(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】アイアン型ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20230221BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20230221BHJP
【FI】
A63B53/04 E
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2018200979
(22)【出願日】2018-10-25
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【氏名又は名称】住友 教郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩史
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-253586(JP,A)
【文献】特開2016-221180(JP,A)
【文献】特開平10-024131(JP,A)
【文献】特開平10-244025(JP,A)
【文献】特開平09-149954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックキャビティを有すると共に、打撃フェース
とソールとホーゼルとを備えており、
前記打撃フェースが、フェースセンターとスイートスポットとを有しており、
前記フェースセンターの位置におけるフェース高さがHf(mm)とされ、前記スイートスポットの垂直高さがHs(mm)とされ、前記フェースセンターの垂直高さがHc(mm)とされるとき、
前記垂直高さHcが、20mm以上26mm以下であり、
前記フェース高さHfが、40mm以上52mm以下であり、
次の式1を満た
しており、
Hs < 0.06*Hf+16 (式1)
前記垂直高さHsが、15mm以上であり、
前記打撃フェースにおける各位置又は各領域での打撃確率に、当該位置又は領域でのCOR値を乗じた値の総和である予期CORが、前記打撃確率が下記表2で示される中級者標準打撃確率マトリックスであるときに0.760以上であり、
【表2】
COR値の最大値であるCORmaxが0.840以下であるアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
ヘッド本体と、前記ヘッド本体に取り付けられたフェース部材とを有しており、
前記フェース部材の比重が、前記ヘッド本体の比重よりも小さい請求項1のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記スイートスポットが、前記フェースセンターに対してソール側に位置しており、前記スイートスポットと前記フェースセンターとのトップ-ソール方向距離が、3.5mm以上7mm以下である請求項1
又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記ソールが、前記フェースセンターの位置で測定されるソール幅W1を有しており、前記ソール幅W1と前記フェース高さHfとの比W1/Hfが0.60以上0.78以下である請求項1から3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記ホーゼルがホーゼル孔とホーゼル端面とを有しており、
前記ヘッドが水平面上に載置された基準状態において、前記ホーゼル孔の中心線と前記水平面との交点から前記ホーゼル端面までの距離がネック長L2と定義されるとき、前記ソール幅W1と前記ネック長L2との比W1/L2が0.50以上0.65以下である請求項4に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記ネック長L2が40mm以上60mm以下であり、
前記ネック長L2と前記フェース高さHfとの比L2/Hfが1.1以上1.3以下である請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アイアン型ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブヘッドにおいて、重心高さは、弾道に影響しうる。特開平8-112378号公報は、ロフト角が27°±3°のクラブでは重心高さが19°±3°に設定され、番手が大きくなるに従って重心高さが高くなるゴルフクラブセットを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アイアンクラブは、主として、地面(芝生)上に置かれたボールを打撃するのに用いられる。換言すれば、アイアンクラブは、主として、ティーアップされていないボールを打撃するのに用いられる。よって、アイアン型ゴルフクラブヘッド(アイアンヘッド)では、打点は打撃フェースの下側に分布する傾向にある。この点に鑑み、本発明者は、アイアンヘッドの反発性能の向上に、改善の余地があることを見いだした。
【0005】
