(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20230221BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
B60C11/12 D
B60C11/03 100A
(21)【出願番号】P 2018239948
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-10-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】川ノ上 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】若杉 将史
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-111451(JP,A)
【文献】特開2018-111453(JP,A)
【文献】特開2018-111450(JP,A)
【文献】特開2018-111452(JP,A)
【文献】特開2017-065625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、
タイヤ周方向に連続して延びるクラウン主溝と、
前記クラウン主溝と第1トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる第1ショルダー主溝と、
前記クラウン主溝と前記第1ショルダー主溝との間に区分された第1ミドル陸部とを有し、
前記第1ミドル陸部には、前記第1ミドル陸部を完全に横切る複数の第1横断サイプと、前記クラウン主溝から延びかつ前記第1ミドル陸部内で途切れる少なくとも1本の第1非横断サイプが設けられ、
前記クラウン主溝と前記第1非横断サイプとの連通部には、面取り部が設けられており、
前記第1非横断サイプのタイヤ軸方向の長さは、前記第1ミドル陸部のタイヤ軸方向の幅の0.40~0.60倍である、
タイヤ。
【請求項2】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、
タイヤ周方向に連続して延びるクラウン主溝と、
前記クラウン主溝と第1トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる第1ショルダー主溝と、
前記クラウン主溝と前記第1ショルダー主溝との間に区分された第1ミドル陸部とを有し、
前記第1ミドル陸部には、前記第1ミドル陸部を完全に横切る複数の第1横断サイプと、前記クラウン主溝から延びかつ前記第1ミドル陸部内で途切れる少なくとも1本の第1非横断サイプが設けられ、
前記クラウン主溝と前記第1非横断サイプとの連通部には、面取り部が設けられており、
前記面取り部は、前記第1ミドル陸部の踏面、前記クラウン主溝の溝壁及び前記第1非横断サイプのサイプ壁のそれぞれと連なる傾斜面を有し、
前記傾斜面は、曲面であり、
トレッド平面視において、前記傾斜面と前記第1ミドル陸部の踏面との間の踏面側エッジは、円弧状である、
タイヤ。
【請求項3】
トレッド平面視において、前記踏面側エッジに連なる前記第1非横断サイプのエッジと、前記踏面側エッジに連なる前記クラウン主溝の溝縁との間の角度は、鈍角である、請求項2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1非横断サイプは、タイヤ軸方向に対して15~35°の角度で傾斜している、請求項1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記トレッド部は、タイヤ赤道を挟んで延びる2本の前記クラウン主溝と、前記2本のクラウン主溝の間に区分されたクラウン陸部とを有し、
前記クラウン陸部には、前記クラウン主溝から延びかつ陸部内で途切れる複数のクラウン非横断サイプが設けられ、
前記クラウン非横断サイプの少なくとも1本は、前記クラウン主溝を介して前記第1非横断サイプと滑らかに連続するように配置されている、請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、詳しくは、ミドル陸部にサイプが設けられたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ミドル陸部にサイプが設けられた空気入りタイヤが記載されている。一般に、サイプは、陸部に接地圧が作用した際、互いに向き合うサイプ壁同士が接触する様に閉じ、陸部の過度な変形を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年のタイヤには、操縦安定性の向上に加え、ノイズ性能の向上も要求されている。