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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】加振ユニット、楽器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/32 20060101AFI20230221BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20230221BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
G10H1/32 Z
H04R1/00 310F
H04R1/02 103Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018211240
(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公開番号】P2020076911
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 雅嗣
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 一郎
(72)【発明者】
【氏名】安部 万律
(72)【発明者】
【氏名】澄野 慎二
(72)【発明者】
【氏名】北川 敬司
(72)【発明者】
【氏名】安部 卓哉
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-298992(JP,A)
【文献】特許第6304576(JP,B1)
【文献】国際公開第2014/115482(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
H04R 1/00-1/46
7/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加振体に対して接続される可動部と、
前記可動部を駆動することで、前記可動部の振動により前記被加振体を加振する駆動部と、
支持体に対して固定されると共に、前記可動部の可動方向と交わる方向の軸線を中心に回動自在に前記駆動部を支持する駆動部支持部と、
を有する、加振ユニット。
【請求項2】
前記駆動部支持部は、少なくとも2箇所で前記駆動部を支持する、請求項1に記載の加振ユニット。
【請求項3】
前記駆動部支持部は、前記駆動部を、前記軸線を中心に回動自在に支持すると共に、前記可動部の可動方向と交わり且つ前記軸線と交わる他の軸線を中心に回動自在に支持する、請求項1または2に記載の加振ユニット。
【請求項4】
前記軸線は、前記可動部と前記駆動部とを有する加振器の重心を通る、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の加振ユニット。
【請求項5】
前記軸線は、前記可動部と前記駆動部とを有する加振器の重心を中心とする球形状の範囲内を通り、
前記球形状の直径は、前記加振器の最大寸法の20%以内である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の加振ユニット。
【請求項6】
前記駆動部支持部は、さらに、前記駆動部を前記軸線の方向に変位可能に支持する、請求項1乃至のいずれか1項に記載の加振ユニット。
【請求項7】
被加振体に対して接続される可動部と、
前記可動部を駆動することで、前記可動部の振動により前記被加振体を加振する駆動部と、
支持体に対して固定された軸支部と、
軸線の方向が前記可動部の可動方向と交わる方向となるように、前記軸支部および前記駆動部に接続され、且つ、前記軸支部および前記駆動部の少なくとも一方に対して回動自在である軸部と、
を有する、加振ユニット。
【請求項8】
前記軸支部は、少なくとも2箇所で前記軸部を支持する、請求項に記載の加振ユニット。
【請求項9】
前記軸支部は、第1軸支部と、前記支持体に対して固定される第2軸支部と、他の軸部とを有し、
前記軸部の軸線の方向が前記可動部の可動方向と交わる方向となるように、前記軸部は前記第1軸支部および前記駆動部に接続され、且つ、前記軸部は前記第1軸支部および前記駆動部の少なくとも一方に対して回動自在であり、
前記他の軸部の軸線の方向が前記可動部の可動方向と交わり且つ前記軸部の軸線と交わるように、前記他の軸部は前記第1軸支部および前記第2軸支部とに接続され、且つ、前記他の軸部は前記第1軸支部および前記第2軸支部の少なくとも一方に対して回動自在である、請求項7または8に記載の加振ユニット。
【請求項10】
前記軸部の軸線は、前記可動部と前記駆動部とを有する加振器の重心を通る、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の加振ユニット。
【請求項11】
前記軸部の軸線は、前記可動部と前記駆動部とを有する加振器の重心を中心とする球形状の範囲内を通り、
