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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】接近監視システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20230221BHJP
   G08B 21/24 20060101ALI20230221BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20230221BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20230221BHJP
   H02B 7/06 20060101ALN20230221BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
G08B21/24
G08B25/10 A
G08B25/00 510M
H02B7/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019000801
(22)【出願日】2019-01-07
(65)【公開番号】P2020110030
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】林 登
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 隆大
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-122988(JP,A)
【文献】特開昭64-017196(JP,A)
【文献】特開2018-109905(JP,A)
【文献】特開2011-076301(JP,A)
【文献】特開2005-182667(JP,A)
【文献】特開2006-259951(JP,A)
【文献】特開2013-242642(JP,A)
【文献】特開2017-122948(JP,A)
【文献】特開2018-207297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
G08B 21/24
G08B 25/10
G08B 25/00
H02B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発変電所で使用される携帯装置および第1の処理装置と、前記発変電所の制御所に設置されている第2の処理装置とを備える接近監視システムであって、
前記携帯装置は、前記発変電所に立ち入る少なくとも1人の対象者に携帯されて高さを含む三次元の位置を検出し、
前記第1の処理装置は、前記携帯装置から受け取った、対象者の三次元の位置を表す対象者位置の中から抽出した対象者位置を前記第2の処理装置に送信し、
前記第2の処理装置は、前記発変電所に設置されている各設備であり、高さを含む三次元の位置で表される設備を予め記憶し、前記第1の処理装置から前記対象者位置を受信すると、充電状態の前記設備に前記対象者位置が接近しているか否かを判定し、判定結果を基に警報を表す警報信号を前記第1の処理装置に送信し、
前記第1の処理装置は、前記警報信号を受信すると、該当する前記携帯装置から警報を出力する、
ことを特徴とする接近監視システム。
【請求項2】
前記第2の処理装置は、前記第1の処理装置から前記対象者位置を受信した場合に、充電状態の前記設備の充電部に前記対象者位置が接近していると判定したときに、設備の充電エリアであることを表す警報信号を前記第1の処理装置に送信し、
前記第1の処理装置は、前記警報信号を受信すると、この警報信号に該当する前記携帯装置から充電エリアであることを表す警報を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の接近監視システム。
【請求項3】
前記第2の処理装置は、前記第1の処理装置から前記対象者位置を受信した場合に、前記変電所の充電状態にある電線に前記対象者位置が接近していると判定したときに、前記電線の活線活近エリアであることを表す警報信号を前記第1の処理装置に送信し、
前記第1の処理装置は、前記警報信号を受信すると、この警報信号に該当する前記携帯装置から活線活近エリアであることを表す警報を出力する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の接近監視システム。
【請求項4】
前記第2の処理装置は、前記第1の処理装置から前記対象者位置を受信した場合に、停電状態にある前記設備に前記対象者位置が接近していると判定したときに、停電エリアであることを表す警報信号を前記第1の処理装置に送信し、