特許文献1の空気入りタイヤは、サイプの上記作用によって、操縦安定性の向上を期待しているが、ノイズ性能の向上については、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、優れた操縦安定性及びノイズ性能を発揮し得るタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びるクラウン主溝と、前記クラウン主溝と第1トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる第1ショルダー主溝と、前記クラウン主溝と前記第1ショルダー主溝との間に区分された第1ミドル陸部とを有し、前記第1ミドル陸部には、前記第1ミドル陸部を完全に横切る複数の第1横断サイプと、前記クラウン主溝から延びかつ前記第1ミドル陸部内で途切れる少なくとも1本の第1非横断サイプが設けられ、前記クラウン主溝と前記第1非横断サイプとの連通部には、面取り部が設けられている。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記面取り部は、前記第1ミドル陸部の踏面、前記クラウン主溝の溝壁及び前記第1非横断サイプのサイプ壁のそれぞれと連なる傾斜面を有するのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記傾斜面は、曲面であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、トレッド平面視において、前記傾斜面と前記第1ミドル陸部の踏面との間の踏面側エッジは、円弧状であるのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、トレッド平面視において、前記踏面側エッジに連なる前記第1非横断サイプのエッジと、前記踏面側エッジに連なる前記クラウン主溝の溝縁との間の角度は、鈍角であるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記第1非横断サイプは、タイヤ軸方向に対して15~35°の角度で傾斜しているのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記第1非横断サイプのタイヤ軸方向の長さは、前記第1ミドル陸部のタイヤ軸方向の幅の0.40~0.60倍であるのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、タイヤ赤道を挟んで延びる2本の前記クラウン主溝と、前記2本のクラウン主溝の間に区分されたクラウン陸部とを有し、前記クラウン陸部には、前記クラウン主溝から延びかつ陸部内で途切れる複数のクラウン非横断サイプが設けられ、前記クラウン非横断サイプの少なくとも1本は、前記クラウン主溝を介して前記第1非横断サイプと滑らかに連続するように配置されているのが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタイヤのトレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びるクラウン主溝と、前記クラウン主溝と第1トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる第1ショルダー主溝と、前記クラウン主溝と前記第1ショルダー主溝との間に区分された第1ミドル陸部とを有する。前記第1ミドル陸部には、陸部を完全に横切る複数の第1横断サイプと、前記クラウン主溝から延びかつ陸部内で途切れる少なくとも1本の第1非横断サイプが設けられている。前記クラウン主溝と前記第1非横断サイプとの連通部には、面取り部が設けられている。
【0015】
前記第1横断サイプ及び第1非横断サイプは、第1ミドル陸部の剛性を維持しつつ、エッジ成分を増やし、操縦安定性及びウェット性能を高めることができる。
【0016】
また、本発明の第1ミドル陸部は、第1横断サイプ及び第1非横断サイプが設けられることによって、クラウン主溝側が相対的に変形し易い。このため、第1ミドル陸部に大きな接地圧が作用したときや、タイヤにスリップ角が付与されたとき、面取り部の外面の一部を接地させることが可能であり、第1ミドル陸部の実質的な接地面積が大きくなる。したがって、旋回時の初期応答性が高められ、ひいては優れた操縦安定性が期待できる。
【0017】
また、本発明の第1ミドル陸部は、面取り部が設けられることにより、連通部が接地するときの打音を小さくすることができ、ノイズ性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図2】
図1の第1ミドル陸部、第2ミドル陸部及び第1ショルダー陸部の拡大図である。
【
図3】
図2の第1非横断サイプの拡大斜視図である。
【
図4】(a)は、
図2のA-A線断面図であり、(b)は、
図2のB-B線断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図6】比較例のタイヤのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図が示されている。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明のタイヤ1は、このような使用態様に限定されるものではない。
【0020】
