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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】車両用視認装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/62 20060101AFI20230221BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
B60S1/62 120B
B08B3/02 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019055137
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020152325
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】定松 隆輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 利弥
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】実公昭48-012916(JP,Y1)
【文献】特開2013-208984(JP,A)
【文献】特開2006-130950(JP,A)
【文献】国際公開第2019/035255(WO,A1)
【文献】実開昭57-033557(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00-1/68
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置の画角範囲外に位置する壁部に設けられた開口部と、
前記開口部から突出可能であり、洗浄液が供給されるノズルと、
前記ノズルに設けられ、前記ノズルの突出状態において前記撮像装置の前面の透過部材と面した噴射口と、
前記壁部側に支持されて前記開口部を塞ぐと共に、前記透過部材から遠い側を回動軸に、前記透過部材側が開放可能な蓋体と、
前記ノズルと前記蓋体とを連絡し、前記ノズルの突出に合わせて前記蓋体を開放させるリンク機構と、
を備えた車両用視認装置。
【請求項2】
前記リンク機構は、
前記ノズルに設けられた軸体と、
前記蓋体に設けられ、前記軸体を案内する案内部と、
を備えた請求項1の車両用視認装置。
【請求項3】
前記リンク機構は、
前記蓋体に設けられた軸体と、
前記ノズルに設けられ、前記軸体を案内する案内部と、
を備えた請求項1の車両用視認装置。
【請求項4】
前記蓋体は、前記回動軸側の回動側蓋部と、前記回動側蓋部の先端側に接続され、かつ前記ノズル側に屈曲可能である開放側蓋部と、を備え、
前記リンク機構は、前記開放側蓋部に対して設けられている請求項1~3の何れか1項に記載の車両用視認装置。
【請求項5】
前記回動軸は、前記蓋体の厚さ方向において、前記ノズルが収容される前記壁部の裏側に位置している請求項1~4の何れか1項に記載の車両用視認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用視認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バンパ等に設けられ、ヘッドランプを洗浄する車両用の洗浄装置と、当該洗浄装置を覆う蓋体であるノズルカバーに係る構造が開示されている。当該構造は、バンパの開口から当該バンパの外側に向けて突出する噴射ノズルと、噴射ノズルの先端側に結合されると共に、バンパの開口を開閉するノズルカバーと、を備えている。当該構造では、洗浄装置が作動すると、ノズルカバーはバンパの意匠面から噴射ノズルの突出方向に浮き上がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-218706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、撮像装置を備えた車両用視認装置において、撮像装置の透過部材を洗浄するために特許文献1の構造を適用した場合、蓋体が浮き上がった際に撮像装置の画角範囲内に蓋体が入り込むと、撮像画像に蓋体が写り込み、視認性能が低下する。