前記球形状の直径は、前記加振器の最大寸法の20%以内である、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の加振ユニット。
【請求項12】
前記他の軸部の軸線は、前記可動部と前記駆動部とを有する加振器の重心を中心とする球形状の範囲内を通り、
前記球形状の直径は、前記加振器の最大寸法の20%以内である、請求項9に記載の加振ユニット。
【請求項13】
前記軸支部は、さらに、前記軸部を前記軸部の軸線の方向に変位可能に支持する、請求項7乃至12のいずれか1項に記載の加振ユニット。
【請求項14】
前記軸支部は、前記軸部を受ける凹曲面を有し、
前記軸部は、断面円形であるか、または前記凹曲面と係合する凸曲面を有し、
前記凹曲面の曲率半径の方が、前記軸部の半径または前記凸曲面の曲率半径よりも大きい、請求項7乃至13のいずれか1項に記載の加振ユニット。
【請求項15】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の加振ユニットと、
前記可動部が接続される前記被加振体としての響板と、
前記駆動部支持部が固定される前記支持体と、を有する、楽器。
【請求項16】
請求項7乃至14のいずれか1項に記載の加振ユニットと、
前記可動部が接続される前記被加振体としての響板と、
前記軸支部が固定される前記支持体と、を有する、楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動部で可動部を駆動することで、可動部の振動により被加振体を加振する加振ユニット、その加振ユニットを設けた楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、楽器等の機器において、被加振体を加振する加振器が設けられるものが知られている。加振器は、例えば、オーディオ信号によって動作し、被加振体を加振することで被加振体から発音させる。例えば、鍵盤楽器において、直支柱に対して支持部材を介して加振器が固定されると共に、オーディオ信号に応じた電流をコイルに入力することで振動する可動部が、被加振体である響板に接続される。可動部の振動が響板に伝達され、響板の振動が音響となる。下記特許文献1には、可動部と駆動部とを有する加振器の取付構造が示されている。この構造においては、磁石及びコア等でなる磁路形成部(駆動部)に対して可動部が電磁的に係合され、可動部のコイルに電流を流すと可動部がその軸線方向に往復動作することで振動する。一方、可動部の先端部が響板に連結固定される。
【0003】
響板等の被加振体は、温度や湿度の影響による経年変化によって寸法変化や変形が生じ得る。被加振体が変形または変位すると、被加振体への可動部の連結位置も一緒に変位する。その変位量がある程度大きくなると、可動部と磁路形成部とが物理的に干渉したり電磁的係合が不適切となったりして可動部がうまく動作せず、加振器の加振機能が維持されなくなるおそれがある。振動伝達が適切でなくなると発音も適切になされなくなる。このように、被加振体の変形や変位に起因して可動部と駆動部との位置関係が不適切になると、可動部と駆動部とを接続するダンパの変形や、駆動の不安定化を招き、加振器の耐久性が低下するおそれがある。なお、被加振体への可動部の連結位置の誤差は、加振器の取り付けの段階で生じることもある。
【0004】
そこで、特許文献1では、可動部の振動方向に垂直な水平方向に関し、可動部の先端部の変位を吸収する機能を可動部に設けている。特許文献1ではまた、駆動部と、駆動部を支持する部分との関係においても、上記水平方向における駆動部の変位を吸収する機構を設けている(第10図)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2014/115482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、被加振体の変形は、被加振体の傾きとして生じることがある。つまり、可動部の可動方向(振動方向であり、磁路形成部の軸心方向でもある)に対して被加振体の法線が成す角度が本来の角度(例えば、0°)からずれる場合があり得る。従来の加振器の取り付け構造においては、通常、被加振体に可動部が固定されるので、可動部における被加振体への固定部分の位置および姿勢は主に被加振体に依存する。また、駆動部は通常、支持体に固定されるので、駆動部の位置および姿勢は固定である。そのため、被加振体における特に可動部が固定された領域の法線が傾くと、可動部の可動方向と被加振体の法線方向とが成す角度が設計上の狙いの角度からずれるおそれがある。可動部の可動方向と被加振体の法線方向との角度ずれが生じると、可動部と駆動部との間に無理な力が生じるおそれがある。このような角度ずれの事象は、駆動部と支持体との関係における製造誤差や取り付け誤差により生じることもある。特許文献1は、上記水平方向における駆動部の変位を吸収する機構を有する。しかし、可動部の可動方向と被加振体の法線方向との間の角度のずれを吸収できない。
【0007】
