ワークを突き出すノックアウトピンと、
前記復帰駆動部材を先に駆動し、前記ノックアウトピンを後から駆動する駆動機構と、
をさらに備え
前記駆動機構は、
前記復帰駆動部材および前記ノックアウトピンの一方を駆動するカム、ならびに、前記復帰駆動部材および前記ノックアウトピンの他方を駆動する油圧駆動装置を含み、
前記復帰駆動部材および前記ノックアウトピンの動作タイミングを個別に調整可能である、
ワーク側面成形装置。
【請求項4】
ワークの幅方向の側面の少なくとも一部を開放した状態で前記ワークを保持するダイスと、
保持された前記ワークの長さ方向に動作するパンチと、
前記パンチの動作によって前記ワークの幅方向に駆動され、前記ワークの開放された前記側面に成形加工を施す側面成形パンチと、
成形加工を施した後の前記側面成形パンチを前記ワークの前記側面から遠ざける方向に駆動する復帰駆動部材とを備えて、多工程圧造機のいずれかの一工程に組み込まれ
、
前記ワークは、前記長さ方向の少なくとも一部が筒形とされ、
前記ダイスは、前記ワークの外側を支持する外ダイス、および、前記ワークの前記筒形の内部に配置される芯金からなり、
前記芯金は、前記側面成形パンチが前記ワークの前記筒形に穴抜き加工を施したときに発生する廃材を収容する廃材収容部を有し、
前記芯金の前記廃材収容部から落下する前記廃材を通過させる排出スリットを有して、前記外ダイスおよび前記芯金から前記ワークを突き出すノックアウトピンをさらに備える、
ワーク側面成形装置。
【請求項5】
前記外ダイスに設けられて前記廃材を排出する排出孔、および、前記排出孔の内部を吸引して前記廃材を強制的に排出する吸引排出部をさらに備える、請求項
4に記載のワーク側面成形装置。
【請求項6】
前記廃材収容部は、前記側面成形パンチに近い側の断面積よりも、前記側面成形パンチから離れた側の断面積が大きな貫通孔である、請求項
4または5に記載のワーク側面成形装置。
【請求項7】
前記ダイスの内部に配置されて、前記側面成形パンチを前記ワークの前記側面から遠ざける方向に付勢する付勢部材を備える、請求項1
~6のいずれか一項に記載のワーク側面成形装置。
【請求項8】
前記側面成形パンチを保持するとともに、前記ワークの前記長さ方向に対して傾斜した第2被押面を有する幅方向動作部材をさらに備え、
前記復帰駆動部材は、前記ワークの前記長さ方向に動作し、かつ、前記ワークの前記長さ方向に対して傾斜し前記幅方向動作部材の前記第2被押面を押動する第2押動面を有する、
請求項1~
7のいずれか一項に記載のワーク側面成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの長さ方向からの駆動によってワークの側面に成形加工を施すワーク側面成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パンチおよびダイスをそれぞれ有する複数の成形工程によりワークに成形加工を順次施す多工程圧造機が知られている。一般的に、パンチは、ワークの長さ方向に動作し、ワークの長さ方向の端面に向かって荷重を作用させる。しかしながら、所望されるワークの最終形状によっては、ワークの側面への成形加工が必要となる。この必要性に対応した一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の部品製造装置は、ダイを備えたダイブロックと、パンチを備えたパンチブロックとを有してワークに成形加工を施す圧造機に関し、ワークに横穴を形成する横穴形成手段を設けたことを特徴とする。横穴形成手段は、パンチに叩打されて叩打方向に移動する第1移動体と、第1移動体に押圧されて直交方向に移動する第2移動体と、第2移動体に設けられてワークに横穴を形成する延出部と、を備える。この横穴形成手段は、ワークが保持された工程の隣の工程に取り付けられる。つまり、この部品製造装置は、圧造機の2工程分のスペースを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の部品製造装置において、横穴の形成に2工程を使用するため、実質的に圧造機の工程数が減少してしまい、成形加工できるワークの形状が制約される。また、特許文献1では、成形加工を施した後の延出部をワークから離脱させるために、戻し部材の斜面で第2移動体を押動している。しかしながら、延出部は、ワークから離脱しにくく、破損しやすいという問題点がある。