【0005】
本発明は上記問題に鑑み、撮像装置の前面の透過部材を洗浄する場合に、蓋体の撮像画像への写り込みを抑制可能な車両用視認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様の車両用視認装置は、撮像装置の画角範囲外に位置する壁部に設けられた開口部と、前記開口部から突出可能であり、洗浄液が供給されるノズルと、前記ノズルに設けられ、前記ノズルの突出状態において前記撮像装置の前面の透過部材と面した噴射口と、前記開口部を塞ぐと共に、前記透過部材から遠い側を回動軸に、前記透過部材側が開放可能な蓋体と、前記ノズルの突出に合わせて前記蓋体を開放させるリンク機構と、を備えている。
【0007】
本発明の第2態様の車両用視認装置は、第1態様の車両用視認装置において、前記リンク機構は、前記ノズルに設けられた軸体と、前記蓋体に設けられ、前記軸体を案内する案内部と、を備えている。
【0008】
本発明の第3態様の車両用視認装置は、第1態様の車両用視認装置において、前記リンク機構は、前記蓋体に設けられた軸体と、前記ノズルに設けられ、前記軸体を案内する案内部と、を備えている。
【0009】
本発明の第4態様の車両用視認装置は、第1態様~第3態様の何れか1の車両用視認装置において、前記蓋体は、前記回動軸側の回動側蓋部と、前記回動側蓋部の先端側に接続され、かつ前記ノズル側に屈曲可能である開放側蓋部と、を備え、前記リンク機構は、前記開放側蓋部に対して設けられている。
【0010】
本発明の第5態様の車両用視認装置は、第1態様~第4態様の何れか1の車両用視認装置において、前記回動軸は、前記蓋体の厚さ方向において、前記ノズルが収容される前記壁部の裏側に位置している。
【発明の効果】
【0011】
第1態様の車両用視認装置は、撮像装置の前面の透過部材を洗浄する洗浄装置に対して適用される。当該洗浄装置においては、洗浄液が噴射されるノズルが撮像装置の画角範囲外に位置する開口部から突出可能に構成されている。そして、当該開口部を塞ぐ蓋体は、透過部材から遠い側を回動軸に、透過部材側が開放可能なヒンジ構造されており、ノズルの動きに合わせて開放が可能である。第1の態様によれば、ノズルが突出した場合に蓋体の先端の画角範囲への移動を抑制でき、蓋体の撮像画像への写り込みを抑制することができる。
【0012】
第2態様及び第3態様の車両用視認装置では、ノズルの突出に伴いリンク機構によって蓋体が開き、ノズルの収縮に伴い蓋体が閉じる。したがって、洗浄装置の動力を利用して蓋体を開閉することができる。
【0013】
第4態様の車両用視認装置では、蓋体が回動軸側の回動側蓋部と透過部材側の開放側蓋部との間で屈曲可能に形成されている。これにより、蓋体が開かれる場合に、回動側蓋部は回動されて、開放側蓋部は回動側蓋部に引寄せられて画角範囲から遠ざかる方向に移動させることができる。したがって、当該車両用視認装置によれば、蓋体全体が回動しながら開く場合と比べて、蓋体の撮像画像への写り込みをさらに抑制することができる。
【0014】
第5態様の車両用視認装置によれば、回動軸が壁部の裏側方向に移動するほど、回動する蓋体の先端部が描く軌跡は画角範囲から遠ざかる。そのため、当該車両用視認装置によれば、蓋体の撮像画像への写り込みをさらに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態の車両用視認装置の背面図である。
図2】第1の実施形態の車両用視認装置の断面図(図1のL-L線の断面図)であって、(A)は、洗浄装置の非作動状態を示す図であり、(B)は、洗浄装置の作動状態を示す図である。
図3】第1の実施形態におけるリンク機構の一部であって、(A)は、カバーを裏側から見た斜視図であり、(B)は、ノズルを下方側から見た斜視図である。
図4】第2の実施形態の車両用視認装置の断面図(図1のL-L線に対応する断面図)であって、(A)は、洗浄装置の非作動状態を示す図であり、(B)は、洗浄装置の作動状態を示す図である。
図5】第2の実施形態におけるリンク機構の一部であって、(A)は、カバーを裏側から見た斜視図であり、(B)は、ノズルを上方側から見た斜視図である。
