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特許7230456不正受給判定プログラム、不正受給判定装置及び不正受給判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】不正受給判定プログラム、不正受給判定装置及び不正受給判定方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20120101AFI20230221BHJP
【FI】
G06Q50/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018220502
(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2020086937
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高島 大輔
【審査官】鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-200926(JP,A)
【文献】特開2005-284850(JP,A)
【文献】特開2004-192495(JP,A)
【文献】特開2017-097669(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0063644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離職者を特定する情報を含む失業等給付の受給申請の登録を受け付け、
離職者が離職した事業所の事業所情報と、前記離職者の事業所における就業期間を示す情報と、前記就業期間に前記離職者が事業所から受け取った賃金を示す賃金情報と、を関連付けて記憶した離職者情報記憶部を参照して、離職者が就業していた事業所の規模が中小企業に相当する規模であり、前記離職者の就業期間が、就業期間に関する条件を満たし、且つ、前記離職者の賃金情報が、賃金に関する条件を満たす場合に、前記就業期間における前記離職者の所得税の納税試算金額を算出し、
前記離職者のマイナンバー情報に基づき、前記離職者の所得税の納税の履歴を示す納税情報を問い合わせて納税金額を取得し、
前記納税試算金額と前記納税金額との差額の大きさに応じて不正受給の疑いの有無を判定する、処理をコンピュータに実行させ
前記就業期間に関する条件は、前記離職者の前記就業期間が、失業等給付の受給資格を得るための条件を満たし、且つ、所定の期間より短いことであり、
前記賃金に関する条件は、前記離職者の前記就業期間中の月額の賃金が一定額以上であること、である、不正受給判定プログラム。
【請求項2】
前記就業期間に関する条件は、前記離職者が雇用保険の被保険者となってから離職するまでの期間が、1年以上1年半未満であることであり、
前記賃金に関する条件は、
前記離職者の前記就業期間中の月額の賃金が30万円以上であること、である、請求項記載の不正受給判定プログラム。
【請求項3】
前記納税試算金額を算出した離職者毎に、前記不正受給の疑いの有無の判定結果の一覧を表示させるための情報を出力する処理を、前記コンピュータに実行させる、請求項1又は2記載の不正受給判定プログラム。
【請求項4】
コンピュータによる不正受給判定方法であって、前記コンピュータが、
離職者を特定する情報を含む失業等給付の受給申請の登録を受け付け、
離職者が離職した事業所の事業所情報と、前記離職者の事業所における就業期間を示す情報と、前記就業期間に前記離職者が事業所から受け取った賃金を示す賃金情報とを関連付けて記憶した離職者情報記憶部を参照して、離職者が就業していた事業所の規模が中小企業に相当する規模であり、前記離職者の就業期間が、就業期間に関する条件を満たし、且つ、前記離職者の賃金情報が、賃金に関する条件を満たす場合に、前記就業期間における前記離職者の所得税の納税試算金額を算出し、
前記離職者のマイナンバー情報に基づき、前記離職者の所得税の納税の履歴を示す納税情報を問い合わせて納税金額を取得し、
前記納税試算金額と前記納税金額との差額の大きさに応じて、不正受給の疑いの有無を判定し、
前記就業期間に関する条件は、前記離職者の前記就業期間が、失業等給付の受給資格を得るための条件を満たし、且つ、所定の期間より短いことであり、
前記賃金に関する条件は、前記離職者の前記就業期間中の月額の賃金が一定額以上であること、である、不正受給判定方法。
【請求項5】
離職者を特定する情報を含む失業等給付の受給申請の登録を受け付ける受付部と、