本発明の目的は、耐久性を向上させることができる加振ユニット、楽器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明によれば、被加振体に対して接続される可動部と、前記可動部を駆動することで、前記可動部の振動により前記被加振体を加振する駆動部と、支持体に対して固定されると共に、前記可動部の可動方向と交わる方向の軸線を中心に回動自在に前記駆動部を支持する駆動部支持部と、有する、加振ユニットが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態に係る加振ユニットが適用される楽器の外観を示す斜視図である。
図2】ピアノの内部構造を示す断面図である。
図3】加振器の取り付け位置を説明するための響板の裏面図である。
図4】加振器の縦断面図である。
図5】駆動部支持部を備える加振ユニットの模式図な斜視図である。
図6】駆動部支持部を備える加振ユニットの模式図な縦断面図である。
図7】第2の実施の形態における駆動部支持部を備える加振ユニットの模式図な斜視図である。
図8】変形例の加振ユニットの模式図な縦断面図である。
図9】変形例の軸支部と軸部との関係を示す模式図である。
図10】本発明を適用可能な弦楽器の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る加振ユニットおよび加振ユニットが適用される楽器の外観を示す斜視図である。本実施の形態では、オーディオ信号によって動作して被加振体を加振することで発音させる「加振ユニット」および当該加振ユニットが適用される装置や楽器として、グランドピアノであるピアノ1を例示する。被加振体として響板7を例示する。ただし、これらの例示に限定されるものではなく、駆動信号により加振器が駆動され、加振器によって被加振体が振動する構成であればよい。
【0013】
ピアノ1は、その前面に演奏者によって演奏操作がなされる鍵2が複数配列された鍵盤、およびペダル3を有する。また、ピアノ1は、前面部分に操作パネル13を有する制御装置10、および譜面台部分に設けられたタッチパネル14を有する。操作パネル13およびタッチパネル14が操作されることにより、制御装置10に対してユーザの指示が入力可能である。
【0014】
図2は、ピアノ1の内部構造を示す断面図である。図2においては、各鍵2に対応して設けられている構成については1つの鍵2に着目して示し、他の鍵2に対応して設けられている部分の記載を省略している。各鍵2の後端側(演奏するユーザから見て鍵2の奥側)の下部には、ソレノイドを用いて鍵2を駆動する鍵駆動部15が設けられている。鍵駆動部15は、制御装置10からの制御信号に応じて、対応するソレノイドを駆動してプランジャを上昇させることにより、ユーザが押鍵したときと同様な状態を再現する。一方、鍵駆動部15は、プランジャを下降させることにより、ユーザが離鍵したときと同様な状態を再現する。
【0015】
弦5及びハンマ4は、各鍵2に対応して設けられる。鍵2が押下されるとアクション機構(図示略)を介してハンマ4が回動し、対応する弦5を打撃する。ダンパ8は、鍵2の押下量、およびペダル3のうちダンパペダル(以下、単にペダル3といった場合にはダンパペダルを示す)の踏込量に応じて変位し、弦5と非接触状態または接触状態となる。ストッパ19は、打弦阻止モードが設定されているときに動作し、各ハンマ4を受け止めてハンマ4による弦5への打撃を阻止する部材である。
【0016】
鍵センサ22は、各鍵2に対応して各鍵2の下部に設けられ、対応する鍵2の挙動に応じた検出信号を制御装置10に出力する。ハンマセンサ24は、ハンマ4に対応して設けられ、対応するハンマ4の挙動に応じた検出信号を制御装置10に出力する。ペダルセンサ23は、各ペダル3に対応して設けられ、対応するペダル3の挙動に応じた検出信号を制御装置10に出力する。図示はしないが、制御装置10は、CPU、ROM、RAM、通信インターフェイス等を備える。ROMに記憶された制御プログラムをCPUが実行することで、制御装置10による各種の制御が実現される。
【0017】
響板7は、木材で形成された板状の部材である。響板7には、複数の響棒75および駒6が配設される。駒6には、張架される弦5の一部が係止される。従って、駒6を介して響板7の振動が各弦5に伝達されるとともに、各弦5の振動が駒6を介して響板7に伝達される。また、駆動部支持部60が、直支柱9に接続された支持体55によって支持される。加振器50は駆動部支持部60に支持されると共に、響板7に接続されている。支持体55はアルミ素材等の金属で形成される。直支柱9はフレームとともに弦5の張力を支える部材であり、ピアノ1の一部である。
【0018】
図3は、加振器50の取り付け位置を説明するための響板7の裏面図である。加振器50は、響板7のうち、複数存在する響棒75の間に接続されている。同じ構成の加振器50が複数(例えば2つ)、響板7に接続されている。設ける加振器50の数は問わず、1つであってもよい。加振器50は、駒6に極力近い位置に配置され、本実施の形態では響板7を挟んで駒6の反対側に配置される。以下、ピアノ1の左右方向をX方向、前後方向をY方向、上下方向をZ方向とする。X-Y方向が水平方向である。