図6】第3の実施形態におけるリンク機構の一部であって、(A)は、カバーを裏側から見た斜視図であり、(B)は、ノズルを上方側から見た斜視図であり、(C)は、リンク機構の断面図である。
図7】第4の実施形態の車両用視認装置の断面図(図1のL-L線に対応する断面図)であって、(A)は、洗浄装置の非作動状態を示す図であり、(B)は、洗浄装置の作動状態を示す図である。
図8】(A)は、第5の実施形態の車両用視認装置の断面図(図1のL-L線に対応する断面図)であって、(B)は、その変形例の車両用視認装置の断面図(図1のL-L線に対応する断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、各実施形態において、本発明が適用された車両用視認装置の一例を説明する。なお、各図において矢印FRは車両前方側、矢印OUTは車幅方向外側、矢印UPは車両上方側をそれぞれ示すものとする。また、蓋体であるカバー40に係る方向について、矢印Dは奥行方向、矢印Wは幅方向、矢印Hは高さ方向をそれぞれ示すものとする。
【0017】
<第1の実施形態>
(構成)
図1には、第1の実施形態の車両用視認装置10が、車両後方側から見た背面図により示されている。蓋体の開閉構造11(以下、単に「開閉構造11」とする)が適用された車両用視認装置10は、車両の車体側にあたるサイドドア(図示せず)やフェンダ(図示せず)に組付けられて、車両の外部に配置されている。図2(A)に示されるように、車両用視認装置10は、カメラユニット12と、カメラユニット12を覆う略砲弾型のバイザ14と、バイザ14の内部に収容されたノズル16と、を含んで構成されている。
【0018】
本実施形態のカメラユニット12は、撮像装置としてのカメラ20と、カメラ20を収容する略筒状のカメラブラケット22と、カメラブラケット22の車両後方側を覆う透過部材としてのカバーガラス24と、と含んで構成されている。
【0019】
カメラ20は、車両後方側を撮像するものであり、画角Aの範囲を撮像範囲としている。カメラ20により撮像された撮像画像は車室内に設置された表示装置に表示される。また、カメラ20は、レンズ20Aの前面(すなわち、車両後方側の面)がカバーガラス24により覆われている。このカバーガラス24は車外に露出している。そのため、カバーガラス24が汚れた場合は、カメラ20の視認性を確保するため、洗浄装置による洗浄が行われる。
【0020】
本実施形態のバイザ14は、樹脂製であって、図1に示されるように、車体から車幅方向外側に立設する後壁部14Aと、後壁部14Aから車両前方側に延びる周壁部14Bと、を有している。また、バイザ14は、車幅方向内側が開口しており、車幅方向外側から、カメラユニット12及びノズル16に対して被覆している。
【0021】
後壁部14Aは、中央部分が車両前方側に窪んだ窪み部30を有している。また、窪み部30の底部には、円形状のレンズ孔30Aが形成されている。図2(A)に示されるように、窪み部30は、断面視においてレンズ孔30Aから車両後方側に向かうにつれてカメラ20の外周側に傾く壁部としての傾斜壁31を有している。本実施形態において、傾斜壁31の角度は、カメラ20の画角Aよりも広くなるように設定されている。すなわち、傾斜壁31はカメラ20の画角Aの範囲外に位置しており、カメラ20の撮像画像に傾斜壁31が写り込むことない。
【0022】
また、図1に示されるように、傾斜壁31において、レンズ孔30Aの車両上方側には、略矩形の開口部30Bが形成されている。開口部30Bは、蓋体としてのカバー40により塞がれている。本実施形態では、傾斜壁31の表面とカバー40の表面とにより連続した意匠面が形成されている。本実施形態のカバー40の高さ方向は、開口部30Bにおける傾斜壁31の傾斜方向に一致する。すなわち、カバー40の高さ方向は、上方側が車両上下方向に対して、車両後方側に傾斜している。同様に、カバー40の奥行方向は、車両前後方向に対して傾斜している。
【0023】
以下、車両用視認装置10の説明に際し、上方側、下方側と表記した場合は、カバー40の上下方向に対する方向を示す。また、幅方向と表記した場合は、カバー40の幅方向を示す。さらに、表側、裏側と表記した場合は、奥行方向に対する方向を示す。この場合、車両後方寄りが表側となり、車両前方寄りが奥行方向奥側となる。
