(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】食器回収システムおよび昇降装置
(51)【国際特許分類】
A47G 23/08 20060101AFI20230221BHJP
B65G 47/52 20060101ALI20230221BHJP
B65G 43/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A47G23/08 Z
B65G47/52 A
B65G43/00 G
(21)【出願番号】P 2018131796
(22)【出願日】2018-07-11
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390010319
【氏名又は名称】株式会社石野製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175190
【氏名又は名称】大竹 裕明
(72)【発明者】
【氏名】石野 晴紀
(72)【発明者】
【氏名】渡部 賢二
(72)【発明者】
【氏名】新村 武史
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-020672(JP,U)
【文献】実開昭56-003128(JP,U)
【文献】実開平02-012350(JP,U)
【文献】特開平04-260523(JP,A)
【文献】特開平05-105207(JP,A)
【文献】特開2003-070617(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0010991(KR,A)
【文献】特開2005-287651(JP,A)
【文献】特開2008-132294(JP,A)
【文献】特開平03-243519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 23/08
B65G 47/52
B65G 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器を投入可能な容器が載置されるベルトコンベアと、
前記ベルトコンベアの終端側に設置されており、前記ベルトコンベアから繰り出された容器が乗り移る昇降部を昇降させる昇降装置と、
前記ベルトコンベアの終端に延設されており、前記ベルトコンベアから繰り出されて前記昇降部へ乗り移る容器を支持可能なローラ群と、
前記ベルトコンベアと前記昇降部との間に配置されており、前記ベルトコンベアから繰り出される容器の進路上にストッパを出し入れするストッパ出し入れ装置と、を備え、
前記ローラ群は、前記ローラ群が有する少なくとも何れかのローラであって、前記ベルトコンベアから繰り出される容器が進行方向へ進むように回転する駆動ローラを有する、
食器回収システム。
【請求項2】
前記ローラ群は、
前記ベルトコンベアの終端側から順に配列される遊転式の複数の遊転ローラと、
前記複数の遊転ローラよりも前記昇降装置側に配置される前記駆動ローラと、を有する、
請求項1に記載の食器回収システム。
【請求項3】
前記ベルトコンベアの終端に容器があり且つ前記昇降部に容器が無い場合、前記ベルトコンベアと前記駆動ローラを作動させて前記ベルトコンベアの終端にあった容器を前記昇降部へ乗り移らせた後、前記昇降装置に前記昇降部を上昇させる制御装置を更に備える、
請求項1
又は2に記載の食器回収システム。
【請求項4】
前記昇降装置は、前記昇降部が昇降する空間の上部を横切るセンサ光により物体の有無を検知する光学式センサを有しており、前記光学式センサが物体を検知すると前記昇降部の上昇を停止する、
請求項1から
3の何れか一項に記載の食器回収システム。
【請求項5】
前記ベルトコンベアは、前記容器を一端側と他端側の両方向へ搬送可能であり、
前記昇降装置は、前記ベルトコンベアの両端側に各々設けられている、
請求項1から
4の何れか一項に記載の食器回収システム。
【請求項6】
食器を投入可能な容器が載置されるベルトコンベアの終端側に設置される昇降装置であって、
前記ベルトコンベアから繰り出された容器が乗り移る昇降部と、
前記昇降部を昇降させる昇降ユニットと、
前記ベルトコンベアから繰り出されて前記昇降部へ乗り移る容器を支持し、前記ベルトコンベアから繰り出される容器が進行方向へ進むように回転する駆動ローラと、
前記ベルトコンベアと前記昇降部との間に配置されており、前記ベルトコンベアから繰り出される容器の進路上にストッパを出し入れするストッパ出し入れ装置と、を備える、
昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器回収システムおよび昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は労働者の確保が社会的に困難となってきており、飲食店においても、例えば、使用済みの食器を客席から厨房へ搬送する搬送機器等の自動機が普及している(例えば、特許文献1-2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-018571号公報
【文献】特開2009-131292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用済みの食器を店内で搬送する装置の形態としては、例えば、客席が並ぶエリアと厨房のエリアとの境界に沿って延在するベルトコンベアに、食器が投入されたバスボックスを載せて搬送するもの、客席沿いに設けられた搬送用のベルトコンベアに食器を直接載せて搬送するもの、客席沿いに設けられた水路に食器を投入して水流で搬送するもの等の各種形態がある。しかし、客席沿いに設けられた搬送用のベルトコンベアに食器を直接載せて搬送する形態の場合には、ベルトに食器を一纏めにして載せることができない。また、後者の水流を用いた形態の場合には、水路が食器で詰まるのを防ぐために、水路に食器を少量ずつ投入する必要がある。
【0005】
そこで、客席に残る使用済みの食器を速やかに片付け可能でありながら、食器を客席から厨房へ運ぶ作業を省力化する方策として、上述したいわゆるバスボックスと呼ばれる上部開放型の容器に食器を投入し、店内に設置されたベルトコンベアで当該容器を搬送することが考えられる。このようなベルトコンベアを店内に設置する場合、衛生上の都合、店舗内の美観、店舗内に設置される他の機器とのスペースの都合、その他各種の理由により、バスボックスを載せる搬送面が床に比較的近い位置となるように設計される。よって、ベルトコンベアの終端に到着したバスボックス内の食器を洗浄する場合、当該バスボックスをベルトコンベアから持ち上げる作業が必要となる。
【0006】
しかし、上述したように近年は労働者の確保が困難となりつつあるため、ベルトコンベアの終端に到着したバスボックスを持ち上げる作業についても自動化が望まれる。そこで、ベルトコンベアの終端にバスボックスを上げる昇降装置を設けることが考えられる。ところが、使用済みの食器をバスボックスで搬送するベルトコンベアの搬送路上には複数のバスボックスが載せられることがある。終端に昇降装置が設けられたベルトコンベアにおいて、搬送路上に複数のバスボックスが載せられた場合、ベルトコンベアの終端に近いバスボックスから順に昇降装置へ乗り移ることになる。
【0007】
また、ベルトコンベアの搬送路上には、使用済みの食器が投入されたバスボックスが複数箇所に離散的に載せられることがある。しかし、ベルトコンベアは、終端に位置するバスボックスが搬送路上から除去されないと、ベルトを作動させることができない。よって、終端に昇降装置が設けられたベルトコンベアでは、ベルトコンベアの終端に位置するバスボックスが昇降装置へ乗り移らないと、ベルトを作動させることができない。したがって、バスボックスが搬送路上の複数箇所に離散的に載せられると、ベルトコンベアの終端
への到着に比較的長い時間を要するバスボックスが生ずることがある。そこで、ベルトコンベアの終端にストッパを設けておき、バスボックスが昇降装置へ乗り移ることができない状態においてはストッパでバスボックスの進行を阻んだ状態でベルトコンベアを作動させ、搬送路上の複数箇所に離散的に載せられたバスボックスをベルトコンベアの終端側に寄せ集めることが考えられる。この場合、ストッパは、ベルトコンベアの終端と昇降装置との間で搬送路上に出し入れされることになる。
【0008】
ところで、ベルトコンベアの終端にあるバスボックスを昇降装置へ乗り移らせるには、当該バスボックスに進行方向の力を与える必要がある。その方法の一つとして、例えば、ベルトコンベアを作動させることが考えられる。しかし、上述したように、複数のバスボックスがベルトコンベアの終端側に寄せ集められた状態でベルトコンベアを作動させると、各バスボックスが隙間無く連なってベルトコンベア側から昇降装置側へ移動することになるため、昇降装置に乗り移らせるべきバスボックスと、昇降装置の手前で待機させておくべきバスボックスとを隔てることが難しい。また、ストッパによって進行が止められたバスボックスが載っている状態のベルトコンベアを動かし続けるには、バスボックスの底面とベルトコンベアの搬送面との間に生ずる摩擦力に対抗できる大きさの動力をベルトコンベアの駆動部が発揮する必要があり、駆動部の大型化に迫られる虞がある。
【0009】