離職者が離職した事業所の事業所情報と、前記離職者の事業所における就業期間を示す情報と、前記就業期間に前記離職者が事業所から受け取った賃金を示す賃金情報とを関連付けて記憶した離職者情報記憶部を参照して、離職者が就業していた事業所の規模が中小企業に相当する規模であり、前記離職者の就業期間が、就業期間に関する条件を満たし、且つ、前記離職者の賃金情報が、賃金に関する条件を満たす場合に、前記就業期間における前記離職者の所得税の納税試算金額を算出する試算金額算出部と、
前記離職者のマイナンバー情報に基づき、前記離職者の所得税の納税の履歴を示す納税情報を問い合わせて納税金額を取得する納税情報取得部と、
前記納税試算金額と前記納税金額との差額の大きさに応じて、不正受給の疑いの有無を判定する不正判定部と、を有し、
前記就業期間に関する条件は、前記離職者の前記就業期間が、失業等給付の受給資格を得るための条件を満たし、且つ、所定の期間より短いことであり、
前記賃金に関する条件は、前記離職者の前記就業期間中の月額の賃金が一定額以上であること、である、不正受給判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不正受給判定プログラム、不正受給判定装置及び不正受給判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、会社や機関等の組織で勤務する従業員が離職した場合、所轄の公共職業安定所に雇用保険離職証明書を提出することで、失業等給付の支給を受けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-250604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、失業等給付が不正に受給されるケースが年間で1万件近く発生しており、税金が無駄に遣われている。
【0005】
1つの側面では、本発明は、事業主と離職者とが連携した不正を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様では、離職者を特定する情報を含む失業等給付の受給申請の登録を受け付け、離職者が離職した事業所の事業所情報と、前記離職者の事業所における就業期間を示す情報と、前記就業期間に前記離職者が事業所から受け取った賃金を示す賃金情報と、を関連付けて記憶した離職者情報記憶部を参照して、離職者が就業していた事業所の規模が中小企業に相当する規模であり、前記離職者の就業期間が、就業期間に関する条件を満たし、且つ、前記離職者の賃金情報が、賃金に関する条件を満たす場合に、前記就業期間における前記離職者の所得税の納税試算金額を算出し、前記離職者のマイナンバー情報に基づき、前記離職者の所得税の納税の履歴を示す納税情報を問い合わせて納税金額を取得し、前記納税試算金額と前記納税金額との差額の大きさに応じて不正受給の疑いの有無を判定する、処理をコンピュータに実行させ、前記就業期間に関する条件は、前記離職者の前記就業期間が、失業等給付の受給資格を得るための条件を満たし、且つ、所定の期間より短いことであり、前記賃金に関する条件は、前記離職者の前記就業期間中の月額の賃金が一定額以上であること、である
【0007】
上記各処理は、上記各処理を実現する機能部、各処理を実現する手順としても良く、各処理をコンピュータに実行させるプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体とすることもできる。
【発明の効果】
【0008】
事業主と離職者とが連携した不正を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】不正受給判定システムについて説明する図である。
図2】不正受給判定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】事業所データベースの一例を示す図である。
図4】被保険者データベースの一例を示す図である。
図5】離職票データベースの一例を示す図である。
図6】シミュレーション結果データベースの一例を示す図である。
図7】所得税算出データベースの一例を示す図である。
図8】不正受給判定装置の機能を説明する図である。
図9】不正受給判定装置の動作を説明するフローチャートである。
図10】端末装置の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、実施形態について説明する。図1は、不正受給判定システムについて説明する図である。
【0011】
本実施形態の不正受給判定システム100は、不正受給判定装置200と、端末装置300とを有し、両者はネットワーク等を介して接続される。
【0012】
本実施形態の不正受給判定装置200は、会社や機関等の組織から離職した離職者が受給しようとしている失業等給付が、事業主と結託した不正なものであるか否かを判定し、判定結果を端末装置300へ送信する。以下の説明では、不正受給判定装置200による判定を、不正受給判定と呼ぶ場合がある。