前記第1の処理装置は、前記警報信号を受信すると、この警報信号に該当する前記携帯装置から停電エリアであることを表す警報を出力する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の接近監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気が通じている設備等に接近したかを監視する接近監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気が通じている電気設備が設置されている所として、例えば変電所がある。変電所については、設備の維持管理のために作業員が中に入って作業する場合がある。このために、変電所には作業を行って安全な場所と危険な場所とがある。つまり、変圧器等の設備で電気が通じている充電部は立入り禁止エリアである。こうした立入り禁止エリアに近づく作業員に対しては、警報を出す必要がある。
【0003】
このために、次のような監視装置(例えば、特許文献1参照。)がある。この監視装置は、設備の充電部がある立入禁止エリアを持つ施設に、作業員が携帯する発信器からの電波を受信するアンテナを装備した特殊な受信器を、必要な箇所に多数配置する。そして、中央制御室では、各受信器の受信信号により作業員の位置を判断する。立入禁止エリアに入ったと判断したときには、自動的に警告を発する。
【0004】
こうした発信器と受信器とから成る監視装置により、作業員が立入禁止エリアに立ち入ることを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭64-17196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、先に述べた監視装置には次のような課題がある。この従来の監視装置は、現場にアンテナが装備された特殊な受信器を用意して設置しなければならない。つまり、従来の監視装置には、特殊な受信器を必要とし、しかもこの受信器の設置作業が必要である。
【0007】
また、例えば充電部が複雑に入り組んでいるようなときには、立入り禁止エリアを細かく設定する必要がある。このために、従来の監視装置では、指向性を狭くしたアンテナが装備されている受信器を、現場に多数配置しなければならない。つまり、アンテナが装備されている受信器を多数準備し、これらの受信器を各箇所に設置する必要がある。このために、受信器の設置作業や回収作業に多くの労力を必要とする。
【0008】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、多数の特殊な装置の設置を不要にして、発変電所で充電状態にある設備に接近したかを監視することを可能にする接近監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、発変電所で使用される携帯装置および第1の処理装置と、前記発変電所の制御所に設置されている第2の処理装置とを備える接近監視システムであって、前記携帯装置は、前記発変電所に立ち入る少なくとも1人の対象者に携帯されて高さを含む三次元の位置を検出し、前記第1の処理装置は、前記携帯装置から受け取った、対象者の三次元の位置を表す対象者位置の中から抽出した対象者位置を前記第2の処理装置に送信し、前記第2の処理装置は、前記発変電所に設置されている各設備であり、高さを含む三次元の位置で表される設備を予め記憶し、前記第1の処理装置から前記対象者位置を受信すると、充電状態の前記設備に前記対象者位置が接近しているか否かを判定し、判定結果を基に警報を表す警報信号を前記第1の処理装置に送信し、前記第1の処理装置は、前記警報信号を受信すると、該当する前記携帯装置から警報を出力する、ことを特徴とする接近監視システムである。
【0010】
請求項1の発明では、携帯装置は、発変電所に立ち入る少なくとも1人の対象者に携帯されて高さを含む三次元の位置を検出する。第1の処理装置は、携帯装置から受け取った、対象者の三次元の位置を表す対象者位置の中から抽出し、抽出した対象者位置を第2の処理装置に送信する。第2の処理装置は、発変電所に設置されている各設備であり、高さを含む三次元の位置で表される設備を予め記憶する。第2の処理装置は、第1の処理装置から対象者位置を受信すると、充電状態の設備に対象者位置が接近しているか否かを判定し、判定結果を基に警報を表す警報信号を第1の処理装置に送信する。第1の処理装置は、警報信号を受信すると、該当する携帯装置から警報を出力する。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の接近監視システムにおいて、前記第2の処理装置は、前記第1の処理装置から前記対象者位置を受信した場合に、充電状態の前記設備の充電部に前記対象者位置が接近していると判定したときに、設備の充電エリアであることを表す警報信号を前記第1の処理装置に送信し、前記第1の処理装置は、前記警報信号を受信すると、この警報信号に該当する前記携帯装置から充電エリアであることを表す警報を出力する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の接近監視システムにおいて、前記第2の処理装置は、前記第1の処理装置から前記対象者位置を受信した場合に、前記変電所の充電状態にある電線に前記対象者位置が接近していると判定したときに、前記電線の活線活近エリアであることを表す警報信号を前記第1の処理装置に送信し、前記第1の処理装置は、前記警報信号を受信すると、この警報信号に該当する前記携帯装置から活線活近エリアであることを表す警報を出力する