図1に示されるように、タイヤ1のトレッド部2には、タイヤ周方向に連続して延びるクラウン主溝3と、クラウン主溝3と第1トレッド端Te1との間でタイヤ周方向に連続して延びる第1ショルダー主溝4と、クラウン主溝3と第2トレッド端Te2との間でタイヤ周方向に連続して延びる第2ショルダー主溝5とが設けられている。
【0021】
第1トレッド端Te1及び第2トレッド端Te2は、正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。
【0022】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0023】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0024】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0025】
本実施形態では、例えば、1本のクラウン主溝3がタイヤ赤道C上に配されている。
【0026】
タイヤ赤道Cから第1ショルダー主溝4又は第2ショルダー主溝5の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの0.20~0.30倍であるのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態における第1トレッド端Te1から第2トレッド端Te2までのタイヤ軸方向の距離である。
【0027】
各主溝の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの4~7%であるのが望ましい。各主溝の溝深さは、例えば、5~10mmであるのが望ましい。
【0028】
トレッド部2には、クラウン主溝3、第1ショルダー主溝4及び第2ショルダー主溝5が設けられることにより、第1ミドル陸部6及び第2ミドル陸部7、並びに、第1ショルダー陸部8及び第2ショルダー陸部9が区分されている。
【0029】
第1ミドル陸部6は、クラウン主溝3と第1ショルダー主溝4との間に区分されている。第2ミドル陸部7は、クラウン主溝3と第2ショルダー主溝5との間に区分されている。第2ミドル陸部7は、クラウン主溝3を介して第1ミドル陸部6と隣り合っている。
【0030】
第1ショルダー陸部8は、第1ショルダー主溝4と第1トレッド端Te1との間に区分されている。第1ショルダー陸部8は、第1ショルダー主溝4を介して第1ミドル陸部6と隣り合っている。第2ショルダー陸部9は、第2ショルダー主溝5と第2トレッド端Te2との間に区分されている。第2ショルダー陸部9は、第2ショルダー主溝5を介して第2ミドル陸部7と隣り合っている。
【0031】
本実施形態のトレッド部2は、実質的に点対称のトレッドパターンで構成されている。このため、以下で説明される第1ミドル陸部6の構成は、第2ミドル陸部7に適用することができる。また、第1ショルダー陸部8の構成は、第2ショルダー陸部9に適用することができる。
【0032】
図2には、第1ミドル陸部6、第2ミドル陸部7及び第1ショルダー陸部8の拡大図が示されている。
図2に示されるように、第1ミドル陸部6には、第1ミドル陸部6を完全に横切る複数の第1横断サイプ11と、クラウン主溝3から延びかつ第1ミドル陸部6内で途切れる少なくとも1本の第1非横断サイプ13が設けられている。第1横断サイプ11及び第1非横断サイプ13は、第1ミドル陸部6の剛性を維持しつつ、エッジ成分を増やし、操縦安定性及びウェット性能を高めることができる。なお、本明細書において、「サイプ」とは、幅が2.0mm未満の切れ込みを意味する。
【0033】
本実施形態では、第1横断サイプ11と第1非横断サイプ13とがタイヤ周方向に交互に設けられている。より望ましい態様では、第1横断サイプ11と第1非横断サイプ13とは、タイヤ周方向に実質的に等間隔で配置されている。
【0034】
図3には、第1非横断サイプ13の拡大斜視図が示されている。
図3に示されるように、クラウン主溝3と第1非横断サイプ13との連通部13aには、面取り部25が設けられている。なお、面取り部25は、第1ミドル陸部6の踏面、クラウン主溝3の溝壁及び第1非横断サイプ13のサイプ壁のそれぞれと連なる傾斜面25aを有する。
【0035】
本実施形態の第1ミドル陸部6は、第1横断サイプ11及び第1非横断サイプ13が設けられることによって、クラウン主溝3側が相対的に変形し易い。このため、第1ミドル陸部6に大きな接地圧が作用したときや、タイヤにスリップ角が付与されたとき、面取り部25の外面の一部を接地させることが可能であり、第1ミドル陸部6の実質的な接地面積が大きくなる。したがって、旋回時の初期応答性が高められ、ひいては優れた操縦安定性が期待できる。
【0036】
また、本発明の第1ミドル陸部6は、面取り部25が設けられることにより、連通部13aが接地するときの打音を小さくすることができ、ノイズ性能を高めることができる。
【0037】
望ましい態様では、面取り部25の傾斜面25aが曲面で構成されている。また、本実施形態では、傾斜面25aが第1ミドル陸部6の外方に向かって凸となる曲面で構成されている。このような面取り部25は、第1ミドル陸部6に作用する接地圧が大きくなったとき、傾斜面を滑らかに接地させることができ、面取り部25周辺の偏摩耗を抑制することができる。