【0019】
図4は、加振器50の縦断面図である。加振器50は、ボイスコイル型のアクチュエータであり、大別して磁路形成部52(駆動部)及び可動体100(可動部)を有する。可動体100は、棒状部101、キャップ512、ボビン511、ボイスコイル513を有している。キャップ512の下半部に、環状のボビン511がわずかな隙間を有して嵌合固定されている。ボイスコイル513は、ボビン511に外周面に巻き付けられた導線で構成され、磁路形成部52が形成する磁場内において、流れる電流を振動に変える。キャップ512、ボビン511及びボイスコイル513が、磁路形成部52に電磁的に係合する電磁係合部EMとなる。
【0020】
棒状部101の下端部である一端部101aが、電磁係合部EMのキャップ512に連結固定され、Z方向(上下方向)に延設される。響板7の下面には他端部連結部110が固定される。他端部連結部110は、棒状部101の上端部である他端部101bを響板7に対してZ方向において固定的に連結することで、可動体100の振動を響板7に伝達する役割を果たす。
【0021】
磁路形成部52は、トッププレート521、磁石522及びヨーク523を有し、これらが上側から順に配設されている。電磁係合部EMは、ダンパ53によって、磁路形成部52に対して接触することなくZ方向に変位可能に支持される。すなわち、ダンパ53は、繊維等で円盤状に形成され、ダンパ53の円盤状の部分は蛇腹状に波立たせた形状をしている。ダンパ53の外周側の端部がトッププレート521の上面に取り付けられ、ダンパ53の内周側の端部が電磁係合部EMに取り付けられている。磁路形成部52は、駆動部支持部60を介して支持体55に支持されることで、直支柱9に支持される。
【0022】
トッププレート521は、例えば、軟鉄等の軟磁性材料でなり、中心に穴のあいた円盤状に形成される。ヨーク523は、例えば、軟鉄等の軟磁性材料でなり、円盤状の円盤部523Eと、円盤部523Eよりも外径が小さい円柱状の円柱部523Fとを、双方の軸心を一致させて一体とした形状に形成される。円柱部523Fの外径は、トッププレート521の内径よりも小さい。磁石522は、ドーナツ型の永久磁石であり、その内径はトッププレート521の内径よりも大きい。トッププレート521、磁石522及びヨーク523は、各々の軸心が一致し、それが磁路形成部52の軸心C1となっている。このような配置により、図4に破線の矢印で示した磁路が形成される。トッププレート521と円柱部523Fとに挟まれた空間である磁路空間525内にボイスコイル513が位置するように電磁係合部EMが配置される。その際、棒状部101の軸心C2が磁路形成部52の軸心C1と同心となるように、ダンパ53によって電磁係合部EMの水平方向(X-Y方向)の位置決めがされている。
【0023】
加振器50には、制御装置10から、オーディオ信号に基づく駆動信号が入力される。例えば、不図示の記憶部に記憶されたオーディオデータが制御装置10により読み出され、それに基づいて駆動信号が生成される。あるいは、演奏操作に応じて響板7を振動させる場合は、制御装置10は、鍵センサ22、ペダルセンサ23、ハンマセンサ24によって鍵2、ペダル3及びハンマ4の挙動をそれぞれ検出することで演奏者の演奏操作を検出する。そして制御装置10は、それらの検出結果に基づいて演奏情報を生成すると共に、その演奏情報に基づいて音響信号を生成する。この音響信号が加工や増幅の処理をされて、加振器50に駆動信号として出力される。
【0024】
駆動信号がボイスコイル513に入力されると、ボイスコイル513は、磁路空間525における磁力を受けて、入力される駆動信号が示す波形に応じたZ方向の駆動力をボビン511が受ける。従って、磁路形成部52により電磁係合部EMが励振されて、電磁係合部EMと棒状部101とが一体となってZ方向に振動する。可動体100がZ方向に振動すると、その振動は他端部連結部110によって響板7に伝達され、響板7が加振される。響板7の振動は空気中に放音され、音響となる。
【0025】
可動体100の可動方向は磁路形成部52の軸心C1と略平行である。響板7における他端部連結部110が固定される領域の法線方向をN1とする。設計上の法線方向N1は響板7の設計上の厚み方向と同じである。本実施の形態では、設計上、軸心C1、軸心C2および法線方向N1は互いに平行であり、これらに対し軸線C3は直交する。ところが、響板7には、経年変化等によって寸法変化や変形が生じる。響板7の法線方向N1が傾くと他端部連結部110も一緒に傾くため、可動体100の設計上の可動方向(Z方向)と響板7の法線方向N1とが成す角度が設計上の狙いの角度(本実施の形態では一例として0°)からずれるおそれがある。すなわち、他端部連結部110の傾きに伴い棒状部101の軸心C2が傾くと、軸心C2と磁路形成部52の軸心C1とが成す角度が適切でなくなる(設計上の0°でなくなる)。そうなると、電磁係合部EMと磁路形成部52との関係が不適切になって、両者の間に無理な力が生じるおそれがある。響板7の法線方向N1と磁路形成部52の軸心C1との角度ずれの事象は、磁路形成部52から駆動部支持部60および支持体55を介して直支柱9に至る系における製造誤差や取り付け誤差により生じることもある。