【0006】
本発明は、上述した背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、多工程圧造機の一工程の中でワークの側面への成形加工を可能としたワーク側面成形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のワーク側面成形装置は、ワークの幅方向の側面の少なくとも一部を開放した状態で前記ワークを保持するダイスと、保持された前記ワークの長さ方向に動作するパンチと、前記パンチの動作によって前記ワークの幅方向に駆動され、前記ワークの開放された前記側面に成形加工を施す側面成形パンチと、成形加工を施した後の前記側面成形パンチを前記ワークの前記側面から遠ざける方向に駆動する復帰駆動部材とを備えて、多工程圧造機のいずれかの一工程に組み込まれ、前記側面成形パンチを保持するとともに、前記ワークの前記長さ方向に対して傾斜した第1被押面を有する幅方向動作部材をさらに備え、前記パンチは、前記ワークの前記長さ方向に対して傾斜し前記幅方向動作部材の前記第1被押面を押動する第1押動面を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のワーク側面成形装置では、多工程圧造機の一工程に配置されるダイスおよびパンチに側面成形パンチおよび復帰駆動部材が付加されて、ワークの側面への成形加工が可能となる。したがって、ワーク側面成形装置は、一工程の中でワークの側面への成形加工が可能であり、多工程圧造機の実質的な工程数を減らさない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態のワーク側面成形装置を組み込むことができる多工程圧造機の全体構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】ワーク側面成形装置が成形加工するワークの形状を示した図である。
【
図3】実施形態のワーク側面成形装置の分解斜視図である。
【
図5】ワーク側面成形装置の部分拡大斜視図である。
【
図6】ダイスを構成する芯金に設けられた廃材収容部の側面断面図である。
【
図7】ワークがダイスに挿入される直前の状態を示す側面断面図である。
【
図8】ワークが挿入されて横穴が成形加工される瞬間の状態を示す側面断面図である。
【
図9】復帰駆動部材が動作している途中の状態を示す側面断面図である。
【
図10】ノックアウトピンにより、成形加工されたワークがダイスから突き出された状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、実施形態のワーク側面成形装置1が組み込まれる多工程圧造機10について説明する。
図1は、実施形態のワーク側面成形装置1を組み込むことができる多工程圧造機10の全体構成を模式的に示す平面図である。多工程圧造機10は、フレーム21、ラム24、5組のパンチ26およびダイス23、トランスファー装置27、ならびに駆動部9などで構成される。多工程圧造機10は、5組のパンチ26およびダイス23により構成された第1~第5工程で、ワークに順次成形加工を施す。
図1の紙面上下方向が多工程圧造機10の幅方向となり、紙面左右方向が前後方向となる。この前後方向は、後述する軸線AXが延びる方向と一致する。
図1において、第1~第5工程は、幅方向の紙面上側から紙面下側へと並んでいる。
【0011】
フレーム21は、各部を配設するための筐体であり、鉄製で堅牢に形成される。5個のダイスホルダ22は、フレーム21の幅方向に並んで設けられる。5組のダイス23は、各ダイスホルダ22の後側に交換可能に取り付けられる。各ダイス23の図中の左方向を向いた後側に、所定の加工型が形成されている。
【0012】