【0038】
面取り部25の最大の深さは、例えば、2.0~4.0mmであり、望ましくは2.5~3.5mmである。
【0039】
図2に示されるように、トレッド平面視において、傾斜面25aと第1ミドル陸部6の踏面との間の踏面側エッジ26は、曲線状が望ましく、円弧状であるのがより望ましい。
【0040】
面取り部25は、例えば、クラウン主溝3の溝縁3eと第1非横断サイプ13のエッジ13eとの角度が鈍角となるコーナ部分に配されているのが望ましい。すなわち、トレッド平面視において、踏面側エッジ26に連なる第1非横断サイプ13のエッジ13eと、踏面側エッジ26に連なるクラウン主溝3の溝縁3eとの間の角度は、鈍角である。このような面取り部25は、鋭角となるコーナ部分に配されるよりも大きな傾斜面を有し、上述の効果に加え、ウェット性能の向上及び転がり抵抗の低減を期待することができる。
【0041】
トレッド平面視において、面取り部25のタイヤ軸方向の長さL6は、例えば、第1非横断サイプ13のタイヤ軸方向の長さL2の好ましくは0.30倍以上、より好ましくは0.35倍以上であり、好ましくは0.45倍以下、より好ましくは0.40倍以下である。このような面取り部25は、操縦安定性とノイズ性能とをバランス良く高めることができる。
【0042】
同様の観点から、クラウン主溝3の溝縁3eに沿った面取り部25の長さは、面取り部25のタイヤ軸方向の長さL6の0.90~1.50倍であるのが望ましい。
【0043】
上述の面取り部25は、第1非横断サイプ13のみに設けられ、第1横断サイプ11には設けられていない。これにより、面取り部によって通常走行時の接地面積が過度に減じられるのを防ぐことができる。
【0044】
第1非横断サイプ13は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜している。第1非横断サイプ13は、例えば、第1横断サイプ11と同じ向きに傾斜している。第1非横断サイプ13のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~35°である。さらに望ましい態様として、本実施形態では、第1横断サイプ11と第1非横断サイプ13とが互いに平行に配されている。
【0045】
第1非横断サイプ13のタイヤ軸方向の長さL2は、例えば、第1ミドル陸部6のタイヤ軸方向の幅W2の好ましくは0.40~0.60倍であり、より好ましくは0.51~0.55倍である。
【0046】
第1非横断サイプ13の第1ミドル陸部6内の途切れ端13bは、例えば、2本の第1横断サイプ11の間に区分されるブロック片6aの中央部付近に配されているのが望ましい。具体的には、第1非横断サイプ13の途切れ端13bは、ブロック片6aの踏面の図心との距離が5mm未満の位置に設けられるのが望ましい。さらに望ましい態様では、第1非横断サイプ13の途切れ端13bは、ブロック片6aの踏面の図心上に配される。このような第1非横断サイプ13は、ブロック片6aの局所的な変形が抑制され、ノイズ性能の向上及び転がり抵抗の低減を期待することができる。
【0047】
第1横断サイプ11は、例えば、クラウン主溝3から第1ショルダー主溝4まで直線状に延びている。また、第1横断サイプ11は、例えば、タイヤ軸方向に対して一方向に傾斜している。第1横断サイプ11のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~35°であるのが望ましい。
【0048】
図4(a)には、
図2の第1横断サイプ11のA-A線断面図が示されている。
図4(a)に示されるように、第1横断サイプ11は、例えば、第1ミドル陸部6の踏面で開口する開口部28と、開口部28のタイヤ半径方向内側に配され、かつ、開口部28よりも小さい幅の幅狭部29とを含んでいる。開口部28の幅W4は、例えば、1.0~1.5mmである。幅狭部29の幅W5は、例えば、0.6~1.0mmである。このような第1横断サイプ11は、第1ミドル陸部6の剛性を維持しつつ、ウェット性能の向上も期待できる。
【0049】
図4(b)には、
図2の第1横断サイプ11のB-B線断面図が示されている。
図4(b)に示されるように、第1横断サイプ11は、例えば、底部が隆起した浅底部27を有しているのが望ましい。浅底部27は、例えば、タイヤ軸方向の両端部を除く位置で隆起しているのが望ましい。また、浅底部27は、第1ミドル陸部6のタイヤ軸方向の中心を横切っている。このような浅底部27は、初期応答性と耐摩耗性とをバランス良く高める。
【0050】
上述の効果をさらに高めるために、浅底部27の深さd2は、例えば、第1横断サイプ11の最大の深さd1の0.45~0.65倍であるのが望ましい。浅底部27のタイヤ軸方向の長さL5は、例えば、第1ミドル陸部6のタイヤ軸方向の幅W2(
図2に示す)の0.55~0.70倍であるのが望ましい。
【0051】
図2に示されるように、第2ミドル陸部7には、複数の第2横断サイプ12及び複数の第2非横断サイプ14が設けられている。第2横断サイプ12には、上述の第1横断サイプ11の構成を適用することができる。第2非横断サイプ14には、上述の第1非横断サイプ13の構成を適用することができる。