【0026】
従って、響板7の変位・変形や各所の製造誤差・取り付け誤差等によって、法線方向N1と軸心C1との成す角度が不適切となるような力が生じた場合に、それを吸収する機能を設ける必要がある。そのような機能を設けることで、磁路形成部52と電磁係合部EMとの電磁的な係合が適切に維持され且つ、可動体100の振動が響板7に適切に伝達されるようになる。そこで、本実施の形態では、響板7の法線方向N1と可動体100の可動方向(磁路形成部52の軸心C1方向)とが成す角度に着目する。可動方向と交わる方向(例えば、直交方向)の軸線C3を中心に回動自在に磁路形成部52を支持する駆動部支持部60を設ける。駆動部支持部60は、駆動部である磁路形成部52と支持体55との間に介在する介在部でもある。加振ユニットは、加振器50と駆動部支持部60とから構成される。
【0027】
図5図6は、駆動部支持部60を備える加振ユニットの模式図な斜視図、縦断面図である。以下、駆動部支持部60の説明に主眼をおくため、図5図6では、可動体100および磁路形成部52を有する加振器50の形状を簡略化して模式的に図示してある。従って、加振器50の形状は図4とは図面上、一致しないが、符号が同じ構成要素の構成は既に説明したのと同じである。
【0028】
磁路形成部52には挿通穴529が形成されている(図4図6)。挿通穴529に軸部33が挿通されている。挿通穴529の形成方向は磁路形成部52の軸心C1と略直交する。従って、軸部33の軸線C3は軸心C1と略直交する。軸部33は挿通穴529に対して回転自在に軸支され、且つ挿通穴529に対して軸線C3方向に摺動可能である。
【0029】
ベース部材30は支持体55に固定される。ベース部材30には、一対の軸支部31A、31Bが突設固定される。軸部33は軸支部31A、31Bに軸支される。すなわち、軸支部31A、31Bにはそれぞれ、軸支穴34A、34Bが形成されている。そして軸部33は軸支穴34A、34Bに回動自在に且つ軸線C3方向に摺動可能に支持される。軸部33の各端部は、軸支穴34A、34Bを貫通して軸支部31A、31Bから延出している。軸支部31Aに支持される側の軸部33の端部にはストッパ32Aが固定され、軸支部31Bに支持される側の軸部33の端部にはストッパ32Bが固定されている。軸部33が軸線C3方向に移動する際、ストッパ32Aが軸支部31Aに当接すること、およびストッパ32Bが軸支部31Bに当接することで、軸部33の移動範囲が規制される。また、軸支穴34A、34Bに対する軸部33の抜け止め機能が果たされる。ストッパ32A、32Bを設けることは必須でない。
【0030】
軸線C3は、加振器50(磁路形成部52と可動体100とを合わせたもの)の重心528の近傍を通る(図6)。軸線C3が重心528から離れていると、加振器50の自重により回転モーメントが生じる。この回転モーメントが過大となると、他端部連結部110に対して常に負荷を与えることになる。従って、軸線C3は、重心528の極力近くを通るのがよく、重心528を中心とする球形状527の範囲内を通るのが好ましい。そのようにすることで、回転モーメントによる大きな負荷が他端部連結部110や加振器50にかかることが回避される。球形状527の直径は、例えば、加振器50の最大寸法の20%以内である。
【0031】
軸支部31A、31Bは、軸線C3方向において磁路形成部52の軸心C1から離れた2箇所で保持される。別の観点からみると、軸支部31A、31Bは、重心528を含み軸線C3と直交する仮想面を挟んで両側2箇所に位置する。この配置により、軸線C3の角度の精度が高まると共に、磁路形成部52を保持するための負荷が分散される。
【0032】
かかる構成により、加振器50は、軸部33を介して軸支部31A、31Bに対して回動可能であると共に、軸線C3方向に移動自在となる。従って、次のように作用する。可動体100の設計上の可動方向はZ方向である。まず、仮に、Z方向と軸線C3とに直交する方向に関して、Z方向に対して法線方向N1または軸心C1が成す角度の少なくともいずれかが、設計値(0°)より大きくなった場合を考える。つまり、Z方向と軸線C3とに直交する方向において、Z方向に対する法線方向N1または軸心C1の角度ずれが生じたとする。しかし加振器50は軸線C3を中心に回動することで、上記角度ずれ分を吸収するので、法線方向N1と軸心C1とが略平行になる。法線方向N1と軸心C1とが略平行になることで、可動体100と磁路形成部52との位置関係を適切に維持できる。従って、加振器50の耐久性を向上させることができる。
【0033】
また、Z方向に直交する方向(水平方向)において響板7が変位することで他端部連結部110の位置が軸線C3方向に変位した場合を考える。この場合、軸支穴34A、34Bに対する軸部33の摺動、または軸部33と挿通穴529との摺動によって、加振器50が駆動部支持部60に対して相対的に軸線C3方向に変位する。この変位により、他端部連結部110の位置の変位が吸収されるので、法線方向N1と軸心C1とが略平行になる。従って、可動体100と磁路形成部52との位置関係を適切に維持できる。