そこで、例えば、ベルトコンベアの終端と昇降装置との間に遊動可能なローラを一乃至複数個設けておき、ストッパによって進行を止められた状態のバスボックスをこれらのローラで支持する形態を採ることが考えられる。しかしながら、このような形態においては、ストッパによって進行を止められていたバスボックスを昇降装置へ乗り移らせるべく、ストッパを搬送路上から退避させてベルトコンベアを作動させても、当該バスボックスがローラ上で停まってしまい、当該バスボックスが昇降装置へ乗り移らない虞がある。
【0010】
そこで、本願は、搬送路上の複数箇所に離散的に載せられた容器をベルトコンベアの終端側に寄せ集め可能でありながら、ベルトコンベアの終端側に設けられた昇降装置へベルトコンベアからスムーズに乗り移らせることが可能な食器回収システムおよび昇降装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明では、食器を投入可能な容器が載置されるベルトコンベアから繰り出された容器を昇降部に載せて昇降させる昇降装置を設けると共に、ベルトコンベアの終端に延設されたローラ群のうち少なくとも何れかのローラを駆動ローラとした。
【0012】
詳細には、本発明は、食器回収システムであって、食器を投入可能な容器が載置されるベルトコンベアと、ベルトコンベアの終端側に設置されており、ベルトコンベアから繰り出された容器が乗り移る昇降部を昇降させる昇降装置と、ベルトコンベアの終端に延設されており、ベルトコンベアから繰り出されて昇降部へ乗り移る容器を支持可能なローラ群と、を備え、ローラ群は、ローラ群が有する少なくとも何れかのローラであって、ベルトコンベアから繰り出される容器が進行方向へ進むように回転する駆動ローラを有する。
【0013】
ここで、ベルトコンベアの終端とは、ベルトコンベアが形成する搬送路の進行方向側の端部付近の領域を意味するものであり、例えば、ベルトコンベアに接する部位、或いは、ベルトコンベアのうちの特定の部位に限定されるものではない。また、昇降とは、上昇と下降の少なくとも何れかが可能であることを意味するものであり、例えば、昇降部の上昇と下降の両方を実現できるものに限定されるものではない。
【0014】
上記の食器回収システムであれば、ベルトコンベアの終端側に昇降装置が備わっている
ため、スタッフは、上体を下すことなく容器を持ち上げることができる。よって、上体を下ろして容器を持ち上げる場合に比べると、容器に投入されている使用済みの食器を洗浄する作業を行うスタッフの負担を低減することが可能となる。また、持ち上げる容器の取り出し高さが高くなることで、作業性が向上し、より早く容器の処理を行うことができる。
【0015】
そして、上記の食器回収システムであれば、使用済みの食器を容器に投入してベルトコンベアで搬送する形態となっているため、食器を一纏めにして搬送することができる。また、上記の食器回収システムは、使用済みの食器をベルトコンベアで搬送する形態であるため、使用済みの食器を速やかに片付け可能でありながら、食器を運ぶ作業を省力化することができる。
【0016】
そして、上記の食器回収システムでは、ベルトコンベアの終端に延設される複数のローラのうち少なくとも何れかが駆動ローラであるため、ベルトコンベアの終端に容器が隙間なく連なった状態となっても、昇降装置に最も近い容器から順に1つずつ昇降装置の昇降部へ乗り移らせることができる。したがって、上記の食器回収システムであれば、搬送路上の複数箇所に離散的に載せられた容器をベルトコンベアの終端側に寄せ集め可能でありながら、ベルトコンベアの終端側に設けられた昇降装置へ容器をベルトコンベアからスムーズに乗り移らせることが可能となる。
【0017】
なお、ローラ群は、ベルトコンベアの終端側から順に配列される遊転式の複数の遊転ローラと、複数の遊転ローラよりも昇降装置側に配置される駆動ローラと、を有するものであってもよい。このようなローラ群を有する食器回収システムであれば、ベルトコンベアに載っている容器と、ベルトコンベアから繰り出されて駆動ローラにより移動される容器とを隔てることが容易になる。
【0018】
また、ベルトコンベアと昇降部との間に配置されており、ベルトコンベアから繰り出される容器の進路上にストッパを出し入れするストッパー出し入れ装置を更に備えるものであってもよい。このような食器回収システムであれば、容器の昇降装置への進入をストッパで阻んだ状態でベルトコンベアを作動させ続けることができるため、ベルトコンベアの搬送面に容器が離散的に載置された場合であっても、各容器をベルトコンベアの終端側に寄せ集めることができる。
【0019】