【0013】
端末装置300は、例えば、全国各地の公共職業安定所に設置された情報処理装置の一例を示す。以下の説明では、公共職業安定所をハローワークと呼ぶ。
【0014】
本実施形態の不正受給判定装置200は、事業所データベース210、被保険者データベース220、離職票データベース230、シミュレーション結果データベース240、所得税算出データベース250、不正受給判定処理部260を有する。
【0015】
事業所データベース210は、全国各地の事業所に関する情報が格納される。被保険者データベース220には、事業主に雇用されている、雇用保険の被保険者に関する情報が格納される。離職票データベース230は、会社や機関等の組織から離職した離職者に関する情報が格納される。
【0016】
本実施形態の事業所データベース210、被保険者データベース220、離職票データベース230は、例えば、ハローワークにおいて管理されており、ハローワークの有するサーバ装置から取得されても良い。
【0017】
シミュレーション結果データベース240は、不正受給判定処理部260によるシミュレーション結果が格納される。所得税算出情報記憶部250は、所得税を算出するシミュレーションに必要となる情報が格納される。
【0018】
不正受給判定処理部260は、事業所データベース210、被保険者データベース220、離職票データベース230を参照して、不正受給判定を行う対象者となる離職者を抽出する。
【0019】
次に、不正受給判定処理部260は、所得税算出データベース250を参照し、抽出された離職者が納付したであろう所得税の金額をシミュレーションにより求める。次に、不正受給判定処理部260は、離職者のマイナンバーに基づき、外部のサーバ装置400から離職者の納税情報を取得し、シミュレーション結果と照合する。
【0020】
そして、不正受給判定処理部260は、照合の結果に応じて、離職者が、事業主と連携(結託)して、不正に失業等給付を受給しようとしているか否かを判定し、離職者毎の判定結果を、端末装置300に送信する。
【0021】
尚、外部のサーバ装置400とは、税務署等に設けられ、離職者毎の納税情報が格納されたサーバ装置である。
【0022】
ここで、不正受給判定を行う対象者を抽出する際の着目点について説明する。
【0023】
失業等給付は、事業主が作成した離職票から得られる情報に基づき、支給額が決定される。したがって、不正受給が疑われるケースでは、事業主が共謀していることが想定されるが、大企業等の大きな組織では、事業主が離職者と共謀することは考えにくい。
【0024】
したがって、まず、本実施形態では、事業所の規模に着目し、不正受給判定を行う対象者を抽出する第一の条件を、事業所の規模が中小企業に相当する規模であることとする。具体的には、例えば、第一の条件は、従業員数が300人以下の事業所であること、等である。
【0025】
また、本実施形態では、失業等給付の受給資格を得るための条件に着目し、不正受給判定を行う対象者を抽出する第二の条件を、雇用保険の被保険者となってから離職するまでの期間が、失業等給付の受給資格を得るための条件を満たし、且つ、所定の期間より短いこととする。具体的には、例えば、第二の条件は、雇用保険の被保険者となってから離職するまでの期間が、1年以上1年半未満であることと、等である。
【0026】
また、本実施形態では、賃金が高いほど、失業等給付の支給額も高くなる点に着目し、不正受給判定を行う対象者を抽出する第三の条件を、月額の賃金が一定額以上であることとする。具体的には、第三の条件は、月額の賃金が30万円以上であること、等である。
【0027】
本実施形態では、以上の3点に着目して、不正受給判定を行う対象者を抽出し、抽出した対象者についてのみ、不正受給判定の処理を行うため、処理の負荷を軽減できる。また、本実施形態では、上述した着目点に基づき決められた条件で対象者を抽出するため、高い精度で不正受給の疑いがある離職者を抽出することができる。
【0028】
また、本実施形態では、事業主が作成する離職票の情報を用いて求めた所得税の金額と、離職者のマイナンバーと紐付けられた納税情報とを照合することで、離職者と事業主とが連携した不正が行われているか否かを判定することができる。また、本実施形態では、判定した結果を端末装置300に出力するため、端末装置300が配置されたハローワークの職員に対し、不正受給をしようとしている離職者を通知することができ、不正を防止できる。
【0029】
以下に、本実施形態の不正受給判定装置200について説明する。図2は、不正受給判定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0030】