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1~3のいずれか1項に記載の接近監視システムにおいて、前記第2の処理装置は、前記第1の処理装置から前記対象者位置を受信した場合に、停電状態にある前記設備に前記対象者位置が接近していると判定したときに、停電エリアであることを表す警報信号を前記第1の処理装置に送信し、前記第1の処理装置は、前記警報信号を受信すると、この警報信号に該当する前記携帯装置から停電エリアであることを表す警報を出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、対象者が携帯装置をそれぞれ携帯するだけで、高さを含む三次元の位置で表される発変電所の設備に、携帯装置が接近すると、携帯装置から警報が出力される。これにより、対象者は充電状態の設備に接近しているかを正確に知ることが可能になる。しかも、従来のように変電所の各設備などに特殊な装置を設置することが不要である。
【0015】
請求項2の発明によれば、携帯装置が発変電所の充電部の充電エリアに接近すると警報を出力するので、対象者は設備の充電部の充電エリアに接近していることを知ることが可能になる。
【0016】
請求項3の発明によれば、携帯装置が発変電所の活線活近エリアに接近すると警報を出力するので、対象者は充電状態にある電線の活線活近エリアに接近していることを知ることが可能になる。
【0017】
請求項4の発明によれば、携帯装置が発変電所の停電エリアに接近すると警報を出力するので、対象者は停電状態のある設備の停電エリアに接近していることを知ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の一実施の形態による接近監視システムの構成を示す図である。
図2】警報表示端末の一例を示す図である。
図3】設備位置データの一例を示す図である。
図4】設備状態データの一例を示す図である。
図5】充電部・作業員距離の算出の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、この発明の一実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0020】
この実施の形態による接近監視システムを図1に示す。この接近監視システムは、監視制御装置11およびITV(Industrial TeleVision)端末装置13を制御所に備えている。また、接近監視システムは、変電所内で使用される収集装置21、位置確認装置22、複数の警報表示端末25~25を備えている。
【0021】
変電所は、通常、設備制御装置23、複数の設備24~24、カメラ制御装置26および複数のITVカメラ27~27を備えている。
【0022】
変電所の設備24~24は、CB(Circuit Breaker:遮断器)、LS(Line Switch:断路器)の開閉器、変電所内の母線や線路等の電線などである。設備24~24のCBやLSについては、設備制御装置23の制御によって入り切りし、入切状態を表す入切状態信号を設備制御装置23にそれぞれ送る。
【0023】
設備制御装置23は、設備24~24の中でCBやLSの入り切りを制御する。このために、設備制御装置23は、通信網NWを経て制御所の監視制御装置11からCBやLSの入り切りを表す入切信号を受信する。設備制御装置23は、監視制御装置11からの入切信号を受信すると、この入切信号を基にCBやLSの入り切りを行う。この後、設備制御装置23は、CBやLSから入切状態信号を受け取ると、通信網NWを経て入切状態信号を制御所の監視制御装置11に送る。
【0024】
ITVカメラ27~27は、変電所の各箇所に設置されている。ITVカメラ27~27は変電所からの制御によって動作する遠隔制御カメラである。つまり、ITVカメラ23a~23bは、カメラ制御装置26を経た制御所からの指示で、撮影方向の変更などをそれぞれ行う。ITVカメラ23a~23bは、変電所内を撮影した様子を表す画像信号をカメラ制御装置26に送る。
【0025】
カメラ制御装置26は、変電所からの指示によってITVカメラ27~27を制御する。つまり、カメラ制御装置26は、変電所からの指示で、ITVカメラ27~27の撮影方向の変更などをそれぞれ行う。また、カメラ制御装置26は、ITVカメラ27~27からの画像信号をそれぞれ受け取ると、通信網NWを経てこれらの画像信号を制御所に送信する。
【0026】
警報表示端末25~25は、変電所に立ち入る対象者として例えば作業員が変電所内で作業を行うときに、作業員に携帯されて用いられる。一例として、警報表示端末25は、例えば図2に示すように、DGPS(Differential Global Positioning System)受信機25aと表示装置25bとを備えている。
【0027】
警報表示端末25には、作業員を識別するための作業員識別データが予め入力可能である。警報表示端末25は、入力された作業員識別データを記憶しておく。
【0028】