本開示は、実際の打撃における反発性能に優れたアイアン型ゴルフクラブヘッドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様では、ゴルフクラブヘッドは、打撃フェースを備えている。前記打撃フェースが、フェースセンターとスイートスポットとを有している。前記フェースセンターの位置におけるフェース高さがHf(mm)とされ、前記スイートスポットの垂直高さがHs(mm)とされ、前記フェースセンターの垂直高さがHc(mm)とされるとき、前記垂直高さHcが、20mm以上26mm以下であり、前記フェース高さHfが、40mm以上52mm以下である。このゴルフクラブヘッドは、次の式1を満たす。このゴルフクラブヘッドは、アイアン型ヘッドである。
Hs < 0.06*Hf+16 (式1)
【発明の効果】
【0007】
一つの側面として、実際の打撃における反発性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1のヘッドに設定された有効打撃エリアを示す。
【
図5】
図5は、実施例1から7及び比較例1から5がプロットされた散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
上述の通り、アイアンヘッドでは、打点が打撃フェースの下側に分布しやすい。ヘッド重心を下げることで、スイートスポットが打点に近づくので、実打点における反発性能が向上しうる。
【0010】
一方、打撃フェースの下側は、打撃フェースの中央部に比較して、打撃時における撓みが小さい。このため、打撃フェースの下側では、COR(Coefficient of Restitution:反発係数)が小さい。つまり、実打点でのCORが低いという問題がある。実打点でのCORを高くするには、CORの最大値を大きくするか、又は、CORが高い領域を下げることが考えられるが、前者はゴルフルールに違反しうる。
【0011】
CORが高い領域を下げるには、スイートスポットをより下げること、及び、フェースセンターの位置を下げることが考えられる。これら両者を達成するには、フェース高さを小さくするのが有効である。ただし、フェース高さが過小であると、打撃フェースの撓みが小さくなり、CORの最大値が低下する。
【0012】
かかる知見に基づき、本発明者は、フェース高さHfとSS高さHsとの関係を最適化することで、実際の打撃におけるCORが高められうることを見いだした。
【0013】
本願において、以下の用語が定義される。
【0014】
[トウ-ヒール方向]
最長フェースラインの延在方向が、トウ-ヒール方向と定義される。
【0015】
[トップ-ソール方向]
打撃フェースに対して平行であり且つ前記トウ-ヒール方向に対して垂直である方向が、トップ-ソール方向と定義される。
【0016】
[鉛直方向]
規定のライ角及びロフト角により水平面上に載置された基準状態において、当該水平面に対して垂直な方向が、鉛直方向と定義される。
【0017】
[フェース-バック方向]
前記基準状態において、前記トウ-ヒール方向に対して垂直であり且つ前記水平面に平行な方向が、フェース-バック方向と定義される。
【0018】
[フェースセンター]
最長フェースラインのトウ-ヒール方向中心位置における、打撃フェースのトップ-ソール方向中心位置が、フェースセンターと定義される。
【0019】
[予期COR(expected COR)]
打点分布を考慮したCORの加重平均が、本願において予期CORと称される。予期CORは、実際の打撃における反発性能を反映する。予期CORは、実際の打撃において発揮することが期待される反発係数とも言うこともできる。予期CORの詳細は、後述される。
【0020】
以下、図面を参照しつつ、例示的な実施形態が詳細に説明される。
【0021】
図1は、一実施形態のヘッド100の斜視図であり、
図2はヘッド100の正面図である。
図3は、
図2のF3-F3線に沿った断面図である。
図3でのヘッド100の姿勢は、水平面GLに載置された前記基準状態である。
【0022】
ヘッド100は、打撃フェース102、ソール104、トップ面106及びホーゼル108を有する。ホーゼル108は、ホーゼル孔110とホーゼル端面111とを有する。ホーゼル孔110には、シャフト(図示されず)が装着される。ホーゼル孔110の中心線は、シャフトの中心線に一致する。前記基準状態において、ホーゼル孔110の中心線は、前記水平面に垂直な平面に含まれる。
【0023】
打撃フェース102は、複数のフェースラインgvを有する。複数のフェースラインは、最長フェースラインgv1を含む。打撃フェース102は、フェースセンターFcを有する。打撃フェース102は、スイートスポットSSを有する。
【0024】
ヘッド100は、アイアン型ゴルフクラブヘッドである。打撃フェース102は平面である。
図2及び
図3が示すように、ヘッド100は、バックキャビティ112を有する。ヘッド100は、キャビティバックアイアンである。
【0025】
図3の断面図が示すように、ヘッド100は、ヘッド本体h1とフェース部材p1とを有する。本実施形態では、フェース部材p1は、プレートである。ヘッド本体h1は貫通した開口を有しており、この開口にフェース部材p1が取り付けられている。フェース部材p1は、溶接により、ヘッド本体h1に接合されている。フェース部材p1の前面120は、打撃フェース102を構成している。打撃フェース102は、フェース部材p1で構成された部分と、ヘッド本体h1で構成された部分とを有している。全てのフェースラインgvは、フェース部材p1の前面120に設けられている。フェース部材p1の後面122は、バックキャビティ112の底面を構成している。
【0026】