【0024】
また、図2(A)に示されるように、開口部30Bの上方側であって幅方向外側の傾斜壁31には、裏側に向けて突出する一対の支持部32が設けられている。支持部32には、幅方向に貫通する貫通孔34が設けられている。この貫通孔34には、後述する軸部43が挿入されている。
【0025】
図2(B)に示されるように、カバー40は、後述するリンク機構60により上方側を軸として奥行方向に開閉可能に構成されている。図3(A)に示されるように、カバー40は、樹脂製であって、板状部41と、突出部42と、軸部43と、突出壁部44と、ガイド孔46と、を有している。突出部42、軸部43及びガイド孔46は、幅方向両側に各々設けられている。
【0026】
板状部41は、開口部30Bを塞ぐ板状の部分である。突出部42は、板状部41の上方かつ幅方向外側の端部から裏側に向けて突出する部分である。軸部43は、突出部42から幅方向外側に突出する円筒状の部分である。軸部43がバイザ14の貫通孔34に挿入されることにより、カバー40は奥行方向に回動可能となる。軸部43は回動軸に相当し、ガイド孔46は案内部に相当する。
【0027】
突出壁部44は、突出部42の下方側において裏側に向けて突出する上下方向に延びる板状の部分である。ガイド孔46は、突出壁部44を幅方向に貫通すると共に上下方向に沿って延びる長孔である。ガイド孔46には、後述する突出ピン55が収容されている。
【0028】
本実施形態のノズル16は樹脂製であって、図2(A)に示されるように、バイザ14の内部において、カメラユニット12の車両上方側に収容されている。また、カバー40に対して、ノズル16はカバー40の裏側に収容されている。このノズル16は、洗浄装置を構成するものであって、ノズル16から延びるホース50にはウォッシャポンプ及びエアポンプが接続されている。すなわち、ノズル16には、ウォッシャポンプから洗浄液が供給され、エアポンプから圧縮空気が供給される。図2(A)及び図3(B)に示されるように、ノズル16は、シリンダ51と、ピストン52と、を含んで構成されている。
【0029】
シリンダ51は、カメラユニット12共にバイザ14の内部に固定されている。シリンダ51の裏側(車両前方側)にはホース50が接続されており、表側に設けられた円筒状の孔には、ピストン52が挿入されている。ピストン52は先端が閉塞された筒状の部材であって、シリンダ51の内部を摺動可能に構成されている。また、ピストン52の先端部の下方側には、洗浄液及び圧縮空気が噴出する噴射口53が形成されている。
【0030】
ノズル16の内部には、奥行方向を軸方向とする引張スプリング54が収容されている。この引張スプリング54は、一端がシリンダ51に接続され、他端がピストン52に接続されている。ピストン52は、洗浄装置の非作動時には、引張スプリング54の張力によりシリンダ51に引寄せられている。しかしながら、ピストン52は、洗浄装置の作動時には、引張スプリング54の張力に対抗してシリンダ51から突出する。これにより、ノズル16は、ピストン52が開口部30Bから表側に突出する。また、ピストン52の突出状態において、噴射口53はレンズ孔30Aと対向する。すなわち、噴射口53はカバーガラス24と面している。
【0031】
また、ピストン52の先端部における上方側部分には、軸体としての突出ピン55が幅方向外側に向けて突出している。この突出ピン55は、円柱状であって、ガイド孔46に対して摺動可能に収容されている。
【0032】
ここで、開閉構造11は、ノズル16の動きに合わせてカバー40を回動させ、開放させるリンク機構60を備えている。図3(A)及び(B)に示されるように、本実施形態のリンク機構60は、少なくとも、カバー40に設けられたガイド孔46と、ノズル16に設けられた突出ピン55と、により構成されている。本実施形態の開閉構造11は、レンズ孔30Aの車両上方側に設けられている。
【0033】
(作用)
本実施形態では、カバーガラス24が汚れた場合に、自動又は手動により洗浄装置が作動する。以下、洗浄装置においてウォッシャポンプが作動した場合を例に説明するが、エアポンプが作動した場合も同様である。
【0034】