DGPS受信機25aは、GPSによる受信位置の誤差を修正して、位置検出の精度を高めたものである。DGPS受信機25aは、衛星からDGPS信号を受信すると、この信号を基にして、高さを含む三次元で受信位置を表す作業員位置データを得る。なお、DGPS受信機25aの代わりとして、高度計付きのGPS受信機を用いてもよい。この場合には、GPS受信機で得られた位置を表すGPS信号に対して、高度計で得られたこの位置での高さ(高度)を表す高度信号を付加し、作業員位置データを生成する。DGPS受信機25aが生成する作業員位置データは、例えば警報表示端末25を作業員が携帯する場合に、
、Y、Z
のような三次元の座標で表される。この場合には、値X、Yが地表面での作業員の位置を表し、値Zが作業員の今いる高さを表している。
【0029】
この後、DGPS受信機25aは、生成した作業員位置データに対して、作業員を識別するデータであり予め入力されて記憶されている作業員識別データを付加する。そして、DGPS受信機25aは、作業員識別データを付加した作業員位置データを位置確認装置22に、例えば無線で送信する。
【0030】
表示装置25bは、制御所の監視制御装置11からの警報信号によって動作する。このために、表示装置25bは制御部25bと表示部25bとを備えている。
【0031】
表示部25bは作業員に対して現在の位置がどのエリアであるかを表示するものであり、発光体25b11~25b13を備えている。発光体25b11は「充電エリア」を示すLED(Light Emitting Diode)のようなものであり、発光体25b12は「活線・活近エリア」を示すLEDのようなものである。発光体25b13は「停電エリア」を示すLEDのようなものである。
【0032】
この実施の形態では、作業員が作業するエリア(区域)を次のように設定している。「充電エリア」は、電気が通じていて充電状態にあるLSやCBなどの設備の露出金属部分つまり充電部が在る所定範囲である。「活線・活近エリア」の活線エリアは充電状態にある母線および線路を中心にした所定範囲であり、同じく「活線・活近エリア」の活近エリアは充電状態にある母線・線路周囲の作業用の所定範囲であり、活線エリアに比べて広い範囲である。「停電エリア」は電気が通じていない停電状態にあるLS、CBの露出金属部分、母線・線路などが在る所定範囲である。このように、「充電エリア」、「活線・活近エリア」、「停電エリア」は異なる所定範囲を表している。
【0033】
発光体25b11は、制御部25bの制御で発光することにより、「充電エリア」に入っていることを作業員に表示し、発光体25b12は、制御部25bの制御で発光することにより、「活線・活近エリア」に入っていることを作業員に表示する。発光体25b13は、制御部25bの制御で発光することにより、「停電エリア」に入っていることを作業員に表示する。
【0034】
発光体25b11~25b13の発光に伴って、制御部25bは音色の異なる警報音を所定時間だけ出力するようにしてもよい。これにより、制御部25bは音により作業員に警報を知らせる。
【0035】
制御部25bは表示部25bを制御する。つまり、制御部25bは位置確認装置22から警報信号を受け取る。警報信号が充電エリアを示す場合、制御部25bは表示部25bを制御して発光体25b11を発光し、警報信号が活線・活近エリアを示す場合、表示部25bを制御して発光体25b12を発光する。また、警報信号が停電エリアを示す場合、制御部25bは表示部25bを制御して発光体25b13を発光する。
【0036】
以上が警報表示端末25の構成である。この他の警報表示端末は警報表示端末25と同じであるので、これらの説明を省略する。このように、警報表示端末25~25は、三次元での現在の位置を調べて作業員位置データを位置確認装置22にそれぞれ送ると共に、位置確認装置22から警報信号を受け取ると該当する発光体を点灯する。
【0037】
位置確認装置22は変電所内で作業が行われるときに使用される。位置確認装置22は、警報表示端末25~25からの作業員位置データをそれぞれ受け取ると、各作業員位置データを記憶していく。同時に、位置確認装置22は、警報表示端末25~25から受け取った作業員位置データを基に、作業員の現在の位置を表示装置(図示を省略)に表示する。位置確認装置22は、収集装置21が作業員位置データを抽出した後、収集装置21から警報信号を受け取ると、警報信号に付加されている作業員識別データを参照し、警報表示端末25~25の中で作業員識別データに該当する警報表示端末にこの警報信号を送る。このとき、位置確認装置22は、受け取った警報信号を基にどの作業員の警報表示端末が警報を受けたかを表示装置に表示する。
【0038】
こうした位置確認装置22は、後述の収集装置21と共に、例えば携帯端末に組み込まれて、監視員に所持されるようにしてもよい。
【0039】
収集装置21は変電所内で作業が行われるときに使用される。収集装置21は、位置確認装置22が記憶している作業員位置データを監視する。そして、作業員位置データが変化すると、つまり、作業員位置データが表す作業員の位置が変化すると、収集装置21は変化した作業員位置データを抽出する。この後、収集装置21は抽出した作業員位置データを通信網NWを経て制御所の監視制御装置11に送信する。なお、収集装置21は、位置確認装置22から定期的に作業員位置データを抽出して監視制御装置11に送信するようにしてもよい。こうした収集装置21は、例えば監視ソフトウエアーを利用して作業員位置データの抽出や送信等を行っている。