ヘッド本体h1は、打撃フェース102の一部、ソール104の全体、トップ面106の全体、及び、ホーゼル108の全体を有している。ヘッド本体h1は、一体成形で形成されている。ヘッド本体h1は、複数の部材の組み合わせで形成されていてもよい。ヘッド本体h1は、フェース部材p1の全周を支持する環状部を構成している。更に、
図3が示すように、ヘッド本体h1には、ウェイト124が取り付けられている。ウェイト124は、ソール104の内部に配置されている。更に、ヘッド本体h1は、ウェイト124を覆うカバー部126を有する。カバー部126の外面は、ソール面130の一部を構成している。ソール面130は、ソール104の外面である。ヘッド本体h1に、ウェイト124が設置され、更にカバー部126が溶接されている。ウェイト124及びカバー部126は無くてもよい。
【0027】
図3が示すように、ヘッド100は、重心Gと、スイートスポットSSとを有する。ヘッド100の重心Gは、打撃フェース102のバック側の空間に位置している。スイートスポットSSは、重心Gを通り打撃フェース102に垂直な直線と打撃フェース102との交点である。
【0028】
なお、
図3にヘッド重心G及びスイートスポットSSが示されているが、通常、ヘッド重心G及びスイートスポットSSは、
図3の断面上には位置しない。すなわち、ヘッド重心G及びスイートスポットSSは、フェースセンターFcと同じトウ-ヒール方向位置に存在しないのが通常である。理解を容易とするため、
図3にヘッド重心G及びスイートスポットSSが記載されている。
【0029】
図3において両矢印Hsで示されるのは、スイートスポットSSの垂直高さである。この垂直高さは、SS高さとも称される。前記基準状態のヘッドにおいて、SS高さHsは、前記鉛直方向に沿って測定される。すなわち、SS高さHsは、前記基準状態における前記水平面GLに対して垂直な方向に沿って測定される。
【0030】
図3において両矢印Hcで示されるのは、フェースセンターFcの垂直高さである。前記基準状態のヘッドにおいて、フェースセンターの垂直高さHcは、前記鉛直方向に沿って測定される。すなわち、垂直高さHcは、前記水平面GLに対して垂直な方向に沿って測定される。
【0031】
図2及び
図3において両矢印Hfで示されるのは、フェース高さである。フェース高さHfは、フェースセンターFcの位置における、打撃フェース102の高さである。フェース高さHfは、打撃フェース102に沿って測定される。フェース高さHfは、トップ-ソール方向に沿って測定される。フェース高さHfは、フェースセンターFcのトウ-ヒール方向位置における、打撃フェース102のトップ-ソール方向幅である。打撃フェース102は平面であり、この平面の輪郭が、打撃フェース102の輪郭である。
【0032】
前述の通り、アイアンヘッドでは、打点が打撃フェース102の下側に分布しやすい。しかし、単にヘッド重心Gを下げるだけでは、実打点における反発性能が十分に高まらないことが判明した。ヘッド重心Gを低くし、スイートスポットSSが下がったとしても、フェース部の撓みが小さければ、反発性能は十分に高くならない。
【0033】
打撃フェース102の下側は、打撃フェース102の中央部に比較して、打撃時における撓みが小さい。このため、打撃フェース102の下側では、COR(Coefficient of Restitution:反発係数)が小さい。実打点での反発性能を高くするには、CORの最大値を大きくするか、又は、CORが高い領域を下げることが考えられるが、前者はゴルフルールの制約を受ける。
【0034】
CORが高い領域を下げるには、スイートスポットSSを更に下げること、及び、フェースセンターFcの位置を下げることが考えられる。これら両者を達成するには、フェース高さHfを小さくするのが有効である。ただし、フェース高さHfが過小であると、フェース部の撓みが小さくなり、CORが低下する。
【0035】
これらの観点を踏まえ、本発明者は、フェース高さHfとSS高さHsとの最適な関係について鋭意検討を行い、下記の関係式を見いだすに至った。フェース高さHf(mm)とSS高さHs(mm)とは、次の式1を満たすことが好ましい。
Hs < 0.06*Hf+16 (式1)
【0036】
SS高さHsは所定値よりも低くされるのがよいが、この所定値は、フェース高さHfに依存する。フェース高さHfが大きいほど、この所定値を大きくすることで、スイートスポットSSとフェースセンターFcとの距離が適切となり、実打点での反発性能を高めることができる。このため、Hfの係数である0.06は、正の値である。この式1は、Hfを横軸とし且つHsを縦軸とする直交座標系において、傾きが0.06であり切片が16である直線よりも下側の領域を示す。この直線は、後述の
図5で示される。
【0037】
フェース高さHfが低すぎると、フェース部の撓みが小さくなり、CORが低下する。この観点から、フェース高さHfは、40mm以上が好ましく、41mm以上がより好ましく、42mm以上がより好ましい。前述の通り、CORが高い領域を下げるためには、スイートスポットSSを下げること及びフェースセンターFcを下げることが有効である。この観点から、フェース高さHfは、52mm以下が好ましく、51mm以下がより好ましく、50mm以下がより好ましい。
【0038】
CORが高い領域を下げる観点から、フェースセンターFcの垂直高さHcは、26mm以下が好ましく、25mm以下がより好ましく、24mm以下がより好ましい。フェース部の撓みを大きくする観点から、垂直高さHcは、20mm以上が好ましく、21mm以上がより好ましく、22mm以上がより好ましい。