本実施形態の不正受給判定装置200は、それぞれバスBで相互に接続されている入力装置21、出力装置22、ドライブ装置23、補助記憶装置24、メモリ装置25、演算処理装置26及びインターフェース装置27を含む情報処理装置である。
【0031】
入力装置21は、各種の情報の入力を行うための装置であり、例えばキーボードやポインティングデバイス等により実現される。出力装置22は、各種の情報の出力を行うためものであり、例えばディスプレイ等により実現される。インターフェース装置27は、LANカード等を含み、ネットワークに接続する為に用いられる。
【0032】
不正受給判定処理部260を実現させる不正受給判定プログラムは、不正受給判定装置200を制御する各種プログラムの少なくとも一部である。不正受給判定プログラムは例えば記憶媒体28の配布やネットワークからのダウンロード等によって提供される。不正受給判定プログラムを記録した記憶媒体28は、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的、電気的或いは磁気的に記録する記憶媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記憶媒体を用いることができる。
【0033】
また、不正受給判定プログラムは、不正受給判定プログラムを記録した記憶媒体28がドライブ装置23にセットされると、記憶媒体48からドライブ装置23を介して補助記憶装置24にインストールされる。ネットワークからダウンロードされた不正受給判定プログラムは、インターフェース装置27を介して補助記憶装置24にインストールされる。
【0034】
補助記憶装置24は、インストールされた不正受給判定プログラムを格納すると共に、不正受給判定装置200が収集したログ情報等の各種の必要なファイル、データ等を格納する。メモリ装置25は、不正受給判定装置200の起動時に補助記憶装置24から不正受給判定プログラムを読み出して格納する。そして、演算処理装置26はメモリ装置25に格納された不正受給判定プログラムに従って、後述するような各種処理を実現している。
【0035】
次に、図3乃至図7を参照して、本実施形態の不正受給判定装置200の有する各記憶部について説明する。尚、本実施形態では、各データベースは不正受給判定装置200に設けられるものとしたが、これに限定されない。本実施形態の各データベースは、不正受給判定装置200以外の装置に設けられていても良い。
【0036】
図3は、事業所データベースの一例を示す図である。本実施形態の事業所データベース210は、情報の項目として、事業所番号、従業員数、事業所名等を含み、項目「事業所番号」と、その他の項目とが対応付けられている。
【0037】
項目「事業所番号」の値は、事業所を特定する識別情報を示す。項目「従業員数」の値は、事業所の従業員数を示す。項目「事業所名」の値は、事業所の名称を示す。尚、事業所データベース210は、図3に示す項目以外の項目を含んでいても良い。
【0038】
図4は、被保険者データベースの一例を示す図である。本実施形態の被保険者データベース220は、情報の項目として、事業所番号、被保険者番号、枝番、就業期間、マイナンバー等を含み、項目「被保険者番号」と、その他の項目とが対応付けられている。
【0039】
項目「被保険者番号」の値は、雇用保険の被保険者を特定するための識別番号である。項目「枝番」の値は、被保険者番号の枝番を示す。
【0040】
項目「就業期間」は、項目「就職年月日」、「離職年月日」と対応付けられており、項目「就職年月日」の値は、被保険者が、事業所番号で特定される事業所へ就職した年月日を示し、項目「離職年月日」の値は、被保険者が、事業所番号で特定される事業所を退職(離職)した年月日を示す。
【0041】
項目「マイナンバー」の値は、被保険者のマイナンバーを示す。マイナンバーとは、行政手続における特定の個人を識別するための番号である。
【0042】
以下の説明では、項目「被保険者番号」の値と、その他の項目の値とを含む情報を、被保険者情報と呼ぶ。
【0043】
また、本実施形態の被保険者データベース220には、図4に示す項目以外の項目が含まれても良い。
【0044】
図5は、離職票データベースの一例を示す図である。本実施形態の離職票データベース230は、情報の項目として、被保険者番号、賃金情報、マイナンバー等を含み、項目「被保険者番号」とその他の項目とが対応付けられている。離職票データベース230に格納される情報は、離職者によってハローワークに持参された離職票を読み込むことで取得される。
【0045】