ラム24は、平面視で概ね矩形であり、前後方向に往復動作する。5個のパンチホルダ25は、ラム24の前側の幅方向に並んで設けられる。5個のパンチ26は、各パンチホルダ25の前側に交換可能に取り付けられる。各パンチ26の図中の右方向を向いた前側に、所定の加工型が形成されている。各パンチ26は、ラム24とともに往復動作する。各工程において、パンチ26とダイス23は、軸線AXを共通にして対向配置される。
【0013】
多工程圧造機10は、環形の可動カッタ、線材送り機構、およびプッシャ機構を有した切断機構部(図略)を備える。可動カッタは、線材送り機構によって環形の内部に挿入された長尺線材を切断し、所定寸法の円柱状のワークを作成する。プッシャ機構は、可動カッタからワークをプッシュアウトする。ワークの材質として、アルミや鉄、各種の合金などを例示できる。
【0014】
トランスファー装置27は、ダイスホルダ22の上方からダイス23の前方にかけて配設される。トランスファー装置27は、ワークを把持する6対のフィンガ対を有する。最上流の第1のフィンガ対は、切断機構部でワークを把持して、第1工程まで搬送する。第2~第5のフィンガ対は、上流側の工程でワークを把持して、下流側の工程まで搬送する。最下流の第6のフィンガ対は、第5工程でワークを把持して、図略の搬出部まで搬送する。
【0015】
ラム24を往復駆動するために駆動部9が設けられる。駆動部9は、主駆動源91と各種の伝達機構およびカム機構などで構成される。主駆動源91は、例えば、三相交流電源で動作する誘導モータまたは同期モータとすることができる。駆動部9は、トランスファー装置27および切断機構部を併せて駆動する。主駆動源91の駆動力は、フライホイール92、ディスクブレーキ93、および減速機構94を介して、ラム24を駆動するクランク軸95に入力される。さらに、クランク軸95から分岐歯車対96を介してサイド軸97へと、駆動力が分岐伝達される。
【0016】
サイド軸97は、駆動力を上方に分岐伝達する。上方に分岐された駆動力は、トランスファカム98を回転駆動する。トランスファカム98は、トランスファー装置27を駆動する。また、サイド軸97からトランスファドライブ99を経由した先に、6個のオープンクローズカム9Aが回転駆動されるように連結される。オープンクローズカム9Aは、幅方向に等間隔で配置される。オープンクローズカム9Aは、それぞれフィンガ対を開閉駆動する。
【0017】
さらに、サイド軸97には、カッタカム9Bが設けられるとともに、プッシャカム9C、フィードカム9D、フィードローラ9E、5個のノックアウトカム9F、および復帰駆動カム9Hが連結される。カッタカム9B、プッシャカム9C、フィードカム9D、およびフィードローラ9Eは、切断機構部を駆動する。ノックアウトカム9Fは、幅方向に等間隔で配置されており、第1~第5工程の位置にそれぞれ対応する。第5工程のノックアウトカム9Fは、後述するノックアウトピン61を駆動する。さらに、第5工程のノックアウトカム9Fに並んで、復帰駆動カム9Hが配置される。復帰駆動カム9Hは、後述する復帰駆動部材65を駆動する。
【0018】
実施形態のワーク側面成形装置1の説明に移る。ワーク側面成形装置1は、多工程圧造機10の第1~第5工程のうちのどの一工程に組み込まれてもよい。本実施形態において、ワーク側面成形装置1は、第5工程に組み込まれる。
図2は、ワーク側面成形装置1が成形加工するワークWの形状を示した図である。
【0019】
ワークWの外形は、外径D1、長さLの円柱形状となっている。そして、円柱形状の一方の端面に、直径D2の有底穴が形成されている。つまり、ワークWは、長さ方向の一部が円筒形WCになっている。このワークWは、第1~第4工程で形成される。第5工程に組み込まれたワーク側面成形装置1は、ワークWの円筒形WCの側面に、横方向から穴抜き加工を施して、横穴WHを成形加工する。成形加工の際に、ワークWの長さ方向と、多工程圧造機10の前後方向(軸線AXの延びる方向)とが一致する。
【0020】
図3は、実施形態のワーク側面成形装置1の分解斜視図である。また、
図4は、ワーク側面成形装置1の斜視図であり、
図5は、ワーク側面成形装置1の部分拡大斜視図である。
図4および