【0039】
CORが高い領域を下げる観点から、スイートスポットSSの垂直高さHsは、21mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、19mm以下がより好ましい。高さHsが過小であると、フェースセンターFcとスイートスポットSSとの距離が過大となり、反発性能が低下しうる。この観点から、高さHsは、15mm以上が好ましく、16mm以上がより好ましく、17mm以上がより好ましい。
【0040】
COR値は、打撃フェース102内の位置によって相違しうる。打撃フェース102におけるCOR値の最大値が、CORmaxである。後述される有効打撃エリアは、CORmaxの測定点を含む。
【0041】
USGAのルールは、アイアンヘッドの反発性能に関する制限を規定している。ルール適合性の観点から、CORmaxは、後述されるCORの測定法で規定されている、基準プレート(Baseline Plate)のCOR以下であるのが好ましい。この基準プレート(Baseline Plate)のCORは、変動しうる。ルール適合の可能性を高める観点からは、CORmaxは、0.840以下が好ましく、0.838以下がより好ましく、0.835以下がより好ましく、0.830以下がより好ましい。フェース高さHfとSS高さHsとの関係を最適化することで、CORmaxを抑制しつつ、実際の打点における反発性能を高めることができる。各領域でのCOR値の底上げの観点から、CORmaxは、0.800以上が好ましく、0.810以上がより好ましく、0.815以上がより好ましい。
【0042】
フェース下部での反発性能の観点から、スイートスポットSSは、フェースセンターFcよりもソール側に位置するのが好ましい。フェースセンターFcがスイートスポットSSからトップ側に離れすぎると、高COR領域が下がりにくい。この観点から、スイートスポットSSとフェースセンターFcとのトップ-ソール方向距離は、7.0mm以下が好ましく、6.5mm以下がより好ましく、6mm以下がより好ましい。スイートスポットSSがフェースセンターFcに近すぎる場合、スイートスポットSSが高いか又はフェース高さHfが小さく、高COR領域が下がりにくい。この観点から、スイートスポットSSとフェースセンターFcとのトップ-ソール方向距離は、3.5mm以上が好ましく、4.0mm以上がより好ましく、4.5mm以上がより好ましい。
【0043】
スイートスポットSSとフェースセンターFcとのトップ-ソール方向距離は、SS-Yを用いて言い換えることができる。SS-Yは、本願において定義され、フェースセンターFcに対するスイートスポットSSのY座標に相当する。フェースセンターFcよりもスイートスポットSSが下側にあるとき、このSS-Yはマイナスである。フェースセンターFcがスイートスポットSSからトップ側に離れすぎると、高COR領域が下がりにくい。この観点から、SS-Yは、-7.0mm以上が好ましく、-6.5mm以上がより好ましく、-6.0mm以上がより好ましい。スイートスポットSSがフェースセンターFcに近すぎる場合、スイートスポットSSが高いか又はフェース高さHfが小さく、高COR領域が下がりにくい。この観点から、SS-Yは、-3.5mm以下が好ましく、-4.0mm以下がより好ましく、-4.5mm以下がより好ましい。
【0044】
上述の通り、ヘッド100では、ヘッド本体h1にフェース部材p1が取り付けられている。フェース部材p1は、ヘッド本体h1とは別の部材である。フェース部材p1とヘッド本体h1とはそれぞれ別個に成形される。ヘッド100のように、ヘッド本体h1にウェイト124が取り付けられていても良い。
【0045】
フェース部材p1の比重は、ヘッド本体h1の比重よりも小さいのが好ましい。軽量のフェース部材p1により余剰重量が創出されうる。この余剰重量をヘッド100の下部に配分することで、スイートスポットSSを下げることが可能となる。この比重差の観点から、ヘッド本体h1の材質として、軟鉄及びステンレス鋼が好ましく、成形性をも考慮すると、ステンレス鋼がより好ましい。前記比重差の観点から、フェース部材p1の材質として純チタン、チタン合金及びアルミニウム合金が好ましく、強度をも考慮すると、チタン合金がより好ましい。ヘッド本体h1がウェイト124を有する場合、このウェイト124の比重は、ヘッド本体h1の比重よりも大きいのが好ましい。
【0046】
図2において両矢印L1で示されるのは、フェース長である。フェース長は、最長フェースラインgv1のヒール側の端と、ヘッド100のトウ側の端との間の距離である。フェース長L1は、トウ-ヒール方向に沿って測定される。
【0047】
標準有効打撃エリア(後述)との適合性の観点から、フェース長L1は、68mm以上が好ましく、70mm以上がより好ましく、72mm以上がより好ましい。標準有効打撃エリアに対する適合性の観点から、フェース長L1は、80mm以下が好ましく、78mm以下がより好ましく、76mm以下がより好ましい。
【0048】
前記基準状態において、ホーゼル孔110の中心線CL1と水平面GLとの交点からホーゼル端面111までの距離が、ネック長L2と定義される(
図2参照)。スイートスポットSSを下げる観点から、ネック長L2は、60mm以下が好ましく、58mm以下がより好ましく、56mm以下がより好ましい。シャフトとホーゼル孔110との接合面積を確保する観点から、ネック長は、40mm以上が好ましく、45mm以上がより好ましく、50mm以上がより好ましい。