項目「賃金情報」は、項目「賃金支払対象期間(開始)」、「賃金支払対象期間(終了)」、「賃金」を有する。項目「賃金支払対象期間(開始)」の値と、項目「賃金支払対象期間(終了)」の値とは、それぞれが、被保険者番号で特定される被保険者に対して賃金の支払いを開始した日時と、賃金の支払いを終了した日時とを示す。項目「賃金」の値は、賃金支払対象期間において被保険者に支払われた賃金を示す。
【0046】
つまり、本実施形態の離職票データベース230は、離職者が就業していた事業所の情報と、離職者の事業所における就業期間を示す情報と、就業期間において離職者が企業から受け取った賃金を示す賃金情報を関連付けて記憶した離職者情報記憶部の一例である。
【0047】
以下の説明では、離職票データベース230において、項目「被保険者情報」の値と、その他の項目の値とを含む情報を離職者情報と呼ぶ。尚、離職票データベース230には、図5に示す項目以外の項目が含まれていても良い。
【0048】
図6は、シミュレーション結果データベースの一例を示す図である。本実施形態のシミュレーション結果データベース240は、情報の項目として、マイナンバー、賃金情報、所得税シミュレーション結果、納税情報、判定結果を有し、項目「マイナンバー」とその他の項目とが対応付けられている。
【0049】
項目「所得税シミュレーション結果」の値は、所得税を算出するシミュレーションを実行した結果を示す。
【0050】
項目「納税情報」は、項目「賃金支払対象期間(開始)」、「賃金支払対象期間(終了)」、「所得税」と対応付けられており、項目「納税情報」の値は、各地の税務署に設けられたサーバ装置400から取得されるものであり、マイナンバーによって特定される個人の納税の履歴を示す情報である。
【0051】
項目「所得税」の値は、納税情報に含まれる賃金支払対象期間(開始)から賃金支払対象期間(終了)までの間に、マイナンバーによって特定される個人が納税した所得税の金額を示す。項目「判定結果」の値は、不正受給判定の結果を示す。
【0052】
以下の説明では、シミュレーション結果データベース240において、項目「マイナンバー」の値と、その他の項目の値とを含む情報をシミュレーション結果情報と呼ぶ。
【0053】
本実施形態では、不正受給検出処理部260の処理によって、項目「所得税シミュレーション結果」、「納税情報」、「判定結果」のそれぞれの値が、シミュレーション結果データベース240に格納される。
【0054】
図7は、所得税算出データベースの一例を示す図である。本実施形態の所得税算出データベース250は、情報の項目として、課税所得金額、税率、課税控除額を有する。これらの項目は、所得税の算出に用いられる予め決められた項目であり、各項目の値も、予め決められたものである。
【0055】
次に、図8を参照して、本実施形態の不正受給判定処理部260について説明する。図8は、不正受給判定装置の機能を説明する図である。
【0056】
本実施形態の不正受給判定装置200は、不正受給判定処理部260を有する。不正受給検出処理部260は、不正受給判定装置200の演算処理装置26がメモリ装置25に格納された不正受給判定プログラムを読みだして実行することで実現される。
【0057】
本実施形態の不正受給判定処理部260は、条件保持部261、事業所抽出部262、離職者抽出部263、シミュレーション実行部264、納税情報取得部265、照合部266、不正判定部267、リスト生成部268、出力部269を有する。
【0058】
条件保持部261は、不正受給判定を行う対象者を抽出するための条件を保持する。条件保持部261で保持される条件は、上述した第一の条件、第二の条件、第三の条件である。
【0059】
事業所抽出部262は、事業所データベース210に格納された事業所の中から、条件保持部261に保持された第一の条件を満たす事業所を抽出する。尚、事業所抽出部262は、離職者を特定する情報を含む失業等給付の受給申請の登録を受け付けて、事業所を抽出しても良い。言い換えれば、事業所抽出部262は、失業等給付の受給申請の登録を受け付ける受付部の一例である。
【0060】
離職者抽出部263は、被保険者データベース220を参照して、事業所抽出部262で抽出された事業所と対応付けられた被保険者を抽出する。また、離職者抽出部263は、抽出された被保険者の中から、離職票データベース230を参照して、条件保持部261に保持された第二の条件と第三の条件を満たす離職者を抽出する。
【0061】
シミュレーション実行部264は、離職者抽出部263によって抽出された離職者について、所得税算出データベース250を参照して、各離職者が納税したと推定される所得税の金額を算出する。言い換えれば、シミュレーション実行部264は、抽出された離職者毎に、所得税の納税試算金額を算出する試算金額算出部の一例である。
【0062】