【0034】
本実施の形態によれば、駆動部支持部60は、支持体55に固定されると共に、可動体100の可動方向と交わる方向の軸線C3を中心に回動自在に磁路形成部52を支持する。従って、磁路形成部52が回動することで法線方向N1と軸心C1との角度ずれを小さくすることができる。その結果、可動体100と磁路形成部52との位置関係を適切に維持できるので、可動体100と磁路形成部52との間、響板7と可動体100との間に無理な力がかかりにくい。よって、加振器50の耐久性を向上させることができる。ひいては、響板7に対する加振器50の加振機能を適切に維持することができる。
【0035】
さらに、駆動部支持部60は、磁路形成部52を軸線C3の方向に変位可能に支持するので、軸線C3方向の響板7の変位も吸収できる。従って、加振器50の耐久性を向上させることができる。
【0036】
なお、響板7の特性等によって、響板7が傾く方向や水平変位する方向が事前に判明している場合は、それらに応じて、軸線C3の方向を設定すればよい。すなわち、響板7が傾く方向と軸線C3とが略直交するようにし、また、響板7の水平変位する方向と軸線C3とが略平行となるように設計すればよい。なお、ベース部材30を、Z方向を中心に回動自在に支持体55が支持するように構成してもよい。例えば、ベース部材30と支持体55との間に回転テーブルを介在させる。この構成により、響板7の傾き方向や水平変位方向が不確定である場合に対応可能となる。
【0037】
なお、軸部33は、軸支穴34A、34Bと挿通穴529の双方に対して回動自在で且つ軸線C3方向に変位自在であるとした。しかし、軸部33は、軸支穴34A、34Bまたは挿通穴529のいずれかに対してだけ、回動自在で且つ軸線C3方向に変位自在としてもよい。つまり、軸部33は、軸支部31A、31Bまたは磁路形成部52のいずれかに対して固定されてもよい。
【0038】
なお、法線方向N1と軸心C1との角度ずれをなくすこと主眼とする場合、加振器50が駆動部支持部60に対して相対的に軸線C3方向に変位可能であることは必須でない。この観点からは、軸部33は、軸支穴34A、34Bまたは挿通穴529のいずれかに対して回動自在であるが、軸線C3方向への変位が不可とされてもよい。
【0039】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明の第2の実施の形態における駆動部支持部を備える加振ユニットの模式図な斜視図である。本実施の形態では、第1の実施の形態で説明した駆動部支持部60(図5)に相当する第1の駆動部支持部61を設けると共に、第1の駆動部支持部61のベース部材30と支持体55との間に第2の駆動部支持部62を介在させる。従って、第1の駆動部支持部61および第2の駆動部支持部62で、駆動部支持部160が構成される。第1の駆動部支持部61の構成は、ベース部材30と支持体55との関係以外は、駆動部支持部60と同様である。第1の駆動部支持部61には、挿通穴529に相当する挿通穴45が形成されている。
【0040】
第2の駆動部支持部62は、第1の駆動部支持部61のベース部材30、ストッパ32A、32B、軸部33にそれぞれ相当するベース部材40、ストッパ42A、42B、軸部43(他の軸部)を有する。第2の駆動部支持部62はまた、第1の駆動部支持部61の一対の軸支部31A、31Bに相当する一対の軸支部41A、41Bを有する。ベース部材30および一対の軸支部31A、31Bが第1軸支部であり、ベース部材40および一対の軸支部41A、41Bが第2軸支部である。
【0041】
挿通穴45に軸部43が挿通されている。挿通穴45の形成方向は磁路形成部52の軸心C1および軸線C3と略直交する。従って、軸部43の軸線C4(他の軸線)は軸心C1および軸線C3と略直交する。軸部43は挿通穴45に対して回転自在に軸支され、且つ挿通穴45に対して軸線C4方向に摺動可能である。
【0042】
ベース部材40は支持体55に固定される。ベース部材40には、一対の軸支部41A、41Bが突設固定される。軸部43は軸支部41A、41Bに軸支される。軸支部41A、41Bにはそれぞれ、軸支穴44A、44Bが形成されている。そして軸部43は軸支穴44A、44Bに回動自在に且つ軸線C4方向に摺動可能に支持される。軸部43の各端部は、軸支穴44A、44Bを貫通して軸支部41A、41Bから延出している。軸部43の軸支部41Aに支持される側の端部にはストッパ42Aが固定され、軸部43の軸支部41Bに支持される側の端部にはストッパ42Bが固定されている。軸部43が軸線C4方向に移動する際、ストッパ42Aが軸支部41Aに当接すること、およびストッパ42Bが軸支部41Bに当接することで、軸部43の移動範囲が規制される。また、軸支穴44A、44Bに対する軸部43の抜け止め機能が果たされる。ストッパ42A、42Bを設けることは必須でない。
【0043】