【0040】
また、収集装置21は、作業員位置データを送信した後、制御所の監視制御装置11から警報信号を受信すると、この警報信号を位置確認装置22に送る。
【0041】
以上が変電所で用いられる収集装置21、位置確認装置22および警報表示端末25~25等の構成である。次に、制御所に設置されている監視制御装置11およびITV端末装置12について説明する。
【0042】
ITV端末装置12は、変電所に設置されているITVカメラ27~27を担当者の指示を基に制御する。例えば、ITV端末装置12は、ITVカメラ27~27の撮影方向を移して変電所内を撮影する。ITV端末装置12はITVカメラ27~27から画像信号を受信すると、この画像信号を基に変電所内の様子を表示装置(図示を省略)に表示する。
【0043】
監視制御装置11は変電所の監視および制御を行っている。例えば、監視制御装置11は、設備24~24の中のCBやLSの入り切りを指示する入切信号を生成する。そして、監視制御装置11は、通信網NWを経て、入切信号を変電所の設備制御装置23に送信する。
【0044】
また、監視制御装置11は変電所の系統図を表示装置に表示する。このときに、監視制御装置11は、変電所の設備制御装置23から受信した入切状態信号を基に、変電所のCBやLSの入り切りに応じて母線・線路(変電所内の電線)が活線かどうかを判断する。そして、母線・線路に電気が通じている場合、監視制御装置11は、系統図の該当箇所に例えばマークを付けて、母線・線路が活線状態であることを表している。監視制御装置11は、マークが付けられて母線・線路が活線であることを表すマーク信号を生成する。
【0045】
監視制御装置11は処理機能11aを内部に備えている。処理機能11aは変電所の作業員がどのエリアにいるかを判断する。このために、処理機能11aは、各設備の位置を表す設備位置データを予め記憶している。この設備位置データの一例を図3に示す。この設備位置データは、変電所の設備24~24の位置を表したものであり、例えばNo.1設備が遮断器であると、処理機能11aはこの遮断器のA1端子、A2端子などの位置を、
A1、YA1、ZA1
A2、YA2、ZA2
のような三次元の座標で表している。この場合には、値X、Yが平面上での設備の位置を表し、値Zが設備の今ある高さを表している。またNo.N設備が母線であると、処理機能11aはこの母線の代表的な各B1位置、B2位置等を、
B1、YB1、ZB1
B2、YB2、ZB2
のような三次元の座標で表している。設備が線路であるときも同様である。このように、設備が母線・線路である場合には、処理機能11aは母線・線路の代表的な各位置を座標で表している。なお、これらの各位置が母線・線路の充電部になる。
【0046】
こうした設備24~24の設備位置データは、変電所でGPS受信機を利用して予め得ることができる。
【0047】
先に述べたように、処理機能11aは変電所の作業員がどのエリアにいるかを判断する。このために、処理機能11aは、設備位置データに加えて設備状態データを予め記憶している。この設備状態データの一例を図4に示す。この設備状態データは、変電所の設備24~24の充停電状態を表したものである。図4では、例えばNo.1が遮断器であり、この遮断器が充電状態であることを表し、No.Nの設備が母線であり、この母線が停電状態であることを表している。
【0048】
こうした設備状態データは、例えば監視制御装置11が設備制御装置23から受信した入切状態信号や、監視制御装置11が生成したマーク信号等を参照することで作成される。
【0049】
処理機能11aがこれらの設備位置データや設備状態データを記憶している状態で、監視制御装置11は変電所の収集装置21から作業員位置データを受信すると、作業員が何処のエリアに居るかを、作業員位置データから判断する。
【0050】
つまり、処理機能11aは、作業員位置データを監視制御装置11が受信すると、作業員位置データから作業員の位置を調べる。次に、処理機能11aは、設備位置データと設備状態データとを参照して、充電されている設備の充電部を調べ、さらに、充電部の位置を調べる。そして、処理機能11aは、作業員位置データが表す作業員の三次元の位置と、設備の充電部の三次元の位置との距離が所定の判定条件を満たすかで警報を出すかを判定する。例えば図5に示すように、No.1設備である遮断器101が充電状態にあると、処理機能11aは設備位置データを参照して、この遮断器101の充電部であるA1端子(露出金属部)の位置
A1、YA1、ZA1
と、作業員が携帯している警報表示端末25の位置つまり作業員の位置
、Y、Z
とから、充電部から作業員までの距離L1である充電部・作業員距離を算出する。
【0051】
次に、処理機能11aは、次の判定式により、
充電部・作業員距離+接近距離≦接近安全距離
接近距離:充電エリアや活線・活近エリアに応じて設定された距離
接近安全距離:接近しても安全を確保できる距離