また、上記の食器回収システムは、ベルトコンベアの終端に容器があり且つ昇降部に容器が無い場合、ベルトコンベアと駆動ローラを作動させてベルトコンベアの終端にあった容器を昇降部へ乗り移らせた後、昇降装置に昇降部を上昇させる制御装置を更に備えるものであってもよい。このような制御装置が備わる食器回収システムであれば、ベルトコンベアの終端にある容器を順に昇降部で昇降装置の上部へ上げることができる。
【0020】
また、昇降装置は、昇降部が昇降する空間の上部を横切るセンサ光により物体の有無を検知する光学式センサを有しており、光学式センサが物体を検知すると昇降部の上昇を停止するものであってもよい。このような昇降装置を備える食器回収システムであれば、深さが互いに異なる大小様々な容器が用いられた場合であっても、昇降装置の上部に上がった状態における容器の上端の開口の高さを、容器の深さの大小に関わりなく一定にすることができる。
【0021】
また、ベルトコンベアは、容器を一端側と他端側の両方向へ搬送可能であり、昇降装置は、ベルトコンベアの両端側に各々設けられていてもよい。このような食器回収システムであれば、スタッフは、ベルトコンベアの両端側の何れにおいても、上体を下すことなく容器を持ち上げることができる。
【0022】
また、本発明は、例えば、食器を投入可能な容器が載置されるベルトコンベアの終端側に設置される昇降装置であって、ベルトコンベアから繰り出された容器が乗り移る昇降部と、昇降部を昇降させる昇降ユニットと、ベルトコンベアから繰り出されて昇降部へ乗り移る容器を支持し、ベルトコンベアから繰り出される容器が進行方向へ進むように回転する駆動ローラと、を備えるものであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
上記の食器回収システムおよび昇降装置であれば、搬送路上の複数箇所に離散的に載せられた容器をベルトコンベアの終端側に寄せ集め可能でありながら、ベルトコンベアの終端側に設けられた昇降装置へベルトコンベアからスムーズに乗り移らせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施形態に係る下げ膳システムを側方から示した図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る下げ膳システムを上方から示した図である。
【
図3】
図3は、搬送装置の終端付近と昇降装置を拡大して示した斜視図である。
【
図4】
図4は、搬送装置の終端付近と昇降装置を拡大して示した内部構造図である。
【
図5】
図5は、搬送装置と昇降装置を制御する制御装置によって実現される処理のフローチャートを示した図である。
【
図6】
図6は、下げ膳システムにおいて実現されるバスボックスの動きの一例を示した第1の図である。
【
図7】
図7は、下げ膳システムにおいて実現されるバスボックスの動きの一例を示した第2の図である。
【
図8】
図8は、スタッフがバスボックスを持ち上げる作業を比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。下記に示す各実施形態や変形例は、例えば、寿司や飲料物、そばやうどんといった丼物、から揚げや天ぷらといった各種の飲食物を提供する飲食店に好適である。
【0026】
図1は、実施形態に係る下げ膳システム1(本願でいう「食器回収システム」の一例である)を側方から示した図である。また、
図2は、実施形態に係る下げ膳システム1を上方から示した図である。下げ膳システム1は、飲食店内において使用済みの食器を搬送するシステムであり、客席2が並ぶエリアと厨房のエリアとの境界にある壁Wに沿って延在する搬送路を形成する搬送装置4と、厨房3内にある搬送装置4の終端部にある昇降装置5とを有する。また、下げ膳システム1は、搬送装置4や昇降装置5を制御する図示しない制御装置を有する。下げ膳システム1の搬送装置4は、厨房3で用意された飲食物を各客席2へ搬送する注文飲食物搬送装置30や、飲食物を循環搬送する飲食物搬送装置と干渉しないように、これら飲食物搬送装置の下側に設置されている。
【0027】
なお、本実施形態では、使用済みの食器がバスボックス6(本願でいう「容器」の一例である)に投入された状態で搬送される場合を例に説明するが、下げ膳システム1は、バスボックス6の代わりに薄板状のトレイやその他各種形態の容器を使って食器を搬送することも可能である。また、本実施形態では、搬送装置4が直線状の搬送路を形成する場合を例に説明するが、下げ膳システム1は、搬送装置4が複数組み合わさることにより、カーブを有する非直線状の搬送路を形成するものであってもよい。
【0028】