軸線C4は、加振器50の重心528の近傍を通る。軸線C4は、重心528を中心とする加振器50の最大寸法の20%の範囲内の領域を通るのが好ましい。軸支部41A、41Bは、軸線C4方向において磁路形成部52の軸心C1から離れた2箇所で保持される。別の観点からみると、軸支部41A、41Bは、重心528を含み軸線C4と直交する仮想面を挟んで両側2箇所に位置する。この配置により、軸線C4の角度の精度が高まると共に、磁路形成部52を保持するための負荷が分散される。
【0044】
かかる構成により、加振器50は、軸部33を介して軸支部31A、31Bに対して回動可能であると共に、軸線C3方向に移動自在となる。さらには、加振器50は、軸部43を介して軸支部41A、41Bに対して回動可能であると共に、軸線C4方向に移動自在となる。
【0045】
仮に、Z方向と軸線C4とに直交する方向に関して、Z方向に対して法線方向N1または軸心C1が成す角度の少なくともいずれかが、設計値(0°)より大きくなった場合を考える。つまり、Z方向と軸線C4とに直交する方向において、Z方向に対する法線方向N1または軸心C1の角度ずれが生じたとする。しかし加振器50は軸線C4を中心に回動することで、上記角度ずれ分を吸収するので、Z方向と軸線C4とに直交する方向において、法線方向N1と軸心C1とが略平行になる。
【0046】
しかも、上述したように、第1の駆動部支持部61の機能により、Z方向と軸線C3とに直交する方向においても、法線方向N1と軸心C1とが略平行になる。従って、角度ずれの方向を問わず、法線方向N1と軸心C1とが略平行になる。法線方向N1と軸心C1とが略平行になることで、可動体100と磁路形成部52との位置関係を適切に維持できる。
【0047】
また、Z方向に直交する方向(水平方向)において響板7が変位することで他端部連結部110の位置が軸線C4方向に変位した場合を考える。この場合、軸支穴44A、44Bに対する軸部43の摺動、または軸部43と挿通穴45との摺動によって、加振器50が駆動部支持部60に対して相対的に軸線C4方向に変位する。この変位により、他端部連結部110の位置の変位が吸収されるので、法線方向N1と軸心C1とが略平行になる。従って、可動体100と磁路形成部52との位置関係を適切に維持できる。
【0048】
本実施の形態によれば、駆動部支持部160は、磁路形成部52を、軸線C3を中心に回動自在に支持すると共に、軸線C4を中心に回動自在に支持する。従って、可動体100の可動方向と軸線C3とに直交する方向だけでなく、可動方向と軸線C4とに直交する方向に関しても、法線方向N1と軸心C1との角度ずれを小さくすることができる。また、軸線C3方向の響板7の変位だけでなく、軸線C4方向の響板7の変位も吸収できる。よって、加振器50の耐久性を向上させることができる。
【0049】
特に、軸線C3と軸線C4とは略直交するので、響板7の傾き方向や水平変位方向が不確定である場合に充分に対応可能となる。
【0050】
なお、軸部43は、軸支穴44A、44Bと挿通穴45の双方に対して回動自在で且つ軸線C4方向に変位自在であるとした。しかし、軸部43は、軸支穴44A、44Bまたは挿通穴45のいずれかに対してだけ、回動自在で且つ軸線C4方向に変位自在としてもよい。つまり、軸部43は、軸支部41A、41Bまたは第1の駆動部支持部61のベース部材30のいずれかに対して固定されてもよい。
【0051】
なお、法線方向N1と軸心C1との角度ずれをなくすことを主眼とする場合、加振器50が駆動部支持部60に対して相対的に軸線C4方向に変位可能であることは必須でない。この観点からは、軸部43は、軸支穴44A、44Bまたは挿通穴45のいずれかに対して回動自在であるが、軸線C4方向への変位が不可とされてもよい。
【0052】
なお、第1、第2の実施の形態において、軸部33は軸支部31A、31Bに両持ち状態で支持された。しかし、図8に変形例を示すように、軸部33は片持ち状態で支持されてもよい。図8は、変形例の加振ユニットの模式図な縦断面図である。支持体55の図示は省略されている。
【0053】
ベース部材30には、1つの軸支部31Cが突設固定される。軸部33は軸支部31Cの軸支穴34Cに回動自在に且つ軸線C3方向に摺動可能に支持される。軸線C3方向における軸支部31Cの両側において、軸部33にはストッパ32C、32Dが固定されている。磁路形成部52の挿通穴529に軸部33が挿通されている。軸線C3方向における磁路形成部52の反対側に突出する軸部33の端部にはストッパ32Eが固定されている。軸部33が軸線C3方向に移動する際、ストッパ32Cまたはストッパ32Dが軸支部31Cに当接することで、軸部33の移動範囲が規制される。また、ストッパ32Eが磁路形成部52に当接することで、挿通穴529に対する軸部33の抜け止め機能が果たされる。ストッパ32C、32D、32Eを設けることは必須でない。
【0054】
このように、軸部33が片持ち支持であっても、軸支穴34Cの長さを充分に確保すれば、加振器50を安定して支持できる。なお、これと同様の片持ち支持構成を、第2の実施の形態における軸部43の支持構成にも適用してもよい。なお、軸部33、43は、実質的に3箇所以上で支持されてもよい。