納税情報取得部265は、離職者抽出部263により抽出された離職者のマイナンバーに基づき、サーバ装置400から納税情報を取得する。
【0063】
照合部266は、シミュレーション実行部264により算出された所得税の金額と、納税情報取得部265により取得された納税情報に含まれる所得税の金額とを照合する。
【0064】
不正判定部267は、照合部266の結果に基づき、離職者が不正受給を行おうとしているか疑いがあるか否かを判定する。
【0065】
リスト生成部268は、不正判定部267による判定結果を一覧にしたリストを生成する。具体的には、リスト生成部268は、シミュレーション結果データベース240に格納されたシミュレーション結果情報を、端末装置300が設置されたハローワークが管轄する地域毎の情報とする。したがって、本実施形態では、端末装置300に出力されるリストは、シミュレーション結果情報の一覧となる。
【0066】
尚、リスト生成部268は、例えば、シミュレーション結果情報に含まれるマイナンバーと対応付く事業所の事業所番号に応じて、シミュレーション結果情報をハローワークの管轄毎にグループ化したものを、判定結果を一覧にしたリストとすれば良い。
【0067】
出力部269は、リスト生成部268が生成したリストを各端末装置300へ出力(配信)する。
【0068】
以下に、図9を参照して、本実施形態の不正受給判定装置200の動作を説明する。図9は、不正受給判定装置の動作を説明するフローチャートである。尚、図9の処理は、例えば、夜間や、所定のタイミングに応じて、定期的に実行されても良い。
【0069】
また、図9の処理は、端末装置300において、新たな離職者情報が入力されて、失業等給付の受給申請の登録(申込み)が受け付けられた日等に実行されても良い。
【0070】
本実施形態の不正受給判定処理部260は、事業所抽出部262は、事業所データベース210を参照して、各事業所の従業員数を取得する(ステップS901)。続いて、事業所抽出部262は、条件保持部261に格納された第一の条件を満たす事業所を抽出する(ステップS902)。具体的には、事業所抽出部262は、従業員数が300人以下の事業所を抽出する。
【0071】
続いて、不正受給判定処理部260は、離職者抽出部263により、被保険者データベース220を参照して、抽出された事業所の従業員のうち、就業期間が第二の条件を満たす離職者が存在するか否かを判定する(ステップS903)。具体的には、離職者抽出部263は、就業期間が1年半未満の離職者が存在するか否かを判定する。
【0072】
ステップS903において、該当する離職者が存在しない場合、不正受給判定処理部260は、処理を終了する。ステップS903において、該当する離職者が存在する場合、離職者抽出部263は、該当する離職者を抽出する(ステップS904)。
【0073】
続いて、離職者抽出部263は、離職票データベース230を参照して、ステップS904で抽出された離職者の中で、条件保持部261に保持された第三の条件を満たす離職者が存在するか否かを判定する(ステップS905)。具体的には、離職者抽出部263は、ステップS904で抽出された離職者のうち、月額賃金が30万円以上の離職者が存在するか否かを判定する。
【0074】
ステップS905において、該当する離職者が存在しない場合、不正受給判定処理部260は、処理を終了する。ステップS905において、該当する離職者が存在する場合、離職者抽出部263は、ステップS604で抽出された離職者の中から、該当する離職者を抽出する(ステップS906)。ステップS906で抽出された離職者は、不正受給判定を行う対象者となる。
【0075】
続いて、不正受給判定処理部260は、シミュレーション実行部264により、所得税算出データベース250を参照して、抽出された離職者(対象者)毎に、過去6ヶ月の賃金情報に基づく所得税を算出する(ステップS907)。
【0076】
尚、算出された所得税は、シミュレーション結果データベース240に、項目「所得税シミュレーション結果」の値として、離職者のマイナンバーと対応付けられて格納される。
【0077】
続いて、不正受給判定処理部260は、納税情報取得部265により、離職者毎に、マイナンバーで紐付けられた納税情報をサーバ装置400から取得する(ステップS908)。
【0078】
尚、ここで取得された納税情報は、シミュレーション結果データベース240に、項目「納税情報」の値として、離職者のマイナンバーと対応付けられて格納される。
【0079】
続いて、不正受給判定処理部260は、照合部266により、ステップS906で抽出された離職者(対象者)を選択する(ステップS909)。
【0080】