【0049】
フェース高さHf及びネック長L2は、いずれも、ヘッド重心Gの位置に影響する。高さフェース高さHf(mm)に対してネック長L2(mm)を適切に設定することで、フェースセンターFcとスイートスポットSSとの位置関係が好ましい範囲に設定されうる。この観点から、L2/Hfは、1.3以下が好ましく、1.28以下がより好ましく、1.25以下がより好ましい。同じ観点から、L2/Hfは、1.1以上が好ましく、1.12以上がより好ましく、1.14以上がより好ましい。
【0050】
図3において両矢印T1で示されるのは、ヘッド厚である。ヘッド厚T1は、フェースセンターFcと同じトウ-ヒール方向位置で測定される。
図3においてs1で示されるのは、打撃フェース102と平行な直線SL1と、ヘッド100の断面図との接点である。接点s1は、
図3の断面図における、ヘッド100のバック端と直線SL1との接点である。ヘッド厚T1は、打撃フェース102と接点s1との間の距離である。ヘッド厚T1は、打撃フェース102に垂直な方向に沿って測定される。
【0051】
スイートスポットSSを下げる観点から、ヘッド厚T1は、25mm以上が好ましく、26mm以上がより好ましく、27mm以上がより好ましい。スイートスポットSSがフェースセンターFcから離れすぎないとの観点から、ヘッド厚T1は、33mm以下が好ましく、32mm以下がより好ましく、31mm以下がより好ましい。
【0052】
図3において両矢印T2で示されるのは、ブレード幅である。ブレード幅T2は、フェースセンターFcと同じトウ-ヒール方向位置で測定される。
図3においてs2で示されるのは、打撃フェース102の上端を通り打撃フェース102に垂直な直線SL2と、ヘッド100のバック面との交点である。ブレード幅T2は、打撃フェース102と交点s2との間の距離である。ブレード幅T2は、打撃フェース102に垂直な方向に沿って測定される。
【0053】
スイートスポットSSを下げる観点から、ブレード幅T2は、10mm以下が好ましく、9mm以下がより好ましく、8mm以下がより好ましい。スイートスポットSSがフェースセンターFcから離れすぎないとの観点から、ブレード幅T2は、5mm以上が好ましく、6mm以上がより好ましく、7mm以上がより好ましい。
【0054】
図3において両矢印W1で示されるのは、ソール幅である。ソール幅W1は、フェースセンターFcと同じトウ-ヒール方向位置で測定される。
図3においてs3で示されるのは、ヘッド100の最前方点である。ソール幅W1は、最前方点s3と前記接点s1との距離である。ソール幅W1は、フェース-バック方向に沿って測定される。なお、この最前方点s3は、リーディングエッジLeである。
【0055】
スイートスポットSSを下げる観点から、ソール幅W1は、26mm以上が好ましく、27mm以上がより好ましく、28mm以上がより好ましい。スイートスポットSSがフェースセンターFcから離れすぎないとの観点から、ソール幅W1は、36mm以下が好ましく、35mm以下がより好ましく、34mm以下がより好ましい。
【0056】
フェース高さHf及びソール幅W1は、いずれも、ヘッド重心Gの位置に影響する。高さフェース高さHf(mm)に対してソール幅W1(mm)を適切に設定することで、フェースセンターFcとスイートスポットSSとの位置関係が好ましい範囲に設定されうる。この観点から、W1/Hfは、0.78以下が好ましく、0.77以下がより好ましく、0.76以下がより好ましい。同じ観点から、W1/Hfは、0.60以上が好ましく、0.61以上がより好ましく、0.62以上がより好ましい。
【0057】
フェース高さHfを52mm以下に抑制すると、フェースセンターFcは下がる。スイートスポットSSをこのフェースセンターFcよりも下側に配置するのは難しい。これを実現する観点から、ネック長L2(mm)に対するソール幅W1(mm)の割合は大きいのが好ましい。具体的には、W1/L2は、0.50以上が好ましく、0.51以上がより好ましく、0.52以上がより好ましい。設計上の限界を考慮すると、W1/L2は、0.65以下が好ましく、0.64以下がより好ましく、0.63以下がより好ましい。
【0058】
打点分布の実質的同一性の観点から、ヘッド100のリアルロフト角は、35°以下が好ましく、34°以下がより好ましく、33°以下がより好ましい。クラブとしての打ちやすさの観点から、ヘッド100のリアルロフト角は、17°以上が好ましく、18°以上がより好ましく、19°以上がより好ましい。
【0059】
[予期COR]
上述の通り、予期CORは、打点分布が考慮された、CORの加重平均である。予期CORは、実打における実質的なCORの平均値を示し、実効CORとも称されうる。予期CORは、打撃フェース上の各位置又は各領域での打撃確率に、当該位置又は領域でのCOR値を乗じた値の総和である。即ち、予期CORは、下記の式2で計算される。
【数1】
【0060】
式2において、pijは、有効打撃エリア内の位置(i,j)又は領域(i,j)での打撃確率であり、cijは、前記位置(i,j)又は領域(i,j)でのCOR値である。iはトップ-ソール方向の位置(座標)に対応しており、jはトウ-ヒール方向の位置(座標)に対応している。
【0061】
有効打撃エリアは、打撃フェース102の一部又は全部の領域である。有効打撃エリアは、予期CORが実打点での反発係数の加重平均を実質的に示すように、適切に設定されうる。好ましくは、有効打撃エリアの図心は、フェースセンターFcと同じトウ-ヒール方向位置であって、リーディングエッジLeからの距離がSmmである点Mcとされる(後述の