【0055】
なお、上記各実施の形態においては、円形の軸支穴34A、34B、44A、44Bに、円柱形状の軸部33、34が保持される構成であった。しかし、図9に示すように、軸部33、34が転がることで実質的に回動する構成を採用してもよい。
【0056】
図9は、変形例の軸支部31Fと軸部33との関係を示す模式図である。図9では、軸線C3方向から見た図を示している。図9では、軸部33の支持構成を例示するが、これは軸部43の支持構成にも応用可能である。従って、第1の実施の形態において、軸支部31A、31Bに代えて、一対の軸支部31Fを適用してもよい。また、第1、第2の実施の形態において、軸支部31C、31Dに代えて、一対の軸支部31Fを適用してもよい。
【0057】
図9に示すように、軸支部31Fには穴35が形成され、穴35に軸部33が挿通される。穴35の下半部は、ほぼ半円の円弧部35aとなっている。軸部33は円弧部35aを転がることが可能である。円弧部35aの曲率半径R2は、軸部33の半径R1より大きい。法線方向N1と軸心C1との角度ずれが生じようとすると、それを吸収する位置まで軸部33が円弧部35aに対して転がり方向に変位する。この構成によっても、可動体100と磁路形成部52との位置関係を適切に維持し、加振器50の耐久性を向上させるという効果を奏することができる。しかも、軸部33が回動する際、穴35との間に生じるのは摺動摩擦よりも転がり摩擦の方が主となるので、回動抵抗が小さくて済む。
【0058】
なお、円弧部35aに代えて、凹曲面を採用してもよい。また、軸部33は、断面円形とする代わりに、円弧部35aまたは凹曲面と係合する凸曲面を有してもよい。これら凸曲面および凹曲面を共に採用する場合は、凸曲面よりも凹曲面の方が曲率半径を大きく設定する。
【0059】
なお、上記各実施の形態において、軸支穴34A~34Dを、上方に開口する形状としてもよい。図9に示す変形例においても、穴35は上方に開口する形状としてもよい。このように構成すると、軸部33、43は、Z方向の成分のうち下方への変位だけが拘束される。また、重力により、凸部(軸部33が有する凸曲面等)と凹部(円弧部35aまたは凹曲面)とが互いに接触する方向に常時、付勢力が作用する。なお、重力に限らず、予め設定したバネ力、磁力等によって、凸部および凹部が常時、互いに接触方向に付勢されるようにしてもよい。上記付勢力よりも充分に弱い範囲で可動体100の駆動力を設定すれば、凸部と凹部との接触状態を常に維持でき、つまり片当たり構造を実現できる。このような構造によれば、凸部と凹部との接触部付近におけるノイズ(ビリツキ音)の発生を抑制できる。しかも、凸部と凹部とが離れないようにするための規制機構(例えば、凹部からの凸部の離間変位を規制するための、凸部に近接した壁)を設ける必要がなくなるため、軸支部の構造をシンプルにできる。
【0060】
なお、上記各実施の形態においては、軸線C3、C4の方向は、可動体100の可動方向(Z方向)と略直交するとしたが、これに限定されず、可動方向と交わる方向であればよい。また、軸線C3と軸線C4とは略直交するとしたが、これに限定されず、両者は互いに交わる方向であればよい。
【0061】
なお、本発明が適用される楽器はピアノ等の鍵盤楽器に限らず、種々のアコースティック楽器で加振器を有するもの、あるいは電子楽器で加振器を有するもの、あるいはスピーカに適用してもよい。寸法変化等によって、被加振体における可動部との連結位置と加振器の支持位置とにずれを生じるものは本発明の適用対象となる。例えば、本発明を、図10に示すような弦楽器に適用してもよい。また、本発明を、ドラムなどの自動演奏装置として打楽器に適用してもよい。
【0062】
図10は、本発明を適用可能な弦楽器の模式的断面図である。この弦楽器は例えばギター90として構成される。ギター90は、胴部91とネック部97とを有する。胴部91は、表板92、裏板93、側板94を有し、これらによって内部空間Sが形成される。内部空間S内において、側板94にはエンドブロック96が固定される。エンドブロック96に、支持体55に相当する支持体95が固定される。支持体95に駆動部支持部60が固定される。表板92は、響板7に相当する被加振体である。加振器50の構成は、上記各実施の形態のいずれの構成であってもよい。表板92の裏面に、可動体100の他端部連結部110が固定される。可動体100の可動方向は表板92の厚み方向である。駆動部支持部60に代えて駆動部支持部160を適用してもよい。
【0063】
なお、被加振体として響板7や表板92を例示したが、これらに限られず、屋根や側板等の、寸法変化や変形を生じる部材を被加振体とする場合にも本発明を適用可能である。
【0064】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
7 響板、50 加振器、52 磁路形成部(駆動部)、55 支持体、60、160 駆動部支持部、100 可動体(可動部)、 C3、C4 軸線



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10