図5を見やすくするために、一部の部材は省略され、また、一部の部材は実際の組立状態と異なる配置に描かれている。
図3、
図4、および
図5の紙面右側は前側に相当し、紙面左側は後側に相当する。
【0021】
ワーク側面成形装置1は、ダイス23、付勢部材に相当するばね5、幅方向動作部材4、側面成形パンチ45、ノックアウトピン61、復帰駆動部材65、パンチ26に設けられた押動部材71およびワーク挿入部材75などで構成される。
図6は、ダイス23を構成する芯金36に設けられた廃材収容部37の側面断面図である。また、
図7~
図10には、ワーク側面成形装置1の側面断面が示されている。
【0022】
ダイス23は、後ダイス31、中ダイス32、前ダイス33、下ダイス34、上ダイス35、および芯金36からなる。後ダイス31は、厚みを有する円板状の部材である。後ダイス31の中心の軸線AX上に、円形断面のワーク挿入孔311が穿設される。ワーク挿入孔311は、挿入されたワークWの外側を支持する。後ダイス31の上部寄りに、矩形断面の駆動孔312が穿設される。後ダイス31は、パンチ26に近い後側に配置される。
【0023】
中ダイス32は、後ダイス31よりも厚めで略同径の円板状の部材である。中ダイス32の軸線AX上には、丸棒状の芯金36が後ろ向き水平方向に立設される。芯金36の後部の先端形状は、ワークWの円筒形WCの内部形状に略一致する。芯金36の後部寄りには、上下方向に貫通する貫通孔で形成された廃材収容部37が設けられる。中ダイス32の軸線AXの下側、右側、および左側の位置であって、軸線AXから等距離の3位置に、それぞれピン通過孔321が穿設される。中ダイス32の軸線AXの上側に、駆動孔322が穿設される。中ダイス32は、後ダイス31の前方に離隔しつつ、後ダイス31に平行して配置される。
【0024】
前ダイス33は、後ダイス31および中ダイス32よりも厚く略同径の円柱状の部材である。前ダイス33は、中ダイス32の3個のピン通過孔321と同じ位置に3個のピン通過孔331が穿設されている。さらに、前ダイス33は、中ダイス32の駆動孔322と同じ位置に駆動孔332が穿設されている。前ダイス33は、中ダイス32の前側に密着して配置される。
【0025】
下ダイス34および上ダイス35は、後ダイス31と中ダイス32の間に配置される。下ダイス34および上ダイス35は、横向きの円柱を上下に二つ割りした概ね半円柱形状の部材である。下ダイス34の後寄りに、幅方向の溝断面が半円形でかつ軸線AXに沿うワーク支持溝341(
図4、
図5参照)が形成される。ワーク支持溝341は、後ダイス31のワーク挿入孔311から挿入されたワークWの外側を支持する。ワーク支持溝341の途中には、下方に向かって貫通する排出孔342(
図6参照)が穿設される。下ダイス34の前寄りに、ワーク支持溝341よりも大きくかつ軸線AXに沿うピン収容溝343が形成される。ピン収容溝343には、ノックアウトピン61が収容される。
【0026】
ワーク支持溝341とピン収容溝343の間に、ガイド保持部344が設けられる。ガイド保持部344には、ガイド部材345が嵌め込まれる。ガイド部材345は、ノックアウトピン61を保持して前後方向に案内するガイド孔を有する。下ダイス34のワーク支持溝341の左右両側、およびピン収容溝343の左右両側に、有底のばね収容穴347が設けられる。合計4個のばね収容穴347には、ばね5がそれぞれ収容される。ばね5は、コイル形状であり、圧縮されて用いられる。
【0027】
上ダイス35には、略直方体形状の内部空間351が形成されている。内部空間351は、後ダイス31から中ダイス32までの範囲に広がっている。上ダイス35は、ワークWを直接的には支持しない。これに対して、後ダイス31および下ダイス34は、ワークWの外側を支持する外ダイスとなる。
【0028】
幅方向動作部材4は、上ダイス35の内部空間351に配設される。幅方向動作部材4は、上下方向、換言するとワークWの幅方向に動作する。幅方向動作部材4の上面の後寄りに、第1被押面43が形成される。第1被押面43は、軸線AXに対して傾斜しており、前側ほど軸線AXから離れている。幅方向動作部材4の下面の前寄りに、第2被押面44(