洗浄装置においてウォッシャポンプが作動し、ノズル16に対して洗浄液が供給されると、洗浄液によりノズル16内部の圧力が上昇すると共に、引張スプリング54の張力に対抗してピストン52が表側に突出される。
【0035】
図2(B)に示されるように、ピストン52がシリンダ51から突出される際、換言するとノズル16が突出される際、リンク機構60は、突出ピン55が突出壁部44を表側に押出して、軸部43を中心にカバー40を表側に回動させる。これにより、板状部41の下方側が開口部30Bから浮き上がり、噴射口53がバイザ14の外部に露出する。そして、ノズル16内部の洗浄液の圧力が所定値を超えると逆止弁(図示せず)が開き、噴射口53からレンズ孔30Aに向けて洗浄液が噴出する。
【0036】
一方、ウォッシャポンプの作動が停止してノズル16に対する洗浄液の供給が停止されると、ピストン52は引張スプリング54の張力によりシリンダ51の内部に収容される(図2(A)参照)。
【0037】
ピストン52がシリンダ51に収容される際、換言するとノズル16が収縮される際、リンク機構60は、突出ピン55が突出壁部44を裏側に引戻して、軸部43を中心にカバー40を裏側に回動させる。これにより、板状部41が開口部30Bに収容される。
【0038】
本実施形態の車両用視認装置10では、洗浄液や圧縮空気が噴射されるノズル16がカメラ20の画角Aの範囲外に位置する開口部30Bから突出可能に構成されている。そして、開口部30Bを塞ぐカバー40は、カバーガラス24から遠い上方側を軸に下方側が開放可能なヒンジ構造されており、ノズル16の動きに合わせて開放が可能である。
【0039】
ここで、上記特許文献1の構造のように、ノズルの先端側に蓋体としてのカバーを結合した場合、カバーはノズルと共に奥行方向に沿って突出する。この際、ノズルの噴射口がカバーガラスと対向するまでノズルを突出させると、カバーは突出状態のノズルの先端からさらにカバーの厚み分だけ表側に位置することになる。実際に突出するノズルの位置の誤差や噴射口の位置の誤差を考慮すれば、カバーはカバーの厚み分よりもさらに突出させる必要がある。そのため、カバーの下方側の端部がカメラの画角Aの範囲内に入り込む可能性が生じる。
【0040】
これに対して、本実施形態の車両用視認装置10によれば、ノズル16が表側に突出した場合にカバー40の先端の画角Aの範囲への移動を抑制でき、カバー40のカメラ20への写り込みを抑制することができる。なお、カメラ20の撮像素子が横長の矩形状の場合、カメラ20の画角Aに収まる範囲を撮像範囲とすると、画角Aの範囲内であっても車両上方側には撮像されないエリアが生じる。そのため、本実施形態のように、レンズ孔30Aの車両上方側に開閉構造11を設けた場合、画角Aの範囲にカバー40の先端が入っても撮像範囲に入らない限り、撮像画像にカバー40が写り込むことはない。
【0041】
また、本実施形態の車両用視認装置10では、ノズル16の突出に伴いリンク機構60によってカバー40が開き、ノズル16の収縮に伴いカバー40は閉じる。したがって、本実施形態によれば、洗浄装置の動力を利用してカバー40を開閉させることができる。また、本実施形態のリンク機構60は、カバー40に設けられたガイド孔46と、ノズル16に設けられた突出ピン55と、により構成されている。本実施形態では、突出ピン55が収容されるガイド孔46が長孔であるため、弧を描いて移動するカバー40を直線運動するノズル16により回動させることができる。つまり、ガイド孔46が円形状の孔である場合と比べて、ノズル16をスイングさせることなくカバー40を回動させることができる。
【0042】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は第1の実施形態とリンク機構の構造が相違する。以下、第1の実施形態との相違点について説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付しており、説明は割愛する。
【0043】
(構成)
図4(A)に示されるように、本実施形態のカバー40は、リンク機構62により車両上方側を軸として奥行方向に開閉可能に構成されている。図5(A)に示されるように、カバー40は、板状部41と、突出部42と、軸部43と、突出部45と、貫通孔47と、を有している。突出部42、軸部43、突出部45及び貫通孔47は、幅方向両側に各々設けられている。