下げ膳システム1が設置されている店舗では、客が飲食を終えて客席2に残った使用済みの食器がバスボックス6に投入され、当該バスボックス6が壁Wに設けられた開口Hを通じて搬送装置4に載せられ、搬送装置4によって搬送される。搬送装置4は、バスボックス6が載せやすいように、搬送装置4の搬送面が床に比較的近い位置となるように設計されている。よって、客席2が並ぶエリアではバスボックス6を搬送装置4へ容易に載せることができる。また、搬送装置4の終端には昇降装置5があるため、搬送面が床に比較的近い位置となっている搬送装置4に搬送されたバスボックス6は、搬送装置4の終端で昇降装置5に乗り移った後、昇降装置5によって上昇させられる。よって、厨房3内のスタッフ7は、搬送装置4によって搬送されてきたバスボックス6を、搬送装置4の搬送面よりも高い位置で持ち上げることができる。
【0029】
図3は、搬送装置4の終端付近と昇降装置5を拡大して示した斜視図である。また、
図4は、搬送装置4の終端付近と昇降装置5を拡大して示した内部構造図である。
【0030】
まず、搬送装置4について説明する。
図3では搬送装置4の大部分が省略されているが、
図3に一部が図示されている部分を見ると判るように、搬送装置4は、バスボックス6が載る搬送面を形成するベルトコンベア8を有する。ベルトコンベア8は、環状で幅広のベルトと、ベルトを駆動する図示しないモータとを有する装置である。また、搬送装置4は、ベルトコンベア8が形成する搬送路の終端付近に、ベルトコンベア8に載置されている物体の有無を検知するセンサ10を有する。また、搬送装置4は、ベルトコンベア8が形成する搬送路の終端に延設されており、ベルトコンベア8から繰り出されて昇降装置5へ乗り移るバスボックス6を支持可能な5つの遊転ローラ9を有する。また、搬送装置4は、ベルトコンベア8から繰り出されて昇降装置5へ乗り移るバスボックス6の進路を規定するガイドプレート13を、周面が滑らかで摩擦の少ない遊転ローラ9が配置されている部分の両側に有する。
【0031】
また、搬送装置4は、ベルトコンベア8と昇降装置5との間に配置されており、搬送装置4から昇降装置5へ繰り出されるバスボックス6の進路上に出し入れされるストッパ19と、ストッパ19を昇降させるストッパ出し入れ装置20とを有する。ストッパ19は、5つある遊転ローラ9のうちベルトコンベア8側から4番目の遊転ローラ9及び5番目の遊転ローラ9の間から出し入れされる。ストッパ出し入れ装置20がストッパ19を昇降範囲の上限位置にすると、ストッパ19は、搬送装置4から昇降装置5へ繰り出されるバスボックス6の進路上に突き出た状態となる。また、ストッパ出し入れ装置20がストッパ19を昇降範囲の下限位置にすると、ストッパ19は、搬送装置4から昇降装置5へ繰り出されるバスボックス6の進路上から退いた状態となる。よって、搬送装置4から昇降装置5へ繰り出されるバスボックス6の進行は、ストッパ19が下限位置にある場合は許容され、ストッパ19が上限位置にある場合はストッパ19によって妨げられる。
【0032】
次に、昇降装置5について説明する。昇降装置5は、バスボックス6を載せて昇降させる昇降プレート部15(本願でいう「昇降部」の一例である)を有する。昇降プレート部15は、上下方向に延在するガイド溝14に嵌る図示しない嵌合部を四隅付近に有しており、当該ガイド溝14の軌道に沿って昇降する。昇降プレート部15は、上面視矩形状のフレーム16と、フレーム16に配列される遊転ローラ17とを有する。遊転ローラ17は、搬送装置4側からその反対側へ向かうにつれて徐々に下がるように配列されており、実質的にやや傾斜した載置面を形成する。よって、搬送装置4から昇降プレート部15へ乗り移ったバスボックス6は、昇降プレート部15に載った状態で保持される。また、昇降装置5は、昇降プレート部15が昇降範囲の下限位置にある状態で昇降プレート部15に載置されている物体の有無を検知するセンサ12と、昇降プレート部15が昇降範囲の上限位置にある状態で昇降プレート部15に載置されている物体の有無を検知するセンサ
11とを有する。
【0033】
また、昇降装置5は、昇降プレート部15を昇降させる昇降ユニット21を有する。昇降ユニット21は、昇降プレート部15の下側に設けられており、昇降ユニット21を上へ押し上げるように昇降させる。昇降ユニット21は、2本の噛み合いチェーン23と、噛み合いチェーン23を上方向へ繰り出したり繰り下げたりするチェーン駆動部22とを有する。噛み合いチェーン23は、互いに噛み合わされると棒状の形態を維持するチェーンである。チェーン駆動部22は、モータや変速機構を内蔵しており、2本の噛み合いチェーン23同士を互いに噛み合わせた状態で上方向へ繰り出したり、2本の噛み合いチェーン23同士の噛み合わせを解除しながら各々を左右別々の方向へ繰り出したりする。なお、昇降装置5は、2本の噛み合いチェーン23を使った形態に限定されるものでなく、例えば、ボールスクリューやエアシリンダーといった他の機構を使った形態であってもよい。