【0052】
第1横断サイプ11のそれぞれは、クラウン主溝3を介して第2横断サイプ12のそれぞれとは滑らかに連続しないように配置されている。なお、本明細書において、「一方のサイプが主溝を介して他方のサイプと滑らかに連続する」とは、一方のサイプをその長さ方向に沿って延長した領域と、他方のサイプをその長さ方向に沿って延長した領域とについて、主溝内でのタイヤ周方向の最小離間距離が1.0mm未満であることを意味する。なお、サイプが曲がっている場合、前記領域は、サイプの主溝側の端における曲率を保って延びるものとする。
【0053】
すなわち、本実施形態では、第1横断サイプ11をその長さ方向に沿って第2ミドル陸部7側に延長した第1領域21と、第2横断サイプ12をその長さ方向に沿って第1ミドル陸部6側に延長した第2領域22とのタイヤ周方向の最小離間距離は、クラウン主溝3内において、少なくとも1.0mm以上である。望ましい態様として、本実施形態の前記最小離間距離は、3.0~6.0mmである。このようなサイプの配置は、第1ミドル陸部6及び第2ミドル陸部7の偏摩耗を抑制するのに役立つ。
【0054】
第1非横断サイプ13のそれぞれは、クラウン主溝3を介して第2非横断サイプ14のそれぞれとは滑らかに連続していないのが望ましい。具体的には、第1非横断サイプ13をその長さ方向に沿って第2ミドル陸部7側に延長した第3領域23と、第2非横断サイプ14をその長さ方向に沿って第1ミドル陸部6側に延長した第4領域24とは、クラウン主溝3内において互いに重複していない。このような第1非横断サイプ13及び第2非横断サイプ14は、第1ミドル陸部6及び第2ミドル陸部7の偏摩耗をさらに抑制することができる。
【0055】
クラウン主溝3内において、第3領域23と第4領域24とのタイヤ周方向の最小離間距離は、例えば、1.0~6.0mmであり、より望ましくは1.0~2.0mmである。このような第1非横断サイプ13及び第2非横断サイプ14は、初期応答性と耐摩耗性とをバランス良く高めることができる。
【0056】
本実施形態では、第1非横断サイプ13と連なる面取り部25は、第1非横断サイプ13のタイヤ周方向の一方側に設けられ、第2非横断サイプ14と連なる面取り部25は、第2非横断サイプ14のタイヤ周方向の他方側に設けられている。また、第1非横断サイプ13と連なる面取り部25を第1非横断サイプ13の長さ方向に沿って延長した領域は、第2非横断サイプ14と連なる面取り部25を第2非横断サイプ14の長さ方向に沿って延長した領域と重複しない。このような面取り部25の配置は、第1ミドル陸部6及び第2ミドル陸部7の偏摩耗をさらに抑制することができる。
【0057】
第1ショルダー陸部8には、第1ショルダー横溝30、第1ショルダーサイプ31及び第2ショルダーサイプ32が設けられている。
【0058】
第1ショルダー横溝30は、例えば、第1トレッド端Te1からタイヤ軸方向内側に延び、第1ショルダー陸部8内で途切れている。
【0059】
第1ショルダー横溝30のタイヤ軸方向の長さL3は、例えば、第1ショルダー陸部8のタイヤ軸方向の幅W3の0.75~0.79倍であるのが望ましい。
【0060】
第1ショルダー横溝30は、例えば、タイヤ軸方向に対して0~20°の角度で配されているのが望ましい。本実施形態の第1ショルダー横溝30は、例えば、タイヤ軸方向に対する角度がタイヤ軸方向内側に向かって漸増している。
【0061】
第1ショルダーサイプ31は、第1ショルダー主溝4からタイヤ軸方向外側に延びている。本実施形態の第1ショルダーサイプ31は、例えば、第1ショルダー主溝4から第1ショルダー横溝30の内端30iまで延びている。
【0062】
第1横断サイプ11のそれぞれは、第1ショルダー主溝4を介して、第1ショルダーサイプ31のそれぞれと滑らかに連続するように配置されている。すなわち、第1横断サイプ11を第1ショルダー陸部8側に延長した領域17aと、第1ショルダーサイプ31を第1ミドル陸部6側に延長した領域17bとの第1ショルダー主溝4内におけるタイヤ周方向の最小離間距離は、1.0mm未満である。
【0063】
本実施形態では、上述のように、第1横断サイプ11、第2横断サイプ12及び第1ショルダーサイプ31を互いに関連付けて配置すると、スリップ角が与えられたときに、第1ショルダー陸部8から第2ミドル陸部7にかけての捻り剛性が最適化され、優れた初期応答性が発揮される。
【0064】
前記領域17aと前記領域17bとの前記最小離間距離は、0.5mm未満であるのが望ましい。本実施形態では、前記領域17aと前記領域17bとが重複している(すなわち、前記最小離間距離が0である。)。さらに望ましい態様では、第1横断サイプ11は、その長さ方向に沿って第1ショルダー陸部8側に延長した領域17aが、第1ショルダーサイプ31の第1ショルダー主溝4側の端部と重複する。このようなサイプの配置は、第1ミドル陸部6及び第1ショルダー陸部8が一体となって動き易く、初期応答性をさらに高めるのに役立つ。
【0065】