図7参照)が形成される。第2被押面44は、軸線AXに対して傾斜しており、前側ほど軸線AXから離れている。
【0029】
幅方向動作部材4の後側寄りに、側面成形パンチ45が下向きに埋め込まれている。側面成形パンチ45は、幅方向動作部材4の下面から所定長さだけ下方に突出する。側面成形パンチ45は、ワークWの円筒形WCの側面に打圧されて、横穴WHの成形加工を行う。幅方向動作部材4は、4個のばね5の付勢力により、通常時に上方へ駆動される(
図7参照)。
【0030】
ノックアウトピン61は、上ダイス35の内部空間351から下ダイス34のピン収容溝343にかけて配設される。ノックアウトピン61は、幅方向動作部材4の下側の軸線AX上に位置する。ノックアウトピン61は、ガイド部材345のガイド孔によって前後方向に移動可能に保持される。
【0031】
ノックアウトピン61は、ワークWの外径D1に略等しい円筒形の部材から形成される。ノックアウトピン61の内側には、芯金36が配置される。ノックアウトピン61の前側は、円筒形が維持されている。ノックアウトピン61の後側は、左右に分離しており、挿入されたワークWの前面に当接可能となっている。分離した左右のそれぞれの断面は、円弧形状を呈する。分離した左右の下側の間隙は、芯金36の廃材収容部37から廃材を落下させる排出スリット62(
図4、
図5参照)となる。
【0032】
ノックアウトピン61の前側に、3本の中間ピン63が配置される。中間ピン63は、中ダイス32のピン通過孔321、および前ダイス33のピン通過孔331を通過して、前方に延在する。3本の中間ピン63の前端は、ノックアウトカム9Fにより、揃って前後方向に駆動される。これにより、ノックアウトピン61は、中間ピン63を介して後方に駆動され、ダイス23からワークWを後方に突き出すことができる。
【0033】
復帰駆動部材65は、前後方向に移動可能な棒状の部材である。復帰駆動部材65は、中ダイス32の駆動孔322、および前ダイス33の駆動孔332を通過して配置される。復帰駆動部材65の上側の後寄りに、第2押動面66が形成される。第2押動面66は、軸線AXに対して傾斜しており、前側ほど軸線AXから離れている。復帰駆動部材65の前端は、復帰駆動カム9Hにより前後方向に駆動される。復帰駆動部材65が後方に駆動されたとき、第2押動面66は、幅方向動作部材4の第2被押面44を押動する。
【0034】
本実施形態において、先に復帰駆動部材65が後方へ動作し、後からノックアウトピン61が後方へ動作する。これを実現する駆動機構は、主駆動源91によって駆動される復帰駆動カム9Hおよびノックアウトカム9Fを含んで構成される。復帰駆動カム9Hおよびノックアウトカム9Fは、互いに異なるカム形状に形成される。2つのカム形状を変形することにより、復帰駆動部材65およびノックアウトピン61の動作タイミングを個別にかつ自由に調整することができる。なお、駆動機構は、上述した2つのカムに限定されず、変形することが可能である。例えば、一方または両方のカムを油圧駆動装置に置き換えても、動作タイミングを個別にかつ自由に調整できる効果は変わらない。また、カムに代えて、主駆動源91と異なるモータを用いることもできる。
【0035】
一方、パンチ26には、押動部材71およびワーク挿入部材75が設けられる。押動部材71は、角棒状の部材であり、パンチ26の上部に固定されて前方に延在する。押動部材71の下側の前寄りに、第1押動面72が形成される。第1押動面72は、軸線AXに対して傾斜しており、前側ほど軸線AXから離れている。押動部材71は、前進して後ダイス31の駆動孔312を通り抜ける。これにより、第1押動面72は、幅方向動作部材4の第1被押面43を押動することができる。
【0036】
ワーク挿入部材75は、パンチ26の軸線AXに設けられる。ワーク挿入部材75は、棒状の部材であり、前後方向に延在する。ワーク挿入部材75の後部に、鍔付き拡径部76が付設される。鍔付き拡径部76は、パンチ26の内部261に収容される(
図3、