【0044】
突出部45は、板状部41の上下方向中央部かつ幅方向内側寄りの部分から裏側に向けて延出する部分である。貫通孔47は、突出部45において幅方向に貫通する円形状の孔である。貫通孔47には、金属棒である軸ピン38が嵌合可能である。軸ピン38が貫通孔47と嵌合することにより、軸ピン38はカバー40における軸体として機能する。
【0045】
図5(B)に示されるように、本実施形態のノズル16におけるシリンダ51は、角筒状であって、表側に設けられた断面矩形状の孔には、ピストン52が挿入されている。ピストン52は先端が下方に折曲げられた角筒状の部材であって、シリンダ51の内部を摺動可能に構成されている。また、折曲げられたピストン52の下方側を向いた端部には、洗浄液及び圧縮空気が噴出する噴射口53が形成されている。本実施形態においても、ピストン52の突出状態において、噴射口53はレンズ孔30Aと対向する。すなわち、噴射口53はカバーガラス24と面している。
【0046】
ピストン52の上方側の面の幅方向中央部には、奥行方向に延びる板状の中央壁部56が設けられている。中央壁部56には、幅方向に貫通すると共に奥行方向に沿って延びる長孔であるガイド孔57が設けられている。このガイド孔57は案内部に相当する。このガイド孔57には、軸ピン38が摺動可能に収容されている。なお、本実施形態のガイド孔57は、奥行方向に沿って形成されているが、これに限らず、軸ピン38の移動軌跡に沿って円弧状に形成されていてもよい。
【0047】
本実施形態のリンク機構62は、少なくとも、カバー40に設けられた貫通孔47と、ノズル16に設けられたガイド孔57と、軸ピン38と、により構成されている。
【0048】
(作用)
本実施形態では、洗浄装置の作動前においては、図4(A)に示されるように、軸ピン38がガイド孔57の表側の端部に位置しており、カバー40は板状部41が開口部30Bを塞いでいる。
【0049】
図4(B)に示されるように、ノズル16が突出される際、ピストン52が板状部41の裏面を押圧すると共に、リンク機構62では、中央壁部56が軸ピン38を表側に押出して、軸部43を中心にカバー40を表側に回動させる。この際、軸ピン38はガイド孔57を摺動しながら中央壁部56に対して裏側に移動する。これにより、板状部41の下方側が開口部30Bから浮き上がり、噴射口53がバイザ14の外部に露出する。そして、ノズル16の内部の圧力が所定値を超えると逆止弁(図示せず)が開き、噴射口53からレンズ孔30Aに向けて洗浄液が噴出する。
【0050】
一方、ウォッシャポンプの作動が停止してノズル16に対する洗浄液の供給が停止されると、ピストン52は引張スプリング54の張力によりシリンダ51の内部に収容される(図4(A)参照)。
【0051】
ノズル16が収縮される際、リンク機構62は、中央壁部56が軸ピン38を裏側に引戻して、軸部43を中心にカバー40を裏側に回動させる。これにより、板状部41が開口部30Bに収容される。
【0052】
以上のように本実施形態のリンク機構62を備えた車両用視認装置10においても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0053】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は第1及び第2の実施形態とリンク機構の構造が相違する。以下、第2の実施形態との相違点について説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同一の構成には同一の符号を付しており、説明は割愛する。
【0054】
図6(A)に示されるように、本実施形態のカバー40は、板状部41と、突出部42と、軸部43と、突出部45と、突出ピン48と、を有している。突出部42、軸部43、突出部45及び突出ピン48は、幅方向両側に各々設けられている。突出ピン48は、突出部45の幅方向内側の面から幅方向内側に向けて突出する円柱状の部分である。突出ピン48は軸体に相当する。
【0055】