図4参照)。好ましくは、点McはフェースセンターFcよりもソール側に位置する。有効打撃エリアは、四角形であってもよいし、他の形状であってもよい。有効打撃エリアは、対象となるゴルファーが実打したときの打点分布のほとんどを網羅していてもよい。実質的にミスショットとなる領域は、有効打撃エリアから除外されてもよい。また、打撃確率がゼロである領域は、有効打撃エリアから除外されてもよい。
【0062】
アイアンヘッドの場合、例えば、トウ-ヒール方向に±17.5mmであり且つトップ-ソール方向に±12.5mmである四角形の範囲が、有効打撃エリアとされうる。本願において、この範囲が標準有効打撃エリアとも称される。この標準有効打撃エリアでは、図心Mcの前記距離Sは16mmに設定される。この点Mcは、打点分布の実質的な中心である。距離Sは、トップ-ソール方向に沿って測定される。
【0063】
有効打撃エリアは、そのトップ-ソール方向幅をn等分し且つそのトウ-ヒール方向幅をm等分する格子線によって、(n×m)の領域に区画されうる。この場合、前記領域(i,j)は、トップ側からi行目で且つトウ側からj列目の領域とされうる。前記標準有効打撃エリアでは、前記格子線は、トップ-ソール方向に沿って5mmおきに引かれた縦線と、トウ-ヒール方向に沿って5mmおきに引かれた横線とから構成されうる。この場合、nは5であり、mは7である。
【0064】
本願では、領域(i,j)のそれぞれが、「ビン(bin)」とも称される。有効打撃エリアは、複数のビンの集合とされうる。前記標準有効打撃エリアでは、前記ビン、即ち、領域(i,j)のそれぞれは、トウ-ヒール方向に5mmで且つトップ-ソール方向に5mmの正方形の領域とされうる。
【0065】
打撃確率pijは、実打での打撃分布に基づいて決定することができる。この打撃分布は、例えば、複数のゴルファーによる打点データを総合することで得られうる。また、ゴルファーのタイプ毎に打撃分布が作成されうる。ゴルファーは、ハンディキャップ、ヘッドスピード等により分類されうる。総打撃数に対する、領域(i,j)での打撃数の割合が、打撃確率pijとされうる。ビン毎に打撃確率pijを算出することで、打撃確率マトリックスが得られる。打撃確率マトリックスのための打点データを得る際に用いられるヘッドのリアルロフト角は、20°以上35°以下が好ましい。このリアルロフト角の範囲では、打点分布が近似している。
【0066】
打撃確率pijは、正規分布のような確率密度関数を用いて算定されてもよい。例えば、実打での打撃分布に基づく打撃確率pijが、前記確率密度関数を用いて修正されてもよい。この修正は、総打撃数が少ない場合に有効である。実打によらず、打点分布をシミュレーションで求め、このシミュレーション結果に基づいて打撃確率pijが決定されてもよい。
【0067】
前記格子線により、有効打撃エリアが(n×m)個のビンに区画される場合、各ビンでの打撃確率pijの集合が、n行m列の表で示される。この表が、打撃確率マトリックスの一例である。この打撃確率マトリックスでは、領域(i,j)における打撃確率が、上から第i行目で且つ左から第j列目のセルに示されている。打撃確率マトリックスの具体例は、後述される。
【0068】
前記格子線により有効打撃エリアが(n×m)個のビンに区画される場合、各ビンでのcijの集合が、n行m列の表で示される。この表が、CORマトリックスの一例である。このCORマトリックスでは、領域(i,j)におけるCOR値が、上から第i行目で且つ左から第j列目のセルに示されている。このCORマトリックスは、前記打撃確率マトリックスに対応している。ただし、打撃確率がゼロであるビンに対応するセルは、必ずしも必要ではない。CORマトリックスの具体例は、後述される。打撃確率マトリックスとCORマトリックスとの間で、同じビンに対応する値同士が掛け合わされる。これらの乗算で得られた値の総和が、予期CORである。
【0069】
cijは、領域(i,j)でのCOR値である。cijは、領域(i,j)内の1点で測定された値であってもよい。例えば、cijは、領域(i,j)の中心で測定された値であってもよい。cijは、領域(i,j)内の複数の点で測定された値から求められてもよく、例えば、領域(i,j)内の複数の点で測定された値の平均値であってもよい。
【0070】
CORマトリックスにおいて、全てのcijの総和は、100%(1.00)であってもよいし、100%(1.00)未満であってもよい。
【0071】
COR値は、好ましくは、CORを決定するためにUSGA(United States Golf Association:全米ゴルフ協会)が規定する方法に準拠したキャノン試験で決定されうる。CORは、USGAで規定されている「Interim Procedure for Measuring the Coefficient of Restitution of an Iron Clubhead Relative to a Baseline Plate Revision 1.3 January 1, 2006」に基づいて測定されうる。また、電子データで作成されたヘッドについては、このUSGAの試験をシミュレートすることで、COR値が得られうる。
【0072】
COR値は、CT値から換算されてもよい。この場合、測定が容易なCT値を用いて、COR値を算出することができる。COR値とCT値との関係式として、例えば下記式が挙げられる。例えば、このような関係式を用いて、CT値とCOR値との間の換算が可能である。