の関係が成り立つと、処理機能11aは作業員が充電エリアに入ったと判定する。そして、処理機能11aは、作業員が充電エリアに入ったことを表す警報信号を生成する。この後、処理機能11aは、作業員位置データに付加されている作業員識別データを抽出し、作成した警報信号に対してこの作業員識別データを付加し、通信網NWを経て変電所の収集装置21に送信する。
【0052】
また、処理機能11aは、充電されている設備が母線・線路である場合に、母線・線路の各位置において直近の位置から作業員までの距離が同じく先の判定式を満たすとき、作業員が活線・活近エリアに入ったことを表す警報信号を生成する。この後、同じようにして、処理機能11aは、作業員位置データに付加されている作業員識別データを抽出し、作成した警報信号に対してこの作業員識別データを付加し、通信網NWを経て変電所の収集装置21に送信する。
【0053】
さらに、判定式は成り立つが、設備が停電している場合には、作業員が停電エリアに入ったと判定する。このときには、処理機能11aは、作業員が停電エリアに入ったことを表す警報信号を生成する。この後、同じようにして、処理機能11aは、作業員位置データに付加されている作業員識別データを抽出し、作成した警報信号に対してこの作業員識別データを付加し、通信網NWを経て変電所の収集装置21に送信する。
【0054】
以上がこの実施の形態による接近監視システムの構成である。次に、この接近監視システムの作用について説明する。監視員と複数の作業員とが変電所で作業する場合には、各作業員は警報表示端末をヘルメット、靴や腕などに装着する。また、監視員は収集装置21と位置確認装置22とが組み込まれた携帯端末を携帯する。
【0055】
各作業員の警報表示端末25~25は、作業員の高さを含む位置を表す作業員位置データを位置確認装置22に送る。位置確認装置22は、警報表示端末25~25からの作業員位置データをそれぞれ受け取ると、各作業員位置データを記憶していく。収集装置21は、位置確認装置22が記憶している作業員位置データを監視する。このときに、位置確認装置22は、警報表示端末25~25から受け取った作業員位置データを基に、作業員の現在の位置を表示する。
【0056】
作業員位置データに変化が発生すると、収集装置21は、変化した作業員位置データを抽出する。この後、収集装置21は抽出した作業員位置データを通信網NWを経て制御所の監視制御装置11に送信する。
【0057】
制御所の監視制御装置11は通信網NWを経て作業員位置データを受信する。監視制御装置11が作業員位置データを受信すると、監視制御装置11の処理機能11aは、設備位置データと設備状態データとを用い、作業員位置データを基に変電所の作業員が充電エリア、活線・活近エリアおよび停電エリアのどのエリアにいるかを判断する。そして、処理機能11aは、判断結果を基に警報信号を生成し、この警報信号を通信網NWを経て変電所の収集装置21に送信する。
【0058】
また、制御所では警報信号が生成されると、制御所の担当者は作業員位置データが表す作業員の位置を基にITV端末装置12を操作して、現場の様子を画像で視覚的に確認することができる。
【0059】
変電所の収集装置21は、作業員位置データを送信した後で制御所の監視制御装置11から警報信号を受信すると、この警報信号を位置確認装置22に送る。位置確認装置22は、収集装置21から警報信号を受け取ると、警報信号に付加されている作業員識別データを参照し、警報表示端末25~25の中で作業員識別データに該当する警報表示端末、例えば警報表示端末25にこの警報信号を送る。このときに、位置確認装置22は、受け取った警報信号を基にどの作業員の警報表示端末が警報を受けたかを表示する。
【0060】
警報表示端末25は、警報信号を受け取ると、警報信号が充電エリアを示す場合には発光体25b11を発光し、警報信号が活線・活近エリアを示す場合には発光体25b12を発光する。また、警報信号が停電エリアを示す場合には、警報表示端末25発光体25b13を発光して、作業員に警報が出ていることを知らせる。
【0061】
こうしてこの実施の形態によれば、作業員が警報表示端末25~25を携帯するだけで、三次元で表される警報表示端末25~25の位置を基に、警報表示端末25~25が現在のエリアを表示するので、各作業員が現在のエリアを正確に知ることができる。
【0062】
また、この実施の形態によれば、収集装置21および位置確認装置22を監視員が携帯する場合、位置確認装置22は現在の警報表示端末のエリアや警報が出ている警報表示端末を表示するので、監視員は各作業員のエリアが何処であるか、どの作業員に警報が出ているかを正確に知ることができる。
【0063】
さらに、この実施の形態によれば、作業員が警報表示端末25~25をそれぞれ携帯するだけで、現場の状況に応じて現在のエリアが表示されるので、従来のように作業前に多数の特殊な受信器等の設置を不要にすることができる。
【符号の説明】
【0064】
11 監視制御装置
11a 処理機能(第2の処理装置)
12 ITV端末装置
21 収集装置(第1の処理装置)
22 位置確認装置(第1の処理装置)
23 設備制御装置
24~24 設備
25~25 警報表示端末(携帯装置)
25a DGPS受信機
25b 表示装置
25b 制御部
25b 表示部
26 カメラ制御装置
27~27 ITVカメラ
図1
図2
図3
図4
図5