図6(B)に示されるように、本実施形態のノズル16におけるピストン52の上方側の面の幅方向中央部には、上方側から見て略T字形状の凸部58が設けられている。また、凸部58の幅方向両側には、奥行方向に沿って延びる溝であるガイド溝59が設けられている。図6(C)に示されるように、突出ピン48はガイド溝59に対して奥行方向に摺動可能に収容されている。ガイド溝59は案内部に相当する。なお、本実施形態のガイド溝59は、奥行方向に沿って形成されているが、これに限らず、突出ピン48の移動軌跡に沿って円弧状に形成されていてもよい。
【0056】
本実施形態のリンク機構64は、少なくとも、カバー40に設けられた突出ピン48と、ノズル16に設けられたガイド溝59と、により構成されている。本実施形態のリンク機構64を備えた車両用視認装置10においても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。また、本実施形態では、第2の実施形態のように軸ピン38を必要とせず、部品点数を削減でき、組付工数を軽減させることができる。
【0057】
<第4の実施形態>
第4の実施形態は第2の実施形態とカバー40の構造が相違する。以下、第2の実施形態との相違点について説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同一の構成には同一の符号を付しており、説明は割愛する。
【0058】
図7(A)に示されるように、本実施形態のカバー40は、板状部41と、軸部43と、突出部45と、突出ピン48と、を有している。軸部43、突出部45及び突出ピン48は、幅方向両側に各々設けられている。本実施形態の軸部43は、板状部41の上方側の端部に設けられている。
【0059】
図7(B)に示されるように、本実施形態のカバー40は、上下方向において屈曲可能に形成されている。このカバー40は、回動側蓋部としての上方側カバー部40Aと、開放側蓋部としての下方側カバー部40Bと、を備えている。上方側カバー部40A及び下方側カバー部40Bは、カバー40の裏側において樹脂ヒンジ40Cにより接続されている。本実施形態では、上方側カバー部40Aが、板状部41の上方側部分と、軸部43と、を備え、下方側カバー部40Bが、板状部41の下方側部分と、突出壁部44と、突出ピン48と、を備えている。
【0060】
本実施形態のノズル16において中央壁部56は、上下方向に延びている。また、本実施形態のガイド孔57は、幅方向に貫通すると共に上下方向に沿って延びている。
【0061】
本実施形態の車両用視認装置10においても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。また、本実施形態では、カバー40が開かれる場合に、上方側カバー部40Aは回動し、下方側カバー部40Bは上方側カバー部40Aに引寄せられて、画角Aの範囲から遠ざかる方向の移動させることができる。特に、カバー40全体が回動しながら開く場合と比べて、カバー40は下方側の先端が上方側に移動しながら開くため、撮像画像への写り込みをさらに抑制することができる。
【0062】
<第5の実施形態>
第5の実施形態は第1の実施形態とカバー40の軸の位置が相違する。以下、第1の実施形態との相違点について説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付しており、説明は割愛する。
【0063】
本実施形態のカバー40は、樹脂製であって、図8(A)に示されるように、板状部41と、腕部49と、軸部43と、突出壁部44と、ガイド孔46と、を有している。腕部49、軸部43、突出壁部44及びガイド孔46は、幅方向両側に各々設けられている。
【0064】
腕部49は、板状部41の上方側かつ幅方向外側の端部から裏側に向けて延出する部分である。腕部49は、裏側に向かうにつれて上方側に弧を描きながら延びた後、表側に向けて延びている。軸部43は、腕部49の上方側の端部に設けられている。本実施形態の軸部43は、第1の実施形態の軸部43と比べて裏側に位置している(図2(A)参照)。すなわち、回動軸が裏側にオフセットされている。
【0065】