続いて、照合部266は、選択した離職者について、ステップS907で算出されたシミュレーション結果である所得税と、ステップS908で取得した納税情報に含まれる所得税とを照合し、不正判定部267により、両者が一致するか否かを判定する(ステップS910)。
【0081】
ステップS910において、両者が一致する場合、不正判定部267は、不正受給の疑いがないものとして、失業等給付の受給の手続きが許可されたことを示す情報を、シミュレーション結果データベース240の項目「判定結果」の値として、離職者のマイナンバーと対応付けて格納する(ステップS911)。
【0082】
ステップS910において、両者が一致しない場合、不正判定部267は、不正受給の可能性があることを示す情報、シミュレーション結果データベース240の項目「判定結果」の値として、離職者のマイナンバーと対応付けて格納する(ステップS912)。
【0083】
尚、本実施形態の不正判定部267は、シミュレーション結果の所得税と納税情報に含まれる所得税とが一致しない場合には、不正受給の疑いがあるものと判定しているが、判定の仕方はこれに限定されない。
【0084】
不正判定部267は、例えば、シミュレーション結果の所得税と納税情報に含まれる所得税との差額が所定額以上である場合に、不正受給の疑いがあると判定しても良い。
【0085】
続いて、不正受給判定処理部260は、リスト生成部268により、ステップS906で抽出された全ての離職者(対象者)について、処理が行われたか否かを判定する(ステップS913)。ステップS913において、全ての離職者(対象者)に対して処理が実行されていない場合、不正受給判定処理部260は、ステップS909へ戻る。
【0086】
ステップS913において、全ての離職者(対象者)に対して処理が実行されていた場合は、不正受給判定処理部260は、リスト生成部268により、判定結果を示すリストを生成し、出力部269により、リストと対応付く各端末装置300出力し(ステップS914)、処理を終了する。
【0087】
尚、本実施形態では、図9の処理は、定期的に実行されるものとしたが、これに限定されない。図9の処理は、例えば、ハローワークにおいて、新たな離職票から離職者情報が読み込まれる度に実行されても良い。
【0088】
その場合、不正受給判定処理部260は、新たな離職票に示される事業所が第一の条件を満たし、且つ、新たな離職票に示される離職者が第二及び第三の条件を満たす場合に、この離職者の納税情報を取得し、離職者情報の賃金情報と照合すれば良い。
【0089】
このようにすれば、離職者が失業等給付の受給手続きのためにハローワークを訪れたときに、その場で、この離職者についての判定結果を得ることができる。
【0090】
以下に、図10を参照して、本実施形態の不正受給判定処理部260による判定結果を示すリストについて説明する。図10は、端末装置の表示例を示す図である。
【0091】
本実施形態の画面301は、ハローワークに設置された端末装置300に表示される画面の例である。
【0092】
画面301には、リスト生成部268により生成されたリスト302が表示されている。リスト302では、第一の条件、第二の条件、第三の条件に基づき抽出された離職者毎に、マイナンバーと、ハローワークで管理される賃金情報と、税務署で管理される納税情報と、両者を比較した判定結果とが、一覧として表示される。
【0093】
図10では、例えば、マイナンバー「123456789012」の離職者について、就業期間「2017/1221~2017/12/31」の賃金情報から算出されたシミュレーション結果の所得税は19,000円であるのに対し、納税情報の所得税は、12,000円である。
【0094】
この場合、この離職者の就業期間中に、離職者情報における賃金情報に示される賃金が支払われていた場合には、19,000円の所得税が納税されるはずであるのにも関わらず、実際に納税された所得税が12,000円であったことがわかる。
【0095】
したがって、この場合には、失業等給付の支給額を高くするために、この就業期間に、この離職者を雇用していた事業主が離職票の賃金情報を改竄した可能性があることがわかる。
【0096】
また、例えば、マイナンバー「123456789012」の離職者について、就業期間「2017/10/21~2017/11/20」の賃金情報から算出されたシミュレーション結果の所得税は40,000円であるのに対し、納税情報の所得税も40,000円である。
【0097】
したがって、この就業期間に、この離職者を雇用していた事業主は、離職票の賃金情報を改竄していないことがわかる。
【0098】
以上のように、本実施形態によれば、事業主が作成した離職票に基づき、ハローワークで管理されている賃金情報と、税務署で管理されている納税情報とを、マイナンバーをも用いて対応付ける。そして、本実施形態では、両者を比較することで、失業等給付の不正受給の疑いの有無を判定することができ、不正を抑制することができる。