【0034】
以下、下げ膳システム1の制御装置が実行する処理フローについて説明する。
図5は、搬送装置4と昇降装置5を制御する制御装置によって実現される処理のフローチャートを示した図である。制御装置は、客席2が並ぶエリアの開口H付近に設置されている操作ボタンにおいて搬送開始操作が行われたことを検知すると、ベルトコンベア8を作動させる。そして、制御装置は、ベルトコンベア8の終端にあるセンサ10で物体が検知されたか否かの判定を行う(S101)。
【0035】
例えば、何れかの客席2で使用済みの食器がバスボックス6に投入された後、当該バスボックス6がベルトコンベア8に載せられて搬送装置4が作動すると、当該バスボックス6はやがてセンサ10が設けられている部位に到着する。センサ10が設けられている部位にバスボックス6が到着すると、センサ10がバスボックス6を検知するため、ステップS101では肯定判定が行われる。
【0036】
制御装置は、ステップS101で肯定判定を行うと、次に、昇降装置5がスタンバイしているか否かの判定を行う(S102)。制御装置は、昇降装置5にある昇降プレート部15が可動範囲の下限位置にあり、且つ、センサ12が物体を検知していない場合、ステップS102で肯定判定を行う。
【0037】
制御装置は、ステップS102で肯定判定を行うと、次に、ストッパ出し入れ装置20でストッパ19を動かして可動範囲の下限位置へ下降させる(S103)。ストッパ19が可動範囲の下限位置へ下降すると、遊転ローラ9の上はバスボックス6が通過可能な状態になる。
【0038】
次に、制御装置は、ベルトコンベア8と駆動ローラ18を作動させる(S104)。ベルトコンベア8と駆動ローラ18が作動すると、ベルトコンベア8に載っているバスボックス6は、ベルトコンベア8から遊転ローラ9の上を経由して昇降プレート部15へ乗り移る。ベルトコンベア8から駆動ローラ18へ乗り移ったバスボックス6は、ベルトコンベア8から離れた後も駆動ローラ18の回転力を受けてそのまま進み、昇降プレート部15の上へ移動する。そして、バスボックス6は、昇降プレート部15へ乗り移って駆動ローラ18から離れると、昇降プレート部15の上で停まる。
【0039】
制御装置は、昇降装置5の下部にあるセンサ12で物体が検知されたか否かの判定を行う(S105)。そして、バスボックス6がベルトコンベア8から昇降プレート部15へ乗り移ることにより、センサ12がバスボックス6を検知すると、制御装置は、ステップS105で肯定判定を行う。
【0040】
制御装置は、ステップS105で肯定判定を行うと、チェーン駆動部22で昇降プレート部15を動かして可動範囲の上限位置へ上昇させると共に、ストッパ出し入れ装置20にストッパ19を可動範囲の上限位置へ上昇させる(S106)。ストッパ19が可動範囲の上限位置へ上昇すると、遊転ローラ9の上はバスボックス6が通過不能な状態になる。また、昇降プレート部15が可動範囲の上限位置へ上昇すると、昇降プレート部15に載っているバスボックス6は、昇降装置5の上部に到達する。よって、スタッフ7は、上体を下すことなく、昇降装置5の上部に到達したバスボックス6を持ち上げることができる。
【0041】
制御装置は、チェーン駆動部22に昇降プレート部15を可動範囲の上限位置へ上昇させた後、昇降装置5の上部にあるセンサ11で物体が検知されているか否かの判定を行う(S107)。昇降プレート部15が可動範囲の上限位置にあり且つ昇降プレート部15にバスボックス6が載置されている場合、センサ11はバスボックス6を検知する。また、バスボックス6が昇降プレート部15から持ち上げられて昇降プレート部15に載置されていない場合、センサ11はバスボックス6を検知しない。よって、本ステップS107において、バスボックス6がセンサ11に載置されている間はセンサ11がバスボックス6を検知し続けるため、制御装置は、肯定判定を行うことになる。そして、本ステップS107において、バスボックス6がセンサ11から持ち上げられると、センサ11がバスボックス6を検知しなくなるため、制御装置は、否定判定を行うことになる。
【0042】
制御装置は、ステップS107で否定判定を行った後、チェーン駆動部22に昇降プレート部15を可動範囲の下限位置へ下降させる(S108)。昇降プレート部15が可動範囲の下限位置に到達し且つセンサ12が物品を検知していなければ、前述のステップS102の解説で述べたように、昇降装置5は、バスボックス6を受け入れ可能な状態、すなわち、スタンバイ状態となる。