CT(μs)=(COR値 - 0.718)/0.000436
【0073】
なお、CT値は、ペンデュラムテストによって測定される。このペンデュラムテストの詳細は、2003年2月24日にUSGAから発行された「Notice To Manufacturers」に添付された「Technical Description of the Pendulum Test」に記載されている。CT値の単位はμsである。CTは、Characteristic time(特性時間)の略である。
【0074】
図4は、
図2と同じく、ヘッド100の正面図である。
図4では、フェースラインgvの記載が省略されている。
【0075】
ヘッド100の打撃フェース102は、有効打撃エリア140を有する。本実施形態では、有効打撃エリア140として、前記標準有効打撃エリアが採用されている。有効打撃エリア140は、そのトップ-ソール方向幅をn等分し且つそのトウ-ヒール方向幅をm等分する格子線によって、(n×m)の領域に区画されている。この格子線は、トップ-ソール方向に沿って5mmおきに引かれた縦線と、トウ-ヒール方向に沿って5mmおきに引かれた横線とから構成されている。本実施形態では、nは5であり、mは7である。有効打撃エリア140の全体が、フェース部材p1の前面120に位置する。
【0076】
有効打撃エリア140は、n×m個のビン(bin)142を有する。本実施形態の有効打撃エリア140は、5×7=35個のビン142を有する。ビン142は、トウ-ヒール方向に5mmで且つトップ-ソール方向に5mmの、正方形の領域である。前述の通り、例えば最もトウ側で且つ最もトップ側のビン142は、領域(1,1)であり、すなわちiが1で且つjが1である。
図4において括弧書きされた2つの数値は、いくつかのビン142におけるi及びjを、(i,j)として示している。
【0077】
フェースセンターFcは、有効打撃エリア140の図心Mcよりもトップ側に位置する。本実施形態では、フェースセンターFcは、領域(2,4)に位置する。この25mm×35mmの有効打撃エリア140は、ミスショットとなる領域を除く、打撃可能領域の全体を実質的に網羅している。前記点Mcを有効打撃エリア140の図心とすることで、打点分布の略全体が有効打撃エリア140で網羅されうる。
【0078】
表1は、有効打撃エリア140に対応する、打撃確率マトリックスの一例である。表1は、ヘッドスピードが比較的速い上級者の打点分布に基づいて作成されており、上級者標準打撃確率マトリックスとも称される。この打点分布の計測の対象となったゴルファーは20名であり、これらのゴルファーのヘッドスピードは42m/s以上47m/s以下であり、総打撃数は200である。
【0079】
表2は、有効打撃エリア140に対応する、打撃確率マトリックスの他の例である。表2は、ヘッドスピードが比較的遅い中級者の打点分布に基づいて作成されており、中級者標準打撃確率マトリックスとも称される。この打点分布の計測の対象となったゴルファーは20名であり、これらのゴルファーのヘッドスピードは35m/s以上42m/s未満であり、総打撃数は200である。
【0080】
表3は、有効打撃エリア140に対応する、打撃確率マトリックスの他の例である。表3は、前記上級者及び前記中級者の打点分布に基づいて作成されており、中上級者標準打撃確率マトリックスとも称される。この打点分布の計測の対象となったゴルファーは40名であり、これらのゴルファーのヘッドスピードは35m/s以上47m/s以下であり、総打撃数は400である。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
表1から表3では、各pijが、パーセントで表示されている。実際の予期CORの計算では、pijは、前述した打撃確率である。例えば表1のp11は0.4%であるが、予期CORの計算に用いられるp11は、0.004である。
【0085】
なお、理解を容易とするため、表1から表3の打撃確率マトリックスでは、フェースセンターFcに対する打点位置が付記されている。
【0086】
表4は、有効打撃エリア140のCORマトリックスの一例である。表5は、有効打撃エリア140のCORマトリックスの他の例である。これらのCORマトリックスは、表1から表3の打撃確率マトリックスに対応している。互いに対応する打撃確率マトリックスとCORマトリックスとを用いて、予期CORが算出されうる。
【0087】
【0088】
【0089】
表4及び表5のCORマトリックスで記載されている値のそれぞれは、各ビン142の中心点で実際に測定されたCOR値である。なお、表4及び表5のCORマトリックスでは、第1行第7列のセル、すなわち、c17が、空欄である。このようなCORマトリックスは、p17がゼロである打撃確率マトリックスに適用されうる。
【0090】
前述の通り、フェース高さHf及びSS高さHsが前記式1を満たす関係にあるとき、実打点でのCORが高まる。この観点から、予期CORは、0.740以上が好ましく、0.750以上がより好ましく、0.760以上がより好ましい。ゴルフルールにおけるCORmaxの制限を考慮すると、予期CORは、0.830以下、更には0.820以下、更には0.810以下となりうる。
【0091】
好ましくは、予期CORは、表1で示される上級者標準打撃確率マトリックスにより算出される。この場合、上級者の打点分布が反映され、実効的なCORが得られる。