【0099】
開示の技術では、以下に記載する付記のような形態が考えられる。
(付記1)
離職者を特定する情報を含む失業等給付の受給申請の登録を受け付けると、
離職者が離職した事業所の事業所情報、前記離職者の事業所における就業期間を示す情報、前記就業期間に前記離職者が事業所から受け取った賃金を示す賃金情報を関連付けて記憶した離職者情報記憶部を参照して、
離職者が就業していた事業所の規模が所定の規模以下であり、前記離職者の就業期間が、就業期間に関する条件を満たし、且つ、前記離職者の賃金情報が、賃金に関する条件を満たす場合に、前記就業期間における前記離職者の所得税の納税試算金額を算出し、
前記離職者のマイナンバー情報に基づき、前記離職者の所得税の納税の履歴を示す納税情報を問い合わせて納税金額を取得し、
前記納税試算金額と前記納税金額との差額の大きさに応じて、不正受給の疑いの有無を判定する、処理をコンピュータに実行させる、不正受給判定プログラム。
(付記2)
前記就業期間に関する条件は、
前記離職者の前記就業期間が、失業等給付の受給資格を得るための条件を満たし、且つ、所定の期間より短いことであり、
前記賃金に関する条件は、
前記離職者の前記就業期間中の月額の賃金が一定額以上であること、である、付記1記載の不正受給判定プログラム。
(付記3)
前記就業期間に関する条件は、
前記離職者が雇用保険の被保険者となってから離職するまでの期間が、1年以上1年半未満であることであり、
前記賃金に関する条件は、
前記離職者の前記就業期間中の月額の賃金が30万円以上であること、である、付記2記載の不正受給判定プログラム。
(付記4)
前記納税試算金額を算出した離職者毎に、前記不正受給の疑いの有無の判定結果の一覧を表示させるための情報を出力する処理を、前記コンピュータに実行させる、付記1乃至3の何れか一項に記載の不正受給判定プログラム。
(付記5)
前記一覧は、
前記納税試算金額を算出した離職者毎の、前記賃金情報と、前記納税試算金額と、前記離職者の納税金額と、前記判定結果と、を含む、付記4記載の不正受給判定プログラム。
(付記6)
コンピュータによる不正受給判定方法であって、前記コンピュータが、
離職者を特定する情報を含む失業等給付の受給申請の登録を受け付けると、
離職者が離職した事業所の事業所情報、前記離職者の事業所における就業期間を示す情報、前記就業期間に前記離職者が事業所から受け取った賃金を示す賃金情報を関連付けて記憶した離職者情報記憶部を参照して、
離職者が就業していた事業所の規模が所定の規模以下であり、前記離職者の就業期間が、就業期間に関する条件を満たし、且つ、前記離職者の賃金情報が、賃金に関する条件を満たす場合に、前記就業期間における前記離職者の所得税の納税試算金額を算出し、
前記離職者のマイナンバー情報に基づき、前記離職者の所得税の納税の履歴を示す納税情報を問い合わせて納税金額を取得し、
前記納税試算金額と前記納税金額との差額の大きさに応じて、不正受給の疑いの有無を判定する、不正受給判定方法。
(付記7)
離職者を特定する情報を含む失業等給付の受給申請の登録を受け付けると、離職者が離職した事業所の事業所情報、前記離職者の事業所における就業期間を示す情報、前記就業期間に前記離職者が事業所から受け取った賃金を示す賃金情報を関連付けて記憶した離職者情報記憶部を参照して、離職者が就業していた事業所の規模が所定の規模以下であり、前記離職者の就業期間が、就業期間に関する条件を満たし、且つ、前記離職者の賃金情報が、賃金に関する条件を満たす場合に、前記就業期間における前記離職者の所得税の納税試算金額を算出する試算金額算出部と、
前記離職者のマイナンバー情報に基づき、前記離職者の所得税の納税の履歴を示す納税情報を問い合わせて納税金額を取得する納税情報取得部と、
前記納税試算金額と前記納税金額との差額の大きさに応じて、不正受給の疑いの有無を判定する不正判定部と、を有する不正受給判定装置。
【0100】
本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0101】
100 不正受給判定システム
200 不正受給判定装置
210 事業所データベース
220 被保険者データベース
230 離職票データベース
240 シミュレーション結果データベース
250 所得税算出データベース
260 不正受給判定処理部
261 条件保持部
262 事業所抽出部
263 離職者抽出部
264 シミュレーション実行部
265 納税情報取得部
266 照合部
267 不正判定部
268 リスト生成部
269 出力部
300 端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10