【0043】
下げ膳システム1の制御装置が上記一連の処理フローを実行することによって実現されるバスボックス6の動きの一例を以下に示す。
図6は、下げ膳システム1において実現されるバスボックス6の動きの一例を示した第1の図である。また、
図7は、下げ膳システム1において実現されるバスボックス6の動きの一例を示した第2の図である。
【0044】
例えば、複数箇所の客席2で使用済みの食器がバスボックス6へ投入され、複数箇所の開口Hを通じてベルトコンベア8に複数のバスボックス6が連続的または離散的に載置された場合、これら複数のバスボックス6を載せたベルトコンベア8が作動すると、ベルトコンベア8の終端には複数のバスボックス6が連なった状態で並ぶ(
図6(A)と
図7(A)を参照)。そして、ベルトコンベア8の終端にあるセンサ10がバスボックス6を検知するため、上述したステップS101では肯定判定が行われる。
【0045】
上述したステップS101で肯定判定が行われた後にステップS102でも肯定判定が行われると、ステップS103が実行されてストッパ19が可動範囲の下限位置へ下降する。よって、遊転ローラ9の上はバスボックス6が通過可能な状態となり、続けてステップS104が実行されてベルトコンベア8と駆動ローラ18が作動することにより、バスボックス6がベルトコンベア8から遊転ローラ9の上を経由して昇降プレート部15の方へ移動する(
図6(B)と
図7(B)を参照)。このとき、駆動ローラ18が作動している間の適当なタイミングでベルトコンベア8が停止することにより、ベルトコンベア8に連なって載置されていた複数のバスボックス6のうち最も昇降装置5側にあったバスボックス6が、隣接している他のバスボックス6から徐々に離れて昇降プレート部15の上へ移動する(
図6(C)と
図7(C)を参照)。そして、バスボックス6は、昇降プレート部15へ乗り移って駆動ローラ18から離れると、昇降プレート部15の上で停まる。
【0046】
バスボックス6がベルトコンベア8から昇降プレート部15へ乗り移ったことがセンサ12で検知され、上述したステップS105の処理が実行されてストッパ19が可動範囲の上限位置になると、ベルトコンベア8に載置されているバスボックス6の進路上にストッパ19が突き出た状態となり、遊転ローラ9の上はバスボックス6が通過不能な状態になる(
図6(D)と
図7(D)を参照)。そして、上述したステップS106の処理が実行されて昇降プレート部15が可動範囲の上限位置へ移動することにより、昇降プレート部15に載っているバスボックス6が昇降装置5の上部に到達する。
【0047】
本実施形態に係る下げ膳システム1は、使用済みの食器をバスボックス6に投入して客席2から厨房3へベルトコンベア8で搬送する形態となっているため、食器を一纏めにして搬送することができる。また、本実施形態に係る下げ膳システム1は、使用済みの食器をベルトコンベア8で搬送する形態であるため、例えば、客席沿いに設けられた水路に食器を投入して水流で搬送する形態のように、水路が食器で詰まるのを防ぐために、水路に食器を少量ずつ投入する必要もない。すなわち、本実施形態に係る下げ膳システム1であれば、客席に残る使用済みの食器を速やかに片付け可能でありながら、食器を客席2から厨房3へ運ぶ作業を省力化することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る下げ膳システム1には昇降装置5が備わっているため、例えば、衛生上の都合、店舗内の美観、店舗内に設置される他の機器とのスペースの都合、その他各種の理由により、バスボックス6を載せる搬送面が床に比較的近い位置となるように搬送装置4が設計されていても、このような低い位置からバスボックス6を持ち上げる作業が不要である。
【0049】
また、本実施形態に係る下げ膳システム1では、ベルトコンベア8の終端に延設される複数の遊転ローラ9が備わっており、この遊転ローラ9群を間に挟むようにして駆動ローラ18がベルトコンベア8の終端に延設されているため、駆動ローラ18を作動させたままの状態でベルトコンベア8を停止させるか、或いは、駆動ローラ18をベルトコンベア8よりも速い速度で作動させることにより、仮にベルトコンベア8上でバスボックス6が連なっている場合であっても、昇降装置5に最も近い位置にあるバスボックス6を他のバスボックス6から離すことができる。よって、本実施形態の下げ膳システム1であれば、例えば、複数箇所の客席2で同時期に客が退席することにより、使用済みの食器が投入されたバスボックス6がベルトコンベア8の搬送面の複数箇所に開口Hを通じて離散的に載せられた状態となっても、スタッフがベルトコンベア8に載っているバスボックス6を昇降装置5の方へ押したり或いはベルトコンベア8を作動させることにより、ベルトコンベア8上で離散的に載置された状態のバスボックス6を