【0092】
好ましくは、予期CORは、表2で示される中級者標準打撃確率マトリックスにより算出される。この場合、中級者の打点分布が反映され、実効的なCORが得られる。
【0093】
好ましくは、予期CORは、表3で示される中上級者標準打撃確率マトリックスにより算出される。この場合、中級者及び上級者の打点分布が反映され、実効的なCORが得られる。
【実施例】
【0094】
[実施例1]
前述したヘッド100と同じヘッドを作成した。フェース部材p1は、圧延材にNC加工を施すことで作製された。フェース部材p1の材質はチタン合金とされた。ヘッド本体h1は、鋳造(ロストワックス精密鋳造)により作製された。このヘッド本体h1の材質はステンレス鋼とされた。このヘッド本体h1に、ウェイト124及びカバー部126を取り付けて、ヘッド本体h1を得た。カバー部126はヘッド本体h1に溶接された。
【0095】
得られたヘッドに、有効打撃エリア140(
図4)が設定された。有効打撃エリア140として、前述の標準有効打撃エリアが採用された。各ビン142の中心点でCORを計測して、CORマトリックスを得た。CORの測定は、前述のUSGAの規定により行った。実施例1のCORマトリックスは、表5に示される通りであった。このCORマトリックスと、中級者標準打撃確率マトリックス(表2)とに基づいて、予期CORを得た。実施例1の仕様及び評価結果が、下記の表6で示されている。
【0096】
[実施例2から7]
表6に示される仕様とされた他は実施例1と同様にして、実施例2から7のヘッドを得た。いずれの実施例でも、予期CORの算出には、中級者標準打撃確率マトリックス(表2)が用いられた。これらの実施例の仕様及び評価結果が、下記の表6で示されている。
【0097】
[比較例1から5]
表7に示される仕様とされた他は実施例1と同様にして、比較例1から5のヘッドを得た。いずれの比較例でも、予期CORの算出には、中級者標準打撃確率マトリックス(表2)が用いられた。これらの比較例の仕様及び評価結果が、下記の表7で示されている。
【0098】
【0099】
【0100】
図5は、実施例1から7及び比較例1から5がプロットされたグラフ(散布図)である。
図5のグラフにおいて、横軸はフェース高さHf(mm)であり、縦軸はスイートスポットSSの垂直高さHs(mm)である。実施例1から7が塗りつぶされた丸でプロットされ、比較例1から5が×でプロットされている。
図5において実線で示されているのは、「Hs=0.06*Hf+16」の直線である。
図5において破線で示されているのは、「Hf=40.0」の直線である。
図5において一点鎖線で示されているのは、「Hf=52.0」の直線である。
【0101】
表6で示されるように、実施例1から7では、CORmaxが高くないにも関わらず、予期CORが高い。打撃確率が高い領域でCORが高いため、予期CORが向上した。一方、表7で示されるように、比較例1から5では、打撃確率が高い領域でCORが低いため、予期CORが低かった。比較例5では、CORmaxが非常に大きい割には、予期CORが小さい。また比較例5のCORmaxは、ルールでの制限を超えている。
【0102】
このように、実施例は、比較例に比べて、実打点における反発性能に優れている。
【0103】
上述した実施形態に関して、以下の付記を開示する。
[付記1]
打撃フェースを備えており、
前記打撃フェースが、フェースセンターとスイートスポットとを有しており、
前記フェースセンターの位置におけるフェース高さがHf(mm)とされ、前記スイートスポットの垂直高さがHs(mm)とされ、前記フェースセンターの垂直高さがHc(mm)とされるとき、
前記垂直高さHcが、20mm以上26mm以下であり、
前記フェース高さHfが、40mm以上52mm以下であり、
次の式1を満たすアイアン型ゴルフクラブヘッド。
Hs < 0.06*Hf+16 (式1)
[付記2]
ヘッド本体と、前記ヘッド本体に取り付けられたフェース部材とを有しており、
前記フェース部材の比重が、前記ヘッド本体の比重よりも小さい付記1のゴルフクラブヘッド。
[付記3]
前記打撃フェースにおける各位置又は各領域での打撃確率に、当該位置又は領域でのCOR値を乗じた値の総和である予期CORが、0.740以上である付記1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記4]
COR値の最大値であるCORmaxが0.840以下である付記1から3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記5]
前記スイートスポットが、前記フェースセンターに対してソール側に位置しており、前記スイートスポットと前記フェースセンターとのトップ-ソール方向距離が、3.5mm以上7mm以下である付記1から4のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【符号の説明】
【0104】
100・・・アイアン型ゴルフクラブヘッド
102・・・打撃フェース
104・・・ソール
106・・・トップ面
108・・・ホーゼル
120・・・フェース部材の前面
122・・・フェース部材の後面
140・・・有効打撃エリア
142・・・ビン
h1・・・ヘッド本体
p1・・・フェース部材
gv1・・・最長フェースライン
Fc・・・フェースセンター
SS・・・スイートスポット
G・・・ヘッドの重心