図7参照)。さらに、パンチ26の内部261には、鍔付き拡径部76を周回するコイルばね77が配設される。コイルばね77は、ワーク挿入部材75を前方に付勢する。これにより、ワーク挿入部材75は、パンチホルダ25に対して、前後方向に相対移動可能となっている。
【0037】
図6に示されるように、廃材収容部37は、側面成形パンチ45の真下に位置し、かつ、下ダイス34の排出孔342の真上に位置する。廃材収容部37の側面成形パンチ45に近い入口371の形状および断面積は、側面成形パンチ45の断面の形状および断面積に略一致している。一方、廃材収容部37の側面成形パンチ45から離れた内部372の断面積は、入口371の断面積よりも大きい。
【0038】
さらに、排出孔342と図略の回収箱の間に、吸引排出部38が設けられる。吸引排出部38は、排出孔342の内部を吸引して(
図6の矢印F参照)、後述する廃材Zを強制的に排出する。吸引排出部38として、吸引ポンプを例示できる。なお、吸引排出部38は、省略することも可能である。
【0039】
次に、実施形態のワーク側面成形装置1の動作、作用、および効果について説明する。
図7は、ワークWがダイス23に挿入される直前の状態を示す側面断面図である。
図8は、ワークWが挿入されて横穴WHが成形加工される瞬間の状態を示す側面断面図である。
図9は、復帰駆動部材65が動作している途中の状態を示す側面断面図である。
図10は、ノックアウトピン61により、成形加工されたワークWがダイス23から突き出された状態を示す側面断面図である。
【0040】
図7の状態において、幅方向動作部材4は、4個のばね5の付勢力によって上方に駆動されている。また、ノックアウトピン61、中間ピン63、および復帰駆動部材65は、前側に移動している。一方、ワーク挿入部材75の前側には、トランスファー装置27のフィンガ対に挟持されたワークWが第4工程から搬入されている。ラム24およびパンチ26は、ダイス23に向かう前進動作を開始している。ワーク挿入部材75は、パンチ26と共に前進して、ワークWを前方に押動する。
【0041】
ワークWは、円筒形WCを前にして前進し、後ダイス31のワーク挿入孔311に挿入される。ワークWがさらに前進すると、円筒形WCの内部に芯金36が嵌り、ワークWのセットが終了する。ワークWの外側は、後ダイス31および下ダイス34によって支持される。このとき、円筒形WCの側面の上側半分は、開放した状態が維持される。ワークWがセットされた後も、ラム24およびパンチ26は前進し続ける。このため、コイルばね77が圧縮され、ワーク挿入部材75は、パンチ26に対して相対的に後退する。
【0042】
ワークWのセットが終了すると、押動部材71の第1押動面72は、幅方向動作部材4の第1被押面43を押動する。押動された幅方向動作部材4は、4個のばね5の付勢力に抗して下降し、
図6および
図8の状態に至る。すなわち、幅方向動作部材4の下降にしたがい、側面成形パンチ45は、ワークWの幅方向に駆動され、円筒形WCの側面に穴抜き加工を施して、横穴WHを成形加工する。
【0043】
このとき、廃材収容部37の入口371が狭く形成されているので、芯金36は十分に機能し、ワークWの横穴WHの周囲の形状が変歪しない。また、側面成形パンチ45の先端は、入口371を通り抜けて内部372にまで到達する。このため、穴抜き加工を施したときに発生する廃材Z(抜きかす)は、広い内部372に収容される。したがって、廃材Zが廃材収容部37に詰まって排出されなくなる事態は生じない。
【0044】
成形加工が終了して押動部材71およびワーク挿入部材75が後退し始めると、4個のばね5の付勢力により、幅方向動作部材4は上方に押圧される。換言すると、4個のばね5は、側面成形パンチ45をワークWの側面から遠ざける方向に付勢する。このとき、側面成形パンチ45が横穴WHに嵌り込んでいて、幅方向動作部材4が上昇しないケースも生じ得る。
【0045】
それでも、押動部材71の後退に合わせて、復帰駆動部材65が後方に駆動される。復帰駆動部材65の第2押動面66は、幅方向動作部材4の第2被押面44を押動する。これにより、ばね5の付勢力と復帰駆動部材65の押動力とが重畳して、幅方向動作部材4を押し上げる。したがって、