図6(A)や
図7(A)に示したようにベルトコンベア8の終端側でストッパ19に当てて集めることができる。そして、ベルトコンベア8の終端に集まって隙間なく連なった複数のバスボックス6を、昇降装置5に最も近いバスボックス6から順に1つずつ他のバスボックス6と隔てて昇降装置5の昇降プレート部15へ乗り移らせ、昇降装置5の上部に上昇させることができる。
【0050】
また、上記実施形態の下げ膳システム1では、ベルトコンベア8の終端に延設される複数の遊転ローラ9のうち何れか隣り合うベルトコンベア8の間からストッパ19が突き出る形態となっているため、バスボックス6の進行がストッパ19に妨げられている状態でベルトコンベア8を作動し続けた場合であっても、当該ストッパ19に接触しているバスボックス6の底面のうち遊転ローラ9で支持されている部位については、バスボックス6の底面とベルトコンベア8の搬送面との間に生ずるような摩擦力が発生しないため、例えば、ストッパ19がベルトコンベア8の終端に設けられている場合に比べると、バスボックス6の底面とバスボックス6の搬送面との間に生ずる摩擦力に抗してベルトコンベア8を作動させ続けたい場合であってもベルトコンベア8の駆動部の動力の大きさを小さくすることができる。したがって、ベルトコンベア8の駆動部の大型化に迫られる可能性を抑
制することができる。
【0051】
図8は、スタッフ7がバスボックス6を持ち上げる作業を比較して示した図である。
図8に示す比較例は、下げ膳システム1から昇降装置5や遊転ローラ9が省略されており、ベルトコンベア8に相当するベルトコンベア108を有する搬送装置104が備わった下げ膳システム101である。比較例に係る下げ膳システム101には、昇降装置5に相当するものが備わっていないため、スタッフ7は、ベルトコンベア108に載置されているバスボックス6を持ち上げる場合、上体を下す必要がある。一方、
図8に示す実施形態と比較例とを見比べると判るように、本実施形態に係る下げ膳システム1には、昇降装置5が備わっているため、スタッフ7は、上体を下すことなくバスボックス6を持ち上げることができる。よって、実施形態の場合、比較例に比べると、バスボックス6に投入されている使用済みの食器を洗浄する作業を行うスタッフ7の負担を低減することが可能となる。
【0052】
なお、上記実施形態では、搬送装置4が搬送路を壁Wに沿って延在するように形成する形態を採っていたが、搬送装置4は、例えば、各客席2の横を通る搬送路を形成し、客席2から厨房3へ至る搬送路を形成するものであってもよい。また、上記実施形態では、各客席2の食器をバスボックス6に入れて搬送する形態について説明したが、バスボックス6は、例えば、食器用、残飯等のゴミ用、グラス等のガラス製食器用など、収納する物の種類毎に区分して使用してもよい。
【0053】
また、上記実施形態の下げ膳システム1では、昇降プレート部15が上限位置で停止するようになっていたが、例えば、センサ11で物体を検知した場合に昇降プレート部15の上昇を停止させてもよい。センサ11で物体を検知した場合に昇降プレート部15の上昇を停止させるものであれば、例えば、深さが互いに異なる大小様々なバスボックス6が用いられた場合であっても、昇降装置5の上部に上がった状態におけるバスボックス6の上端の開口の高さを、バスボックス6の深さの大小に関わりなく一定にすることができる。
【0054】
また、上記実施形態の下げ膳システム1では、搬送装置4の終端側に昇降装置5を設けた形態であったが、下げ膳システム1は、例えば、搬送装置4が両方向に作動可能であり、搬送装置4の両端側に各々昇降装置5を設けた形態であってもよい。下げ膳システム1がこのような形態であれば、スタッフ7は、ベルトコンベア8の両端側の何れにおいても、上体を下すことなくバスボックス6を持ち上げることができる。
【符号の説明】
【0055】
W・・壁
H・・開口
1,101・・下げ膳システム
2・・客席
3・・厨房
4,104・・搬送装置
5・・昇降装置
6・・バスボックス
7・・スタッフ
8,108・・ベルトコンベア
9・・遊転ローラ
10,11,12・・センサ
13・・ガイドプレート
14・・ガイド溝
15・・昇降プレート部
16・・フレーム
17・・遊転ローラ
18・・駆動ローラ
19・・ストッパ
20・・ストッパ出し入れ装置
21・・昇降ユニット
22・・チェーン駆動部
23・・噛み合いチェーン
30・・注文飲食物搬送装置