本実施形態のように軸部43を裏側に位置させるほど、回動するカバー40の先端部が描く軌跡は画角Aの範囲から離れる(図8(A)の二点鎖線参照)。また、軸部43を腕部49に設けることで、軸部43を突出部42に設ける場合と比べて、板状部41の上下方向の長さを短縮することができる。したがって、本実施形態によれば、軸部43が傾斜壁31寄りに位置する場合に比べて、カバー40のカメラ20への写り込みをさらに抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態のカバー40では、腕部49、軸部43及び突出壁部44が板状部41と同じく樹脂製であるため、これら各部を一体で形成することができる。
【0067】
(変形例)
本実施形態のカバー40は樹脂製であるが、これに限らない。図8(B)に示されるように、例えば、本実施形態の変形例のカバー40は、腕部49及び軸部43が金属製(例えば、ステンレス製)であり、板状部41及び突出壁部44が樹脂製である。変形例のカバー40は、ヒンジを構成する部分が金属製であるため、当該部分が樹脂製の場合と比べてリンク機構60、特に、回動軸である軸部43の耐久性を向上させることができる。また、板状部41が傾斜壁31と同じ樹脂製であるため、意匠面の質感を揃えることができる。さらに、本変形例の腕部49及び軸部43がステンレス製であれば、錆の発生を抑制することができる。
【0068】
なお、本実施形態の他の変形例として、カバー40全体を金属製としてもよい。この場合のカバー40はプレス加工により各部が形成されている。他の変形例によれば、板状部41を薄型でき、カバー40の撮像画像への写り込みをさらに抑制することができる。また、樹脂製のカバー40と比べて、リンク機構60、特に、回動軸である軸部43の耐久性を向上させることができる。
【0069】
<備考>
上記の各実施形態の車両用視認装置10では、ピストン52に作用する洗浄液又は圧縮空気の圧力によりカバー40が開くと共に、ノズル16に設けられた引張スプリング54の張力により、開いた状態のカバー40が閉じていた。しかし、これに限らず、カバー40に対して設けられたスプリング(例えば、回動軸に対して設けられたねじりコイルスプリング)により、カバー40を閉じてもよい。この場合、ノズル16から引張スプリング54を省くことができ、ノズル16の構造を簡素化することができる。
【0070】
上記の各実施形態の車両用視認装置10では、レンズ孔30Aから露出する透過部材としてのカバーガラス24を洗浄する場合を例に説明したが、洗浄する対象物はカバーガラス24に限らない。例えば、カメラユニット12にカバーガラス24を設けずに、レンズ孔30Aからレンズ20Aを直接露出させた場合、当該レンズ20Aを洗浄するために本発明を適用してもよい。この場合、レンズ20Aが透過部材に相当する。
【0071】
上記の各実施形態では、レンズ孔30Aの車両上方側に開閉構造11を設けたがこの限りではなく、レンズ孔30Aの車両下方側や、車幅方向側に設けてもよい。
【0072】
本発明の車両用視認装置10は、車両側方のサイドドア等に設けられ、車両後方を視認する車両用視認装置10に適用されているが、この限りではない。例えば、車両のバックドアに設けられ、車両後方を視認する車両用視認装置に適用してもよい。この場合、バックドアパネルやバンパ等を壁部として、車両用視認装置10を設けることができる。また例えば、ルーフ等に設けられ、自動運転車両における周辺環境を取得するためのカメラ装置に適用してもよい。この場合、ルーフパネルやルーフサイドレール等を壁部として、車両用視認装置10を設けることができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0074】
10・・・車両用視認装置、16・・・ノズル、20・・・カメラ(撮像装置)、24・・・カバーガラス(透明部材)、30B・・・開口部、31・・・傾斜壁(壁部)、38・・・軸ピン(軸体)、40・・・カバー(蓋体)、40A・・・上方側カバー部(回動側蓋部)、40B・・・下方側カバー部(開放側蓋部)、43・・・軸部(回動軸)、46・・・ガイド孔(案内部)、48・・・突出ピン(軸体)、53・・・噴射口、55・・・突出ピン(軸体)、57・・・ガイド孔(案内部)、59・・・ガイド溝(案内部)、60、62、64・・・リンク機構、A・・・画角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8