図9に示されるように、成形加工を施した後の側面成形パンチ45を確実にワークWから離脱させることができる。
【0046】
続いて、復帰駆動部材65だけでなく、中間ピン63も後方に駆動される。これにより、ノックアウトピン61は、成形加工が施されたワークWをダイス23の後方まで突き出し、
図10に至る。突き出されたワークWは、トランスファー装置27によって搬出部まで搬送される。
【0047】
ワークWが芯金36よりも後退した時点で、廃材Zは、廃材収容部37から落下する。廃材Zは、さらに、ノックアウトピン61の排出スリット62を通り、下ダイス34の排出孔342を落下して回収箱に排出される。このとき、吸引排出部38が動作するので、廃材Zは、飛散したりすることなく、確実に回収される。
【0048】
実施形態のワーク側面成形装置1では、多工程圧造機10の一工程に配置されるダイス23およびパンチ26に側面成形パンチ45および復帰駆動部材65が付加されて、ワークWの側面への成形加工が可能となる。また、ばね5は、ダイス23の内部に配置され、復帰駆動部材65は、工程内の前側から駆動される。加えて、押動部材71および復帰駆動部材65は、傾斜面を用いた押動力の方向変換機能を利用している。さらに、復帰駆動部材65およびノックアウトピン61は、駆動機構としての復帰駆動カム9Hおよびノックアウトカム9Fから駆動される。これらを組み合わせたことにより、ワーク側面成形装置1は、コンパクトな構成となり、多工程圧造機10の一工程への組み込みが可能となる。したがって、ワーク側面成形装置1は、多工程圧造機10の実質的な工程数を減らさない。
【0049】
また、幅方向動作部材4および側面成形パンチ45は、成形加工を施した後に4個のばね5の付勢力によって上方に押圧される。このとき、4個のばね5の合力は、幅方向動作部材4を真上に押し上げる。したがって、側面成形パンチ45は、せん断力が殆ど発生せず、折損などの破損が生じにくい。また、ばね5の付勢力だけで幅方向動作部材4が動作せずとも、復帰駆動部材65が動作して押動力が加えられる。換言すると、側面成形パンチ45は、復帰駆動部材65およびばね5の両方によってワークWの側面から遠ざかる方向に駆動される。したがって、復帰駆動部材65の押動力とばね5の付勢力の重畳により、側面成形パンチ45は、ワークWから確実に離脱することができる。
【0050】
さらに、ワーク側面成形装置1は、パンチ26に一体的に設けられた押動部材71、幅方向動作部材4、および側面成形パンチ45の3部材を用いて、横穴WHを成形加工することができる。これによれば、ワーク側面成形装置1は、特許文献1の構成と比較して、構成部材の点数が削減される。
【0051】
また、ワークWに横穴WHの成形加工を行なったときに発生する廃材Zを、合理的に排出する構成を採用している。詳述すると、芯金36に廃材収容部37を設け、ノックアウトピン61に排出スリット62を設け、下ダイス34に排出孔342を設けて、廃材Zが自動的に落下するように構成した。さらに、排出孔342と回収箱の間に、吸引排出部38を設けた。これによれば、ワーク側面成形装置1は、廃材Zを自動的に確実に回収することができ、信頼性が高くかつ便利である。
【0052】
なお、実施形態では有底穴をもつワークWを例示したが、貫通孔をもつワークであってもよい。また、本発明は、横穴WHの穴抜き加工以外の用途、例えば、ワークの側面への刻印や凹み付けにも応用できる。本発明は、その他にも様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1:ワーク側面成形装置 23:ダイス 26:パンチ
31:後ダイス 32:中ダイス 34:下ダイス 342:廃材排出孔
35:上ダイス 36:芯金
37:廃材収容部 371:入口 372:内部 38:吸引排出部
4:幅方向動作部材 43:第1被押面 44:第2被押面
45:側面成形パンチ 5:ばね
61:ノックアウトピン 62:排出スリット
65:復帰駆動部材 66:第2押動面
71:押動部材 72:第1押動面 75:ワーク挿入部材
9F:ノックアウトカム 9H:復帰駆動カム 10:多工程圧造機
W:ワーク WC:円筒形 WH:横穴 AX:軸線