第2ショルダーサイプ32は、例えば、第1トレッド端Te1からタイヤ軸方向内側に延びている。本実施形態では、第1ショルダー横溝30と第2ショルダーサイプ32とは、タイヤ周方向に交互に設けられている。第2ショルダーサイプ32は、タイヤ軸方向の内端32iが第1ショルダー陸部8内で途切れている。さらに望ましい態様では、第2ショルダーサイプ32の内端32iは、第1ショルダー横溝30の内端30iよりも第1トレッド端Te1側に位置している。このような第2ショルダーサイプ32は、第1ショルダー陸部8の剛性分布を均一にし、初期応答性を高めるのに役立つ。
【0066】
第2ショルダーサイプ32のタイヤ軸方向の長さL4は、例えば、第1ショルダー横溝30のタイヤ軸方向の長さL3の0.75~0.95倍であるのが望ましい。
【0067】
第1非横断サイプ13をその長さ方向に沿って第1ショルダー陸部8側に延長した領域は、第2ショルダーサイプ32の内端32iの近傍を通るのが望ましい。具体的には、前記領域と前記内端32iとの最小離間距離が5mm未満であるのが望ましい。さらに望ましい態様として、本実施形態では、第1非横断サイプ13をその長さ方向に沿って第1ショルダー陸部8側に延長した領域は、第2ショルダーサイプ32の内端32iと重複している。このような第1非横断サイプ13及び第2ショルダーサイプ32の配置は、走行の各サイプの変形を均一にし、ひいては耐摩耗性を高めることができる。
【0068】
図5には、本発明の他の実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図が示されている。
図5において、上述の実施形態と共通する要素には、同一の符号が付されており、ここでの説明は省略されている。
【0069】
この実施形態のトレッド部2は、タイヤ赤道Cを挟んで延びる2本のクラウン主溝3と、2本のクラウン主溝3の間に区分されたクラウン陸部10とを有している。クラウン陸部10には、クラウン主溝3から延びかつ陸部内で途切れる複数のクラウン非横断サイプ35が設けられている。このようなクラウン非横断サイプ35は、転がり抵抗を低減しつつ、クラウン陸部10が接地するときの打音を抑制し、ノイズ性能を高めるのに役立つ。
【0070】
クラウン非横断サイプ35は、例えば、タイヤ赤道Cと第1トレッド端Te1との間に配されたクラウン主溝3から延びる第1クラウン非横断サイプ36と、タイヤ赤道Cと第2トレッド端Te2との間に配されたクラウン主溝3から延びる第2クラウン非横断サイプ37とを含む。第1クラウン非横断サイプ36と第2クラウン非横断サイプ37とは、例えば、タイヤ周方向に交互に設けられている。
【0071】
本実施形態では、第1クラウン非横断サイプ36は、クラウン主溝3を介して第1ミドル陸部6に配された第1非横断サイプ13と滑らかに連続するように配置されている。同様に、第2クラウン非横断サイプ37は、クラウン主溝3を介して第2ミドル陸部7に配された第2非横断サイプ14と滑らかに連続するように配置されている。このようなサイプの配置は、ウェット性能及びノイズ性能をさらに高めることができる。
【0072】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0073】
図1の基本パターンを有するサイズ195/65R15のタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、
図6に示されるように、ミドル陸部aに設けられた非横断サイプbに面取り部が設けられていないタイヤが試作された。なお、比較例のタイヤは、上記の構成を除き、
図1に示されるものと実質的に同じトレッドパターンを有している。各テストタイヤの操縦安定性及び耐摩耗性がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
リム:15×6.0
タイヤ内圧:200kPa
テスト車両:排気量1500cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0074】
<操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの操縦安定性(旋回時の初期応答性を含む)が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、操縦安定性が優れていることを示す。
【0075】
<ノイズ性能>
上記テスト車両で凹凸を含むドライ路面を40~100km/hで走行し、このときの車内のノイズの最大の音圧が測定された。結果は、比較例の前記音圧を100とする指数であり、数値が小さい程、車内騒音が小さく、ノイズ性能に優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0076】
【0077】
テストの結果、実施例のタイヤは、優れた操縦安定性及びノイズ性能を発揮していることが確認できた。
【符号の説明】
【0078】
2 トレッド部
3 クラウン主溝
4 第1ショルダー主溝
6 第1ミドル陸部
11 第1横断サイプ
13 第1非横断サイプ
25 面取り部